特許第6151075号(P6151075)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6151075磁気共鳴イメージング装置、画像処理装置及び画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6151075
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置、画像処理装置及び画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20170612BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   A61B5/05 382
   A61B5/05 390
   A61B5/05 383
   A61B6/03 377
   A61B6/03 360Q
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-85223(P2013-85223)
(22)【出願日】2013年4月15日
(65)【公開番号】特開2014-204907(P2014-204907A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 敦子
【審査官】 右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−181908(JP,A)
【文献】 特開平11−155881(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0241385(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
A61B 6/03
A61B 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の穿刺対象部位を撮像した医用画像を表示部に表示する第1の表示制御部と、
穿刺アダプタと前記穿刺アダプタの固定具とによって規定される複数の穿刺経路の中から、穿刺経路に沿った前記医用画像における輝度値の分散が最も大きい穿刺経路を特定する特定部と、
特定された穿刺経路を示す情報を前記医用画像上に表示する第2の表示制御部と
を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
被検体の穿刺対象部位を撮像した医用画像を表示部に表示する第1の表示制御部と、
穿刺アダプタと前記穿刺アダプタの固定具とによって規定される複数の穿刺経路の中から、穿刺経路に沿った前記医用画像における輝度値の分散が所定の閾値以上となる穿刺経路を検出し、検出した穿刺経路の中から操作者によって選択された穿刺経路を特定する特定部と、
特定された穿刺経路を示す情報を前記医用画像上に表示する第2の表示制御部と
を備えたことを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記第2の表示制御部は、前記穿刺アダプタが有する複数の穿刺針刺入孔のうち、前記特定された穿刺経路に対応する穿刺針刺入孔を示す情報をさらに表示することを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記医用画像は、エラストグラフィ画像であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記医用画像は、他の医用画像診断装置によって生成された医用画像であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記医用画像は、X線CT装置によって生成された肝造影パフュージョン画像であることを特徴とする請求項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記第1の表示制御部は、前記被検体の穿刺対象部位を撮像した形態画像を前記医用画像に重畳させてさらに表示することを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記特定部は、操作者によって前記医用画像に対して入力された穿刺経路に基づいて、前記複数の穿刺経路の中から前記穿刺経路を特定することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記固定具は、前記穿刺アダプタを位置決めするための複数のアダプタ装着部を有
前記第2の表示制御部は、前記複数のアダプタ装着部のうち、前記特定された穿刺経路に対応するアダプタ装着部を示す情報をさらに表示する
ことを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
記固定具は、被検体から発生する磁気共鳴信号を受信する受信コイルに取り付けられることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
被検体の穿刺対象部位を撮像した医用画像を取得する取得部と、
前記医用画像を表示部に表示する第1の表示制御部と、
穿刺アダプタと前記穿刺アダプタの固定具とによって規定される複数の穿刺経路の中から、穿刺経路に沿った前記医用画像における輝度値の分散が最も大きい穿刺経路を特定する特定部と、
特定された穿刺経路を示す情報を前記医用画像上に表示する第2の表示制御部と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項12】
被検体の穿刺対象部位を撮像した医用画像を取得する取得部と、
前記医用画像を表示部に表示する第1の表示制御部と、
穿刺アダプタと前記穿刺アダプタの固定具とによって規定される複数の穿刺経路の中から、穿刺経路に沿った前記医用画像における輝度値の分散が所定の閾値以上となる穿刺経路を検出し、検出した穿刺経路の中から操作者によって選択された穿刺経路を特定する特定部と、
特定された穿刺経路を示す情報を前記医用画像上に表示する第2の表示制御部と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項13】
被検体の穿刺対象部位を撮像した医用画像を表示部に表示する手順と、
穿刺アダプタと前記穿刺アダプタの固定具とによって規定される複数の穿刺経路の中から、穿刺経路に沿った前記医用画像における輝度値の分散が最も大きい穿刺経路を特定する手順と、
特定された穿刺経路を示す情報を前記医用画像上に表示する手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項14】
被検体の穿刺対象部位を撮像した医用画像を表示部に表示する手順と、
穿刺アダプタと前記穿刺アダプタの固定具とによって規定される複数の穿刺経路の中から、穿刺経路に沿った前記医用画像における輝度値の分散が所定の閾値以上となる穿刺経路を検出し、検出した穿刺経路の中から操作者によって選択された穿刺経路を特定する手順と、
特定された穿刺経路を示す情報を前記医用画像上に表示する手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置、画像処理装置及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生検における穿刺を支援する方法として、超音波診断装置によって検査対象の部位を撮像した超音波画像を穿刺実施前又は実施中に表示する方法が知られている。また、近年では、超音波画像をリアルタイムに表示するとともに、穿刺前にX線CT(Computed Tomography)装置や磁気共鳴イメージング装置によって撮像した画像を表示する方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−279079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、生検における穿刺をより適切に支援することができる磁気共鳴イメージング装置、画像処理装置及び画像処理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置は、第1の表示制御手段と、特定部と、第2の表示制御部とを備える。第1の表示制御手段は、被検体の穿刺対象部位を撮像した医用画像を表示部に表示する。特定部は、穿刺アダプタと前記穿刺アダプタの固定具とによって規定される複数の穿刺経路の中から、穿刺経路に沿った前記医用画像における輝度値の分散が最も大きい穿刺経路を特定する。第2の表示制御部は、特定された穿刺経路を示す情報を前記医用画像上に表示する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るエラストグラフィ画像の撮像法を説明するための図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る受信RFコイルの一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るアダプタ固定具及び穿刺アダプタの一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る計算機システムの構成例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る第1の表示制御部によって表示される画像の一例を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る第2の表示制御部によって表示される穿刺経路の一例を示す図である。
図8図8は、第1の実施形態に係るMRI装置によって行われる処理の流れを示すフローチャートである。
図9図9は、第1の実施形態の変形例に係る第1の表示制御部によって行われる画像の重畳表示を説明するための図である。
図10図10は、第2の実施形態に係るMRI装置によって行われる処理の流れを示すフローチャートである。
図11図11は、第3の実施形態に係る画像処理装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、図面に基づいて、実施形態に係るMRI装置、画像処理装置及び画像処理プログラムについて詳細に説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。図1に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信RFコイル6、送信部7、受信RFコイル8、受信部9、シーケンス制御部10、及び計算機システム20を有する。
【0009】
静磁場磁石1は、中空の円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に一様な静磁場を発生する。例えば、静磁場磁石1は、永久磁石や超伝導磁石等である。
【0010】
傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石1の内側に配置される。また、傾斜磁場コイル2は、互いに直交するx,y,zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、後述する傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けて、x,y,zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。なお、z軸方向は、静磁場と同方向とする。傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2に電流を供給する。
【0011】
ここで、傾斜磁場コイル2によって発生するx,y,z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gss、位相エンコード用傾斜磁場Gpe及びリードアウト用傾斜磁場Groにそれぞれ対応する。スライス選択用傾斜磁場Gssは、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Gpeは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場Groは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させるために利用される。
【0012】
寝台4は、被検体Pが載置される天板4aを備え、後述する寝台制御部5による制御のもと、被検体Pが載置された状態で天板4aを傾斜磁場コイル2の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、寝台4は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。寝台制御部5は、制御部26による制御のもと、寝台4を制御する装置であり、寝台4を駆動して、天板4aを長手方向、上下方向及び左右方向へ移動する。
【0013】
送信RFコイル6は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、送信部7から供給される高周波パルス電流によりRF(Radio Frequency)パルス(高周波磁場パルス)を発生する。送信部7は、ラーモア周波数に対応する高周波パルス電流を送信RFコイル6に供給する。
【0014】
受信RFコイル8は、傾斜磁場コイル2の内側に配置され、上記のRFパルスの影響によって被検体Pから放射される磁気共鳴信号を受信する。また、受信RFコイル8は、受信した磁気共鳴信号を受信部9へ出力する。受信部9は、受信RFコイル8から出力される磁気共鳴信号をデジタル信号に変換することで、磁気共鳴(Magnetic Resonance:MR)信号データを生成する。また、受信部9は、生成したMR信号データをシーケンス制御部10へ送信する。
【0015】
シーケンス制御部10は、計算機システム20から送信されるシーケンス実行データに基づいて、傾斜磁場電源3、送信部7及び受信部9を駆動することによって、被検体Pのスキャンを実行する。ここでいうシーケンス実行データとは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信部7が送信RFコイル6に送信するRF信号の強さやRF信号を送信するタイミング、受信部9が磁気共鳴信号を検出するタイミングなど、被検体Pのスキャンを実行するための手順を示すパルスシーケンスを定義した情報である。なお、シーケンス制御部10は、シーケンス実行データに基づいて傾斜磁場電源3、送信部7及び受信部9を駆動した後に、受信部9からMR信号データが送信されると、そのMR信号データを計算機システム20へ転送する。
【0016】
計算機システム20は、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、計算機システム20は、MRI装置100が有する各部を駆動することで、被検体Pのスキャンや画像再構成などを行う。例えば、計算機システム20は、インタフェース部21、画像再構成部22、記憶部23、入力部24、表示部25及び制御部26を有する。
【0017】
インタフェース部21は、シーケンス制御部10との間で授受される各種信号の入出力を制御する。例えば、インタフェース部21は、シーケンス制御部10に対してシーケンス実行データを送信し、シーケンス制御部10からMR信号データを受信する。そして、インタフェース部21は、受信したMR信号データを被検体Pごとに記憶部23に格納する。
【0018】
また、インタフェース部21は、ネットワーク30を介して他の装置との間で授受される各種情報の入出力を制御する。例えば、インタフェース部21は、ネットワーク30を介して接続された他の画像診断装置や画像保管装置から各種の医用画像を受信する。そして、インタフェース部21は、受信した医用画像を記憶部23に格納する。
【0019】
画像再構成部22は、記憶部23によって記憶されたMR信号データに対して、後処理、すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことによって、被検体P内における所望核スピンのスペクトラムデータ又は画像データを生成する。また、画像再構成部22は、生成したスペクトラムデータ又は画像データを被検体Pごとに記憶部23に格納する。
【0020】
記憶部23は、後述する制御部26によって実行される処理に必要な各種データや各種プログラムなどを記憶する。例えば、記憶部23は、インタフェース部21によって受信されたMR信号データや、画像再構成部22によって生成されたスペクトラムデータや画像データなどを、被検体Pごとに記憶する。例えば、記憶部23は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ(flash memory)などの半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置である。
【0021】
入力部24は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。例えば、入力部24は、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスなどである。
【0022】
表示部25は、制御部26による制御のもと、スペクトラムデータあるいは画像データ等の各種の情報を表示する。例えば、表示部25は、液晶モニタやCRT(Cathode-Ray Tube)モニタなどの表示デバイスである。
【0023】
制御部26は、図示していないCPU(Central Processing Unit)やメモリ等を有し、MRI装置100の全体制御を行う。例えば、制御部26は、入力部24を介して操作者から入力される撮像条件に基づいて各種のシーケンス実行データを生成し、生成したシーケンス実行データをシーケンス制御部10に送信することによってスキャンを制御する。また、制御部26は、スキャンの結果としてシーケンス制御部10からMR信号データが送られた場合に、そのMR信号データに基づいて画像を再構成するよう画像再構成部22を制御する。
【0024】
以上、MRI装置100の構成について説明した。このような構成のもと、本実施形態に係るMRI装置100は、生検における穿刺を支援するための機能を有する。
【0025】
従来、生検における穿刺を支援する方法として、超音波診断装置によって検査対象の部位を撮像した超音波画像を穿刺実施前又は実施中に表示する方法が知られている。また、近年では、超音波画像をリアルタイムに表示するとともに、穿刺前にX線CT装置や磁気共鳴イメージング装置によって撮像した画像を表示する方法も知られている。
【0026】
しかし、このような従来技術では、必ずしも適切に穿刺を支援することができない場合があった。例えば、肝生検では、採取した標本から肝線維化のみでなく炎症、脂肪化、鉄沈着などの様々な所見を確認する必要があるが、肝病変は不均一であり、必ずしも適切な標本が採取できるわけではない。具体的には、穿刺実施前に超音波画像を表示する方法では、超音波画像を用いて刺入部位と角度だけを決定した後に、盲目的に穿刺が行われるが、呼吸性移動の影響や刺入角度の誤差によって、予定した位置に穿刺針を刺し入れることができない場合もある。また、組織学的に適切な標本が採取できているかどうかを確認することもできない。また、穿刺実施中に超音波画像を表示する方法であっても、リアルタイムに表示される超音波画像から肝線維化の情報を得ることは難しい。
【0027】
そこで、本実施形態に係るMRI装置100は、被検体の穿刺対象部位を撮像した医用画像に基づいて、穿刺アダプタによって規定される複数の穿刺経路の中から穿刺対象経路を特定し、特定した穿刺対象経路を示す情報を医用画像上に表示する。これにより、穿刺の実施者が、穿刺対象部位から標本を採取するのに適した穿刺経路を容易に把握することができるようになる。したがって、本実施形態に係るMRI装置100によれば、生検における穿刺をより適切に支援することができる。
【0028】
以下では、このような機能を有するMRI装置100について詳細に説明する。なお、本実施形態では、穿刺対象部位が肝臓であり、穿刺対象経路を特定するための医用画像として、エラストグラフィ画像を用いる場合の例を説明する。
【0029】
図2は、第1の実施形態に係るエラストグラフィ画像の撮像法を説明するための図である。図2に示すように、エラストグラフィ画像の撮像では、振動発生装置41及び加振装置42が用いられる。振動発生装置41は、空気の振動を発生させ、振動する空気を加振装置42へ供給する。加振装置42は、被検体Pの胸部に装着され、振動発生装置41から供給される空気の振動によって被検体Pの胸壁を振動させる。加振装置42が胸壁を振動させることで、胸壁の振動によって肝臓が振動し、肝臓内に振動波を通過させることができる。なお、例えば、振動発生装置41は、送信RFコイル6がRFパルスを印加するタイミングと同期させて動作する。
【0030】
物質に振動を与えた場合に、物質中を通る波の伝播速度をV、物質のずり弾性率(剛性率)をμ、物質の密度をρとすると、以下の関係式(1)が成り立つ。
【0031】
2=μ/ρ ・・・ (1)
【0032】
ここで、生体の密度ρは1g/cm3に近似できるため、波の伝播速度Vが得られれば、物質のずり弾性率μを求めることができる。したがって、体外から既知の振動数で肝臓を振動させた場合に、肝臓内における振動波の波長を測定することで、ずり弾性率μを求めることができる。ここで、波の速度は波長と振動数との積で得られるので、肝臓内における振動波の波長を測定することで、ずり弾性率μを求めることができる。
【0033】
本実施形態では、制御部26が、このような方法でずり弾性率μを求め、求めたずり弾性率μをマッピングしたエラストグラフィ画像を生成する。そして、制御部26は、生成したエラストグラフィ画像を記憶部23に格納する。
【0034】
図3は、第1の実施形態に係る受信RFコイルの一例を示す図である。図3に示す受信RFコイル8は、肝臓を撮像する際に用いられる腹部用のRFコイルである。一般的に、腹部用のRFコイルは、腹部全体を撮像することができるように、複数のコイルエレメントを並べて配列して構成される。そして、本実施形態では、受信RFコイル8には、穿刺アダプタを固定するためのアダプタ固定具50が取り付けられる。例えば、アダプタ固定具50は、受信RFコイル8が有する各コイルエレメントの中央部に形成された開口部8aに嵌合して装着される。
【0035】
図4は、第1の実施形態に係るアダプタ固定具及び穿刺アダプタの一例を示す図である。図4に示すように、アダプタ固定具50は、穿刺アダプタ60を位置決めするための複数のアダプタ装着部51を有する。なお、本実施例では、アダプタ固定具50は、グリッド(格子)状に形成されており、8列×6列に配置された48個のアダプタ装着部51を有する。各アダプタ装着部51は、穿刺アダプタ60の形状に合わせた四角い孔として形成されている。また、図4に示すように、穿刺アダプタ60は、穿刺針70を刺し入れるための複数の穿刺針刺入孔61を有する。なお、本実施例では、穿刺アダプタ60は、3列×3列に配列して設けられた9個の穿刺針刺入孔61を有する。
【0036】
ここで、図4に示すアダプタ固定具50及び穿刺アダプタ60では、アダプタ固定具50が有する48個のアダプタ装着部51それぞれに、9個の穿刺針刺入孔61を有する穿刺アダプタ60を装着することができるので、合計で48×9=432個の穿刺経路が規定されることになる。なお、アダプタ固定具50が有するアダプタ装着部51の数や、穿刺アダプタ60が有する穿刺針刺入孔の数は、図示したものに限られず、アダプタ固定具50の大きさや穿刺アダプタ60の大きさに応じて、適宜に決められればよい。また、アダプタ固定具50の形状はグリッド状に限られず、複数又は単数の穿刺アダプタ60を位置決めできるように、アダプタ装着部51が適宜に配置されていればよい。
【0037】
図5は、第1の実施形態に係る計算機システムの構成例を示す図である。なお、図5は、図1に示した計算機システム20が有する各部のうち、記憶部23及び制御部26を示している。図5に示すように、記憶部23は、画像データ記憶部23aと、経路情報記憶部23bとを有する。また、制御部26は、第1の表示制御部26aと、特定部26bと、第2の表示制御部26cとを有する。
【0038】
画像データ記憶部23aは、各種画像データを記憶する。例えば、画像データ記憶部23aは、インタフェース部21によって他の画像診断装置や画像保管装置から取得した医用画像や、画像再構成部22及び制御部26によって生成された各種画像を記憶する。
【0039】
経路情報記憶部23bは、アダプタ固定具50及び穿刺アダプタ60によって規定される穿刺経路に関する経路情報を記憶する。例えば、経路情報記憶部23bは、経路情報として、アダプタ固定具50と穿刺アダプタ60との組み合わせごとに、アダプタ固定具50が被検体に装着された際に規定される各穿刺経路の位置及び方向を示す情報を記憶する。ここで、経路情報は、アダプタ固定具50及び穿刺アダプタ60の形状や大きさ、アダプタ固定具50が有するアダプタ装着部51の配置や数、穿刺アダプタ60が有する穿刺針刺入孔61の配置や数に応じて設定される。
【0040】
例えば、図4に示したアダプタ固定具50及び穿刺アダプタ60が用いられる場合には、3列×3列の穿刺針刺入孔61が8列×6列に配置されることになる。そのため、この場合には、経路情報記憶部23bは、アダプタ固定具50の格子面に垂直な方向に沿って、24列×18列の穿刺経路が平行に規定されることを示す経路情報を記憶する。なお、例えば、穿刺アダプタ60が複数の異なる角度で穿刺針をガイドできるものであった場合には、それぞれの角度で規定される全ての穿刺経路を示す情報が経路情報として設定される。
【0041】
第1の表示制御部26aは、被検体Pの穿刺対象部位を撮像した医用画像を表示部25に表示する。本実施形態では、第1の表示制御部26aは、被検体Pの肝臓を撮像したエラストグラフィ画像を画像データ記憶部23aから読み出し、表示部25に表示する。また、第1の表示制御部26aは、被検体Pの穿刺対象部位を撮像した形態画像を医用画像に重畳させてさらに表示する。例えば、第1の表示制御部26aは、MRI装置100によって撮像された被検体Pの肝臓の形態画像を画像データ記憶部23aから読み出し、読み出した形態画像をエラストグラフィ画像に重畳させて表示する。なお、ここでいう形態画像は、例えば、T1強調画像や、ディフュージョン(diffusion)画像、被検体Pに造影剤を注入してから20分程度経過した後に撮像した肝細胞相造影画像などである。
【0042】
図6は、第1の実施形態に係る第1の表示制御部によって表示される画像の一例を示す図である。例えば、図6に示すように、第1の表示制御部26aは、MRI装置100によって撮像した形態画像とエラストグラフィ画像とを重畳した画像を表示部25に表示する。なお、図6の左側に示す画像は、形態画像と、波長をマッピングしたエラストグラフィ画像とを重畳させた画像であり、図6の右側に示す画像は、形態画像と、ずり弾性率をマッピングしたエラストグラフィ画像とを重畳させた画像である。前述したように、ずり弾性率をマッピングしたエラストグラフィ画像は、波長と振動数との積で得られる。つまり、波長をマッピングしたエラストグラフィ画像に振動数を乗ずることで、ずり弾性率をマッピングしたエラストグラフィ画像が得られる。
【0043】
図5に戻って、特定部26bは、被検体の穿刺対象部位を撮像した医用画像に基づいて、被検体Pに穿刺アダプタが装着された際に当該穿刺アダプタによって穿刺対象部位に対して規定される複数の穿刺経路の中から少なくとも一つの穿刺対象経路を特定する。本実施形態では、特定部26bは、第1の表示制御部26aによって表示部25に表示された形態画像とエラストグラフィ画像との重畳画像を用いて、穿刺対象経路を特定する。
【0044】
具体的には、特定部26bは、穿刺アダプタによって規定される複数の穿刺経路それぞれについて、各穿刺経路に沿った医用画像における輝度値の分布を統計的に解析し、解析によって得られた統計値に基づいて、穿刺対象経路を特定する。本実施形態では、特定部26bは、統計値として輝度値の分散を算出し、当該分散が最も大きい穿刺経路を穿刺対象経路として特定する。
【0045】
この場合には、特定部26bは、入力部24を介して、穿刺に用いられる穿刺針の最大長の入力を操作者から受け付ける。そして、特定部26bは、受け付けた穿刺針の最大長と、第1の表示制御部26aによって表示部25に表示された形態画像とエラストグラフィ画像との重畳画像を用いて、穿刺アダプタ60によって規定される複数の穿刺経路ごとに輝度値の分散を算出する。
【0046】
このとき、特定部26bは、まず、穿刺に用いられるアダプタ固定具50と重畳画像との位置関係を特定する。ここで、アダプタ固定具50と重畳画像との位置関係を特定する方法には、公知の各種の方法を用いることができる。例えば、米国特許第6675037号明細書に記載された方法や、米国特許第6904305号明細書に記載された方法などを用いることができる。
【0047】
また、特定部26bは、アダプタ固定具50と重畳画像との位置関係を特定した後に、経路情報記憶部23bによって記憶されている経路情報を参照して、穿刺に用いられるアダプタ固定具50及び穿刺アダプタ60によって規定される全ての穿刺経路と重畳画像との位置関係を特定する。
【0048】
その後、特定部26bは、アダプタ固定具50及び穿刺アダプタ60によって規定される全ての穿刺経路について、操作者から受け付けた穿刺針の最大長を用いて、形態画像とエラストグラフィ画像との重畳画像における各穿刺経路に沿った輝度値の分散を算出する。このとき、例えば、穿刺アダプタ60が複数の異なる角度で穿刺針をガイドできるものであった場合には、それぞれの角度で規定される全ての穿刺経路について分散が算出されることになる。
【0049】
そして、特定部26bは、算出した分散を穿刺経路ごとに比較して、分散が最も大きい穿刺経路を穿刺対象経路として特定する。なお、ここでは、特定部26bが、分散が最も大きい穿刺経路を穿刺対象経路として特定する場合の例を説明したが、逆に、分散が最も小さい穿刺経路を穿刺対象経路として特定してもよい。また、特定部26bは、穿刺対象経路を特定するための統計値として、分散以外の統計値を用いてもよい。例えば、特定部26bは、統計値として中央値を用いてもよい。
【0050】
このように、特定部26bは、各種の方法で、各穿刺経路に沿った輝度値を統計的に解析することが可能である。ここで、例えば、特定部26bは、入力部24を介して、操作者から解析方法の指定を受け付け、操作者から指定された解析方法で、各穿刺経路に沿った輝度値を統計的に解析するようにしてもよい。
【0051】
第2の表示制御部26cは、特定部26bによって特定された穿刺対象経路を示す情報を医用画像上に表示する。さらに、第2の表示制御部26cは、アダプタ固定具50が有する複数のアダプタ装着部51のうち、特定部26bによって特定された穿刺対象経路に対応するアダプタ装着部51を示す情報を表示する。また、第2の表示制御部26cは、穿刺アダプタ60が有する複数の穿刺針刺入孔61のうち、特定部26bによって特定された穿刺対象経路に対応する穿刺針刺入孔を示す情報をさらに表示する。
【0052】
図7は、第1の実施形態に係る第2の表示制御部によって表示される穿刺経路の一例を示す図である。なお、図7では、3D画像上に穿刺経路を表示した場合の例を示しているが、2D画像上に穿刺経路を表示してもよい。また、ここでは、図4に示したアダプタ固定具50及び穿刺アダプタ60が用いられる場合の例を説明する。
【0053】
例えば、図7の左側に示すように、第2の表示制御部26cは、経路情報記憶部23bによって記憶されている経路情報を参照して、アダプタ固定具50が有するアダプタ装着部51の配置に合わせて、形態画像とエラストグラフィ画像との重畳画像上に8列×6列の格子状のグラフィック81を表示させる。例えば、図7の左側に示す例では、格子状のグラフィック81における8つの列を「1」〜「8」で表し、6つの列を「A」〜「F」で表している。この場合に、アダプタ固定具50が有する48個のアダプタ装着部51は、「1−A」、「1−B」、「1−C」・・・「8−D」、「8−E」、「8−F」で表される。
【0054】
そして、例えば、第2の表示制御部26cは、特定部26bによって特定された穿刺対象経路を示す棒状のグラフィック82を、格子状のグラフィック81における対応するアダプタ装着部51の位置に表示させる。例えば、図7の左側に示す例では、特定部26bによって特定された穿刺対象経路が、「8−A」のアダプタ装着部51に対応するものであった場合を示している。
【0055】
さらに、例えば、図7の右側に示すように、第2の表示制御部26cは、経路情報記憶部23bによって記憶されている経路情報を参照して、穿刺アダプタ60が有する9つの穿刺針刺入孔61の配置に合わせて、重畳画像における穿刺対象経路を含んだ部分を拡大した画像上に、穿刺アダプタ60によって規定される9本の穿刺経路を示す棒状のグラフィック83を表示する。また、例えば、図7の右側に示すように、第2の表示制御部26cは、重畳画像の一部を拡大した画像上に、穿刺アダプタ60の形状を示すグラフィック84をさらに表示し、そのグラフィック84上に、穿刺針刺入孔61の位置を示す丸い形状のグラフィック85を表示する。例えば、図7の右側に示す例では、穿刺針刺入孔61の位置を示す3列×3列のグラフィック85について、一方の列を「1」〜「3」で表し、他方の列を「a」〜「c」で表している。この場合に、穿刺アダプタ60が有する穿刺針刺入孔61の位置は、「1−a」、「1−b」・・・「3−b」、「3−c」で表される。
【0056】
そして、例えば、第2の表示制御部26cは、穿刺経路を示す棒状のグラフィック83のうち、特定部26bによって特定された穿刺対象経路を示す棒状のグラフィック84については、他の穿刺経路と区別が可能になるように表示形態を変えて表示する。図7の右側に示す例では、穿刺対象経路のグラフィック84に斜線を付している。また、第2の表示制御部26cは、穿刺アダプタ60の形状を示すグラフィック上に表示した穿刺針刺入孔61のグラフィック85のうち、特定部26bによって特定された穿刺対象経路に対応する穿刺針刺入孔61のグラフィック86についても、他の穿刺針刺入孔61と区別が可能になるように表示形態を変えて表示する。例えば、図7の右側に示す例では、特定部26bによって特定された穿刺対象経路が、「2−b」の穿刺針刺入孔に対応するものであった場合を示している。
【0057】
このように、第2の表示制御部26cが、特定部26bによって特定された穿刺対象経路に対応するアダプタ装着部51を示すグラフィック82を表示することで、穿刺の実施者は、アダプタ固定具50が有する複数のアダプタ装着部51のうち、どのアダプタ装着部51に穿刺アダプタ60を装着すればよいかを容易に把握することができる。また、第2の表示制御部26cが、特定部26bによって特定された穿刺対象経路に対応する穿刺針刺入孔61を示すグラフィック86を表示することで、穿刺の実施者は、穿刺アダプタ60が有する複数の穿刺針刺入孔61のうち、どの穿刺針刺入孔61に穿刺針を刺し入れればよいかを容易に把握することができる。
【0058】
図8は、第1の実施形態に係るMRI装置によって行われる処理の流れを示すフローチャートである。なお、ここでは、被検体Pの穿刺対象部位を撮像したエラストグラフィ画像が事前に撮像されて、画像データ記憶部23aに格納されていたとする。
【0059】
図8に示すように、MRI装置100では、操作者から開始指示を受け付けた場合に(ステップS101,Yes)、以下の処理を実行する。まず、制御部26が、操作者によって入力された撮像条件に基づいて各部を制御することで、穿刺をする際の参照画像として、被検体Pの穿刺対象部位を撮像した形態画像を撮像する(ステップS102)。
【0060】
続いて、第1の表示制御部26aが、被検体Pの穿刺対象部位を撮像したエラストグラフィ画像を画像データ記憶部23aから取得する(ステップS103)。そして、第1の表示制御部26aは、撮像された形態画像を画像データ記憶部23aから読み出し、その形態画像とエラストグラフィ画像とを重畳させた重畳画像を表示部25に表示する(ステップS104)。
【0061】
続いて、特定部26bが、穿刺に用いられる穿刺針の最大長の入力を操作者から受け付ける(ステップS105)。その後、特定部26bは、受け付けた穿刺針の最大長と、エラストグラフィ画像とを用いて、穿刺アダプタ60によって規定される複数の穿刺経路ごとに輝度値の分散を算出する(ステップS106)。そして、特定部26bは、算出した分散が最も大きい穿刺経路を、穿刺対象経路として特定する(ステップS107)。
【0062】
続いて、第2の表示制御部26cが、特定部26bによって特定された穿刺対象経路を示す情報を重畳画像上に表示する(ステップS108)。また、第2の表示制御部26cは、穿刺対象経路に対応するアダプタ装着部及び穿刺針刺入孔61を示す情報をさらに表示する(ステップS109)。
【0063】
上述したように、第1の実施形態に係るMRI装置100は、被検体の穿刺対象部位を撮像した医用画像に基づいて、穿刺アダプタによって規定される複数の穿刺経路の中から穿刺対象経路を特定し、特定した穿刺対象経路を示す情報を医用画像上に表示する。これにより、穿刺の実施者が、穿刺対象部位から標本を採取するのに適した穿刺経路を容易に把握することができるようになる。例えば、穿刺の実施者は、肝生検を行う場合に、表示された画像上で肝臓の形態及び繊維化領域を確認したうえで穿刺を行うことができるので、適切な標本を確実に採取することができる。この結果、診断の精度が向上する。また、不適切な標本が採取されることによる再生検を減らすことも可能になり、患者の負担を低減することができる。したがって、本実施形態に係るMRI装置100によれば、生検における穿刺をより適切に支援することができる。
【0064】
なお、上述した第1の実施形態では、特定部26bが、穿刺アダプタ60によって規定される複数の穿刺経路ごとに輝度値の分散を算出し、算出した分散が最も大きい穿刺経路を穿刺対象経路として特定する場合の例を説明した。これに対し、例えば、特定部26bは、分散が所定の閾値以上となる穿刺経路の中から操作者によって指定された穿刺経路を穿刺対象経路として特定してもよい。
【0065】
この場合には、特定部26bは、穿刺アダプタ60によって規定される複数の穿刺経路ごとに輝度値の分散を算出した後に、当該分散が所定の閾値以上となる穿刺経路を検出し、検出した穿刺経路の中から操作者によって選択された穿刺経路を穿刺対象経路として特定する。例えば、特定部26bは、分散が所定の閾値以上となる穿刺経路を示す情報を表示部25に表示し、表示した情報の中から1つの穿刺経路を選択する操作を操作者から受け付ける。そして、特定部26bは、操作者によって選択された穿刺経路を、穿刺対象経路として特定する。
【0066】
また、上述した第1の実施形態では、穿刺対象経路を特定するための医用画像として、形態画像とエラストグラフィ画像との重畳画像を用いる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、エラストグラフィ画像のみが用いられてもよい。または、エラストグラフィ画像の代わりに、Gd(ガドリニウム)造影画像などが用いられてもよい。さらに、例えば、他の医用画像診断装置によって生成された医用画像が用いられてもよい。例えば、X線CT装置によって生成された肝臓の造影画像や、肝造影パフュージョン画像が用いられてもよい。
【0067】
また、上述した第1の実施形態では、穿刺対象部位が肝臓である場合の例を説明したが、穿刺対象部位は他の部位であってもよい。例えば、穿刺対象部位が胸部領域であった場合には、被検体Pの胸部領域を撮像した医用画像が用いられる。この場合には、医用画像として、例えば、T1強調脂肪抑制画像や、T2強調脂肪抑制画像、Gd(ガドリニウム)造影画像、エラストグラフィ画像などが用いられる。
【0068】
また、上述した第1の実施形態では、第1の表示制御部26aが、MRI装置100によって撮像された形態画像とエラストグラフィ画像とを重畳させる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、第1の表示制御部26aは、ネットワーク30を介して他の画像診断装置や画像保管装置から取得した医用画像とMRI装置100によって撮像されたエラストグラフィ画像とを重畳させてもよい。
【0069】
図9は、第1の実施形態の変形例に係る第1の表示制御部によって行われる画像の重畳表示を説明するための図である。なお、図9では、X線CT装置によって生成された被検体の肝臓のCT画像と、MRI装置によって生成された同じ被検体の肝臓のMR画像とを重畳表示する場合の例を示している。
【0070】
図9に示すように、例えば、第1の表示制御部26aは、ネットワーク30を介してX線CT装置から取得したCT画像と、MRI装置100によって生成されたMR画像とを、それぞれ画像データ記憶部23aから読み出す。このとき、第1の表示制御部26aは、MR画像については、肝臓を撮像した1スライス分のMR画像を読み出し、CT画像については、同じ肝臓を撮像した複数スライス分のCT画像を読み出す。
【0071】
そして、第1の表示制御部26aは、読み出したCT画像及びMR画像それぞれを、左右に分割する。例えば、第1の表示制御部26aは、領域抽出処理などによって各画像で脊柱管を検出し、検出した脊柱管を通る直線で各画像を左右に分割する。また、第1の表示制御部26aは、MR画像の左側(人体の右側)の分割領域に含まれる肝実質の輪郭を抽出し、さらに、複数スライス分のCT画像それぞれからも左側の分割領域に含まれる肝実質の輪郭を抽出する。
【0072】
その後、第1の表示制御部26aは、MR画像から抽出した肝実質の輪郭の形状と、複数スライス分のCT画像それぞれから抽出した肝実質の輪郭の形状とを1つずつ比較し、MR画像から抽出された輪郭と最も形状が近い輪郭を含むCT画像を特定する。このとき、例えば、第1の表示制御部26aは、MR画像と各CT画像との間で輪郭の形状のパターンマッチングを行うことで、MR画像における輪郭と最も形状が近い輪郭を含むCT画像を特定する。そして、第1の表示制御部26aは、特定したCT画像とMR画像とを位置合わせ処理を行ったうえで、各画像を重畳させる。
【0073】
なお、ここでは、1スライス分のMR画像と複数スライス分のCT画像とを用いる場合の例を説明したが、逆に、複数スライス分のMR画像と1スライス分のCT画像とを用いてもよい。その場合には、第1の表示制御部26aは、CT画像から抽出した肝実質の輪郭の形状と、複数スライス分のMR画像それぞれから抽出した肝実質の輪郭の形状とを1つずつ比較し、CT画像から抽出された輪郭と最も形状が近い輪郭を含むMR画像を特定する。
【0074】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。上述した第1の実施形態では、穿刺アダプタによって規定される複数の穿刺経路それぞれについて、各穿刺経路に沿った医用画像における輝度値の分布を統計的に解析して穿刺対象経路を特定する場合の例を説明した。これに対し、第2の実施形態では、操作者によって医用画像に対して入力された穿刺経路に基づいて、穿刺対象経路を特定する場合の例を説明する。
【0075】
この場合には、特定部26bが、表示部25に表示された医用画像に対して操作者によって入力された穿刺経路に基づいて、穿刺アダプタによって規定される複数の穿刺経路の中から穿刺対象経路を特定する。なお、第2の実施形態に係るMRI装置の構成は、基本的には、図1及び5に示したものと同じであるので、ここでは、第2の実施形態に係るMRI装置によって行われる処理の流れについて説明する。
【0076】
図10は、第2の実施形態に係るMRI装置によって行われる処理の流れを示すフローチャートである。なお、ここでは、被検体Pの穿刺対象部位を撮像したエラストグラフィ画像が事前に撮像されて、画像データ記憶部23aに格納されていたとする。図10に示すように、第2の実施形態に係るMRI装置では、操作者から開始指示を受け付けた場合に(ステップS201,Yes)、以下の処理を実行する。
【0077】
まず、制御部26が、操作者によって入力された撮像条件に基づいて各部を制御することで、穿刺をする際の参照画像として、被検体Pの穿刺対象部位を撮像した形態画像を撮像する(ステップS202)。そして、第1の表示制御部26aが、撮像された形態画像を画像データ記憶部23aから読み出し、読み出した形態画像を表示部25に表示する(ステップS203)。
【0078】
続いて、特定部26bが、入力部24を介して、表示部25に表示された形態画像に対する穿刺経路の入力を操作者から受け付ける(ステップS204)。そして、特定部26bは、穿刺に用いられるアダプタ固定具50と形態画像との位置関係を特定した後に、経路情報記憶部23bによって記憶されている経路情報を参照して、穿刺に用いられるアダプタ固定具50及び穿刺アダプタ60によって規定される全ての穿刺経路の中から、操作者によって入力された穿刺経路に最も近い穿刺経路を穿刺対象経路として特定する(ステップS205)。
【0079】
続いて、第2の表示制御部26cが、特定部26bによって特定された穿刺対象経路を示す情報を形態画像上に表示する(ステップS206)。また、第2の表示制御部26cは、穿刺対象経路に対応するアダプタ装着部及び穿刺針刺入孔61を示す情報をさらに表示する(ステップS207)。
【0080】
上述したように、第2の実施形態に係るMRI装置100は、被検体の穿刺対象部位を撮像した形態画像に対する穿刺経路の入力を操作者から受け付け、受け付けた穿刺経路に基づいて、穿刺アダプタによって規定される複数の穿刺経路の中から穿刺対象経路を特定し、特定した穿刺対象経路を示す情報を形態上に表示する。これにより、穿刺の実施者が、撮像対象部位における所望の位置から標本を採取するのに適した穿刺経路を容易に把握することができるようになる。したがって、本実施形態に係るMRI装置100によれば、生検における穿刺をより適切に支援することができる。
【0081】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、画像処理装置の実施形態について説明する。
【0082】
図11は、第3の実施形態に係る画像処理装置の構成を示す図である。図11に示すように、本実施形態に係る画像処理装置200は、ネットワーク300を介してMRI装置100及びX線CT装置400と接続されている。例えば、画像処理装置200は、MRI装置100が設置された撮影室やX線CT装置400が設置された撮影室とは別の場所に置かれ、読影医や診断医などによって用いられる。なお、画像処理装置200は、各種医用画像を保管する画像保管サーバや、各種医用画像を表示するワークステーションなどであってもよい。また、画像処理装置200は、他の画像診断装置や画像保管装置と接続されていてもよい。
【0083】
MRI装置100は、磁気共鳴現象を利用して被検体から磁気共鳴データを収集し、収集した磁気共鳴データから画像を生成する装置である。具体的には、MRI装置100は、操作者によって設定された撮像条件に基づいて、各種撮像法により被検体のMR画像を生成する。例えば、MRI装置100は、肝臓のT1強調画像、ディフュージョン画像、肝細胞相造影画像などの形態画像や、エラストグラフィ画像などを生成する。
【0084】
X線CT装置400は、X線で被検体をスキャンして得られた投影データに基づいて画像を生成する装置である。具体的には、X線CT装置400は、操作者によって設定された撮像条件に基づいて、各種撮像法により被検体のCT画像を生成する。例えば、X線CT装置400は、肝臓の造影画像や、肝造影パフュージョン画像などを撮像する。
【0085】
画像処理装置200は、各種医用画像を処理する装置である。例えば、画像処理装置200は、MRI装置100によって生成されたMR画像や、X線CT装置400によって生成されたCT画像を処理する。具体的には、画像処理装置200は、画像取得部210と、入力部220と、表示部230と、記憶部240と、制御部250とを有する。
【0086】
画像取得部210は、ネットワーク300を介して、各種医用画像を取得する。例えば、画像取得部210は、被検体の肝臓を撮像した形態画像やエラストグラフィ画像をMRI装置100から取得する。また、画像取得部210は、被検体の肝臓を撮像した肝臓の造影画像や、肝造影パフュージョン画像などをX線CT装置400から取得する。なお、画像取得部210は、各種医用画像を取得すると、取得した医用画像を後述する画像データ記憶部241に格納する。
【0087】
入力部220は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける。例えば、入力部220は、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスである。
【0088】
表示部230は、操作者により参照される各種画像や、操作者から各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示する。例えば、表示部230は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタなどの表示デバイスである。
【0089】
記憶部240は、画像処理装置200によって処理される各種データを記憶する。例えば、記憶部240は、ハードディスクやメモリなどである。具体的には、記憶部240は、画像データ記憶部241と、経路情報記憶部242とを有する。画像データ記憶部241は、画像取得部210によって取得された各種医用画像のデータを記憶する。経路情報記憶部242は、アダプタ固定具及び穿刺アダプタによって規定される穿刺経路に関する経路情報を記憶する。
【0090】
制御部250は、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを有し、これらを用いて各種プログラムを実行させることで、画像処理装置200の動作を制御する。具体的には、制御部250は、第1の表示制御部251と、特定部252と、第2の表示制御部253とを有する。
【0091】
第1の表示制御部251は、被検体の穿刺対象部位を撮像した医用画像を表示部230に表示する。例えば、第1の表示制御部251は、被検体の肝臓を撮像したエラストグラフィ画像を画像データ記憶部241から読み出し、表示部230に表示する。また、第1の表示制御部251は、被検体の穿刺対象部位を撮像した形態画像を医用画像に重畳させてさらに表示する。例えば、第1の表示制御部251は、MRI装置100によって撮像された被検体の肝臓の形態画像を画像データ記憶部241から読み出し、読み出した形態画像をエラストグラフィ画像に重畳させて表示する。
【0092】
特定部252は、被検体の穿刺対象部位を撮像した医用画像に基づいて、被検体Pに穿刺アダプタが装着された際に当該穿刺アダプタによって穿刺対象部位に対して規定される複数の穿刺経路の中から少なくとも一つの穿刺対象経路を特定する。具体的には、特定部252は、穿刺アダプタによって規定される複数の穿刺経路それぞれについて、各穿刺経路に沿った医用画像における輝度値の分布を統計的に解析し、解析によって得られた統計値に基づいて、穿刺対象経路を特定する。例えば、特定部252は、統計値として輝度値の分散を算出し、当該分散が最も大きい穿刺経路を穿刺対象経路として特定する。例えば、特定部252は、医用画像として、MRI装置100によって撮像された形態画像とエラストグラフィ画像との重畳画像を用いる。
【0093】
第2の表示制御部253は、特定部252によって特定された穿刺対象経路を示す情報を医用画像上に表示する。さらに、第2の表示制御部253は、アダプタ固定具が有する複数のアダプタ装着部のうち、特定部252によって特定された穿刺対象経路に対応するアダプタ装着部を示す情報を表示する。また、第2の表示制御部253は、穿刺アダプタが有する複数の穿刺針刺入孔のうち、特定部252によって特定された穿刺対象経路に対応する穿刺針刺入孔を示す情報をさらに表示する。例えば、第2の表示制御部253は、MRI装置100によって撮像された形態画像とエラストグラフィ画像とを重畳させた重畳画像上に、アダプタ装着部を示す情報と穿刺針刺入孔を示す情報とを表示する。
【0094】
なお、本実施形態に係る第1の表示制御部251は、基本的には、第1の実施形態で説明した第1の表示制御部26aと同じ機能を有する。また、本実施形態に係る特定部252は、基本的には、第1の実施形態で説明した特定部26bと同じ機能を有する。また、本実施形態に係る第2の表示制御部253は、基本的には、第1の実施形態に係る第2の表示制御部26cと同じ機能を有する。そのため、ここでは、第1の表示制御部251、特定部252及び第2の表示制御部253については詳細な説明を省略する。
【0095】
上述したように、第3の実施形態に係る画像処理装置200は、被検体の穿刺対象部位を撮像した医用画像に基づいて、穿刺アダプタによって規定される複数の穿刺経路の中から穿刺対象経路を特定し、特定した穿刺対象経路を示す情報を医用画像上に表示する。これにより、穿刺の実施者が、穿刺対象部位から標本を採取するのに適した穿刺経路を容易に把握することができるようになる。したがって、本実施形態に係る画像処理装置200によれば、生検における穿刺をより適切に支援することができる。
【0096】
また、上述した各実施形態で説明した制御部の機能は、ソフトウェアによって実現することもできる。例えば、制御部の機能は、上記実施形態において制御部が行うものとして説明した処理の手順を規定した画像処理プログラムをコンピュータに実行させることで、実現される。この画像処理プログラムは、例えば、ハードディスクや半導体メモリ素子等に記憶され、CPUやMPU等のプロセッサによって読み出されて実行される。また、この画像処理プログラムは、CD−ROM(Compact Disc − Read Only Memory)やMO(Magnetic Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記録されて、配布されることもできる。
【0097】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、生検における穿刺をより適切に支援することができる。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0099】
100 MRI装置
20 計算機システム
26 制御部
26a 第1の表示制御部
26b 特定部
26c 第2の表示制御部
図1
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