【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1の接触装置、請求項7の装置、および請求項11の方法によって達成される。
【0006】
複数の原料粉末層に電磁放射線又は粒子放射線を照射することによって三次元ワークピースを製造する装置において用いられる接触装置は、累積的な積層プロセスによって装置内に作製されるワークピースを受けるように適合された交換可能な構築チャンバーを有している。交換可能な構築チャンバーは装置内で、稼働位置、交換位置、及び前処理/後処理位置(前後処理位置)の間で移動可能とされてよい。その稼働位置において、交換可能な構築チャンバーはプロセスチャンバーに隣接して配置されてよく、三次元ワークピースが、キャリアに塗布された複数の原料粉末層を電磁放射線又は粒子放射線で照射することにより、キャリア上に作製される。キャリアは、ワークピースが作製される際の高さの増加を相殺するよう、プロセスチャンバー内で作製されたワークピースを構築チャンバー内へ移すためにプロセスチャンバーに対して変位可能とされてよい。
【0007】
交換可能な構築チャンバーは、雰囲気に対して密封可能とされてよく、それにより、交換可能な構築チャンバーがその内部に作製されたワークピースを保持した状態で、ワークピースを雰囲気に曝すことなく、その稼働位置から交換位置へ移動され得る。さらに、交換可能な構築チャンバーはその交換位置から前後処理位置に移動されてもよい。交換可能な構築チャンバーがその交換位置から移されるとすぐに、新しい構築チャンバーがプロセスチャンバーに隣接する稼働位置で装置内の適切な場所に据え付けられて、新しいワークピースが作製されてもよい。もちろん、前後処理位置で適切な前後処理を受けたあとで、交換可能な構築チャンバーは装置内で再使用されてよく、すなわち、更なるワークピースを受けるようにその稼働位置に戻されてよい。
【0008】
接触装置はさらに、交換可能な構築チャンバーを支持するように適合された構築チャンバー支持部を備えている。構築チャンバー支持部は、交換可能な構築チャンバーを所望の位置で保持する限りは、三次元ワークピースの製造装置内のどの場所の接触装置に対して適合されてもよい。例えば、交換可能な構築チャンバーは円柱形状でもよく、特には、実質的に平坦な底面を有する円筒形状でよい。構築チャンバー支持部はさらに、実質的に平板形状に設計されたものでよく、その上に交換可能な構築チャンバーを受けるように実質的に平坦な支持面を有していてよい。
【0009】
接触装置の第1の接触部は、交換可能な構築チャンバーに固定されており、少なくとも1つの第1の電気伝導部を具備している。第1の電気伝導部には、第1の平坦な導電面が設けられている。第1の電気伝導部は、露出した第1の平坦な導電面が設けられている限りは、どのような適切な設計のものでもよい。例えば、第1の電気伝導部は直方体の形状で設計されてよく、第1の電気伝導部の第1の平坦な導電面はその直方体の複数の側面のうちの1つにより形成されてもよい。必要であれば、第1の接触部は同じ形状又は異なる形状の複数の第1の電気伝導部を備えてよい。
【0010】
第2の接触部は構築チャンバー支持部に固定されており、少なくとも1つの第2の電気伝導部を具備している。第2の電気伝導部には、第2の平坦な導電面が設けられている。第1の電気伝導部と同様に、第2の電気伝導部も、露出した第2の平坦な導電面が設けられている限りは、どのような適切な設計のものでもよい。例えば、第2の電気伝導部も直方体の形状で設計されてよく、第2の電気伝導部の第2の平坦な導電面はその直方体の複数の側面のうちの1つにより形成されてもよい。必要であれば、第2の接触部は同じ形状又は異なる形状の複数の第2の電気伝導部を備えていてよい。
【0011】
第1の接触部の第1の電気伝導部に設けられた第1の平坦な導電面と第2の接触部の第2の電気伝導部に設けられた第2の平坦な導電面は、交換可能な構築チャンバーが構築チャンバー支持部上に支持されるときに、交換可能な構築チャンバーと構築チャンバー支持部の間で電気的な接続が形成されるように、相互に作用するように適合される。換言すると、第1及び第2の電気伝導部に設けられた平坦な導電面は、相互に接触するようにされて、それにより、交換可能な構築チャンバーを構築チャンバー支持部に接続して、その結果、交換可能な構築チャンバーを三次元ワークピース製造装置の電気的なシステムに接続するように適合される。第1及び第2の平坦な導電面の形状は、相互に調整されることが好ましく、すなわち、接触装置の好ましい実施態様においては、第1及び第2の平坦な導電面は同一形状であるか、又は少なくとも類似の形状とされる。
【0012】
第1及び第2の電気伝導部には平坦な導電面が設けられているので、交換可能な構築チャンバーと構築チャンバー支持部の間の電気的な接続は、交換可能な構築チャンバーが構築チャンバー支持部上に載置されるときに、伝導部を損傷する危険性(可能性)なしに、瞬時かつ容易に形成されることができる。同様に、交換可能な構築チャンバーと構築チャンバー支持部の間の電気的な接続は、交換可能な構築チャンバーが構築チャンバー支持部から取り外されたときに、容易に遮断されることができる。従って、接触装置を具備した三次元ワークピース製造装置においては、その装置内の様々な位置の間での交換可能な構築チャンバーの移動が、特に効率的な方法で実行されることができ、その装置は信頼性が高く、保守(メンテナンス)業務を低減しつつ稼働させることができる。
【0013】
接触装置の好ましい実施態様においては、第1の接触部は、第1の電気伝導部に設けられた第1の平坦な導電面が交換可能な構築チャンバーの底面の領域に配置されるように、交換可能な構築チャンバーに固定される。第2の接触部は、好ましくは、第2の電気伝導部に設けられた第2の平坦な導電面が構築チャンバー支持部の支持面の領域内に配置されるように、構築チャンバー支持部に固定される。接触装置のこの設計は、交換可能な構築チャンバーと構築チャンバー支持部の間の電気的な接続が交換可能な構築チャンバーを構築チャンバー支持部の上に単に降ろすことによって特に容易に形成されることを可能にする。同様に、交換可能な構築チャンバーと構築チャンバー支持部の間の電気的な接続は、構築チャンバー支持部から交換可能な構築チャンバーを単に持ち上げることによって、遮断されることができる。
【0014】
第1の接触部は、第1の電気伝導部を収容するための少なくとも1つの凹部が設けられた基盤部を備えていてもよい。第1の接触部が1を超える第1の電気伝導部を備えている場合は、第1の接触部の基盤部には複数の凹部が設けられていてもよく、各々の凹部は第1の電気伝導部をそれぞれ収容するように適合される。それに加えて、又はそれに代えて、第2の接触部は、第2の電気伝導部を収容するための少なくとも1つの凹部が設けられた基盤部を備えていてもよい。第2の接触部が1を超える第2の電気伝導部を備えている場合は、第2の接触部の基盤部には複数の凹部が設けられていてもよく、各々の凹部は第2の電気伝導部をそれぞれ収容するように適合される。
【0015】
第1の電気伝導部は固定された伝導部でよい。すなわち、第1の電気伝導部は、その第1の平坦な導電面が基盤部の表面と同じ高さで配置され、かつ、第1の平坦な導電面と交換可能な構築チャンバーの間の電気的な接続が連続的に形成された状態で第1の接触部の基盤部に固定的に取り付けられてもよい。しかしながら、第1の電気伝導部は第1の接触部の基盤部に対して、第1の位置と第2の位置の間で移動可能であることも考えられる。第1の電気伝導部がその第1の位置に配置されるとき、第1の電気伝導部に設けられた第1の平坦な導電面は、基盤部の表面から突き出していてよい。反対に、第1の電気伝導部がその第2の位置に配置されるとき、第1の電気伝導部に設けられた第1の平坦な導電面は、基盤部の表面と同じ高さで配置されてよい。
【0016】
基本的に、第2の電気伝導部も固定された伝導部でよい。すなわち、第2の電気伝導部は、その第2の平坦な導電面が基盤部の表面と同じ高さで配置され、かつ、第2の平坦な導電面と構築チャンバー支持部の間の電気的な接続が連続的に形成された状態で第2の接触部の基盤部に固定的に取り付けられてもよい。しかしながら、それに代わり、第2の電気伝導部に設けられた第2の平坦な導電面が基盤部の表面から突き出る第1の位置と、第2の電気伝導部に設けられた第2の平坦な導電面が基盤部の表面と同じ高さで配置される第2の位置との間で、第2の接触部の基盤部に対して移動可能である第2の電気伝導部を第2の接触部に設けることも考えられる。
【0017】
移動可能な第1の電気伝導部は、付勢手段によってその第1の位置に偏らされていてもよい。同様に、移動可能な第2の電気伝導部も、付勢手段によってその第1の位置に偏らされていてもよい。第1及び/又は第2の電気伝導部に加えられる付勢力により、第1及び/又は第2の電気伝導部は第1の位置に動かされて、第1及び第2の平坦な導電面が接触されたときに、第1の接触部の第1の電気伝導部に設けられた第1の平坦な導電面と第2の接触部の第2の電気伝導部に設けられた第2の平坦な導電面の間に信頼性の高い電気的な接続が形成され得ることが確実となる。付勢手段は、例えば、ばねの形態で設計されてよく、第1又は第2の電気伝導部には約14Nのばね力を加えるのが適切とされてよい。
【0018】
接触装置は、固定された第1の伝導部と固定された第2の伝導部、又は、移動可能な第1の伝導部と移動可能な第2の伝導部を備えていてよい。さらに、接触装置に1つの固定された伝導部と1つの移動可能な伝導部を備えることも考えられる。この接触装置においては、第1の伝導部は移動可能な設計であることが好ましい。
【0019】
複数の原料粉末層に電磁放射線又は粒子放射線を照射することによって三次元ワークピースを製造する装置は、照射手段を有している。照射手段は少なくとも1つの放射源、特にレーザー光源と、放射源によって放出される放射ビームを誘導し、及び/又は処理する少なくとも1つの光学ユニットを備えている。光学ユニットは、例えば、対物レンズ、特にf−θレンズ、及びスキャナユニットのような光学部品を備えていてよく、スキャナユニットは回折光学素子や偏向ミラーを備えることが好ましい。さらに、装置は、プロセスチャンバー内に制御された雰囲気、特に、不活性の雰囲気を形成及び維持可能とするために、周囲の雰囲気に対して密封し得るプロセスチャンバーを有する。
【0020】
交換可能な構築チャンバーはプロセスチャンバーに隣接して配置されるように適合される。特に、交換可能な構築チャンバーは、装置内の異なる複数の位置、例えば、プロセスチャンバーに隣接する稼働位置、交換位置、及び/又は、前後処理位置に配置されるように適合されてもよい。装置はさらに、原料粉末のみならず、プロセスチャンバー内で累積的な積層プロセスによってキャリア上の原料粉末から作製されるワークピースをも受けるキャリアを有する。原料粉末は粉末塗布手段によってキャリアに塗布されてよく、好ましくは、金属粉末、特に金属合金粉末であるが、セラミック粉末又は異なる複数の原料を含む粉末でもよい。粉末は、どのような適切な粒子の大きさ又は粒子の大きさの分布を有していてもよい。しかしながら、100μm未満の大きさの粒子の粉末を処理することが好ましい。キャリアはプロセスチャンバー内にワークピースが作製される際にその高さの増加を相殺するために、また、累積的な積層プロセスによってプロセスチャンバー内に作製されたワークピースを交換可能な構築チャンバー内へ移すために、プロセスチャンバーに対して構築チャンバー内に移動可能である。
【0021】
装置はさらに、交換可能な構築チャンバーを支持するように適合された構築チャンバー支持部を有している。構築チャンバー支持部は、交換可能な構築チャンバーを所望の位置で保持するのに適切である限りは、三次元ワークピースの製造装置内のどの場所に配置されてもよい。
【0022】
第1の接触部は交換可能な構築チャンバーに固定されており、少なくとも1つの第1の電気伝導部を具備している。第1の電気伝導部には、第1の平坦な導電面が設けられている。第2の接触部は構築チャンバー支持部に固定されており、少なくとも1つの第2の電気伝導部を具備している。第2の電気伝導部には、第2の平坦な導電面が設けられている。第1の接触部の第1の電気伝導部に設けられた第1の平坦な導電面と第2の接触部の第2の電気伝導部に設けられた第2の平坦な導電面は、交換可能な構築チャンバーを構築チャンバー支持部上に支持するときに、交換可能な構築チャンバーと構築チャンバー支持部との間で電気的な接続が形成されるように、相互に作用するように適合される。
【0023】
接触装置に関して上述した全ての特徴、特に、交換可能な構築チャンバー、構築チャンバー支持部、第1の接触部及び第2の接触部についての特徴は、三次元ワークピース製造装置にも備わっていてよい。
【0024】
構築チャンバー支持部は、プロセスチャンバーに隣接する稼働位置に配置されている間、交換可能な構築チャンバーを支持するように適合されてよい。
【0025】
好ましい実施態様において、装置はさらに、交換可能な構築チャンバーがその稼働位置においてプロセスチャンバーに隣接して配置される前又は後に、交換可能な構築チャンバーを収容するように適合された前処理/後処理部(前後処理部)を具備している。前後処理部は、例えば、交換可能な構築チャンバーから余剰の原料粉末を排出する余剰粉末排出部、作製されたワークピースを交換可能な構築チャンバーから取り外すワークピース取り外し部、及び交換可能な構築チャンバーが装置のプロセスチャンバーに隣接する稼働位置に戻されるまで、交換可能な構築チャンバーを保管する保管部を有してもよい。
【0026】
特に好ましい実施態様において、装置の前後処理部は、交換可能な構築チャンバーが加熱部に収容されている間に交換可能な構築チャンバーを加熱するための加熱手段が設けられた加熱部を有している。加熱部は、交換可能な構築チャンバーがプロセスチャンバーに隣接する稼働位置へ移動される前に、所望の温度まで、空の交換可能な構築チャンバーを加熱するために用いられてよく、プロセスチャンバー内で作製されたワークピースを連続的に収容するために用いられてよい。しかしながら、ワークピースが加熱部内に収容されている間、交換可能な構築チャンバーとワークピースを徐冷するために、交換可能な構築チャンバーを加熱するために加熱部を用いて、それにより、室温まで徐冷される際のワークピース内の熱応力の発生を低減することも考えられる。
【0027】
加熱部を備える前後処理部を有し、複数の原料粉末層に電磁放射線又は粒子放射線を照射することによって三次元ワークピースを製造する装置は、上述した接触装置とは別に請求されてもよい。加熱部を備える前後処理部に加え、装置は、上述した特徴を備え得る照射手段、プロセスチャンバー、プロセスチャンバーに隣接して配置されるように適合された交換可能な構築チャンバー、及び原料粉末のみならずプロセスチャンバー内で累積的な積層プロセスによってキャリア上の原料粉末から作製されるワークピースをも受けるキャリアを有してよい。キャリアは、累積的な積層プロセスによってプロセスチャンバー内に作製されたワークピースを交換可能な構築チャンバーへ移すために、プロセスチャンバーに対して交換可能な構築チャンバー内に移動可能とされてよい。必要ならば、装置は上述した接触装置を有していてよく、すなわち、装置は上述した第1の接触部と上述した第2の接触部とを有していてよい。
【0028】
基本的に、本発明の三次元ワークピース製造装置は、構築チャンバー支持部を1つだけ有している。上記したように、前記構築チャンバー支持部はその稼働位置において、交換可能な構築チャンバーを支持するように適合されてよい。しかしながら、交換可能な構築チャンバーが加熱部内に配置されている間、交換可能な構築チャンバーを支持するように適合された構築チャンバー支持部を装置に備えることも考えられる。第1及び第2の接触部を作用させることによって、交換可能な構築チャンバーは、それを加熱するために、加熱部、特に加熱部の加熱手段と電気的に接続されてもよい。もちろん、装置は、例えば、稼働位置において交換可能な構築チャンバーを支持するように適合された第1の構築チャンバー支持部と、加熱部に配置されている間に交換可能な構築チャンバーを支持するように適合された第2の構築チャンバー支持部のような、複数の構築チャンバー支持部を備えていてもよい。
【0029】
複数の原料粉末層に電磁放射線又は粒子放射線を照射することによって三次元ワークピースを製造する装置を稼働する方法において、累積的な積層プロセスによって装置内に作製されるワークピースを受けるように適合された交換可能な構築チャンバーが準備される。少なくとも1つの第1の電気伝導部を備える第1の接触部が交換可能な構築チャンバーに固定される。第1の電気伝導部には、第1の平坦な導電面が設けられる。さらに、交換可能な構築チャンバーを支持するように適合された構築チャンバー支持部が準備される。少なくとも1つの第2の電気伝導部を備える第2の接触部が構築チャンバー支持部に固定される。第2の電気伝導部には、第2の平坦な導電面が設けられる。構築チャンバー支持部上に交換可能な構築チャンバーを配置し、それにより、第1の接触部の第1の電気伝導部に設けられた第1の平坦な導電面と第2の接触部の第2の電気伝導部に設けられた第2の平坦な導電面とが作用することを可能にして、交換可能な構築チャンバーと構築チャンバー支持部の間で電気的な接続が形成される。
【0030】
接触装置、特に、交換可能な構築チャンバー、構築チャンバー支持部、第1の接触部、及び第2の接触部に関して上述された全ての特徴は、三次元ワークピース製造装置の稼働方法にも適用されてよい。
【0031】
方法の好ましい実施態様においては、構築チャンバー支持部は、装置のプロセスチャンバーに隣接して配置されている間、交換可能な構築チャンバーを支持する。
【0032】
交換可能な構築チャンバーは、装置の前後処理部の加熱部内に収容されている間、加熱されてよく、前後処理部は交換可能な構築チャンバーが装置のプロセスチャンバーに隣接して配置される前又は後に、交換可能な構築チャンバーを収容するように適合される。
【0033】
構築チャンバー支持部は、加熱部内に配置されている間、交換可能な構築チャンバーを支持してもよい。
【0034】
添付された概略図を参照して本発明の好ましい態様を以下でより詳細に説明する。