特許第6151029号(P6151029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝メディカルシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6151029-被曝警告装置およびX線診断装置 図000002
  • 特許6151029-被曝警告装置およびX線診断装置 図000003
  • 特許6151029-被曝警告装置およびX線診断装置 図000004
  • 特許6151029-被曝警告装置およびX線診断装置 図000005
  • 特許6151029-被曝警告装置およびX線診断装置 図000006
  • 特許6151029-被曝警告装置およびX線診断装置 図000007
  • 特許6151029-被曝警告装置およびX線診断装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6151029
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】被曝警告装置およびX線診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20170612BHJP
【FI】
   A61B6/00 320M
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-8679(P2013-8679)
(22)【出願日】2013年1月21日
(65)【公開番号】特開2014-138667(P2014-138667A)
(43)【公開日】2014年7月31日
【審査請求日】2015年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】杉山 真哉
【審査官】 増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−220219(JP,A)
【文献】 特開平08−293396(JP,A)
【文献】 特開2005−253689(JP,A)
【文献】 特開2009−213709(JP,A)
【文献】 特開2002−219118(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0128116(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線診断装置におけるX線照射部が照射するX線による被曝エリアを推定する被曝エリア推定部と、
対象者の位置情報、移動方向の少なくとも一つを検知する検知部と、
前記検知部によって検知された情報を用いて前記対象者が前記被曝エリアに侵入する可能性を推定し、前記可能性を示す値に基づいて前記対象者の前記被曝エリア内への侵入を判断する判断部と、
前記判断部の判断結果に基づいて警告を発する警告通知部と、
を備えた被曝警告装置。
【請求項2】
前記判断部は、所定の範囲にいる前記対象者に対して前記被曝エリアに相対的に近付いているか否かを判断する請求項1に記載の被曝警告装置。
【請求項3】
前記X線の強度、前記対象者の役割、前記対象者の累積被曝量、前記対象者が装着するプロテクタの有無、前記プロテクタのレベルのうち、少なくとも一つに基づいて警告レベルを設定する警告レベル設定部を備え、
前記警告通知部は、前記警告レベルに基づいて警告を発する請求項1又は2に記載の被曝警告装置。
【請求項4】
前記検知部は、前記対象者の速度と加速度のうち少なくとも片方を検知し、
前記判断部は前記検知部が検知した速度あるいは加速度と前記警告レベルに基づいて警告の優先度を決める請求項3に記載の被曝警告装置。
【請求項5】
前記X線照射部の位置情報と向き情報、X線の絞り具合の情報を取得する情報取得部を備え、
前記被エリア推定部は、前記情報取得部が取得した情報に基づいて前記被曝エリアを推定する請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の被曝警告装置。
【請求項6】
X線照射部と、
前記X線照射部が照射するX線による被曝エリアを推定する被曝エリア推定部と、
対象者の位置情報、移動方向の少なくとも一つを検知する検知部と、
前記検知部によって検知された情報を用いて、前記対象者が前記被曝エリアに侵入する可能性を推定し、前記可能性を示す値に基づいて前記対象者の前記被曝エリア内への侵入を判断する判断部と、
前記判断部の判断結果に基づいて警告を発する警告通知部と、
を備えたX線診断装置。
【請求項7】
前記判断部は、所定の範囲にいる前記対象者を対象にして前記被曝エリアに相対的に近付いているか否かを判断する請求項6に記載のX線診断装置
【請求項8】
前記X線の強度、前記対象者の役割、前記対象者の累積被曝量、前記対象者が装着するプロテクタの有無、前記プロテクタのレベルのうち、少なくとも一つに基づいて警告レベルを設定する警告レベル設定部を備え、
前記警告通知部は、前記警告レベルに基づいて警告を発する請求項6又は7に記載のX線診断装置
【請求項9】
前記検知部は、前記対象者の速度と加速度のうち少なくとも片方を検知し、
前記判断部は前記検知部が検知した速度あるいは加速度と前記警告レベルに基づいて警告の優先度を決める請求項8に記載のX線診断装置。
【請求項10】
前記X線照射部の位置情報と向き情報、X線の絞り具合の情報を取得する情報取得部を備え、
前記被エリア推定部は、前記情報取得部が取得した情報に基づいて前記被曝エリアを推定する請求項6乃至9のうちいずれか一つに記載のX線診断装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、被曝警告装置およびX線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、X線などの放射線を用いた医用診断装置の発展と普及に伴い、患者の被曝管理だけでなく、医療従事者の被曝管理も積極的に望まれるようになった。一般的に行われている被曝管理方法の一つとして、ガラス線量計を用いた被曝管理がある。この方法では、医療従事者がガラス線量計を身に付け、その線量計が示す線量を一ヶ月単位で管理することで累積線量を推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5072662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このガラス線量計を用いた被曝管理は、万が一、医療従事者がガラス線量計を身に付け忘れた場合は、正確な累積線量を推定できなくなってしまう。また、前述したように、ガラス線量計を用いた方法では月単位で累積線量を管理しているため、医療従事者がすぐに累積線量を確認できない。特許文献1として示した特許第5072662号公報の技術では、リアルタイムで医療従事者の累積線量を計算し、累積線量が所定値を超えたときに医療従事者に警告することで被曝管理を行っている。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、医療従事者の被曝機会を低減させることができる被曝警告装置およびX線診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、実施形態の被曝警告装置は、X線診断装置におけるX線照射部が照射するX線による被曝エリアを推定する被曝エリア推定部と、対象者の位置情報、移動方向の少なくとも一つを検知する検知部と、前記検知部によって検知された情報を用いて前記対象者が前記被曝エリアに侵入する可能性を推定し、前記可能性を示す値に基づいて前記対象者の前記被曝エリア内への侵入を判断する判断部と、前記判断部の判断結果に基づいて警告を発する警告通知部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1におけるブロック図。
図2】実施例1におけるX線診断装置の斜視図。
図3】実施例1におけるX線診断装置の側面図。
図4】実施例1におけるフロー図。
図5】実施例1における警告レベル設定表の概略図。
図6】実施例1における手術室内部の平面図。
図7】実施例2におけるブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0009】
(実施例1)
実施例1では、本発明の被曝警告装置をX線診断装置に接続した構成を示す。
【0010】
図1は、実施例1におけるX線診断装置1、被曝警告装置101、発信機200のブロック図である。また、図2は、実施例1におけるX線診断装置1の斜視図である。
【0011】
まず、X線診断装置1の構成について簡単に説明する。図1および図2に示すように、X線診断装置1は、X線制御部2、X線照射部3、X線検出部6、撮影条件設定部7、アーム8、X線診断装置操作部9、駆動機構制御部10、アーム位置検知部11、レール12a、レール12b、レール13a、レール13b、基台部14、支柱部15、アーム支持部16、寝台17、天板18、X線診断装置表示部19を備える。また、実施例1におけるX線診断装置1は、図示しない画像生成部、図示しない画像記憶部を備える。
【0012】
X線照射部3は、X線管4とX線絞り5を備える。
【0013】
X線制御部2は、後述する撮影条件設定部7の設定に従って、X線管4とX線絞り5を制御する。
【0014】
X線管4はX線制御部2からの指示に従ってX線を照射する。
【0015】
X線絞り5は、X線制御部2からの指示に従って、X線管4から照射されたX線の絞り具合を変化させ、X線の照射範囲を調整する。
【0016】
図3は、X線照射時のX線診断装置の側面図である。図3に示すように、X線照射部3は、天板18に横臥した患者PとX線検出部6に向かってX線を照射する。以降、X線照射部3によるX線の照射範囲を「被曝エリア」と呼称し、破線H1および破線H2で囲まれた領域として表現する。
【0017】
X線検出部6は、天板18に横臥する患者を透過したX線を検出する。X線検出部6は、検出したX線をデジタル信号に変換する。図示しない画像生成部は、このデジタル信号に基づいて画像を生成する。図示しない画像記憶部は、画像生成部によって生成された画像を記憶する。
【0018】
撮影条件設定部7は、X線診断装置操作部9を介したオペレータの指示に従って、例えば、X線管4に印加する管電圧などの各種パラメータやX線絞り5によるX線の絞り具合といった撮影条件を設定する。
【0019】
X線診断装置操作部9は、例えば、マウスやキーボードなどの操作手段を備えており、オペレータによって操作される。オペレータは、X線診断装置表示部19に表示された所定の設定画面に対して、X線診断装置操作部9を介した入力が可能である。また、X線新診断装置操作部9は、オペレータの指示に従って、レール12a、レール12b、レール13a、レール13b、基台部14、支柱部15、アーム支持部16、寝台17の駆動を、駆動機構制御部10に対して指示する。
【0020】
X線診断装置表示部19は、前述の所定の設定画面を表示する。
【0021】
駆動機構制御部10は、X線診断装置操作部9の指示に従って、レール12a、レール12b、レール13a、レール13b、基台部14、支柱部15、アーム支持部16、寝台17の駆動を制御する。
【0022】
レール12a、レール12bは、駆動機構制御部10の制御に従って、レール13a、レール13bを図2における矢印Aの方向に移動可能に支持する。
【0023】
レール13a、レール13bは、駆動機構制御部10の制御に従って、基台部14を図2における矢印Bの方向に移動可能に支持する。
【0024】
基台部14は、駆動機構制御部10の制御に従って、支柱部15を図2における矢印Cの方向に回動可能に支持する。
【0025】
支柱部15は、駆動機構制御部10の制御に従って、アーム支持部16を図2における矢印Dの方向に回動可能に支持する。
【0026】
アーム支持部16は、駆動機構制御部10の制御に従って、アーム8を図2における矢印Eの方向にスライド可能に支持する。
【0027】
アーム8は、X線照射部3とX線検出部6が対向して位置するようにX線照射部3とX線検出部6を自身の両端で支持する。
【0028】
寝台17は、天板18を矢印Fおよび矢印Gの方向に移動可能に支持する。
【0029】
天板18は患者Pを載置する。
【0030】
アーム位置検知部11は、レール12a、レール12b、レール13a、レール13b、基台部14、支柱部15、アーム支持部16の駆動状況から、アーム8の現在の位置を検知する。アーム8の現在の位置は、例えば、レール12a及びレール12bとレール13a及びレール13bの間、レール13a及びレール13bと基台部14の間、基台部14と支柱部15の間、支柱部15とアーム支持部16の間の駆動部分に設けられたエンコーダが示す移動量に基づいて計算され、移動前の位置からの変位として検知される。
【0031】
次に被曝警告装置101と、発信機200の構成について、図1を用いて説明する。
【0032】
被曝警告装置101は、撮影条件/アーム位置情報取得部102、被曝エリア/被曝強度推定部103、信号検出部104、警告レベル設定部106、被曝警告装置操作部107、被曝警告装置表示部108、警告判断部109、警告通知部110を備える。
【0033】
撮影条件/アーム位置情報取得部102は、X線診断装置1の撮影情報設定部7から、前述した撮影条件を取得する。また、撮影条件/アーム位置情報取得部102は、X線診断装置1のアーム位置検知部11からアーム8の位置情報を取得する。
【0034】
被曝エリア/被曝強度推定部103は、撮影情報/アーム情報取得部102が取得した撮影条件とアームの位置情報に基づいて、被曝強度および前述した被曝エリアを推定する。
【0035】
警告レベル設定部106は、被曝警告装置表示部108に後述する警告レベル設定表を表示させる。警告レベル設定部106は、被曝警告装置操作部107を介したオペレータによって入力された警告レベル設定表に基づいて警告レベルを設定する。
【0036】
被曝警告装置操作部107は、例えば、マウスやキーボードを備えており、オペレータは、マウスやキーボードを介して、被曝警告装置表示部108に表示された後述する警告レベル設定表に入力情報を入力する。
【0037】
被曝警告装置表示部108は、後述する警告レベル設定表を表示する。
【0038】
信号情報検知部104は、手術室内の各医療従事者が身に付けている後述する各発信機200の信号を受信し、例えば、手術室における各発信機200の位置と移動方向を検知する。信号情報検知部104は、各発信機200を、医療従事者ごとに区別して検知する。
【0039】
警告判断部109は、例えば、信号情報検知部104が検知した手術室における発信機200の位置と発信機200の移動方向、被曝エリア/被曝強度推定部103によって推定された被曝エリアに基づいて、発信機200が被曝エリアに侵入する可能性を推定する。なお、この可能性は、例えば、被曝エリアと発信機200の間の距離や単位時間当たりの当該距離の変化量などの値に基づく。警告判断部109は、この値に基づいて、警告を発せさせるための指示を警告通知部110に対して出すか否かを判断する。また、警告判断部109が警告通知部110に対して指示を出す場合には、被曝エリア/被曝強度推定部103によって推定された被曝強度、警告レベル設定部106によって設定された警告レベル設定表に基づいた警告内容で、警告の対象となる医療従事者(警告対象者)に警告を発するように警告通知部110に指示する。また、警告判断部109は、信号情報検知部104が検知した手術室における発信機200の位置と発信機200の移動方向、被曝エリア/被曝強度推定部103によって推定された被曝エリアに基づいて、警告を止めさせるための指示を警告通知部110に対して出すか否かを判断する。
【0040】
警告通知部110は、例えばスピーカやランプなどの警告手段を備えており、警告判断部109の指示に従って、各医療従事者に対して区別して警告を発する。警告通知部110による警告の内容は、後述する警告レベル設定表の警告レベルに基づいて決定される。また、警告通知部110は、警告判断部109の指示に従って、警告を止める。
【0041】
発信機200は、例えば医療従事者の動作がわかりやすいように、手術室内の全ての医療従事者の胸部や腹部に付けられている。実施例1における各発信機200は、例えば、発信機200a、発信機200b、発信機200c、発信機200d、・・・のように区別される。したがって、例えば、発信機200aを身に付けた医療従事者aと発信機200bを身に付けた医療従事者bは区別される。
【0042】
図4は、実施例1におけるフロー図である。
まず、ステップS1において、診断を開始する。
【0043】
ステップS2において、被曝警告装置表示部108は、警告レベル設定部106の指示に従って、警告レベル設定表を表示する。オペレータは、被曝警告装置操作部107を介して、被曝警告装置表示部108に表示された警告レベル設定表への入力を行う。
【0044】
図5は、実施例1における警告レベル設定表の表示画面の概略図である。実施例1における警告レベル設定表は、例えば、発信機、担当者情報、プロテクタ、累積被曝量、推定被曝強度、警告レベルの欄を有する。ここでの発信機の欄は、前述したように、発信機200a、発信機200b、・・・、といった発信機200の種類である。オペレータは、担当者情報、プロテクタ、累積被曝量の欄に情報を入力する。例えば、発信機200aに該当する医療従事者aの役割が主担当医であった場合、オペレータは、被曝警告装置操作部107のマウスを介してプルダウン300をクリックし、担当者情報の欄の選択肢(「主担当医」、「サポート医」、「主担当看護師」、「サポート看護師」)の中から「主担当医」を選択する。次に、医療従事者aがプロテクタを装着して手技に臨む場合、オペレータは、プロテクタの欄の選択肢(「有」、「無」)の中から「有」を選択する。更に、オペレータは、医療従事者aの累積被曝量が多い場合、累積被曝量の欄の選択肢(「多」、「中」、「少」)から「多」を選択する。なお、この累積被曝量は、RISなどで管理されている医療従事者の個人データに基づいて自動的に選択されても良い。
【0045】
一つの発信機200について、担当者情報の欄、プロテクタの欄、累積被曝量の欄の選択が終了すると、例えば、推定被曝強度の欄に予め入力されている「高」、「中」、「低」の各推定被曝強度に対応する警告レベルが警告レベルの欄に自動的に入力される。なお、実施例1において警告レベルは、「A」、「B」、「C」の3段階に分けられており、どうしても被曝エリアに侵入させたくない場合は「A」、基本的には被曝エリアに侵入させたくないが、状況次第で侵入を許容する場合は「B」、被曝エリアへの侵入を基本的に許容する場合は「C」で表現される。警告レベルは、担当者情報の欄、プロテクタの欄、累積被曝量の欄、推定被曝強度の欄に入力された情報の組み合わせによって自動的に決められる。例えば、主担当医は、累積被曝量が多い場合においても手技を優先して行わなければならないことあるがため、警告レベルは比較的低く設定される。一方、例えば、サポート看護師は、あくまで手技のサポートが目的であり、可能ならば被曝を回避させたい。したがって、サポート看護師は、たとえプロテクタを装着しており、更に、累積被曝量が少ない場合においても、警告レベルは比較的高く設定される。なお、上記は一例であり、例えば、警告レベル設定表の内容は、被曝警告装置操作部107のキーボードを用いて、オペレータが直接入力して決定されても良い。
【0046】
ステップS3において、オペレータは、X線診断装置表示部19に表示された所定の設定画面に対して、X線診断装置操作部9を介して撮影条件を入力する。撮影条件設定部7は、所定の設定画面に入力された内容に基づいて、撮影条件を設定する。被曝エリア/被曝強度推定部103は、撮影条件設定部7から撮影条件を取得し、照射されるX線の被曝強度を推定する。
【0047】
ステップS4において、オペレータは、アーム8が実際に撮影を行う位置まで移動するように、レール12a、レール12b、レール13a、レール13b、基台部14、支柱部15、アーム支持部16の駆動を、X線診断装置操作部9を介して指示する。駆動機構制御部10は、X線診断装置操作部9からの指示に従って、レール12a、レール12b、レール13a、レール13b、基台部14、支柱部15、アーム支持部16、寝台17を駆動させる。上記した実際に撮影を行う位置とは、例えば、患者の心臓を撮影する場合、患者の心臓がX線検出部6とX線照射部3の間に位置するようなアーム8の位置を指す。アーム位置検知部11は、実際に撮影を行う位置におけるアーム8の位置を検知する。撮影条件/アーム位置情報取得部102は、アーム位置検知部11が検知したアーム8の位置情報を取得する。被曝エリア/被曝強度推定部103は、撮影条件/アーム位置情報取得部102が取得したアーム8の位置情報と、ステップS3において決定された撮影条件に基づいて被曝エリアを決定する。
【0048】
ステップS5において、オペレータはX線診断装置操作部9を介して、X線の照射を開始させる。また、信号情報検知部104は、各医療従事者が身に付けている各発信機200によって発せられる各信号の受信を開始する。
【0049】
ステップS6において、警告判断部109は、信号情報検知部104が検知した各発信機200の位置と移動方向、被曝エリア/被曝強度推定部103によって推定された被曝エリアに基づいて、被曝エリアに侵入する可能性がある発信機200を推定する。警告判断部109は、推定された可能性に基づいて、警告対象となる発信機200、即ち、警告対象者を判断する。
【0050】
図6は、手術室201内部の平面図である。図5における手術室201には、5人の医療従事者(医療従事者a、医療従事者b、医療従事者c、医療従事者d、医療従事者e)と患者Pがおり、X線診断装置1がある。また、ここでは、医療従事者aは発信機200a、医療従事者bは発信機200b、医療従事者cは発信機200c、医療従事者dは発信機200d、医療従事者eは発信機200eをそれぞれ身に付けている。図6における破線H1と破線H2で囲まれた領域は、前述の通り被曝エリアであり、図6において被曝エリアから所定の長さLだけ離れた鎖線Iで囲まれた領域は、警戒エリアである。実施例1では、例えば、この警戒エリア内にいる医療従事者が被曝エリアに近付くと、警告判断部109はその医療従事者を警告対象者として判断する。なお、図6において、医療従事者cは矢印Jの方向(被曝エリアに近付く方向)に、医療従事者dは矢印Kの方向(被曝エリアから離れる方向)に、医療従事者eは矢印Mの方向(被曝エリアに近付く方向)に移動しているものとする。
【0051】
例えば、図6において、発信機200aは警戒エリア内にいるものの、移動していないため、警告判断部109によって警告の対象として判断されない。また、発信機200bは、警戒エリア内におらず、尚且つ、移動していないので警告判断部109によって警告の対象として判断されない。発信機200cは、被曝エリアに近付く方向に移動しているものの、警戒エリア内にいないため、警告判断部109によって警告の対象として判断されない。発信機200dは、警戒エリア内にいるものの、被曝エリアから離れる方向に移動しているので、警告判断部109によって警告の対象として判断されない。しかし、発信機200は、警戒エリアにおり、尚且つ、被曝エリアに近付く方向に移動しているため、警告判断部109によって警告の対象として判断される。つまり、発信機200eを身に付けている医療従事者eが警告対象者となる。
【0052】
ステップS7において、警告判断部109は、被曝エリア/被曝強度推定部103によって推定された被曝強度と、警告レベル設定部106によって設定された警告レベル設定表とに基づいて警告を発するように警告通知部110に指示する。上記の例と図6を用いて説明すると、現在、警告の対象となっている発信機200eを有する医療従事者eはサポート看護師であり、プロテクタを装着しており、累積被曝量が少ない医療従事者である。例えば、被曝エリア/被曝強度推定部103によって推定された被曝強度が「高」だった場合、警告判断部109は、警告レベル「A」の警告を医療従事者eに通知するように、警告通知部110に指示する。その後、例えば、実施例1において警告レベル「A」に対応する警告方法が警告通知部110に設けられたスピーカからアラームを鳴らすこと、警告レベル「B」に対応する警告方法が警告通知部に設けられたランプを点灯させること、警告レベル「C」に対応する警告方法が何も通知しないことだった場合、上記例に沿って説明すると、警告通知部110は、警告判断部109の指示に従ってアラームを鳴らす。なお、警告対象者が誰であるかを知らせるために、例えば、当該アラームは警告対象者である医療従事者eを特定可能な音声情報を含んでいることが好ましい。また、警告方法がランプによる点灯であった場合、ランプの色などで区別されると良い。
【0053】
なお、警告判断部109は、警告を受けた結果、警告対象者が被曝エリアから離れる方向に移動すると警告通知部110に警告を止めるように指示する。警告通知部110は、警告判断部109の指示に従って、警告を止める。
【0054】
ステップS8において、診断を終了する。
【0055】
以上で説明したように、実施例1における被曝警告装置101は、被曝エリアに相対的に近付く医療従事者を検知し、その医療従事者に警告を発することができる。これによって、医療従事者は被曝エリアに侵入することなく手術室の中を移動できるようになり、医療従事者の被曝機会を低減することができる。また、実施例1における被曝警告装置101は、医療従事者の役割、累積被曝量、プロテクタの有無などから警告レベルを決定することで、手技中において被曝の必要性が低い医療従事者の余計な被曝を特に回避させることができる。
【0056】
なお、上記のフローの説明では、簡略化のためにX線診断装置1が静止している場合について説明したが、実際には、撮影を行う位置を変更するためにX線診断装置1のアーム8を移動させながら撮影を行うこともある。したがって、実際には警告判断部109は、被曝エリアおよび警戒エリアに対する相対的な医療従事者の位置と移動方向を考慮し、警告レベル設定表に基づいて警告を行うか否かを判断することになる。
【0057】
変形例の一つとして、警告判断部109は、同時に複数の医療従事者が警告対象者となった場合、警告レベル設定表と、医療従事者が被曝エリアに近付く速度あるいは加速度に基づいて警告の優先度を決める。警告判断部109は、例えば、警告レベルが高く、被曝エリアに近付く速度あるいは加速度が大きい警告対象者への警告を優先して行うように判断する。なお、この場合、医療従事者が被曝エリアに近付く速度あるいは加速度は、信号情報検出104が検知する必要がある。
【0058】
また、実施例1の警告レベル設定表は、例えばプロテクタの種類(腕用、胸部用、首用など)ごとに欄が設けられており、各種類でプロテクタの有無を選択できても良い。また、選択肢の内容はプロテクタの「有」「無」ではなく、例えば、プロテクタのレベルの選択肢(「優」、「劣」)などでも良い。一方で、累積被曝量の欄は数値で累積被曝量を入力可能であり、入力した数値が予め定められている閾値より上か下かで「多」、「中」、「少」が自動的に選択されるような仕様であっても良い。
【0059】
更に、実施例1において、各医療従事者の位置情報は、医療従事者が身に付けている発信機200が発する信号を信号情報検知部104が検知することで得られていたが、例えば、手術室にCCDカメラを設置し、映像情報として医療従事者の位置と移動方向を判断しても良い。この場合、各医療従事者の区別は、例えばCCDカメラの顔認識機能を用いて行う。
【0060】
あるいは、実施例1において、警告通知部110が被曝警告装置101を有していたが、各発信機200に警告通知部110が設けられている仕様でも良い。この場合、警告対象者の発信機200に設けられた警告通知部110だけが警告を通知するので、警告対象者の特定が容易になる。この場合、前述した優先度を考慮しなくて良いため、警告の対象となっている医療従事者全に漏れ無く警告を発することができる。
【0061】
(実施例2)
実施例2では、X線診断装置が本発明の被曝警告装置を内蔵している構成を示す。
【0062】
図7は、実施例2におけるX線診断装置1、発信機200のブロック図である。また図2は、実施例1と同様に実施例2におけるX線診断装置1の斜視図である。
【0063】
実施例2におけるX線診断装置1は、図7および図2に示すように、X線診断装置1は、X線制御部2、X線照射部3、X線検出部6、撮影条件設定部7、アーム8、X線診断装置操作部9、駆動機構制御部10、アーム位置検知部11、レール12a、レール12b、レール13a、レール13b、基台部14、支柱部15、アーム支持部16、寝台17、天板18、X線診断装置表示部19、撮影条件/アーム位置情報取得部102、被曝エリア/被曝強度推定部103、信号検出部104、警告レベル設定部106、警告判断部109、警告通知部110を備える。また、実施例1におけるX線診断装置1は、図示しない画像生成部、図示しない画像記憶部を備える。
【0064】
X線照射部3は、X線管4とX線絞り5を備える。
【0065】
X線制御部2は、撮影条件設定部7の設定に従って、X線管4とX線絞り5を制御する。
【0066】
X線管4はX線制御部2からの指示に従ってX線を照射する。
【0067】
X線絞り5は、X線制御部2からの指示に従って、X線管4から照射されたX線の絞り具合を変化させ、X線の照射範囲を調整する。
【0068】
X線検出部6は、天板18に横臥する患者を透過したX線を検出する。X線検出部6は、検出したX線をデジタル信号に変換する。図示しない画像生成部は、このデジタル信号に基づいて画像を生成する。図示しない画像記憶部は、画像生成部によって生成された画像を記憶する。
【0069】
撮影条件設定部7は、X線診断装置操作部9を介したオペレータの指示に従って、例えば、X線管4に印加する管電圧などの各種パラメータやX線絞り5によるX線の絞り具合といった撮影条件を設定する。
【0070】
X線診断装置操作部9は、例えば、マウスやキーボードなどの操作手段を備えており、オペレータによって操作される。オペレータは、X線診断装置表示部19に表示された所定の設定画面に対して、X線診断装置操作部9を介した入力が可能である。また、X線新診断装置操作部9は、オペレータの指示に従って、レール12a、レール12b、レール13a、レール13b、基台部14、支柱部15、アーム支持部16、寝台17の駆動を、駆動機構制御部10に対して指示する。更に、オペレータは、X線診断装置表示部19に表示された警告レベル設定表に入力情報を入力する。
【0071】
X線診断装置表示部19は、前述の所定の設定画面を表示する。またX線診断装置表示部19は、警告レベル設定表を表示する。
【0072】
駆動機構制御部10は、X線診断装置操作部9の指示に従って、レール12a、レール12b、レール13a、レール13b、基台部14、支柱部15、アーム支持部16、寝台17の駆動を制御する。
【0073】
レール12a、レール12bは、駆動機構制御部10の制御に従って、レール13a、レール13bを図2における矢印Aの方向に移動可能に支持する。
【0074】
レール13a、レール13bは、駆動機構制御部10の制御に従って、基台部14を図2における矢印Bの方向に移動可能に支持する。
【0075】
基台部14は、駆動機構制御部10の制御に従って、支柱部15を図2における矢印Cの方向に回動可能に支持する。
【0076】
支柱部15は、駆動機構制御部10の制御に従って、アーム支持部16を図2における矢印Dの方向に回動可能に支持する。
【0077】
アーム支持部16は、駆動機構制御部10の制御に従って、アーム8を図2における矢印Eの方向にスライド可能に支持する。
【0078】
アーム8は、X線照射部3とX線検出部6が対向して位置するようにX線照射部3とX線検出部6を自身の両端で支持する。
【0079】
寝台17は、天板18を矢印Fおよび矢印Gの方向に移動可能に支持する。
【0080】
天板18は患者Pを載置する。
【0081】
アーム位置検知部11は、レール12a、レール12b、レール13a、レール13b、基台部14、支柱部15、アーム支持部16の駆動状況から、アーム8の現在の位置を検知する。アーム8の現在の位置は、例えば、レール12a及びレール12bとレール13a及びレール13bの間、レール13a及びレール13bと基台部14の間、基台部14と支柱部15の間、支柱部15とアーム支持部16の間の駆動部分に設けられたエンコーダが示す移動量に基づいて計算され、移動前の位置からの変位として検知される。
【0082】
撮影条件/アーム位置情報取得部102は、X線診断装置1の撮影情報設定部7から、前述した撮影条件を取得する。また、撮影条件/アーム位置情報取得部102は、X線診断装置1のアーム位置検知部11からアーム8の位置情報を取得する。
【0083】
被曝エリア/被曝強度推定部103は、撮影情報/アーム情報取得部102が取得した撮影条件とアームの位置情報に基づいて、被曝強度および前述した被曝エリアを推定する。
【0084】
警告レベル設定部106は、X線診断装置表示部19に警告レベル設定表を表示させる。警告レベル設定部106は、X線診断装置操作部9を介したオペレータによって入力された警告レベル設定表に基づいて警告レベルを設定する。
【0085】
信号情報検知部104は、手術室内の各医療従事者が身に付けている各発信機200の信号を受信し、例えば、手術室における各発信機200の位置と移動方向を検知する。信号情報検知部104は、各発信機200を、医療従事者ごとに区別して検知する。
【0086】
警告判断部109は、例えば、信号情報検知部104が検知した手術室における発信機200の位置と発信機200の移動方向、被曝エリア/被曝強度推定部103によって推定された被曝エリアに基づいて、発信機200が被曝エリアに侵入する可能性を推定する。なお、この可能性は、例えば、被曝エリアと発信機200の間の距離や単位時間当たりの当該距離の変化量などの値に基づく。警告判断部109は、この値に基づいて、警告を発せさせるための指示を警告通知部110に対して出すか否かを判断する。また、警告判断部109が警告通知部110に対して指示を出す場合には、被曝エリア/被曝強度推定部103によって推定された被曝強度、警告レベル設定部106によって設定された警告レベル設定表に基づいた警告内容で、警告の対象となる医療従事者(警告対象者)に警告を発するように警告通知部110に指示する。また、警告判断部109は、信号情報検知部104が検知した手術室における発信機200の位置と発信機200の移動方向、被曝エリア/被曝強度推定部103によって推定された被曝エリアに基づいて、警告を止めさせるための指示を警告通知部110に対して出すか否かを判断する。
【0087】
警告通知部110は、例えばスピーカやランプなどの警告手段を備えており、警告判断部109の指示に従って、各医療従事者に対して区別して警告を発する。警告通知部110による警告の内容は、警告レベル設定表の警告レベルに基づいて決定される。また、警告通知部110は、警告判断部109の指示に従って、警告を止める。
【0088】
発信機200は、例えば医療従事者の動作がわかりやすいように、手術室内の全ての医療従事者の胸部や腹部に付けられている。実施例1における各発信機200は、例えば、発信機200a、発信機200b、発信機200c、発信機200d、・・・のように区別される。したがって、例えば、発信機200aを身に付けた医療従事者aと発信機200bを身に付けた医療従事者bは区別される。
【0089】
なお、実施例2におけるX線診断装置操作部9は、実施例1のX線診断装置操作部9の機能に加えて実施例1の被曝警告装置操作部107の機能を有し、これらを合わせた役割を果たす。また、実施例2におけるX線診断装置表示部19は、実施例1のX線診断装置表示部19の機能に加えて実施例1の被曝警告装置表示部108の機能を有し、これらを合わせた役割を果たす。
【0090】
また、実施例2におけるフローは、実施例1のフローにおける被曝警告装置操作部107をX線診断装置操作部9に、被曝警告装置表示部108をX線診断装置表示部19に置き換えたものと同様である。
【0091】
以上で説明したように、実施例1における被曝警告装置101は、被曝エリアに相対的に近付く医療従事者を検知し、その医療従事者に警告を発することができる。これによって、医療従事者は被曝エリアに侵入することなく手術室の中を移動できるようになり、医療従事者の被曝機会を低減することができる。また、実施例1における被曝警告装置101は、医療従事者の役割、累積被曝量、プロテクタの有無などから警告レベルを決定することで、手技中において被曝の必要性が低い医療従事者の余計な被曝を特に回避させることができる。
【0092】
以上、実施例1及び実施例2を用いて本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
1・・・X線診断装置
2・・・X線制御部
3・・・X線照射部
4・・・X線管
5・・・X線絞り
6・・・X線検出部
7・・・撮影条件設定部
8・・・アーム
9・・・X線診断装置操作部
10・・・駆動機構制御部
11・・・アーム位置検知部
12a、12b、13a、13b・・・レール
14・・・基台部
15・・・支柱部
16・・・アーム支持部
17・・・寝台
18・・・天板
19・・・X線診断装置表示部
101・・・被曝警告装置
102・・・撮影条件/アーム位置情報取得部
103・・・被曝エリア/被曝強度推定部
104・・・信号情報検知部
106・・・警告レベル設定部
107・・・被曝警告装置操作部
108・・・被曝警告装表示部
109・・・警告判断部
110・・・警告通知部
200、200a、200b、200c、200d、200e・・・発信機
300・・・プルダウン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7