【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明は、物質内の炭素及び/又は酸素含有量を調整するための方法であって、a)少なくとも1つの粉末、少なくとも1つの白金族金属および少なくとも1つのバインダーを含む原料組成物を形成するステップと、b)粉末射出成形により物質を形成するステップとを含み、前記炭素及び/又は酸素の少なくとも一部は、前記少なくとも1つの白金族金属による触媒(作用)で除去される。
【0013】
一実施形態において、本発明は、物質内で炭素含有量を調整するための方法を提供する。好ましい実施形態において、前記炭素含有量は、最終焼結体内で0.1重量%以下のレベルに調整できる。
【0014】
他の実施形態において、本発明は、物質内で酸素含有量を調整するための方法を提供する。好ましい実施形態において、酸素含有量は、最終焼結体内で0.3重量%以下のレベルに調整できる。
【0015】
さらに他の実施形態において、本発明は、物質内で炭素および酸素含有量を調整するための方法を提供する。
【0016】
前記物質は、合金であり得、この場合、前記原料組成物の粉末は、金属であり、好ましくは、チタン、モリブデン、タングステン、ニッケルまたは鉄のうちの少なくとも1つを含む。前記粉末が単一金属を含む時、チタン(例えば、商業的に使用可能なチタン)が好ましい。前記粉末が1つ以上の合金の形態で1つ以上の金属を含む時、チタン合金(例えば、Ti−6Al−4V)または鉄合金(例えば、スチール、特にステンレススチール)が好ましい。特定の好ましい実施形態において、前記粉末は、少なくとも1つの反応性金属を含む。特に好ましい実施形態において、前記粉末は、チタンまたはチタン合金を含む。あるいは、前記粉末は、金属混合物を含むことができる。
【0017】
前記金属が合金であり、前記粉末が少なくとも1つの金属を含む時、前記PIM工程は、金属粉末射出成形または金属射出成形(MIM)であることが知られている。そのため、好ましい一実施形態において、前記物質は、金属射出成形により形成される。
【0018】
他の実施形態において、前記物質は、サーメットである。この場合、原料組成物の粉末の一部がセラミックであり、好ましくは、シリコン、ジルコニウム、アルミニウム、イットリウム、セリウム、チタンまたはタングステンのうちの少なくとも1つを含む。セラミックは、1つ以上の炭化物、ホウ化物または酸化物(例えば、シリコン酸化物、アルミニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、シリコン炭化物、タングステン炭化物、チタン炭化物またはチタン酸化物)を含むことができる。
【0019】
好適には、前記粉末は、実質的に球状、不規則またはそれらの組み合わせであり得る粒子を含む。
【0020】
白金族金属は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムまたはオスミウムのうちの少なくとも1つからなる群より選択できる。より好ましくは、前記白金族金属は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムおよびイリジウムのうちの少なくとも1つからなる群より選択され、さらに好ましくは、白金およびパラジウムのうちの少なくとも1つからなる群より選択される。特に好ましい白金族金属は、パラジウム(例えば、パラジウムブラック)である。
【0021】
前記白金族金属は、適正量で存在することができる。例えば、前記白金族金属は、最終焼結体内で約0.01重量%〜約50重量%の範囲で存在することができる。前記白金族金属は、ASTM標準により、チタン合金に対して約0.01重量%〜約0.25重量%の範囲で存在することができる。
【0022】
前記原料組成物は、前記粉末、前記白金族金属およびバインダーの混合物であり得る。この場合、前記粉末、前記白金族金属および前記バインダーは、適切な順で混合できる。
【0023】
あるいは、前記白金族金属は、前記原料組成物の形成前に前記粉末にコーティングできる。この場合、前記白金族金属は、低エネルギーボールミリング、無電解めっき、還元的化学蒸着(reductive chemical deposition)によるか、二重非対称遠心力(dual asymmetric centrifugal force)を利用して前記粉末にコーティングできる。好ましくは、前記白金族金属は、二重非対称遠心力を利用して前記粉末にコーティングされる。
【0024】
「二重非対称遠心力」の場合、2つの遠心力が互いに対して1つの角度で同時に粒子に適用されることを意味する。十分な混合環境を形成するために、遠心力は、好ましくは、反対方向に回転する。Hauschild(http://www.speedmixer.co.uk/index.php)によるSpeedmixer
TMは、このような二重回転方法を用い、Speedmixer
TMのモータは、混合ユニットのベースプレートを時計方向に回転させ(
図1A参照)、バスケットは反時計方向に回転する(
図1Bおよび
図1C参照)。
【0025】
前記粉末が実質的に球状粒子を含む時、前記粒子は、高エネルギーコーティング工程時にその形態を維持する。実質的に球状のコーティング粒子の製造は、下流工程(後工程)を補助する前記コーティング粒子の流動性が向上するため有利である。前記コーティング工程は、一次および二次粒子の物理的変化を引き起こし、前記粒子は物理的に相互結合されることが考えられる。
【0026】
前記コーティング工程は、前記工程が行われる回転速度、工程時間の長さ、混合コンテナが充填されるレベル及び/又はミリングメディアの使用を含む多様なパラメータにより制御できる。
【0027】
前記二重非対称遠心力は、連続する時間の間に適用される。「連続」とは、中断のない時間を意味する。好ましくは、前記時間は、約1秒〜約10分、より好ましくは、約5秒〜約5分、最も好ましくは、約10秒〜約1分である。特に好ましくは、前記時間は20秒である。
【0028】
あるいは、前記二重非対称遠心力は、時間の総期間に適用されてもよい。「総」とは、多数の時間期間の総和を意味する。前記遠心力を段階的に適用することの利点は、粉末および白金族金属に対する過度の加熱が防止できることである。前記二重非対称遠心力は、好ましくは、約1秒〜約10分、より好ましくは、約5秒〜約5分、最も好ましくは、約10秒〜約1分の総期間に適用される。前記二重非対称遠心力が適用される回数(例えば、2、3、4、5またはそれ以上の回数)は、粉末および白金族金属の種類に依存する。例えば、前記粉末がチタンを含む時、前記遠心力の段階的適用は、前記粒子の加熱を最小化し、酸化及び/又は燃焼の危険性を最小化する。特に好ましい実施形態において、前記二重非対称遠心力は、その間に冷却時間を有するように段階的に適用される。
【0029】
好ましくは、前記二重非対称遠心力の速度は、約200rpm〜約3000rpmである。より好ましくは、前記速度は、約300rpm〜約2500rpmである。さらに好ましくは、前記速度は、約500rpm〜約2000rpmである。
【0030】
前記混合コンテナが充填されるレベルは、当業者にとって分かりやすい多様な要素により決定される。このような要素は、粉末および白金族金属の密度、前記混合コンテナの容積および前記ミキサ自体に与えられる重量制限を含む。
【0031】
前記粉末が金属の時、前記粉末を前記白金族金属でコーティングすることは、ミリングメディアを用いて実施できる。ミリングメディアは、摩擦と衝撃を利用して、前記二次粒子を破壊し、前記一次粒子の表面を効果的にコーティングする。前記メディアは、硬く非汚染性でなければならない。好ましくは、前記ミリングメディアは、ZrO
2のようなセラミック物質である。しかし、他のセラミック物質(例えば、Al
2O
3またはTiO
2)も使用可能であり、これらは十分に硬く提供される。仮に、残留物が残ると、これは良性である。
【0032】
前記粉末がセラミックの場合、前記粒子自体がミリングメディアとして機能する。
【0033】
一実施形態において、前記粉末は、約2000μm以下、より好ましくは、約1500μm以下、さらに好ましくは、約1000μm以下の平均直径を有する粒子を含む。一実施形態において、前記粉末がチタンを含む場合、前記粒子は、約1μm〜約45μmの平均直径を有することが特により好ましい。
【0034】
好ましくは、前記白金族金属は、結晶子または多くの小さい結晶子の塊であり得る。しかし、前記二次粒子は、実質的に球状である必要はない。
【0035】
前記白金族金属を前記粉末粒子にコーティングすることは、フィルム形態または単粒子(discrete particle)形態であり得る。コーティングの程度は、前記白金族金属の延性、前記コーティング工程のために許容された時間、及び/又はチタン合金に約0.05%〜0.25%(例えば、約0.05%〜約0.2%)の割合で追加可能であり、ASTM/ASMEのTi等級7、11、16、17、18、20、24および25に追加レベルとして認知可能なパラジウムのような白金族金属の量に依存する。前記白金族金属の量は、後に形成される所望の合金またはサーメットの1つ以上の物性にも影響を与えることができる。例えば、Pdの量がPd/Ti合金で増加する時、塩化物含有溶液(例えば、塩水)に対する合金の腐食性は向上する。
【0036】
前記白金族金属が前記原料組成物と結合される方法に関係なく、前記白金族金属は、前記原料組成物全体にわたって(例えば、前記原料組成物の形成前に前記粉末にコーティングされることにより、または前記原料組成物の製造時に前記粉末および前記バインダーと完全に混合されることにより)実質的に均質に分布する。実質的に均質な分布は、好ましくは、「グリーン」、「ブラウン」および最終焼結体で現れる。
【0037】
前記バインダーは、PIMと共に使用可能な好適なバインダーであり得る。バインダーの使用とバインダーの除去が発生する工程については、様々な文献、例えば、あらゆる目的のために全体としてここで参照されるように含まれるRandall M.German and Animesh Boseの「金属とセラミックの射出成形」(MPIF出版社、ISBN No.1−878−954−61−X)によく記載されている。前記参照の第91頁のテーブル4.3は、ステアリン酸、グリセリン、ポリメチルメタクリレート、パラフィンワックスまたはカルナバワックスのような多くの成分を有する24個のバインダーを示す。特に好ましいバインダーは、Egide UKによって開発されたバインダーである。
【0038】
前記ブラウン体が形成される温度は、適切な温度となり得る。
【0039】
最終焼結体の炭素は、
バインダー除去(debinding)されたブラウン体内に残り、焼結工程中に残された残留物から出ることが考えられる。追加的に、最終焼結体の酸素は、1つ以上のソース、例えば、原粉末に存在する酸化物フィルム表面、PIM工程中に存在する酸化ガス及び/又はその元素成分として酸素を有する有機バインダー物質から生じることができる。この場合、本発明にかかる炭素及び/又は酸素含有量の調整は、バインダー及び/又は前記解離工程から出る残留バインダー成分の少なくとも一部の触媒による除去を経る。このように、全体の
バインダー除去(debinding)工程は、解離と触媒による除去工程の組み合わせの結果として現れる。バインダー及び/又は触媒により除去された残留バインダー成分の量は、様々なパラメータによって変化するが、このパラメータは、バインダーの出発組成物、白金族金属の量と分布、選択された加熱工程条件およびバインダーの除去に使用されるプロセスガスを含み、これらに限定されない。
【0040】
一実施形態において、前記触媒による除去は、熱的(加熱)に誘導される。例えば、前記熱的誘導された触媒による除去は、熱的(加熱)
バインダー除去(debinding)ステップ、焼結ステップ(焼結工程中に少なくとも一部の時間の間に存在する適切なプロセスガスが提供される)またはそれらの組み合わせステップの間に発生することができる。炭素及び/又は酸素含有量は、温度の増加及び/又は使用されるプロセスガスの調整により前記熱的調整ステップの間に追加的に調整されてもよい。
【0041】
一実施形態において、前記触媒による除去は、少なくとも1つの反応ガスを含む雰囲気で発生する。例えば、反応性ガスが前記バインダー及び/又はバインダー残留物の除去を補助することができる。
【0042】
一実施形態において、前記触媒による除去は、例えば、酸素、NO
2、オゾン(すなわち、O
3)またはそれらの組み合わせを含む酸化雰囲気で発生する。好ましい一実施形態において、前記雰囲気は、酸素(例えば、空気)を含む。この実施形態において、前記触媒による除去は、触媒による酸化工程である。
【0043】
他の実施形態において、前記触媒による除去は、還元雰囲気で発生する。この実施形態において、当業者であれば、使用されるプロセスガスは、形成される物質と共に使用できるように選択されなければならないことが分かる。この場合、水素は、望ましくないレベルの水素化物を形成するため、一般的に上昇した温度工程で使用されることは好適でない。この実施形態において、前記触媒による除去は、触媒を用いた還元工程である。
【0044】
加熱誘導された触媒による除去は、1つ以上の適切な温度で行われる。しかし、触媒による除去が行われる温度に関係なく、選択された温度は、触媒による除去の初期化のために適切な温度より高く、製造される特定の物質で不純物の十分な吸収を可能にする温度以下であることが好ましい。
【0045】
本発明によれば、新規な合金とサーメットを製造することが可能である。必要な物性(例えば、耐腐食性および機械的物性)を有する加工物質を作る能力は、その物質の使用、特にチタン合金のような合金の使用を活性化させることが予想される。また、より純粋なサーメットまたは知られた等級の合金(例えば、標準合金等級のASTM国際リストに記載されたチタン合金組成物)を製造することも可能である。最終物質の実際の組成物に関係なく、他の粉末と白金族金属のリストは、より広範囲の合金またはサーメットの物品の製造を可能にする。これは、大量に製造しないために規模の経済から利益を得られない、小さく複雑な物品の製造者にとって特に有利に作用する。