特許第6151083号(P6151083)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6151083
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】多色口紅化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20170612BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20170612BHJP
   A61Q 1/06 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   A61K8/02
   A61Q1/04
   A61Q1/06
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-97343(P2013-97343)
(22)【出願日】2013年5月7日
(65)【公開番号】特開2014-218450(P2014-218450A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】592262543
【氏名又は名称】日本メナード化粧品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石黒 陽平
(72)【発明者】
【氏名】森地 恵理子
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 博紀
(72)【発明者】
【氏名】田屋 潤
(72)【発明者】
【氏名】宮本 國寛
【審査官】 石川 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2002/0041788(US,A1)
【文献】 特開2011−006349(JP,A)
【文献】 米国特許第03192933(US,A)
【文献】 特開2008−255012(JP,A)
【文献】 特開2010−159230(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0202486(US,A1)
【文献】 特開昭61−014919(JP,A)
【文献】 特開平04−033626(JP,A)
【文献】 特開平01−106527(JP,A)
【文献】 特開昭61−112008(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/161937(WO,A1)
【文献】 特表2000−513017(JP,A)
【文献】 米国特許第04743443(US,A)
【文献】 "Beauty Diary「グラデーションリップ」",[online],インターネット<URL,http://ameblo.jp/aimer-lapin/entry-11145624187.html>,2012年 1月25日
【文献】 "VDL 明洞店",[online],[平成28年7月13日検索],インターネット<URL,http://wowseoul.jp/shopping/vdl>,2013年 4月29日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/02
A61Q 1/04
A61Q 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3種の赤みを有し、隠蔽度が0.71〜0.76であり、赤味の強さのみが段階的に変化した口紅化粧料が、一定方向に、かつ段階的に配列された多色口紅化粧料であって、口唇内側から輪郭にかけて、少なくとも3種の口紅化粧料を別々に付着させることによって、赤みを段階的に口唇内側であるほど強く、輪郭側であるほど弱くするように塗布して用いられる多色口唇化粧料であって、口唇内側から輪郭にかけて、少なくとも3種の口紅化粧料を別々に付着させることによって、赤みを段階的に口唇内側であるほど強く、輪郭側であるほど弱くするように塗布すると、口唇の内部と輪郭部における赤味の差として、L*a*b*色空間におけるa*値の差分であるΔa*値を算出したとき、塗布後の仕上がりにおけるΔa*値が何も塗布していない唇のΔa*値よりも高くなることを特徴とする多色口紅化粧料。
【請求項2】
棒状化粧料である請求項1記載の多色口紅化粧料。
【請求項3】
直径5〜20mmの棒状化粧料で、立てた場合に縦方向に少なくとも、隠蔽度が0.71〜0.76であり、赤みの強さのみが段階的に変化した3層を有することを特徴とする請求項2記載の多色口紅化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は口紅化粧料に関する。具体的には、多色口紅化粧料に関する。より具体的には、特別なテクニックを要さずに簡易に若々しく血色が透き通った様な仕上がりを演出できる多色口紅化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、口唇の印象を美しく、あるいは若々しく演出するために様々な口紅化粧料、並びにその評価法が開発されている。例えば特許文献1では、透過干渉色が青色及至緑色で反射干渉色が赤色を呈する、外観色が肌色の酸化鉄被覆雲母チタンを配合することで、透明感のある自然の口唇を維持しつつ、口唇のしわを目立たなくさせる口紅化粧料用組成物を提供する方法が報告されている。また特許文献2では、カメラで撮影した口唇画像のL*a*b*表色系におけるa*値とb*値の差を指標として口唇の色彩的若々しさを判定する方法が報告されている。
【0003】
一方で、口紅化粧料を用いた口唇の質感や印象の制御方法は、メイクアップア−ティストによって日々様々な塗布テクニックが考案されている。例えば、複数の口紅化粧料を駆使して、ひとつの口紅化粧料を口唇全体に塗布し、別の口紅化粧料を口唇中央部に塗布するテクニックなどが知られている。
【0004】
しかし、口唇の質感や印象は口唇の平均色や平均的な質感だけでなく、色が口唇上でどのように変化しているかにも強く影響されるために、唇の色や質感を一様に制御する従来の口紅化粧料、並びにその評価法は十分では無かった。また、複数の口紅化粧料を駆使したテクニックによる質感や印象の制御は、使用者に高い熟練度を要し、かつ手間がかかるという問題があった。
【0005】
また一方で、口唇は加齢によって血色が悪く、透明感が低くなり、見た目の若々しさが損なわれる。言い換えれば、口唇を血色が透き通ったような仕上がりに演出することで、口唇に見た目の若々しさを付与することができる。ここで血色のよさとは、赤みの強さ、より具体的にはL*a*b*色空間におけるa*値の高さと定義することができる。一方で透明感については、さまざまな要素によって生じることが知られている。例えば、非特許文献1では、透明感を生じさせる様々な要素が報告されており、立方体を用いたデモンストレ−ションによって、面上に彩度のグラデ−ションが存在することによって透明感が生じることが示されている。つまり、赤みの強い色と彩度のグラデ−ションを組み合わせることによって血色のよさと透明感を共に表現することが可能であり、血色が透き通ったような仕上がりが演出し得る。しかしながら、このような組み合わせを口紅化粧料に適用した例は報告されておらず、またどのように実現することができるかは不明であった。
【0006】
【特許文献1】特開2001−288039号公報
【特許文献2】特許5185142号公報
【非特許文献1】“Low−Level Image Cues in the Perception of Translucent Materials”,ROLAND and HEINRICH,ACM Transactions on Applied Perception, Vol.2, No.3, July 2005, P346−382.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、特別なテクニックを要さずに簡易に血色が透き通った様な仕上がりを演出できる口紅化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、本願発明者等は、少なくとも3種の赤みを有し、さらには口紅化粧料の隠蔽度を落とさずに赤みの強さのみが段階的に変化した口紅化粧料が一定方向に配列された多色口紅化粧料を用いて、赤みを段階的に口唇内側であるほど強く、輪郭側であるほど弱くするように塗布することによって血色が透き通った様な仕上がりを演出できることを見出し、本願発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0009】
本願発明の多色口紅化粧料は、少なくとも3種の口紅化粧料が一定方向に配列するために、口唇内側から輪郭にかけて、少なくとも3種の口紅化粧料を別々に付着させる効果を有し、口唇の色を段階的に演色するための特別なテクニックを必要としない。さらに、赤みの強さのみが段階的に異なるために、赤みの強い色と彩度のグラデ−ションを有する口唇へと演色する効果を有し、若々しく血色が透き通った様な仕上がりを演出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本願発明の化粧方法を示す概念図である。
図2】本願発明の口紅化粧料の一例の製造方法を示す説明図である。
図3】本願発明の口紅化粧料の一例である。
図4】実施例の測色方法を示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本願発明の多色口紅化粧料は、少なくとも3種の赤みを有し、さらには口紅化粧料の隠蔽度0.71〜0.76の範囲であり、赤みの強さのみが段階的に変化した口紅化粧料が、一定方向に、かつ段階的に配列された多色口紅化粧料であって、この多色口紅化粧料を用いて口唇内側から輪郭にかけて、少なくとも3種の口紅化粧料を別々に付着させることによって、赤みを段階的に口唇内側であるほど強く、輪郭側であるほど弱くするように塗布すると、口唇の内部と輪郭部における赤味の差として、L*a*b*色空間におけるa*値の差分であるΔa*値を算出したとき、塗布後の仕上がりにおけるΔa*値が何も塗布していない唇のΔa*値よりも高くなる多色口紅化粧料、である。
【0012】
前記赤みおよび隠蔽度は、例えば、口紅化粧料に含まれる赤色顔料の割合を変更したり、または、白色の顔料を一定量配合することによって制御することができる。具体的には、例えば、口紅化粧料に含まれる赤色顔料の割合を高くするほど、赤みを強く、隠蔽度を高くすることができる。また、白色の顔料を配合し、その配合割合を高くするほど、隠蔽度を高くしながら赤みを弱くすることができる。また、顔料の割合を低くするほど隠蔽度を低くすることができる。
【0013】
本願発明の多色口紅化粧料は、図1に示すように、口唇内側から輪郭にかけて、少なくとも3種の口紅化粧料を別々に付着させることによって、赤みを段階的に口唇内側であるほど強く、輪郭側であるほど弱くするように塗布できることを特徴とする。この特徴は、前記赤みが段階的に異なることによって実現することができる。
【0014】
本願発明の多色口紅化粧料は、口唇の内側部と輪郭部における赤みの差として、L*a*b*色空間におけるa*値の差分であるΔa*値を算出したとき、塗布後の仕上がりにおけるΔa*値が何も塗布していない唇のΔa*値よりも高める効果を有することを、判定基準として選出することができる。Δa*値の算出方法としては、例えば、前記口紅化粧料が塗布された口唇をデジタルカメラなどにより撮影し、画素値をL*a*b*色空間に変換し、口唇の内側部と輪郭部のa*値の差分を算出する方法を採用することができる。また赤みの差分としては、Δa*値の他、L*C*h色空間におけるC*値の差分であるΔC*値や、HSV色空間におけるS値の差分であるΔS値など、一般に用いられる種々の彩度値を採用することもできる。また測色部位としては、上唇、下唇のどちらも選択することができるが、下唇の方を選択することがより好ましく、また水平方向において、口角側の領域、中央部の領域のどちらも選択することができるが、中央部の領域を選択することがより好ましい。
【0015】
本願発明の多色口紅化粧料は、塗布後の口唇内側から輪郭にかけて赤みが段階的に異なる事以外に色の制限は無く、本願発明の効果を損なわない範囲で、自由に設定することができる。例えば、全体に青みがかった色としてもよいし、全体に明るい色としてもよい。
【0016】
本願発明の多色口紅化粧料は、各口紅化粧料の反射特性に制限は無く、本願発明の効果を損なわない範囲で、自由に設定することができる。例えば、鏡面反射を抑制してマットな質感にしてもよいし、鏡面反射を高くしてツヤのある質感にしてもよい。また、それらを口紅化粧料ごとに別々に設定してもよい。
【0017】
本願発明の多色口紅化粧料は、口紅化粧料の数は3種以上である以外に制限は無く、また各口紅化粧料の大きさが均等である必要はない。そのため、本願発明の効果を損なわない範囲で、自由に設定することができる。例えば、口紅化粧料の数を3種と設定し、各口紅化粧料の大きさの比率を1:1:1としてもよいし、2:1:1としてもよい。但し、設計、製造の容易性を鑑みた場合には、口紅化粧料の数は3〜8種であること、大きさの比率は均等または均等に近い比率であること、がより好ましい。
【0018】
本願発明の多色口紅化粧料は、棒状化粧料の形態を採用することができる。例えば、直径5〜20mmの円柱形状を立てた場合における縦方向に、3層以上に分割し、各分割形状に成型した口紅化粧料を並列させてなる棒状化粧料とすることができる。棒状化粧料にすることで、既存の棒状化粧料と同様に、棒状化粧料用容器に本願発明の多色口紅化粧料を装填し、容器を手に持って操作性よく使用することができる。
【0019】
本願発明の多色口紅化粧料は、上述の棒状化粧料とする形態のほか、化粧用ブラシを用いて、多色口紅化粧料を化粧用ブラシに付着させる際に別々の口紅化粧料を付着させるように配列されたプレ−ト型の形態を採用することもできる。すなわち、口唇に塗布する際に口唇の内側から輪郭側にかけて3種以上の別々の口紅化粧料を塗布し得る種々の形態を採用することができる。
【0020】
前記口紅化粧料は、本発明の効果を損なわない範囲で、各種成分、例えば、油性成分、粉体、界面活性剤、紫外線吸収剤、皮膜形成剤、褪色防止剤、酸化防止剤、消泡剤、美容成分、防腐剤、香料などを各種の効果を付与するために適宜配合することができる。
【0021】
油性成分としては、動物油、植物油、合成油等の起源、及び、固形油、液体油の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコ−ル類、シリコ−ン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類等が挙げられ、基剤やエモリエント成分等として用いられる。
【0022】
粉体成分としては、球状、板状、針状等の形状、煙霧状、微粒子、顔料級等の粒子径、多孔質、無孔質等の粒子構造等により特に限定されず、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられ感触調整や着色等の目的で用いられる。
【0023】
界面活性剤としては、化粧品一般に用いられている界面活性剤であればよく、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、粉体分散や感触調整等に用いられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、ポリアミン及びアルカノ−ルアミン脂肪酸誘導体、アルキル四級アンモニウム塩、環式四級アンモニウム塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アミノ酸タイプやベタインタイプのカルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型のものがあり、人体に対して安全とされるものが使用できる。
【0024】
紫外線散乱剤としては、特に制限されないが、例えば酸化鉄、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、ケイ酸チタン、ケイ酸亜鉛、無水ケイ酸及びケイ酸セリウム等の無機化合物や、それらの無機化合物をマイカやタルク等の無機粉体に被覆したり、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、ナイロン等の樹脂粉体に複合化したもの、さらにシリコン油や脂肪酸アルミニウム塩等で処理したものが挙げられる。また有機系紫外線吸収剤としては、例えばパラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸メチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル、サリチル酸エチレングリコ−ル、サリチル酸フェニル、サリチル酸オクチル、サリチル酸ブチルフェニル、サリチル酸ホモメンチル、メトキシケイ皮酸オクチル、メトキシケイ皮酸エトキシエチル、ジメトキシケイ皮酸モノエチルヘキサン酸グリセリル、ヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、ブチルメトキシベンゾイルメタン、オクチルトリアゾン等が挙げられることができる。
酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロ−ル、アスコルビン酸等、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノ−ル等が挙げられる。
【実施例】
【0025】
以下に実施例を挙げて本願発明を具体的に説明するが、本願発明の多色口紅化粧料、及び多色口紅化粧料の製造方法を限定するものではない。
【0026】
表1は、以下に説明する実施例1、参考例1〜3、および比較例1〜3における、ビュ−ラックス社製肌色バイオスキンプレ−トに各口紅化粧料を塗布したときの塗布色値および隠蔽度、および何も塗布していない状態の色の値を示す。各口紅化粧料の塗布色値の取得方法としては、肌色バイオスキンプレ−トに実施例1、参考例1〜3、および比較例1〜3における各口紅化粧料を塗布したものを、北窓昼光下でデジタルカメラにより、ベア−メディック社製のカラーチャートであるキャスマッチと共に撮影し、Adobe社製Photoshop CS2で補正して得た画素値をL*a*b*表色系に変換して得た。また隠蔽度の取得方法としては、色の異なる2色のバイオスキンプレ−トについて、同様に各口紅化粧料の塗布、L*a*b*値の取得を行い、バイオスキンプレ−ト間の未塗布の色差ΔE、塗布後の色差ΔE、を用いて、下記の式によって得た。
(式)隠蔽度=1.0 − ΔE/ΔE
【0027】
【表1】
【0028】
実施例1、参考例1〜3、および比較例1〜3は、以下の工程、または以下の工程から一部の工程を省略した工程によって得た。
1.表1に記載の塗布色を有する口紅化粧料1〜4を各々調製し、
2.円柱形状を成型するための円柱の半割型2個(以降、半割型A、半割型Bと呼ぶ)について、それぞれ半割型凹部のさらに半分を埋める凸状シリコン型を装着し、
3.前記半割型Aの空隙部(図2a参照)に口紅化粧料1を充填し、前記空隙部以外に付着した口紅化粧料1をゴム製ヘラで除去し、冷凍庫にて冷却固化させ、前記凸状シリコン型を取り外し、
4.前記半割型Bの空隙部に口紅化粧料4を充填し、以降同様に空隙部以外に付着した口紅化粧料の除去、冷却固化、凸状シリコン型の取り外しを行い、
5.口紅化粧料1が充填された前記半割型Aに平面状のシリコン型を装着し、口紅化粧料1と平面上シリコン型の間に生じる空隙部(図2b参照)に口紅化粧料2を充填し、以降同様に空隙部以外に付着した口紅化粧料の除去、冷却固化、平面状シリコン型の取り外しを行い、
6.口紅化粧料1および2が充填された前記半割型Aと、口紅化粧料4が充填された前記半割型Bを重ね合わせ、口紅化粧料2と4の間に生じる空隙部に口紅化粧料3を充填し(図2c参照)、以降同様に空隙部以外に付着した口紅化粧料の除去、冷却固化を行った後に、
7.前記半割型を外して、口紅化粧料1〜4が並列してなる多色口紅化粧料を得る。
【0029】
参考例1
前記工程の口紅化粧料1〜4について、表1の参考例1の欄に示す塗布色を有する各口紅化粧料を調製し、前記工程により、多色口紅化粧料を得た(図3参照)。これらの口紅化粧料は、口紅化粧料中の顔料の配合比率を変更することによって隠蔽度を段階づけ、顔料中の赤色顔料、白色顔料の配合比率を変更することによって顔料の赤みの強さにも段階をつけたものである。
【0030】
実施例1
前記工程の口紅化粧料1〜4について、表1の実施例1の欄に示す塗布色を有する各口紅化粧料を調製し、前記工程により、多色口紅化粧料を得た。実施例1の口紅化粧料1は、参考例1の口紅化粧料1と共通し、口紅化粧料2〜4については顔料中の赤色顔料、白色顔料の配合比率を変更することによって隠蔽度を落とさずに顔料の赤みの強さのみを段階づけたものである。
【0031】
参考例2
前記工程の口紅化粧料1〜4について、表1の参考例2の欄に示す塗布色を有する各口紅化粧料を調製し、前記工程により、多色口紅化粧料を得た。参考例2の口紅化粧料1は、参考例1の口紅化粧料1と共通し、口紅化粧料2〜4については口紅化粧料中の顔料の配合比率を変更することによって隠蔽度のみを段階づけたものである。
【0032】
参考例3
前記工程の口紅化粧料1〜4について、表1の参考例3の欄に示すように、口紅化粧料1、2を参考例1における口紅化粧料2のみで構成し、口紅化粧料3,4を参考例1における口紅化粧料3,4と共通させ、前記工程の一部を省略した工程により、3層からなる多色口紅化粧料を得た。
【0033】
比較例1
前記工程の口紅化粧料1〜4について、表1の比較例1の欄に示すとおり、全ての口紅化粧料を顔料の赤みが強く、隠蔽度が高い口紅化粧料である参考例1における口紅化粧料2のみで構成し、前記工程の一部を省略した工程により、単一層からなる口紅化粧料を得た。
【0034】
比較例2
前記工程の口紅化粧料1〜4について、表1の比較例2の欄に示すとおり、全ての口紅化粧料を顔料の赤みが弱く、隠蔽度が低い口紅化粧料である参考例1における口紅化粧料4のみで構成し、前記工程の一部を省略した工程により、単一層からなる口紅化粧料を得た。
【0035】
比較例3
前記工程の口紅化粧料1〜4について、表1の比較例3の欄に示すとおり、口紅化粧料1、2を参考例1における口紅化粧料2のみで構成し、口紅化粧料3、4を参考例1における口紅化粧料3のみで構成し、前記工程の一部を省略した工程により、2層からなる多色口紅化粧料を得た。
【0036】
実施例1、参考例1〜3、および比較例1〜3についてそれぞれ口唇に塗布し、モリテックス社製のフェイシャルステ−ジにて撮影し、評価用画像とした。このとき、実施例1、参考例1〜3、および比較例3については、口紅化粧料1を最も口唇内側に、口紅化粧料2から順に輪郭側になるように向けて一塗りで塗布した。
【0037】
評価用画像から口唇内側部と輪郭部(図4参照)の画素値を基に算出した口唇内側部と輪郭部の赤みの差であるΔa*値および、10名の専門家による、透明感、血色のよさ、自然さ、若々しさの4項目について、1〜5のスコアで官能評価した。その結果の平均値を、「4.0以上:◎」、「3.0以上4.0未満:○」、「2.0以上3.0未満:△」、「2.0未満:×」として、表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
表2に示すように、実施例1及び参考例1〜3の口紅化粧料は、塗布後の仕上がりにおけるΔa*値が何も塗布していない唇のΔa*値よりも高める効果を有し、透明感、血色のよさを共に高め、若々しい印象を付与する。比較例1については、血色のよさを高める効果を有するものの、透明感を損なうものであった。また比較例2については、自然さや透明感において改善効果を有するものの、血色を損なうものであった。また比較例3については、Δa*値を高める効果を有するものの、境目が明確に認識されたために、不自然さを引き起こした。この不自然さは塗布方法を工夫することによって回避し得るものの、熟練度を要した。
【符号の説明】
【0040】
(1)半割型
(2)凸状シリコン型
(3)空隙部
(4)平面状シリコン型
(5)口紅化粧料1
(6)口紅化粧料2
(7)口紅化粧料4
(8)口唇内側部
(9)口唇輪郭部
図1
図2
図3
図4