特許第6150951号(P6150951)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツングの特許一覧

特許6150951集積マイクロメカニカル流体センサコンポーネントの製造方法、集積マイクロメカニカル流体センサコンポーネント、及び、集積マイクロメカニカル流体センサコンポーネントを用いた流体の識別方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150951
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】集積マイクロメカニカル流体センサコンポーネントの製造方法、集積マイクロメカニカル流体センサコンポーネント、及び、集積マイクロメカニカル流体センサコンポーネントを用いた流体の識別方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3504 20140101AFI20170612BHJP
   H01S 5/183 20060101ALI20170612BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20170612BHJP
   G01N 21/359 20140101ALI20170612BHJP
【FI】
   G01N21/3504
   H01S5/183
   H01L31/10 A
   G01N21/359
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-547092(P2016-547092)
(86)(22)【出願日】2014年11月21日
(65)【公表番号】特表2017-505435(P2017-505435A)
(43)【公表日】2017年2月16日
(86)【国際出願番号】EP2014075242
(87)【国際公開番号】WO2015106861
(87)【国際公開日】20150723
【審査請求日】2016年7月15日
(31)【優先権主張番号】102014200583.3
(32)【優先日】2014年1月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】リヒャート フィクス
(72)【発明者】
【氏名】レネ ハートケ
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン バイントナー
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−527750(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0303487(US,A1)
【文献】 特開2000−261096(JP,A)
【文献】 特開2003−057438(JP,A)
【文献】 特開平06−342932(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0223881(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0157301(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
H01S 5/00− 5/50
H01L 31/00−31/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積マイクロメカニカル流体センサコンポーネントの製造方法であって、
前記方法は、第1の基板(110)上に第1のブラッグ鏡(DBR1)と発光素子(112)とを含む第1のウェーハ(W1;W1‐2;W1‐4)を形成するステップ(S01)を含み、前記発光素子(112)は、光ビーム(L)を、該発光素子(112)の、前記第1のブラッグ鏡(DBR1)とは反対側の表面(112‐f)から放出方向(R)へ放出するように形成され、
前記第1のブラッグ鏡(DBR1)及び前記発光素子(112)は、前記第1の基板(110)の第1の表面(110‐f)上に形成され、前記放出方向(R)は前記第1の表面(110‐f)に対して直立しており、前記発光素子(112)及び前記第1のブラッグ鏡(DBR1)は、放出されて前記放出方向(R)の反対方向へ進行し前記第1のブラッグ鏡(DBR1)へ入射する光ビーム(L)を、第1のパーセンテージだけ前記放出方向(R)へ向かって反射できるように構成され、
前記方法は、第2の基板(120)上に第2のブラッグ鏡(DBR2)とフォトダイオード(116)とを含む第2のウェーハ(W2;W2‐2;W2‐3;W2‐4)を形成するステップ(S02)を含み、前記フォトダイオード(116)は、前記第2のブラッグ鏡(DBR2)の、前記第2の基板(120;220)に近い側の表面(DBR2‐b)上に設けられ、
前記方法は前記第2のブラッグ鏡(DBR2)の、前記フォトダイオード(116)とは反対側の表面(DBR2‐f)上に、間隔保持装置(150;152;154;155;156)によって画定され、流体(F)を導入でき且つ前記光ビーム(L)が通過可能な中空室(114)が形成されるように、前記間隔保持装置(150;152;154;155;156)を介して前記第1のウェーハ(W1;W1‐2;W1‐4)を前記第2のウェーハ(W2;W2‐2;W2‐3;W2‐4)にボンディング又は接着するステップ(S03)を含み、
前記発光素子(112)及び前記第2のブラッグ鏡(DBR2)は、放出されて前記放出方向(R)へ向かって進行し前記第2のブラッグ鏡(DBR2)へ入射する光ビーム(L)を、第2のパーセンテージだけ前記放出方向(R)の反対方向へ反射でき且つ別のパーセンテージだけ透過できるように構成及び配置され、
前記フォトダイオード(116)は、前記光ビーム(L)が前記中空室(114)を通過した後及び前記光ビーム(L)が前記第2のブラッグ鏡(DBR2)を透過した後に、その少なくとも一部を自身へ入射させるように構成及び配置され、
前記方法は、前記第1のウェーハ(W1;W1‐2;W1‐4)の構成要素として、前記発光素子(112)の、前記第1のブラッグ鏡(DBR1)とは反対側の表面(112‐f)に、第3のブラッグ鏡(DBR3)を形成するステップ(S05)を含み、前記発光素子(112)及び前記第3のブラッグ鏡(DBR3)は、放出されて前記放出方向(R)へ向かって進行し前記第3のブラッグ鏡(DBR3)へ入射する光ビーム(L)を、第3のパーセンテージだけ前記放出方向(R)の反対方向へ反射でき且つ別のパーセンテージだけ透過できるように構成され、
前記方法は、前記第1のウェーハ(W1;W1‐2;W1‐4)及び前記第2のウェーハ(W2;W2‐2;W2‐3;W2‐4)から流体センサコンポーネントを個別化するステップ(S04)を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1のブラッグ鏡(DBR1)を、前記第1の基板(110)と前記発光素子(112)との間に設ける、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のウェーハ(W1‐4;W1‐6)上で、第1のコンタクトパッド(155)を処理するステップと、
前記第2のウェーハ(W2‐4;W2‐6)上で、第2のコンタクトパッド(156)を処理するステップと、
前記第1のコンタクトパッド(155)上又は前記第2のコンタクトパッド(156)上で、金属柱状部材(154)を処理するステップと、
前記第1のウェーハ(W1‐4;W1‐6)を前記第2のウェーハ(W2‐4;W2‐6)にボンディングする前記ステップ(S03)のために、前記金属柱状部材(154)を前記第2のコンタクトパッド(156)又は前記第1のコンタクトパッド(155)にボンディングするステップと、
によって前記間隔保持装置(154,155,156)を形成する、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のウェーハ(W1‐2;W1‐5)上又は前記第2のウェーハ(W2‐2;W2‐5)上に犠牲層及び導電層の少なくとも一方を設けるステップと、
前記犠牲層及び前記導電層の少なくとも一方をパターニングするステップと、
前記第2のウェーハ(W2‐2;W2‐5)を前記第1のウェーハ(W1‐2;W1‐5)にボンディング又は接着する前記ステップ(S03)を前記犠牲層及び前記導電層の少なくとも一方を介して行った後に、前記犠牲層が設けられている場合には当該犠牲層を除去するステップと、
によって前記間隔保持装置(152)を形成する、
請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の基板(120;220)と前記第2のブラッグ鏡(DBR2)との間に前記フォトダイオード(116)を設ける、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の基板(220)は、前記光ビーム(L)に対して明な基板(220)であり、
前記第2の基板(220)を、前記第2のブラッグ鏡(DBR2)と前記フォトダイオード(116)との間に設ける、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記中空室(114)は、前記発光素子(112)の、前記第1のブラッグ鏡(DBR1)とは反対側の面(112‐f)上に形成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
集積マイクロメカニカル流体センサコンポーネントであって、
第1の基板(110)上に第1のブラッグ鏡(DBR1)と発光素子(112)とを含む第1のウェーハ(W1;W1‐2;W1‐4)が設けられており、前記発光素子(112)は、光ビーム(L)を、該発光素子(112)の、前記第1のブラッグ鏡(DBR1)とは反対側の表面(112‐f)から放出方向(R)へ放出するように形成されており、
前記第1のブラッグ鏡(DBR1)及び前記発光素子(112)は、前記第1の基板(110)の第1の表面(110‐f)上に形成されており、前記放出方向(R)は前記第1の表面(110‐f)に対して直立しており、前記発光素子(112)及び前記第1のブラッグ鏡(DBR1)は、前記放出方向(R)の反対方向へ進行し前記第1のブラッグ鏡(DBR1)へ入射する光ビーム(L)を第1のパーセンテージだけ前記放出方向(R)へ向かって反射できるように構成され、
第2の基板(120)上に第2のブラッグ鏡(DBR2)とフォトダイオード(116)とを含む第2のウェーハが設けられており、前記フォトダイオード(116)は、前記第2のブラッグ鏡(DBR2)の、前記第2の基板(120;220)に近い側の表面(DBR2‐b)上に設けられており、
記第2のブラッグ鏡(DBR2)の、前記フォトダイオード(116)とは反対側の表面(DBR2‐f)上に、間隔保持装置(150;152;154;155;156)によって画定され、流体(F)を導入でき且つ前記光ビーム(L)が通過可能な中空室(114)が形成されるように、前記第1のウェーハ(W1;W1‐2;W1‐4)が前記間隔保持装置(150;152;154;155;156)を介して前記第2のウェーハ(W2;W2‐2;W2‐3;W2‐4)にボンディング又は接着されており、
前記発光素子(112)及び前記第2のブラッグ鏡(DBR2)は、放出されて前記放出方向(R)へ向かって進行し前記第2のブラッグ鏡(DBR2)へ入射する光ビーム(L)を、第2のパーセンテージだけ前記放出方向(R)の反対方向へ反射でき且つ別のパーセンテージだけ透過できるように構成及び配置されており、
前記フォトダイオード(116)は、前記光ビーム(L)が前記中空室(114)を通過した後及び前記光ビーム(L)が前記第2のブラッグ鏡(DBR2)を透過した後に、その少なくとも一部を自身へ入射させるように構成及び配置されており、
前記第1のウェーハ(W1;W1‐2;W1‐4)の構成要素として、前記発光素子(112)の、前記第1のブラッグ鏡(DBR1)とは反対側の表面(112‐f)に、第3のブラッグ鏡(DBR3)が設けられており、前記発光素子(112)及び前記第3のブラッグ鏡(DBR3)は、放出されて前記放出方向(R)へ向かって進行し前記第3のブラッグ鏡(DBR3)へ入射する光ビーム(L)を、第3のパーセンテージだけ前記放出方向(R)の反対方向へ反射でき且つ別のパーセンテージだけ透過できるように構成されている、
ことを特徴とする集積マイクロメカニカル流体センサコンポーネント。
【請求項9】
前記中空室(114)は、前記発光素子(112)の、前記第1のブラッグ鏡(DBR1)とは反対側の面(112‐f)上に形成されている、
請求項8に記載の集積マイクロメカニカル流体センサコンポーネント。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の集積マイクロメカニカル流体センサコンポーネントを用いた流体の識別方法であって、
流体(F)が中空室(114;114’)に存在している期間において、光ビーム(L)を放出する前記発光素子(112)に供給される電流をIとし、フォトダイオード(116)へ入射する光ビーム(L)に応答して該フォトダイオード(116)に生じ、該フォトダイオード(116)で読み出される電力をPとしたP−I特性曲線(K1)を記録するステップ(S11)と、
前記P−I特性曲線(K1)にしたがって電力Pが前記フォトダイオード(116)で終端値を取るときの電流Iの値である閾値電流(Is,mg)を求めるステップ(S12)と、
求められた前記閾値電流(Is,mg)を、流体(F)の識別のために予め定められた基準閾値電流(Is,og)と比較するステップ(S13)と
を含む、
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積マイクロメカニカル流体センサコンポーネントの製造方法、集積マイクロメカニカル流体センサコンポーネント、及び、集積マイクロメカニカル流体センサコンポーネントを用いた流体の識別方法に関する。流体は特にはガス又はガス混合物である。識別の際には、特に、流体の分子濃度若しくは流体中の分子濃度又は流体種類を求めることができる。
【0002】
従来技術
流体、例えばガス混合物の成分(分析物)を識別するための分光分析法は、分析物と光子との相互作用を基礎としている。測定のために、通常、発光デバイス、例えばLED若しくはレーザダイオードと、検出器、例えばフォトダイオード若しくはサーモパイルと、光学測定区間とから成る構造体が使用される。当該光学測定区間が少なくとも部分的に分析すべき流体を通って延在しているか、又は、分析すべき流体が当該測定区間内に導入される。このことは、例えば、流れを形成することによって能動的に行うこともできるし、又は、対流若しくは発散流を許容することによって受動的に行うこともできる。検出器の信号が読み出され、例えば流体種類又は分子濃度の推定に用いられる。この場合、放出された光が分析すべき流体及び/又は分析物によって部分的に吸収されるという事実が利用される。
【0003】
WO2005/026705A1には、ガス識別方法とガス識別装置とが記載されている。ガス識別装置は、表面発光デバイスVCSELとテストチャンバと光センサとを有する。光センサは、表面発光デバイスから放出され、テストチャンバ内の識別すべきガスを通過した光ビームを検出する。接続されている電子回路により、光センサが形成した信号が評価される。
【0004】
いわゆる共振器内レーザ吸収分光法ICLASでは、光が光共振器内を多数回通過するという事実が利用される。センサの感度は媒体中の光路長に依存するので、ICLAS法ではきわめて高い感度を達成できる。
【0005】
発明の開示
本発明は、請求項1の特徴を有する集積マイクロメカニカル流体センサコンポーネントの製造方法と、請求項9の特徴を有する集積マイクロメカニカル流体センサコンポーネントと、請求項10の特徴を有する集積マイクロメカニカル流体センサコンポーネントを用いた流体中の分子濃度の測定方法とを開示する。
【0006】
したがって、集積マイクロメカニカル流体センサコンポーネントの製造方法は、次の各ステップを有する:
第1の基板上に第1のブラッグ鏡と発光素子とを含む第1のウェーハを形成するステップが行われ、発光素子は、光ビームを、自身の、第1のブラッグ鏡とは反対側の表面から放出方向へ向かって放出するように形成され、
第1のブラッグ鏡及び発光素子は、第1の基板の第1の表面上に形成され、放出方向は当該第1の基板の第1の表面に対して直立しており、発光素子及び第1のブラッグ鏡は、放出されて放出方向の反対方向へ進行し第1のブラッグ鏡へ入射する光ビームを第1のパーセンテージだけ放出方向へ反射できるように構成され、
第2の基板上に第2のブラッグ鏡とフォトダイオードとを含む第2のウェーハを形成するステップが行われ、フォトダイオードは、第2のブラッグ鏡の、第2の基板に近い側の表面上に設けられ、
発光素子の、第1のブラッグ鏡とは反対側の面上、及び、第2のブラッグ鏡の、フォトダイオードとは反対側の表面上に、流体を導入でき且つ光ビームが通過可能な中空室が形成されるように、第1のウェーハを第2のウェーハにボンディング又は接着するステップが行われ、
発光素子及び第2のブラッグ鏡は、放出されて放出方向へ向かって進行し第2のブラッグ鏡へ入射する光ビームを、第2のパーセンテージだけ放出方向の反対方向へ反射でき且つ別のパーセンテージだけ透過できるように構成及び配置され、
フォトダイオードは、光ビームが中空室を通過した後及び光ビームが第2のブラッグ鏡を透過した後に、その少なくとも一部を自身へ入射させるように構成及び配置され、
第1のウェーハ及び第2のウェーハから流体センサコンポーネントを個別化するステップが行われる。
【0007】
第1の要素が第2の要素の表面「上に」形成されるという場合、これは、第2の要素の表面に直接に接して形成されることを意味してもよいし、斜視的に見てこの表面の上方又は下方に形成されることを意味してもよい。第1の要素が第2の要素の表面「に」形成されるという場合、これは表面に直接に接するように形成されることであると理解されたい。第1の要素が第2の要素に対して所定の方式で設けられるという場合、これは必ずしも第1の要素が形成される時点で第2の要素が既に形成されていなければならないことを意味しない。そうでなく、これは、当業者が本明細書にしたがって製造法を知ることのできる最終状態について云うものである。
【0008】
発光素子は特に、量子井戸(quantum well)又はキャビティを有するか又はこれらから成っていてよい。
【0009】
中空室は、流体センサコンポーネントにおいて発光素子とブラッグ鏡とから形成された光共振器の内部に存在する。流体が中空室内に存在することにより、共振器ICLASの光学特性が変化する。当該変化は、フォトダイオードの信号、特に、発光素子に既知の電流を供給したときの電力又は電圧などの光強度信号を測定することによって求めることができる。これにより、例えば、識別すべき流体の分子の分子濃度若しくは流体中の分子濃度、又は、流体種類を推定できる。有利には、中空室は、放出方向に対して平行な方向で、2μmより大きい。これにより、中空室内の流体と環境との交換を改善できる。
【0010】
また、本発明の集積マイクロメカニカル流体センサコンポーネントによる流体の識別方法が提供される。この方法は、流体が中空室内に存在している期間において、光ビームを放出する発光素子に供給される電流をIとし、フォトダイオードへ入射する光ビームに応答してこのフォトダイオードに生じ、このフォトダイオードで読み出される電力をPとしたP−I特性曲線を記録するステップと、当該P−I特性曲線にしたがって電力Pがフォトダイオードで終端値を取るときの電流Iの値である閾値電流を求めるステップと、求められた閾値電流を流体の識別のために予め定められた基準閾値電流と比較するステップとを含む。
【0011】
発明の利点
本発明の基礎となる知見は、きわめてコンパクトな構造を有し且つ技術的に簡単に製造できる流体センサへの需要が存在するということである。
【0012】
本発明の基礎となる着想は、上記の知見を考慮して、ウェーハベースの集積マイクロメカニカル流体センサコンポーネントの製造方法を提供することである。つまり、ウェーハ全体が処理された後、各流体センサコンポーネントが個別化される。
【0013】
本発明の製造方法により、流体センサコンポーネントの、例えば10×10×10mm未満、特に1×1×1mm未満のきわめてコンパクトな構造を実現できる。流体センサコンポーネントの感度は1000ppmより良好であり、特には1ppmより良好である。ウェーハベースでの生産により、高いスケール効果が達成され、例えば数千個の流体センサコンポーネントを同時に製造できる。この場合、メサとしての流体センサコンポーネントの特にコンパクトな構造が有利に達成される。流体センサコンポーネント及び/又は個々のコンポーネント、例えば発光デバイスは、有利には、ウェーハ上で既に検査可能である。各流体センサコンポーネントが個別化された後のさらなるアライメントも不要である。
【0014】
本発明の装置は、種々の境界条件、例えば小さな温度依存性、高い若しくは低い感度、低い閾値電流、低い電力消費量及び/又は測定速度などに合わせて多様に最適化可能である。
【0015】
モノリシックな集積方式に基づいて、流体センサコンポーネントは、加速度若しくは振動に対して特にローバストである。
【0016】
本発明の流体センサコンポーネントは、特に小さな電力消費量、例えば10mW未満、特には1mW未満の電力消費量を有する。また、小さな電流Iしか必要ないので、流体センサコンポーネントは僅かな廃熱しか生じない。
【0017】
本発明の流体センサコンポーネントは、本発明の製造方法により、公知の表面発光デバイス技術(VCSEL技術)に基づく種々の波長に合わせて調整可能であり、したがって種々の流体、例えばガスに対して利用可能である。例えば、当該センサを、COの分子濃度を測定するために、2μmの波長で構成可能である。
【0018】
本発明の流体センサコンポーネントは、例えば、携帯電話機、家電製品、ガス報知器などの消費者用製品においてだけでなく、呼気分析などの医用技術機器において、又は、ラボオンチップ分析のため、及び/又は、燃料分析若しくは体液分析のための流体中での使用に、適用可能である。適用領域の混合、例えば携帯電話機に配設される呼気アルコールテスタとしての使用も可能である。小さな構造のため、例えば、流体センサコンポーネントにマイクロメカニカル半導体制御装置を設けて人体に埋め込むこともできる。
【0019】
有利な実施形態及び改善形態は、従属請求項及び図を参照した説明から得られる。
【0020】
好ましい実施形態によれば、レーザ発光素子が第1のブラッグ鏡と第1の基板との間に設けられる。さらに、第2のウェーハを第1のウェーハにボンディング又は接着するステップが、第2のブラッグ鏡が第1の基板にボンディングされることによって行われ、第1の基板は、この基板に中空室が形成されるようにパターニングされる。これにより、付加的な間隔保持装置を必要とせずに、流体センサコンポーネントの技術コスト及び空間寸法をいっそう低減できる。
【0021】
別の好ましい実施形態によれば、第1のブラッグ鏡は第1の基板と発光素子との間に設けられる。第1のウェーハを第2のウェーハにボンディング又は接着するステップは間隔保持装置によって行われ、中空室は当該間隔保持装置によって定められる。これにより、流体センサコンポーネントを種々の使用領域に多様に適合させることができる。また、技術コストも低減できる。
【0022】
別の好ましい実施形態によれば、間隔保持装置は、第1のウェーハ上で第1のコンタクトパッドを処理するステップと、第2のウェーハ上で第2のコンタクトパッドを処理するステップと、第1のコンタクトパッド上又は第2のコンタクトパッド上で金属柱状部材を処理するステップと、第1のウェーハを第2のウェーハにボンディングするために金属柱状部材を第2のコンタクトパッド又は第1のコンタクトパッドにボンディングするステップとによって形成される。
【0023】
別の好ましい実施形態によれば、間隔保持装置は、第1のウェーハ上又は第2のウェーハ上に犠牲層を設けるステップと、犠牲層をパターニングするステップと、導電層を設けるステップと、導電層をパターニングするステップと、第2のウェーハを第1のウェーハにボンディング又は接着するステップを間隔保持装置によって行った後に、犠牲層を除去するステップとによって形成される。
【0024】
別の好ましい実施形態によれば、第2の基板と第2のブラッグ鏡との間にフォトダイオードが設けられる。
【0025】
別の好ましい実施形態によれば、第2の基板は、光ビームに対して実質的に透明な基板であり、第2のブラッグ鏡とフォトダイオードとの間に設けられる。
【0026】
別の好ましい実施形態によれば、第1のウェーハの構成要素として、発光素子の、第1のブラッグ鏡とは反対側の表面に、第3のブラッグ鏡が形成される。発光素子及び第3のブラッグ鏡は、放出されて放出方向へ向かって進行し第3のブラッグ鏡へ入射する光ビームを、第3のパーセンテージだけ放出方向の反対方向へ反射でき且つ別のパーセンテージだけ透過できるように構成される。第3のブラッグ鏡を使用することにより、表面発光デバイス若しくは光共振器の閾値電流若しくは閾値(スレッショルド)を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明を以下に図面の各概略図に示されている実施形態に即して詳細に説明する。
図1】本発明の第1の実施形態の流体センサコンポーネントの概略断面図である。
図2A】本発明の第2の実施形態の流体センサコンポーネントの概略断面図である。
図2B】本発明の第3の実施形態の流体センサコンポーネントの概略断面部分図である。
図2C】本発明の第4の実施形態の流体センサコンポーネントの概略断面図である。
図3A】本発明の第5の実施形態の流体センサコンポーネントの概略断面部分図である。
図3B】本発明の第6の実施形態の流体センサコンポーネントの概略断面部分図である。
図4】本発明の流体センサコンポーネントの製造方法を説明するための概略的なフローチャートである。
図5A】本発明のさらなる特徴である、本発明の集積マイクロメカニカル流体センサコンポーネントを用いた流体の識別方法を説明するための概略的なフローチャートである。
図5B】本発明のさらなる特徴である流体の識別方法を説明するための概略的なグラフである。
【0028】
全図中、同じ要素及び装置又は同様の機能を有する要素及び装置には、格別のことわりないかぎり、同じ参照番号を付してある。
【0029】
実施形態の説明
図1には、本発明の第1の実施形態の流体センサコンポーネント100の概略断面図が示されている。
【0030】
図1に即して、以下に、流体センサコンポーネント100を製造するための本発明の製造方法を説明する。図1は縮尺どおりに描かれておらず、保護層は示されていない。
【0031】
第1の基板110は、第1のウェーハW1、例えば平坦なシリコンウェーハの一部として準備される。第1の基板110は、金属であってもよく、また、高濃度にドープされたシリコンから形成されてもよいが、導電性を有する。第1の基板110は、相互にほぼ平行な第1の表面110‐f及び第2の表面110‐bを有する。第1の実施形態によれば、第1の基板110の第1の表面110‐fにはエピタキシャルに第1のブラッグ鏡DBR1が成長される。ブラッグ鏡は、それぞれ異なる屈折率を有する第1の薄い層及び第2の薄い層DBR1‐i,DBR1‐(i+1)を交互に積層した効率的なリフレクタである。図1には、例として、こうした薄い層DBR‐iの組が複数設けられることが示されている。ただし、図1に点線で示されているように、複数の層DBR‐iが図示されているより多数又は少数であってもよい。層DBR‐iの数及び各層の屈折率は、反射すべき光ビームの特性に応じて選定可能である。特に、反射すべき光ビームの波長が各層DBR‐iの光学作用長の4倍に近い場合、層DBR‐iで反射される光ビームが構造的に干渉し合うので、ブラッグ鏡は高品質のリフレクタとなりうる。
【0032】
第1の実施形態によれば、第1のブラッグ鏡DBR1は、第1の基板110の第1の表面110‐fから上部(又は内部)へ到来する(入射する)光ビームを第1の基板110の方向へ前方反射するように構成されている。第1のブラッグ鏡DBR1は、相互にほぼ平行且つ相互に反対向きの第1の表面DBR1‐f及び第2の表面DBR1‐bを有する。第1のブラッグ鏡DBR1は、その第2の表面DBR1‐bから、第1の基板110の第1の表面110‐f上に成長が開始される。
【0033】
有利には、第1の表面110‐fとは反対側の表面DBR1‐f上に、発光素子112がエピタキシャルに成長される。発光素子112は、第1の実施形態によれば、3つの層112‐1,112‐2,112‐3を有する量子井戸(英語ではquantum well)として形成される。発光素子112は、光ビームLを、自身の、第1のブラッグ鏡DBR1とは反対側の面112‐fから、放出方向Rへ放出するように形成される。発光素子112及び第1のブラッグ鏡DBR1は、放出方向Rの反対方向へ進行して第1のブラッグ鏡DBR1へ入射する光ビームLを、第1のパーセンテージだけ放出方向Rへ向かって反射できるように構成される。第1のパーセンテージは例えば99%から100%であり、有利には99.8%から100%であり、特には99.9%から100%である。
【0034】
第1の実施形態によれば、第1のブラッグ鏡DBR1とは反対側の表面112‐fに、電流絞り118が構成されている。当該電流絞り118はパターニングされた酸化物層から成り、この酸化物層に例えばエッチングによって内部開口Hがパターニングされている。特に、開口Hは、流体センサコンポーネント100の光軸OAを中心として対称に設けられている。光軸OAは、放出方向Rに対して平行に位置し、且つ、表面110‐b,110‐f,DBR1‐b,DBR1‐f,112‐fに対して垂直に位置する。当該電流絞りは、開口Hの周囲の量子井戸の所定の領域にできるかぎり均等に通電できるようにするために用いられる。したがって、この領域では、発光素子112の他の領域に比べて大きい、特に均等な電流強度が得られる。よって、発光素子112の発光を開口Hの領域で増幅することができる。
【0035】
電流絞り118の、発光素子112とは反対側の表面には、別のブラッグ鏡DBR3が形成されており、これを以下では第3のブラッグ鏡DBR3と称する。第3のブラッグ鏡DBR3及び発光素子112は、放出方向Rへ向かって進行して第3のブラッグ鏡DBR3へ入射する光ビームLを第3のパーセンテージだけ放出方向Rとは反対方向へ反射できるように構成されている。第3のパーセンテージは例えば95%から100%、特には96%から99%、さらに特には98%から99%である。特に、第3のパーセンテージが第2のパーセンテージよりも小さいと有利である。また、光ビームLは別のパーセンテージだけ第3のブラッグ鏡DBR3を通って透過される。当該別のパーセンテージは第3のパーセンテージより格段に小さく、特には数1から第3のパーセンテージを減算した残りであってよい。
【0036】
このように、第1のブラッグ鏡DBR1と発光素子112と第3のブラッグ鏡DBR3とにより光共振器が形成されている。光ビームLは第1の基板110の表面110‐fに対して垂直に放出されるので、第1の基板110、第1のブラッグ鏡DBR1、レーザ発光素子112、電流絞り118及び第3のブラッグ鏡DBR3の各要素は、表面発光デバイスVと称される(VCSELとも。英語では"vertical-cavity surface-emitting laser")。
【0037】
第1の基板110の第2の表面110‐bには、第1の電気コンタクト140をパターニングされた金属層として形成できる。第1の実施形態によればさらに、第3のブラッグ鏡DBR3の、発光素子112とは反対側の面DBR3‐fに、第2の電気コンタクト142がパターニングされた金属層として形成されている。第2の電気コンタクト142は、中空室114を有する形態で、光ビームLが当該中空室114において第2の電気コンタクト142のパターニングされた金属層を放出方向Rに対して平行な方向へ完全に通過できるように形成されている。光軸OAも同様に、第2の電気コンタクトでは、中空室114を完全に通って延在している。また、第2のコンタクト142は、流体Fを流体センサコンポーネント100の外部から中空室114へ導入できるようにパターニングされている。第1の電気コンタクト140及び第2の電気コンタクト142を介して、表面発光デバイスVの電気的なポンピングが可能である。このために、出力電子回路を含む制御装置を使用可能である。
【0038】
有利には、第1の基板110上に、それぞれ相応の第1の電気コンタクト140及び第2の電気コンタクト142を含む複数の表面発光デバイスVを形成可能である。こうして、第1の基板110上にメサ状に形成された複数の表面発光デバイスVを有する第1のウェーハW1が得られる。
【0039】
第2のウェーハW2を製造するために、第2の基板120にフォトダイオード116の活性領域を設けることができる。この場合、フォトダイオードの第1の表面116‐bは、第2の基板120の第1の表面120‐fに接する。第2の基板120は好ましくはn型ドープされている。成長欠陥を回避するため及び基板を適合化するために、第2の基板120とフォトダイオード116との間に選択的にバッファ層を設けることができる。フォトダイオード116の活性領域は、好ましくは、第2の基板120若しくはバッファ層に設けられるn型ドープ層116‐1と、その上方に設けられるきわめて薄いp型ドープ層116‐3とから形成される。よって、光ビームLの大部分がp‐n接合部に達する。第1の実施形態によれば、p型ドープ層116‐3とn型ドープ層116‐1との間に付加的な真性層116‐2が堆積される。これにより、阻止電圧を高め、及び/又は、阻止層のキャパシタンスを低減することができる。活性領域のその他の材料は、(特に1.1μmまでの波長領域に対する)Si、(特に1.8μmまでの波長領域に対する)Ge、及び、GeAu、GaAs、InGaAs又はCdTeである。
【0040】
第1の実施形態によれば、フォトダイオード116の、第2の基板120とは反対側の表面116‐f、特にp型ドープ層116‐3の表面に第2の表面DBR‐bを有する第2のブラッグ鏡DBR2が形成される。非導電性の第2のブラッグ鏡DBR2の周囲において、フォトダイオードの第2の表面116‐f上に、第3の電気コンタクト144が構成される。第3の電気コンタクト144と、第4の電気コンタクト146としての導電性の第2の基板120とを介して、特にフォトダイオード116へ入射する光ビームLに基づいてフォトダイオード116に生じる電圧Uを読み出すことができる。
【0041】
発光素子112及び第2のブラッグ鏡DBR2は、フォトダイオード116へ向かう方向で第2のブラッグ鏡DBR2へ入射した光ビームLを第2のパーセンテージだけ反対方向へ反射できるように構成されている。第2のパーセンテージは例えば99%から100%であり、有利には99.8%から100%、特には99.9%から100%であってよい。特に、第2のパーセンテージが第3のパーセンテージよりも大きいと有利である。
【0042】
第1のブラッグ鏡DBR1及び第2のブラッグ鏡DBR2及び第3のブラッグ鏡DBR3は、それぞれ異なる厚さを有するそれぞれ異なる誘電層DBR1‐i,DBR2‐i,DBR3‐iを有する。各ブラッグ鏡DBR1,DBR2,DBR3を精密に構成することにより、光共振器を光ビームLの所望の波長へ適合させ、流体センサコンポーネント100を1つ若しくは複数の求めるべき流体種類(例えばCO)に合わせた使用のために構成できる。放出方向R及び光軸OAに対して平行な方向での第2のブラッグ鏡DBR2の幅B2は、第1の実施形態によれば、放出方向R及び光軸OAに対して平行な方向での第1のブラッグ鏡DBR1の幅B1及び/又は第3のブラッグ鏡DBR3の幅B3よりも小さい。
【0043】
第2のブラッグ鏡DBR2は、第2の基板120とは反対側の第1の表面DBR2‐fで第2の電気コンタクト142にボンディングされており、これにより第2の電気コンタクト142は自身が接続している第1のウェーハW1と第2のウェーハW2との間の間隔保持装置150として機能する。この場合、中空室114は外部からアクセス可能なままである。ボンディングのために、第2のブラッグ鏡DBR2の表面DBR2‐fには複数のコンタクトパッドを形成可能である(図1には示されていない)。第2のブラッグ鏡DBR2は、光軸OAに沿って進行する光ビームLを、中空室114を通して第2のブラッグ鏡DBR2へ入射させ、そこで第2のパーセンテージだけ発光素子112に対して反対に反射するようにボンディングされる。また、光ビームLは別のパーセンテージだけ第2のブラッグ鏡DBR2を通って透過される。当該別のパーセンテージは第2のパーセンテージより格段に小さく、特には数1から第2のパーセンテージを減算した残りであってよい。中空室114の寸法、特に放出方向Rに対して平行な中空室114の高さhは、ブラッグ鏡DBR1,DBR2,DBR3とともに光ビームLの波長に合うように有利に調整されているので、特に高効率の光共振器が得られる。
【0044】
第2のブラッグ鏡DBR2を透過した光ビームLはフォトダイオード116へ入射し、そこで電圧降下を生じさせ、この電圧降下が第3の電気コンタクト144及び第4の電気コンタクト146としての第2の基板120で読み出し可能となる。このために、第2の基板は導電性を有するように構成される。
【0045】
図2Aには、本発明の第2の実施形態による流体センサコンポーネント200の概略断面図が示されている。
【0046】
第2の実施形態は、実質的には第1の実施形態のバリエーションである。第1の実施形態と異なり、第2の実施形態では電流絞り118が設けられておらず、また、第2の電気コンタクト143は間隔保持装置として機能せず、中空室114を画定していない。
【0047】
さらに、第3の電気コンタクト145が、平面状に、フォトダイオード116の第2の表面116‐fと第2のブラッグ鏡DBR2の第2の表面DBR2‐bとの間に設けられている。第2の電気コンタクト143は、第3のブラッグ鏡DBR3の、発光素子112とは反対側の表面DBR3‐f上に平坦に形成され、特に光軸OAの周囲の領域B4が露出される。領域B4内に間隔保持装置152が構成され、その上に、第2のウェーハW2‐2を第1のウェーハW1‐2に接続するために、第2のブラッグ鏡DBR2がボンディングされる。第2の電気コンタクト143は第2のブラッグ鏡DBR2から間隔を置いて設けられる。したがって、第2のブラッグ鏡DBR2は、導電性を有していてよい。選択手段として、これが第3の電気コンタクト143に置換されてもよい。
【0048】
第2の実施形態によれば、間隔保持装置152は、1つ若しくは複数の絶縁性の(例えば酸化物から成る)犠牲層と(例えば金属から成る)複数の線路層とを第3のブラッグ鏡DBR3の表面DBR3‐f上に交互に形成しパターニングすることにより、製造される。パターニングはCMOS処理でのメタライゼーションプロセスと同様に行うことができる。第2の電気コンタクト143の形成は、有利には、パターニングされる複数の金属製の線路層のいずれかを設ける際に行うことができる。例えば、第1のウェーハW1‐2と第2のウェーハW2‐2とのボンディング後に、犠牲層を、例えば酸化物である場合にはHF液相エッチングによって除去できる。有利には、間隔保持装置152及び/又は第2のブラッグ鏡DBR2は、第2の実施形態によれば、非導電性となるように形成できる。
【0049】
第2のブラッグ鏡DBR2と第3のブラッグ鏡DBR3との間の間隔保持装置152及び中空室114は、光ビームLが(間隔保持装置152によって阻害されずに)内部に流体Fを含む中空室114を通り、第3のブラッグ鏡DBR3から第2のブラッグ鏡DBR2へ導波可能となるように形成される。
【0050】
図2Bには、本発明の第3の実施形態による流体センサコンポーネント300の概略断面部分図が示されている。
【0051】
第3の実施形態は、第2の実施形態のバリエーションであり、第2のウェーハW2‐3の形状及び製造法の点で、第2の実施形態と異なっている。第2のウェーハW2‐3は、図2Bに別個に示されている。
【0052】
第3の実施形態によれば、第2のブラッグ鏡DBR2は、第2の基板220の第1の表面220‐fに、例えばエピタキシャル成長によって形成される。第2の基板220の、第1の表面220‐fとは反対側の第2の表面220‐bにはバッファ層117が形成される。バッファ層117の、第2の基板220とは反対側の表面117‐bにはフォトダイオード116が形成され、このフォトダイオード116の第1の表面116‐bはバッファ層117に接する。つまり、フォトダイオード116は、第2のブラッグ鏡DBR2の、第2の基板220に近い側の表面DBR2‐bの上方に設けられる。フォトダイオード116の第2の表面116‐bには、第4の電気コンタクト147が例えば蒸着によって形成される。
【0053】
第3の実施形態によれば、第2の基板220は光ビームLに対して実質的に透明である。当該第2の基板として例えばサファイア又はSiOを使用可能である。
【0054】
図2Cには、本発明の第4の実施形態による流体センサコンポーネント300の概略断面図が示されている。
【0055】
第4の実施形態は、実質的には、図2Aの第2の実施形態のバリエーションであり、間隔保持装置154,155,156を使用している点で、第2の実施形態と異なっている。第4の実施形態によれば、間隔保持装置154,155,156の形成は、
第1のウェーハW1‐4上、特に第3のブラッグ鏡DBR3の、発光素子112とは反対側の表面DBR3‐f上で、第1のコンタクトパッド155を処理するステップと、
第2のウェーハW2‐4上、特に第2のブラッグ鏡DBR2の、第2の基板120とは反対側の表面DBR2‐f上で、第2のコンタクトパッド156を処理するステップと、
第1のコンタクトパッド155上で、金属柱状部材154を処理するステップと、
第1のウェーハW1‐4を第2のウェーハW2‐4にボンディングするために、金属柱状部材154を第2のコンタクトパッド156にボンディングするステップと
によって行われる。
【0056】
図3Aには、本発明の第5の実施形態による流体センサコンポーネントの概略断面部分図が示されている。
【0057】
第5の実施形態は、第1の実施形態のバリエーションであり、主として、第5の実施形態では第3のブラッグ鏡DBR3が設けられていない点で、第1の実施形態と異なっている。さらに、第5の実施形態では、第2の電気コンタクト143は間隔保持装置として機能せず、中空室114’を画定しないので、流体センサコンポーネントが技術的に幾らか単純になっている。また、光ビームの波長安定性への影響が変化しており、光共振器内で流体Fを通る複数回の進行が可能となることにより、電流閾値が高くなりうる。
【0058】
第1の基板110、第1のブラッグ鏡DBR1及び発光素子112の構造は、図1に関連して説明した通りである。発光素子112の、第1のブラッグ鏡DBR1とは反対側の面112‐fに直接に、中空室114’を画定する間隔保持装置152が形成される。この間隔保持装置152は、図2Aの第2の実施形態に関連して説明したものである。
【0059】
すなわち、第5の実施形態によれば、間隔保持装置152は、1つ若しくは複数の絶縁性の(例えば酸化物から成る)犠牲層と(例えば金属から成る)複数の線路層とを発光素子112の表面112‐f上に交互に形成してパターニングすることにより、製造される。パターニングはCMOS処理でのメタライゼーションプロセスと同様に行うことができる。
【0060】
発光素子112に電力を供給するために用いられる第2の電気コンタクト143’の形成は、第5の実施形態によれば、第1のウェーハW1‐5の一部としてでなく、第2のウェーハW2‐5の一部として、特に第2のブラッグ鏡DBR2の、(図示されていない)第2の基板120に近い側の表面DBR2‐bで、行われる。相応に、第5の実施形態によれば、間隔保持装置152及び第2のブラッグ鏡DBR2は、導電性を有するように形成される。第2の電気コンタクト143’と第2のウェーハW2‐5の(図示されていない)残部、例えば第2の基板120及びフォトダイオード116との間には、例えば非導電性層を形成でき、その上方に続けて、例えば図2Aに関連して説明したように、フォトダイオード116での電圧の取り出しに用いられる第3の電気コンタクト145を設けることができる。相応の措置が当業者に公知である。
【0061】
例えば、第1のウェーハW1‐5と第2のウェーハW2‐5とをボンディングした後、犠牲層が、酸化物である場合には例えばHF液相エッチングによって、除去される。
【0062】
第2のブラッグ鏡DBR2と発光素子112との間の間隔保持装置152及び中空室114’は、光ビームLが(間隔保持装置152によって阻害されずに)内部に流体Fを含む中空室114’を通り発光素子112から第2のブラッグ鏡DBR2へ導波可能となるように構成される。
【0063】
図3Bには、本発明の第6の実施形態による流体センサコンポーネントの概略断面部分図が示されている。
【0064】
第6の実施形態は、第5の実施形態のバリエーションであり、主として間隔保持装置154,155,156の形状の点で、第5の実施形態と異なっている。第6の実施形態においても第3のブラッグ鏡DBR3は設けられていない。間隔保持装置154,155,156の形成は、第4の実施形態と同様に、すなわち、
第1のウェーハW1‐6上、特に発光素子112の、第1のブラッグ鏡DBR1とは反対側の表面112‐f上で、第1のコンタクトパッド155を処理するステップと、
第2のウェーハW2‐6上、特に第2のブラッグ鏡DBR2の、第2の基板120とは反対側の表面DBR2‐f上で、第2のコンタクトパッド156を処理するステップと、
第1のコンタクトパッド155上で、金属柱状部材154を処理するステップと、
第1のウェーハW1‐6を第2のウェーハW2‐6にボンディングするために、金属柱状部材154を第2のコンタクトパッド156にボンディングするステップと
によって行われる。
【0065】
第6の実施形態によれば、間隔保持装置154,155,156及び第2のブラッグ鏡DBR2は同様に導電性を有する。
【0066】
図4には、本発明の流体センサコンポーネントの製造方法を説明するための概略的なフローチャートが示されている。各方法ステップの番号は特定の順序を定めるものでなく、論理的な区分のために用いている。特には、複数のステップを完全に若しくは部分的に同時に行うことができる。
【0067】
ステップS01では、第1の基板110上に第1のブラッグ鏡DBR1と発光素子112とを含む第1のウェーハW1;W1‐1;W1‐2;W1‐4;W1‐5;W1‐6が形成される。発光素子112は、第1のブラッグ鏡DBR1の第1の表面DBR1‐fに形成される。発光素子112は、光ビームLを、自身の、第1のブラッグ鏡DBR1とは反対側の表面112‐fから放出方向Rへ放出するように形成される。第1のブラッグ鏡DBR1及び発光素子112は、第1の基板110の第1の表面110‐f上に形成される。なお、放出方向Rは第1の表面110‐fに対して直立している。発光素子112及び第1のブラッグ鏡DBR1は、放出されて放出方向Rの反対方向へ進行し第1のブラッグ鏡DBR1へ入射する光ビームLを第1のパーセンテージだけ放出方向Rへ向かって反射できるように構成される。
【0068】
ステップS02では、第2の基板120;220上に第2のブラッグ鏡DBR2とフォトダイオード116とを含む第2のウェーハW2;W2‐1;W2‐2;W2‐4;W2‐5;W2‐6が形成される。ここで、フォトダイオード116は、第2のブラッグ鏡DBR2の、第2の基板120;220に近い側の表面DBR2‐b上に設けられる。
【0069】
ステップS03では、発光素子112の、第1のブラッグ鏡DBR1とは反対側の面112‐f上、及び、第2のブラッグ鏡DBR2の、フォトダイオード116とは反対側の表面DBR2‐f上に、流体Fを導入でき且つ光ビームLが通過可能な中空室114,114’が形成されるように、第1のウェーハW1;W1‐1;W1‐2;W1‐4;W1‐5;W1‐6が第2のウェーハW2;W2‐1;W2‐2;W2‐3;W2‐4;W2‐5;W2‐6にボンディングされる。
【0070】
発光素子112及び第2のブラッグ鏡DBR2は、放出されて放出方向Rへ向かって進行し第2のブラッグ鏡DBR2へ入射する光ビームLを、第2のパーセンテージだけ放出方向Rの反対方向へ反射でき且つ別のパーセンテージだけ透過できるように構成及び配置される。
【0071】
フォトダイオード116は、光ビームLが中空室114,114’を通過した後及び光ビームLが第2のブラッグ鏡DBR2を透過した後に、その少なくとも一部を自身へ入射させるように構成及び配置される。
【0072】
ステップS04では、第1のウェーハW1;W1‐1;W1‐2;W1‐4;W1‐5;W1‐6及び第2のウェーハW2;W2‐1;W2‐2;W2‐3;W2‐4;W2‐5;W2‐6から流体センサコンポーネントが個別化される。
【0073】
図5Aには、本発明のさらなる特徴である、本発明の集積マイクロメカニカル流体センサコンポーネントを用いた流体の識別方法を説明するための概略的なフローチャートが示されている。ここでは図5Bも参照する。
【0074】
図5Bには、本発明のさらなる特徴である流体の識別方法を説明するための概略的なグラフが示されている。
【0075】
ステップS11では、流体Fが中空室114に存在している期間中、第1のP−I特性曲線K1が記録される。この場合、電流Iは、光ビームLを放出する発光素子112に例えば第1の電気コンタクト及び第2の電気コンタクト140,142,143,143’を介して供給される電流である。第1のP−I特性曲線を記録する際、当該電流は特に電流最小値Iminと電流最大値Imaxとの間で例えばほぼ一定に変化し、特には単調に若しくは厳密に単調に上昇若しくは下降する。ここでの変化は離散的な電流値をともなって非恒常的に行われることもある。なお、電流最小値Iminは0mAであってもよい。
【0076】
電力Pは、フォトダイオード116へ入射する光ビームLに対する応答としてフォトダイオード116で生じる電力であり、フォトダイオード116で、例えば電圧として、例えば第3の電気コンタクト及び第4の電気コンタクト144,145,146,147を介して読み出される。
【0077】
第2のステップS12では、第1の閾値電流Is,mgが、電力Pがフォトダイオード116で第1のP−I特性曲線にしたがって終端値を取る時点での電流Iの値として、求められる。
【0078】
ステップS13では、求められた第1の閾値電流Is,mgが流体Fの識別のために予め定められた基準閾値電流Is,ogと比較される。図5Aに関連して説明した実施形態によれば、予め定められた基準閾値電流Is,ogは、第2のP−I特性曲線K2にしたがった第2の閾値電流である。第2のP−I特性曲線K2は第1のP−I特性曲線K1とほぼ同じ方式で記録されるが、流体Fが中空室114,114’に存在しない期間中に記録される点が第1のP−I特性曲線K1と異なる。例えば、第2のP−I特性曲線K2は、中空室114,114’に真空状態が形成されている期間中に記録することができる。
【0079】
ステップS13での比較は、例えば、本発明の流体センサコンポーネントに接続されている電子制御装置によって行うことができる。
【0080】
これに代えて、識別すべき流体に応じて定められた基準流体を中空室114,114’内に用意してもよい。流体Fとして例えばヒトの呼気が識別される場合、特に呼気中のアルコール分子の分子濃度が求められる場合には、基準流体としての平均的なヒトの呼気が中空室114,114’に存在する期間中に第2のP−I特性曲線K2を記録することができる。気象台との通信又は調整によって、基準流体に関する付加的に改善された情報を受信することもできる。
【0081】
発光素子112が、暫くの間、例えば数マイクロ秒にわたって駆動される場合、本発明の集積マイクロメカニカル流体センサコンポーネント、特に光共振器において、温度が上昇することがある。これにより、発光素子112から放出される光ビームLの波長が偏移しうる。有利には、発光素子112は短パルスモードで駆動される。これに代えて、発光素子112を過渡状態において駆動してもよい。なぜなら、光共振器で生じる温度は周囲温度に対して僅かな依存性しか有さないからである。流体センサコンポーネントが他の機器内で使用される場合、周囲温度の作用を低く保つために、既存のヒートシンクを使用することもできる。
【0082】
上述した温度作用に基づく放出光ビームLの波長の偏移は、当該波長を所望の領域にわたって変化させるために意図的に行うこともできる。これは、特に狭い吸収ピークを有するガスなどを識別すべき場合に有利である。このために、電圧Uの読み出しを、流体センサコンポーネントが発光素子112の一貫した駆動のためにほぼ一定に加熱される期間中、フォトダイオード116によって行うことができる。
【0083】
本発明を好ましい実施形態に即して説明したが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されず、種々に修正可能である。特に、本発明の中心的思想から離れることなく、本発明を種々に変更若しくは修正することができる。
【0084】
例えば、間隔保持装置は、少なくとも1つのスペーサを第1のウェーハ若しくは第2のウェーハ上に形成することによって実現することもできる。当該スペーサは、支持構造体、例えば支持体ウェーハを用いて形成して薄膜化したものを配置してもよいし、又は、形成後に薄膜化してもよい。スペーサの材料は、例えば、複数の貫通チャネルを有するフレームの形態にパターニングされたSiであってもよいし、又は、こうしたSiを含んでもよい。第1のウェーハと第2のウェーハとのボンディングは、例えば、第1のウェーハ及び第2のウェーハの表面にパターニングされて設けられている酸化物層などでの活性化Siダイレクトボンディングによって行われる。貫通チャネルのパターニングはボンディングの処理後に行うこともできる。
【0085】
間隔保持装置は、第1のウェーハ若しくは第2のウェーハ上にメサとして形成される部材のほか、ピラーを成長させ、その上にそれぞれ他方のウェーハをボンディングすることによっても実現可能である。
【0086】
フォトダイオードの接続は、(例えば第2のブラッグ鏡とフォトダイオードとの間でなく)第2のブラッグ鏡の、第2の基板から遠い側の面で行うこともできる。ここで、第2の基板は導電性を有するように構成される。
【0087】
流体センサコンポーネントに必要な感度がきわめて小さい場合には、外部キャビティ無しの構成も可能である。ウェーハ実装の際には、波の調整のために、中空室のエタロン作用を利用できる。
【0088】
フィルタも導入可能である。この場合、閾値(スレッショルド)の下方でも、表面発光デバイスの広い利得スペクトルを利用でき、フィルタによって該当する波長を取り出すことができる。
【0089】
特に、第2のブラッグ鏡の、中空室に近い側の表面に、有利に別の層を形成できる。例えば、好ましくは流体の分析物又は流体中の分析物が最大の吸収断面積を有する波長に適合された反射防止保護層を形成できる。また、(できるかぎり受動の)吸着保護層を、流体に曝される表面に形成することもできる。不活性の材料によって、所定の分子種類での特に小さな吸着エンタルピーを達成できる。さらに、光学絞りを設けて光ビーム路を空間的に制限することもできる。
【0090】
流体センサコンポーネントの構造、特に個々の層の厚みと、使用される材料、特に半導体材料系とによって、流体センサコンポーネントを、種々の流体、例えばCO,NO,Oなどに対して感応性を有するように調整可能である。
【0091】
ブラッグ鏡は、例えばそれぞれ異なる屈折率を有する複数の層から成る層対の数を変化させることによって、種々の適用分野に対して最適化可能である。この場合、例えば、低い電流閾値、高い感度、安定した波長、又は、技術的に低コストの構造などの点で最適化を行うことができる。
【0092】
幾つかの層又は素子、例えば第2のブラッグ鏡を、例えば流体センサコンポーネントのフットプリントに対応する寸法又はこれを超える寸法で、図に概略的に示されているよりも幅広に形成可能である。
【0093】
フォトダイオード及び/又は第2のウェーハは、第1のウェーハの複数の発光素子及び/又は複数の表面発光デバイスの光ビームの少なくとも一部をフォトダイオードへ入射させるように構成及び配置できる。流体センサコンポーネントは、この場合、複数のメサを有する。これにより、複数の中空室による平均が可能となり、流体を通る光ビーム路をメサ数でスケーリングできるので、測定精度を高めることができる。
【0094】
これに代えて、流体を識別するために、発光素子112に制御装置を設け、この制御装置によって、流体Fが中空室114,114’に存在する場合に一定の電流Iを供給し、フォトダイオード116で生じる電圧Uを評価してもよい。
【0095】
別のバリエーションとして、制御装置により、中空室114,114’内に流体Fが存在する場合に、フォトダイオード116で予め定められた電圧Uを達成するのに必要な電流Iを評価することもできる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5A
図5B