【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様では、処理済み液が含有する有機物をより少なくすることができる水性有機廃液を処理する装置が提供され、該装置は、
多孔質膜によって隔てられた第1処理ゾーン及び第2処理ゾーンを規定する処理リザーバと、
第1処理ゾーン及び第2処理ゾーンに設けられており、電気化学的再生が可能な炭素系吸着性物質と、
第1処理ゾーン及び第2処理ゾーンの各々に含まれる水性有機廃液中に、炭素系吸着性物質を分散するように機能するアジテータ(agitator)と、
第1処理ゾーン内の炭素系吸着性物質と動作可能に接続する第1電流フィーダと、第2処理ゾーン内の炭素系吸着性物質と動作可能に接続する第2電流フィーダと、
第1電流フィーダ及び第2電流フィーダを作動して、第1処理ゾーン及び第2処理ゾーン内の炭素系吸着性物質中に電流を一方向に流して、第1処理ゾーン及び第2処理ゾーンのうちの一方における炭素系吸着性物質を再生し、その後、第1処理ゾーン及び第2処理ゾーンの炭素系吸着性物質に印加される電流の方向を反転させて、第1処理ゾーン及び第2処理ゾーンのうちの他方における炭素系吸着性物質を再生するコントローラと、
を備えている。
【0010】
本発明の第2態様では、処理済み液が含有する有機物をより少なくできる水性有機廃液の処理方法が提供され、該方法は、
処理リザーバの第1処理ゾーン及び第2処理ゾーン中に水性有機廃液を入れる工程であって、第1処理ゾーン及び第2処理ゾーンは、多孔質膜によって隔てられており、各処理ゾーンは、電気化学的再生が可能な炭素系吸着性物質を含む工程と、
各処理ゾーン内の水性有機廃液中に炭素系吸着性物質を分散する工程と、
各処理ゾーン内で炭素系吸着性物質を沈下させる(settling)工程と、
第1処理ゾーン及び第2処理ゾーンにそれぞれ動作可能に接続する第1電流フィーダ及び第2電流フィーダを作動して、各処理ゾーンの炭素系吸着性物質中に電流を一方向に流して、第1処理ゾーン及び第2処理ゾーンのうちの一方における炭素系吸着性物質を再生する工程と、
第1電流フィーダ及び第2電流フィーダを作動して、第1処理ゾーン及び第2処理ゾーン内の炭素系吸着性物質に印加される電流の方向を反転させて、第1処理ゾーン及び第2処理ゾーンのうちの他方における炭素系吸着性物質を再生する工程と、
を含んでいる。
【0011】
本発明の第1態様及び/又は第2態様の好ましい実施形態の装置及び方法は、焼却又はその他の不所望の先行技術の処理オプションを用いずとも、放射性核種を含有する水性有機廃棄物の処理に適合できる。このように、水性有機廃棄物の有機成分に含まれる放射性核種は、有機成分の酸化直後に、水性相に移される。放射性核種の水溶液を処理するのに許容可能な技術が既に利用可能なので、本発明の装置及び/又は方法を用いることによって、生じた二次放射性廃棄物は、従来の方法を用いて首尾よく、且つコスト効率よく処理される。さらに、吸着性物質の再生は、放射活性のある汚染二次廃棄物を最小にすることを確実とする。従って、好ましい実施形態では、水性有機廃液は、放射性種を含有しており、放射性種は好ましくは、処理済み液中に存在する。従って、本発明は、国際公開第2010/149982号に記載されるプロセス以外の現実的な処理オプションが以前になかった放射性有機廃棄物の汚染除去を、溶液に与えるものである。
【0012】
処理済み液は、含有する有機成分の濃度がより低くなっており、1つ又は複数のさらなる処理サイクルを受けてもよいし、処理リザーバから取り出されてもよい。本発明の第1態様及び/又は第2態様の装置及び/又は方法の作用は、処理タンクにおける低いpH(この種の処理プロセスにとって最適なpHレベルである)の維持を可能とする。さらに、低いpH条件は、放射性核種を含有する有機廃棄物を処理する場合に好ましい。なぜなら、多くの放射性核種が、中性又はアルカリ条件よりも酸性条件において溶解しやすいためである。
【0013】
本発明の第1態様は、水性有機廃棄物の処理装置を提供するものであり、そのような廃棄物の個々の量を、連続プロセスではなくバッチプロセスで処理するのに極めて適している。処理リザーバは、タンク又はチャンバの形態であってよい。処理リザーバの下部は、水平方向の断面積が、処理リザーバの上部のものよりも小さくなるように規定されてよく、これにより、撹拌後の炭素系吸着剤の沈下が促進される。第1処理ゾーン及び第2処理ゾーンは、処理リザーバに対して、そして互いに対して任意の所望される位置に設けられるように、処理リザーバ内で規定されてよいが、多孔質膜が2つの処理ゾーン間に界面を規定することを条件とする。勿論、処理リザーバは、隣接する処理ゾーン間に界面を規定する多孔質膜と共に2つ以上の処理ゾーンを規定してよい。多孔質膜は、炭素系吸着性物質が第1処理ゾーンと第2処理ゾーンの間を通過することを防止するが、水及び/又はイオン種が第1処理ゾーンと第2処理ゾーンの間を通過できるように構成されてよい。好ましい実施形態において、処理リザーバは、並列された又は並べられた、電気化学的再生が可能な炭素系吸着性物質の2つのベッドを備える。各処理ゾーンには、各処理ゾーンに含まれる炭素系吸着性物質を撹拌する専用アジテータが設けられてよい。アジテータは、炭素系吸着性物質を流動化させるように構成されてよい。各アジテータは好ましくは、各処理ゾーンの壁、好ましくは基部によって規定される1つ又は複数のノズル、入口又は開口を備えており、これらを通って、加圧下の流体が、各処理ゾーンで保持される炭素系吸着性物質へと入る。アジテータは好ましくは、さらに、チャンバを処理リザーバの下側に備えており、これが、1つ又は複数の入口とポンプとを規定して、加圧下の流体が、入口を通して送られる。流体は、空気、及び/又は処理を必要とする水性有機廃液であってよい。
【0014】
本発明の第2態様は、水性有機廃棄物の処理方法を提供する。電流が吸着性物質のベッドを通して供給される場合、正の電流フィーダに隣接するベッドは、アノードとして機能すると考えられ、負の電流フィーダに隣接するベッドは、カソードとして機能すると考えられる。この第1方向に印加される電流を十分な期間維持することが好ましく、これにより、吸着性物質に吸着された、水性有機廃棄物由来の有機成分を酸化させることによって、吸着性物質を再生させる。このプロセス中に、水性プロトンが、アノードとして機能するベッドにおいて生じ、水性水酸化物イオンが、カソードとして機能するベッドにおいて生じる。印加される電流の方向が反転すると、以前は正であった電流フィーダが負の電流フィーダに、そして以前は負であった電流フィーダが正に切り替わる。結果として、以前にアノードとして機能した吸着性物質のベッドが、今度はカソードとして有効に機能し、そして以前にカソードとして機能したベッドが、今度はアノードとして機能する。これにより今度は、アノードとして作用するベッド内の吸着性物質上に吸着された、液体由来の有機成分が酸化されて、そのベッド内の吸着性物質が再生される。
【0015】
炭素系吸着性物質を水性有機廃液中に分散する工程と、炭素系吸着性物質を沈下させる工程とを、1回又は複数回繰り返して、水性有機廃液から有機物を取り出してから、第1電流フィーダ及び第2電流フィーダを作動して、炭素系吸着性物質に印加される電流の方向を反転させてよい。
【0016】
代替的に又は加えて、炭素系吸着性物質を水性有機廃液中に分散する工程と、炭素系吸着性物質を沈下させる工程とを、1回又は複数回繰り返して、水性有機廃液から有機物を取り出してから、処理リザーバから処理済み液を取り出してよい。
【0017】
好ましくは、分散工程及び沈下工程の各サイクルは、1乃至60分間にわたってなされる。複数回のサイクルが用いられる場合、各サイクルは、同じ期間にわたってなされてよく、異なる期間が費やされてもよい。好ましい実施形態では、分散工程及び沈下工程の各サイクルは、約20分間にわたってなされる。
【0018】
炭素系吸着性物質の分散は、好ましくは、加圧下の流体を炭素系吸着性物質へと入れることによって達成される。任意の適切な流体が用いられてよく、例えば、流体は、空気及び/又は処理が必要な水性有機廃液を含んでよい。
【0019】
電流フィーダは、処理済み液において任意の所望されるpHを与えるように運転されてよい。例えば、アルカリpH、即ち、7を越えるpHを与えるように運転されてよい。或いは、好ましい実施形態では、電流フィーダは、処理済み液において酸性pH、即ち7未満のpHを、より好ましくは処理済み液において約1乃至4のpHを与えるように運転される。
【0020】
帯電した無機種が生じるのは、電流が、第1処理ゾーン及び第2処理ゾーン内の炭素系吸着性物質中を流れる間である。電流フィーダは、帯電無機種の、運転中の電流フィーダへの電着が最小となるように運転されてよい。
【0021】
好ましい実施形態において、第1電流フィーダ及び第2電流フィーダは、電流が、処理ゾーン内の炭素系吸着性物質中を一方向に流れるように1乃至240分間、及び/又は、他方向に流れるように1乃至240分間、運転される。電流は、各方向に、同様の期間、例えば約120分間、炭素系吸着剤中を流れてよく、5分間又は種々の期間が費やされてもよい。種々の期間が各方向について用いられる場合、電流が何れかの方向に印加される期間は、処理が達成されることとなる期間の全体を通して変わってもよいし、同じままであってもよい。
【0022】
第1電流フィーダ及び第2電流フィーダは、任意の適切な電流密度を、第1処理ゾーン及び第2処理ゾーン内の炭素系吸着性物質に印加して、吸着された有機物の所望される酸化レベルを達成するように運転されてよい。1乃至30mAcm
−2の電流密度が用いられてよく、より好ましくは約6乃至20mAcm
−2の電流密度、最も好ましくは約8mAcm
−2の電流密度が、電流フィーダによって、各処理ゾーン内の炭素系吸着性物質に印加されてよい。
【0023】
第1電流フィーダ及び第2電流フィーダは、任意の適切な電流を、第1処理ゾーン及び第2処理ゾーン内の炭素系吸着性物質に印加して、吸着された有機物の所望される酸化レベルを達成するように運転されてよい。1乃至10アンペアの電流が用いられてよく、一実施形態において、約5アンペアの電流が、電流フィーダによって、各処理ゾーン内の炭素系吸着性物質に印加されてよい。
【0024】
水性有機廃棄物を処理しながら、電流の方向を周期的に反転させる能力により、先行技術の方法と比較して、たとえそれが英国特許第2470042号及び国際公開第2010/149982号に記載される方法(それら自身、以前の方法よりも著しく進んでいる)であっても、著しい利点を有する方法が提供されることは理解されるであろう。
【0025】
上記のように、水性プロトン種が、アノードとして機能するベッドにおいて生じ、そして水性水酸化物種が、カソードとして機能するベッドにおいて生じる。運転中、水性のプロトン種及び水酸化物種は、処理を受けている液体中に分散されて、液体は最終的な酸性pHとなる。このpHは、本発明の第1態様及び第2態様のパフォーマンスにとって最適である。従って、本発明の第1態様及び第2態様により、装置は、外部の化学物質ドージングタンクがなくとも運転され得る。なぜなら、電流を周期的に反転させることで、処理システム内部で一定のpHが維持されるためである。化学物質ドージングタンクが取り除かれて、システムの複雑性が軽減され、装置が設置される部位に化学物質を送る必要がなくなり、そして処理プロセスに関連した二次廃棄物が最小にされる。
【0026】
先行技術に記載されたシステムに勝る本発明のシステムの別の利点は、種々の異なる材料が、第1処理ゾーンと第2処理ゾーンを隔てる多孔質膜又はディバイダ(divider)に用いられてよいことである。英国特許第2470042号及び国際公開第2010/149982号に記載されたシステムではカソードコンパートメント内の溶液は導電性が高いが、アノードコンパートメント内の溶液は導電性である必要はない。カソードコンパートメント内で高い導電性を維持するために、微細孔を有する多孔質膜材料は、カソードコンパートメント内で高濃度のイオン成分を維持する。微細孔の直径は必然的に小さいので、カソードコンパートメント内の溶液からアノードコンパートメント内の溶液中への急速なイオン成分の拡散は防止される。微細孔を有する好ましい材料は、アルカリ条件で不安定なことがあるので、処理プロセスの複雑性が増す。さらに、一般的に用いられる微細多孔質材料は、アノードコンパートメントからカソードコンパートメント中への水の浸透を防止することができず、これによりカソードコンパートメントにおいて、溶液の希釈及び容量増大がもたらされる。カソードコンパートメント内の溶液は、処理が終了すると二次廃棄物となるので、溶液の体積の増加は望まれない。本発明の第1態様及び第2態様では、処理ゾーンは双方とも吸着性物質を含んでおり、処理される水性有機廃棄物の量は、2つの処理ゾーンにわたって一様に分散されるので、「カソードコンパートメント」として有効に機能する処理ゾーン内の液体と、「アノードコンパートメント」として有効に機能する他の処理内の液体との混合に関する問題はない。結果的に、広範な種々の膜材料が、本発明の第1態様及び第2態様の装置及び方法において用いられ得るので、細孔直径がより大きな、より安定した材料が、必要に応じて用いられる。細孔直径がより大きな材料を用いる利点は、電気抵抗がより低くなるので、吸着性物質のベッド全体の電圧がより低くなることである。
【0027】
英国特許第2470042号及び国際公開第2010/149982号に記載される方法に勝る本発明の方法のさらなる利点は、隔離されたカソード液コンパートメントが存在せずとも、低い電力で運転できるので、運転コストが低いことである。低い電力での運転は、電流フィーダ間の電圧が低い結果である。電圧は、溶液の導電率と反比例する。先行技術に記載されたシステムでは、隔離されたカソード液システムは導電率が高いので、電流フィーダ間で低電圧が実現される。本発明においてカソード液システムを取り除いた影響として、電流フィーダ間の溶液の導電率の低下がある。しかしながら、「Electrochemical regeneration of a carbon−based adsorbent loaded with crystal violet dye」;N W Brown,E P L Roberts,A A Garforth and R A W Dryfe;Electrachemica Acta 49(2004)3269−3281において実証されているように、セル電圧は、電流密度(電極の単位面積あたりの電流の測定値である)に比例するので、電極の表面積と反比例する。本発明の「カソードコンパートメント」では、吸着性物質のベッドは、先行技術の方法において用いられるカソードと比較して、カソードとして有効に機能し、「カソード」の有効な表面積を顕著に増大させ、電流密度を下げるので、より低い電圧を実現する。結果的に、本発明は、分離したカソード液コンパートメントを必要とせずに、低い電力での運転を促進する。そうであるものの、吸着性物質のベッド全体で低電圧であるのが好ましいため、高い表面積カソードとして機能する吸着性物質のベッドに電解質を加えることが、さらに所望されてよい。本発明の第1態様及び第2態様は、電解質なしでの運転が可能であるが、必要に応じて、本発明の第1態様及び第2態様の装置及び方法を用いて達成可能な電圧を越えて、電解質を使用して印加電圧を下げることは否定されない。電解質の追加は、放射性有機廃棄物の処理について、随意選択的である。なぜなら、水が処理サイクルにおいて再利用されると、電解質の必要量は、例えば、解質が処理を受ける液体に継続的に加えられる必要があり得る連続システムと比較して極端に小さくなるためである。
【0028】
先行技術のシステム、特に英国特許第2470042号及び国際公開第2010/149982号に記載されたシステムに勝る本発明の第1態様及び第2態様の装置及び方法のさらなる利点は、以前に用いられた複雑な電極アセンブリの簡略化を可能とすることである。先に説明されるように、多くの先行技術のシステムは、シールされた不可分の1つの「ユニット」に構築された、微細多孔質膜、カソード、及び化学物質ドージングシステムからなる電極アセンブリを利用する。結果として、アセンブリの1つの部分に欠陥があれば、アセンブリ全体が、処理リザーバから取り外されて、置き換えられなければならない。さらに、カソード液コンパートメントのシーリングを考慮すると、一般的には、化学物質ドージングシステムによって扱われる水素が、電極アセンブリ内で増大するリスクもある。本発明の第1態様の装置では、上記のシールされた「ユニット」は、必須でない。なぜなら、化学物質ドージングシステムもないし、カソードコンパートメントを隔離する必要もないためである。さらに、第1処理ゾーン及び第2処理ゾーン内での水性液体の混合に又は吸着性物質の移動に関連した負の影響がないので、2つの処理ゾーン間に多孔質膜をシールする必要がない。現在用いられている複雑な、シールされた「ユニット」の代わりに、より簡素な多孔質膜を、吸着性物質の2つのベッド間に挿入することが可能である。一例では、500mm×500mmである多孔質膜は、通常約0.2kgの重さしかなく、システムの全体コストは、上述のシールされた「ユニット」の形態の電極アセンブリを備えるシステムよりも20倍ほど下回る。処理装置の任意の1つの部分に欠陥があれば、欠陥のあるアイテムは、個別に置き換えられればよく、全アセンブリを置き換えなくともよい。加えて、水素がアセンブリ内で増大するリスクが除外される。なぜなら、「カソード液コンパートメント」として機能する吸着剤のベッドを備える処理ゾーンは、もはや隔離される必要がないためである。
【0029】
英国特許第2470042号及び国際公開第2010/149982号に記載された方法に勝る本発明の第1態様及び第2態様の装置及び方法の別の利点は、水性有機廃液由来の電着無機成分の集積が、印加電流を周期的に反転させることによって減少する、又は除去されることである。結果として、第1方向への電流の印加中に電着した任意の無機成分は、電流が逆方向に印加されると、水性相に再溶解する。プロセスを最適化して、電流の方向が正しい時間間隔で反転することで、再生サイクルの個々のフェーズの間に、即ち任意の単一方向に電流を印加している間に電着する無機成分の部分的集積を減らす、又は回避することを確実とすることが所望されてよい。
【0030】
処理サイクルの吸着ステージ中に、吸着性物質のベッドは、十分な期間撹拌されて、吸着性物質を水性有機廃棄物内にて分散し、そこから有機成分を吸着する。撹拌期間の終わりに撹拌を止めて、材料のベッドを沈下させる。この沈下期間中に、吸着剤は水性有機廃棄物から分離することとなる。勿論、分離の程度は、与えられる時間の長さによって決まる。載荷した吸着性物質(即ち、吸着された有機成分を担持する吸着性物質)が沈下する間、及び/又はその後、電流が印加されて、吸着された有機成分を、「アノードコンパートメント」として有効に機能する処理ゾーンにおいて酸化させて、ガス産物及び水を生じさせることによって、吸着性物質を再生し、且つさらなる量の有機成分を吸着する能力を回復させる。処理されることになる水性有機廃棄物の汚染の程度によって、時間スケールを調整することが可能である。
【0031】
再生期間の種々のステージで、電流は調整されてよい。例えば、再生期間の初めに、載荷した吸着性物質の非常に薄い層のみが沈下する状況では、載荷した吸着性物質のかなりの量が沈下してしまう再生期間の後半よりも必要とされる電流は小さい。さらなる例として、再生期間の初めに、吸着性物質の粒子に有機成分が十分に積まれた状況では、吸着した有機成分のかなりの量が既に酸化されているであろう再生期間の後半よりも必要とされる電流は大きい。
【0032】
処理済み液の、処理リザーバからの取出しは、任意の都合の良い方法で達成されてよい。例えば、1つ又は複数のポンプを用いて、保管用の、又は任意の所望されるさらなる使用用の処理リザーバから処理済み液を流し出してよい。代替的に又は加えて、取出しは、処理リザーバと、保管タンク等の隣接するベッセルとの間にあるバルブ又はパーティションを制御することによって、達成されてよい。
【0033】
本発明のさらなる態様は、具体的には、水性有機廃棄物を処理する連続方法に向けられる。水性有機廃棄物の連続処理は、例えば水道水(utility water)の三次処理に、より商業的に適用できる。従って、処理済み液のpHは中性であることが好ましい。
【0034】
本発明の第3態様は、処理済み液が含有する有機物をより少なくできる水性有機廃液の連続処理装置を提供し、該装置は、
多孔質膜によって隔てられた第1処理ゾーン及び第2処理ゾーンを規定する処理リザーバと、
第1処理ゾーン及び第2処理ゾーンにおいて設けられており、電気化学的再生が可能な炭素系吸着性物質と、
第1処理ゾーン及び第2処理ゾーンの各々に水性有機廃液を選択的に入れて、炭素系吸着性物質を通過するほど十分に大きいが、炭素系吸着性物質を流動化させるのに必要とされる流量未満である流量で、各処理ゾーンにおいて炭素系吸着性物質と接触させるように動作可能なポンプと、
第1処理ゾーン内の炭素系吸着性物質と動作可能に接続する第1電流フィーダと、第2処理ゾーン内の炭素系吸着性物質と動作可能に接続する第2電流フィーダと、
第1電流フィーダ及び第2電流フィーダを作動して、第1処理ゾーン及び第2処理ゾーンの炭素系吸着性物質中に電流を一方向に流して、第1処理ゾーン及び第2処理ゾーンのうちの一方における炭素系吸着性物質を再生し、その後、第1処理ゾーン及び第2処理ゾーン内の炭素系吸着性物質に印加される電流の方向を反転させて、第1処理ゾーン及び第2処理ゾーンのうちの他方における炭素系吸着性物質を再生するコントローラと、
を備える。
【0035】
装置は、好ましくは、間隔を空けて配置された1つ又は複数の入口を備え、入口を通して、汚染された液体が、吸着性物質のベッドへと圧入される。装置は、吸着性ベッドを通る、対応する複数の別々の液体流路を確立するのに十分な間隔を空けて、複数の入口を備えてよい。複数の入口の間隔は、好ましくは、汚染物質を吸着した吸着性物質が流れる各液体流路の周りの領域が規定されて、吸着性物質の別々の循環ストリームが、吸着性物質のベッド内で規定されるほど十分なものである。
【0036】
好ましい実施形態において、装置は、吸着性ベッドと流体連通したリザーバを備え、リザーバは、吸着性物質が接触した液体をベッドから受け入れるように構成されている。
【0037】
本発明の第4態様では、処理済み液が含有する有機物をより少なくできる水性有機廃液の連続処理方法が提供され、該方法は、
処理リザーバの第1処理ゾーン内に水性有機廃液を入れる工程であって、処理リザーバは第2処理ゾーンをも含み、第1処理ゾーン及び第2処理ゾーンは、多孔質膜によって隔てられており、第1処理ゾーンに水性有機廃液を入れて、ベッドの炭素系吸着性物質を通過するほど十分に大きいが、炭素系吸着性物質のベッドを流動化させるのに必要とされる流量未満の流量で、第1処理ゾーン内のベッド中の炭素系吸着性物質と接触させる工程と、
第1処理ゾーン及び第2処理ゾーンにそれぞれ動作可能に接続する第1電流フィーダ及び第2電流フィーダを作動して、各処理ゾーンの炭素系吸着性物質中に電流を一方向に流して、第1処理ゾーンの炭素系吸着性物質を再生する工程と、
水性有機廃液を第2処理ゾーン中に入れて、水性有機廃液が炭素系吸着性物質のベッドを通過するほど十分に大きいが、炭素系吸着性物質のベッドを流動化させるのに必要とされる流量未満で行われる流量で、第2処理ゾーンのベッド中の炭素系吸着性物質と接触させる工程と、
第1電流フィーダ及び第2電流フィーダを作動して、第1処理ゾーン及び第2処理ゾーン内の炭素系吸着性物質に印加される電流の方向を反転させて、第2処理ゾーンの炭素系吸着性物質を再生する工程と、
を含む。
【0038】
本発明の第4態様の方法では、水性有機廃棄物を連続して処理することによって、pHが中性である処理済み液を得ることが可能な方法が提供される。上記の工程は、任意の所望される回数繰り返されて、必要な体積の水性有機廃液について、所望されるレベルの汚染除去が達成されてよい。入れられた液体中の有機成分は、炭素系吸着性物質に吸着されて、電流の印加によって電気化学的に酸化される。電流の印加は好ましくは、水性有機廃液が各ベッドの吸着性物質を通過している間に、達成される。処理されることとなる液体が各処理ゾーンに入れられる結果として、処理済み液は、処理ゾーンの吸着性物質のベッド上方の領域に集まる。
【0039】
水性有機廃液と炭素系吸着性物質の接触は、吸着剤の撹拌を制御することで達成されてよい。撹拌の制御は、加圧下における水性有機廃棄物の1つ又は複数、好ましくは複数の平行ジェットストリームを、入口を介して吸着性物質のベッドへ与えることによって達成されてよい。水性有機廃棄物の個々のストリームが、吸着性ベッドを通る水性有機廃棄物の円筒状又は漏斗状の通路を生じさせることとなり、粒状の吸着性物質は、吸着性ベッドのより下側の領域から引き抜かれて(draw)、吸着性ベッドを通って上向きに運ばれる。吸着性物質の下向きの流れが、吸着性物質の上向きの流れの周りで生じ、そして水性有機廃棄物と一緒に運ばれ、これによって、吸着性物質の別々の循環ストリームが、吸着性ベッド内で規定されて、循環経路に沿って流れる。
【0040】
吸着性ベッドに入る水性有機廃棄物の流量及び経路を、液体がベッドを通過するが、吸着性物質がベッド内に残って再生されるのを確実とするように制御することで、吸着及び再生プロセスが、同じベッドの吸着性物質中で同時に実行される。毎時1乃至500Lの流量が用いられてよい。ある実施形態では、毎時約150Lの流量が用いられてよい。吸着性物質は、水性有機廃棄物から有機成分を吸着し、その間に、同じ吸着性ベッド内で、印加された電流により、吸着された有機成分由来のガス産物が吸着性物質から放出され、これによって吸着性物質が再生され、さらなる量の有機成分を吸着するための能力が回復する。
【0041】
装置の運転中、電流が印加されて、正の電流フィーダが、吸着性物質のベッドに動作可能に接続されて、そこを水性有機廃棄物が通過することが好ましい。これにより、本発明の第1態様及び第2態様と同じように、このベッドはアノードとして有効に機能し、他の処理ゾーン内の吸着性物質のベッドは、カソードとして機能する。このようにして、「アノードベッド」における吸着性物質上に吸着された有機成分が酸化されて、二酸化炭素及び水が生じる一方で、「カソードベッド」に存在する残りの水は還元される。前述のように、水性プロトン種が「アノードベッド」において生じ、水性水酸化物種が「カソードベッド」において生じる。吸着性物質のベッド上の領域において集まる処理済み液は、電気化学的酸化プロセス中に生じる水性プロトン種を含有し、「カソードベッド」における水が、対応する還元プロセス中に生じる水性水酸化物イオンを含有することは理解されるであろう。好ましくは、炭素系吸着性物質と接触した液体は、炭素系吸着性物質の対応するベッドと流体連通するリザーバに移されて、その中で保管されてよく、処理装置にリサイクルされてもよいし、他の場所へ移されてもよい。
【0042】
吸着及び電気化学的再生の第1サイクルが行われた後、ポンプは、水性有機廃棄物を第1処理ゾーンに入れるのを止めて、その代わりに、廃棄物液体から有機成分を吸着することができる炭素系吸着性物質を含む第2処理ゾーンに、水性有機廃棄物を入れるように制御される。電流フィーダを介して電流が印加される方向が反転すると、以前にカソードとして機能していた吸着性物質のベッドは、今度はアノードとして機能し、以前にアノードとして機能していた吸着性物質のベッドは、カソードとして機能する。水性水酸化物種を含有する液体が、水性有機廃棄物の流入ストリームによって集められて、酸性処理された液体と、吸着性物質のベッド上の領域において混合し、中性の処理済み液が形成される。その後、水性のプロトン種及び水酸化物種が、それぞれ第2処理ゾーン及び第1処理ゾーン内の吸着性物質のベッドで生じるが、pH中和作用は、印加電流の方向のその後の反転と、処理されることとなる液体が入れられる処理ゾーンの変更とによって、継続する。こうして、最終の中性pHが、処理済み液のpHを調整する、化学物質投与システムなどの任意の後処理工程を必要とすることなく、処理済み液において達成される。所望されるpHを有する処理済み液が得られることを確実とする最適化されたプロセスは、用いられるサイクル時間、即ち、電流方向と処理されることとなる液体が入れられる処理ゾーンの各変更時間の長さ、水性有機廃棄物中の有機成分の濃度、並びに、液体リザーバ内の液体の体積によって決まる。好ましい実施形態では、電流フィーダ及びポンプは、処理済み液において約7のpHを与えるように運転される。
【0043】
本発明の第2態様に関して先に述べたように、無機種の帯電は、電流が、第1処理ゾーン及び第2処理ゾーン内の炭素系吸着性物質中を流れる間にもたらされる。電流フィーダ及びポンプは、装置の運転中、電流フィーダ上への帯電無機種の電着をできるだけ小さくするように運転されて、処理方法が達成されることが好ましい。
【0044】
本発明の第1態様及び第2態様に関して先に記載した好ましい特徴はまた、好ましい特徴のそのような組合せを防止するであろう技術的不一致を受けやすい本発明の第3態様及び第4態様の好ましい特徴を示している。さらに、本発明の第1態様及び第2態様に関して先に示した利点は、本発明の第3態様及び第4態様によっても実現されることは、当業者に明らかであろう。
【0045】
本発明の方法及び装置での使用に適した炭素系吸着性物質は、液相から具合良く分離することと電気化学的再生とができる固体材料である。好ましい吸着性物質は、電気化学的再生が可能な吸着性物質、例えば、グラファイト、非膨張グラファイトインターカレーション化合物(UGIC)及び/又は活性炭素を、好ましくは粉末又はフレークの形態で含む。本発明での使用に適した典型的な個々のUGIC粒子では、電気伝導度が10,000Ω
−1cm
−1を上回る。しかしながら、吸着性物質の粒子のベッドにおいて、これはかなり低くなることは理解できるだろう。というのも、粒子/粒子境界にて抵抗が生ずるからである。それ故に、できるだけ大きな粒子を用いて、抵抗をできるだけ低く保つことが所望される。また、より大きな粒子ほど、より速く沈下することとなり、より大きな流量が達成される。しかしながら、粒子サイズを増大させると、利用可能な表面積が減少することとなるので、表面積の減少に由来する吸着能力の低下に対して、速い沈下速度と低セル電圧を調和させることが必要である。しかしながら、種々のUGIC物質が多数製造されており、そして種々の材料は、種々の吸着性を有しており、本発明の方法の特定の用途に合うように選択され得ることは理解できるであろう。吸着性物質は、UGICのみから、又は、そのようなグラファイトと1つ若しくは複数の他の吸着性物質との混合物からなってよい。吸着性物質の個々の粒子自体が、複数の吸着性物質の混合物を含んでよい。吸着性物質は内側表面積がないので、吸着の速度(kinetics)は速いはずである。従って、速度は、内面への有機成分の拡散によっては制限されない。
【0046】
物質が電気化学的再生を受ける能力は、その電気伝導度、表面ケミストリー、電気化学的活性、形態構造、電気化学的腐食特性、及びこれらの要因の複雑な相互作用によって決まるであろう。ある程度の電気伝導度は、電気化学的再生に必須であり、高い電気伝導度が有利である。加えて、吸着物の電気化学的酸化の速度は、速くなければならない。速度は、酸化反応が起こる吸着性表面の電気化学的活性によって、また、液相のpHによっても決まる。電気化学的再生は、腐食条件を吸着性表面にて生じさせるであろう。再生条件下での吸着性物質の電気化学的腐食速度は、吸着及び再生の繰返しサイクル中に吸着性が悪化しない程度に低くあるべきである。さらに、一部の材料は、電気化学的再生が試みられて直ぐに、不動態化する。これは、多くの場合、非導電性材料の表面層が形成されることによる。これは、例えば、汚染物質(例えばフェノール)の重合の結果として、吸着剤の表面で起こり得る。加えて、吸着性物質上での有機成分の電気化学的破壊により、反応産物が生じることとなるが、これらは、吸着性物質の表面から運ばれて取り除かれなければならない。再生される吸着性物質の構造は、吸着性物質の表面から離れる産物の輸送速度に影響するので、この輸送プロセスを促進する吸着性物質を用いることが所望されることは理解できるであろう。これは、吸着性物質の表面構造及びケミストリーの双方に依存することとなる。
【0047】
本発明にとって好ましい吸着性物質は、望ましくは、有機化合物を吸着する能力を有することは理解できるであろう。物質の吸収能力は必須ではなく、実際には、有害なことがある。吸着のプロセスは、有機成分と吸着剤の表面との分子相互作用によって作用する。対照的に、吸収のプロセスには、物質の細孔内での有機成分の収集と少なくとも一時的な保持とが関与する。一例として、膨張グラファイトは、広範な汚染物質について良好なアブソーバであることが知られている(例えば、化合物1グラムにつき、最大86グラムの油が「受け取られる」)。UGICは、有効な吸収能力を有していない。これは、吸着することはできるが、表面積が小さいため、吸着能力が非常に低い(例えば、1吸着サイクルあたり、化合物1グラムにつき、最大7ミリグラムの油が「受け取られる」)。これらの数字から、膨張グラファイトとUGICの受取り能力の間で、4桁の差異が示される。本発明で使用するためのUGICの選択は、その高い再生力を、比較的低い受取り能力に対して慎重に調整することでなされる。
【0048】
電流フィーダは、好ましくは、吸着性ベッドの全高及び全幅にわたって延びており、再生が必要な有機成分を積んだ吸着性粒子にできるだけ近接させられる。電流フィーダは、通常、第1処理ゾーン及び第2処理ゾーンにおいて設けられる吸着性物質のベッドの向かい合う面に設けられるであろう。複数の電流フィーダが、それぞれの面に沿って配置されてよい。或いは、複数の電流フィーダが水平方向に設置されて、種々の電流が、運転中に、種々の高さにて吸着性ベッドにわたって印加されてよい。使用時には、「Electrochemical regeneration of a carbon−based adsorbent loaded with crystal violet dye」;N W Brown,E P L Roberts,A A Garforth and R A W Dryfe;Electrachemica Acta 49(2004)3269−3281、及び「Atrazine removal using adsorption and electrochemical regeneration」;N W Brown,E P L Roberts,A Chasiotis,T Cherdron and N Sanghrajka;Water Research 39(2004)3067−3074に記載されるようにして、電圧が電流フィーダ間に継続的に又は断続的に印加されて、電流が吸着性物質中を流れてそれを再生してよい。
【0049】
本発明を、今度は、一例として、添付の図面を参照して記載することとする。