特許第6151094号(P6151094)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6151094
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/02 20060101AFI20170612BHJP
   D06F 25/00 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   D06F33/02 N
   D06F25/00 A
   D06F33/02 J
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-119389(P2013-119389)
(22)【出願日】2013年6月6日
(65)【公開番号】特開2014-236766(P2014-236766A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2015年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立アプライアンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 真理
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 好博
(72)【発明者】
【氏名】松本 幸司
(72)【発明者】
【氏名】林 正二
【審査官】 伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−030740(JP,A)
【文献】 特開2010−035953(JP,A)
【文献】 特開平10−201985(JP,A)
【文献】 特開2002−166089(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 1/00−51/02
58/00−60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類を収容する洗濯兼脱水槽と、該洗濯兼脱水槽を内包する外槽と、該外槽を収容する
筺体と、前記洗濯兼脱水槽を回転駆動する駆動機構と、該駆動機構を制御する制御手段を
備えた洗濯機において、
運転中に操作できる入力手段と、
前記入力手段による操作があったときの前記洗濯兼脱水槽の回転速度を記録する回転速度記録手段と、を有し、
前記制御手段は、前記回転速度記録手段に記録された前記洗濯兼脱水槽の回転速度で運転する時間を、前記入力手段が操作されなかった場合と比べて短くすることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
衣類を収容する洗濯兼脱水槽と、該洗濯兼脱水槽を内包する外槽と、該外槽を収容する筺体と、前記洗濯兼脱水槽を回転駆動する駆動機構と、該駆動機構を制御する制御手段を備えた洗濯機において、
運転中に操作できる入力手段と、
前記入力手段による操作があったときの前記洗濯兼脱水槽の回転速度を記録する回転速度記録手段と、を有し、
前記制御手段は、前記回転速度記録手段に記録された前記洗濯兼脱水槽の回転速度で運転するときの加速率または減速率を、前記入力手段が操作されなかった場合と比べて大きくすることを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
衣類を収容する洗濯兼脱水槽と、該洗濯兼脱水槽を内包する外槽と、該外槽を収容する筺体と、前記洗濯兼脱水槽を回転駆動する駆動機構と、該駆動機構を制御する制御手段を備えた洗濯機において、
運転中に操作できる入力手段と、
前記入力手段による操作があったときの前記洗濯兼脱水槽の回転速度を記録する回転速度記録手段と、を有し、
前記回転速度記録手段に記録された前記洗濯兼脱水槽の回転速度の±100r/min以内では、前記洗濯兼脱水槽の回転速度を一定に保持せず加速又は減速させることを特徴とする洗濯機。
【請求項4】
衣類を収容する洗濯兼脱水槽と、該洗濯兼脱水槽を内包する外槽と、該外槽を収容する筺体と、前記洗濯兼脱水槽を回転駆動する駆動機構と、該駆動機構を制御する制御手段を備えた洗濯機において、
運転中に操作できる入力手段と、
前記外槽または前記筺体の振動を検知する振動検知手段と、
該振動検知手段の出力を記録する振動記録手段と、
衣類の片寄りによるアンバランスの大きさを判定するアンバランス量判定手段を有し、
前記制御手段は、運転中に前記入力手段が操作された場合、その時点で前記振動検知手段が検知した振動の出力を前記振動記録手段に記録し、その値に応じて、アンバランス量判定を行う判定値、前記洗濯兼脱水槽の回転速度、の少なくとも一つを変更することを特徴とする洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗濯機,例えばドラム式洗濯乾燥機では、洗濯兼脱水槽であるドラム内の衣類分布に偏りが生じていると、この偏りが加振力となりドラムが回転する際に振動が発生する。この振動は、ドラム、外槽、モータなどの部品から成る振動部によるものであり,振動部から筺体,筺体から床へと伝達する。洗濯機が脱水運転を行っている際の振動で課題となるものは,外槽の振動,筺体の振動,洗濯機が設置されている床の振動,そして洗濯機が設置されている家の各部の振動がある。外槽や筺体,床などはそれぞれが共振する共振周波数が存在する。共振周波数で加振されると,他の周波数で加振される場合に比べて振動が大きくなる。従って,振動させたくない物の共振周波数を避けて洗濯機を運転する事が重要となる。すなわち,外槽,筺体,床などの共振周波数となるドラムの回転速度を避けた運転を行う。
【0003】
しかし,一般的に脱水回転速度よりも外槽や筺体が共振する回転速度(以下,共振回転速度)が小さいため,脱水回転速度に加速する間に外槽や筺体の共振回転速度を通過することになる。そこで,外槽や筺体の共振回転速度で回転する時間を短縮することで振動を低減する方法が提案されている。外槽の共振回転速度はこの外槽の防振支持機構の影響を受けるため,製造段階で外槽の共振回転速度で回転する時間を短くするように制御するソフトを作成することは可能である。一方,筺体の共振回転速度は設置される床の影響を受け,床が柔らかい程低くなる傾向がある。しかし、製造段階においては、当然ながら、洗濯機がどこに設置されるかを把握できない。
【0004】
そこで,特許文献1に記載の洗濯機では,筐体の振動を検出する検出手段の出力に基づいて筐体の共振回転速度を測定し、この測定結果に基づいて駆動手段を制御する方法が提案されている。
【0005】
また,特許文献2に記載の洗濯機では,本体の設置条件を入力する設置条件入力手段を備え,脱水工程時に,回転ドラムをその内周壁に洗濯物が張り付き易い第1の所定の回転速度まで立ち上げ,内周壁に洗濯物が均等に張り付いているか否かの布バランス判定を実行し,布バランス判定でバランス良好でないと判定された時は布バランス判定動作を繰り返し,良好と判定されたときは回転ドラムを脱水回転速度で運転し,バランス判定を行う際の判定値を設置条件に応じて変更している。例えば,木造住宅等振動の影響を受け易い所に設置された場合に不要に振動が大きくなって脱水運転が中断するのを抑制したり,鉄筋コンクリート住宅のように振動の影響を受けにくい所に設置された場合に布バランス判定を繰り返して全体時間が長くなるのを抑制したりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−35953号公報
【特許文献2】特開2005−319154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1のように,筺体にセンサを設置することで,洗濯機が設置されている場所の振動は測定できるが,洗濯機が設置されている場所以外の部分で共振が発生した場合には,その振動を検出することができない。すなわち,床の硬さに依存する筺体の共振回転速度は把握できるが、家の各部の共振回転速度は把握する事が出来ない。
【0008】
また,上記特許文献2についても,洗濯機が設置されている場所以外の部分の共振回転速度を判断しないため,その共振回転速度でドラムが回転する時間を短縮する事は難しい。さらに,この特許文献2には,柔らかい床ほど脱水回転速度を低下して振動を抑え,低い回転速度でも脱水が完了するように時間を延長することも記載されているが,設置した床が柔らかいと,硬い床に設置した場合に比べて,運転が終了するまでの時間が長くなってしまう。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので,洗濯機の振動が建物に伝わり,洗濯機を設置している床以外の床などで共振が発生する可能性があるような場合でも,快適な運転を行える洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような従来の課題を解決するために,本発明は,その一例として、衣類を収容する洗濯兼脱水槽と、該洗濯兼脱水槽を内包する外槽と、該外槽を収容する筺体と、前記洗濯兼脱水槽を回転駆動する駆動機構と、該駆動機構を制御する制御手段を備えた洗濯機において、運転中に操作できる入力手段と、前記入力手段による操作があったときの前記洗濯兼脱水槽の回転速度を記録する回転速度記録手段と、を有し、前記制御手段は、前記回転速度記録手段に記録された前記洗濯兼脱水槽の回転速度で運転する時間を、前記入力手段が操作されなかった場合と比べて短くする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、洗濯機が設置されている床以外の部分が共振する可能性があるような場合でも,快適な運転を行える洗濯機を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態を示す洗濯乾燥機の外観斜視図である。
図2図1に示す洗濯乾燥機の内部の構造を示すために筐体の一部を切断して示した斜視図である。
図3図1に示す洗濯乾燥機の内部の構造を示すために背面カバーを取り外した背面図である。
図4図1に示す洗濯乾燥機の内部の構造を示す側面図である。
図5】第1の実施形態の制御を示すブロック図である。
図6】従来の洗濯機の経過時間とドラムの回転速度,および経過時間と筺体振動の関係を示す模式図である。
図7】第1の実施形態における,経過時間とドラムの回転速度,および経過時間と筺体振動の関係を示す模式図である。
図8】第1の実施形態の洗濯機の制御を示すフローチャートである。
図9】第2の実施形態の制御を示すブロック図である。
図10】第2の実施形態の制御を示すフローチャートである。
図11】第3の実施形態の制御を示すブロック図である。
図12】第3の実施形態の上部構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0014】
<実施形態1>
図1は第1の実施形態に係る洗濯機の外観斜視図である。図2は内部の構造を示すために筐体の一部を切断して示した斜視図、図3は内部の構造を示すために背面カバーを取り外した背面図、図4は内部の構造を示す側面図である。
【0015】
外郭を構成する筐体1は、ベース1gの上に取り付けられており、左右の側板1a、1b、前面カバー1c、背面カバー1d、上面カバー1e、下部前面カバー1fで構成されている。左右の側板1a、1bと、ベース1gを含めて箱状の筐体1を形成し、十分な強度を有している。さらに,強度を向上させるために,図示しないが前部と上部にそれぞれ前補強材と上補強材を設けている。
【0016】
ドア2は前記前面カバー1cの略中央に設けた衣類を出し入れするための開口部を塞ぐためのもので、前記前補強材に設けたヒンジ(図示せず)で開閉可能に支持されている。ドア開放ボタン2aを押すことでロック機構が外れて前記ドア2が開き、前記ドア2を前面カバー1cに押し付けることでロックされて閉じる。
【0017】
筐体1の上部中央に設けた操作・表示パネル3は,操作スイッチ4,運転中に入力する事ができる入力手段である固有値入力手段5,表示器6を備える。操作スイッチ4は,電源スイッチ4a,スタートスイッチ4b,コース選択スイッチ4cなどにより構成される。操作・表示パネル3は筐体1下部に設けた制御装置7に電気的に接続している。
【0018】
本実施形態では,図2に示す様に円筒状の洗濯兼脱水槽をドラム8で示す。このドラム8は回転可能に支持されており、その外周壁および底壁に通水および通風のための多数の貫通孔(図示せず)を有し、前側端面に衣類を出し入れするための開口部8aを設けてある。開口部8aの外側にはドラム8と一体の流体バランサ8cを備えている。外周壁の内側には軸方向に延びるリフタ8bが複数個設けてあり、洗濯,乾燥時にドラム8を回転すると、衣類はリフタ8bと遠心力で外周壁に沿って持ち上がり、重力で落下するように動きを繰り返す。ドラム8の回転中心軸は、水平または開口部8a側が高くなるように傾斜している。
【0019】
円筒状の外槽10は、ドラム8を同軸上に内包し、前面は開口部10bを有し、後側端面の外側中央にモータ9を取り付ける。モータ9の回転軸は、外槽10を貫通し、ドラム8と結合している。
【0020】
開口部10bと前補強材に設けた開口部は、ゴム製のベローズ11で接続しており、前記ドア2を閉じることで外槽10を水封する。外槽10の底面最下部には、排水口10dを設けており、排水ホース12が接続している。排水ホース12の途中には排水弁を設けており、排水弁を閉じて給水することで外槽10に水を溜め、排水弁を開いて外槽10内の水を機外へ排出する。
【0021】
外槽10は、下側を前記ベース1gに固定されたサスペンション13(コイルばねとダンパで構成)で防振支持されている。また、外槽10の上側は上補強材に取り付けた補助ばね(図示せず)で支持されており、外槽10の前後方向への傾斜を抑制している。外槽10の下部には振動センサ10eを設置しており,振動センサ10eの出力からドラム8の回転速度の制御を行う。
【0022】
図2に示す洗剤容器14は筐体1内の上部左側に設けており、前部開口から引き出し式の洗剤トレイ15を装着する。洗剤類を入れる場合は、洗剤トレイ15を図1の二点鎖線で示すように引き出す。
【0023】
洗剤容器14の後ろ側には、給水弁16や風呂水給水ポンプ17,水位センサなど給水に関連する部品を設けている。洗剤容器14は、外槽10にホースなどで接続されている。給水弁16は多連弁で、洗剤容器14や外槽10に設けているシャワー出口(図示せず)へ給水する。カバー1eには、水道栓からの給水ホース接続口16a,風呂の残り湯の吸水ホース接続口17aを設けている。
【0024】
図4に示す乾燥ダクト18は筐体1の背面内側に縦方向に設置され、ダクト下部は外槽10の背面下方に設けた吸気口にゴム製の蛇腹管18aで接続される。乾燥ダクト18内は、水冷除湿機構を内蔵しており、給水弁16から水冷除湿機構へ冷却水を供給する。冷却水は乾燥ダクト18の壁面を伝わって流下し吸気口から外槽10に入り排水口10dから排出される。
【0025】
乾燥ダクト18の上部は、筐体1内の上部右側に前後方向に設置したフィルタダクト19に接続している。フィルタダクト19の前面には開口部を有しており、この開口部に引き出し式の乾燥フィルタ20を挿入してある。乾燥ダクト18からフィルタダクト19へ入った空気は、乾燥フィルタ20のメッシュフィルタに流入し,糸くずが除去される。また、フィルタダクト19の乾燥フィルタ20挿入部の下面には開口部を設けており、この開口部は吸気ダクト21が接続しており、吸気ダクト21の他端は送風ユニット22の吸気口と接続している。
【0026】
送風ユニット22は、駆動用のモータ22a,羽根車(図示せず)、ファンケース22bで構成されている。ファンケース22bはヒータ23を内蔵しており、羽根車から送られる空気を加熱する。送風ユニット22の吐出口は温風ダクト24に接続する。温風ダクト24は、ゴム製の蛇腹管24aを介して外槽10に設けた温風吹き出し口25に接続している。本実施形態では、送風ユニット22を筐体1内の上部右側に設けているので、温風吹き出し口25は外槽10の右斜め上の位置に設け、温風吹き出し口25までの距離を極力短くするようにしている。
【0027】
乾燥運転時の風の流れは次のようになる。送風ユニット22を運転し、ヒータ23に通電すると、温風吹き出し口25からドラム8内に高速の温風が吹き込み(矢印31)、湿った衣類に当たり、衣類を温め衣類から水分が蒸発する。高温高湿となった空気は、ドラム8に設けた貫通孔(図示せず)から外槽10に流れ、吸気口から乾燥ダクト18に吸い込まれ、乾燥ダクト18を下から上へ流れる(矢印32)。乾燥ダクト18の壁面には、水冷除湿機構からの冷却水が流れ落ちており、高温高湿の空気は冷却水と接触することで冷却除湿され、乾いた低温空気となりフィルタダクト19へ入る(矢印33)。フィルタダクト19に設けたメッシュフィルタ(図示せず)を通り糸屑が取り除かれ、吸気ダクト21に入り、送風ユニット22に吸い込まれる(矢印34)。そして、ヒータ23で再度加熱され、ドラム8内に吹き込むように循環する。
【0028】
図5にこの洗濯乾燥機の各工程を制御する制御部を示す。図に示すように制御部はマイクロコンピュータ(以下、マイコンと記す)41を中心に構成される。これに予め記録されたプログラムにより、操作・表示パネル3,振動センサ10e,回転速度検出装置42からの入力に基づき、給水弁16,排水弁12a,モータ9などを制御し、洗い,すすぎ,乾燥工程の動作を行う。モータ9はモータ駆動回路43を介して駆動される。
【0029】
また、マイコン41はドラム8の回転速度の上昇パターンである起動パターンデータベース44や判定値データベース45などのデータベースを保存しており、回転速度算出部46,布量センシング部47,アンバランス量検知部48,回転速度記録部49を持つ。起動パターンデータベース44に記録されている起動パターンは,ドラム8の回転速度を上昇させる際の回転速度,回転速度の上昇率,時間のデータであり,モータ駆動回路43は起動パターンデータベース44に記録されている起動パターンに従い,ドラム8の回転速度を上昇させる。
【0030】
回転速度算出部46は回転速度検出装置42からの信号を基に回転速度を算出する。回転速度記録部49は固有値入力手段5の入力に基づき,ドラム8の回転速度を記録する。制御パターン判定部50は回転速度記録部49に記録されている回転速度を元に,起動パターンデータベース44から最適な起動パターンを選択する。
【0031】
図6から図7を用いて脱水時の振動について詳しく説明する。床の振動はドラムの回転速度の上昇に伴い増加し,床が共振する回転速度で最大となり,さらに回転速度を上昇させると徐々に減少する。従来,脱水は700r/min以上で行うことが多く,脱水を行う回転速度以下の回転速度で床の共振が発生する場合がある。共振していると振動が大きくなるため,その回転速度で長時間運転を行うことは使用者が不快に感じる原因となる。一般的にこのように共振が発生する場合には,共振回転速度での運転時間を極力短くする。この方法は床の共振回転速度が分かっている状態であれば非常に有効な手段である。
【0032】
しかし,床が共振する回転速度は床の硬さによって変化し,床が硬いほど高くなる。床の硬さは家の構造や階層などによって変わるため,製造段階で洗濯機が設置される床の共振回転速度を把握し,前記駆動機構を適切に制御することは困難である。
【0033】
図6に470r/minと700r/minに一定時間を持つ起動パターンを一例として示す。ここで,回転速度を上昇する過程で所定の回転速度(以下,保持回転速度)で一定時間を保持するのは,なるべく低い回転速度で衣類を脱水してドラム内の質量を小さくしてから,回転速度を上昇させるためである。また,硬さの異なる床に設置した場合を例として,それぞれの床の共振回転速度は,床(1):480r/min,床(2):580r/min,床(3):680r/minとした。
【0034】
図6(a)では床の共振回転速度と保持回転速度である470r/minが近いために,長時間振動の大きい状態が続いている。一方,保持回転速度を700r/minで一定時間保持している際は床の共振回転速度と離れているため,振動が小さい状態であり問題はない。図6(b)では床の共振回転速度が保持回転速度から離れているため,長時間大きな振動が続くことはない。図6(c)では床の共振回転速度が700r/minの保持回転速度と近いため,振動は大きい状態が一定時間継続する。以上のように,床の硬さを考慮しない場合,設置状態によって床の振動が大きい状態で一定時間運転することになるため,使用者の不快感につながる。
【0035】
そこで,使用者が床の振動を大きいと判断した場合に,固有値入力手段5を使って床の振動が大きいことを洗濯機100に入力する。これにより,制御装置7は固有値入力手段5からの信号が入った際のドラム8の回転速度を記録し,その回転速度で回転する時間を短縮するように制御を行う。例えば,固有値入力手段5が押下された時の回転速度に対して,少なくとも±100r/min以内に保持回転速度を設けず,さらにその回転速度領域におけるドラム8の回転速度の上昇率を高く設定する。前述したように,製造段階で設定した起動パターンでは,図6(c)のように硬い床に設置した場合,共振回転速度と保持回転速度が近い値となり,振動が大きい状態で回転する時間が長くなる場合がある。しかし,前記のような制御を行うことで,図7に示すようなドラム8の起動パターンを変更する事により,使用者が不快と判断する状態で運転する時間を短縮する事が可能になる。このように共振回転速度を把握する事によって,床が柔らかい場合でも,振動を小さく抑えながら,なるべく高い回転速度で衣類の脱水を行う事ができる。従って,運転時間を延長することなく,衣類の水分量を極力低減できるため,洗濯時には衣類を干す時間の延長を防止する。又,洗濯乾燥機における衣類の水分量を極力減らして乾燥運転を行えるので,衣類の乾燥に必要な消費電力量が増加するのを防止する事が出来る。
【0036】
このように,使用者が入力手段により任意に情報を入力することができるため,洗濯機が設置されている床以外においても,所定の部屋の床のみ共振する場合や,部屋に設置された水槽などが共振する場合でも,保持回転速度と共振回転速度をずらした運転をすることが可能となり,低振動な運転を実現する事ができる。
【0037】
図8に本実施形態の制御を示すフローチャートを示す。脱水運転を開始し,まず回転速度記録部49に記録されている共振回転速度ωsを参照する(Step101)。ここで,共振回転速度ωsは,以前の運転において固有値入力手段5が押下された時のドラムの回転速度であり,一度も固有値入力手段5が押下されていない場合には初期値が記録されている。Step102で共振回転速度ωsを元にドラム8の起動パターンを選択する。決定した起動パターンに従い,Step103でドラム8の回転速度を上昇させる。Step104で振動センサ10eによって測定した振動量と予め設定されている判定値を比較し,振動量が小さい場合は,Step105に進み,振動量が大きい場合はドラム8の回転を停止し,再起動を行う。Step105で固有値入力手段5が押下されない場合には,Step108に進む。Step105で固有値入力手段5が押下された場合には,その時の回転速度ωを共振回転速度ωsとして記録する(Step106)。Step107で共振回転速度ωsを元に起動パターンを再決定し,運転を継続する。
【0038】
Step108でドラム8の回転速度と最終脱水回転速度を比較し,最終脱水回転速度に到達している場合には,Step109に進み,到達していない場合にはStep105に戻り,ドラム8の回転速度を上昇させる。Step109では,経過時間と設定時間を比較し,経過時間が大きい場合には,ドラム8の回転を停止し,運転を終了する。経過時間の方が短い場合は,設定時間以上となるまで,脱水を継続する。
【0039】
このように,洗濯機が設置されている部屋以外の床などの共振回転速度ωsを,使用者が固有値入力手段5を押下した時点でのドラム8の回転速度ωから求め,その回転速度で回転する時間を短縮することで,低振動な運転を実現する事ができる。また,共振回転速度ωsの入力は,必ずしも固有値入力手段5を押下したタイミングだけでなく,時刻を入力し,その時の回転速度ωを共振回転速度ωsとしてもよい。また,共振回転速度ωsを直接入力してもよい。この場合,洗濯機にドラム8の回転速度を表示する表示手段を有することがより望ましい。
【0040】
また,必ずしも最終脱水回転速度までドラム8の回転速度を上昇させる必要はなく,最終脱水回転速度付近などで固有値入力手段5が押下された場合は,ドラム8の回転速度を低下させ,振動や騒音を低減してもよい。
【0041】
例えば,所定の回転速度で脱水運転を行っている際に,使用者が居間の床の振動が大きいと感じた際に,固有値入力手段5を押下する。洗濯機は,固有値入力手段が押下された時のドラム8の回転速度を共振回転速度ωsとして記録する。洗濯機は共振回転速度ωsに対して,所定の範囲の回転速度で回転する時間を短縮するため,ドラム8の回転速度を減少もしくは向上させることで避共振化を行うことができ,居間の床の振動を下げることができる。また,この回転速度を記録しているため,以降の運転においても同様に,居間の床の共振回転速度ωsでドラム8が回転する時間を短縮する事が出来る。このように,本実施形態の洗濯機の制御では,洗濯機の運転中にされた入力によって,ドラム8の回転速度の上昇率,減速率,所定の回転速度で回転する時間を変えることができる。なお、固有値入力手段5が操作された場合に、その時点におけるドラム8の回転速度から低下させて、その回転速度を超えない回転速度で以降の脱水運転を継続させるようにしても良い。
【0042】
また,記録するドラム8の回転速度は1つである必要はない。入力された共振回転速度を複数回分記録し,その値から基準となる共振回転速度を決定してもよい。本実施形態の洗濯機では,固有値入力手段5による入力によって,脱水時のドラムの起動パターン,すなわちドラム8の回転速度,回転速度の上昇率,回転速度の減速率,所定の回転速度で回転する時間の少なくとも一つを変更する。
【0043】
本実施形態では,ドラム式洗濯機について述べたが,必ずしもドラム式洗濯機である必要はなく,縦型洗濯機でもよい。なお,洗濯機の設置場所を変更した場合には,設置環境が変化するため,記録している共振回転速度をリセットする手段を設けている。
【0044】
<実施形態2>
第2の実施形態の洗濯機は,運転中に入力する事が出来る入力手段である振動量入力手段51を有し,振動量入力手段51が押下された時の振動量を記録する振動量記録手段52を有し,該振動量記録手段52に記録されている振動量に応じて,アンバランス量判定を行う際の判定値を決定するものである。振動量入力手段51を押下することで,判定値を変更し,それ以上振動が大きくならないように制御する。従って,使用者は洗濯機の振動が大きいと感じた際に,振動量入力手段51を押下することで,運転時の振動を低下させることが可能となる。
【0045】
脱水運転時には,ドラム内に不均一に存在する衣類の偏りに起因するアンバランスが大きいと,アンバランスに発生する遠心力により外槽の振動が過大になる。そこで,外槽の振動が過大になることを防止するために,外槽の振動を振動センサで検出し,アンバランス量を過大であるか判断するアンバランス量判定を行う。アンバランス量判定でアンバランス量が過大と判断した場合にはドラム8の回転を停止し,再度起動する。これにより,振動が過大となるのを防止している。このアンバランス量判定時にアンバランス量が過大であるか判断する基準である判定値を低下させれば,より小さい振動しか発生しなくなる。しかし,アンバランス量判定時の判定値を下げて,発生する振動の上限を低下させると,衣類のバランスを取る工程に掛かる時間が長くなるというデメリットが生じる。そこで,アンバランス量判定をする際の判定値は使用者が許容できる振動量以下に制限でき,かつその範囲でより大きな値とすることが望ましい。これにより,振動の低減だけでなく,衣類を均一にドラム内に張り付ける工程,及び不均一に張り付いた衣類を均一に修正する工程に掛かる時間が必要以上に延長することを防止することができる。
【0046】
従来の洗濯機では,標準となる制御パターン(標準モード)の他に,振動や騒音を小さく抑えたい使用者のために,より静かな運転を行う静音モードなどが提案されている。これは,使用者が静かな運転を行いたい場合に,静音モードを選択することで,標準モードに比べて低振動な運転を行うものである。この場合,静音モードのアンバランス量判定時の判定値を標準モードに比べて小さくし,脱水を行う際に高速まで起動するアンバランス量を小さくなるように制限する。これにより,振動が小さくなり,騒音が低下する。また,他の方法として,脱水時の最高回転速度を低くする方法があり,一般的に騒音はドラムの回転速度が高い程大きくなる傾向があるため,最高回転速度を低く設定するとことで,発生するアンバランス量が同程度であるとしても,騒音値を小さくすることができる。
【0047】
しかしながら,脱水時の振動は洗濯機自体の振動以外にも,洗濯機が設置されている部屋の床や,洗濯機が設置されている部屋とは異なる部屋の床の振動など複数存在する。例えば静音モードを選択することで,振動を低減することが可能となるが,低減したい振動の種類に係わらずアンバランス量判定を行う際の判定値を低下させるため,低減したい振動以外の振動も併せて低減する事になる。この場合必要以上に判定値を低下させることになるため,衣類を均一にドラム内に張り付ける工程,及び不均一に張り付いた衣類を均一に修正する工程に掛かる時間が長くなる。例えば,洗濯機を設置している床の共振が高速脱水時に発生し,使用者が振動を過大と感じた場合,高速脱水時の判定値のみ低下させることが望ましい。これにより低速時の判定値は変わらないため,衣類を均一にドラム内に張り付ける工程,及び不均一に張り付いた衣類を均一に修正する工程が必要以上に延長するのを防止できる。しかし,静音モードを選択すると回転速度領域に係わらず判定値を低下させるため,低速時の判定値も低下し,衣類のバランスを取るための工程に時間がより長くかかってしまう。また,最高回転速度を低下させる方法に関しても,衣類の片寄りが小さい場合でもドラムの回転速度を低下させるため,全ての場合において脱水性能が低下するという課題がある。
【0048】
そこで本実施形態に係わる洗濯機は,使用者が許容する事が出来る振動量を回転速度と併せて入力することで,必要最小限に振動レベルを制限することができるため,使用者が許容することが可能な振動量に抑え,かつ衣類のバランスを取る工程の時間を短くすることができる。ここで,使用者が許容することができる振動量を直接数値として入力する事は困難であるため,本実施形態における洗濯機は運転中に振動量入力手段51を押下された時の振動量とドラム8の回転速度を記録する。この振動量を使用者が許容できない振動量と判断し,それより小さい値を振動量入力手段51が押下された回転速度での判定値とする。これにより,使用者が直接数値を入力することなく,使用者が許容可能な振動量を洗濯機に入力することが出来る。このようにすることで,使用者が大きいと判断した時の振動量を記録することが可能となり,この時の回転速度の振動量を使用者の許容量以下に抑えることができる。
【0049】
図9に第2の実施形態のブロック図を示す。振動量入力手段51が押下された際には,振動センサ10eの出力である振動量Vとドラム8の回転速度ωを振動量記録部52に記録する。判定値設定部53は振動量記録部52に記録されている回転速度および振動量と,起動パターンデータベース44を比較し,判定値を決定する。
【0050】
第2の実施形態の制御方法を図10に示すフローチャートを用いて説明する。脱水運転を開始し,まず振動起動パターン記録部50に記録されている回転速度,振動量を参照し(Step201),Step202で回転速度,振動量を元にアンバランス量を判定する際の判定値V1,V2を決定する。予め記録されている起動パターンに従い,Step203でドラム8の回転速度を上昇させる。Step204で振動量VとStep202で決定した判定値V1を比較し,振動量Vが小さい場合はStep205に進み,振動量Vが大きい場合は,ドラム8の回転を停止し,再起動を行う。Step205で振動量入力手段51が押下されない場合には,Step207進む。Step205で振動量入力手段51が押下された場合には,その時の回転速度ωと,振動量Vを記録し,判定値V1を再決定し,運転を継続する(Step206)。
【0051】
Step207でドラムの回転速度ωが所定の回転速度ω1と比較し,小さい場合はStep203に戻り,大きい場合はStep208に進み,ドラムの回転速度を上昇させる。Step209で振動量判定2を行い,振動量Vと判定値V2を比較し,小さい場合はStep210に進み,大きい場合はStep213に進む。Step210で振動量入力手段51が押下された場合には,Step211でその時の回転速度ωと,振動量Vを記録し,判定値V2を再決定して,運転を継続する。Step212で回転速度ωと最終脱水回転速度を比較し,回転速度ωの方が小さい場合はStep208に戻る。Step213で経過時間と設定時間を比較し,経過時間の方が大きい場合はドラムの回転を停止し,運転を終了する。
【0052】
人が感じる振動は,振動変位の大きさ以外に,周波数によっても感じ方が異なるため,判定値V1,V2をドラム8の回転速度ごとに設けることで,より振動の小さい運転を行うことができる。
【0053】
高速時の判定値を小さくすることで,判定値以上の振動が発生した場合に上昇させる回転速度を低く制限し,振動を小さくすることができるが,回転速度が低くなるため脱水性能が低下する。本発明の制御を用いることで,使用者が許容できる範囲に振動の大きさを抑えながら,高い回転速度で脱水する事ができ,振動の大きさと脱水性能を両立することができる。
【0054】
このような制御をすることにより,所定の回転速度で振動量が大きいと入力された場合には,以降の運転において,大きいと判断した際の回転速度領域において振動量,すなわち衣類の片寄りの大きさと同等以上の片寄りが発生した場合は,最終的な回転速度を低く設定することになり,振動を低減することができる。例えば,布偏りを模擬した任意の重りを設置して脱水を行った際に,振動量入力手段51を用いて振動量が大きいと入力された場合,一度運転を停止し,再度布偏りを模擬した重りを同様に設置したまま脱水運転を行った時には,振動量入力手段51を押下した時のドラムの回転速度よりも,振動が小さくなる回転速度(例えば,振動量入力手段51が押下された時の回転速度よりも100r/min低い回転速度)までしか上昇しない。一方,布偏りを模擬した重りの量を小さくした場合は,振動量入力手段51が押下された時のドラム8の回転速度を基準に,例えば±100r/minの範囲では,回転速度の上昇率を高くして通過させ,より高い回転速度で脱水を行うことができる。
【0055】
一方,振動量入力手段51を押下した時のドラムの回転速度付近の回転速度の判定値を変更するため,回転速度が大きく異なる領域については,アンバランス量判定に関して変更はない。例えば,高速脱水時(1200r/min)に振動量入力手段51が押下された場合は,外槽の共振回転速度などの低い回転速度(例えば,200r/min)でのアンバランス量判定値は変更しないため,衣類を模擬した重りの量が同じであれば,高速脱水時は回転速度を変更するが,低い回転速度では制御の変更は行わない。このように,振動量入力手段51が押下された時の回転速度と振動量を基準としてアンバランス量判定やドラムの回転速度制御を行うため,洗濯機の振動や,床などの家の各部の振動を小さく抑えることが可能となる。
【0056】
また,必ずしも振動が大きいと感じた時に振動量入力手段51を押下する必要はなく,運転終了後などにその時の運転で振動が大きかったことをその時の時刻を振動量入力手段51で入力することで,その時刻での振動量を基準に判定値を決定してもよい。これにより,振動が大きいと感じた際に,洗濯機の近くにいない場合でも,入力が容易になる。また,時刻入力以外に,脱水時の回転速度を複数の段階に分け,それを入力するようにしてもよい。例えば,脱水時のドラムの回転速度が600r/min以下の加速中,600r/min以上の高速脱水中などに分けることでも,目的となる振動モードを判別する事が可能となるため,必要な回転速度領域のみ判定値を変更する事が可能になる。また,操作・表示パネル3にドラムの回転速度と振動量を表示するようにし,その値を使用者がメモするなどし,運転終了後などに回転速度と振動量を入力するようにしてもよい。
【0057】
<実施形態3>
次に第3の実施形態について図11に示すブロック図を用いて説明する。本実施形態に係わる洗濯機は,外部機器201との通信手段202を有し,外部機器201によって測定された振動加速度や騒音値などの情報の入力を可能にする。ここで,外部機器とは,加速度センサや騒音計を有したものであり,通信手段202とは無線,有線のどちらでもよい。外部機器201と通信手段が一体であるものの一例として,USBなどの接続ポートを有する加速度センサや無線内蔵の加速度センサ,さらに携帯電話やスマートフォンなどがある。
【0058】
振動検出手段を備えた外部機器201を居住空間の床などの洗濯機が運転している際に振動が気になる位置に設置し,洗濯機を運転した時の振動を計測し,記録する。記録した振動データを洗濯機200に入力する。洗濯機200は入力された振動データから固有値を計算し,その固有値と同じドラム8の回転速度で回転する時間を短縮する。このように使用者が気になる振動を直接測定することで,洗濯機が設置されている空間の振動だけでなく,家自体が共振し,振動が大きくなることを防止する事ができる。ここで,外部機器201は必ずしも測定した振動を記録する必要はなく,常にデータを転送する形式でもよい。
【0059】
また,必ずしも測定した振動波形を洗濯機に入力する必要はなく,外部機器201が振動波形から共振回転速度を算出し,算出された固有値を操作・表示パネル3にある固有値入力手段203を使って,直接入力してもよい。この場合,固有値入力手段203は数値を入力する手段を有する。本実施形態のブロック図において,通信手段202を操作・表示パネル3の外に設ける構成としているが,操作・表示パネル3上に設けてもよい。
【0060】
また,外部機器201を筺体1に設置し,筺体1の振動を測定することで,筺体1の共振回転速度を検出する事ができ,前記共振回転速度付近の回転速度で運転する時間を短縮することで低振動の運転が可能となる。ここで,外部機器201の固定が重要であり,筺体1と外部機器201に隙間があると,その隙間による振動を筺体1の振動と誤検知する可能性がある。そこで,筺体1上部の構造を拡大して図である図12に示すように,筺体1の上部に外部機器201を接続するためのセンサ固定部203で固定することで,誤検知を低減する事が可能になる。
【0061】
<実施形態4>
本実施形態の洗濯機は,洗濯機の設置環境を入力する設置環境入力手段を有し,設置環境から筺体や床などの共振回転速度を求め記録し,記録されている共振回転速度付近の回転速度でドラムが回転する時間を短縮する。これにより,共振によって振動が大きくなった状態で運転する時間を短縮する事ができ,より低振動な運転を行う事ができる。床が柔らかく,共振回転速度が低い場合には,共振回転速度を通過する際のドラムの回転速度の上昇率を向上させ,より高い回転速度に上昇させて脱水することで,脱水時間の延長を伴わず,脱水後の衣類が含む水の量を極力低減する運転を行う事ができる。
【0062】
運転の流れについて説明する。電源投入後に,設置環境入力手段を用いて,家の構造の種類や洗濯機が設置された階層,何階建てかなどを入力する。洗濯機は入力された設置環境とマイコン内の設置環境データベースを比較し,床などの共振回転速度を求める。運転を開始し,得られた共振回転速度でドラムが回転する時間を短縮するような,つまり回転速度の上昇率を向上させる起動パターンを設定する。ドラムを駆動する駆動機構は,設定された起動パターンに基づき,ドラムの回転速度を上昇させる。共振回転速度付近では,回転速度を一定にする時間を短縮し,回転速度の上昇率を高くする。
【0063】
例えば,設置環境入力手段を用いて,鉄筋,木造などの家の構造の種類や,洗濯機を設置する階層などを入力する。ここで,木造,2階建て,洗濯機を1階に設置と入力する。洗濯機はその設置環境と設置環境データベースを比較して,共振回転速度(例えば600r/min)を求める。脱水運転時には600r/min付近で回転する時間を短縮し,最終的には最高脱水回転速度に到達するように制御する。
【0064】
このように,設置環境で最終的な回転速度を変更するのではなく,共振回転速度を避ける運転をするため,脱水回転速度が低下することによる運転時間の延長を伴わずに衣類の水分量を極力低減できるため,洗濯時には衣類を干す時間の延長を抑制する。又,洗濯乾燥機における衣類の水分量を極力減らして乾燥運転を行えるので,衣類の乾燥に必要な消費電力量が増加するのを防止する事が出来る。
【符号の説明】
【0065】
3 操作・表示パネル
4a 電源スイッチ
4b スタートスイッチ
4c コース選択スイッチ
5 固有値入力手段
6 表示機
8 ドラム
10 外槽
10e 振動センサ
51 振動量入力手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12