(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150910
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】ケイ素、アルミニウム及びクロムを有するニッケル基合金
(51)【国際特許分類】
C22C 19/05 20060101AFI20170612BHJP
H01T 13/39 20060101ALI20170612BHJP
C22F 1/10 20060101ALN20170612BHJP
C22F 1/00 20060101ALN20170612BHJP
【FI】
C22C19/05 J
H01T13/39
!C22F1/10 H
!C22F1/00 681
!C22F1/00 682
!C22F1/00 691B
!C22F1/00 691C
!C22F1/00 691Z
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!C22F1/00 683
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!C22F1/00 650C
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!C22F1/00 640F
!C22F1/00 630M
!C22F1/00 661A
【請求項の数】20
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-560547(P2015-560547)
(86)(22)【出願日】2014年1月28日
(65)【公表番号】特表2016-516127(P2016-516127A)
(43)【公表日】2016年6月2日
(86)【国際出願番号】DE2014000034
(87)【国際公開番号】WO2014139490
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2015年9月3日
(31)【優先権主張番号】102013004365.4
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】399009918
【氏名又は名称】ファオデーエム メタルズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】VDM Metals GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100182545
【弁理士】
【氏名又は名称】神谷 雪恵
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ハイケ ハッテンドルフ
(72)【発明者】
【氏名】フランク シャイデ
(72)【発明者】
【氏名】ラリー ポール
【審査官】
河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−502044(JP,A)
【文献】
特表2010−530609(JP,A)
【文献】
特公昭60−043897(JP,B2)
【文献】
特開昭55−044502(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/086292(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 1/00 − 49/14
C22F 1/00 − 3/02
H01T 13/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si 1.5〜3.0%
Al 1.5〜3.0%
Cr 0.1超3.0%、ここで、%で示すSi、Al及びCrの含有率は、4.0≦Al+Si+Cr≦8.0を満たし、
Fe 0.005〜0.20%
Y 0.01〜0.20%、Hf、Zr、La、Ce、Tiの元素の1つ以上 0.001〜0.20%、ここで、%で示すY、Hf、Zr、La、Ce、Tiの含有率は、0.02≦Y+0.5・Hf+Zr+1.8・Ti+0.6・(La+Ce)≦0.30を満たし、
C 0.001〜0.10%
N 0.0005〜0.10%
Mn 0.001〜0.20%
Mg 0.0001〜0.08%
O 0.0001〜0.010%
S 最大0.015%
Cu 最大0.80%
Ni 残り及び通常の製造に由来する不純物
(質量%で示す)からなる、ニッケル基合金。
【請求項2】
1.8〜3.0%のSi含有率(質量%で示す)を有する、請求項1に記載の合金。
【請求項3】
1.9〜2.5%のSi含有率(質量%で示す)を有する、請求項1又は2に記載の合金。
【請求項4】
1.5〜2.5%のAl含有率(質量%で示す)を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の合金。
【請求項5】
1.6〜2.5%のAl含有率(質量%で示す)を有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の合金。
【請求項6】
1.6〜2.2%のAl含有率(質量%で示す)を有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の合金。
【請求項7】
0.8〜3.0%のCr含有率(質量%で示す)を有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の合金。
【請求項8】
1.2〜3.0%のCr含有率(質量%で示す)を有する、請求項1から7までのいずれか1項に記載の合金。
【請求項9】
1.9〜3.0%のCr含有率(質量%で示す)を有する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の合金。
【請求項10】
%で示すSi、Al及びCrの含有率が、式4.5≦Al+Si+Cr≦7.5を満たす、請求項1から9までのいずれか1項に記載の合金。
【請求項11】
0.005〜0.10%のFe含有率(質量%で示す)を有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の合金。
【請求項12】
0.01〜0.15%のY含有率(質量%で示す)を有する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の合金。
【請求項13】
0.01〜0.15%のY含有率(質量%で示す)及びHf、Zr、La、Ce、Tiの元素の1つ以上 0.001〜0.15%を有し、ここで、%で示すY、Hf、Zr、La、Ce、Tiの含有率は、0.02≦Y+0.5・Hf+Zr+1.8・Ti+0.6・(La+Ce)≦0.25を満たす、請求項1から12までのいずれか1項に記載の合金。
【請求項14】
0.001〜0.05%のC含有率(質量%で示す)及び0.001〜0.05%のN含有率(質量%で示す)を有する、請求項1から13までのいずれか1項に記載の合金。
【請求項15】
0.001〜0.10%のMn含有率(質量%で示す)を有する、請求項1から14までのいずれか1項に記載の合金。
【請求項16】
0.001〜0.08%のMg含有率(質量%で示す)を有する、請求項1から15までのいずれか1項に記載の合金。
【請求項17】
0.0001〜0.06%のCa含有率(質量%で示す)を有する、請求項1から16までのいずれか1項に記載の合金。
【請求項18】
最大0.50%のCo含有率、最大0.20%のW含有率、最大0.20%のMo含有率、最大0.20%のNb含有率、最大0.20%のV含有率、最大0.20%のTa含有率、最大0.005%のPb含有率、最大0.005%のZn含有率、最大0.005%のSn含有率、最大0.005%のBi含有率、最大0.050%のP含有率及び最大0.020%のB含有率を有する、請求項1から17までのいずれか1項に記載の合金。
【請求項19】
請求項1から18までのいずれか1項に記載のニッケル基合金の、内燃機関の点火エレメント用の電極材料としての使用。
【請求項20】
ガソリンエンジンの点火エレメント用の電極材料としての、請求項19に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合金成分としてケイ素、アルミニウム、クロム及び反応性元素を有するニッケル基合金に関する。
【0002】
ニッケル基合金は、特に、内燃機関用の点火エレメントの電極を製造するために使用される。これらの電極は、400℃〜950℃の温度に曝される。更に、この雰囲気は、還元性条件と酸化性条件との間で切り替わる。これは、電極の表面領域での高温腐食によって材料破壊又は材料損失を引き起こす。イグニッションスパークの発生により、更なる負荷(火花浸食)が生じる。このイグニッションスパークの脚部(Fusspunkt)では数千℃の温度が生じ、絶縁破壊時には最初のナノ秒で100Aまでの電流が流れる。その都度のフラッシュオーバーの際に、電極中の所定の体積の材料が溶融しかつ部分的に蒸発し、これが材料損失につながる。
【0003】
更に、エンジンの振動が機械的負荷を高める。
【0004】
電極材料は次の特性を有するのが好ましい:
高温腐食、特に酸化、硫化、浸炭及び窒化に対する良好な耐久性。更に、イグニッションスパークにより生じる浸食に対する耐久性が必要である。更に、この材料は熱衝撃に敏感でなくかつ耐熱性であることが好ましい。更に、この材料は良好な伝熱性、良好な導電性及び十分に高い融点を有することが好ましい。この材料は、良好に加工可能でありかつ安価であることが好ましい。
【0005】
特に、ニッケル合金はこれらの特性スペクトルを満たす良好な潜在能力を有する。このニッケル合金は貴金属と比較して安価であり、コバルト又は鉄のように融点までに相転移を示さず、浸炭及び窒化に対して比較的敏感ではなく、良好な耐熱性、良好な耐腐食性を有しかつ良好に変形可能でかつ溶接可能である。
【0006】
2つの損傷メカニズム、つまり高温腐食と火花浸食について、酸化膜形成の種類が特に重要である。
【0007】
具体的な適用の場合にとって最適な酸化膜形成を達成するために、ニッケル基合金の場合には多様な合金元素が公知である。
【0008】
以後、全ての濃度表示は、明確に他の記載がない限り、質量%である。
【0009】
DE 29 36 312 A1によって、Si約0.2〜3%、Mn約0.5%以下、次のCr約0.2〜3%と、Al約0.2〜3%と、Y約0.01〜1%とからなる群から選択される少なくとも2種の金属、残りニッケルからなるニッケル合金が公知となっている。
【0010】
DE-A 102 24 891では、ケイ素1.8〜2.2%、イットリウム及び/又はハフニウム及び/又はジルコニウム0.05〜0.1%、アルミニウム2〜2.4%、残りニッケルを有するニッケル基合金が提案されている。
【0011】
EP 1 867 739 A1では、ケイ素1.5〜2.5%、アルミニウム1.5〜3%、マンガン0〜0.5%、チタン0.05〜0.2%を、ジルコニウム0.1〜0.3%と組み合わせて有し、その際、Zrは全部又は一部が、二倍の質量のハフニウムに置き換えられていてもよい、ニッケル基合金が提案されている。
【0012】
DE 10 2006 035 111 A1では、アルミニウム1.2〜2.0%、ケイ素1.2〜1.8%、炭素0.001〜0.1%、硫黄0.001〜0.1%、クロム最大0.1%、マンガン最大0.01%、Cu最大0.1%、鉄最大0.2%、マグネシウム0.005〜0.06%、鉛最大0.005%、Y0.05〜0.15%及びハフニウム又はランタン0.05〜0.10%又はハフニウム及びランタンそれぞれ0.05〜0.10%、残りニッケル及び製造に由来する不純物を含有するニッケル基合金が提案されている。
【0013】
パンフレット「Draehte von ThyssenKrupp VDM Automobilindustrie」、発行01/2006には、第18頁に、Cr1.4〜1.8%、Fe最大0.3%、C最大0.5%、Mn1.3〜1.8%、Si0.4〜0.65%、Cu最大0.15%及びTi最大0.15%を有するNiCr2MnSiの先行技術による合金が記載されている。
【0014】
本発明の主題の課題は、製造する部材の寿命を向上させ、十分な変形性及び溶接性(加工性)と同時に、火花浸食耐性及び耐食性の向上をもたらす、ニッケル基合金を提供することである。この合金は特に高い耐食性を有するべきであり、かつ、例えば一定割合のエタノールを有する極めて腐食性の燃料の場合であっても十分に高い耐食性を有するべきである。
【0015】
この課題は、
Si 1.5〜3.0%
Al 1.5〜3.0%
Cr >0.1〜3.0%、ここで、Si、Al及びCrの含有率(%で示す)は4.0≦Al+Si+Cr≦8.0を満たし、
Fe 0.005〜0.20%
Y 0.01〜0.20%
Hf、Zr、La、Ce、Tiの元素の1つ又はそれ以上 0.001〜0.20%、ここで、Y、Hf、Zr、La,Ce、Tiの含有率(%で示す)は0.02≦Y+0.5・Hf+Zr+1.8・Ti+0.6・(La+Ce)≦0.30を満たし、
C 0.001〜0.10%
N 0.0005〜0.10%
Mn 0.001〜0.20%
Mg 0.0001〜0.08%
O 0.0001〜0.010%
S 最大0.015%
Cu 最大0.80%
Ni 残り及び通常の製造に由来する不純物
(質量%で)を有するニッケル基合金によって達成される。
【0016】
本発明の主題の好ましい実施態様は、従属請求項より導き出すことができる。
【0017】
ケイ素含有率は1.5〜3.0%であり、この場合、好ましくは、次の広がりの範囲で定義される含有率を調節することができる:
1.8〜3.0%
1.9〜2.5%。
【0018】
これは、同様にアルミニウムの元素についても当てはまり、アルミニウムは1.5〜3.0%の含有率に調節される。好ましい含有率は、次に記載される:
1.5〜2.5%
1.6〜2.5%
1.6〜2.2%
1.6〜2.0%。
【0019】
これは、同様にクロムの元素についても当てはまり、クロムは>0.1〜3.0%の含有率に調節される。好ましい含有率は、次に記載される:
0.8〜3.0%
1.2〜3.0%
1.9〜3.0%
1.9〜2.5%。
【0020】
Al、Si及びCrの元素について、Si、Al及びCrの含有量は%で示して、式4.0<Al+Si+Cr<8.0を満たさなければならない。好ましい範囲は、
4.5≦Al+Si+Cr≦7.5%
5.5≦Al+Si+Cr≦6.8%
である。
【0021】
同様に、これは、鉄の元素についても当てはまり、鉄は0.005〜0.20%の含有率に調節される。好ましい含有率は、次に記載される:
0.005〜0.10%
0.005〜0.05%。
【0022】
更に、この合金はイットリウムを0.01%〜0.20%の含有率で添加され、かつHf、Zr、La、Ce、Tiの元素の1つ以上を0.001〜0.20%で添加されているのが好ましく、
その際、Y、Hf、Zr、La、Ce、Tiの%で示す含有率は、0.02≦Y+0.5・Hf+Zr+1.8・Ti+0.6・(La+Ce)≦0.30が満たされる。この場合、好ましい範囲を次に記載する:
Y 0.01〜0.15%
Y 0.02〜0.10%
Hf、Zr、La、Ce、Tiは、それぞれ0.001〜0.15%
0.02≦Y+0.5・Hf+Zr+1.8・Ti+0.6・(La+Ce)≦0.25
Hf、Zr、La、Ce、Tiは、それぞれ0.001〜0.10%
0.02≦Y+0.5・Hf+Zr+1.8・Ti+0.6・(La+Ce)≦0.20
Hf、Zr、Tiは、それぞれ0.01〜0.05%、La、Ceはそれぞれ0.001〜0.10%
0.02≦Y+0.5・Hf+Zr+1.8・Ti+0.6・(La+Ce)≦0.20。
【0023】
炭素は、合金中で同様に、0.001〜0.10%の含有率で調節される。好ましくは、合金中で次の含有率を調節することができる:
0.001〜0.05%。
【0024】
同様に、窒素は合金中で、0.0005〜0.10%の含有率で調節される。好ましくは、合金中で次の含有率を調節することができる:
0.001〜0.05%。
【0025】
Mnの元素は、合金中に次のように添加されていてもよい:
Mn0.001〜0.20%
この場合、好ましくは次の範囲で添加されている:
Mn 0.001〜0.10%
Mn 0.001〜0.08%。
【0026】
マグネシウムは、0.0001〜0.08%の含有率に調節される。好ましくは、この元素を合金中で次のように調節することができる:
0.001〜0.08%。
【0027】
この合金は、必要に応じて、更にカルシウムを0.0001〜0.06%の含有率で含むことができる。
【0028】
硫黄含有率は、最大0.015%に制限される。好ましい含有率は、次に記載される:
S 最大0.010%。
【0029】
酸素含有率は、合金中で0.0001〜0.010%の含有率で調節される。好ましくは次の含有率に調節することができる:
0.0001〜0.008%。
【0030】
銅含有率は、最大0.80%に制限される。好ましくは、次のように制限される:
最大0.50%
最大0.20%。
【0031】
最終的に、不純物について次のような元素が次のように存在してもよい:
Co 最大0.50%
W 最大0.02%(最大0.10%)
Mo 最大0.02%(最大0.10%)
Nb 最大0.02%(最大0.10%)
V 最大0.02%(最大0.10%)
Ta 最大0.02%(最大0.10%)
Pb 最大0.005%
Zn 最大0.005%
Sn 最大0.005%
Bi 最大0.005%
P 最大0.050%(最大0.020%)
B 最大0.020%(最大0.010%)。
【0032】
本発明による合金は、好ましくは開放環境で精錬され、続いてVOD又はVLF装置中で処理される。しかしながら真空中での精錬及び注型も可能である。その後、この合金をインゴットの形又は連続鋳造物として鋳造する。場合により、インゴット/連続鋳造物を800℃〜1270℃の温度で0.1時間〜70時間焼鈍する。更に、この合金を付加的にESU及び/又はVARで再溶融させることもできる。その後で、この合金を所望の半製品形状にする。このため、場合により、700℃〜1270℃の温度で、0.1時間〜70時間焼鈍し、その後で熱間で変形させ、場合により700℃〜1270℃で0.05時間〜70時間中間焼鈍させる。材料の表面を、場合により(複数回)熱変形の間に及び/又は熱変形の後に清浄化のために化学的及び/又は機械的に除去することができる。その後に、場合により99%までの変形率で所望の形状への1回又は複数回の常温成形を実施してもよく、その際、場合により保護ガス下、例えばアルゴン下又は水素下で、700℃〜1250℃で、0.1分〜70時間中間焼鈍を場合により実施し、その後に、空気、可動の焼鈍雰囲気又は水浴中で冷却する。次に、溶体化焼鈍を700℃〜1250℃で0.1分〜70時間、場合により保護ガス下、例えばアルゴン下又は水素下で行い、その後に、空気、可動の焼鈍雰囲気又は水浴中で冷却する。場合により、最後の焼鈍の間及び/又は最後の焼鈍の後に、材料表面の化学的及び/又は機械的清浄化を行うことができる。
【0033】
本発明による合金は、良好に、特に100μm〜4mmの厚さの帯材、特に1mm〜70mmの厚さの板材、特に10mm〜500mmの棒材、特に0.1mm〜15mmの厚さの線材、特に0.10mm〜70mmの壁厚及び0.2〜3000mmの直径の管材の製品形状を製造できる又は製品形状で使用できる。
【0034】
この製品形状は、4μm〜600μmの平均結晶粒度で製造される。好ましい範囲は10μm〜200μmである。
【0035】
本発明によるニッケル基合金は、好ましくは、ガソリンエンジン用の点火プラグの電極用の材料として使用可能である。
【0036】
この合金についての請求された限界範囲は、従って個別に次のように理由付けられる:
耐酸化性はSi含有率の増加と共に向上する。十分に大きな耐酸化性を得るためにはSi1.5%の最低含有率が必要である。Si含有率が高い場合には加工性が悪化する。従って、上限はSi3.0%である。
【0037】
十分に高いSi含有率では、少なくとも1.5%のアルミニウム含有率が耐酸化性を更に向上させる。Al含有率が高い場合には加工性が悪化する。従って、上限はSi3.0%である。
【0038】
十分に高いSi含有率及びAl含有率では、少なくとも0.1%のクロム含有率が耐酸化性を更に向上させる。Cr含有率が高い場合には加工性が悪化する。従って、上限はCr3.0%である。
【0039】
良好な耐酸化性にとって、十分に良好な耐酸化性を保証するために、Al+Si+Crの合計が4.0%より大である必要がある。Al+Si+Crの合計が8.0%より大の場合、加工性は悪化する。
【0040】
鉄は、0.20%に制限される、というのもこの元素は耐酸化性を低下させるためである。低すぎるFe含有率は、合金の製造の際のコストを高める。従ってFe含有率は、0.005%以上である。
【0041】
Yの耐酸化性を向上させる作用を得るために、Y0.01%の最低含有率が必要である。この上限は、コストの理由で0.20%である。
【0042】
耐酸化性は、Hf、Zr、La、Ce、Tiの元素の1つ又はそれ以上を少なくとも0.001%添加する場合に更に高められ、その際、所望の耐酸化性を得るために、Y+0.5・Hf+Zr+1.8・Ti+0.6・(La+Ce)は0.02以上でなければならない。Hf、Zr、La、Ce、Tiの元素の少なくとも1つ又はそれ以上の0.20%を越える添加はコストを高め、この場合、Y+0.5・Hf+Zr+1.8・Ti+0.6・(La+Ce)は更に0.30以下に制限される(%で示すY、Hf、Zr、La、Ce、Tiの含有率で)。
【0043】
炭素含有率は、加工性を保証するために0.10%未満であるのが好ましい。低すぎるC含有率は、合金の製造時のコストを高める要因となる。従って、炭素含有率は0.001%より大であるのが好ましい。
【0044】
窒素は、0.10%に制限される、というのもこの元素は耐酸化性を低下させるためである。低すぎるN含有率は、合金の製造時のコストを高める要因となる。従って、窒素含有率は0.0005%より大であるのが好ましい。
【0045】
マンガンは、0.20%に制限される、というのもこの元素は耐酸化性を低下させるためである。低すぎるMn含有率は、合金の製造時のコストを高める要因となる。従って、マンガン含有率は0.001%より大であるのが好ましい。
【0046】
極めて低いMg含有率でも、硫黄の固定(Abbinden)により加工性を改善し、それにより低温で溶融するNiS共融混合物の出現は回避される。従って、Mgについては0.0001%の最低含有率が必要である。含有率が高すぎる場合、金属間Ni−Mg相が出現することがあり、この相は加工性をまた明らかに悪化させる。従って、Mg含有率は0.08%に制限される。
【0047】
酸素含有率は、合金の生産性を保証するために、0.010%未満でなければならない。少なすぎる酸素含有率は、コストを高める要因となる。従って、酸素含有率は0.0001%より大であるのが好ましい。
【0048】
硫黄の含有率は可能な限り低く保つのが好ましい、というのもこの界面活性元素は、耐酸化性を損なうためである。従ってSは最大0.015%に規定される。
【0049】
銅は、0.80%に制限される、というのもこの元素は耐酸化性を低下させるためである。
【0050】
Mgと同様に、極めて低いCa含有率も硫黄の固定(Abbinden)により加工性を改善し、それにより低温で溶融するNiS共沸混合物の出現は回避される。従って、Caについては0.0001%の最低含有率が必要である。含有率が高すぎる場合、金属間Ni−Ca相が出現することがあり、この相は加工性をまた明らかに悪化させる。従って、Ca含有率は0.06%に制限される。
【0051】
コバルトは、最大0.50%に制限される、というのもこの元素は耐酸化性を低下させるためである。
【0052】
モリブデンは、最大0.20%に制限される、というのもこの元素は耐酸化性を低下させるためである。同様のことが、タングステン、ニオブ及びバナジウムにも当てはまる。
【0053】
リンの含有率は、0.050%未満であるのが好ましい、というのもこの界面活性元素は耐酸化性を損なうためである。
【0054】
ホウ素の含有率は可能な限り低く保つのが好ましい、というのもこの界面活性元素は、耐酸化性を損なうためである。従ってBは最大0.020%に規定される。
【0055】
Pbは、最大0.005%に制限される、というのもこの元素は耐酸化性を低下させるためである。同様のことが、Zn、Sn及びBiに当てはまる。