【文献】
HM161711,GenBank,2010年 9月 4日,[online],URL,http://getentry.ddbj.nig.ac.jp/getentry/na/HM161711
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託番号CCTCC V201117として寄託されていることを特徴とする請求項1に記載のブタサーコウイルス2型(PCV2)ウイルス。
PK−15細胞系またはその派生細胞系に細胞変性効果(CPE)を引き起こすことができることを特徴とする請求項1に記載のブタサーコウイルス2型(PCV2)ウイルス。
ブタインフルエンザウイルス(SIV)の抗原、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRSV)の抗原、マイコプラズマの抗原、ブタパルボウイルス(PPV)の抗原、丹毒の抗原、および仮性狂犬病ウイルスの抗原からなる群から選択される少なくとも1つの病原体抗原を更に含むことを特徴とする請求項4に記載の免疫原性組成物。
請求項1に記載のPCV2ウイルスのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、前記ポリペプチドは、配列番号5の配列を有することを特徴とするポリヌクレオチド。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PCV2感染は、世界中のほとんどの養豚場に蔓延している。PCV2は、感染したブタの生存率および飼料効率(FCR)の低下を引き起こし、養豚に大きな経済的損失をもたらすことが判明している。したがって、PCV2試験キットおよびPCV2に対するワクチンを開発することは重要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、離乳後多臓器消耗症候群(PMWS)の臨床症状を示すブタから単離され、更に分析されて、新規PCV2株(PCV2 H株)であると確認されたPCV2株に関する。新規PCV2株(PCV2 H株)のゲノムのプラス(+)鎖は、配列番号1のDNA塩基配列を有する。新規PCV2株は、2011年11月5日に、寄託番号CCTCC V201117として中国典型培養物保蔵センター(CCTCC、China Center for Type Culture Collection)に寄託された。
【0007】
本発明の第2の態様は、新規PCV2株(PCV2 H株)を含有する免疫原性組成物に関する。1つの好ましい実施形態では、免疫原性組成物は、新規PCV2株(PCV2 H株)の非活化ウイルスまたは弱毒化ウイルスおよび薬学的に許容される媒体を含むワクチンである。
しかしながら、ワクチンのタイプには、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:不活化ワクチン、生(弱毒化)ワクチン(ウイルスの弱毒化による)、サブユニットワクチン、DNAワクチン、および新規PCV2株(PCV2 H株)または新規PCV2株(PCV2 H株)のDNAもしくはアミノ酸配列に由来または生成される他のワクチン。
【0008】
本発明の不活化プロセスには、これらに限定されないが、不活化試薬による処理、熱処理、および当業者に公知の他の処理が含まれる。不活化試薬には、これらに限定されないが、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ベータ−プロピオラクトン(BPL)、バイナリーエチレンイミン(BEI、binary ethyleneimine)、または本発明に好適な他の不活化試薬が含まれる。
【0009】
薬学的に許容される媒体には、これらに限定されないが、溶媒、乳化剤、懸濁化剤、分解剤、結合剤、賦形剤、安定化剤、キレート剤、希釈液、ゲル化剤、保存剤、潤滑剤、界面活性剤、アジュバント、または他の好適な媒体が含まれる。
【0010】
アジュバントには、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:油性アジュバント(鉱油、植物油、動物油、フロインド完全アジュバント、フロインド不完全アジュバント等)、水性アジュバント(水酸化アルミニウム等)、2相性乳化アジュバント(水中油中水(w/o/w)型乳剤アジュバント等)、生物学的アジュバント(CpGオリゴデオキシヌクレオチドおよびトキソイド等)等。2相性乳化アジュバントは、界面活性剤および油性物質を含む。
界面活性剤は、以下のものからなる群から選択される1つまたは複数である:ソルビトール脂肪酸エステル;ソルビトール脂肪酸エステルおよびエチレンオキシド(またはプロピレンオキシド)の濃縮物;マンニトール脂肪酸エステル:マンニトール脂肪酸エステルおよびエチレンオキシド(またはプロピレンオキシド)の濃縮物;カルボン酸、アミン、アミド、アルコール、ポリオール、エーテル、およびオキシドからなる群から選択される1つまたは複数である親水基を有する修飾マンニトール脂肪酸エステル;アンヒドロマンニトール脂肪酸エステル;カルボン酸、アミン、アミド、アルコール、ポリオール、エーテル、およびオキシドからなる群から選択される1つまたは複数である親水基を有する修飾アンヒドロマンニトール脂肪酸エステル;サッカロース脂肪酸エステル;サッカロース脂肪酸エステルおよびエチレンオキシド(またはプロピレンオキシド)の濃縮物;グリセロール脂肪酸エステル;グリセロール脂肪酸エステルおよびエチレンオキシド(またはプロピレンオキシド)の濃縮物;脂肪酸およびエチレンオキシド(またはプロピレンオキシド)の濃縮物;脂肪アルコールおよびエチレンオキシド(またはプロピレンオキシド)の濃縮物;およびグリセロリン脂質。油性物質は、鉱油、植物油、および動物油からなる群から選択される1つまたは複数である。
【0011】
本発明の免疫原性組成物は、少なくとも1つの病原体抗原を更に含む。病原体抗原には、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:ブタインフルエンザウイルス(SIV)の抗原、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRSV)の抗原、マイコプラズマの抗原、ブタパルボウイルス(PPV)の抗原、丹毒の抗原、および仮性狂犬病(オーエスキー病)ウイルスの抗原。
病原体抗原のタイプには、これらに限定されないが、組換えタンパク質、サブユニットタンパク質、遺伝子欠陥を有する病原体、不活化病原体抗原等が含まれる。
【0012】
本発明の第3の態様は、ブタをPCV2感染から防御する方法であって、免疫学的有効用量の前記PCV2免疫原性組成物をブタに投与して、PCV2感染に対するその免疫を増強し、ウイルス血症および臨床症状の重症度を低下させ、生存率および体重を増加させることを含む方法に関する。
【0013】
本発明の第4の態様は、新規PCV2株(PCV2 H株)に由来する抗PCV2抗体に関する。抗体には、これらに限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、および遺伝子操作抗体が含まれる。1つの好ましい実施形態では、抗体は、新規PCV2株(PCV2 H株)を動物に注射することにより得られるポリクローナル抗体である。別の好ましい実施形態では、抗体は、モノクローナルハイブリドーマライブラリーのスクリーニングにより得られるモノクローナル抗体である。
【0014】
本発明の第5の態様は、新規PCV2株(PCV2 H株)のDNA断片に関する。DNA断片は、配列番号1、2、4、および6のヌクレオチド配列を有する。DNA断片の応用には、これらに限定されないが、DNAワクチンおよびサブユニットワクチンの製造、および試料中のPCV2ウイルスを検出するためのプライマーまたはプローブの設計が含まれる。
1つの好ましい実施形態では、DNA断片は、新規PCV2株(PCV2 H株)の全長ゲノム配列(配列番号1)である。別の好ましい実施形態では、DNA断片は、新規PCV2株(PCV2 H株)のオープンリーディングフレーム(ORF)であり、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:
配列番号3のアミノ酸配列をコードする配列番号2のヌクレオチド配列を有するオープンリーディングフレーム1(ORF1)、
配列番号5のアミノ酸配列をコードする配列番号4のヌクレオチド配列を有するオープンリーディングフレーム2(ORF2)、および
配列番号7のアミノ酸配列をコードする配列番号6のヌクレオチド配列を有するオープンリーディングフレーム3(ORF3)。
【0015】
本発明の第6の態様は、PCV2の試験キットに関する。試験キットは、検査試料中のPCV2ウイルスまたは抗PCV2抗体を検出するために使用される。
試験キットには、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:(1)1つの好ましい実施形態では、新規PCV2株(PCV2 H株)の抗原であり、上記抗原は、抗原プレートに配置されており、不活化試薬で不活化されている;(2)新規PCV2株(PCV2 H株)に由来するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体;(3)新規PCV2株(PCV2 H株)の全長ゲノム配列(配列番号1)またはヌクレオチド断片(配列番号2、4、および6)に由来する遺伝子操作抗原または抗体;および(4)新規PCV2株(PCV2 H株)の全長ゲノム配列(配列番号1)またはヌクレオチド断片(配列番号2、4、および6)に由来するポリヌクレオチド。
ポリヌクレオチドには、これらに限定されないが、プライマーおよびプローブが含まれる。1つの好ましい実施形態では、ポリヌクレオチドは、新規PCV2株(PCV2 H株)を検出するために使用でき、配列番号8〜11のヌクレオチド配列を有するプライマーである。
【0016】
試験キットのタイプには、これらに限定されないが、以下のものが含まれる:酵素結合免疫吸着測定キット(ELISA)、マイクロチップキット、免疫蛍光アッセイ(IFA)キット、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)キット、および新規PCV2株(PCV2 H株)に由来する他の試験キット。1つの好ましい実施形態では、試験キットは、新規PCV2株(PCV2 H株)を含む少なくとも1枚の抗原プレートを含み、試験キットを使用して、検査試料中の抗PCV2抗体を検出できる。
【0017】
本発明の新規PCV2株(PCV2 H株)は、サブカルチャーされた継代培養、および新規PCV2株(PCV2 H株)と同様のウイルス特徴、ゲノム、または病原性を有する変異体を全て含む。
【0018】
本発明での用語「DNA(核酸)」および「ポリヌクレオチド」は、天然、単離、組換え、または合成状態で存在し得る。
【0019】
本発明での用語「アミノ酸」、「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」は、天然、単離、組換え、または合成状態で存在し得る。
【0020】
用語「予防する」、「防御する」、および「に対する」は、開示された免疫原性組成物によるワクチン接種を受けない動物と比較して、開示された免疫原性組成物によるワクチン接種を受けた動物が、PCV2感染およびPCV2感染に起因する関連疾患に対する能力の増強を示すことができるという観察に関する。
【0021】
本明細書に記載の技術用語および科学用語の意味は、当業者であれば明白に理解できる。
【0022】
本発明は、以下の例示的な例において、より詳細に説明される。これらの例は、本発明の単なる選択された実施形態を表し得るものの、以下の例は例示であり限定ではないことが理解されるべきである。
本発明は、以下の詳細な説明および添付の図面を用いるとより容易に理解可能になるが、それらは例示目的で示されているに過ぎず、したがって本発明を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、以下の例により説明されることになるが、本発明は、それらに限定されることはない。
【0025】
実施例1:PCV2ウイルスの単離および特定
1.種ウイルスの供給源および単離:
組織試料は、Hsin−Chu(台湾)の養豚場の子ブタの肺およびリンパ節から採取した。これら子ブタは8週齢であり、離乳後多臓器消耗症候群(PWMS)の臨床症状を示していた。肺およびリンパ節試料を採取し、−70℃で凍結した。
【0026】
ウイルスを単離するために、組織試料をホモジナイズし、0.2mlの各ホモジネートを、ブタサーコウイルス(PCV)、ブタコレラウイルス(CSFV)、ブタアデノウイルス、ブタパルボウイルス、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRSV)、仮性狂犬病ウイルス(PRV)、ブタ水疱病ウイルス(SVDV)、マイコプラズマ、および細菌に感染していないPK−15単層細胞またはその派生細胞系に播種した。
細胞を、37℃、5%CO
2で1時間インキュベートした後、無菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄した。その後、細胞を、37℃、5%CO
2にて4時間、2%FBSを含有するMEM培地でインキュベートした。
その後、MEM培地を廃棄し、細胞を、300mM D−グルコサミンと共に30分間インキュベートした。その後、細胞を無菌PBSで3回洗浄し、37℃、5%CO
2にて72時間、8%FBSを含有するMEM培地でインキュベートした。最後に、細胞培養を、免疫蛍光アッセイ(IFA)でPCV2について試験した。
【0027】
IFAのプロトコールは、以下のように記述される。最初に、試料細胞を、無菌PBSで3回、毎回5分間洗浄し、75μlの80%アセトンで4℃にて30分間固定した。その後、アセトンを廃棄し、細胞を、無菌PBSで3回、毎回5分間洗浄した。その後、細胞を、75μlのブタサーコウイルス抗ウイルスポリクローナル抗血清(VMRD(登録商標))(一次抗体、PBSで1:1500希釈)と共に37℃で30分間インキュベートした。
その後、抗血清を廃棄し、細胞を、無菌PBSで3回、毎回5分間洗浄した。その後、細胞を、75μlのウサギ抗ブタIgG−FITC(分子全体)(Sigama社、F1638)(二次抗体、PBSで1:1000希釈)と共に、37℃で30分間インキュベートした。その後、抗体を廃棄し、細胞を、無菌PBSで3回、毎回5分間洗浄した。最後に、96ウエル培養皿中の細胞試料の各々を、蛍光顕微鏡検査用に200μlのPBS中にマウントした。
【0028】
細胞に感染し、IFAの結果が最も陽性だったウイルスを、種ウイルスとして選択した。その後、配列番号1に示されているように、種ウイルスのゲノム配列を決定した。配列をアラインし、分析し、最終的にPCV2の新株であることを確認した(配列アラインメントの分析および結果は、下記に記載されている)。この新規PCV2株を、PCV2 H株と命名する。
【0029】
2.種ウイルスのサブカルチャー
新しく調製したPK−15細胞またはその派生細胞系に、新規PCV2株(PCV2 H株)を播種した。播種細胞から回収したウイルスは、PCV2 H株の継代1(P
1)だった。PCV2 H株のP
1を含有する細胞培養上清を収集し、希釈(1:2)し、新しく調製したPK−15細胞またはその派生細胞系に播種した。
播種細胞を3日間インキュベートした後、PCV2 H株の継代2(P
2)を含有する細胞培養上清を収集し、希釈(1:2)し、新しく調製したPK−15細胞またはその派生細胞系に播種した。播種細胞を3日間インキュベートし、次に、PCV2 H株の継代3(P
3)を含有する細胞培養上清を収集した。このプロセスを、更に3回繰り返して、PCV2 H株の継代6(P
6)を得た。
【0030】
図1Bに示されるように、PCV2 H株を播種したPK−15細胞またはその派生細胞系の培養過程中、播種細胞に細胞変性効果(CPE)が観察された。加えて、
図1Aには、培養4日後の非播種PK−15細胞の形態および増殖(100×)が示されており、
図1Bには、PCV2 H株を播種したPK−15細胞の培養4日後の形態および増殖(100×)が示されている。同様に、PCV2 H株を播種したPK−15由来細胞系で観察されたCPEは、
図1Bを参照すれば参考にできる。
【0031】
3.種ウイルスの特定:
本発明で単離されたPCV2 H株のゲノムは、配列番号1のヌクレオチド配列を有する。配列番号1のヌクレオチド配列を、国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のGenBankデータベースの配列と比較した。
比較の結果は、PCV2 H株が、幾つかのPCV2配列(表1)と99%相同性であったことを示したが、データベースには、PCV2 H株のゲノム配列(配列番号1)と同一(100%相同性)である配列は存在しない。したがって、アラインメントの結果に基づくと、本発明で単離されたウイルス、PCV2 H株は、PCV2ファミリーに属し、新しい株であることが示されている。
図2に示されているPCV2 H株のゲノム配列の系統発生解析に基づくと、PCV2 H株は、PCV2 2dサブグループのメンバーであることが示されている。
【0033】
解析により、本発明のPCV2 H株が、オープンリーディングフレーム(ORF)1、2、および3を有することが示されている。ORF1は、配列番号3のアミノ酸配列をコードする配列番号2のヌクレオチド配列を有する。ORF2は、配列番号5のアミノ酸配列をコードする配列番号4のヌクレオチド配列を有する。ORF3は、配列番号7のアミノ酸配列をコードする配列番号6のヌクレオチド配列を有する。
【0034】
PCV2 ORF2遺伝子によりコードされるカプシドタンパク質は、中和抗体の産生を誘導する抗原である可能性が最も高いと考えられるため、PCV2 H株のORF2のヌクレオチド配列(配列番号4)およびアミノ酸配列(配列番号5)を、NCBI GenBankデータベースの配列と比較した。
比較の結果は、PCV2 H株のORF2のヌクレオチド配列(配列番号4)またはアミノ酸配列(配列番号5)と同一(100%相同性)の配列が、NCBI GenBankデータベースには存在しないことを示している。PCV2 H株のORF2のアミノ酸配列(配列番号5)とGenbankデータベース配列との最も高い相同性は、98%であった。
図3には、PCV2 H株のORF2のアミノ酸配列(配列番号5)と最も高い相同性を示す上位3つの配列とのアラインメントが示されており、このアラインメントによると、配列番号5の6つのアミノ酸が、上位3つの配列と異なっていることが示されている。PCV2 H株のORF2のアミノ酸配列(配列番号5)を、PCV2 2dサブグループプロトタイプ(GenBank登録番号:ZJ0955b)のORF2のアミノ酸配列(GenBank登録番号:ADD25772)と更に比較した。
図4に示されている結果は、この2配列間では7つのアミノ酸が異なっており、この2配列は、97%相同性を共有していることを示す。
【0035】
加えて、PCV2 H株のORF1およびORF3のヌクレオチド配列(配列番号2および6)およびアミノ酸配列(配列番号3および7)を、NCBI GenBankデータベースの配列と比較した。比較の結果は、PCV2 H株のORF1またはORF3のヌクレオチド配列もしくはアミノ酸配列と同一(100%相同性)の配列が、NCBI GenBankデータベースには存在しないことを示している。
【0036】
この解析により、本発明のPCV2 H株は、ブタサーコウイルス2型(PCV2)の新規株であることが示されている。新規PCV2株は、2011年11月5日に、寄託番号CCTCC V201117として中国典型培養物保蔵センター(CCTCC)に寄託された。
【0037】
実施例2:PCV2 H株ワクチンの調製
1.ウイルス培養
ブタサーコウイルス(PCV)、ブタコレラウイルス(CSFV)、ブタアデノウイルス、ブタパルボウイルス、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRSV)、仮性狂犬病ウイルス(PRV)、ブタ水疱病ウイルス(SVDV)、マイコプラズマ、および細菌に感染していないPK−15細胞を、37℃、5%CO
2にて細胞培養増殖培地(5%FBSを含有するMEM培地(pH7.2±0.2))で培養した。
PK−15細胞の単層が形成された後、PK−15細胞を、0.2%トリプシン−EDTAを用いて剥離し、細胞計数用の細胞培養維持培地(2%FBSを含有するMEM培地(pH7.4±0.2))に懸濁した。その後、細胞を、細胞培養増殖培地で3.0×10
5細胞/mlの終濃度に希釈し、ローラーボトルに配分し、37℃にて3〜4日間培養してコンフルエント単層に到達させた。その後、ローラーボトル内部の細胞培養培地を廃棄し、細胞をPBSで洗浄した。
PCV2 H株のウイルス原液を、細胞培養維持培地で10
4.0TCID
50/mlの終濃度に希釈し、ローラーボトルのPK−15細胞単層に播種した。ウイルスを増殖させるため、感染細胞を、37℃で48〜96時間インキュベートした。PCV2 H株のウィルス力価を、免疫蛍光アッセイ(IFA)によりモニターした。その後、PCV2 H株のウイルス溶液を収集するため、ウイルス力価が10
6.0TCID
50/ml以上に達したか、または細胞変性効果(CPE)が70〜80%に達した時点で、細胞培養の上清を回収した。
【0038】
2.不活化プロセス
37パーセント(37重量%)のホルムアルデヒドを、前述のステップで収集したPCV2 H株のウイルス溶液に添加して、終濃度を0.2%(w/v)にし、その後ウイルスを、37℃にて少なくとも24時間、好ましくは48時間、ホルムアルデヒドと共に連続振とうすることにより不活化した。ウイルスを完全に不活化した後、ホルムアルデヒドを含有するPCV2 H株のウイルス溶液を遠心分離して、ホルムアルデヒドを除去した。その後、遠心分離したウイルス溶液を、蒸留水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)等の緩衝溶液に懸濁し、懸濁ウイルス溶液を、PCV2 H株不活化ワクチンの不活化抗原原液とし、後の使用のために4℃で保管した。
【0039】
3.PCV2 H株不活化ワクチンの調製
水中油中水型(W/O/W)乳剤用のMONTANIDE(登録商標)ISA 206油性ワクチンアジュバント等の無菌2相性乳化アジュバントを、混合および乳化するために、乳剤タンク内のPCV2 H株不活化ワクチンの不活化抗原原液に添加して、終濃度50%(v/v)にした。乳化産物は、油性アジュバントを有するPCV2 H株不活化ワクチンである。
【0040】
本発明のPCV2不活化ワクチンに好適な、当業者に知られている他のアジュバントも、本発明においてアジュバントとして使用できる。
この例で使用される2相性乳化アジュバント(水中油中水型乳剤アジュバント等)は、これらに限定されないが、以下のものに置き換えることができる:油性アジュバント(鉱油、植物油、動物油、フロインド完全アジュバント、フロインド不完全アジュバント等)、水性アジュバント(水酸化アルミニウム等)、生物学的アジュバント(CpGオリゴデオキシヌクレオチドおよびトキソイド等)。
【0041】
実施例3:PCV2試験キットの調製−1
この例におけるPCV2試験キットは、PCV2 H株のウイルス抗原を含有する抗原プレートである。最初に、PK−15細胞またはその単クローン細胞系を培養し、トリプシン処理し、2×10
5細胞/mlの終濃度で細胞培養培地に再懸濁した。50マイクロリットル(μl)のPK−15細胞および50μlのPCV2 H株のウイルス原液(1×10
3TCID
50/ml)を、96ウエル細胞培養プレート(平底)の各ウエルに添加し、37℃、5%CO
2にて72時間インキュベートした。
PCV2 H株に感染した細胞を、無菌PBSで2回洗浄し、室温にて15分間80%アセトンで固定した。その後、アセトンを廃棄し、細胞を、無菌PBSで3回洗浄した。その後、プレートを逆さまにし、次いで37℃のインキュベータで乾燥させた。乾燥させたプレートは、PCV2 H株のウイルス抗原を含有する抗原プレートであり、ELISA試験に使用して、血清試料中のPCV2に対する抗体量を検出できる。その後、プレートを、後の使用のために−20℃で保管した(Tischer et al., 1995)。
【0042】
実施例4:PCV2試験キットの調製−2
この例におけるPCV2試験キットは、PCV2 H株の組換えカプシドタンパク質を含有する抗原プレートである。組換えカプシドタンパク質は、抗原プレートの抗原である。カプシドタンパク質は、PCV2 H株のORF2遺伝子によりコードされており、配列番号5のアミノ酸配列を有する。
【0043】
最初に、PCV2 H株のORF2ヌクレオチド配列を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅した。PCV2 H株のウィルスDNAを、PCR反応のテンプレートDNAとして使用した。順方向プライマーおよび逆方向プライマーは、ORF2ヌクレオチド配列を増幅するように設計した。この例における順方向プライマーは、HindIII切断部位を有しており、この例における逆方向プライマーは、XhoI切断部位を有する。当業者であれば、本発明のORF2ヌクレオチド配列(配列番号4)に従って、プライマーを設計できる。
PCR反応には、8μlのテンプレートDNA、5μlの10×PCR緩衝液(MDBio社)、8μlのdNTP(各1.25mM)、1μlの各プライマー(各50μM)、および0.5μlのPfu DNAポリメラーゼ(MDBio社)を含有ししており、最終容積が50μlであるPCR混合液を、GeneAmp PCRシステム2400反応装置(Applied Biosystems社)に設置した。
PCR反応は、PCR混合液を95℃で5分間予熱する初期ステップから開始し、DNA増幅は、以下のパラメーターのサイクルを25回繰り返すことにより実施した:95℃で30秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリング、および72℃で30秒間の伸長。PCR反応は、72℃で5分間の最終伸張ステップで終了した。PCR産物を、PCR−Mクリーンアップキット(Viogene社)で精製した。
【0044】
精製した後、PCR産物を、pET24a発現ベクターに構築した。精製したPCR産物およびpET24a発現ベクター(Novagen社)を、2つの制限酵素(New England Biolabs社)、HindIIIおよびXhoIで、37℃にて8時間それぞれ消化した。
制限酵素切断反応の後、消化したPCR産物およびpET24a発現ベクターを、PCR−Mクリーンアップキット(Viogene社)を用いてそれぞれ精製した。精製したPCR産物を、精製したpET24a発現ベクターにライゲーションし、ライゲーション産物を宿主細胞(大腸菌、E.coli)に導入した。形質転換体を選択し、DNA塩基配列決定法により正確な配列を有するクローンを特定し、pET24a−ORF2と命名した。
【0045】
pET24a−ORF2を有する細菌を、2mlのLB培地中で16〜18時間37℃にて培養し、その後培養物を、25μg/mlカナマイシンを含有する新しいLB培地に1:50の比率で添加し、37℃、200rpmにて培養した。波長600nmにおける培養物の光学密度(OD600)が0.6に達したら、イソプロピル−β−D−チオガラクトシド(IPTG)を、1mMの終濃度になるように培養に添加し、培養物を、37℃、200rpmにて更に6時間インキュベートした。
1ミリリットルの培養物を遠心分離し(10,000×g)、次いで、B−PERTM細菌タンパク質エクストラクション(Pierce Protein Research Produces社)を用いて、組換えタンパク質が、可溶性タンパク質かまたは封入体かを決定した。40マイクロリットル(μl)の試薬を、遠心分離した細菌に添加し、1分間ボルテックスミキサーで振とうした。その後、混合物を10,000×gで遠心分離した。
上清に懸濁されていたタンパク質は、可溶性タンパク質であり、下部(ペレット)のタンパク質は封入体だった。可溶性タンパク質を、SDS−PAGE分析用の1×試料緩衝液に溶解し、封入体を、SDS−PAGE分析用の2×試料緩衝液と混合した。試料は両方とも、20分間沸騰させ、その後遠心分離した。両試料の上清中のタンパク質を、15%SDS−PAGEで分離し、PCV2 H株の組換えカプシドタンパク質の発現を分析した。分析後、PCV2 H株の組換えカプシドタンパク質を使用して、抗原プレートを製作した。
【0046】
PCV2 H株の組換えカプシドタンパク質を、PBS(pH9.6)で希釈して、終濃度を10μg/mlにした。希釈した組換えタンパク質を、37℃で2時間、その後4℃で一晩、96ウエル細胞培養プレート(平底)にコーティングした(100μL/ウエル)。その後、プレートの各ウエルをPBSで3回3〜5分間洗浄し、200μlの0.15%BSAブロッキング溶液を添加し、組換えタンパク質を37℃で2時間ブロッキングした。プレートの各ウエルをPBSで洗浄した後、後の使用のためプレートを4℃で保管した。
【0047】
実施例5:抗PCV2 H株抗体の調製
1.抗PCV2 H株ポリクローナル抗体
十分なウィルス力価を有する不活化PCV2 H株を、フロインド完全アジュバント等の好適なアジュバントと混合した。混合物を、マウス、ブタ、ヤギ、およびウサギ等の動物に一次接種した。必要に応じて、適切な期間をおいて(2〜3週間等)二次免疫を実施してもよい。
更に適切な期間をおいて(2〜3週間等)、接種した動物の血清を、抗PCV2 H株ポリクローナル抗体として採取した。
【0048】
抗PCV2 H株ポリクローナル抗体は、必要に応じて、発色リポーターまたは蛍光体と結合させることができる。
【0049】
必要に応じて、一次または二次免疫後、接種した動物に更にワクチン接種を行って抗体価を増加させることができる。
【0050】
抗PCV2 H株ポリクローナル抗体を産生するために接種できる動物には、これらに限定されないが、マウス、ウサギ、トリ(卵)、ブタ、ヤギ、ウシ、および水生動物が含まれる。
【0051】
2.抗PCV2 H株モノクローナル抗体
十分なウイルス力価を有する不活化PCV2 H株またはPCV2 H株の特異的抗原断片(ORF2等)を、動物(マウス等)に一次接種した。必要に応じて、非活化ウイルスまたは抗原断片を、フロインド完全アジュバント等の好適なアジュバントと混合できる。また、必要に応じて、適切な期間をおいて(2〜3週間等)二次免疫を実施してもよい。
更に適切な期間をおいて(2〜3週間等)、接種した動物の血清を採取して、動物の脾臓細胞が、抗PCV2 H株モノクローナル抗体の産生に好適か否かを評価した。接種した動物から採取した好適な脾臓細胞およびミエローマ細胞(FO細胞系およびNS細胞系等)の細胞融合は、ポリエチレングリコール(PEG1500等のPEG)を使用して達成した。適切な特異性を有する抗体を産生するハイブリドーマを融合細胞から選択し、次いで、抗PCV2 H株モノクローナル抗体を産生するのに好適なハイブリドーマにサブクローニングした。
【0052】
抗PCV2 H株モノクローナル抗体は、試験キット、治療、または動物の免疫を増強する食品もしくは飼料サプリメントに使用できる。
【0053】
実施例6:不活化PCV2ワクチンの効力試験−1
1.ワクチン接種プロトコールおよび試料採取
5〜6週齢の特定病原体除去(SPF)Balb/cマウスを、無作為に各群15匹マウスの4群に分割した。ELISA試験は、60匹のマウス全てが、抗PCV2抗体に陰性だったことを示した。3ワクチン接種群(第1群〜第3群)のマウスに、3つのロット違いの0.2ml不活化PCV2 H株ワクチンをそれぞれ筋肉内注射した。一次免疫(p.i.)の2週間後に、3ワクチン接種群のマウスを、同じ用量の3つのロット違いのワクチンで追加免疫した。第4群のマウスにはワクチン接種をせず、陰性対照とした。一次免疫(p.i.)の2、3、4、および5週間後に、各群から5匹のマウスを無作為に選択し、血清試料を採取した。血清試料は全てELISAにより試験した。
【0054】
2.ELISAによる抗PCV2抗体の検出
実施例3または4で調製した抗原プレートは、この例ではELISAプレートとして使用できる。ELISAプレートを、500μl/LのTween−20を含有する50mmol/LのPBS(pH7.2)(つまり、PBST)で、3回、毎回3〜5分間洗浄した。
ELISAプレートをブロッキングするために、200μLの0.15%BSAブロッキング溶液を、ELISAプレートの各ウエルに添加し、その後、ELISAプレートを37℃で2時間インキュベートした。その後、ELISAプレートをPBSで洗浄した。マウス血清試料を、PBSで50倍(1:50)希釈し、その後、2倍連続希釈を行った。希釈した血清試料を、ELISAプレートのウエルに添加し(100μl/ウエル)、プレートを37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートをPBSで洗浄した。その後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合二次抗体(ウサギ抗マウス二次抗体等)を、ウエルに添加した。
37℃で1時間インキュベートした後、プレートをPBSで洗浄した。結果を視覚化するため、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)をウエルに添加した。インキュベーションした後、2mM H
2SO
4を添加することにより反応を停止させた。結果は、陽性対陰性(P/N)比として報告した。P/N比は、所与の試験試料の450nmにおける光学密度(OD
450)を、標準陰性対照のOD
450で除算することにより算出した。P/N比≧2.1を、陽性とみなした。P/N比≧2.1の最大希釈を、血清試料のELISA抗体価とみなした。
【0055】
HRPおよびTMBに加えて、アルカリホスファターゼ(AP)、4−メチルウンベリフェリルホスフェート(4−MUP)、およびフルオレセインイソチオシアネート(FITC)等の同じ機能を有する他の発色リポーターまたは蛍光体も、この例で使用できる。
【0056】
3.結果
一次免疫(p.i.)の2週間後に、抗PCV2 H株抗体が全てのワクチン接種マウスで検出された。二次免疫後、ワクチン接種マウスのELISA抗体価は、一次免疫後日数(d.p.i.)35日で1800〜2000に達した(
図5)。したがって、これらの結果は、本発明の不活化PCV2 H株ワクチンが、マウスの免疫応答を効果的に誘導できたことを示した。
【0057】
実施例7:不活化PCV2ワクチンの効力試験−2
1.ワクチン接種プロトコールおよび試料採取
5〜6週齢の2匹の健常子ブタに、1mlの不活化PCV2 H株ワクチンをそれぞれ筋肉内注入した。一次免疫(p.i.)の3週間後に、同じ用量のワクチンで子ブタを追加免疫した。血清試料を、一次免疫前(5〜6週齢)、二次免疫前(8〜9週齢)、および二次免疫の2週間後(10〜11週齢)に両子ブタから採取した。血清採取と同じ時点で、両子ブタを計量した。血清試料は全てELISAにより試験した。
【0058】
2.ELISAによる抗PCV2抗体の検出
実施例3または4で調製した抗原プレートは、この例ではELISAプレートとして使用できる。ELISAプレートを、500μl/LのTween−20を含有する50mmol/LのPBS(pH7.2)(つまり、PBST)で、3回、毎回3〜5分間洗浄した。ELISAプレートをブロッキングするために、200μLの0.15%BSAブロッキング溶液を、ELISAプレートの各ウエルに添加し、その後、ELISAプレートを37℃で2時間インキュベートした。その後、ELISAプレートをPBSで洗浄した。
ブタ血清試料を、PBSで50倍(1:50)希釈し、その後、2倍連続希釈を行った。希釈した血清試料を、ELISAプレートのウエルに添加し(100μl/ウェル)、プレートを37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートをPBSで洗浄した。その後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合二次抗体(ヤギ抗ブタ二次抗体等)を、ウエルに添加した。37℃で1時間インキュベートした後、プレートをPBSで洗浄した。結果を視覚化するために、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)をウエルに添加した。インキュベーション後、2mM H
2SO
4を添加することにより反応を停止させた。
結果は、陽性対陰性(P/N)比として報告した。P/N比は、所与の試験試料の450nmにおける光学密度(OD
450)を、標準陰性対照のOD
450で除算することにより算出した。P/N比≧2.1を、陽性とみなした。P/N比≧2.1の最大希釈を、血清試料のELISA抗体価とみなした。
【0059】
3.結果
一次免疫(p.i.)の3週間後に、抗PCV2 H株抗体が両ワクチン接種子ブタで検出された。二次免疫の2週後、ワクチン接種した子ブタのELISA抗体価は、11,000を超えていた(表2)。したがって、これらの結果は、本発明の不活化PCV2 H株ワクチンが、ブタの免疫応答を効果的に誘導できたことを示した。
【0061】
実施例8:不活化PCV2ワクチンの効力試験−3
1.ワクチン接種プロトコールおよび試料採取
2週齢の40匹の健常子ブタを、各群10匹子ブタの4群に無作為に分割した。3週齢時に、3ワクチン接種群(第1群〜第3群)の子ブタに、3つのロット違いの1ml不活化PCV2 H株ワクチンをそれぞれ筋肉内注射した。一次免疫(p.i.)の3週間後に、同じ用量のワクチンで子ブタを追加免疫した。第4群の子ブタにはワクチン接種をせず、陰性対照とした。血清試料を、一次免疫の1週間前(2週齢)、ならびに一次免疫の1、2、3、および5週間後(それぞれ、4週齢、5週齢、6週齢、および8週齢)に、全ての子ブタから採取した。子ブタは全て、3、4、5、6、および8週齢時に計量した。血清試料は全てELISAにより試験した。
【0063】
2.IFAによる抗PCV2抗体の検出
実施例3で調製した抗原プレートを、この例で使用した。抗原プレートを、−20℃から取り出し、37℃で解凍および乾燥した。ブタ血清試料を、PBSで50倍(1:50)希釈し、その後2倍連続希釈を行った。希釈した血清試料を、抗原プレートのウエルに添加し(50μl/ウエル)、プレートを37℃で30分間インキュベートした。
インキュベーション後、プレートをPBSで3回洗浄し、未結合抗体を除去した。その後、50マイクロリットル(50μl)のFITC結合ウサギ抗ブタIgG(1:100、Sigma社)を、ウエルに添加した。暗所で30分間インキュベートした後、プレートをPBSで3回洗浄し、蛍光顕微鏡で検査して、抗PCV2 H株抗体の力価を算出した。(Rodriguez−Arriojaら、2000年)
【0064】
3.結果
3.1 抗体価
一次免疫(p.i.)の2週間後、ワクチン接種子ブタ(5週齢)に由来する血清試料は、約600のIFA力価を示したが、対照群に由来する血清試料は、約200のIFA力価を示した(表4および
図6)。二次免疫後、ワクチン接種子ブタ(6週齢)のIFA力価は劇的に増加した(IFA力価は、13,000を超えている)。8週齢では、ワクチン接種子ブタは、46,000を超えるIFA力価を示したが、非ワクチン接種子ブタは、約170の非常に低いIFA力価を示した。
【0066】
3.2 体重増加
ワクチン接種子ブタは、対照群の非ワクチン接種子ブタよりも高い体重増加を示した(表5および
図7)。8週齢では、ワクチン接種子ブタは、非ワクチン接種子ブタよりも体重が約2kg重かった。
【0068】
したがって、これらの結果は、本発明の不活化PCV2 H株ワクチンが、ブタの免疫応答を効果的に誘導し、ブタの免疫を増強し、その後ブタの体重を増加させることができたことを示した。
【0069】
実施例9:不活化PCV2ワクチンの効力試験−4
1.ワクチン接種プロトコールおよびPCV2感染
14〜16日齢の子ブタを、各群5匹子ブタの4群に無作為に分割した。20匹の子ブタは全て、抗PCV2抗体に陰性だった。3ワクチン接種群(第1群〜第3群)の子ブタに、3つのロット違いの1ml不活化PCV2 H株ワクチンをそれぞれ筋肉内注射した。
一次免疫(p.i.)の2週間後、同じ用量のワクチンで子ブタを追加免疫した。第4群の子ブタにはワクチン接種をせず、陰性対照とした。一次免疫の5週間後に、全ての子ブタを、1ml当たり10
6.0の50%組織培養感染用量(10
6.0TCID
50/ml)のPCV2 H株(毒性株)ウイルス原液で負荷した。各子ブタを、1mlのウイルス原液で鼻腔内に、および2mlのウイルス原液で筋肉内に負荷した。血清および鼻腔スワブ試料を、負荷の7、11、19、および25日後に採取して、PCRによりPCV2ウイルス血症を検出した。
【0070】
2.PCRによるPCV2ウイルス血症の検出
PCRを使用して、PCV2負荷後に採取したブタ血清試料中のウィルスDNAレベルを決定した。ウィルスDNAを、DNAzol(登録商標)試薬で抽出した。最初に、400μlのDNAzol(登録商標)試薬を、200μlの血清に添加し、混合物を12,000rpmで15分間遠心分離した。上清を2倍容積の無水エタノールと混合して、DNAを沈殿させた。混合物を、12,000rpmで15分間遠心分離した後、上清を廃棄した。DNAペレットを75%エタノールで洗浄し、12,000rpmで15分間遠心分離してエタノールを除去し、最終的に8mM NaOHに溶解した。
【0071】
PCV2ウイルス血症を検出するために使用されるPCRプライマーは、以下の配列を有する。
PCV2−F1:5’GTGAAGTGGTATTTTGGTGCC3’ (配列番号8)
PCV2−R1:5’GTCTTCCAATCACGCTTCTGC3’ (配列番号9)
PCV2−F1(順方向)およびPCV2−R1(逆方向)プライマーを使用して、PCV2のORF1に由来する284bp断片を増幅した。最終容積を25μlとしたPCR混合物は、1μlの順方向プライマー、1μlの逆方向プライマー、1.5μlの25mM Mg
2+、2.0μlの2.5mM dNTP、2.5μlの10×無Mg
2+緩衝液、0.2μlのTaq DNAポリメラーゼ、11.8μlの蒸留水、および5μlのテンプレートDNAを含有していた。
PCR反応は、PCR混合液を95℃で5分間予熱する初期ステップから開始し、DNA増幅は、以下のパラメーターのサイクルを38回繰り返すことにより実施した:94℃で30秒間の変性、55℃で30秒間のアニーリング、および72℃で30秒間の伸長。PCR反応は、72℃で5分間の最終伸長ステップで終了し、その後4℃で維持した。次に、PCR産物を、1%アガロースゲルで分析し、臭化エチジウム染色により視覚化した。
【0072】
加えて、PCV2ウイルス血症を検出するために使用した別の対のPCRプライマーは、以下の配列を有する。
PCV2−F2:5’TGTTGGCGAGGAGGGTAATG’3 (配列番号10)
PCV2−R2:5’TGGGACAGCAGTTGAGGAGT’3 (配列番号11)
PCV2−F2(順方向)およびPCV2−R2(逆方向)プライマーを使用して、PCV2に由来する676bp断片を増幅した。
【0073】
3.解剖学的構造および病理学的分析
負荷の25日後、子ブタを犠牲にして解剖し、器官の病理学的異常を観察し、リンパ節および肺を採取した。組織試料を、4%ホルムアルデヒドで固定し、パラフィンに包埋し、その後薄片にした。組織切片をヘマトキシリンおよびエオジン(H&E)で染色し、顕微鏡で観察した。
【0074】
4.結果
4.1 ウイルス血症の評価
PCRの結果は、負荷の25日後に、ワクチン接種子ブタ(第1群〜第3群)におけるウイルス血症の発症率が、非ワクチン接種子ブタ(第4群)における発症率より、40〜60%低かったことを示した(表6)。これらの結果は、本発明の不活化PCV2 H株ワクチンが、ブタの免疫を誘導し、ブタのウイルス血症の重症度および持続期間を低減し、PCV2感染からブタを防御できたことを示した。
【0076】
4.2 病理組織検査
負荷の25日後に子ブタを犠牲にして解剖した。鼠径部、縦隔、および腸間膜リンパ節の肥大が、2匹の非ワクチン接種子ブタに見られ、リンパ節の切片は蒼白だった。別の非ワクチン接種子ブタは、虚脱していない弾力性のある肺、肺水腫、および白斑腎(white−spotted kidney)を有していた。ワクチン接種子ブタは全て、肉眼でわかる病理学的異常を示さなかった(表7及び表8)。
【0078】
表8には、組織切片の顕微鏡病理組織検査の結果、およびPCRによるPCV2ウイルス血症の評価結果が示されている。リンパ球枯渇およびマクロファージ浸潤等のリンパ節の組織病理学的病変が、ほとんど全ての非ワクチン接種子ブタ(第4群)で観察され、非ワクチン接種子ブタから試料採取したリンパ節は全て、PCV2ウイルス血症に陽性だった。
加えて、炎症性細胞浸潤等の肺の組織病理学的病変が、3匹の非ワクチン接種子ブタに観察され、非ワクチン接種子ブタから試料採取した肺組織のうちの2つが、PCV2ウイルス血症に陽性だった。非ワクチン接種子ブタと比較して、ワクチン接種子ブタは、組織病理学的病変およびPCV2ウイルス血症の著しい低減を示した。リンパ節の組織病理学的病変は、ワクチン接種子ブタ15匹(第1群〜第3群)中1匹(ブタ番号A4)でしか観察されず、ワクチン接種子ブタ(ブタ番号A4)から試料採取したリンパ節が、PCV2ウイルス血症陽性の唯一のリンパ節だった。これらの結果は、本発明の不活化PCV2 H株ワクチンが、PCV2伝染からブタを防御できたことを示した。防御比率は、80%から100%だった。
【0080】
これらの結果全てに基づき、本発明の不活化PCV2 H株ワクチンは、ブタの免疫を効果的に誘導し、ワクチン接種ブタをPCV2感染から防御し、ブタのウイルス血症の重症度および持続期間を低減し、臨床症状を最小限に抑え、体重増加量を増加させた。
【0081】
無論、本発明の前述した実施形態の多くの変更および改変は、その範囲から逸脱せずに実施できる。このように、本発明は、科学および有用な技術の発展を促進するために開示されるものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図されている。