特許第6150892号(P6150892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6150892波動歯車装置ユニットに被駆動部材を締結する締結方法および波動歯車装置ユニット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150892
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】波動歯車装置ユニットに被駆動部材を締結する締結方法および波動歯車装置ユニット
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20170612BHJP
【FI】
   F16H1/32 B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-524910(P2015-524910)
(86)(22)【出願日】2013年7月4日
(86)【国際出願番号】JP2013004171
(87)【国際公開番号】WO2015001587
(87)【国際公開日】20150108
【審査請求日】2016年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】390040051
【氏名又は名称】株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】三宅 崇太郎
(72)【発明者】
【氏名】清澤 芳秀
【審査官】 高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−250607(JP,A)
【文献】 特開平09−089053(JP,A)
【文献】 特開昭62−255610(JP,A)
【文献】 特開2011−064265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波動歯車装置ユニット(1)に被駆動部材(22)を締結する締結方法であって
カップ形状の可撓性外歯歯車(4)のカップ底面部分に形成したボス(4c)と、
前記ボス(4c)の第1端面(4f)に位置決め固定された出力フランジ(7)と、
前記ボス(4c)における前記第1端面(4f)とは反対側の第2端面に仮止めされた押さえ部材(6)と、
前記ボス(4c)において、ユニット中心軸線回りに所定の角度間隔で形成された複数個のボス側ボルト挿通穴(15)と、
前記出力フランジ(7)において、前記ボス側ボルト挿通穴(15)のそれぞれに対応する位置に形成した複数個のフランジ側ボルト挿通穴(16)と、
前記押さえ部材(6)において、前記フランジ側ボルト挿通穴(16)のそれぞれに対応する位置に形成した複数個のタップ穴(14)と、
を有している前記波動歯車装置ユニット(1)を用意し、
前記フランジ側ボルト挿通穴(16)のそれぞれに対応する位置に形成した複数個の被駆動部材側ボルト挿通穴(23)を有している前記被駆動部材(22)を用意し、
前記被駆動部材(22)を、前記押さえ部材(6)が仮止めされている前記波動歯車装置ユニット(1)の前記出力フランジ(7)における前記ボス(4c)とは反対側の端面(7a)に対して、前記被駆動部材側ボルト挿通穴(23)のそれぞれが前記フランジ側ボルト挿通穴(16)に位置決めされた状態となるように、重ね合わせ、
この状態で、前記被駆動部材(22)の側から、前記被駆動部材側ボルト挿通穴(23)のそれぞれに、締結ボルト(24)を挿入し、
前記締結ボルト(24)を、前記被駆動部材側ボルト挿通穴(23)から、前記フランジ側ボルト挿通穴(16)、前記ボス側ボルト挿通穴(15)を介して、前記押さえ板(6)に形成した前記タップ穴(14)にねじ込み固定して、
前記締結ボルト(24)によって、前記被駆動部材(22)、前記出力フランジ(7)、前記ボス(4c)および前記押さえ部材(6)を締結することを特徴とする波動歯車装置ユニット(1)に被駆動部材(22)を締結する締結方法
【請求項2】
請求項1に記載の締結方法に用いる波動歯車装置ユニット(1)であって、
カップ形状の可撓性外歯歯車(4)のカップ底面部分に形成したボス(4c)と、
前記ボス(4c)の第1端面(4f)に位置決め固定された出力フランジ(7)と、
前記ボス(4c)における前記第1端面(4f)とは反対側の第2端面に仮止めされた押さえ部材(6)と、
前記ボス(4c)において、ユニット中心軸線回りに所定の角度間隔で形成された複数個のボス側ボルト挿通穴(15)と、
前記出力フランジ(7)において、前記ボス側ボルト挿通穴(15)のそれぞれに対応する位置に形成した複数個のフランジ側ボルト挿通穴(16)と、
前記押さえ部材(6)において、前記フランジ側ボルト挿通穴(16)のそれぞれに対応する位置に形成した複数個のタップ穴(14)と、
前記前記ボス(4c)の前記第2端面に前記押さえ部材(6)を仮止めしている複数本の仮止め用のビスと、
を有していることを特徴とする波動歯車装置ユニット(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波動歯車装置ユニットの減速回転出力要素であるカップ形状の可撓性外歯歯車に被駆動部材を締結する締結方法、および、当該締結方法に用いる波動歯車装置ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
波動歯車装置ユニットとして、特許文献1に記載されたカップ形状の可撓性外歯歯車を用いたユニットが知られている。このような波動歯車装置ユニットにおいては、円筒状のハウジングの内周側の部位に剛性内歯歯車が形成され、その内側にカップ形状の可撓性外歯歯車が配置されている。可撓性外歯歯車のカップ底面部分を規定しているボスには出力フランジが同軸に固定されている。
【0003】
ユーザーは、波動歯車装置ユニットを使用するに当り、その入力側の波動発生器にモーター軸を取付け、その出力フランジの外側端面に被駆動部材を取付ける。モーター軸から波動発生器に入力される高速回転が、出力フランジから減速回転出力として取り出される。減速回転出力によって、出力フランジに取り付けた被駆動部材が駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−339990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この構造の波動歯車装置ユニットにおいては、締結ボルトによって、カップ形状の可撓性外歯歯車のボスに出力フランジが同軸に締結される。ボスには円周方向に沿って所定の角度間隔でボルト挿通穴(キリ穴)が形成され、出力フランジにはボルト挿通穴に対応する位置に第1タップ穴(ネジ穴)が形成される。締結ボルトはボスの側からボルト挿通穴を介してタップ穴にねじ込まれ、ボスに出力フランジが同軸に締結されている。
【0006】
また、ユーザーの側において出力フランジに被駆動部材を締結できるように、出力フランジには、円周方向に沿って所定の角度間隔で第2タップ穴も形成される。被駆動部材には、第2タップ穴に対応する位置にボルト挿通穴が形成される。締結ボルトを、被駆動部材の側から、ボルト挿通穴を介して第2タップ穴にねじ込むことで、出力フランジに被駆動部材が締結される。
【0007】
このように、出力フランジには、円周方向に沿って2種類のタップ穴を所定の角度間隔で形成しておく必要がある。多数個のタップ穴を形成する必要があるので、穴加工に手間が掛かり、締結ボルトの必要本数も多い。また、多数個のタップ穴を配列できるスペースを確保する必要があるので、出力フランジの小型化には不利である。
【0008】
本発明の課題は、出力フランジの穴加工が容易であり、可撓性外歯歯車のボス、出力フランジおよび被駆動部材の締結に必要な締結ボルトの本数が少なくて済むようにした波動歯車装置ユニットに被駆動部材を締結する締結方法、および、当該締結方法に用いる波動歯車装置ユニットを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の波動歯車装置ユニットに被駆動部材を締結する締結方法では、まず、波動歯車装置ユニットとして
カップ形状の可撓性外歯歯車のカップ底面部分に形成したボスと、
前記ボスの第1端面に位置決め固定された出力フランジと、
前記ボスにおける前記第1端面とは反対側の第2端面に仮止めされた押さえ部材と、
前記ボスにおいて、ユニット中心軸線回りに所定の角度間隔で形成された複数個のボス側ボルト挿通穴と、
前記出力フランジにおいて、前記ボス側ボルト挿通穴のそれぞれに対応する位置に形成した複数個のフランジ側ボルト挿通穴と、
前記押さえ部材において、前記フランジ側ボルト挿通穴のそれぞれに対応する位置に形成した複数個のタップ穴と、
を有しているものを用意する。
【0010】
また、前記被駆動部材として、前記フランジ側ボルト挿通穴のそれぞれに対応する位置に形成した複数個の被駆動部材側ボルト挿通穴を有しているものを用意する
【0011】
さらに、前記被駆動部材を、前記押さえ部材が仮止めされている前記波動歯車装置ユニットの前記出力フランジにおける前記ボスとは反対側の端面に対して、前記被駆動部材側ボルト挿通穴のそれぞれが前記フランジ側ボルト挿通穴に位置決めされた状態となるように、重ね合わせ、
この状態で、前記被駆動側部材の側から、前記被駆動部材側ボルト挿通穴のそれぞれに、締結ボルトを挿入し、
前記締結ボルトを、前記被駆動部材側ボルト挿入穴から、前記フランジ側ボルト挿通穴、前記ボス側ボルト挿通穴を介して、前記押さえ板に形成した前記タップ穴にねじ込み固定して、
前記締結ボルトによって、前記被駆動部材、前記出力フランジ、前記ボスおよび前記押さえ部材を締結する
【0012】
被駆動部材を出力フランジに締結するために用いる締結ボルトを用いて、被駆動部材、出力フランジ、ボスおよび押さえ板が締結される。したがって、出力フランジをボスに締結する締結ボルトと、出力フランジに被駆動部材を締結する締結ボルトが必要とされた従来の締結方法に比べて、必要な締結ボルトの本数を少なくできる。
【0013】
また、出力フランジにはタップ穴を形成する必要がなく、ボルト挿通穴を形成すればよい。しかも、ボルト挿通穴の個数は、従来のように2種類のタップ穴を形成しておく場合に比べて少なくて済む。よって、出力フランジの穴加工が容易になり、また、その小型・軽量化を図ることができる。
【0014】
なお、押さえ部材はボスに仮止めされている。したがって、仮止めのために例えばボルトを用いる場合には、仮止め用のボルトの本数が少なくて済み、また、そのサイズも小さくて済む。
【0015】
したがって、本発明によれば、波動歯車装置ユニットと被駆動部材の締結構造を、少ない部品点数、かつ、少ない設置スペースで実現できる。よって、波動歯車装置ユニットの小型・軽量化、および、当該波動歯車装置ユニットが組み込まれる機構の小型・軽量化に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明を適用した波動歯車装置ユニットの出力側の端面図および縦断面図である。
図2図1の波動歯車装置ユニットに被駆動部材を締結する方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した波動歯車装置ユニットに被駆動部材を締結する締結構造の実施の形態を説明する。
【0018】
図1(a)および(b)は、本実施の形態に係る締結構造に用いる波動歯車装置ユニットの出力側の端面図および縦断面図である。波動歯車装置ユニット1は、円筒状のユニットハウジング2を備えている。ユニットハウジング2におけるユニット中心軸線1aの一方の側の入力側INの端部には、一定幅の大径の円環状フランジ2aが形成されている。円環状フランジ2aには剛性内歯歯車3が一体形成されており、その円形内周面には内歯3aが形成されている。剛性内歯歯車3をユニットハウジング2とは別部材とし、ユニットハウジング2に締結固定することも可能である。
【0019】
剛性内歯歯車3が一体形成されているユニットハウジング2の内側に、カップ形状をした可撓性外歯歯車4が同軸に配置されている。可撓性外歯歯車4は開口端が入力側INを向く状態に配置されている。可撓性外歯歯車4は、半径方向に撓み可能な円筒状胴部4aと、円筒状胴部4aにおける出力側OUTの端に連続して半径方向の内方に延びるダイヤフラム4bと、ダイヤフラム4bの内周縁に連続して形成した円環状のボス4cと、円筒状胴部4aの開口端の側の外周面部分に形成した外歯4dを備えている。ダイヤフラム4bおよびボス4cによって、カップ形状の底面部分が規定されている。
【0020】
円筒状胴部4aにおける外歯4dが形成されている部分の内側には、楕円状輪郭の波動発生器5が嵌め込まれている。波動発生器5は、中空入力軸5aと、この外周面に取り付けた楕円状輪郭の剛性プラグ5bと、この外周面に装着したウエーブベアリング5cとを備えている。ウエーブベアリング5cは半径方向に撓み可能な内輪および外輪を備えたボールベアリングである。波動発生器5によって可撓性外歯歯車4は楕円状に撓められ、その長軸の両端部分に位置する外歯4dが剛性内歯歯車3の内歯3aにかみ合っている。
【0021】
可撓性外歯歯車のボス4cの入力側INの端面4eには、円環状の押さえ板6が同軸に取り付けられている。押さえ板6の内周縁部分には出力側OUTに突出した円環部6aが形成されている。円環部6aはボス4cの中空部に嵌め込まれている。ボス4cの出力側OUTの端面4fには、円環状の出力フランジ7が同軸に取り付けられている。押さえ板6はボス4cに仮止めされている。押さえ板6をボス4cに仮止めするための手段としては、ビス、ボルト、ピン、接着剤等を用いることができる。
【0022】
例えば、複数本の仮止め用のビス8によってボス4cに仮止めされている。本例では、押さえ板6に90度間隔で4個のビス挿通穴9が形成されている。ボス4cにも4本のビス挿通穴10が形成され、出力フランジ7には4本のビス穴11が形成されている。ビス8を押さえ板6の側からねじ込むことによって、押さえ板6がボス4cの側に仮止めされている。
【0023】
ボス4cには複数個の位置決め用のピン穴12が形成され、出力フランジ7にも同一個数のピン穴13が形成されている。本例では90度間隔で4個のピン穴12、13がそれぞれ形成されている。対応するピン穴12、13に位置決めピンが打ち込まれて、ボス4cと出力フランジ7が同軸状態で位置決め固定されている。
【0024】
また、押さえ板6には、所定の角度間隔で、複数個のタップ穴14が形成されている。本例では、等角度間隔で、8個のタップ穴14が形成されている。ボス4cには、タップ穴14に対応する位置に、それぞれボス側ボルト挿通穴15が形成されている。同様に、出力フランジ7にもボス側ボルト挿通穴15に対応する位置に、それぞれフランジ側ボルト挿通穴16が形成されている。
【0025】
次に、出力フランジ7はクロスローラーベアリング17を介して、ユニットハウジング2によって回転自在の状態で支持されている。本例のクロスローラーベアリング17の内輪17aは、出力フランジ7の外周面に一体形成されている。その外輪17bは、ユニットハウジング2の出力側OUTの端部に一体形成されている。内輪17aを出力フランジ7とは別部材とし、出力フランジ7に締結固定することもできる。同様に、外輪17bをユニットハウジング2とは別部材とし、ユニットハウジング2に締結固定することもできる。
【0026】
この構成の波動歯車装置ユニット1は、例えば、水平多関節型ロボットのアーム駆動機構に組み込まれて使用される。この場合には、図1(b)において想像線で示すように、波動発生器5の中空入力軸5aに駆動モーター20のモーター軸20aが連結固定される。ユニットハウジング2はアーム駆動機構の固定側の第1アーム21に固定される。出力フランジ7には被駆動部材が固定される。図示の例では、出力フランジ7の出力側OUTの円形端面7aに、被駆動部材である第2アーム22における後端部の円形端面22aが重ね合わされ、この状態で、出力フランジ7に第2アーム22が固定される。
【0027】
駆動モーター20によって波動発生器5が高速回転すると、剛性内歯歯車3に対する可撓性外歯歯車4のかみ合い位置が円周方向に移動する。これにより、両歯車3、4の歯数差に応じて、両歯車3、4の間に相対回転が発生する。剛性内歯歯車3は第1アーム21の側に固定されており、回転しない。可撓性外歯歯車4が回転し、そのボス4cに固定した出力フランジ7を介して、減速回転出力が取り出される。減速回転出力によって、第2アーム22がユニット中心軸線1a回りに旋回する。
【0028】
図2は波動歯車装置ユニット1を第2アーム22に取り付ける手順を示す説明図である。波動歯車装置ユニット1は波動発生器5が取り外された状態で、ユーザーの側に出荷される。また、押さえ板6はボス4cの側に仮止めされた状態となっている。
【0029】
一方、被駆動部材である第2アーム22の後端部22bには、その旋回中心線回りに、一定の角度間隔で、ボルト挿通穴23が形成されている。本例では、波動歯車装置ユニット1の出力フランジ7のフランジ側ボルト挿通穴16に対応して8個のボルト挿通穴23が形成されている。
【0030】
第2アーム22の後端部22bにおける円形端面22aと、波動歯車装置ユニット1の出力フランジ7の端面7aを位置決めして重ね合わせる。この状態で、第2アーム22の側から各ボルト挿通穴23に締結ボルト24を挿入する。締結ボルト24はボルト挿入穴23、フランジ側ボルト挿通穴16、ボス側ボルト挿通穴15を介して、押さえ板6に形成したタップ穴14にねじ込まれる。8本の締結ボルト24をねじ込み固定することによって、出力フランジ7が被駆動部材である第2アーム22に締結される。すなわち、第2アーム22と押さえ板6の間に、出力フランジ7およびボス4cが挟まれた状態で、これらの4部材が締結ボルト24によって共締めされる。また、仮止め状態の押さえ板6がボス4cに本締結された状態になる。
【0031】
なお、第2アーム22の取付けに先立って、ユニットハウジング2を第1アーム21に取り付ける作業、および、波動発生器5をモーター軸20aに取り付け、可撓性外歯歯車の内側に装着する作業が行われる。
図1
図2