【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、本発明によれば、請求項1に係る基礎アンカー、及び、請求項13に係る、基礎アンカーとコンクリート基礎との間の結合構造によって、解決される。
【0012】
具体的には、上記課題は、コンクリート基礎に大型機械を非確動的に係留するための基礎アンカーであって、少なくとも1つの側壁を有するアンカーケーシング(アンカーボックス)と、該アンカーケーシングに取り付けられた複数個のアンカーロッドとを含み、そのアンカーケーシングは、据え付けボルトにより大型機械を据え付けるための据え付け部を有し、前記側壁から複数のアンカーロッドへ、アンカーロッドの縦軸の方向に基本的に直線状で力が伝わるように、アンカーロッドが前記側壁と結合されており、アンカーロッドは、アンカースリーブ(アンカーソケット)を介して前記側壁に結合されている、基礎アンカーによって、解決される。
【0013】
さらに、本発明の課題は、具体的には、大型機械を非確動的に係留する上記のような基礎アンカーと該基礎アンカーを埋設するコンクリート基礎との結合構造であって、アンカーケーシングの少なくとも大部分がコンクリートによって包囲され且つアンカーロッドが完全にコンクリートによって包囲されるように、基礎アンカーがコンクリート基礎に埋設されている結合構造によって、解決される。
【0014】
本発明によれば、アンカーロッドが側壁にアンカースリーブを介して結合されている。例えば、アンカーロッドはアンカースリーブにねじ結合される。アンカーロッドとアンカースリーブとを整列させて結合することによって、アンカーロッドとアンカースリーブとを結合させると、アンカーロッドはアンカーケーシングに対し有効に整列する。従って、本発明によれば、例えばアンカーロッドをアンカーケーシングに即時に結合する必要はなく、省スペースで正確な方法で基礎アンカーを準備することが可能になる。例えば、本態様に係るアンカースリーブを備えたアンカーケーシングは工場で準備することができ、現場で設置する際に初めて、即ち、現場でコンクリート基礎に埋め込む際に初めて、アンカーロッドをアンカースリーブに結合するようにできる。これにより、取り扱いの容易性及び輸送の容易性が改善される。
【0015】
本発明によれば、基礎アンカーのアンカーロッドは、基本的に側壁の平面内においてアンカーロッドの軸線方向へ直線的に力を分散させるような方法で、側壁に追加的に結合される。したがって、コンクリート基礎に分散させるべき力がアンカーケーシングからアンカーロッドへ伝達されていく前に、力の進路を変える必要がない。アンカーロッドに分散される力は、基本的に圧縮及び引張応力として伝達され、不利益な曲げ応力は回避される。
【0016】
例えば従来技術の幾つかの例で知られている横材を不要にできるので、構造上のスペースの縮小及び基礎アンカー総重量の低減がもたらされる。また、このことは、重量対効果比の改善につながる。したがって、比較的大きい負荷を、構造上省スペースでコンクリート基礎へ分散させることができる。
【0017】
コンクリート基礎へ直線的、非確動的に力を分散することで、さらに、基礎アンカーの無負荷のプレストレスによって生じ得るクリープ効果の回避が可能になる。プレストレスが存在する間、コンクリート基礎は、一般的に体積減少を伴うエージングプロセスに曝されるため、コンクリート基礎内の基礎アンカーが無負荷状態で有しているプレストレスの低下も生じ得る。このようなプレストレスは、例えば次の場合に提供される。即ち、アンカーロッドがコンクリート基礎を貫通していて、対抗するプレストレスを与えられてアンカーケーシングとは反対側の端に無負荷でねじ結合される場合である。
【0018】
基礎アンカーとコンクリート基礎との間の本発明による結合構造は、アンカーケーシングの少なくとも大部分がコンクリートによって包囲され且つアンカーロッドが完全にコンクリートによって包囲されるように、構成されている。コンクリート内に完全に埋設されているので、アンカーロッドがコンクリート基礎への力の分散を最終的に担い、発生する負荷の非確動的な分散を可能にする。また、アンカーロッドがプレストレスを受けていないので、クリープ効果を回避することができる。
【0019】
本発明によって設けられるアンカーケーシングは、大型機械を据え付けボルトにより据え付けるための据え付け部を有する。この据え付け部は、アンカーケーシングの受入部分に設けることが好ましい。該受入部分は、アンカーケーシング内に設けられていて、適切な開口を通してアクセスできる。
【0020】
本発明に係る基礎アンカーの一態様によれば、アンカーケーシングにおけるアンカーロッドの配置は、基礎アンカーの負荷軸に対して対称である。この対称配置によって、アンカーロッドに伝達される部分的負荷が一様に分配される。さらに、このような対称配置によって、基礎アンカーにおける過大な応力を回避することができるので、損傷の可能性は全般に少なくなる。
【0021】
この態様の一例によると、アンカースリーブの縦軸に対し直交して延びる接続線が、アンカースリーブの縦軸を横断する断面において、アンカースリーブの重心を通り、アンカースリーブの溶接継ぎ目を通って延びるようにして、アンカースリーブは、側壁に溶接されている。この態様によれば、例えば、コンクリート基礎への非対称的な力の分散を生じさせ得る局所的な偏心による他の付加的な応力を回避することができる。このような局所的な偏心が存在すると、非常に強い負荷を分散させるときに基礎アンカーの損傷確率が増す可能性がある。
【0022】
本発明に係る基礎アンカーの他の態様によると、側壁は、アンカーロッドすなわちアンカースリーブを収容するための切欠き部を有する。この切欠き部があれば、アンカーロッドへ力を分散する平面を適切に設定することができる。例えばアンカーロッドの軸線が側壁の平面と重なるように、当態様に係る切欠き部にアンカーロッドを挿入することにより、該側壁からアンカーロッドへ最適な手法で力を伝達することが可能になる。特に、適切に寸法設計した切欠き部を設けることによって、基礎アンカーにおける曲げ応力の発生を減少させることができる。
【0023】
別の態様によれば、アンカーケーシングは、少なくとも1つの側壁に剛性接続された天板を有し、該天板が、据え付け部に入力される力を側壁へ伝達する。すなわち、据え付け部に入力される力は、先ず天板に伝達され、該天板が、発生する力を最適な手法で側壁に分散させる。これにより、側壁へ効果的に力を分散することが可能になる。
【0024】
この態様の一例によると、天板は、少なくとも1つの周縁溶接継ぎ目、好ましくは二重の周縁溶接継ぎ目を介して、側壁に剛性接続されている。この例による周縁溶接継ぎ目は、閉成された溶接継ぎ目、例えば、環形の閉成溶接継ぎ目や方形の閉成溶接継ぎ目に該当する。この目的のために、天板は、例えば、アンカーケーシングの適切に成形された開口に挿入され、少なくとも1つの周縁溶接継ぎ目によってアンカーケーシングの側壁に接続される。これにより、天板に作用する力は最適手法で側壁の全域に伝達され、力が効果的に側壁へ分散される。二重の周縁溶接継ぎ目を形成した場合、天板と側壁との格段に強固な接続が得られる。
【0025】
本発明の別の態様によれば、据え付け部は球面座金及び球面ナットを有し、大型機械を据え付けるために、据え付けボルトがその球面ナットにねじ結合される。この場合に、大型機械の据え付けボルトは、球面座金の自由開口を通し案内されて、球面ナットの適切寸法とした雌ねじに、ねじ結合される。据え付けボルトによって伝達される力は、球面ナットに伝達され、続いて球面座金へ伝達される。当該部位の球面座金は、この力をさらに、球面座金が収容されているアンカーケーシングへ伝達する。球面ナットと別部品の球面座金とを設けてあれば、両者が例えば互いに向きを変えることによって、角度誤差が有効に補償される。
【0026】
この態様の一例によれば、大型機械の据え付けボルトを据え付け部に締め込むと、球面ナットと球面座金とが押圧接触し、さらにこの球面座金と天板とが押圧接触する。したがって、力は先ず球面ナットに伝達され、この球面ナットから球面座金へ、そしてこの球面座金から天板へ伝達される。据え付けが完了すると、球面座金はアンカーケーシング内において内側から天板を押圧し、天板は、アンカーケーシングの側壁に、コンクリート基礎から離れる方向に向いた引張力を印加する。
【0027】
本発明の派生態様によれば、球面ナットが盛り上がった中央部分を有し、該中央部分が球面座金のくぼみに係合することにより、両者は押圧接触により互いに対し角度をつけて位置決めすることが可能である。これにより、球面座金に対して球面ナットが傾いて位置決めされた場合でも、球面ナットから球面座金へ力を確実に伝達する押圧接触が生成される。この傾斜位置決めが可能なことによって、例えば、据え付け部に対し予め定められた角度でしか据え付けボルトを挿入して据え付けることができない場合に生じる角度誤差を、補償することができる。したがって同時に、大型機械において据え付けボルトが有する角度公差も補償することができる。
【0028】
本発明の好適な態様によれば、球面座金及び球面ナットは、アンカーケーシングに収容されており、アンカーケーシングの少なくとも1つの側壁に向かって、この側壁に対し交差する方向でずらすことができる。特に、好ましくは少なくとも20mm、最適には少なくとも25mm、ずらすことができる。この態様によると、具体的には、アンカーケーシングに収容されている球面座金と球面ナットの両方が側方に遊びを持ち、側壁に対して交差する方向にずらすことによってずれの誤差を補償することができる。具体的には、このずれの誤差は20mm、あるいは25mmにもなり得る。したがって、大型機械におけるボルト装置が有する製造公差も補償することができる。
【0029】
具体的には、天板は、大型機械の据え付けボルトに関するこのようなずらしを可能にする直径を持った開口を有するとよい。天板が有するこの開口の直径は、予め定められたずれ値に応じて、据え付けボルト自体の直径に比較して大きく形成する。
【0030】
本発明の他の態様によれば、アンカーケーシングは、互いに溶接された、特に、隅肉溶接の継ぎ目により互いに結合された、複数の側壁、好ましくは4つの側壁を有する。具体的には、アンカーケーシングは、容易に実施可能な溶接工程で互いに結合可能である、平板から製造するのがよい。また、複数の側壁は構造鋼板から作ることができ、この場合、製造工程は、従来の工業的製法を使用して低コストで実施できる。隅肉溶接の継ぎ目による複数の側壁の溶接は、格別に強固な部品結合を保証すると共に、局所的に形成される偏心をこれによっても回避することができる。
【0031】
本発明による基礎アンカーの他の有益な態様によれば、アンカーロッドは、その縦方向の少なくとも一部にわたって、好ましくは縦方向の全長にわたって、ねじ山を有する。このねじ山は、アンカーロッドを、アンカーケーシングに付属の適切な雌ねじ付きアンカースリーブに対して接続するのに使用される。これら2部品は、互いにねじ込むだけで結合できる。さらに、当該ねじ山は、コンクリート基礎への埋設時に有益なアンカー構造を形成する、アンカーロッド表面の効果的な突起になる。本アンカーロッドはコンクリートがねじ山にかみ合うようにコンクリート内に埋め込まれ、したがってアンカーロッドは、非確動的にコンクリート基礎に包囲されている。ねじのピッチの適切な選択によってアンカー深さを調整することができる。
【0032】
本発明の一態様によると、アンカーロッドはプレストレス鋼材製である。プレストレス鋼材は、異常動作時に発生し得る引張力を吸収するのに最適である。これによると、基礎アンカーによって安全にコンクリート基礎へ分散される力を、従来の構造鋼材に比べて著しく増大させることができる。
【0033】
本発明の一態様によると、アンカーロッドは、少なくとも1500mm、好ましくは少なくとも2500mmの長さを有する。この長さは、コンクリート基礎内の基礎アンカーの損傷を心配することなく十分安全にコンクリート基礎へ異常負荷をも分散できるようにする、十分な長さである。具体的に例えば、作動トルク、軸方向引張力、熱膨張負荷、配管負荷、又は不均衡負荷といった運転負荷を、十分にコンクリート基礎へ分散させることができる。そして、例えば蒸気タービンの翼破損時や地震などで発生するような異常によりかかる負荷であっても安全にコンクリート基礎へ分散できる。
【0034】
本発明の一態様によれば、アンカーロッドは、アンカーケーシングとは反対側の末端をそれぞれ端板によって終端させてある。端板は、アンカーロッドと一緒に完全にコンクリートに埋設される。
【0035】
端板が幾何学的に広がっていることにより、この端板がさらなるアンカー抵抗を提供するので、基礎アンカーは、大きな引張力が生じた際に該引張力に抵抗することができる。アンカーロッドは末端スリーブ(ソケット)とねじ結合されており、該末端スリーブが端板を取り付けるために使用される。一例では、単体の端板が末端スリーブと適宜溶接され、該末端スリーブがアンカーロッドの先端にねじ結合される。また、本態様に係る端板を設けることにより、個々のアンカーロッドの互いに対する長さを適宜調整することもできる。このような調整により、アンカーケーシングの高さと姿勢を適宜変更することができるので、コンクリート基礎内に基礎アンカーを挿入する際に有益である。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、基礎アンカーに支持部材が付加されており、この支持部材は、コンクリート基礎の下に配設された台座を支えとして基礎アンカーを支持するように、アンカーケーシングの少なくとも1つの側壁と協働する。当該支持部材は、好ましくは、アンカーケーシングの側壁と直接接触して支持するようにアレンジされた棒材として実施される。このような支持部材は、特に、コンクリート基礎の厚さがアンカーロッドの長さを越えている場合に、当該コンクリート基礎内埋設時に基礎アンカーを一時的に支持することを第一に可能にする。これにより、基礎アンカーは、アンカーロッドが台座に接していなくとも、コンクリート基礎内埋設時に、適切な姿勢で整列するように台座で支持される。
【0037】
本発明に係る基礎アンカーの好適な態様によれば、基礎アンカーは、少なくとも10kN/kg、好ましくは少なくとも13kN/kg、好適には15kN/kg、の荷重性能(耐性)を有する。これにより、比較的軽い重量の基礎アンカーで、大きな負荷であっても効果的にコンクリート基礎へ分散させることができる。加えて、本態様による基礎アンカーの重量低減は、材料費に関して十分なコスト節減をもたらす。
【0038】
基礎アンカーとコンクリート基礎との結合構造に関する本発明の好ましい態様によれば、ダメージを受けることなく、少なくとも2000kN、好ましくは2500kNの力を吸収してコンクリート基礎へ分散させる基礎アンカーが、提供される。これにより、大型の工業用機械における異常負荷でも有効に損傷のリスク無しで、コンクリート基礎へ移すことができる。したがって、このような機械の異常時の安全な運転が保証される。
【0039】
本発明による結合構造の他の態様によれば、アンカーケーシングとコンクリート基礎との間の隙間は、低収縮性のグラウト材を注入して埋めてある。その低収縮性によって、アンカーケーシングの全側面をコンクリートによって非確動的に包囲することが保証される。したがって、アンカーケーシングのどの高さでもコンクリートに作用する横方向の適切な偶力によって、偏心負荷によるモーメントも中心に合わせることができる。この態様の一例によれば、コンクリート基礎内において、基礎アンカーの全体を適切な低収縮性グラウト材によって取り囲むこともできる。例えば、このようなグラウト材は、PAGEL V1-50である。