【実施例】
【0036】
以下、本発明を、実施例及び比較例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。なお、文中「部」または「%」とあるのは質量基準である。
【0037】
実施例及び比較例では、特に記載がない限り、懸濁重合の水相を構成する分散安定剤には、部分ケン化ポリビニルアルコールを用い、重合開始剤には、アゾ化合物を用いた。具体的には、分散安定剤には、部分ケン化ポリビニルアルコール(以下、これを「PVA」と略記)である、クラレ社製のポバール205(商品名)を用い、重合開始剤には、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)である、和光純薬工業社製のV−65(以下、V−65と略記)を使用した。
【0038】
<実施例1>(重合性モノマー液中に、非重合性のシリコーンアクリル共重合体を含有させて製造した例)
まず、予め調製した、ポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NK1G)200部にV−65を4部溶解した溶液に、ラウリルメタアクリレート(花王社製、商品名:LMA)200部と、非重合性のシリコーンアクリル共重合体(信越化学工業社製、商品名:KP−578、有効成分100%)28部を加え、これらを均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した。上記で使用したKP−578は、アクリルポリマーと、ジメチルポリシロキサンからなるグラフト共重合体である。25℃における粘度は、150〜200mPa・sである。
【0039】
次に、別の容器に、イオン交換水1600部に、分散安定剤としてPVAを80部溶解した水相中に、上記で調製した重合性モノマー液を加えて混合し、ディゾルバーにて2500rpmで5分間撹拌した後、更に、ホモジナイザーを用いて8000rpmで5分間撹拌して、均一な懸濁液を得た。
【0040】
次に、撹拌機、窒素ガス導入管を備え付けた重合装置の反応缶に、上記で得た懸濁液を仕込み、70℃、6時間続けて重合反応を行った。冷却後、この懸濁液から生成した樹脂微粒子を濾過洗浄した。このようにして得られた樹脂ビーズを、イオン交換水に再解膠した後、懸濁液から微粒子を濾過洗浄した。更に、乾燥、解砕処理を行って、非重合性のシリコーン化合物を内部に固定化して含有してなる樹脂ビーズを得て、これを本実施例の樹脂ビーズとした。
【0041】
<実施例2>(重合性モノマー液中に、非重合性のポリエーテルアルキル共変性シリコーンを含有させて製造した例)
まず、ヘキサンジオールジメタクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NKエステル HD−N)200部に、メタクリル酸ブチル(三菱レイヨン社製)200部と、非重合性のポリエーテルアルキル共変性シリコーン(信越化学工業社製、商品名:KSG−310、有効成分25〜35%)80部と、予め調製した、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20部にV−65を4部溶解した溶液を加えた。そして、これらを均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した。次に、別の容器に、イオン交換水1600部に、分散安定剤としてPVAを88部溶解した水相を用いて行った以外は、実施例1と同様に、その後の洗浄などの操作を行い、非重合性のシリコーン化合物を内部に含有してなる樹脂ビーズを得て、これを本実施例の樹脂ビーズとした。上記で使用したKSG−310は、ポリエーテルアルキル共変性シリコーン25〜35%と、ミネラルオイルの混合物で、化粧品に使用されている材料である。
【0042】
<実施例3>(重合性モノマー液中に、非重合性のシリコーンエラストマーを含有させて製造した例)
予め調製した、ヘキサンジオールジメタクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NKエステル HD−N)80部にV−65を4部溶解した溶液に、ラウリルメタアクリレート(花王社製、商品名:LMA)320部と、非重合性のシリコーンエラストマー(東レ・ダウコーニング社製、商品名:9040S.E.B、有効成分15%)100部を加え、これらを均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した以外は実施例1と同様に操作し、非重合性のシリコーン化合物を内部に固定化して含有してなる樹脂ビーズを得て、これを本実施例の樹脂ビーズとした。上記で使用したシリコーンエラストマー(商品名:9040S.E.B)は、ジメチコンクロスポリマー12%とシクロペンタシロキサン88%の混合物である。
【0043】
<実施例4>(重合性モノマー液中に、非重合性のポリエーテル・アルキル共変性シリコーンを含有させて製造した例)
まず、ヘキサンジオールジメタクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NKエステル HD−N)200部に、メタクリル酸ブチル(三菱レイヨン社製)200部と、非重合性のポリエーテル・アルキル共変性シリコーン(信越化学工業社製、商品名:KF−6038、有効成分100%)8部を加え、予め調製した、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20部にV−65を4部溶解した溶液を加えた。そして、これらを均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した以外は、実施例1と同様に、その後の洗浄などの操作を行い、非重合性のシリコーン化合物を内部に含有してなる樹脂ビーズを得て、これを本実施例の樹脂ビーズとした。上記で使用したシリコーン共重合体は、ポリエーテル・アルキル共変性シリコーン界面活性剤(HLB=3.0)として市販されているものであり、ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンである。
【0044】
<実施例5>(重合性モノマー液中に、非重合性のポリエーテル変性シリコーンを含有させて製造した樹脂ビーズの例)
まず、予め調製した、ポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NK1G)200部にV−65を4部溶解した溶液に、ヘキサンジオールジメタクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NKエステル HD−N)200部と、非重合性のポリエーテル変性シリコーン(信越化学工業社製、商品名:KF−6016、有効成分100%)60部を加え、これらを均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した以外は実施例1と同様に操作し、非重合性のシリコーン化合物を内部に固定化して含有してなる樹脂ビーズを得て、これを本実施例の樹脂ビーズとした。上記で使用したシリコーン共重合体は、ポリエーテル変性シリコーン界面活性剤(HLB=4.5)として市販されており、PEG−9・メチルエーテルジメチコンである。
【0045】
<実施例6>(重合性モノマー液中に、非重合性のシリコーンアクリル共重合体を含有させて製造した多孔質樹脂ビーズの例)
まず、予め調製した、ポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NK1G)200部に、V−65を4部溶解した溶液に、ラウリルメタアクリレート(花王社製、商品名:LMA)200部と、実施例1で使用したと同様の非重合性のシリコーンアクリル共重合体(信越化学工業社製、商品名:KP−578、有効成分100%)36部と、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート400部を加え、これらを均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した以外は実施例1と同様に操作し、非重合性のシリコーン化合物を内部に固定化して含有してなる多孔質樹脂ビーズを得て、これを本実施例の樹脂ビーズとした。この例では、単量体と有機溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む油層を水中媒体中で懸濁重合するため、得られる樹脂ビーズは多孔質となる。
【0046】
<実施例7>(二酸化チタンを分散させた重合性モノマー液中に非重合性のシリコーンアクリル共重合体を含有させて製造した例)
まず、二酸化チタン(石原産業社製、商品名:タイペークPFC407)80部と、ラウリルメタアクリレート(花王社製、商品名:LMA)200部と、実施例1で使用したと同様の非重合性のシリコーンアクリル共重合体(信越化学工業社製、商品名:KP−578、有効成分100%)36部とを加え分散し、予め二酸化チタンの分散液を調製した。この分散液に、予め調整したポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NK1G)200部にV−65を4部溶解した溶液を均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した以外は実施例1と同様に操作し、非重合性のシリコーン化合物と二酸化チタンとを内部に含有してなる樹脂ビーズを得て、これを本実施例の樹脂ビーズとした。
【0047】
<比較例1>(重合性モノマー液にシリコーン化合物を含有させていない場合の例)
実施例1で用いたと同様に、予め調製したポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NK1G)200部にV−65を4部溶解した溶液に、ラウリルメタアクリレート(花王社製、商品名:LMA)200部を加え、これらを均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した以外は実施例1と同様に操作し、本比較例の樹脂ビーズを得た。得られた樹脂ビーズは、シリコーン化合物を含有しないものである。
【0048】
<比較例2>(比較例1のビーズにシリコーン化合物を被覆処理した場合の例)
比較例1で得た樹脂ビーズ100部をヘンシルミキサーに投入し、これに予めイソプロピルアルコール7部に、実施例1で使用したシリコーンアクリル共重合体(信越化学工業社製、商品名:KP−578、有効成分100%)7部を溶解した溶液を注入して、均一に撹拌混合した後、乾燥、解砕処理を行って、本比較例の樹脂ビーズを得た。得られた樹脂ビーズは、シリコーン化合物が樹脂ビーズ表面に被覆したものとなる。
【0049】
<比較例3>(重合性モノマー液にシリコーン化合物を含有させていない多孔質ビーズ場合の例)
実施例4で用いたと同様に、予め調製したポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NK1G)200部にV−65を4部溶解した溶液に、ラウリルメタアクリレート(花王社製、商品名:LMA)200部とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート400部を加え、これらを均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した以外は実施例4と同様に操作し、本比較例の多孔質樹脂ビーズを得た。得られた樹脂ビーズは、実施例4と同様に多孔質であるが、シリコーン化合物を含有しないものである。
【0050】
<比較例4>(二酸化チタンを分散させた重合性モノマー液中にシリコーン化合物を含有させていない場合の例)
まず、二酸化チタン(石原産業社製、商品名:PFC407)80部と、ラウリルメタアクリレート(花王社製、商品名:LMA)200部とを加え分散し、予め二酸化チタンの分散液を調整した。この分散液に、予め調整したポリエチレングリコールジメタクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NK1G)200部にV−65を4部溶解した溶液を均一に撹拌混合し、重合性モノマー液を調製した以外は実施例1と同様に操作し、本比較例の樹脂ビーズを得た。得られた樹脂ビーズは、懸濁重合時に二酸化チタンを含有させた点と、樹脂組成が実施例7と同様であるが、シリコーン化合物を含有しないものである。
【0051】
<評価>
実施例及び比較例の各樹脂ビーズについて、その体積平均粒子径を測定し、更に、以下のようにして、撥水性と吸油量(吸油性)と樹脂粒子表面状態を評価した。
【0052】
(体積平均粒子径の測定)
実施例1〜7及び比較例1〜4の各樹脂ビーズの体積平均粒子径を、コールターカウンター(ベックマン・コールター社製)で測定した。そして、得られた結果を表1にまとめて示した。
【0053】
(撥水性の評価)
実施例1〜7及び比較例1〜4の各樹脂ビーズにおける撥水性を下記のようにして観察し、以下の基準で評価した。具体的には、50mlの試験管に20mlのイオン交換水を入れ、その中に樹脂ビーズ0.5gを投入した後、スパチュラーで軽く撹拌した。そして、1日後に樹脂ビーズが表面に浮いているか否かを観察して、その沈降状態で撥水性を評価した。評価基準は、樹脂ビーズが完全に浮いている状態を○、一部沈降している場合を△、ほぼ沈降している場合を×として、評価した。その結果を表1にまとめて示した。
【0054】
(吸油量の測定)
実施例1〜7及び比較例1〜4の各樹脂ビーズにおける吸油量を下記のようにして測定し、吸油性を評価した。具体的には、5.0gの各樹脂ビーズに脂肪酸トリグリセリド(花王社製、商品名:ココナードMT)を徐々に滴下してヘラで混ぜ合わせた。滴下が進むと樹脂ビーズが徐々に濡れ、樹脂ビーズがひと塊に纏まった時点の滴下量(g)を樹脂ビーズの吸油量とし、吸油性(吸油効果)を評価した。その結果を表1にまとめて示した。
【0055】
(樹脂粒子表面状態の観察)
実施例1〜7及び比較例1〜4の各樹脂ビーズの樹脂粒子表面状態を走査型電子顕微鏡(ELIONIX製、ERA−8000)で観察した。5000倍での観察結果で、樹脂粒子表面が平滑である場合を「平滑」とし、粗面化されている場合を「粗面」とし、顔料を内部に含有した状態にできず樹脂表面に吸着・凝集している場合を「顔料吸着」とし、多孔である場合を「多孔」としてそれぞれ表現し、その結果を表1にまとめて示した。
図1に、実施例1の樹脂ビーズの樹脂粒子表面状態を観察した、電子顕微鏡写真の図を示した。樹脂粒子表面の状態が、
図1のような粗面化状態である場合を、本発明で規定する「粗面化している」状態とした。
【0056】
【0057】
(化粧料への使用−1)
実施例1〜6及び比較例1〜3の各樹脂ビーズをそれぞれに用い、これを表2に記載した各成分とともに表2に示した配合量で配合することにより、実施例8〜13及び比較例5〜7の化粧料−1をそれぞれ製造し、その使用性について評価した。より具体的には、以下のようにして化粧料を製造した。まず、表2に記載したように、従来より化粧料の原料に用いられている、シリコーン処理された各粉体(マイカ、タルク、微粒子酸化チタン、硫酸バリウム)と、実施例及び比較例の各樹脂ビーズとを表2に記載の量で配合し、均一になるまで混合して粉体混合物とした。そして、得られた粉体混合物と、予め、従来より化粧料の原料に用いられている、ワセリン、スクワラン、トリオクタン酸グリセリルを混合したものを加えて、均一なるまで混合した。そして、これを容器に充填し、必要に応じてプレス成型して、それぞれに異なる樹脂ビーズを含有した各化粧料−1を得た。得られた各化粧料−1を用いて、表4に示した項目の使用性について、表4に示す評価基準で評価し、結果を表4にまとめて示した。
【0058】
【0059】
(化粧料への使用−2)
実施例7及び比較例4の各樹脂ビーズをそれぞれに用い、これを表3に記載した各成分とともに表3に示した配合量で配合することにより、実施例14と比較例8の化粧料−2をそれぞれ製造し、その使用性について評価した。より具体的には、以下のようにして化粧料−2を製造した。まず、表3に記載の油相成分を混合した後、この油相成分に、表3に記載の粉体成分を予め均一になるまで混合した粉体混合物を添加してディスパーで分散した。そして、この中に、表3に記載の水溶性成分を撹拌しながら添加し、得られた混合物を乳化させて、乳化液状のファンデーションである化粧料−2をそれぞれ得た。表中の成分には、いずれも、従来より化粧料の原料に用いられているものを用いた。得られた化粧料−2を用いて、表4に示す項目の使用性について、表4に示す評価基準で評価し、結果を表4にまとめて示した。
【0060】
【0061】
【0062】
(評価結果)
実施例1〜7の樹脂ビーズと、比較例1〜4の樹脂ビーズとを比較すると、表1に示したように、実施例1〜7の樹脂ビーズは、いずれも比較例の各樹脂ビーズと比べて明らかに撥水性に優れ、更に、樹脂表面が粗面化されており(
図1参照)、比較例3の多孔質樹脂ビーズと同等の吸油量があり、吸油性に優れていることが確認できた。また、実施例1〜7の樹脂ビーズをそれぞれに使用して製造した実施例8〜14の各化粧料は、比較例1〜4の樹脂ビーズをそれぞれに使用して製造した比較例5〜8の各化粧料と比較すると、べたつきがなく、伸び広がりも軽く、おさまりも良く、化粧もちの良い化粧料となった。この結果、本発明の実施例の樹脂ビーズを用いることで、化粧崩れ防止効果を示す化粧料を得ることができることが確認された。また、塗り薬や貼り薬といった外皮用薬、塗料、成形体、フィルム、コーティング剤、樹脂組成物においても、同様に、本発明の樹脂ビーズを用いることで、その製品に、高いレベルで安定した撥水性及び吸油性の付与ができ、本発明の樹脂ビーズは、機能性を付与できる材料として有用であることがわかった。