特許第6150947号(P6150947)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6150947樹脂ビーズ、樹脂ビーズの製造方法並びに該樹脂ビーズを含む製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150947
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】樹脂ビーズ、樹脂ビーズの製造方法並びに該樹脂ビーズを含む製品
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20170612BHJP
   C08F 2/18 20060101ALI20170612BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20170612BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20170612BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20170612BHJP
   A61K 8/89 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   C08F2/44 C
   C08F2/18
   A61Q19/00
   A61Q5/00
   A61Q1/00
   A61K8/89
【請求項の数】11
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-532909(P2016-532909)
(86)(22)【出願日】2015年7月3日
(86)【国際出願番号】JP2015069234
(87)【国際公開番号】WO2016006540
(87)【国際公開日】20160114
【審査請求日】2016年8月8日
(31)【優先権主張番号】特願2014-141641(P2014-141641)
(32)【優先日】2014年7月9日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(72)【発明者】
【氏名】安部 隆士
【審査官】 久保田 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−138034(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/102296(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0086966(US,A1)
【文献】 特開平10−007704(JP,A)
【文献】 特開2000−034310(JP,A)
【文献】 特開2002−003517(JP,A)
【文献】 特開平08−109279(JP,A)
【文献】 特開2010−248275(JP,A)
【文献】 特開昭60−008302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−2/60
A61Q 1/00
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分と非重合性のシリコーン化合物とを含んでなる樹脂ビーズであって、共重合可能な官能基を有する単量体を複数含む単量体混合物、少なくとも、非重合性のシリコーン化合物(但し、単量体を吸収するラジカル重合性不飽和結合を有さないオルガノポリシロキサン粒子を除く)を含む重合性溶液を、分散安定化剤を溶解した水相で懸濁重合してなる、前記シリコーン化合物が内部に含有されてなり、且つ、表面が粗面化している樹脂粒子であることを特徴とする樹脂ビーズ。
【請求項2】
前記重合性溶液中に、非重合性のシリコーン化合物が、樹脂の形成成分である前記単量体混合物100質量部に対して1.0〜30質量部の割合で添加されている請求項1に記載の樹脂ビーズ。
【請求項3】
前記非重合性のシリコーン化合物が、シリコーン重合体である請求項1又2に記載の樹脂ビーズ。
【請求項4】
前記非重合性のシリコーン化合物が、シリコーンアクリル共重合体、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル・アルキル変性シリコーン及びシリコーンエラストマーからなる群から選択されるいずれかである請求項1又は2に記載の樹脂ビーズ。
【請求項5】
前記共重合可能な官能基を有する単量体が、(メタ)アクリレート系である請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂ビーズ。
【請求項6】
前記単量体混合物中に、共重合可能な官能基を複数有する単量体を含み、且つ、その含有量が10質量%以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂ビーズ。
【請求項7】
前記共重合可能な官能基を複数有する単量体が、ジ(メタ)アクリレートである請求項6に記載の樹脂ビーズ。
【請求項8】
更に、顔料が存在している状態で懸濁重合してなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂ビーズ。
【請求項9】
前記樹脂粒子の体積平均粒子径が20μm以下である請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂ビーズ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂ビーズを製造する樹脂ビーズの製造方法であって、共重合可能な官能基を有する単量体を複数含む単量体混合物、非重合性のシリコーン化合物(但し、単量体を吸収するラジカル重合性不飽和結合を有さないオルガノポリシロキサン粒子を除く)、重合開始剤、及び必要に応じて顔料を含む重合性溶液を、分散安定化剤を溶解した水相で懸濁重合させて、前記シリコーン化合物を内部に含有させた、少なくとも撥水性を有し、且つ、その表面が粗面化した、樹脂成分と非重合性のシリコーン化合物とを含んでなる樹脂ビーズを得ることを特徴とする樹脂ビーズの製造方法。
【請求項11】
樹脂ビーズを含有してなる、化粧料、外皮用薬、塗料、成形体、フィルム、コーティング剤及び樹脂組成物からなる群から選ばれるいずれかの製品であって、前記樹脂ビーズが、請求項1〜9のいずれか1項に記載の樹脂ビーズであることを特徴とする撥水性及び吸油性を有する製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非重合性のシリコーン化合物を含有してなる樹脂粒子である樹脂ビーズ、その製造方法、及びその用途に関する。更に詳しくは、本発明は、撥水性を付与できる機能性材料である非重合性のシリコーン化合物を内部に固定化して含有し、且つ、樹脂粒子表面が粗面化されてなる吸油性を有する樹脂ビーズ、該樹脂ビーズの製造方法、このような機能性を求める分野の製品である、例えば、化粧料、塗り薬や貼り薬といった外皮用薬、塗料、成形体、フィルム、コーティング剤、或いは、樹脂組成物等への利用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂ビーズは、その球状特性から、艶消し剤、滑り剤、ブロッキング防止剤等、様々な分野に用いられている。更に、化粧料においても、メーキャップ用途として、伸展性向上のために種々の樹脂粉体(樹脂粒子)が用いられている。しかし、これら樹脂粉体は、水や汗により流れ出し易く、その場合には化粧崩れを生ずるという問題があり、化粧料に利用する場合には、肌への付着性を維持するなどの目的で、樹脂粉体の改質などが行われている。
【0003】
樹脂粉体の改質方法として、例えば、樹脂粉体を疎水化処理することで肌への付着性を改良する方法がある。その場合における疎水化処理の方法としては、粉体の表面に油剤を加熱処理する方法や、粉体にメチルハイドロジェンポリシロキサンを焼き付ける方法などが知られている。更に、より高い機能性を達成し、肌への付着性及び使用感に優れ、疎水性に富み、しかも化粧持ちの良好な化粧料を得る目的で、例えば、アクリル−シリコーン系グラフト共重合体で表面被覆した粉体についての提案がされている(特許文献1参照)。
【0004】
また、樹脂粉体を多孔質化することで付着性を改良する方法もある。多孔質化する方法としては、単量体と有機溶剤を含む油層を水中媒体中で懸濁重合させた後、有機溶剤を蒸留して多孔質樹脂粒子を得る方法があり、このようにすることで、より吸油量を増やして化粧もちを改善させることが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
また、特許文献3では、化粧料に多用されているシリコーン重合体に対し、撥水性を与えると同時に、皮膚などへの密着性の向上や、共存する油剤への相溶性が望まれているものの、相溶性向上のためシリコーン重合体に長鎖アルキル基(疎水性基)を導入すれば親水性が失われ、密着性を向上させるために親水性基を導入すれば疎水性が失われ、相溶性と密着性を同時に解決することは困難であるとしている。この課題に対し、特許文献3では、特定の構造のシリコーンマクロモノマーを特定量含む、異なる4種のモノマー単位を共重合してなる共重合体とすることで、撥水性を与えると同時に、皮膚などへの密着性を向上させ、化粧もちを改善できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平05−339125号公報
【特許文献2】特開2013−227535号公報
【特許文献3】特開2012−072081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記したメチルハイドロジェンポリシロキサンを焼き付ける方法では、使用する樹脂ビーズや反応条件によっては不均一な表面処理となる場合や、焼き付け温度によっては樹脂が熱劣化するといった問題があった。また、本発明者の検討によれば、特許文献1で提案されている、シリコーン−アクリル系グラフト共重合体を粉体表面に被覆する方法では、粉体によっては吸着が十分ではなく、併用する油剤等の分散媒の種類によっては、粉体表面から被覆樹脂が剥離したりする場合があり、樹脂粉体の改質効果が十分なものとは言い難かった。
【0008】
また、本発明者の検討によれば、特許文献2で提案されている多孔質樹脂粉体は、例えば、化粧料として使用した場合に、比表面積の高い粉体が過度な吸水作用や吸湿作用を引き起こすため、結果として、皮脂分泌を促進し、化粧崩れを起こし易い場合があり、樹脂粉体の改質効果として十分なものとは言い難かった。
【0009】
また、特許文献3では、特定の構造の重合性を有するシリコーンマクロモノマーを含むモノマー単位を共重合した共重合体を利用することで、べたつきが少なく、なめらかに伸び、さっぱりとした使用感を与え、撥水性に富むシリコーン重合体の性質を化粧料に付与できるとしている。しかし、本発明者の検討によれば下記の課題があった。特定の構造の重合性を有するシリコーンマクロモノマーを含むモノマー単位を共重合した共重合体を樹脂粉体表面に被覆する方法では、上記と同様に、粉体によっては吸着が十分ではなく、併用する油剤等の分散媒の種類によっては、粉体表面から被覆樹脂が剥離したりする場合があり、樹脂粉体の改質効果が十分なものとは言い難かった。更に、特定の構造の重合性を有するシリコーンマクロモノマーを含むモノマー単位を共重合した共重合体を化粧料に添加する方法では、化粧料に含まれる比表面積が高い他の粉体にも同時に作用するため、樹脂ビーズ表面に十分な量で吸着できなくなる場合や、前記共重合体が皮膚にも吸着するため、使用感としてつっぱり感を生ずる場合があり、化粧料としての改良効果が十分なものとは言い難かった。
【0010】
上記した実情から、本発明者は、原材料として使用することで、製品に撥水性と吸油性とを併せて付与することができる、例えば、化粧料の原料に使用した場合に、水や汗によっても化粧崩れが生じにくく、肌への伸びがよく、しかもべたつき感のない製品の実現を可能にできる樹脂ビーズを開発することの有用性を認識するに至った。
【0011】
従って、本発明の目的は、このような状況に鑑みてなされたものであって、添加することで、例えば化粧料などに用いた場合に、その製品に、高いレベルで安定した撥水性及び吸油性を併せて付与することができ、その結果、肌への伸びがよく、べたつき感がなく、しかも優れた化粧もちを可能にできる樹脂ビーズ、この樹脂ビーズの製造方法、及び、これを用いた優れた特性の各種製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、共重合可能な官能基を有する単量体を複数含む単量体混合物を、少なくとも、非重合性のシリコーン化合物が存在している状態で懸濁重合してなり、且つ、表面が粗面化している樹脂粒子であることを特徴とする樹脂ビーズを提供する。
【0013】
上記の樹脂ビーズの好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。すなわち、前記非重合性のシリコーン化合物の前記懸濁重合の際における存在量が、樹脂の形成成分である前記単量体混合物100質量部に対して1.0〜30質量部の割合で添加されていること;前記非重合性のシリコーン化合物が、シリコーン重合体であること;前記非重合性のシリコーン化合物が、シリコーンアクリル共重合体、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル・アルキル変性シリコーン及びシリコーンエラストマーからなる群から選択されるいずれかであること;前記共重合可能な官能基を有する単量体が、(メタ)アクリレート系であること;前記単量体混合物中に、共重合可能な官能基を複数有する単量体を含み、且つ、その含有量が10質量%以上であること;前記共重合可能な官能基を複数有する単量体が、ジ(メタ)アクリレートであること;更に、顔料が存在している状態で懸濁重合してなること;前記樹脂粒子の体積平均粒子径が20μm以下であることが挙げられる。
【0014】
本発明は、別の実施形態として、前記樹脂ビーズのいずれかを製造するための樹脂ビーズの製造方法であって、共重合可能な官能基を有する単量体を複数含む単量体混合物、非重合性のシリコーン化合物、重合開始剤、及び必要に応じて顔料を含む重合性溶液を、分散安定化剤を溶解した水相で懸濁重合させて、少なくとも撥水性を有し、且つ、その表面が粗面化した樹脂ビーズを得ることを特徴とする樹脂ビーズの製造方法を提供する。
【0015】
本発明は、別の実施形態として、樹脂ビーズを含有してなる、化粧料、外皮用薬、塗料、成形体、フィルム、コーティング剤及び樹脂組成物からなる群から選ばれるいずれかの製品であって、樹脂ビーズが、前記いずれかの樹脂ビーズであることを特徴とする撥水性及び吸油性を有する製品を提供する。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明によれば、樹脂ビーズが、例えば(メタ)アクリレート系などの、共重合可能な官能基を有する単量体を複数含む単量体混合物を、非重合性のシリコーン化合物が存在している状態で懸濁重合してなるため、その内部に非重合性のシリコーン化合物が固定化されており、該樹脂ビーズを添加した製品は、十分な撥水性が安定的に付与された従来にない特性のものとなる。更に、樹脂ビーズを構成している、例えば、アクリル樹脂のような樹脂部と、非重合性のシリコーン化合物との水親和力の違いから、樹脂粉体界面に不均化が生じ、図1に示したように、樹脂粒子表面が粗面化されて表面積が増大するため、吸油量が増加した優れた吸油性を併せ持つ樹脂ビーズとなる。このため、本発明の樹脂ビーズは、化粧料などに用いた場合に、十分な撥水性と、吸油効果とを安定的に同時に実現でき、優れた化粧もちを可能にできるので、特に、適用することにで顕著な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1の樹脂ビーズの樹脂粒子表面状態を観察した際の、電子顕微鏡写真の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の好ましい実施形態を挙げて、本発明について詳述する。本発明者は、化粧もちに優れた樹脂ビーズを実現させるために種々検討した結果、樹脂ビーズ内部に非重合性のシリコーン化合物が固定化されて含有されており、且つ、樹脂粒子表面が粗面化している樹脂ビーズを新たに見出した。そして、この樹脂ビーズを利用することで、優れた撥水性と吸油性(吸油効果)を安定的に同時に実現でき、例えば、この樹脂ビーズを化粧料に利用した場合には、汗などに含まれる水や体脂等により生じる化粧崩れを低減することができ、先に挙げた従来技術の課題をみごとに解決できることを見出して本発明に到達したものである。
【0019】
本発明の樹脂ビーズは、共重合可能な官能基を有する単量体を複数含む単量体混合物を、少なくとも、非重合性のシリコーン化合物が存在している状態で懸濁重合してなることを特徴とする。本発明の樹脂ビーズを構成する非重合性のシリコーン化合物は、非重合性のものであれば特に限定されず、適応する公知の非重合性のシリコーン化合物ならばいずれのものも使用できる。例えば、その使用目的を勘案して、化粧料、塗り薬や貼り薬といった外皮用薬、塗料、成形体、フィルム、コーティング剤、樹脂組成物に適したものを適宜に用いればよい。特に、化粧料の原料として用いられているシリコーンであって非重合性のものが好適である。
【0020】
本発明で使用する非重合性のシリコーン化合物としては、シリコーン重合体であることが好ましい。具体的なものとしては、以下のものが挙げられる。例えば、ポリエーテル変性系シリコーン、ポリエステル変性系シリコーン、アクリル変性系シリコーン、ポリエーテルエステル変性系シリコーン、ポリエーテルアルキル変性系シリコーン、ポリエーテルアクリル変性系シリコーン、ポリエステルアクリル変性系シリコーン、ポリグリセリン変性系シリコーン、ポリグリセリンアルキル変性系シリコーン、フェニル変性系シリコーン、アミノ変性系シリコーン、カルビノール変性系シリコーン、ポリアルコキシ変性系シリコーン、アミノポリエーテル変性系シリコーン、アミドアルキル変性系シリコーン、アミノグリコール変性系シリコーン、アミノフェニル変性系シリコーン、ポリエーテルシリコーンアルキル共変性系シリコーン、ポリグリセリンシリコーンアルキル共変性系シリコーン、アルキルシリコン共変性系シリコーンなどの、各種の有機基による変性シリコーンや、シリコーンアクリル共重合体、シリコーンエラストマー、トリメチルシロキシケイ酸系シリコーン(架橋構造を有するシリコーン油)、熱変性シリコーン、高分子系シリコーン等の重合体が挙げられる。また、これらの構造は直鎖でも分岐でも環状構造でもよく、また、高重合や架橋構造やグラフト重合されていてもよい。これらの非重合性のシリコーン化合物は、単独でまたは2種類以上使用してもよい。また、本発明者の検討によれば、その用途にもよるが、シリコーン化合物の中でも、化粧料適性に優れるシリコーンアクリル共重合体系シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル・アルキル変性シリコーン、シリコーンエラストマー系シリコーンなどの公知の非重合性のシリコーン化合物がより好適に使用できる。
【0021】
本発明の樹脂ビーズは、少なくとも上記したような非重合性のシリコーン化合物が存在している状態で、共重合可能な官能基を有する単量体を複数含む単量体混合物を懸濁重合してなり、且つ、少なくともその樹脂粒子表面が粗面化されている樹脂粒子(共重合体)であることを特徴とする。本発明の樹脂ビーズを構成する樹脂成分は、特に限定されず、適応する公知の樹脂ならばいずれのものも使用できる。例えば、その使用目的を勘案して、化粧料、外皮用薬、塗料、成形体、フィルム、コーティング剤、樹脂組成物に適したものを適宜に用いればよい。具体的には、例えば、(メタ)アクリレート系樹脂、スチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ(チオ)エーテル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂や、紫外線硬化樹脂、天然物由来高分子、熱変性シリコーン高分子、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0022】
したがって、本発明の樹脂ビーズの樹脂成分は、上記に挙げた樹脂を形成するための、共重合可能な官能基を有する単量体を複数選択し、これらを組み合わせて重合させたものであればいずれのものでもよい。本発明で使用する共重合可能な官能基を有する単量体(モノマー)のより好適なものとしては、共重合可能な官能基を複数有する、多官能性モノマーや架橋作用性モノマーが挙げられる。これらのモノマーの詳細については後述する。また、本発明者の検討によれば、その用途にもよるが、共重合可能な官能基を有する単量体の中でも、透明性等の化粧料適性に優れる(メタ)アクリレートなどのアクリル系樹脂を形成する単量体がより好ましい。具体的には、公知のアクリル系またはメタクリル系のモノマーが、中でもメタクリル系のモノマーがより好適に使用できる。なお、本明細書中において、(メタ)アクリレートとは、メタクリレートまたはアクリレートを意味する。例えば、メタクリル酸ラウリルなどのメタクリル酸エステル類を好適に用いることができる。
【0023】
本発明者の検討によれば、本発明の樹脂ビーズを構成する樹脂の形成成分としては、共重合可能な官能基を複数有する単量体を、使用する全単量体中に、10質量%以上、更には20質量%以上を含むように構成することが好ましい。すなわち、このように構成することで、懸濁重合によって形成した樹脂ビーズは、非重合性のシリコーン化合物を内部に固定化し、樹脂内での移動を妨げる適性がより向上したものとなるので、例えば、化粧料に使用した場合、より均一で良好な撥水効果が得られ、且つ、該効果をより安定に維持できるものとなる。
【0024】
本発明で好適に使用される共重合可能な官能基を複数有する単量体としては、共重合可能な、下記に挙げるような、多官能性モノマーや架橋作用性モノマーが挙げられる。共重合可能な多官能性モノマー又は架橋作用性モノマーは、共重合の能力がある二重結合を含む一般的な共重合性モノマーが用いられる。本発明に好適な、このような架橋に適したモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、などの(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレートなどの脂肪族系の2官能(メタ)アクリレートや、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレートなどの脂環或いは芳香族系の2官能(メタ)アクリレートが挙げられる。中でも、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどの脂肪族系の2官能(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、更に、(ポリ)エチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレートなどの脂肪族系の2官能メタクリレートを用いることがより好ましい。
【0025】
また、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレートなどの3官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの6官能(メタ)アクリレート、及びこれらの誘導体等の(メタ)アクリレート類、キシリレンビスオキセタン、3−エチル−3[[(3−エチルオキセタン−3イル)メトキシ]メチル]オキセタン等のオキセタン類、この他、ウレタンジ(メタ)アクリレート、ウレタントリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート変性類などが例示できる。
【0026】
また、本発明者の検討によれば、上記したような単量体を重合してなる樹脂成分を有する本発明の樹脂ビーズは、前記したような非重合性のシリコーン化合物を、樹脂成分に対して下記の範囲で含有してなるものであることが好ましい。すなわち、本発明の樹脂ビーズは、非重合性のシリコーン化合物が、樹脂の形成成分である単量体混合物100質量部に対して1.0〜30質量部の割合で使用して含有されていることが好ましい。上記割合が1.0質量部未満であると撥水効果または粗面化効果の発現が少なくなる場合があり、30質量部を超えると、使用量の増加に見合った顕著な効果が期待できず、経済性に劣る場合があるので好ましくない。樹脂ビーズの用途にもよるが、本発明の樹脂ビーズは、非重合性のシリコーン化合物が、樹脂の形成成分である単量体100質量部に対して1.0〜25質量部、更には、1.0〜20質量部の割合で使用されて含有されていることが好ましい。
【0027】
また、本発明者の検討によれば、必須の構成成分として、上記した樹脂成分と非重合性のシリコーン化合物を含んでなる本発明の樹脂ビーズは、その用途にもよるが、これらの成分以外に、顔料を含有してもよい。具体的には、上記した非重合性のシリコーン化合物に加えて、顔料が存在している状態で懸濁重合することで、顔料を含有してなる樹脂ビーズとできる。その際に使用する顔料の一例として、二酸化チタン、酸化亜鉛、弁柄(ベンガラ)、黄酸化鉄、黒酸化鉄等の金属酸化物や、法定色素和名の黄色4号、赤色202号、青色1号、カーボンブラックなどが挙げられる。また、マイカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウムなどの体質顔料や、顔料を分散させる界面活性剤や分散剤を含有してもよい。更に、紫外線吸収成分を含有してもよく、その一例として、微粒子二酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、ジベンゾイルメタン系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0028】
また、これらの構成成分を含んでなる本発明の樹脂ビーズは、体積平均粒子径が20μm以下の大きさの微粒子であることが好ましく、体積平均粒子径が15μm以下の範囲内の微粒子であることがより好ましい。前記の範囲内である場合、本発明の樹脂ビーズは、例えば、化粧料用の樹脂ビーズに要求される特性の、滑り性やソフトフォーカス性を効果的に発現させることができる。
【0029】
本発明の樹脂ビーズの製造方法は、共重合可能な官能基を有する単量体を複数含む単量体混合物、非重合性のシリコーン化合物、重合開始剤、及び必要に応じて顔料を含む重合性溶液を、分散安定化剤を溶解した水相で懸濁重合させることを特徴とする。このように構成することで、少なくとも撥水性を示し、且つ表面が粗面化した樹脂粒子を安定して製造することができ、均一で、良好な撥水性と吸油効果を併せ持つ本発明の樹脂ビーズが得られる。なお、本発明において規定する「単量体混合物」とは、反応時に2以上の単量体が併存していることを意味しており、後述するように、必ずしも複数の単量体を予め混合した状態にすることを意味したものではない。本発明では、水相で懸濁重合させるための油相の重合性溶液を、例えば、下記のようにして調製し、これを用いて樹脂ビーズを得ることが好ましい。まず、予め、単量体混合物と、非重合性のシリコーン化合物と、重合開始剤と、必要に応じて有機溶剤を添加して混合して、油相となる重合性溶液を調製する。そして、このようにして調製した重合性溶液を、分散安定化剤を溶解した水相で懸濁重合させることで、非重合性のシリコーン化合物を内部に固定化して含有してなる本発明の樹脂ビーズを安定して容易に得ることができる。
【0030】
上記において使用する重合開始剤としては、本発明の目的を達成し得るものであれば、公知のいずれのものを使用してよい。具体的には、下記に挙げるようなものを使用することができる。例えば、過酸化物系では、ラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサエイト)などが挙げられ、アゾ化合物では、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソラク酸アルキルエステルなどが挙げられる。これらは単独で使用しても、又は2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0031】
本発明の製造方法に有機溶剤を用いる場合、公知のいずれのものも好ましく使用できる。本発明において、好適に使用できる有機溶剤としては、例えば、下記のものが挙げられる。例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤や、n−ブタノール等のアルコール類や、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤や、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤や、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエステル系溶剤等を用いることができるが、特に限定されない。これらは単独で使用しても、或いは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
本発明の主旨を損なわない範囲で、樹脂ビーズを内部に空孔を有する多孔質構造にすることもできる。この際に用いる多孔質の樹脂ビーズの製造方法は、公知のいずれのものも好ましく使用できる。製造方法として有機溶剤を用いる場合において、公知のものを使用できる。この場合に好適に使用できる有機溶剤としては、上記した有機溶剤に加えて、例えば、n−ヘキサン、n−オクタン、n−ドデカン等の飽和脂肪族炭化水素類も用いることができるが、特に限定されない。これらは単独で使用しても、或いは2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0033】
本発明の樹脂ビーズの製造方法で行う懸濁重合は、脱イオン水に、分散安定化剤(保護コロイド)を溶解した水媒体(水相)を調製し、このように調製した水媒体中に、上記した構成の重合性溶液を撹拌しながら混合して行う。この際、必要ならばホモジナイザーなどの乳化装置を用いて重合性溶液の懸濁液滴径を調整するとよい。ホモジナイザーなどは、その回転数を変えてせん断力を調整することにより、容易に重合性溶液の懸濁液滴径を調整でき、その結果、懸濁重合して得られる樹脂粒子の粒子径を適宜に調整することが可能になる。
【0034】
ホモジナイザーなどの乳化装置により作成された懸濁液滴は、液滴調整中や重合装置への移送中や重合過程中に液滴の破壊や合一など不具合が発生しないように、分散安定化剤の種類、濃度を設定することが好ましい。本発明において好適に使用される分散安定化剤としては、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、アクリル酸ソーダなどの水溶性高分子、ハイドロキシアパタイト、第3リン酸カルシウム、炭酸カルシウムなどの無機塩類が挙げられる。これらは単独で使用しても、或いは2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0035】
上記のようにして得られた懸濁液は、例えば、温度60〜80℃にて3〜10時間加熱し懸濁重合を行うことにより、本発明の樹脂ビーズが得られる。更に、洗浄工程にて分散安定剤などを除去した後、脱イオン水等に解膠して分散し、再度洗浄工程にて溶解物を除去し、必要があれば洗浄を繰り返した後、乾燥する。凝集した状態で得られた粒子は、解砕して粉状の樹脂ビーズが得られる。上記のようにして得られる、本発明の、少なくとも撥水性を有し、且つ、その表面が粗面化した樹脂ビーズは、化粧料、塗り薬や貼り薬といった外皮用薬、塗料、成形体、フィルム、コーティング剤、樹脂組成物の構成材料に利用できる。実施例では、化粧料として用いる場合を応用例として説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を、実施例及び比較例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。なお、文中「部」または「%」とあるのは質量基準である。
【0037】
実施例及び比較例では、特に記載がない限り、懸濁重合の水相を構成する分散安定剤には、部分ケン化ポリビニルアルコールを用い、重合開始剤には、アゾ化合物を用いた。具体的には、分散安定剤には、部分ケン化ポリビニルアルコール(以下、これを「PVA」と略記)である、クラレ社製のポバール205(商品名)を用い、重合開始剤には、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)である、和光純薬工業社製のV−65(以下、V−65と略記)を使用した。
【0038】
<実施例1>(重合性モノマー液中に、非重合性のシリコーンアクリル共重合体を含有させて製造した例)
まず、予め調製した、ポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NK1G)200部にV−65を4部溶解した溶液に、ラウリルメタアクリレート(花王社製、商品名:LMA)200部と、非重合性のシリコーンアクリル共重合体(信越化学工業社製、商品名:KP−578、有効成分100%)28部を加え、これらを均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した。上記で使用したKP−578は、アクリルポリマーと、ジメチルポリシロキサンからなるグラフト共重合体である。25℃における粘度は、150〜200mPa・sである。
【0039】
次に、別の容器に、イオン交換水1600部に、分散安定剤としてPVAを80部溶解した水相中に、上記で調製した重合性モノマー液を加えて混合し、ディゾルバーにて2500rpmで5分間撹拌した後、更に、ホモジナイザーを用いて8000rpmで5分間撹拌して、均一な懸濁液を得た。
【0040】
次に、撹拌機、窒素ガス導入管を備え付けた重合装置の反応缶に、上記で得た懸濁液を仕込み、70℃、6時間続けて重合反応を行った。冷却後、この懸濁液から生成した樹脂微粒子を濾過洗浄した。このようにして得られた樹脂ビーズを、イオン交換水に再解膠した後、懸濁液から微粒子を濾過洗浄した。更に、乾燥、解砕処理を行って、非重合性のシリコーン化合物を内部に固定化して含有してなる樹脂ビーズを得て、これを本実施例の樹脂ビーズとした。
【0041】
<実施例2>(重合性モノマー液中に、非重合性のポリエーテルアルキル共変性シリコーンを含有させて製造した例)
まず、ヘキサンジオールジメタクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NKエステル HD−N)200部に、メタクリル酸ブチル(三菱レイヨン社製)200部と、非重合性のポリエーテルアルキル共変性シリコーン(信越化学工業社製、商品名:KSG−310、有効成分25〜35%)80部と、予め調製した、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20部にV−65を4部溶解した溶液を加えた。そして、これらを均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した。次に、別の容器に、イオン交換水1600部に、分散安定剤としてPVAを88部溶解した水相を用いて行った以外は、実施例1と同様に、その後の洗浄などの操作を行い、非重合性のシリコーン化合物を内部に含有してなる樹脂ビーズを得て、これを本実施例の樹脂ビーズとした。上記で使用したKSG−310は、ポリエーテルアルキル共変性シリコーン25〜35%と、ミネラルオイルの混合物で、化粧品に使用されている材料である。
【0042】
<実施例3>(重合性モノマー液中に、非重合性のシリコーンエラストマーを含有させて製造した例)
予め調製した、ヘキサンジオールジメタクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NKエステル HD−N)80部にV−65を4部溶解した溶液に、ラウリルメタアクリレート(花王社製、商品名:LMA)320部と、非重合性のシリコーンエラストマー(東レ・ダウコーニング社製、商品名:9040S.E.B、有効成分15%)100部を加え、これらを均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した以外は実施例1と同様に操作し、非重合性のシリコーン化合物を内部に固定化して含有してなる樹脂ビーズを得て、これを本実施例の樹脂ビーズとした。上記で使用したシリコーンエラストマー(商品名:9040S.E.B)は、ジメチコンクロスポリマー12%とシクロペンタシロキサン88%の混合物である。
【0043】
<実施例4>(重合性モノマー液中に、非重合性のポリエーテル・アルキル共変性シリコーンを含有させて製造した例)
まず、ヘキサンジオールジメタクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NKエステル HD−N)200部に、メタクリル酸ブチル(三菱レイヨン社製)200部と、非重合性のポリエーテル・アルキル共変性シリコーン(信越化学工業社製、商品名:KF−6038、有効成分100%)8部を加え、予め調製した、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20部にV−65を4部溶解した溶液を加えた。そして、これらを均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した以外は、実施例1と同様に、その後の洗浄などの操作を行い、非重合性のシリコーン化合物を内部に含有してなる樹脂ビーズを得て、これを本実施例の樹脂ビーズとした。上記で使用したシリコーン共重合体は、ポリエーテル・アルキル共変性シリコーン界面活性剤(HLB=3.0)として市販されているものであり、ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンである。
【0044】
<実施例5>(重合性モノマー液中に、非重合性のポリエーテル変性シリコーンを含有させて製造した樹脂ビーズの例)
まず、予め調製した、ポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NK1G)200部にV−65を4部溶解した溶液に、ヘキサンジオールジメタクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NKエステル HD−N)200部と、非重合性のポリエーテル変性シリコーン(信越化学工業社製、商品名:KF−6016、有効成分100%)60部を加え、これらを均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した以外は実施例1と同様に操作し、非重合性のシリコーン化合物を内部に固定化して含有してなる樹脂ビーズを得て、これを本実施例の樹脂ビーズとした。上記で使用したシリコーン共重合体は、ポリエーテル変性シリコーン界面活性剤(HLB=4.5)として市販されており、PEG−9・メチルエーテルジメチコンである。
【0045】
<実施例6>(重合性モノマー液中に、非重合性のシリコーンアクリル共重合体を含有させて製造した多孔質樹脂ビーズの例)
まず、予め調製した、ポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NK1G)200部に、V−65を4部溶解した溶液に、ラウリルメタアクリレート(花王社製、商品名:LMA)200部と、実施例1で使用したと同様の非重合性のシリコーンアクリル共重合体(信越化学工業社製、商品名:KP−578、有効成分100%)36部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート400部を加え、これらを均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した以外は実施例1と同様に操作し、非重合性のシリコーン化合物を内部に固定化して含有してなる多孔質樹脂ビーズを得て、これを本実施例の樹脂ビーズとした。この例では、単量体と有機溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む油層を水中媒体中で懸濁重合するため、得られる樹脂ビーズは多孔質となる。
【0046】
<実施例7>(二酸化チタンを分散させた重合性モノマー液中に非重合性のシリコーンアクリル共重合体を含有させて製造した例)
まず、二酸化チタン(石原産業社製、商品名:タイペークPFC407)80部と、ラウリルメタアクリレート(花王社製、商品名:LMA)200部と、実施例1で使用したと同様の非重合性のシリコーンアクリル共重合体(信越化学工業社製、商品名:KP−578、有効成分100%)36部とを加え分散し、予め二酸化チタンの分散液を調製した。この分散液に、予め調整したポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NK1G)200部にV−65を4部溶解した溶液を均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した以外は実施例1と同様に操作し、非重合性のシリコーン化合物と二酸化チタンとを内部に含有してなる樹脂ビーズを得て、これを本実施例の樹脂ビーズとした。
【0047】
<比較例1>(重合性モノマー液にシリコーン化合物を含有させていない場合の例)
実施例1で用いたと同様に、予め調製したポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NK1G)200部にV−65を4部溶解した溶液に、ラウリルメタアクリレート(花王社製、商品名:LMA)200部を加え、これらを均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した以外は実施例1と同様に操作し、本比較例の樹脂ビーズを得た。得られた樹脂ビーズは、シリコーン化合物を含有しないものである。
【0048】
<比較例2>(比較例1のビーズにシリコーン化合物を被覆処理した場合の例)
比較例1で得た樹脂ビーズ100部をヘンシルミキサーに投入し、これに予めイソプロピルアルコール7部に、実施例1で使用したシリコーンアクリル共重合体(信越化学工業社製、商品名:KP−578、有効成分100%)7部を溶解した溶液を注入して、均一に撹拌混合した後、乾燥、解砕処理を行って、本比較例の樹脂ビーズを得た。得られた樹脂ビーズは、シリコーン化合物が樹脂ビーズ表面に被覆したものとなる。
【0049】
<比較例3>(重合性モノマー液にシリコーン化合物を含有させていない多孔質ビーズ場合の例)
実施例4で用いたと同様に、予め調製したポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NK1G)200部にV−65を4部溶解した溶液に、ラウリルメタアクリレート(花王社製、商品名:LMA)200部とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート400部を加え、これらを均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した以外は実施例4と同様に操作し、本比較例の多孔質樹脂ビーズを得た。得られた樹脂ビーズは、実施例4と同様に多孔質であるが、シリコーン化合物を含有しないものである。
【0050】
<比較例4>(二酸化チタンを分散させた重合性モノマー液中にシリコーン化合物を含有させていない場合の例)
まず、二酸化チタン(石原産業社製、商品名:PFC407)80部と、ラウリルメタアクリレート(花王社製、商品名:LMA)200部とを加え分散し、予め二酸化チタンの分散液を調整した。この分散液に、予め調整したポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NK1G)200部にV−65を4部溶解した溶液を均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した以外は実施例1と同様に操作し、本比較例の樹脂ビーズを得た。得られた樹脂ビーズは、懸濁重合時に二酸化チタンを含有させた点と、樹脂組成が実施例7と同様であるが、シリコーン化合物を含有しないものである。
【0051】
<評価>
実施例及び比較例の各樹脂ビーズについて、その体積平均粒子径を測定し、更に、以下のようにして、撥水性と吸油量(吸油性)と樹脂粒子表面状態を評価した。
【0052】
(体積平均粒子径の測定)
実施例1〜7及び比較例1〜4の各樹脂ビーズの体積平均粒子径を、コールターカウンター(ベックマン・コールター社製)で測定した。そして、得られた結果を表1にまとめて示した。
【0053】
(撥水性の評価)
実施例1〜7及び比較例1〜4の各樹脂ビーズにおける撥水性を下記のようにして観察し、以下の基準で評価した。具体的には、50mlの試験管に20mlのイオン交換水を入れ、その中に樹脂ビーズ0.5gを投入した後、スパチュラーで軽く撹拌した。そして、1日後に樹脂ビーズが表面に浮いているか否かを観察して、その沈降状態で撥水性を評価した。評価基準は、樹脂ビーズが完全に浮いている状態を○、一部沈降している場合を△、ほぼ沈降している場合を×として、評価した。その結果を表1にまとめて示した。
【0054】
(吸油量の測定)
実施例1〜7及び比較例1〜4の各樹脂ビーズにおける吸油量を下記のようにして測定し、吸油性を評価した。具体的には、5.0gの各樹脂ビーズに脂肪酸トリグリセリド(花王社製、商品名:ココナードMT)を徐々に滴下してヘラで混ぜ合わせた。滴下が進むと樹脂ビーズが徐々に濡れ、樹脂ビーズがひと塊に纏まった時点の滴下量(g)を樹脂ビーズの吸油量とし、吸油性(吸油効果)を評価した。その結果を表1にまとめて示した。
【0055】
(樹脂粒子表面状態の観察)
実施例1〜7及び比較例1〜4の各樹脂ビーズの樹脂粒子表面状態を走査型電子顕微鏡(ELIONIX製、ERA−8000)で観察した。5000倍での観察結果で、樹脂粒子表面が平滑である場合を「平滑」とし、粗面化されている場合を「粗面」とし、顔料を内部に含有した状態にできず樹脂表面に吸着・凝集している場合を「顔料吸着」とし、多孔である場合を「多孔」としてそれぞれ表現し、その結果を表1にまとめて示した。図1に、実施例1の樹脂ビーズの樹脂粒子表面状態を観察した、電子顕微鏡写真の図を示した。樹脂粒子表面の状態が、図1のような粗面化状態である場合を、本発明で規定する「粗面化している」状態とした。
【0056】
【0057】
(化粧料への使用−1)
実施例1〜6及び比較例1〜3の各樹脂ビーズをそれぞれに用い、これを表2に記載した各成分とともに表2に示した配合量で配合することにより、実施例8〜13及び比較例5〜7の化粧料−1をそれぞれ製造し、その使用性について評価した。より具体的には、以下のようにして化粧料を製造した。まず、表2に記載したように、従来より化粧料の原料に用いられている、シリコーン処理された各粉体(マイカ、タルク、微粒子酸化チタン、硫酸バリウム)と、実施例及び比較例の各樹脂ビーズとを表2に記載の量で配合し、均一になるまで混合して粉体混合物とした。そして、得られた粉体混合物と、予め、従来より化粧料の原料に用いられている、ワセリン、スクワラン、トリオクタン酸グリセリルを混合したものを加えて、均一なるまで混合した。そして、これを容器に充填し、必要に応じてプレス成型して、それぞれに異なる樹脂ビーズを含有した各化粧料−1を得た。得られた各化粧料−1を用いて、表4に示した項目の使用性について、表4に示す評価基準で評価し、結果を表4にまとめて示した。
【0058】
【0059】
(化粧料への使用−2)
実施例7及び比較例4の各樹脂ビーズをそれぞれに用い、これを表3に記載した各成分とともに表3に示した配合量で配合することにより、実施例14と比較例8の化粧料−2をそれぞれ製造し、その使用性について評価した。より具体的には、以下のようにして化粧料−2を製造した。まず、表3に記載の油相成分を混合した後、この油相成分に、表3に記載の粉体成分を予め均一になるまで混合した粉体混合物を添加してディスパーで分散した。そして、この中に、表3に記載の水溶性成分を撹拌しながら添加し、得られた混合物を乳化させて、乳化液状のファンデーションである化粧料−2をそれぞれ得た。表中の成分には、いずれも、従来より化粧料の原料に用いられているものを用いた。得られた化粧料−2を用いて、表4に示す項目の使用性について、表4に示す評価基準で評価し、結果を表4にまとめて示した。
【0060】
【0061】
【0062】
(評価結果)
実施例1〜7の樹脂ビーズと、比較例1〜4の樹脂ビーズとを比較すると、表1に示したように、実施例1〜7の樹脂ビーズは、いずれも比較例の各樹脂ビーズと比べて明らかに撥水性に優れ、更に、樹脂表面が粗面化されており(図1参照)、比較例3の多孔質樹脂ビーズと同等の吸油量があり、吸油性に優れていることが確認できた。また、実施例1〜7の樹脂ビーズをそれぞれに使用して製造した実施例8〜14の各化粧料は、比較例1〜4の樹脂ビーズをそれぞれに使用して製造した比較例5〜8の各化粧料と比較すると、べたつきがなく、伸び広がりも軽く、おさまりも良く、化粧もちの良い化粧料となった。この結果、本発明の実施例の樹脂ビーズを用いることで、化粧崩れ防止効果を示す化粧料を得ることができることが確認された。また、塗り薬や貼り薬といった外皮用薬、塗料、成形体、フィルム、コーティング剤、樹脂組成物においても、同様に、本発明の樹脂ビーズを用いることで、その製品に、高いレベルで安定した撥水性及び吸油性の付与ができ、本発明の樹脂ビーズは、機能性を付与できる材料として有用であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の樹脂ビーズは、樹脂ビーズそのものがシリコーン化合物を含有し、且つ、樹脂ビーズ内部にシリコーン化合物が固定化されており、加えて、樹脂ビーズ表面が粗面化されていることから、これを用いることで、製品に、安定した撥水性と吸油効果を同時に実現できる有用な材料となる。このため、本発明の樹脂ビーズを、例えば、化粧料に用いることで、安定した撥水性、吸油性があり、良好な化粧もちを実現した製品を得ることができる。したがって、本発明の樹脂ビーズは、このような特性や機能を求める分野、例えば、化粧料、外皮用剤、塗料、成形体、フィルム、コーティング剤、樹脂組成物への使用に最適であり、多様な用途での使用が期待される。
図1