【実施例】
【0069】
実施例1:行動薬理
実験を開始する前に、有孔の50-mlコニカル遠心チューブ中で、ウミウシ(Hermissenda Crassicornis)の検体を、15度の人工的な海水(ASW)中で3日間維持した。海のbryozoan Bugula neritinaから精製したブリオスタチンを、EtOH中に溶解し、ASW中にその最終濃度に希釈した。動物をASW中で、ブリオスタチンと共に4時間インキュベートし、次いで、通常のASWで濯いだ。選択された実験のために、ラクタシステイン (10μM)又はアニソマイシンをASWに加えた。
【0070】
ウミウシの行動及び生化学におけるブリオスタチン効果を、個々の動物が入れられた(housing)、8 cmの長さ、1 cmの直径の試験チューブの中の海水培地(bathing medium)に薬物を添加することにより生じさせた。
【0071】
実施例2:免疫染色方法
実験処置及び試験に続いて、速やかに動物を断頭し、中枢神経系(CNS)を取り出し、次いで、20 mM Trisで緩衝した(pH 8)天然の海水(NSW; 0.2μm ミクロポア濾過)中の4%パラホルムアルデヒドで固定した。次いで、該CNSを、ポリエステルワックス(20)で包埋し、切断し(6μm)、及び、アビジン結合マイクロペルオキシダーゼ(microperoxidase)(ABC方法、ベクター)と対のビオチン標識化第二抗体を用いて免疫染色した。アミノエチルカルバゾール(AEC)を色素原として用いた。第一ポリクローナル抗体(25U2と命名された)をイカ視葉(squid optic lobes)から抽出した完全長のカレキシチンタンパク質から、ウサギにおいて産生させた。グレースケールの強度測定を、B-光受容体の限局性の細胞質領域の顕微鏡写真マイナス同じバックグラウンド領域(非染色ニューロパイル)から行った。
【0072】
実施例3:タンパク質キナーゼCアッセイ
細胞を、1 mM EGTA、1 mM PMSF、及び50 mM NaFを含む100μlの10 mM Tris-HCL pH 7.4バッファー中で超音波処理(5秒間、25W)することによりホモジナイズした。ホモジネートをポリアロマー遠心チューブに移し、100,000×gで10分間、4度で遠心分離した。上清を取り除き、直ちにドライアイス上で凍結した。粒子状の画分を、100μlの同じバッファー中で超音波処理して再懸濁し、-80度で貯蔵した。PKC測定のために、10μlのサイトゾル又は粒子状画分を、10μM ヒストン、4.89 mM CaCI
2、1.2μg/μl ホスファチジル-L-セリン、0.18μg/μl 1.2-ジオクタノイル-sn-グリセロール、10 mM MgCl
2、20 mM HEPES (pH 7.4)、0-8 mM EDTA、4 mM EGTA、4% グリセロール、8 μg/ml アプロチニン、8 μg/ml ロイペプチン、及び2 mM ベンズアミジンの存在下、15分間、37度でインキュベートした。0.5 μCi [γ
32-P]ATPを加え、及び
32P-リンタンパク質形成を、以前に記載したように(25)、ホスホセルロースへの吸着によって測定した。このアッセイを、ウミウシの神経系ホモジネート又は培養された哺乳類のニューロンホモジネートのためにわずかに調整して用いた。
【0073】
実施例4:細胞培養
ラット海馬のH19-7/IGF-IR細胞(ATCC)を、ポリ-L-リシンでコーティングされたプレート上に蒔き、約50% 被覆が得られるまで、数日間、DMEM/10% FCS、35度で増殖させた。次いで、培地を、10 ng/ml 塩基性線維芽細胞成長因子を含む5 ml N2 培地に交換することにより、細胞をニューロン表現型に分化するように誘導し、T-25フラスコ中、39℃で増殖させた(26)。次いで、種々の濃度のブリオスタチン(0.01〜1.0 nM)を、10μlの水溶液に加えた。特定された間隔の後、培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、穏やかに削って(scraping)取り除き、1000 rpmで5分間、遠心分離して収集した。
【0074】
実施例5;行動条件づけ
ウミウシのパブロフ型条件づけは、無条件刺激、回転振盪と共に、中性刺激、光の繰り返しペアリングを含む(Lederhendler et al. (24)及びEpstein et al. (6)を参照)。回転/振盪刺激は、耳胞(statocyst)有毛細胞を興奮させ、それによって、無条件反応を誘発する:足部を支持する表面への粘着(adherence)又は「密着(clinging)」を伴う、足部(foot)と呼ばれる表面下の筋肉の活発な収縮。条件づけの前に、光は、足の伸びを伴う弱陽性の走行性を誘発する。十分な光-回転ペアリングの後、光はもはや、走行性を誘発しないが、その代わりに、新しい反応を誘発する(24):以前には無条件刺激によってのみ誘発された、「密着」及び足部短縮(
図1)。従って、無条件刺激、回転又は環状振盪の手段は、条件付けられた刺激に移行され、光誘発性足部収縮−足部長のネガティブ変化によって現される。この光への条件反応は、数週間持続することができ、ランダム化された光及び回転によっては生ぜず、刺激特異的であり、そして、哺乳類のパブロフ型条件づけの他の定義された特徴を共有する。
【0075】
実施例6:ブリオスタチン-誘導性の連合記憶の延長
ウミウシのパブロフ型条件づけは、学習性(learned)条件反応の漸進性のより長い-長く続く保持を生じる、良く定義されたトレーニングパラメーターを有する。対になった光と環状振盪の二つのトレーニングイベント(2 TE)(「方法」を参照)は、例えば、薬物処置なしで、約7分間持続する、学習性(learned)条件づけ反応(光-誘発性足部収縮又は短縮)を誘導する。4から6のトレーニングイベント(4-6 TE)は、数時間まで持続する条件づけ反応を誘導するが、トレーニング後約1日で消失する。9つのTEは、数日間持続し、しばしば2週間まで持続する、長期連合記憶を生じる。
【0076】
動物は、トレーニングの前、暗順応の間(10分)に加えられたブリオスタチン (0.25 ng/ml)を有し、又はBryoなしで(NSWコントロール)、4-及び6-対にされたCS/USトレーニングイベント(TEs)の準至適措置(sub-optimal regimes)でトレーニングされて、4時間残された;9-対のTE及びNSWはポジティブコントロールとして役立った。全ての動物は、CS単独で、4時間、次いで、24時間の間隔で試験された。準至適(sub-optimally)にトレーニングされたがブリオスタチンを処置された動物は、全て、長期保持を実証した(n=8-16 動物/条件/実験;ANOVA, p<0.01)。
【0077】
2つのTEにブリオスタチンをプラスしたものは、数時間持続する記憶保持を生じ、(vs.ブリオスタチンなしでは数分)、4 TEにブリオスタチンをプラスしたものは、24時間を越えて保持を伸長し(
図1)、及び6 TEにブリオスタチンをプラスしたものは、1週間又はそれ以上持続する保持を生じた。
【0078】
ブリオスタチンなし(NSW)、ランダム、及び対のCS/USトレーニングイベント(TEs)は、LTMを発生せず、又は4時間で試験したとき、CRを誘発した。6-TE条件づけの前(10分の暗順応の間)及びその4時間に適用されたブリオスタチン (0.25 ng/ml、NSW)は、ポジティブなCR (足の収縮;長さのネガティブな変化)を生じ、それ故、LTMが確立されたことを示した。アンタゴニスト、Ro-32は、トレーニング前(暗順応の間)に適用されたとき、6TEにブリオスタチンをプラスした効果を遮断した、即ち、動物は、正常な走光性により伸長した(ポジティブな長さ変化)(n=4-8 動物/条件/実験; ANOVA differences, p<0.01)。ブリオスタチンと共に或いはなしで、ランダム化された光及び回転の提示は、条件反応(
図2)即ち、光誘導性足収縮を生じなかった。従って、トレーニングの間及びその直後、ブリオスタチンは、準至適トレーング試行による記憶保持を延長した。
【0079】
実施例7:記憶獲得を増大するトレーニングの前の日々におけるブリオスタチンへの前曝露
以前の測定(15, 17)は、ニューロン膜(即ち、トランスロケーション)を伴う学習が誘導するPKCが持続可能なことを示した。ウサギ瞬膜条件づけ、ラット空間的迷路学習、迷路学習、及びラット嗅覚識別学習は、全て、トレーニング後数日間持続する、PKCトランスロケーションを伴うことが発見された。ウミウシ条件づけは、単一の、同定可能なB型細胞に局在化され得るPKCトランスロケーションにより、トレーニング後、少なくとも1日間は続く(15)。
【0080】
既に記載したように、トレーニング中及びトレーニング後のブリオスタチンへの4時間の曝露は、2TEによって生じた記憶保持を6-8分から数時間に増強する。しかしながら、トレーニングに先行する日におけるブリオスタチンへの4時間の曝露、並びに、2TEの日における曝露は、トレーニング後一日以上、記憶保持を延長した。二日連続の、2-対のCS/USトレーニングイベントと組合せた、動物の4時間のブリオスタチン曝露(0.25 ng/ml)は、CS単独で試験されたとき、CRによって証明された少なくとも6日間の長期保持を生じた(体長収縮)(n = 16 動物/条件; ANOVA, p<0.01) (
図3)。
【0081】
3日連続で4時間のブリオスタチン曝露(0.25 ng/ml)を受け、一日後に2-TEによりフォローされた動物は、トレーニング後96時間で測定された長期保持(LTR)を実証した。非曝露動物(
図3と同様に)は、何らの行動変化を示さなかった(CRからCSの試験なし)。3日間のブリオスタチン処置を受けた動物への、トレーニング直後のアニソマイシン(ANI) (1μg/ml) 投与、及び4時間の維持は、長期間の保持を妨げなかった。従って、トレーニング後に加えられたとき、ANIによって通常は妨げられるLTRを産生するために必要なタンパク質合成についての要求は、3日間のブリオスタチン処置によって除去された(n=16 動物/条件; ANOVA, p<0.01)。4時間の間隔のブリオスタチンへの曝露の3日目に、同様に増強されたパブロフ型条件反応の保持が引き起こされた(
図4)。前述の結果は、2回の連続する間隔のブリオスタチンへの曝露が、最小の、同時発生的且つその後のPKC下方制御によって、PKC活性化及び恐らく長期記憶に重大な意味を持つタンパク質の合成を引き起こすという見解を支持する。この見解は、より延長された間隔のブリオスタチン曝露、即ち、8〜20時間、続いて、2 TE(
図5)は、連続的な先行する日における、二回の4時間の曝露を伴うものと同等の記憶保持を生じるためにそれ自体では不十分であるという観察によってさらに支持される。それらの実験において、トレーニングにおける20時間のブリオスタチン (0.25 ng/ml)曝露の効果が観察された。準至適2対のTE条件づけ措置により、保持は48時間で消えた(gone)。20時間のブリオスタチンへの前曝露を伴う、4-対のTE 条件づけの保持は、持続した(n=8 動物/条件; ANOVA at 48-h, p<0.01)。十分に延長されたブリオスタチン曝露(例えば、8-12時間)は、他の細胞系において、PKC活性化を停止し、PKC合成を上昇し得る、PKC下方制御の延長を引き起こすことが知られている。
【0082】
同様に、十分に上昇された濃度のブリオスタチンは、これもおそらくPKC下方制御のために、究極的に記憶保持を遮断する(
図6)。ブリオスタチン濃度<.50 ng/mlは、準至適(4 TE)トレーニング条件と共に、獲得及び記憶保持を増大する。それらの濃度は、9-対のTEによる保持性能において実証できる効果を持たなかった。しかしながら、試験された全てのトレーニング条件によって、濃度≧1.0 ng/mlは、恐らくPKC下方制御を介して、獲得及び行動性保持を阻害した(n=16 動物/条件)。
【0083】
実施例8:ブリオスタチンへの前曝露は、レーニング中のタンパク質合成の要求を除去する
動物は、2-対のトレーニングイベント(TE)を受け、次いで、4時間後に保持を試験された。トレーニング前の10分の間、暗順応期間及びその4時間後、NSWにおいて、動物に適用されたブリオスタチン(0.25 ng/ml)は、行動性の条件づけの保持を実証した(足収縮(CR)及び体長の短縮)。NSWコントロール動物及びトレーニング前にブリオスタチンで処理され、続いて、トレーニング直後にアニソマイシン(1.0μg/ml)で処理されたものは、正常なポジティブ走光性における足伸長を伴うCRを示さなかった(n=12 動物/条件/実験、二つの方法ANOVA統計量、p<0.01)。2 TEを伴う、単独の4時間のブリオスタチンへの曝露は、アニソマイシンがブリオスタチンと共に存在するとき完全に排除される、長期記憶保持持続時間を生じた(
図7)。アニソマイシンの類似の遮断効果は、6 TEにブリオスタチンをプラスして観察された。繰り返された短期のブリオスタチンへの曝露は、しかしながら、PKC、カレキシチン、及び他の記憶タンパク質の合成の純量を増加させ、それ故、PKC下方制御が十分に最小化された場合、パブロフ型条件付けの間及び後に、新たな合成の要求を排除する。タンパク質合成は、連続する3日のそれぞれにおいて、ブリオスタチンの4時間の最初の曝露を受けた動物の、2 TEの直後のアニソマイシンによって、4時間遮断された。この場合、アニソマイシン-誘導性のタンパク質合成の遮断は、何日も持続した記憶保持を妨げなかった(
図4)。対照的に、同じ4時間のアニソマイシン処置は、通常は1-2週間の記憶保持が続くトレーニング措置、9 TEによって生じる
全ての記憶保持を排除した(27)。最後に、2 TEが毎回アニソマイシンを伴う連続3日の4時間のブリオスタチンへの曝露の1日後に与えられた場合、長期記憶は除去された。
【0084】
実施例9:
プロテアソーム阻害への事前曝露は、記憶におけるブリオスタチンの効果を増強する
PKC及び他の記憶関連タンパク質のデノボ(de novo)における合成を増強し延長する他の手段は、タンパク質分解に関与するブロッキング経路によって提供される。それらの一つは、ユビキチン-プロテアソーム経路であり(28-30)、PKCのα-イソ酵素の分解のための主要なルートであることが知られている。PKC-αの分解は、20μM-5QμMのプロテアソーム阻害剤、ラクタシステインによって大きく阻害されることが以前より知られていた。
【0085】
動物は、ブリオスタチン(0.25 ng/ml)及びラクタシステイン(10μ/M)と共に同時に4時間インキュベートされ、次いで、24時間後に、2-対のCS/US トレーニングイベント(TE)により条件付けされた。動物は、トレーニング後4時間、及び次いで24時間の間隔で、CS単独により同時に試験された。条件付けされた行動の保持は、組合せたブリオスタチン/ラクタシステイン処置により持続された;行動の保持は、24時間後にブリオスタチン単独で処置された動物で失われた。ラクタシステイン単独で処置された動物は、行動のトレーニングの獲得又は保持を示さなかった(データはグラフに示さず)(n=28 動物、組合せたブリオスタチン/ラクタシステイン;n=20、ブリオスタチン単独;n=16、ラクタシステイン単独)。ラクタシステインは、この場合、単独ブリオスタチン曝露(続いて2 TE)によって生じた短期間の記憶を数日間持続する長期記憶に変換した(
図8)。
【0086】
実施例10:PKC活性化のためのカレキシチン免疫染色
最近、我々は、カレキシチンの免疫染色ラベルが、ウミウシ条件づけの獲得及び保持の間、単一の同定されたB型細胞内で上昇したことを示した(20)。多くのこれまでの発見が、低分子量のカルシウム及びGTP-結合タンパク質、カレキシチンを、ウミウシ条件づけの間のPKCイソ酵素のための基質として関連付けている(19)。カレキシチンは、現在、幾つかの動物種で完全に配列決定されており、また、他の種の類似のタンパク質に著しい相同性を有していることが示されているが(31)、ウミウシパブロフ型条件付けの間及びその後、リン酸化の変化を受ける。それはまた、PKCのアルファ-イソ酵素の基質に高親和性であり、β及びガンマの基質に低親和性である(19)。
【0087】
顕微鏡写真(A、B)は、カレキシチンポリクローナル抗体、25U2で免疫標識された、ウミウシの眼の代表的組織切片を示す。ポジティブなカレキシチン免疫染色は、先のブリオスタチン投与と共に又はなしで、対のCS/UCS関連条件づけを経験した動物のB-細胞光受容体(*B-細胞)において生じた(B)。二つの刺激(トレーニングイベント、TEs)のランダムな提示は、行動の変化を生じず、また、通常のバックグラウンドレベルを超えるカレキシチンの上昇も生じなかった(A);基底膜及びレンズ染色は、脊椎動物ポリクローナル抗体を用いて結合させた人為的結果である。染色強度の相違は、グレースケール強度として測定し記録した(0-256; B-細胞の細胞質マイナス組織バックグラウンド)。グラフ(C)は、9-ランダムTEで条件付けされたウミウシ(左のバー)及びPKCアゴニスト、ブリオスタチン(0.25 ng/ml)に連日の2回の曝露で処理され、次いで、2対のTEで連合的に(associatively)条件付けされた動物について測定された強度を示す。2TEと組合されたブリオスタチンの2回の曝露からのPKC活性化は、カレキシチンを9-対のTEsと連合し、及び、強化された(長期間)記憶のレベルまで著しく上昇した(n=4-8 動物/条件/複製; t-試験比較、p<0.01)。
【0088】
カレキシチン免疫染色は、光の前庭神経突起のシナプスフィールド内でのボタンの分解に十分に感受性である(D)。矢印は、介在ニューロン間の分枝フィールド(a)、対側性のニューロンからの軸索(b)、及び推定上の光受容体の神経突起の終末ボタン(c)を示す。スケールバー=10μm;CPG、脳体側神経節(
図9、10)。
【0089】
この条件付けが誘導するカレキシチン標識は、免疫染色抗体が、タンパク質のリン酸化された形態及び非リン酸化形態の両方と反応するために、タンパク質の実際の量を増加させる。以前に、同じ個体のB型細胞内で転位置することが示されているPKCは、学習及び学習特異的カレキシチンの両方を妨げる特異的PKCブロッカー、Ro-32が、B型細胞を上昇させるため、条件付けが誘導するカレキシチン標識における上昇を明らかに引き起こす(上記参照)。未処置及び/又はランダム化されたコントロールトレーニングプロトコールは、トレーニング-誘導性カレキシチン(CE)免疫染色の小画分を生じた(
図9)。
【0090】
ブリオスタチンなしでのランダムなトレーニング(4-TEs)は、バックグラウンドよりもわずかに高い強度測定を産した。ブリオスタチン投与は、両方のトレーニングパラダイムについてのカレキシチンレベルを上昇させた。ランダムトレーニングにより、ここでの場合のように、CS及びUSの偶然の重複(対合(pairing))があったとき、CEにおけるいくらかの上昇が生じることは予期されなかった(2.0の上昇)。しかしながら、カレキシチンレベルは、対のトレーニングによって4.3×以上上昇した(平均±SE、N=5 動物/処置、4RTE=ランダムコントロール、ランダムな光と回転により4試行;6PTE=対の試行、光及び回転の対で6試行。6PTE-0Bry vs. 6PTE-0.25Bry:p<0.001;4RTE-0.25Bry vs. 6PTE-0.25Bry;p<0.001 (t-試験)。準至適トレーニングイベント(4-6 TE)が使用されたとき、CE免疫染色(
図10A)は、上昇の中間レベルに達した。それらの準至適措置は、24時間以上持続する記憶保持を生じるには不十分であった。早期に記載したように、6 TEでのトレーニングの間に投与されたブリオスタチンは、長期記憶保持(>1週間)を誘導した。さらにその上、ブリオスタチンにプラスした6 TEは、9 TEの後に観察されるものと比較できるCE免疫染色を誘導した。
【0091】
低投与量のブリオスタチン(0.1-0.25ng/ml)は、2、4、又は6トレーニング試行後に、著しく記憶を増強した。6 TEによるパブロフ型条件づけは、ブリオスタチンと共に何日も持続する記憶を生じたが、ブリオスタチンなしでは数時間だけ持続する記憶を生じた。この記憶増強は、アニソマイシン又はPKC阻害剤、Ro-32によってブロックされた。記憶がその後1週間以上持続したにも関わらず、CE免疫染色が9 TEの24時間後に大きく減少したことに注目するのは重要である。より持続的なCE免疫染色は、しかしながら、最小のトレーニング(2 TE)に先行する日々における繰り返されたブリオスタチン曝露の結果起こった。
【0092】
1、2、及び3日間、連続的に、それぞれ4時間の間投与されたブリオスタチン単独(連合する条件付けなし)は、ブリオスタチン曝露の各期間の24時間後に測定したとき、ウミウシのB-光受容体におけるカレキシチンのレベルを上昇させた。4時間の1ブリオスタチン曝露の24時間後、CE免疫染色は上昇しなかった(
図10B)。2ブリオスタチン曝露の24時間後、それぞれの連続2日の1は、大きく残留するCE免疫染色を示した。3ブリオスタチン曝露、続いて、ちょうど2-対のトレーニング イベント(光と軌道振盪の対)の後のカレキシチンレベルは、条件付けが誘導した行動の変化に付随する、保持日数における著しい随伴性の長さを伴う高いレベルを生じた(n=16 動物/条件: ANOVA, p<0.01)。それらの3日間の曝露に続く日における2 TEにより、CE免疫染色は、24時間後に、以前に観察された9 TE直後のレベルに近づいた(
図10B)。このように、それら3日間の4時間のブリオスタチン曝露、続いて最小のトレーニング (2 TE)に続くCE免疫染色は、トレーニング試行を単独で行うよりも大きい持続を示した。新規に合成されたカレキシチンのこの持続性は、ブリオスタチンによって誘導される増強されたタンパク質合成を示す生化学的な知見に一致している。
【0093】
24時間後に2-トレーニングイベント(2 TE)が続く、連続2日の、4時間のブリオスタチンへの曝露は、カレキシチンレベルを固定された長期記憶を付随する量まで上昇させることを必要とする。典型的には、2回のブリオスタチン曝露を伴う2-TEは、1週間以上持続する保持を生じる(n=16 動物/条件;t-試験、p<0.01)。連続3日の、4時間のブリオスタチンへの曝露による初回刺激は、固定された記憶のために必要なカレキシチンレベルを誘導する。2対のトレーニングイベントの直後に加えられたアニソマイシンは、このカレキシチンレベルを減少せず、固定された記憶を数日間持続した(N=8 動物/条件; t-test, p>0.05, ns)(
図11A, B)。
【0094】
ブリオスタチンにトレーニングをプラスした直後のPKCのRo-32阻害は、長期記憶誘導を妨げず、一方、ブリオスタチンを加えたトレーニングの間のこの阻害は、記憶固定を妨げたことは、注目される。対照的に、ブリオスタチンを伴うか伴わないトレーニングの間のアニソマイシンは、長期記憶を妨げず、一方、ブリオスタチンを伴うか伴わないトレーニングの後のアニソマイシンは、記憶の形成を完全に遮断した。それ故、トレーニングの間のPKC活性化は、長期記憶のために必要なタンパク質合成を伴う。従って、いったんPKC活性が十分なレベルまで誘導されると、要求されるタンパク質合成は回避不能な結果である。一貫して、トレーニングに先立つ日におけるブリオスタチンが誘導するPKC活性は、最小のトレーニング試行と共に、長期記憶を引き起こすために十分である。さらにその上、この後者の長期記憶は、トレーニング(及び先行する日におけるPKC活性化)に続くタンパク質合成を必要としない。再び、先立つPKC活性化は、後の長期記憶形成のために必要なタンパク質合成を生じるのに十分である。その合成がブリオスタチン-誘導PKC活性化、並びに、条件づけ試行によって誘導されるそれらの例えば何泊質の一つは、免疫染色標識化によって実証されたように、カレキシチンである、他のタンパク質はPKC自体である。
【0095】
実施例11:PKC活性におけるブリオスタチンの効果
ブリオスタチンは、細胞膜画分に付随するPKCを増加することによって、過渡的にPKCを活性化することが知られている。また、多様な連合記憶パラダイムは、ニューロン膜に付随するPKCの上昇を引き起こすことが実証されている。それ故、我々は、ウミウシのブリオスタチンへの繰り返し曝露が(即ち、4時間の曝露、トレーニングプロトコールと正確に一緒に)が延長されたPKC活性化を誘導し得る可能性を試験した。
【0096】
無処置のウミウシを、記載した条件(「行動薬理」)で、連日、4時間間隔でブリオスタチン(0.28nM)に曝露した。次いで、単離された食道周囲の(circumesophageal)神経系におけるヒストンリン酸化(「方法」を参照)を、サイトゾル画分で測定した。2回のブリオスタチン曝露の10分後及び24時間後の両方で測定したPKC活性は、ベースラインレベルを超えて著しく上昇した(N=6、各測定について)(
図12、13)。このように、両方の画分におけるPKCの量は明らかに上昇したが、しかし、膜におけるPKCのサイトゾルの画分におけるものに対する割合は上昇しなかった。それらの結果は、ブリオスタチンの事前曝露は、学習自体とはいくらか異なるPKCにおける効果をもたらすことを示している。最初の活性化(トランスロケーションを介して)の後、このブリオスタチン効果はPKCの合成の上昇のために最もありそうであり、ブリオスタチンによって誘導されたカレキシチンのレベルの上昇と一致するが、繰り返しブリオスタチン曝露と直接的に相関しない。
【0097】
図12、13におけるように、しかし、アニソマイシン(1.0 ng/ml)により、各ブリオスタチン(0.25 ng/ml)曝露と共に加えられた。アニソマイシンは、連続3日のブリオスタチンへの曝露の後、ウミウシ食道周辺神経系のサイトゾルの及び膜の画分の両方においてPKC活性を顕著に減少させたことは留意される(N=3、各測定について、p<.0l)(
図14)。
【0098】
ブリオスタチンへの繰り返し曝露の生化学的結果をさらに試験するため、ラット海馬のニューロンを、それらを温度感受性tsA5CSV40大T抗原のレトロウイルス形質導入によって不死化した後に研究した(25)。それらは、N2培地で基本的な線維芽細胞成長因子によって誘導したとき、ニューロン表現型を有するように分化し(26)、PKCを含むニューロンタンパク質の正常な補体を発現する。
【0099】
培養海馬ニューロンの、単回活性化用量のブリオスタチン(0.28nM)への30分間の曝露は、PKCのサイトゾルから粒子性画分への短期間のトランスロケーション(約60%)を生じ、続いて、延長された下方制御を生じた(
図15)。初期PKC活性化及びその後の下方制御は両方とも以前に記載されており、膜及びサイトゾルにおけるPKC活性の測定によって確認された。培養海馬ニューロンを一回、30分間、ブリオスタチンに曝露すること、続いて、30分から8時間の範囲の間隔での、第二回の30分の暴露は、膜結合PKCのよりすばやいリバウンドを起こした。このように、2〜4時間遅延した後の二回目の曝露は、単回ブリオスタチン曝露が生じる著しい下方制御を排除した(
図16)。細胞質画分において、PKC活性の著しい変化はブリオスタチン曝露後最初の4時間以内に検出されなかった。対照的に、細胞が2時間以内にブリオスタチンに2回曝露された場合、第二の曝露に応答してPKC活性が著しく減少した。しかしながら、第二の曝露が最初から4時間まで遅延した場合、活性はベースラインを超えて、2時間未満の後に送達された第二の曝露と比較して著しく大きい程度まで上昇した(
図16)。
【0100】
それらの結果は、PKCの最初のブリオスタチン活性化、続いて下方制御(28-30)がPKCイソ酵素(同時に、最初に記載したようにカレキシチン)の合成の上昇(デノボでのタンパク質合成を介して)をもたらすという解釈に一致している。実際に、我々は、0.28 nM ブリオスタチンへの単回の30分の曝露が、全体的なタンパク質合成を上昇させることを見出し、ニューロンの収集の前最後の半時間における
35S-メチオニンの取り込みによって測定して、ブリオスタチン曝露後24時間以内に20%、79時間で60%まで上昇した(
図17)。このブリオスタチンによって誘導された、延長された深いタンパク質合成の上昇は、PKC阻害剤Ro-32も存在している場合、部分的に遮断された(
図17)。
【0101】
豊富な観察は、十分なブリオスタチン誘導性PKC活性化が、必然的に、進行性のPKC不活性化及びその後の下方制御を導くことを示している。十分な用量のブリオスタチン(1.0 ng/mlを超える)は、実際に、パブロフ型条件づけを阻害した。これは、高いブリオスタチン濃度による行動性の結果を特徴付ける、PKC下方制御のためである可能性が最も高かった。ブリオスタチンによって誘導されるPKC活性化は、二つの異なる経路によって下方制御されていることが示されている。一つは、ホルボールエステルによって誘導され、ユビキチン結合及びその後のプロテアソーム経路を介したタンパク分解性の分解を含む。下方制御の第二のメカニズムは、ホルボールエステルによって誘導されず、カベオラコンパートメントを介した移動及びホスファターゼPP1及びPP2Aによって媒介される分解を含む。PKC活性化因子の十分な濃度及び/又は期間により、PKC分解経路は、PKCのデノボでの合成を刺激するPKCの欠乏を創造し、PKC合成は、不活性化及び下方制御を補償できず、それによって、95%以上の利用可能なPKCの欠乏を引き起こす。
【0102】
実施例12:学習及び記憶の保持におけるブリオスタチンの影響
学習及び記憶におけるブリオスタチンの影響は、ラット空間迷路モデルを用いて試験された。ブリオスタチン(NCI, 10μg/kg body wt.)を、1, 3,及び5日に、水迷路トレーニングの20分前に、腹腔内に注射した。RO-31-8220 (Sigma, 500μg/kg body wt.)を、ブリオスタチン注射の10分前に尾の静脈に注射した。結果を
図26に示す。アステリスクは水泳との著しい相違である(**, p<.01; **, p<.001)。プローブ試験において、迷路+Bryo は、迷路及び迷路+Bryo+ROと著しく相違した(p<.05)。
【0103】
図26のパネルAにおいて、ブリオスタチン処置された動物対コントロールにおいて、プラットフォームに到着したラットの刺激潜伏性(latency)は、大きく減少した(即ち、学習が促進された)が、PKC-α阻害剤、RO-31-8220の存在下では減少しなかった。パネルBにおいて、標的カドラントに到着した時間は、ブリオスタチン処置された動物対コントロールについて、保持1日、全てのトレーニング後24時間で、減少した(即ち、記憶保持が増強された)が、RO-31-8220の存在下では減少しなかった。パネルCにおいて、全てのトレーニングの1日後、ターゲットクロッシングの数は、ブリオスタチン処置マウスについて、保持1日で、同様に増強された(即ち、記憶保持が増強された)。
【0104】
実施例13:空間迷路タスクにおいてトレーニングされたラットの樹状突起棘におけるブリオスタチンの影響
図27は、水迷路においてトレーニングされたラットにおける樹状突起棘形成におけるブリオスタチンの影響を示す。保持2日で、共焦点顕微鏡及びDiI染色が、糸状仮足及び樹状棘;マッシュルーム、薄い及び短い棘(パネルA)を調査するために用いられた。水迷路トレーニングは、マッシュルーム棘の数を増大した;この効果は、ブリオスタチン(パネルB)により増強された。ブリオスタチン単独は(トレーニングなし)、短い棘の数を増大した(p<.01) (パネルC)。全ての条件下で、糸状仮足又は薄い棘において変化が見られなかった(示さず)。ブリオスタチンのみで処理されたラット及びトレーニングのみを受けたものにおける、糸状仮足及び(全ての形状の)棘の総数は、同様に上昇した(パネルD)。この上昇は、水迷路ラットがブリオスタチンで処理された時に増強された(p<.05)。アステリスクは、未処理のコントロールとの著しい相違を示す(*, p<.05; **, p<.001)。
【0105】
実施例14:マッシュルーム棘におけるブリオスタチンの影響
図28は、マッシュルーム棘(M)及びシナプス後密度(PSD;黄色い矢印)において観察された変化の電子顕微鏡写真を示す;赤い矢印=シナプス前膜;D=ブリオスタチン処置及びトレーニング後の樹状突起(パネルA)。迷路+bryoパネルは、有孔のPSD (中央の孔を伴う大PSD)であり、一方、他のパネルのものは、黄斑性タイプ(孔を伴わない小PSD)である。ブリオスタチンありで又はなしでの水迷路トレーニングは、有孔PSDを有する大マッシュルーム棘(パネルC)の数の増大のために、PSDの平均サイズを拡大した(パネルB)。アステリスクは、未処理のコントロールとの著しい相違を示す(*, p<.05; **, p<.001)。
【0106】
実施例15:シナプス前及び後の構造におけるブリオスタチンの異なる影響
水迷路トレーニングは、定量的共焦点免疫組織化学によって測定したとき、樹状突起棘マーカースピノフィリン(
図29; パネルB)、シナプス後膜マーカーニューログラニン(
図29; パネルA及びD)、及びシナプス前マーカーGAP-43 (パネルA及びE)の数を増大させたが、軸索ボタンマーカーシナプトフィジン(
図29; パネルA及びB)の数は増大させなかった。それらの結果は、新しい棘が、既存の棘によりすでにシナプスを作った既存の軸索ボタンによりシナプスを形成することを示す。シナプス前マーカーの数も、ブリオスタチンを単独で受けたラットにおいて上昇した。ブリオスタチン処置と一緒の又はなしの水迷路トレーニングは、シナプス前及び後の膜のサイズを上昇させ、水迷路トレーニングが大PSDを伴うマッシュルーム棘を選択的に増加させることが確認された。アステリスクは、未処理のコントロールとの著しい相違を示す(*, p<.05; **, p<.01; ***, p<.001)。
【0107】
実施例16: PKC活性化による棘密度増大のメカニズム
PKC活性化による棘密度増大のメカニズムは
図30に示される。鋭い海馬の切片が、0.1 nM ブリオスタチンとともに連続的にインキュベートされ、次いで、定量的共焦点免疫組織化学のために加工された。ブリオスタチンは、原形質膜へのトランスロケーション(黄色い矢印)、及び、PKCαの活性化、及びPKC-依存性ELAV、mRNA-安定化タンパク質の細胞体の細胞質への核外移行、及びCA1ニューロンの近位の樹状突起(白い矢印)を刺激する。また、ブリオスタチンは、棘マーカースピノフィリンによって測定される樹状棘の数を増大する。
【0108】
実施例17:PKC活性化による棘密度の増大のメカニズム
PKC活性化による棘密度の増大のメカニズムを
図31に示す。海馬の切片において、ブリオスタチンは選択的にPKCαを活性化するが、PKCδ及びPKCεは活性化しない(パネルA)。ブリオスタチンと一緒の120分のインキュベーションにおいてELAVが著しく樹状突起に輸送されたとき(パネルB)、樹状棘の数は拡大した(パネルC)。それらの効果は、PKCブロッカーRO-31-8220又はケレリトリンによって抑制された(パネルD)。増大した棘密度は、タンパク質合成ブロッカーによって阻害された(示さず)。全体として、それらは、ブリオスタチンがPKCα-活性化ELAVタンパク質を刺激し、mRNA分解の阻害及び棘形成に重要なタンパク質合成の増強をもたらすことを示唆している。プローブ試験後2日において、及び6日の水迷路トレーニングにおいて、ELAVは、なお樹状突起を上昇させ(パネルE)、水迷路が、PKC/ELAV/タンパク質合成カスケードによって、マッシュルーム棘密度を増大させることを示唆した。しかしながら、樹状突起のELAVにおける持続性の増大は、ブリオスタチンを伴う及び伴わない空間学習後に相違せず、PKC/ELAV/タンパク質合成がマッシュルーム棘形成のための唯一の経路ではないことを示唆した。アステリスクは、未処理のコントロールとの著しい相違を示す(*, p<.05; **, p<.01; ***, p<.001)。