(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6150997
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】半導体集積回路装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/82 20060101AFI20170612BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20170612BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
H01L21/82 F
H01L27/04 H
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-221458(P2012-221458)
(22)【出願日】2012年10月3日
(65)【公開番号】特開2014-75437(P2014-75437A)
(43)【公開日】2014年4月24日
【審査請求日】2015年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エスアイアイ・セミコンダクタ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】南 志昌
【審査官】
市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−021605(JP,A)
【文献】
特開平07−321209(JP,A)
【文献】
特開2001−185551(JP,A)
【文献】
特開2002−050692(JP,A)
【文献】
特開2012−114258(JP,A)
【文献】
特開平09−139431(JP,A)
【文献】
特開平07−022508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/82
H01L 21/822
H01L 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の表面に設けられた素子分離絶縁膜と、
前記素子分離絶縁膜の上に間隔を空けて配置された第1の多結晶シリコンからなる複数のダミーヒューズと、
前記複数のダミーヒューズを覆う窒化シリコン膜と、
前記窒化シリコン膜を介して、前記複数のダミーヒューズの間に配置された第2の多結晶シリコンからなる複数のヒューズ素子と、
前記複数のヒューズ素子および前記複数のダミーヒューズの上に配置された絶縁膜と、
前記絶縁膜を介して、前記複数のヒューズ素子の中央部と前記ダミーヒューズを跨ぎ、前記複数のダミーヒューズの上に切れ目無く配置されたシールリングと、
前記絶縁膜に設けられた接続孔を介して前記複数のヒューズ素子に接続された第1配線層と、
前記第1配線層とその上方に配置された第2配線層との間に配置された第1金属間絶縁膜およびSOG膜および第2金属間絶縁膜と、
前記第2金属間絶縁膜の上に設けられた保護膜と、
前記保護膜を選択的に除去し、前記複数のヒューズ素子の中央部と前記ダミーヒューズを跨ぎ、前記シールリングの内側に設けられた開口領域と、
を有する半導体集積回路装置。
【請求項2】
前記シールリングは前記第1配線層と同一層であることを特徴とする請求項1記載の半導体集積回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒューズ素子を有する半導体集積回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボルテージレギュレータやボルテージディテクタは、アナログ処理回路やロジック回路、容量、さらにブリーダー抵抗等で構成され、ブリーダー抵抗部には、検査工程で所望の電圧に調整できるように、抵抗選択用のヒューズ素子が設けられている。
【0003】
その様な従来の半導体集積回路装置の一例を
図4、
図5および
図6に示す。
図4はヒューズ素子の平面図であり、
図5は
図4のA−A'に沿った断面およびその両脇にそれぞれ配置されたMOSトランジスタと抵抗体512とを含む断面図であり、
図6は
図4のB−B'に沿った断面図である。
図5に示すように、ヒューズ素子405は、素子分離絶縁膜503上に設けられており、MOSトランジスタのゲート電極405aと同一の導電材である不純物をドープされた多結晶Si膜からなる。
【0004】
多結晶Si膜405は、層間絶縁膜513と平坦化膜であるBPSG膜514とに覆われており、多結晶Si膜の両端部近傍に達するコンタクト孔515がBPSG膜514と層間絶縁膜513とに開孔されている。BPSG膜514上には、第1層目のアルミニウム膜516から成る配線が、
図4に示したコンタクト孔415を介して多結晶Si膜505にコンタクトする様にパターニングされている。アルミニウム膜516は、TEOSを原料としてプラズマCVD法で形成された第1層目の金属間絶縁膜518に覆われている。
【0005】
この従来例では、第1層目のアルミニウム膜516の他に第2層目のアルミニウム膜(図示せず)も用いられている。このため、これらのアルミニウム膜同士の間の平坦化膜として、SOG膜519が、回転塗布、キュアリング及びその後のエッチバックによって第1層目の金属間絶縁膜518上に形成されている。SOG膜519は、TEOSを原料としてプラズマCVD方で形成された第2層目の金属間絶縁膜520に覆われている。第2層目の金属間絶縁膜520はプラズマCVD法で形成されたオーバコート膜であるSiN膜521に覆われている。
【0006】
また、多結晶Si膜405上には、ヒューズ素子であるこの多結晶Si膜405をレーザー光で切断するための開口領域422が設けられている。開口領域422は、アルミニウムパッド(図示せず)上のSiN膜521をエッチングする時のマスクを用いて同時にエッチングされたものであるが、オーバエッチングのために、第1層目の金属間絶縁膜518まで達している。このようにヒューズ開口領域422が第1層目の金属間絶縁膜518まで達していることで、第1層目の金属間絶縁膜の表面を平坦にしているSOG膜519が経路となり、外部から水あるいは水蒸気により水分が浸入し、半導体集積回路の内部素子に入り込み、半導体集積回路装置の長期信頼性不良の原因となっていた。特にPMOSトランジスタにおいては負のゲートバイアスを加えた場合にトランジスタの閾値電圧シフトが起こり、NBTI(Negative Bias Temperature Instability)として問題となっていた。
【0007】
このようなヒューズ開口領域522からの水分侵入に起因する長期信頼性を劣化させない施策として、ヒューズ開口領域の外周に第1層目のアルミニウム膜で障壁となるようシールリング517を形成することでIC内部に水分の侵入を防止する構造が紹介されている。(例えば、特許文献1、2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平05−021605号公報
【特許文献2】特開平07−022508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、ヒューズ開口領域422からの水分侵入を防ぐための障壁となる第1層目のアルミニウム膜でのシールリング417において、
図5および
図6に示すように多結晶Si膜からなるヒューズ素子405の有無による段差の影響により、シールリング417の高さが低くなる領域が存在する。その結果、
図5および
図6に示したように従来の構造では、エッチバック時にシールリング417上のSOG膜519を十分に除去することはできず、ヒューズ開口領域422の内側面にあるSOG膜519と内部素子側にあるSOG膜519が水分の経路としてつながってしまい、ICの特性劣化を引き起こす要因となる可能性がある。
【0010】
本発明は、この様な問題を考慮して成されたもので、ヒューズ素子上の層間絶縁膜の平坦性を改良して、ヒューズ開口領域の内側面と内部素子側のSOG膜を完全に分断し、半導体集積回路の内部素子への水分侵入を防ぐことで信頼性向上を図った半導体集積回路装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決するために、以下のような手段を用いた。
【0012】
まず、半導体基板と、
前記半導体基板の表面に設けられた素子分離絶縁膜と、
前記素子分離絶縁膜の上に間隔を空けて配置された第1の多結晶シリコンからなる複数のダミーヒューズと、
前記複数のダミーヒューズを覆う窒化シリコン膜と、
前記窒化シリコン膜を介して、前記複数のダミーヒューズの間に配置された第2の多結晶シリコンからなるヒューズ素子と、
前記ヒューズ素子および前記複数のダミーヒューズの上に配置された絶縁膜と、
前記絶縁膜を介して、前記ヒューズ素子および前記複数のダミーヒューズの上に切れ目無く配置されたシールリングと、
前記絶縁膜に設けられた接続孔を介して前記ヒューズ素子に接続された第1配線層と、
前記第1配線層とその上方に配置された第2配線層との間に配置された第1金属間絶縁膜およびSOG膜および第2金属間絶縁膜と、
前記第2金属間絶縁膜の上に設けられた保護膜と、
前記保護膜を選択的に除去し、前記ヒューズ素子の上方に設けられたヒューズカットを容易に実施するための開口領域と、
を有する半導体集積回路装置とした。
【0013】
また、前記シールリングは前記第1配線層と同じ材料により、同時に形成されることを特徴とする半導体集積回路装置とした。
【発明の効果】
【0014】
本発明の半導体集積装置では、第2の多結晶Si膜からなるヒューズ素子間に第1の多結晶Si膜からなるダミーヒューズとダミーヒューズ上に窒化膜を設けることで、多結晶Si膜からなるヒューズ素子有無の影響による層間膜の段差(高低差)がなくなり、シールリング上のSOG膜はインプロセス中で除去され、ヒューズ開口領域の内側面と内部素子側のSOG膜はシールリングで完全に分断される。このため、SOG膜から吸収された水分は、シールリングにおいて堰き止められ、半導体集積回路の内部素子へ水分が進入しないので、半導体集積回路の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例1の半導体集積回路装置の模式平面図である。
【
図2】
図1の本発明の半導体集積回路装置のA−A'の模式断面図
【
図3】
図1の本発明の半導体集積回路装置のB−B'の模式断面図
【
図4】従来の半導体集積回路装置の模式平面図である。
【
図5】
図4の従来の半導体集積回路装置のA−A'の模式断面図
【
図6】
図4の従来の半導体集積回路装置のB−B'の模式断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に本発明の半導体装置の平面図、
図2および
図3に本発明の半導体装置の模式断面図を示す。
【0017】
図1を用いて、ヒューズ領域の平面構造について説明する。本発明の特徴は、ヒューズ素子に隣接してダミーヒューズ106を配置した点である。ここで、ヒューズ素子108は抵抗体と同じ層である第2の多結晶シリコン膜からなり、ヒューズ素子108の両端にはコンタクト領域がありコンタクト孔115を介して第1層目のアルミニウム配線116が形成されている。ヒューズ素子108の中央部はレーザー切断しやすいように両端部に比べ細くなっており、ヒューズ素子中央部の両側近傍には一定の間隔の隙間をおいてダミーヒューズ106が配置されている。ダミーヒューズ106はトランジスタのゲート電極と同じ層である第1の多結晶シリコン膜から形成されている。ダミーヒューズ106の表面は窒化シリコン膜(SiN膜)107に覆われている。そして、複数のヒューズ素子108の中央部とダミーヒューズ106を跨いでヒューズ開口領域122が形成されている。そして、第1層目のアルミニウム膜からなるシールリング117がヒューズ開口領域122を囲んでその周囲に切れ目無く、閉曲線をなして配置されている。平坦化のためにシールリングはできるだけダミーヒューズの上に位置するように配置される。シールリングがダミーヒューズの上に配置されないのは、ヒューズ素子およびその両側にある隙間の部分の上方だけである。
【0018】
図2は
図1のA−A'に沿った断面およびその両脇にそれぞれ配置されたMOSトランジスタと抵抗体212とを含む断面図である。ヒューズ開口領域122の下には窒化シリコン膜107に覆われたダミーヒューズ106が配置されている。
【0019】
次に、この様な半導体集積回路装置の構造を製造方法に即して説明する。P型シリコン半導体基板201上にPMOSトランジスタ領域に形成されたN型ウエル拡散層202と、特に記載はしないがNMOS領域にP型ウエル拡散層を形成し、LOCOS法により形成された酸化膜の素子分離絶縁膜203を例えば4000〜8000Å程形成している。
【0020】
そして熱酸化によるゲート絶縁膜204を100〜400Å程度形成し、所望の閾値電圧を得るようにイオン注入を行なった後、CVD法でゲート電極となる第1の多結晶Si膜を堆積し、フォトレジストでパターニングを施しゲート電極205aとヒューズ素子予定領域にダミーヒューズ106を形成する。このときゲート電極205aおよびダミーヒューズ106となる第1の多結晶Si膜中には、リンあるいはボロンをイオン注入あるいはDoped−CVD法で拡散させ、電極の極性をN型もしくはP型多結晶Si膜にしておく。その後、LPCVD法を用いて、第1の多結晶Si膜上に第1のSiN膜107を設ける。このように第1の多結晶Si膜からなるダミーヒューズ106をSiN膜107で覆うことで、ICの特性を調整するヒューズ素子をレーザートリミングする際に、ヒューズ素子同士がショートしてしまうことを防止する効果がある。なお、ヒューズ素子領域以外のSiN膜は除去しても良いし、このまま残しても良い。その後、抵抗体およびヒューズ素子を形成するために、第2の多結晶シリコンを堆積し、低濃度の不純物を注入する。目的に応じP型抵抗体でもN型抵抗体を形成する。また、Doped−CVD法で形成しても良い。その後、フォトリソグラフィー工程の後、エッチングを施しパターンを形成し、高抵抗抵抗体212およびヒューズ素子108を作成する。
【0021】
その後、PMOSトランジスタのドレイン・ソースとなるP型高濃度不純物領域210、特に図示しないがNMOSトランジスタのソースおよびドレインとなるN型高濃度不純物領域を形成する。また、この時同時に、抵抗体212のコンタクト部分の低抵抗化およびヒューズ素子108の低抵抗化を図る為に、同時にP型またはN型の高濃度不純物のイオン注入を抵抗体の低濃度領域209の両側に配置されたコンタクト部211およびヒューズ素子全面に対して行い不純物濃度を十分に高くする。
【0022】
その後、層間絶縁膜213と平坦化膜である絶縁膜のBPSG膜214を形成したのち第1のコンタクト孔115を開口し、BPSG膜214上に、第1層目のアルミニウム膜116から成る配線が、コンタクト孔115を介して各要素素子にコンタクトする様にパターニングする。また、第1層目のアルミニウム膜116は後の工程で形成されるヒューズトリミングのための開口領域222とヒューズ素子108との間に水分侵入を防ぐ為のシールリング117としてパターニングされる。
【0023】
その後、多層配線とするため第1層目の金属間絶縁膜218をたとえばP−CVD法によるTEOSで形成する。この第1層目の金属間絶縁膜218上に平坦性をよくするためSOG膜219の回転塗布、キュアリング、エッチバックが施されるが、この結果SOG膜219は残らずに第1層目の金属間絶縁膜218の表面が露出して平坦化された状態となる。さらに第1層目の金属間絶縁膜218の上にはTEOSを原料としてプラズマCVD法で形成された第2層目の金属間絶縁膜220が形成され、その後、第2のコンタクト孔(図示せず)を形成し、第2層目のアルミニウム膜(図示せず)を設ける。その後、第2層目のアルミニウム膜および第2層目の金属間絶縁膜220を覆うようにプラズマCVD法にて保護膜である第2のSiN膜221を形成する。そして、保護膜である第2のSiN膜221にアルミニウムパッド(図示せず)やトリミング加工のための開口領域222をエッチングにより選択的に設ける。
【0024】
図3は
図1のB−B'に沿った断面図である。
図2および
図3に示した本発明の構造のように、第2の多結晶Si膜からなる隣り合うヒューズ素子108の間に、第1のSiN膜107で覆われた第1の多結晶Si膜からなるダミーヒューズ106を設けることで、段差が緩和され、層間絶縁膜213とBPSG膜214の平坦性が、ダミーヒューズが無い場合に比べ飛躍的に向上する。これにより
図5および6の従来構造のようなヒューズ素子有無による段差の影響を無視することができるのでシールリング上にSOG膜219が入り込む隙間がなくなる。その結果、インプロセス中の平坦化技術であるエッチバック工程によりシールリング117上のSOG膜219は十分に除去され、シールリング217によりSOG膜219は十分に寸断され途切れる。このため、半導体集積回路装置の内部素子へSOG膜を介して水分が進入しないので、半導体集積回路装置の信頼性を向上させることができる。なお、SOG膜がヒューズ開口領域内側面からの水分経路とならない様、シールリングでSOG膜を遮断できていれば、内部素子領域においてはアルミニウム配線間のスペースにSOG膜があっても構わない。
【0025】
以上のようにして形成された本発明の半導体集積回路装置では、シールリング上の吸湿性を有するSOG膜がほぼ完全に除去されるので、開口領域から内部素子への水分の浸入が防止され、半導体集積回路の信頼性を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0026】
201 P型シリコン半導体基板
202 N型ウエル拡散層
203、503 素子分離絶縁膜
204、504 ゲート絶縁膜
205、405 第1の多結晶Si膜からなるゲート電極(ヒューズ素子)
106 第1の多結晶Si膜からなるダミーヒューズ
107 第1のSiN膜
108 第2の多結晶Si膜からなるヒューズ素子
209、509 抵抗体の低濃度領域
210、510 P型高濃度不純物領域
211、511 抵抗体の高濃度領域
212、512 高抵抗抵抗体
213、513 層間絶縁膜
214、514 BPSG膜
115、415 コンタクト孔
116、416 第1層目のアルミニウム膜(配線層)
117、317 第1層目のアルミニウム膜(シールリング)
218、518 第1層目の金属間絶縁膜
219、519 SOG膜
220、520 第2層目の金属間絶縁膜
221、521 第2のSiN膜
122、422 ヒューズ開口領域