【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る不燃及び放射線遮蔽
材は、
酢酸ビニルの配合割合が10〜40質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)と、前記EVA樹脂に対して40〜80質量%のポリホウ酸ナトリウムの粉末と、前記EVA樹脂に対して10〜200質量%のタングステンの粉末と、を120℃以下の条件で溶融混合し、成形して得られたことを特徴とする。
本明細書では単に「不燃」と表現したときは、難燃性を含めた広い意味で使用する。
【0007】
ポリホウ酸ナトリウムは、約150℃以上にて発泡し、難燃性,不燃性を発現することは公知である。
従って、融点が100℃を超えるような塩化ビニル等の熱可塑性樹脂に溶融混練しようとしても少なくとも部分的に150℃近くなり、その部分でのポリホウ酸ナトリウムが発泡し、押出成形,射出成形等の樹脂成形ができなかった。
そこで本発明者らは、融点を低く抑えることができるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂に着目し本発明に至った。
【0008】
エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂:ethylene−vinylacetate copolymer)は、高密度ポリエチレンと比較して弾力性,強靭性,透明性に優れる。
しかも酢酸ビニルの配合割合が高くなるにつれて結晶性が低下し、柔軟性が増すとともに融点が低くなる。
例えば、EVA樹脂中のVA(酢酸ビニル)の配合割合が質量で10%のときは融点が約94℃であり、VAの割合が33%のときは融点が61℃に低下する。
従って、本発明でフィルム材やシート材を成形する場合にはEVA樹脂の融点を95℃以下に抑えると局部的なポリホウ酸ナトリウムの発泡を防ぐことができる。
即ち、EVA樹脂中のVAの割合は10%以上が好ましく、範囲としては10〜45%がよく、好ましくは10〜40%である。
【0009】
EVA樹脂中にポリホウ酸ナトリウムを混合するのは、上述したように不燃性を付与するためであり、放射線遮蔽金属又はその合金の粉末を混合するのはX線やγ線等の放射線を遮蔽する機能を付与する。
【0010】
ポリホウ酸ナトリウムは、EVA樹脂中のアセチル基との水素結合が強く作用し、親和性が高いので混合しやすい。
実験では、EVA樹脂に対する質量比で約200%まで混合できた。
ポリホウ酸ナトリウムの混合比は要求される難燃性,不燃性に応じて設定される。
例えば米国の「Undermriter’s Laboratoies,Inc.」が制定した安全規格に94Vがある。
この94Vでは、難燃性の高い順に5VA,5VB,V−0,V−1,V−2,HBの等級がある。
最も厳しい等級5VA,5VBレベルを満足するには、ポリホウ酸ナトリウムの粉末を約50%以上混合する必要があった。
また、V−1,V−2レベルの等級を満足するには約5%の混合であった。
従って、EVA樹脂に対するポリホウ酸ナトリウムの混合割合は、EVA樹脂に対する質量比で5〜200%の範囲がよく、好ましくは20〜100%,さらに好ましくは40〜80%である。
ポリホウ酸ナトリウムの粉末は、平均粒径10〜30μmの、ポリホウ酸ナトリウムの溶液を噴霧乾燥させたものやさらにジェットミル等で平均粒径1〜5μmの微粉末にしたものでもよい。
【0011】
放射線の遮蔽金属としては従来から使用されている高比重の鉛,タングステンの粉末が例として挙げられる。
タングステンには鉄,コバルト,銅が必要に応じて含まれている。
これらの金属又は合金の配合割合は、要求される放射線の遮蔽性能により選定される。
放射線遮蔽金属又はその合金の粉末の混合割合はEVA樹脂に対する質量比で10〜200%の範囲がよい。
【0012】
本発明に用いる混合方法は、EVA樹脂にポリホウ酸ナトリウムの粉末を溶融混合した後に放射線遮蔽金属の粉末を溶融混合してもよく、ポリホウ酸ナトリウムと放射線遮蔽金属の粉末を同時に溶融混合してもよい。
このときの溶融混合温度は120℃以下が好ましい。
また、本発明に係る材料は各種分散剤や炭酸カルシウムの粉末を混合してもよい。
さらには酸化チタンの粉末を混合し、自己浄化作用を付加してもよい。
【0013】
本発明に係る材料を用いてフィルムやシートを成形することができるが、引張り強度等を向上させるには、メッシュ又は網目状の不燃処理生地材を芯材として請求項1記載の不燃及び放射線遮蔽材料をコーティングし複合化してもよく、高い放射線遮蔽機能が要求される場合には、放射線遮蔽金属シート又は、当該放射線遮蔽金属シートを帯状にしたものをシート状に平織りした生地に請求項1記載の不燃及び放射線遮蔽材料を積層してもよい。