特許第6150932号(P6150932)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150932
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】コンロ
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/12 20060101AFI20170612BHJP
【FI】
   F24C3/12 L
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-180277(P2016-180277)
(22)【出願日】2016年9月15日
(62)【分割の表示】特願2015-181744(P2015-181744)の分割
【原出願日】2011年7月21日
(65)【公開番号】特開2017-20782(P2017-20782A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2016年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】301071893
【氏名又は名称】株式会社ハーマン
(74)【代理人】
【識別番号】100092071
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 均
(72)【発明者】
【氏名】森岡 智子
(72)【発明者】
【氏名】石川 善克
(72)【発明者】
【氏名】北尾 純一
(72)【発明者】
【氏名】安田 明彦
【審査官】 宮崎 光治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−332151(JP,A)
【文献】 特開平06−272865(JP,A)
【文献】 特開平11−304157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C3/00−3/14
F23K5/00−5/22
F23N1/00
F23N5/26
A47J37/10−37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱用位置に位置する被加熱物を加熱するバーナと、
前記被加熱物の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段の検出情報に基づいて前記バーナの作動を制御する燃焼制御手段とが設けられたコンロであって、
前記燃焼制御手段は、前記バーナの燃焼中において前記温度検出手段が検出する温度を設定温度に維持するように前記バーナの火力を制御する自動温度調節制御を実行し、前記自動温度調節制御の実行中において前記温度検出手段が検出した温度の低下に伴い前記バーナの火力を大火力側に変更する場合に、前記バーナの火力を大火力側に変更する前に自動温度調節火力増加報知を行うように構成されており、
前記温度検出手段が検出した温度の低下の勾配の絶対値が所定値より小さいときには前記自動温度調節火力増加報知を行わず、前記温度検出手段が検出した温度の低下の勾配の絶対値が所定値以上のときには前記自動温度調節火力増加報知を行うように構成され、かつ、
前記バーナを複数備えるとともに、前記バーナの各々の点消火や加熱条件を設定する、手動操作部を複数備え、
前記燃焼制御手段は、前記手動操作部の操作に基づいて、バーナの作動の制御を行い、
前記複数の手動操作部のうちいずれかの手動操作部からの操作があった場合において、前記操作から所定時間が経過するまでの間に、前記温度検出手段が検出した温度の低下に伴い前記バーナの火力が大火力側に変更される場合には、
前記温度検出手段が検出した温度の低下の勾配の絶対値が所定値より小さいときにも前記自動温度調節火力増加報知を行うように構成されていること
を特徴とするコンロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭で使用するコンロに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、調理容器の下面の温度を検知する温度センサを備え、調理容器の下面の温度を一定に保つように制御部による火力調節を行うことで自動調理を行うとともに、加熱部における調理容器の存在を検出するセンサを備え、加熱部において調理容器の不存在を検出したときには火力を低下させ、その後、設定時間中に調理容器の存在を検出すると燃焼を維持し、調理容器の不存在が設定時間以上継続すると消火するコンロが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
このようなコンロの場合、制御部による火力調節を行うことで自動調理を行うものであるから、天ぷらなどの揚げ物調理を失敗せず行えるものであり利便性がよく、また、加熱部における調理容器の存在の有無に応じて火力の変更や消火を行うものであるから安全であり省エネルギー性にも優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−97974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の調理器の場合、小火力から大火力への火力の切り替えがコンロに備える制御部により自動的に行われるものであるから、制御部により小火力から大火力への火力の切り替えが自動的に行われようとしている調理器に、使用者が不用意に接近した場合には、使用者の意識とは無関係に火力が小火力から大火力に変更されてしまうことに対し使用者は戸惑いを感じたり驚いたりすることがあり、この点に関し、改善が望まれるものであった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するもので、制御部により小火力から大火力への火力の切り替えが自動的に行われようとしている調理器に、使用者が不用意に接近した場合にも、使用者が戸惑いを感じたり驚いたりすることがないコンロを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来の課題を解決するために、本発明のコンロは、
加熱用位置に位置する被加熱物を加熱するバーナと、前記被加熱物の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段の検出情報に基づいて前記バーナの作動を制御する燃焼制御手段とが設けられたコンロであって、
前記燃焼制御手段は、前記バーナの燃焼中において前記温度検出手段が検出する温度を設定温度に維持するように前記バーナの火力を制御する自動温度調節制御を実行し、前記自動温度調節制御の実行中において前記温度検出手段が検出した温度の低下に伴い前記バーナの火力を大火力側に変更する場合に、前記バーナの火力を大火力側に変更する前に自動温度調節火力増加報知を行うように構成されており、
前記温度検出手段が検出した温度の低下の勾配の絶対値が所定値より小さいときには前記自動温度調節火力増加報知を行わず、前記温度検出手段が検出した温度の低下の勾配の絶対値が所定値以上のときには前記自動温度調節火力増加報知を行うように構成され、かつ、
前記バーナを複数備えるとともに、前記バーナの各々の点消火や加熱条件を設定する、手動操作部を複数備え、
前記燃焼制御手段は、前記手動操作部の操作に基づいて、バーナの作動の制御を行い、
前記複数の手動操作部のうちいずれかの手動操作部からの操作があった場合において、前記操作から所定時間が経過するまでの間に、前記温度検出手段が検出した温度の低下に伴い前記バーナの火力が大火力側に変更される場合には、
前記温度検出手段が検出した温度の低下の勾配の絶対値が所定値より小さいときにも前記自動温度調節火力増加報知を行うように構成されていること
を特徴とする。
【0008】
本発明のコンロにおいては、温度検出手段が検出する温度を設定温度に維持するようにバーナの火力を制御する自動温度調節制御を実行し、自動温度調節制御の実行中において温度検出手段が検出した温度の低下に伴い前記バーナの火力を大火力側に変更する場合に、バーナの火力を大火力側に変更する前に自動温度調節火力増加報知を行う。
【0009】
つまり、自動温度調節制御の実行中において温度検出手段が検出した温度の低下に伴いバーナの火力を大火力側に変更する場合に、バーナの火力を大火力側に変更する前に自動温度調節火力増加報知を行うことで、バーナの火力が小火力から大火力に変更される前に自動温度調節火力増加報知によって使用者は火力が大火力に変更されることを知ることができることになり、使用者が戸惑いを感じたり驚いてしまったりすることがなく、自動調理による利便性を損なわないようにしながら、使い勝手(快適性)を向上させることが可能となる。
【0010】
また、本発明のコンロにおいては、前記温度検出手段が検出した温度の低下の勾配の絶対値が所定値より小さいときには前記自動温度調節火力増加報知を行わず、前記温度検出手段が検出した温度の低下の勾配の絶対値が所定値以上のときには前記自動温度調節火力増加報知を行うように構成されてい
【0011】
即ち、自動温度調節制御の実行中において温度検出手段が検出した温度の低下に伴いバーナの火力を大火力側に変更する場合に、温度検出手段が検出した温度の低下の勾配の絶対値が所定値より小さいときには前記自動温度調節火力増加報知を行わず、温度検出手段が検出した温度の低下の勾配の絶対値が所定値以上のときには前記自動温度調節火力増加報知を行うもので、例えば、自動温度調節制御によって天ぷら等の揚げ物調理を行う場合に、被加熱物としての天ぷら鍋に具材を投入するときなど、使用者の手がバーナに接近するときには、天ぷら鍋への具材の投入によって温度検出手段が検出する温度の低下の勾配の絶対値が大きくなるものであり、このときには、自動温度調節火力増加報知によって、使用者は火力が大火力に変更されることを知ることができ、使用者が戸惑いを感じたり驚いてしまったりすることがなく、また、被加熱物としての天ぷら鍋に具材を一旦投入した後の、温度検出手段が検出した温度の変化の勾配が緩やかな状態で温度検出手段が検出する温度が低下するときには、自動温度調節火力増加報知を行わないものであるから、使用者がバーナに接近しない状況において頻繁に自動温度調節火力増加報知を行った場合に使用者が感じることになる報知の煩わしさを感じることが防止でき、快適に使用できるコンロとすることができる。
【0012】
つまり、使用者の手がバーナに接近するときには、自動温度調節火力増加報知によって、使用者は火力が大火力に変更されることを知ることができ、使用者が戸惑いを感じたり驚いてしまったりすることがなく、使用者がバーナに接近しない状況において頻繁に自動温度調節火力増加報知を行うことがない、快適に使用できるコンロとすることができる。
【0013】
また、本発明のコンロは、前記バーナを複数備えるとともに、バーナの各々の点消火や加熱条件を設定する、手動操作部を複数備えており、複数の手動操作部のうちいずれかの手動操作部からの操作があった場合において、前記操作から所定時間が経過するまでの間に、温度検出手段が検出した温度の低下に伴いバーナの火力が大火力側に変更される場合には、温度検出手段が検出した温度の低下の勾配の絶対値が所定値より小さいときにも自動温度調節火力増加報知を行うように構成されているので、使用者が戸惑いを感じたり驚いてしまったりすることがなく快適性が維持される。
【0014】
即ち、複数の手動操作部のうちいずれかの手動操作部からの操作が、前記燃焼制御手段に入力された後、所定時間内に限り、自動温度調節火力増加報知を行うようにしているので、例えば、使用者が、一のコンロの設定を開始して燃焼中に、他のコンロの設定を操作した後、所定時間の間は、一のコンロの火力が大火力に変更されるときにはそれを事前にことを知ることができることになり、使用者が戸惑いを感じたり驚いてしまったりすることがなく快適性が維持される。
【0015】
つまり、使用者がコンロの傍にいて手動操作しており自動調理を行っているコンロバーナの近傍にいる蓋然性が高い場合には、自動温度調節火力増加報知によって使用者は火力が大火力に変更される際に、戸惑いを感じたり驚いてしまったりすることがなくコンロ使用時の快適性を維持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のコンロは、自動温度調節制御の実行中において温度検出手段が検出した温度の低下に伴いバーナの火力を大火力側に変更する場合に、バーナの火力が小火力から大火力に変更される前に自動温度調節火力増加報知によって使用者は火力が大火力に変更されることを知ることができるから、使用者が戸惑いを感じたり驚いたりすることがなく、自動調理による利便性を損なわないようにしながら、快適性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ガスコンロの斜視図
図2】ガスコンロの制御構成を示すブロック図
図3】ガスコンロのバーナ付近の縦断面図
図4】点消火指令部及び燃焼量調節操作部の構成を示す図
図5】点消火指令部及び燃焼量調節操作部の操作状態を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
〔第1実施形態〕
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。
図1及び図2に示すように、ガスコンロは、3つのコンロバーナ1a,1b,1c、及び、グリルバーナ2を具備するグリル部3を備えたビルトインタイプのガスコンロにて構成されており、3つのコンロバーナ1a,1b,1cは高火力バーナ1aと、小バーナ1bと、高火力バーナ1cとによってダブル高火力仕様に構成されている。
【0020】
又、図1に示すように、グリル部3の燃焼排ガスを排気するためのグリル排気口4が形成され、ガラス製のトッププレート5にてガスコンロ上面が覆われており、このトッププレート5の上部に、高火力バーナ1a、小バーナ1b及び高火力バーナ1cに対する被加熱物(鍋など)を受け止め支持するための五徳6が載置支持されている。つまり、五徳6上が、被加熱物を位置させる加熱用位置に相当する。
又、トッププレート5の裏面側に、高火力バーナ1a、小バーナ1b及び高火力バーナ1c夫々の火力、並びに、グリルバーナ2の点消火状態を表示する天面表示部70が、トッププレート5を通して視認可能なように設けられている。
【0021】
又、図1及び図2に示すように、ガスコンロ前側面には、高火力バーナ1a、小バーナ1b及び高火力バーナ1cとグリルバーナ2との点火及び消火や火力調節と各種の設定とを指令する手動操作部Sが設けられ、各種の制御を実行するように構成された燃焼制御部H(燃焼制御手段の一例)が、その手動操作部Sにて指令された運転状態に基づいて、高火力バーナ1a、小バーナ1b及び高火力バーナ1cとグリルバーナ2を制御するように構成されている。又、ガスコンロ前側面には自動復帰型の押し操作式の電源スイッチ40も設けられている。
【0022】
図2に示すように、高火力バーナ1a、小バーナ1b及び高火力バーナ1cの夫々には、点火プラグ7及び着火状態を検出する熱電対8が設けられており、グリルバーナ2は上面バーナ2aと左右一対の下面バーナ2b,2cとを備えた両面バーナにて構成されて、上面バーナ2a及び左右一対の下面バーナ2b,2cの夫々にも点火プラグ7及び着火状態を検出するための熱電対8等が備えられている。
【0023】
又、高火力バーナ1a、小バーナ1b及び高火力バーナ1cの夫々には、図2及び図3に示すように(但し、図3では高火力バーナ1aについて示す)、伸び方向に復帰付勢された伸縮機構9が、下端側が固定された状態で上下方向に伸縮自在に設けられている。
この伸縮機構9は、図3に示すように、ケーシングに対して固定された案内支持部9aに上下可動部9bをバネ(図示省略)にて上方に復帰付勢した状態で上下方向に移動自在に支持して構成してある。
【0024】
そして、五徳6上に被加熱物が載置されていないときは、上下可動部9bの上端が五徳6における被加熱物を受け止める上端部よりも突出した伸状態となり、五徳6上に被加熱物が載置されるに伴って、上下可動部9bが被加熱物の底部により押し下げられて縮状態となる。
【0025】
そして、高火力バーナ1a、小バーナ1b及び高火力バーナ1cの夫々に対応する伸縮機構9に対して、その伸縮機構9の上下可動部9bが五徳6上に載置された被加熱物により押し下げられるとオンし、五徳6上に載置された被加熱物が上げられて上下可動部9bが上方に復帰するとオフになるように被加熱物検出スイッチ10を設けてある。
つまり、被加熱物検出スイッチ10がオンの状態で、五徳6上に被加熱物が存在すること、即ち、被加熱物の存在が検出され、被加熱物検出スイッチ10がオフの状態で、五徳6上に被加熱物が存在しないこと、即ち、被加熱物の不存在が検出されることになり、この被加熱物検出スイッチ10により前記被加熱物検出手段が構成される。
【0026】
更に、高火力バーナ1a、小バーナ1b及び高火力バーナ1cの夫々に対応する伸縮機構9の上下可動部9bの上端部内には、温度センサ11が設けられ、五徳6上に載置された被加熱物の底部が上下可動部9bの上端に当接した状態で、この温度センサ11により被加熱物の温度を検出するように構成されている。又、図示を省略するが、グリル部3には、グリル庫内の温度を検出するグリル温度センサが設けられている。
【0027】
前記高火力バーナ1a、小バーナ1b及び高火力バーナ1cとグリルバーナ2とへのガス供給構成について説明すると、図2に示すように、元ガス供給路12には元ガス電磁弁13が設けられ、この元ガス供給路12から、高火力バーナ用分岐路14a、小バーナ用分岐路14b、高火力バーナ用分岐路14c、グリルバーナ用分岐路14dの4系統に分岐しており、グリルバーナ2へのグリルバーナ用分岐路14dは、さらに、上面バーナ用の分岐路と下面バーナ用分岐路とに分岐してそれらの分岐路には夫々、オリフィスof付きの流路15と開閉式電磁弁16を備えたバイパス路17が設けられている。そして、高火力バーナ用分岐路14a、小バーナ用分岐路14b、高火力バーナ用分岐路14c、及び、グリルバーナ用分岐路14dの夫々には、ステッピングモータ19(図2参照)の駆動によってガス量を調整して前記各バーナの燃焼量(火力)を調整する流量制御弁18が備えられている。
【0028】
この流量制御弁18は、駆動源としてのステッピングモータ19と、このステッピングモータ19の回転操作をスライド移動操作に変更させるネジ送り式の移動操作機構と、ガス通過用の挿通孔が形成されたスライド閉子と、複数のガス通過用の調整孔を形成した流量調整板等を備えて構成されている(図示せず)。そして、前記スライド閉子と流量調整板とによってガス量を変更可能な流量調整部が構成されている。つまり、ガス流路を遮蔽する状態でスライド閉子と流量調整板とがバネによって圧接される状態で相対的にスライド自在に設けられ、ステッピングモータ19を駆動することでスライド閉子をスライド移動させながら、スライド閉子に形成された挿通孔が流量調整板の調整孔と重なり合う面積合計を変更させることで、バーナへのガス供給量を変更調整自在な構成となっている(図示せず)。尚、前記スライド閉子のスライド移動量はスライド移動検出センサ27(図2)によって検出される構成となっている。
【0029】
次に、前記手動操作部Sの構成について説明する。図1図4及び図5に示すように、ガスコンロ前側面には、手動操作部Sとして、高火力バーナ1a、小バーナ1b及び高火力バーナ1cの夫々に対応して、バーナ1a,1b,1cの点火指令を指令する点火指令状態とバーナ1a,1b,1cの消火指令を指令する消火指令状態とに切り換え自在な指令手段としての人為操作式の点消火指令部28、バーナ1a,1b,1cの燃焼量(火力)の調節を指令する人為操作式の燃焼量調節操作部29、及び、調理の設定を指令する設定入力パネル50が設けられ、並びに、グリルバーナ2に対して、点火及び消火や火力調整を指令するための設定入力パネル60が設けられている。これら3つの点消火指令部28及び3つの燃焼量調節操作部29は同じ構成であるから、そのうちの高火力バーナ1aに対する点消火指令部28及び燃焼量調節操作部29を代表として構成を以下に説明し、他のものについては説明を省略する。又、設定入力パネル50及び設定入力パネル60は開閉式になっている。
【0030】
図4及び図5に示すように、点火指令及び消火指令を指令する押し操作式の点消火スイッチ32がガスコンロの前面パネル38の内部に設けられ、前面パネル38に形成した挿通孔39を通して裏面側から挿通する状態で円筒状の回転操作部31が設けられている。そして、この回転操作部31は、その回転軸心方向の移動により、前記点消火スイッチ32を消火指令を指令する消火指令状態に操作する消火指令用の押し込み位置と、その押し込み位置よりも突出して点消火スイッチ32を点火指令を指令する点火指令状態に操作する点火指令用の突出位置とに切り換え自在に構成され、且つ、前記突出位置にて前記燃焼量を調整すべく回転操作自在に構成されている。
【0031】
詳述すると、回転操作部31は、押し操作される毎に回転軸心方向に移動して、図示しない位置保持機構によって、前面パネル38とほぼ面一になる押し込み位置と前方に突出する突出位置とに切り換え自在に構成され、回転操作部31が前記突出位置に切り換えられているときに、正転方向及び逆転方向の夫々にその軸心周りで回動操作可能となるように構成されている。そして、この回転操作部31が押し込み位置に切り換えられるとそれに伴って点消火スイッチ32がOFF(オフ)状態となり、回転操作部31が突出位置に切り替えられるとそれに伴って点消火スイッチ32がON(オン)状態となるように連動して切り換わる構成となっている。図2に示すように、この点消火スイッチ32の切り換え信号は燃焼制御部Hに入力されており、燃焼制御部Hはこの点消火スイッチ32がON状態に切り換わると高火力バーナ1aに対する点火作動を開始し、OFF状態に切り換わると高火力バーナ1aの燃焼作動を停止するように構成されている。
つまり、前記回転操作部31及び点消火スイッチ32により、点消火指令部28が構成されている。
【0032】
又、前記前面パネル38の内部には、回転操作部31の回転操作に伴ってパルス信号を出力するパルス発生手段としてのロータリーエンコーダ33が設けられている。つまり、このロータリーエンコーダ33の操作軸34に前記回転操作部31が一体回動自在に且つ軸心方向での相対移動を許容する状態で接続されている。このロータリーエンコーダ33は、回転操作部31の一方向への回転操作に伴って2つのパルス信号のうちの一方のパルス信号が他方のパルス信号より位相が進み、回転操作部31の他方向への回転操作に伴って前記他方のパルス信号が前記一方のパルス信号より位相が進む状態で、回転操作部31の回転操作に伴って互いに異なる位相の2つのパルス信号を出力するように構成されている。つまり、このロータリーエンコーダ33は、2つの出力端子を備えており、その2つの出力端子から上述したような位相の異なるパルス信号が出力される構成である。このようなロータリーエンコーダ33は周知のものであるから詳細な構成についての説明は省略する。
【0033】
図1に示すように、前記前面パネル38の外面側において前記各回転操作部31の周囲には火力を表示する複数のLEDランプ35を並べる状態で火力を表示する前面火力表示部36が設けられている。この前面火力表示部36は複数のLEDランプ35をレベルメータとして用いて、回転操作部31にて設定された燃焼量(火力)の大きさを燃焼量の大きさに応じた数のLEDランプを点灯させて表示する構成となっている。この実施形態では、火力の大きさが最小火力から最大火力まで、高火力バーナ1a及び高火力バーナ1cでは5段階に変更調整でき、小バーナ1cでは3段階に変更調整できる構成となっているので、高火力バーナ1a及び高火力バーナ1cの夫々に対応する前面火力表示部36は、5個のLEDランプにて構成され、小バーナ1cに対応する前面火力表示部36は、3個のLEDランプにて構成されている。
【0034】
つまり、高火力バーナ1a及び高火力バーナ1cの夫々は、その燃焼量を5段階の設定燃焼量に調節できるように構成され、又、小バーナ1cは、その燃焼量を3段階の設定燃焼量に調節できるように構成されている。
【0035】
図1に示すように、前記天面表示部70は、高火力バーナ1a、小バーナ1b及び高火力バーナ1c夫々に対応する3個の天面火力表示部71と、グリルバーナ2に対応するグリル燃焼表示部73とから構成されている。
前記天面火力表示部71は、前面火力表示部36と同構成であり、複数のLEDランプをレベルメータとして用いて回転操作部31にて設定された燃焼量(火力)の大きさを燃焼量の大きさに応じた数のLEDランプを点灯させて表示する構成となっている。又、前記グリル燃焼表示部73は、1個のLEDランプから構成され、グリルバーナ2を点火させるとその燃焼状態をLEDランプを点灯させて表示する構成となっている。
【0036】
そして、燃焼制御部Hは、図2に示すように、高火力バーナ1a、小バーナ1b及び高火力バーナ1c夫々に対応するロータリーエンコーダ33にて発生するパルス信号に基づいて、高火力バーナ1a、小バーナ1b及び高火力バーナ1c夫々に対する燃料供給量を調整するように高火力バーナ1a、小バーナ1b及び高火力バーナ1c夫々に対する流量制御弁18の作動を制御するよう構成されている。つまり、燃焼制御部Hは、ロータリーエンコーダ33から出力される前記パルス信号に基づいて、回転操作部31の回転操作方向並びに回転操作量を判別するとともに、その判別した回転操作方向並びに回転操作量に対応させて高火力バーナ1a等の燃焼量を調整することになるが、そのとき、ロータリーエンコーダ33から出力される2つのパルス信号のデータを予め定めた設定単位時間毎に繰り返し読み込み、その読み込まれた前記2つのパルス信号のデータにおけるデータパターンに基づいて、回転操作部31の回転操作方向並びに回転操作量を判別するように構成されている。
【0037】
つまり、前記回転操作部31及びロータリーエンコーダ33により、前記燃焼量調節操作部29が構成されている。
【0038】
又、図2に示すように、燃焼制御部Hは、高火力バーナ1a、小バーナ1b及び高火力バーナ1c夫々に対応するロータリーエンコーダ33にて発生するパルス信号に基づいて、高火力バーナ1a、小バーナ1b及び高火力バーナ1c夫々の火力を高火力バーナ1a、小バーナ1b及び高火力バーナ1c夫々に対応する前面火力表示部36及び天面火力表示部71にて表示するように構成されている。
つまり、燃焼制御部Hは、前面火力表示部36及び天面火力表示部71を同様に制御するように構成され、例えば、高火力バーナ1aに対応するロータリーエンコーダ33にて発生するパルス信号が火力3に対応する場合は、前面火力表示部36を構成するLEDランプを3個点灯させ、且つ、天面表示部71を構成するLEDランプを3個点灯させる。
【0039】
又、図2に示すように、このガスコンロには各種情報を音声にて報知する報知手段としてのスピーカ37が備えられており、燃焼制御部Hは、各種情報をこのスピーカ37により報知させるように構成されている。
【0040】
次に、前記燃焼制御部Hの制御動作について説明する。
尚、本発明に係る制御は、前記高火力バーナ1a及び前記高火力バーナ1cを対象にして実行するので、前記小バーナ1b及び前記グリルバーナ2を対象にした燃焼制御部Hの制御動作の説明は省略する。
又、高火力バーナ1a及び高火力バーナ1c夫々を対象にした燃焼制御部Hの制御動作は同様であるので、以下では、高火力バーナ1aを対象にした制御動作について説明して、高火力バーナ1cを対象にした制御動作の説明は省略する。
又、前記元ガス電磁弁13は、高火力バーナ1a、小バーナ1b、高火力バーナ1c及びグリルバーナ2のうちの少なくとも一つに対応する点消火スイッチ32がON状態のときは開弁し、高火力バーナ1a、小バーナ1b、高火力バーナ1c及びグリルバーナ2夫々に対応する点消火スイッチ32の全てがOFF状態のときは、閉弁状態に維持するので、以下の説明では、この元ガス電磁弁13の制御については説明を省略する。
【0041】
設定入力パネル50において、温調モードを選択すると、燃焼制御部Hは、温度センサ11の検出温度が、設定入力パネル50で設定した設定温度に維持されるように高火力バーナ1aの火力を制御すべくステッピングモータ19を制御する、温調モード制御を実行する。つまり、燃焼制御部Hが温調モード制御を実行すると、温度センサ11の検出温度が上記設定温度より所定温度(例えば3℃)以上高い加熱量余剰状態のときには、高火力バーナ1aの火力を小火力に維持し、温度センサ11の検出温度が上記設定温度より所定温度(例えば3℃)以上低い加熱量不足状態のときには、高火力バーナ1aの火力を大火力に維持することになる。
【0042】
しかし、例えば、設定温度を170℃として天ぷら調理を行っている場合において、天ぷら鍋には天ぷら油だけが満たされており、具材が存在しない状態で、温度センサ11の検出温度が例えば174℃を検出して、高火力バーナ1aの火力が小火力に維持されているときに、使用者が上記天ぷら鍋に具材を投入したときには、上記天ぷら鍋に満たされた天ぷら油の温度が急激に低下することになるが、このときに、高火力バーナ1aの火力を大火力に維持すべく、何の予告もなく燃焼制御部Hによってステッピングモータ19が駆動されると、使用者は急に高火力バーナ1aの火力が小火力から大火力に変化することに驚いたり不快に感じたりしてしまうおそれがあるため、燃焼制御部Hは、高火力バーナ1aの火力を大火力に維持すべくステッピングモータ19を駆動する前に、自動温度調節火力増加報知として、スピーカ37に信号を送出して、「大火力に変更します。」などの音声による報知を行う。
【0043】
ただし、上記音声による報知は、上記加熱量不足状態ではない状態から上記加熱量不足状態になったときに毎回行うものではなく、温度センサ11が検出する温度が低下する勾配の絶対値が所定値(例えば毎秒2℃)より小さいときには上記音声による報知は行わず、温度センサ11が検出する温度が低下する勾配の絶対値が所定値(例えば毎秒2℃)以上のときにのみ上記音声による報知を行う。このようにすることで、加熱量余剰状態のときに高火力バーナ1aの火力を小火力に維持した後に、温度センサ11の検出温度が上記設定温度より所定温度(例えば3℃)以上低い加熱量不足状態に至る場合など、温調モード制御を実行中において頻繁に現出する、上記加熱量不足状態ではない状態から上記加熱量不足状態への移行時に、頻繁に上記音声による報知を行った場合の煩わしさがないようにしてある。
【0044】
しかも、使用者が上記天ぷら鍋に具材を投入し、温度センサ11が検出する温度が急勾配で低下する場合などの、使用者が高火力バーナ1aに接近したことが想定されるときには、上記音声による報知を行うから、高火力バーナ1aに接近した使用者が、急に高火力バーナ1aの火力が小火力から大火力に変化することに驚いたり不快に感じてしまうことがない。
【0045】
因みに、設定入力パネル50において、温調モードを選択してない場合であっても、燃焼制御部Hは、温度センサ11の検出温度が、所定の設定温度(例えば270℃)に維持されるように高火力バーナ1aの火力を制御すべくステッピングモータ19を制御する、高温キープ温調モード制御を実行する。
【0046】
さらに、燃焼制御部Hは、高火力バーナ1aの燃焼中において、被加熱物検出スイッチ10がオフして被加熱物の不存在を検出すると、高火力バーナ1aの燃焼量を不存在時燃焼量(例えば最小火力)に低下させる不存在時燃焼量低下処理を実行し、その後、被加熱物検出スイッチ10がオンして被加熱物の存在を検出すると、高火力バーナ1aを前記不存在時燃焼量から増加させる燃焼量増加処理を実行するように構成されており、この燃焼量増加処理の実行の前にも音声報知(燃焼量増加報知)を行うように構成されている。この音声報知(燃焼量増加報知)を行うことで、例えば、高火力バーナ1aの燃焼中に不存在時燃焼量低下処理を実行しているときに、ミルクあたため用の小径なべが五徳上に載置された場合に、高火力バーナ1aに接近した使用者が、急に高火力バーナ1aの火力が燃焼量増加処理の実行によって小火力から大火力に変化することに驚いたり不快に感じたりしてしまうことを防止している。
【0047】
設定入力パネル50に設けたセンサ解除スイッチ(図示せず)を操作することで、燃焼制御部Hは、高火力バーナ1aの燃焼中において被加熱物検出スイッチ10がオフして被加熱物の不存在を検出した場合であっても前記不存在時燃焼量低下処理を実行しないように設定される制御モードである、センサ解除モードを実行する。このセンサ解除モードを実行しているときには、温度センサ11が検出した温度の低下の勾配の絶対値が所定値より小さいときにも上記加熱量不足状態ではない状態から上記加熱量不足状態になったときには毎回上記音声報知(自動温度調節火力増加報知)を行うように構成されている。
【0048】
さらに詳述すると、センサ解除モードは、乾し海苔をあぶって焼きのりを作ったり、塩とゴマ油をまぶした乾し海苔をあぶって韓国のりを作ったりする場合などを想定したもので、このような場合には使用者の手が高火力バーナ1aに接近している蓋然性が高いものである。一方、センサ解除モードにおいても燃焼制御部Hは上述の高温キープ温調モード制御を実行するが、五徳6上に鍋が載置されていない状態においては、高火力バーナ1aの炎によって温度センサ11があぶられることで、上記加熱量不足状態ではない状態から上記加熱量不足状態への移行が現出して高火力バーナ1aの火力が小火力から大火力に変化する状態変化が現出することになる。
【0049】
このとき、上記加熱量不足状態ではない状態から上記加熱量不足状態への移行時には、毎回上記音声による報知(自動温度調節火力増加報知)を行うから、高火力バーナ1aに接近した使用者が、急に高火力バーナ1aの火力が小火力から大火力に変化することに驚いたり不快に感じたりすることがない。
【0050】
燃焼制御部Hは、いずれかのバーナにおいて、点消火指令部28及び燃焼量調節操作部29による操作、または、設定入力パネル50における操作が成されてから所定の設定時間(例えば20秒)経過するまでは、温度センサ11が検出した温度の低下の勾配の絶対値が所定値より小さいときにも上記加熱量不足状態ではない状態から上記加熱量不足状態になったときには毎回上記音声報知(自動温度調節火力増加報知)を行うように構成されている。
【0051】
このようにすることで、例えば、使用者が、高火力バーナ1aの燃焼中に、高火力バーナ1cによる温調モードを選択しており、高火力バーナ1aの方には注意が向いていない状態であることが、想定されるときにも、上記音声による報知を行うから、高火力バーナ1aの火力が燃焼量増加処理の実行によって小火力から大火力に変化することに驚いたり不快に感じたりすることがない。
【0052】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を説明する。
(イ)上記実施例として、自動温度調節火力増加報知や燃焼量増加報知としてスピーカ37を用いて音声により報知する実施例を示したが、音声による報知に限定されるものではなく、例えば、自動温度調節火力増加報知や燃焼量増加報知情報を表示する表示装置や、ブザー、ランプ等にて構成することが可能である。又、スピーカ37、表示装置、ブザー及びランプのうちの複数を用いて構成しても良い。
【0053】
(ロ)上記第1実施形態においては、高火力バーナ1aと高火力バーナ1cとを備えるダブル高火力仕様に構成されているが、高火力バーナ1aと高火力バーナ1cの、いずれか一方またはその両方を標準火力バーナによって構成してもよい。
【0054】
(ハ)上記第1実施形態では、被加熱物検出手段を備え不存在時燃焼量低下処理を実行する構成を示したが、被加熱物検出手段を備えず不存在時燃焼量低下処理を実行しない構成としてもよい。この場合に、たとえば、鍋が五徳に載置された状態から鍋が五徳に載置されない状態に変化したときに、バーナに供給される燃焼用2次空気の流れの変化に起因して、温度センサ11による検出温度が低下したときに、バーナの火力を小火力から大火力に切り替わる場合にも、バーナの火力を小火力から大火力に切り替わる前に報知されるから、使用者が驚いたり不快に感じたりすることが抑制される。
【0055】
(ニ)前記被加熱物検出手段の具体構成としては、上記の実施形態において例示した被加熱物検出スイッチ10に限定されるものではない。
例えば、前記上下可動部9bの両横側方に振り分けて配置した磁石とリードスイッチ、及び、前記上下可動部9bが押し下げられると前記磁石と前記リードスイッチとの間に位置し且つ前記上下可動部9bが上方に復帰すると前記磁石と前記リードスイッチとの間から退出するように前記上下可動部9bに取り付けた磁性体にて構成することが可能である。
あるいは、投射光が加熱用位置に位置する被加熱物により反射されることにより、あるいは、投射光が加熱用位置に位置する被加熱物により遮蔽されることにより、被加熱物の存在を検出するように構成した光センサにて構成することが可能である。
あるいは、五徳6上に被加熱物が載置されることにより検出重量が変動するように配置したロードセルにて構成することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1a,1c バーナ
10 被加熱物検出手段
11 温度検出手段
29 燃焼量調節操作部
37 報知手段
H 燃焼制御手段
図1
図2
図3
図4
図5