特許第6151189号(P6151189)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6151189
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】遷移金属化合物粒子および製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 45/00 20060101AFI20170612BHJP
【FI】
   C01G45/00
【請求項の数】20
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-546535(P2013-546535)
(86)(22)【出願日】2011年12月16日
(65)【公表番号】特表2014-504581(P2014-504581A)
(43)【公表日】2014年2月24日
(86)【国際出願番号】CA2011050780
(87)【国際公開番号】WO2012088604
(87)【国際公開日】20120705
【審査請求日】2014年11月28日
(31)【優先権主張番号】61/428,284
(32)【優先日】2010年12月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/542,974
(32)【優先日】2011年10月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513162996
【氏名又は名称】ヤヴァ テクノロジーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Yava Technologies Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】バーン,トレヴァー
(72)【発明者】
【氏名】ダハル,マダヴ,プラサド
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−500973(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0044345(US,A1)
【文献】 米国特許第05905003(US,A)
【文献】 特開2010−082776(JP,A)
【文献】 特開昭53−021099(JP,A)
【文献】 特開2009−179544(JP,A)
【文献】 米国特許第05788943(US,A)
【文献】 L. Chunling et al.,PREPARATION AND SHAPE CONTROLLING OF SUBMICRON MANGANESE CARBONATE,Journal of the Chinese Ceramic Society,2007年 3月,Vol.35, No.3,p.377-380
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G25/00−47/00,49/10−99/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応チャンバー内で不溶性金属化合物粒子を調製する方法において、前記粒子が、式(TM)(S’)により表され、前記方法が、
金属塩溶液を提供するステップであって、ただし、前記金属塩は、式(TM)(S)を有し、かつMnまたはNi/Mn/Coを含む金属成分(TM)及び溶液中への金属塩の溶解を可能にする対イオン(S)を含み、前記金属塩溶液は0.1M〜5Mの濃度であるステップと;
アニオン性化合物溶液を提供するステップであって、ただし、前記アニオン性化合物は、炭酸塩系の化合物であり、前記アニオン性化合物は、S’により表されるアニオン性成分を含み、前記アニオン性成分は、前記金属成分TMと反応して前記不溶性金属化合物粒子を形成し、前記アニオン性成分は、0.1M〜5Mの濃度であるステップと;
前記金属塩溶液および前記アニオン性化合物を反応チャンバーに添加するステップと;
前記反応チャンバーを0.1〜50W/mLの強度の超音波処理に付して前記不溶性金属化合物粒子を形成するステップと;
を含み、
前記不溶性金属化合物粒子は、球状あるいは疑似球状の形状であり、1.5g/mL〜3.0g/mLまでのタップ密度を有し、および前記粒子の少なくとも90容量パーセントが1μm〜50μmの範囲内にある粒子サイズ分布を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記強度が1W/mL〜5W/mLであることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記強度が3W/mLであることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法において、前記金属塩溶液が、MnSO、Mn(CHCOO)、MnCl、Mn(NO、(Ni1/3Mn1/3Co1/3)SO、(Ni1/3Mn1/3Co1/3)(NO2、Ni1/3Mn1/3Co1/3)Clまたは(Ni1/3Mn1/3Co1/3)(CHCOO)を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法において、前記アニオン性化合物源が、NaCO、NHHCO、(NHCO、NaHCO、KHCO、又はKCO、を含む溶液であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記アニオン性化合物源が、NaCOおよび/またはNHHCOを含む溶液であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法において、前記反応チャンバー内の前記アニオン性化合物対前記金属塩のモル比が1:1.5〜1.5:1であることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記反応チャンバー内の前記アニオン性化合物対前記金属塩のモル比が1:1であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れか1項に記載の方法において、超音波処理が、プローブ先端により、ダイヤフラムの振動により、または反応チャンバー壁に装着された任意の数の超音波トランスデューサーにより提供されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の方法において、前記反応チャンバーがフロースルーチャンバーを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の方法において、生成された前記不溶性金属化合物粒子は、少なくとも90容量パーセントが1μm〜30μmの範囲内、少なくとも90容量パーセントが3μm〜20μmの範囲内、または少なくとも90容量パーセントが3μm〜10μmの範囲内の粒子サイズ分布を有することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の方法において、生成された前記不溶性金属化合物粒子が、1.7g/mL〜2.3g/mLのタップ密度を有することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法において、前記金属塩溶液がMnSOを含み、前記アニオン性化合物源がNaCOおよび/またはNHHCOを含む溶液であり、MnSO対NaCOおよび/またはNHHCOのモル比が1:1.5〜1.5:1であり、かつ粒子が1.7g/mL〜2.3g/mLのタップ密度のMnCOを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか1項に記載の方法において、前記反応チャンバーの容積が300mL以上であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、前記金属塩溶液および前記アニオン性化合物が、互いに10cm超離間して配置された反応剤入口ポートを介して反応チャンバーに添加されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1乃至15の何れか1項に記載の方法において、前記反応チャンバー内の滞留時間が、1秒間〜60分間であるか、または5秒間〜30分間であるか、または10秒間〜5分間であることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1乃至16の何れか1項に記載の方法において、前記反応チャンバーにキレート化剤を添加することをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、前記キレート化剤が、硫酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素、またはそれらの任意の混合物であることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項1乃至18の何れか1項に記載の方法において、前記反応チャンバーが、−20℃〜100℃、0℃〜100℃、30℃〜100℃、または50℃〜100℃の温度であることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項1乃至19の何れか1項に記載の方法において、
前記金属塩溶液は、0.5M〜3M、または1M〜2Mの濃度であり、かつ
前記アニオン性化合物溶液が、0.5M〜3M、または1M〜2Mの濃度であることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的には、金属化合物粒子およびその製造方法に関する。より特定的には、本開示は、遷移金属化合物粒子および超音波処理に基づく製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子サイズ、モルフォロジー、またはその両方の制御は、いくつかの状況下で重要である。ミル処理などのプロセスを用いて粒子を製造した後、粒子サイズに影響を及ぼすことが可能であるが、そのようなプロセスは、材料の性質に有害な影響を及ぼしうる。溶液からの沈殿時または結晶化時、粒子サイズ、モルフォロジー、または他の性質を制御しうる。
【0003】
結晶化または沈殿は、混合後に溶液が過飽和になって結晶化を起こすように、結晶化される活性成分を含有する溶媒を貧溶媒と混合することにより、達成される。沈殿はまた、使用される溶媒中で低減された溶解度を有する生成物を生じる2種以上の反応剤を反応させることにより、達成することも可能である。得られた不溶性反応生成物は、溶液から沈殿または結晶化する。そのような状況下では、反応に使用される溶媒は、反応生成物に対して貧溶媒であるとみなされるであろう。「貧溶媒」という用語は、溶媒からの活性成分の沈殿を促進する流体を意味する。貧溶媒は、溶媒と同一の液体でありうるが、異なる温度で溶媒と異なる液体でありうるものであり、または(2種の反応剤が反応して新しい生成物を生じる場合)反応に使用した溶媒でありうる。
【0004】
超音波照射(または超音波処理)は、粒子の沈殿または結晶化と同時に使用されてきた。たとえば、Hussein OUBANIらは、Asia−Pacific Journal of Chemical Engineering 5(2010)599−608に、NaCl−エタノール−水貧溶媒系からのNaClマイクロ粒子の沈殿を記載しており、L.BOELSらは、Journal of Crystal Growth 312(2010)961−966に、超音波照射下での過飽和方解石懸濁液の結晶化を記載しており、そして西田育子は、Ultrasonics Sonochemistry 11(2004)423−428に、炭酸カルシウムの過飽和溶液の超音波照射を記載している。
【0005】
Hielscher Ultrasonicsは、超音波装置を製造しており、<http://www.hielscher.com/ultrasonics/precipitation_01.htm>に超音波沈殿プロセスを記載している。
【0006】
少なくとも2010年12月20日という早い時期に公的に利用可能であった「Untersuchungen zur Optimierung von kontinuierlichen Ultraschalldurchflussreaktoren」というタイトルのB.POHL、N.OEZYLIMAZ、G.BRENNER、およびU.PEUKERによるポスター発表には、超音波反応器のフローチャンバーのサイズおよびジオメトリーがIおよびBaSOの形成にどのように影響を及ぼすかが記載されている。
【0007】
少なくとも2010年12月20日という早い時期に公的に利用可能であった「Optimierung von Ultraschallfaellungsreaktoren−kontrollierte Nanopartikelherstellung」というタイトルのB.POHL、G.BRENNER、およびU.PEUKERによるポスター発表には、超音波沈殿反応器を用いてFe粒子のアグロメレーションを形成することが可能であると教示されており、この場合、アグロメレートは、20nm〜300nm(キャビテーション場反応器)または20nm〜1μm(円錐反応器)である。
【0008】
超音波照射の化学作用を考察しているレビュー論文は、Kenneth SUSLICKによりScience 247:4949(1990)1439−1445に記載されている。Organic Process Research & Development中のG.RUECROFTらによる他のレビュー論文には、有機分子の結晶化への超音波の適用が考察されており、また、平行板トランスデューサシステムなどの工業環境で使用可能な装置が考察されている。
【0009】
Chunling LUおよびJinglin ZHANGは、The Journal of the Chinese Ceramic Society 35:3(2007)377−380に、約1W/cmの強度を有する超音波浴を用いて硫酸マンガン(MnSO)と重炭酸アンモニウム(NHHCO)との反応を超音波照射に付すことにより400〜500nmの立方晶の炭酸マンガン(MnCO)粒子を形成することを記載している。
【0010】
Ting−Feng YIおよびXin−Guo HUは、Journal of Power Sources 167(2007)185−191に、LiNOとMn(NOとNi(NO・6HOとの超音波支援共沈を用いて均一な粒子サイズのサブマイクロスピネルLiNi0.5−xMn1.5+x(x<0.1)カソード材料を調製することを開示している。沈殿は、50Wおよび28kHzの超音波洗浄器により80℃で5時間超音波処理された。
【0011】
Peizhi SHENらは、Journal of Solid State Electrochemistry(2005)10:929−933に、超音波共沈法を用いてスピネル結晶構造のLiCrMn2−x(x=0、0.02、0.05、0.08、0.10)化合物を調製することを記載している。酢酸リチウム、酢酸マンガン、硝酸第二クロム、およびクエン酸が、水に溶解されて、超音波浴で処理された。
【0012】
米国特許出願公開第2010/0018853号明細書には、超音波照射を用いて医薬用薬剤または他の薬剤の結晶および沈澱物の粒子サイズを制御することを記載している。
【0013】
超音波照射はまた、他の粒子調製プロセスでも使用される。Tingfeng YI、Xinguo HU、およびKun GAOは、Journal of Power Sources 162(2006)636−643で、キレート化剤としてアジピン酸を用いて超音波支援ゾルゲル法によりAlドープLiAl0.05Mn1.95粉末を調製している。ゾルゲルプロセスは、離散粒子または網状ポリマーのいずれかの統合網状構造(またはゲル)の前駆体として作用する化学溶液(またはゾル)から出発して主に材料(典型的には金属酸化物)の製造に使用される湿式化学技術である。化学量論量の反応剤Li(CHCOO)・2HO、Al(NO・9HO、およびMn(CHCOO)・6HOを用いて、LiAl0.05Mn1.95粉末が調製された。
【0014】
S.H.PARKらは、Journal of Applied Electrochemistry(2003)33:1169−1173に、超音波スプレー熱分解法を用いてLi[Ni1/2Mn1/2]Oを調製することを記載している。スプレー熱分解では、溶解された反応剤が超音波ネブライザーによりアトマイズされ、得られたエアロゾルストリームが加熱反応器内に導入される。彼らは、化学量論量のNiおよびMnの硝酸塩(Ni:Mnのカチオン比−1:1)を水に溶解させ、溶解された溶液を連続撹拌水性クエン酸溶液に添加し、これを高分子剤として反応に使用したと教示している。出発溶液が、1.7MHzの共振周波数の超音波ネブライザーを用いてアトマイズされ、エアロゾルストリームが、500℃に加熱された反応器内に導入された。
【0015】
類似のプロセスで、S.H.PARKらは、Electrochimica Acta 49(2004)557−563に、スプレー熱分解法を用いてLi[Ni1/3Co1/3Mn1/3]O材料を調製することを教示している。ここでも、クエン酸が高分子剤として反応に使用される。
【0016】
医薬品工業の場合と同様に、Process of Precipitation for Spherical Manganese Carbonate and Their Products Produced Thereby(国際公開第2006/109940号パンフレット)でSUNらにより考察されたように、電池材料の調製で球状粒子を使用することが可能である。Weijun TONGおよびChangyou GAOは、Colloids and Surfaces A:Physiochem Eng.Aspects 295(2007)233−238に、硫酸マンガン溶液と重炭酸アンモニウム溶液とを反応させて炭酸マンガン粒子を形成してから、粒子コアを酸溶解させることにより、中空球状炭酸マンガンカプセルを調製することを記載している。同様に、Alexei ANTIPOVらは、Colloids and Surfaces A:Physiochem Eng.Aspects 224(2003)175−183に、反対に荷電した高分子電解質を吸着させるためのコア鋳型として炭酸カドミウム粒子、炭酸マンガン粒子、および炭酸カルシウム粒子使用し、その後、コア除去を行って、中空カプセルを形成することを記載している。
【0017】
以上に記載したように、金属化合物粒子の沈殿時に超音波照射が使用されてきたが、所望のモルフォロジー、所望のサイズ分布、および/または所望の粒子サイズを有する粒子の製造を可能にする超音波照射に基づく方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0018】
本開示の目的は、これまでに記載された方法、システム、および/または粒子の少なくとも1つの欠点を除去または低減することである。
【0019】
反応チャンバー内で不溶性遷移金属化合物粒子を調製する方法が本明細書に記載されており、前記粒子は、式(TM)(S’)により表され、この方法は、遷移金属塩溶液を提供するステップであって、ただし、この遷移金属塩は、式(TM)(S)を有し、かつ含まれる遷移金属成分(TM)は、Mn、Ni、Co、Mg、Zn、Ca、Sr、Cu、Zr、P、Fe、Al、Ga、In、Cr、Ge、およびSnよりなる群から独立して選択される1種以上の遷移金属であるステップと;アニオン性化合物源を提供するステップであって、ただし、このアニオン性化合物は、炭酸塩系、水酸化物系、リン酸塩系、オキシ水酸化物系、または酸化物系の化合物であり、前記アニオン性化合物は、S’により表されるアニオン性成分を含み、前記アニオン性成分は、遷移金属成分TMと反応して不溶性遷移金属化合物粒子を形成するステップと;遷移金属塩溶液およびアニオン性化合物を反応チャンバーに添加するステップと;反応チャンバーを約0.1W/mL〜約50W/mLの強度の超音波処理に付して不溶性遷移金属化合物粒子を形成するステップと;を含む。
【0020】
強度は、約1W/mL〜約10W/mLでありうる。いくつかの例では、強度は、約3W/mLでありうる。
【0021】
遷移金属塩溶液は、MnSO、Mn(CHCOO)、MnCl、またはMn(NOを含みうる。
【0022】
アニオン性化合物源は、NaCO、NHHCO、(NHCO、NHOH、NaHCO、NaOH、KHCO、KCO、KOH、HPO、NaHPO、NaHPO、(NHPO、(NHHPO、(NH)HPO、(NHNaPO、(NH)NaPO、KHPO、KHPO、(NHKPO、(NH)KPO、またはKMnOを含む溶液でありうる。いくつかの例では、アニオン性化合物源は、NaCOおよび/またはNHHCOを含む溶液でありうる。
【0023】
反応チャンバー内のアニオン性化合物対遷移金属塩の比は、約1:1.5〜約1.5:1でありうる。いくつかの例では、反応チャンバー内のアニオン性化合物対遷移金属塩の比は、約1:1でありうる。
【0024】
超音波処理は、プローブ先端により、ダイヤフラムの振動により、または反応チャンバー壁に装着された任意の数の超音波トランスデューサーにより、提供されうる。
【0025】
反応チャンバーは、フロースルーチャンバーまたは連続チャンバーを含みうる。
【0026】
不溶性遷移金属化合物粒子は、球状、疑似球状、または不規則形状でありうる。
【0027】
生成される不溶性遷移金属化合物粒子は、粒子の少なくとも90%が1μm〜50μmの範囲内、少なくとも90%が1μm〜30μmの範囲内、少なくとも90%が3μm〜20μmの範囲内、または少なくとも90%が3μm〜10μmの範囲内にある粒子サイズ分布を有しうる。
【0028】
生成される不溶性遷移金属化合物粒子は、MnCOを含みうる。また、約1.5g/mL〜約3.0g/mLのタップ密度を有しうる。
【0029】
生成される不溶性遷移金属化合物粒子は、約1.7g/mL〜約2.3g/mLのタップ密度を有しうる。
【0030】
本方法は、遷移金属塩溶液がMnSOを含み、アニオン性化合物源がNaCOおよび/またはNHHCOを含む溶液であり、MnSO対NaCOおよび/またはNHHCOの比が約1:1.5〜約1.5:1であり、かつMnCOを含む粒子が約1.7g/mL〜約2.3g/mLのタップ密度を有する形で、実施してもよい。
【0031】
反応チャンバーの容積は、300mL以上でありうる。遷移金属塩溶液およびアニオン性化合物は、互いに約10cm超離間した位置にある反応剤入口ポートを介して反応チャンバーに添加されうる。
【0032】
反応チャンバー内の滞留時間は、約1秒間〜約60分間、たとえば約5秒間〜30分間、またはたとえば約10秒間〜約5分間でありうる。
【0033】
本方法はまた、反応チャンバーにキレート化剤を添加することを含みうる。キレート化剤は、硫酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素、またはそれらの任意の混合物でありうる。
【0034】
本開示の他の態様および特徴は、添付の図面と組み合わせて特定の実施形態の以下の説明を精査すれば、当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
次に、添付の図面を参照しながら、単なる例として本開示の実施形態を説明する。
【0036】
図1図1は、タンク反応器内で生成された炭酸マンガン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図2図2は、タンク反応器内で生成された炭酸マンガン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図3図3は、より高倍率で示された、図2に示される炭酸マンガン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図4図4は、超音波処理を用いずに連続プロセス反応器内で生成された炭酸マンガン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図5図5は、本出願の一態様に従って超音波処理(sonciation)を用いて連続反応器内で生成された炭酸マンガン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図6図6は、本出願の一実施形態に係る連続プロセス反応器の説明図である。
図7図7は、本出願の一態様に従って連続プロセス反応器内で生成された炭酸マンガン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図8図8は、本出願の一態様に従って連続プロセス反応器内で生成された炭酸マンガン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図9図9は、本出願の一態様に従って連続プロセス反応器内で生成された炭酸マンガン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図10図10は、より高倍率で示された、図9に示される炭酸マンガン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図11図11は、本出願の一態様に従って連続プロセス反応器内で生成された炭酸マンガン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図12図12は、より高倍率で示された、図11に示される炭酸マンガン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図13図13は、本出願の一態様に従って連続プロセス反応器内で生成された炭酸マンガン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図14図14は、本出願の一態様に従って連続プロセス反応器内で生成された炭酸マンガン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図15図15は、本出願の一態様に従って連続プロセス反応器内で生成された炭酸マンガン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図16図16は、本出願の一態様に従って連続プロセス反応器内で生成されたニッケルマンガンコバルト(NMC)炭酸塩粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図17図17は、本出願の一態様に従って連続プロセス反応器内で生成されたNMC炭酸塩粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図18図18は、反応剤が過剰に存在するときに生じうる沈殿の概略図である。
図19図19は、いずれの反応剤も過剰に存在しないときの反応の概略図である。
図20図20は、過剰の反応剤を用いてまたは用いずに生成された粒子の走査型電子顕微鏡写真を提供する。
図21図21は、より低倍率(左側)およびより高倍率(右側)の両方を示すSEM顕微鏡写真機を用いて得られた例示的な粒子を示している。
図22図22は、超音波照射を用いずに連続反応器内で生成された炭酸マンガン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図23図23は、本出願の一態様に従って連続反応器内で生成された炭酸マンガン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図24図24は、本出願の一態様に従って連続反応器内で生成された炭酸マンガン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図25図25は、本出願の一態様に従って連続反応器内で生成された炭酸マンガン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図26図26は、本出願の一態様に従って連続反応器内で生成された炭酸マンガン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図27図27は、本出願の一態様に従って連続反応器内で生成された炭酸マンガン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図28図28は、本出願の一態様に従って連続反応器内で生成された炭酸マンガン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図29図29は、本出願の一態様に従って連続反応器内で生成された炭酸マンガン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図30図30は、本出願の一態様に従って連続反応器内で生成された炭酸マンガン粒子の走査型電子顕微鏡写真である。
図31図31は、図17および22〜31に示される試料の粒子サイズ分布プロットを示している。ここで、パネルAは、図22に示される試料の粒子サイズ分布を示しており、パネルBは、図23に示される試料の粒子サイズ分布を示しており、パネルCは、図7に示される試料の粒子サイズ分布を示しており、パネルDは、図24に示される試料の粒子サイズ分布を示しており、パネルEは、図25に示される試料の粒子サイズ分布を示しており、パネルFは、図17に示される試料の粒子サイズ分布を示しており、パネルGは、図26に示される試料の粒子サイズ分布を示しており、パネルHは、図27に示される試料の粒子サイズ分布を示しており、パネルIは、図28に示される試料の粒子サイズ分布を示しており、パネルJは、図29に示される試料の粒子サイズ分布を示しており、そしてパネルKは、図30に示される試料の粒子サイズ分布を示している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
一般的には、本開示は、所望のモルフォロジー、所望のサイズ分布、および/または所望の粒子サイズを有する粒子を生成する方法およびシステムを提供する。粒子のモルフォロジーとは、粒子の形状を意味する。たとえば、沈殿または結晶化した粒子は、球状もしくは疑似球状、立方状、またはロッド状でありうる。疑似球状粒子とは、すべての粒子が同様の形状をしているわけではないが、ほとんどの粒子の形状が完全に球状ではない球状に近い形状を構成する場合の粒子を意味する。
【0038】
球状または疑似球状の粒子で構成された粉末は、より流体のように作用しうるうえに、不規則形状の粒子と比較して加熱下でより少ないアグロメレーションを呈しうるので、球状または疑似球状の粒子を形成することが望ましいであろう。さらに、球状または疑似球状の粒子は、充填一体化されて空隙体積を低減し、タップ密度を増大させることが可能である。球状または疑似球状の粒子で構成された電池材料は、より良好に動作しうるうえに、不規則な粒子で構成された材料を用いて作製された電池よりも長いサイクル寿命を有しうる。不規則形状の粒子は、鋭い縁および折曲げに起因して応力下の表面を有するが、球状または疑似球状の粒子は、そのような鋭い縁および折曲げがないので、粒子劣化の低減をもたらす。粒子はまた、他の材料で被覆することも可能である。球状または疑似球状の粒子を用いて作製されたコーティングは、不規則形状の粒子を用いて作製されたコーティングよりも均一でありうる。それでも、不規則形状の粒子が望ましい用途が存在しうる。
【0039】
球状沈殿物の粒子サイズは、その直径により定義することが可能である。不規則粒子および非球状粒子では、体積に基づく粒子サイズは、非球状粒子と同一の体積を有する球体の直径により近似することが可能である。同様に、面積に基づく粒子サイズは、非球状粒子と同一の表面積を有する球体の直径により近似することが可能である。非球状粒子の粒子サイズは、重量に基づく、流体力学に基づく、または空気力学に基づく粒子サイズをもたらす他の同等の性質を用いて計算することが可能である。本開示では、粒子サイズおよび体積に基づく粒子サイズは、同義的に用いられる。
【0040】
流体中に分散された粉末または粒子の粒子サイズ分布は、サイズに従って選別された存在する粒子の相対量を定義する値のリストである。粒子サイズ分布は、種々の技術を用いて測定可能である。粒子サイズ分布は、たとえば、試料の80%が10μm〜20μmであるなどとして、上限と下限との間の試料のパーセントにより表わすことが可能である。他の選択肢として、粒子サイズ分布は、「累積」形態で表わすことが可能であり、この場合、たとえば、試料の90%が50μm未満であるなどとして、合計は、上限未満のすべてのサイズに対して与えられる。
【0041】
沈殿された粒子のサイズ、沈殿された粒子のモルフォロジー、および沈殿された粒子の粒子サイズ分布はすべて、試料のタップ密度に影響する。タップ密度とは、試料の密度がもはや変化しなくなるように十分にタッピングして試料を緻密化した後の試料の密度を意味する。生成される粒子のサイズおよび形状に依存して、タップ密度は、結晶嵩密度の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%でありうる。同一サイズの完全充填球体は、結晶嵩密度の約74%の密度を有しうるので、MnCOの完全充填球体は、3.70g/mLの約74%の密度を有しうる。種々のサイズの球体の試料では、大きい粒子により残されたギャップがより小さい粒子により充填されて、密度が74%超になることが考えられる。
【0042】
粒子は、バッチプロセスによりまたは連続プロセスにより取得可能である。連続プロセスでは、生成された粒子が新しい反応剤の添加により反応器から連続的に除去される「フロースルー」反応器が使用される。粒子は、一般式(TM)(S’)で表される遷移金属化合物粒子でありうる。式中、TMは、任意の可能なモル比で、Mn、Ni、Co、Mg、Zn、Ca、Sr、Cu、Zr、P、Fe、Al、Ga、In、Cr、Ge、およびSnよりなる群から独立して選択される1種以上の遷移金属でありうる。また、S’は、遷移金属化合物粒子のアニオン性成分である。遷移金属化合物粒子のアニオン性成分S’は、たとえば、CO、(OH)、(OOH)、O、O、O、PO、(PO、またはPでありうる。これらにより、式は、TM成分の全価電荷に依存して、たとえば、(TM)CO、(TM)(OH)、(TM)(OOH)、(TM)O、(TM)O、(TM)O、(TM)O3/2、(TM)O4/3、(TM)PO、(TM)(PO2/3、または(TM)(P1/2になる。
【0043】
遷移金属化合物粒子の遷移金属成分は、遷移金属源、たとえば、一般式(TM)(S)〔式中、Sは、溶媒中への遷移金属塩の溶解を可能にする任意の適切な対イオンである〕で表される遷移金属塩の溶液から得ることが可能である。そのような遷移金属塩の例としては、(TM)SO、(TM)Cl、(TM)(CHCOO)、および(TM)(NOが挙げられ、この場合、Sは、それぞれ、SO、Cl、(CHCOO)、および(NOである。遷移金属化合物粒子のアニオン性成分は、任意の適合するアニオン性化合物源、たとえば、NHHCO、NaCO、(NHCO、NHOH、NaHCO、NaOH、KHCO、KCO、KOH、HPO、NaHPO、NaHPO、(NHPO、(NHHPO、(NH)HPO、(NHNaPO、(NH)NaPO、KHPO、KHPO、(NHKPO、(NH)KPO、またはKMnOの溶液などの他の塩溶液から得ることが可能である。
【0044】
いくつかの実施形態では、遷移金属化合物粒子は、Mn(1−p−q)CO粒子(すなわち、MはMnであり、S’=COである)でありうる。式中、MおよびMは、Ni、Co、Mg、Zn、Ca、Sr、Cu、Zr、P、Fe、Al、Ga、In、Cr、Ge、およびSnよりなる群から独立して選択され、p+q<1であり、かつ「p」および「q」は、0以上である。特定の実施形態では、取得可能な遷移金属化合物粒子としては、式(NiMn(1−p−q)Co)CO(すなわち、TMは、NiMn(1−p−q)Coであり、MはMnであり、MはNiであり、MはCoであり、S’=COである)を有するニッケルマンガンコバルト(NMC)炭酸塩粒子、たとえば、式Ni1/3Mn1/3Co1/3COを有するNMC炭酸塩粒子が挙げられる。他の実施形態では、取得可能な遷移金属粒子としては、炭酸マンガン(MnCO)粒子(すなわち「p」および「q」=0、S’=CO)が挙げられる。
【0045】
炭酸マンガン粒子は、硫酸マンガン(MnSO(すなわちTM=Mn、S=SO))と重炭酸アンモニウム(NHHCO)との間の反応を介して形成可能であるが、他のマンガン源、たとえば、Mn(NO、Mn(CHCOO)、またはMnCl(ここで、TM=Mn、それぞれS=(NO、(CHCOO)、またはCl)、および他の炭酸源、たとえば、NaCO、(NHCO、NaHCO、KHCO、またはKCOを使用することが可能である。さらに他のマンガン源および炭酸源は、当技術分野で公知である。本開示では、硫酸マンガンと重炭酸アンモニウムとの反応による炭酸マンガン粒子の形成および硫酸マンガンと炭酸ナトリウムとの反応による炭酸マンガン粒子の形成を考察しているが、他の選択肢の反応剤を同様に使用して、Ni1/3Co2/3(OH)(ここで、TM=Ni1/3Co2/3、S’=(OH)))やMgZnO(ここで、TM=MgZn、S’=O)などの他の選択肢の粒子を形成しうることを理解されたい。
【0046】
1〜2Mまたはさらに高い濃度のMnSOおよびNHHCOを用いたタンク反応器内でのMnCO粒子の製造では、40ミクロンまでの粒子が得られ、生成された粒子は、図1に示されるように大きいサイズ分布を有していた。1mMのMnSOおよびNHHCOを用いた反応では、約3.5ミクロンの球状粒子が得られ、生成された粒子は、図2および図3に示されるように小さいサイズ分布を有していた。図2および図3で生成された粒子の粒子サイズ、粒子モルフォロジー、および粒子サイズ分布は望ましいものでありうるが、低濃度の反応剤を使用すると、望ましくないレベルの廃物を生じるおそれがある。
【0047】
本出願に係る方法およびシステムは、超音波照射を使用しない類似の方法およびシステムよりも高濃度の反応剤(たとえば、反応剤に依存して、100mM、1M、2M、3M、4M、5M、または10Mよりも高い反応剤濃度)を用いて、所望の物理的性質を有する球状粒子を生成することが可能である。超音波照射を用いる場合、迅速かつ均質な混合が可能である。反応に使用される反応剤濃度の比は、所望の生成物および遷移金属化合物粒子を形成する化学反応に依存して、選択可能である。他の反応剤に対して過剰の1種以上の反応剤を含めて、任意の比を遷移金属化合物粒子の形成に使用することが可能である。特定の例では、過剰でない反応剤を使用することが有利でありうる。
【0048】
0.2MのMnSOとNHHCOとの反応により連続反応器内で生成されたMnCO粒子を、図4(超音波処理なし)および図5(40Wの超音波洗浄器を用いた超音波処理)に示す。図4および図5に示されるように、反応溶液の超音波処理では、個別粒子が生成されるが、超音波処理なしでは、アグロメレート化粒子が得られる。
【0049】
反応チャンバー内で不溶性遷移金属化合物粒子を調製する方法を本明細書に記載する。形成される粒子は、式(TM)(S’)により表される。本方法は、遷移金属塩溶液を提供するステップであって、ただし、この遷移金属塩は、式(TM)(S)を有し、かつ(TM)がMn、Ni、Co、Mg、Zn、Ca、Sr、Cu、Zr、P、Fe、Al、Ga、In、Cr、Ge、およびSnよりなる群から独立して選択される1種以上の遷移金属である遷移金属成分(TM)を含むステップと;アニオン性化合物源を提供するステップであって、ただし、このアニオン性化合物は、炭酸塩系、水酸化物系、リン酸塩系、オキシ水酸化物系、または酸化物系の化合物であり、前記アニオン性化合物は、S’により表されるアニオン性成分を含み、前記アニオン性成分は、遷移金属成分TMと反応して不溶性遷移金属化合物粒子を形成するステップと;遷移金属塩溶液およびアニオン性化合物を反応チャンバーに添加するステップと;反応チャンバーを約0.1W/mL〜約50W/mLの強度の超音波処理に付して不溶性遷移金属化合物粒子を形成するステップと;を含む。
【0050】
強度は、約0.1W/mL〜約10W/mL、たとえば、約3W/mLでありうる。
【0051】
遷移金属塩溶液は、MnSO、Mn(CHCOO)、MnCl、またはMn(NOを含みうる。
【0052】
アニオン性化合物源は、NaCO、NHHCO、(NHCO、NHOH、NaHCO、NaOH、KHCO、KCO、KOH、HPO、NaHPO、NaHPO、(NHPO、(NHHPO、(NH)HPO、(NHNaPO、(NH)NaPO、KHPO、KHPO、(NHKPO、(NH)KPO、またはKMnOを含む溶液である。代表的な実施形態では、アニオン性化合物源は、NaCOまたはNHCOを含む溶液である。
【0053】
反応チャンバー内の例示的なアニオン性化合物対遷移金属塩の比は、約1:1.5〜約1.5:1、たとえば、約1:1でありうる。
【0054】
超音波処理は、プローブ先端により、ダイヤフラムの振動により、または反応チャンバー壁に装着された任意の数の超音波トランスデューサーにより、提供されうる。
【0055】
反応チャンバーは、フロースルーチャンバーを含みうる。
【0056】
不溶性遷移金属化合物粒子は、一般的には、球形状でありうるか、またはすべての粒子が同様の形状をしているわけではないが、ほとんどの粒子の形状が完全に球状ではない球状に近い形状を構成することを意味する疑似球状でありうる。
【0057】
代表的な実施形態では、生成される不溶性遷移金属化合物粒子は、粒子の少なくとも90%が1μm〜50μmの範囲内、少なくとも90%が1μm〜30μmの範囲内、少なくとも90%が3μm〜20μmの範囲内、または少なくとも90%が3μm〜10μmの範囲内にある粒子サイズ分布を有しうる。
【0058】
特定の実施形態によれば、生成される不溶性遷移金属化合物粒子は、MnCOを含みうる。また、約1.5g/mL〜約3.0g/mLのタップ密度を有しうる。たとえば、生成される不溶性遷移金属化合物粒子は、約1.7g/mL〜約2.3g/mLのタップ密度を有しうる。
【0059】
特定の実施形態では、遷移金属塩溶液は、MnSOを含んでもよく、アニオン性化合物源は、NaCOおよび/またはNHCOを含む溶液であってもよく、MnSO対NaCOおよび/またはNHCOの比は、約1:1.5〜約1.5:1であってもよく、かつ粒子は、約1.7g/mL〜2.3g/mLのタップ密度を有するMnCOを含んでもよい。
【0060】
反応チャンバーの容積は、例示的実施形態によれば、約300mL以上でありうる。
【0061】
反応チャンバー内の滞留時間は、約1秒間〜約60分間でありうるか、約5秒間〜30分間でありうるか、または約10秒間〜約5分間でありうる。
【0062】
粒子を連続形成するための反応器は、少なくとも1つの入口と、反応チャンバーに超音波照射を提供するための超音波照射源(ソニケーターとしても参照される)と、反応オーバーフローを除去するための少なくとも1つの出口ポートと、を備えた反応チャンバーを有しうる。1つの入口ポートを備えた反応器では、反応溶液(たとえば、MnSO溶液およびNHHCO溶液)は、反応チャンバーに注入される前に予備混合することが可能である。2つの入口ポートを備えた反応器では、入口ポートの1つは、反応溶液の1つ(たとえば、MnSO溶液)に対するものでありうるし、他の入口ポートは、他の反応溶液(たとえば、NHHCO溶液)に対するものでありうる。2つの入口ポートを備えた反応器の一実施形態を図6に示す。この図は、反応器100、反応チャンバー102、反応剤入口ポート104および106、プローブ先端110を有するプローブソニケーター108、ならびに反応オーバーフロー(MnSOとNHHCOとの間の反応では、形成されたMnCO粒子を含有するであろう)を除去するための出口ポート112を示している。入口ポートは、超音波照射源のパワーおよび強度ならびに反応チャンバーのサイズに依存して、それら自体および/または超音波照射源から1mm〜50cmまたはそれ以上(たとえば1m)離間して配置されうる。
【0063】
超音波照射源は、たとえば、パラレルトランスデューサーまたはプローブソニケーターでありうる。プローブソニケーターの一例は、400W(10〜100%の振幅変化)および20kHzで動作可能なBranson Sonifier(商標)450A(Branson Ultrasonics of Danbury CT,USA)である。他の選択肢として、他の周波数(たとえば、20〜80kHzの周波数)で動作しかつ100kWまで動作するソニケーターを使用することが可能であった。プローブソニケーターは、超音波照射源のパワーおよび強度に依存して、1mm〜10cmまたはそれ以上の直径のフラットなプローブ先端を有しうる。特定の実施形態では、プローブ先端は、1.2cmの直径でありうる(1.13cmの表面積を有する)。プローブ先端は、10μm〜5cmの振幅で振動することが可能である。特定の実施形態では、プローブ先端は、約150μmの振幅で振動することが可能である。最大パワーでは、Branson Sonifier 450Aプローブソニケーターは、1.2cmの直径を備えたプローブ先端を用いて約350W/cmの強度を有しうる。他の選択肢として、約2000W/cmまでの強度で動作するソニケーターを使用することが可能である。プローブ先端は、種々の材料で作製可能であり、種々のテクスチャーを有しうる。
【0064】
空気中で動作させたソニケーターは、空気の粘度が低いので、ゼロに近いパワー出力を有する。媒体の粘度が増加するにつれて、ソニケーターは、振動するために多くのパワーを使用する。Sonifierは、機械上で動作させるのに必要とされる実パワーを示しうる。直径1.2cmのフラットなプローブ先端を用いて水性媒体中で動作させたBranson Sonifier 450Aでは、パワー出力は、100%の振幅で400Wの約30%(すなわち120W)であり、80%の振幅で400Wの約24%(すなわち96W)である。
【0065】
図6に示されるように、超音波処理がより強力であるプローブ先端近傍に反応剤溶液を方向付けるように、2つの入口ポート104および106の一方または両方を配置することが可能である。反応器は、そのほかに、反応チャンバーを所望の温度に加熱または冷却するために使用可能な外側ジャケット(図示せず)を含みうる。
【0066】
プローブソニケーターの代わりに、他の反応器では、超音波照射を提供すべく反応チャンバー壁に装着された振動ダイヤフラムまたは超音波トランスデューサーを使用することが可能である。反応器は、反応剤溶液を反応器内に方向付けて迅速に反応剤を混合するように配置された入口ポートを含みうる。
【0067】
2つの反応剤溶液の1つをプローブヘッドに方向付けるように配置された1つの入口ポートと、2つの反応剤溶液の2つ目をプローブヘッドから離して方向付けるように配置された他方の入口ポートと、を有する反応器を用いて生成されたMnCO粒子を図7に示す。図7に示される粒子を生成するために、MnSOおよびNHHCOの1M溶液を5mL/分で注入し、約40℃の50mL連続反応器内で全振幅の80%(または約1.9W/mL)で動作させて混合した。生成された粒子は、1.48g/mL(または結晶嵩密度の約40%)のタップ密度を有する。
【0068】
2つの反応剤溶液をプローブヘッドに方向付けるように配置された2つの入口ポートを備えた反応器を用いて生成されたMnCO粒子を図8に示す。反応条件は、図7に示される粒子の生成に使用したのと同一である。生成された粒子は、1.59g/mL(または結晶嵩密度の約43%)のタップ密度を有する。
【0069】
遷移金属化合物粒子の生成に使用される反応器は、異なる流量の反応剤および異なる濃度の反応剤を収容することが可能であり、反応器は、さまざまな温度および/または圧力で反応を維持することが可能である。超音波照射を発生させるためにプローブを使用する反応器では、反応器は、さまざまな異なる位置に配置されたさまざまなサイズのプローブ先端を用いて、さまざまなプローブ強度および周波数で超音波照射を提供することが可能である。反応チャンバーは、サイズおよびジオメトリーの変更が可能であり、異なる材料で作製可能であり、それにより、反応チャンバーの異なる表面テクスチャーを提供することが可能である。反応チャンバーは、たとえば、攪拌子を用いて能動的に撹拌することが可能であり、または単純に反応剤の注入により混合することが可能である。
【0070】
超音波照射を発生させるためにプローブを使用する反応器では、プローブ先端のすぐ下のアパーチャーサイズを変化させることが可能である。表面積を増大させるために、たとえば、銅片、鋼削り屑、またはプラスチックメッシュを反応チャンバーに添加することが可能である。窒素、空気、または二酸化炭素などのガスを反応チャンバーに通してバブリングすることが可能である。Tween(商標)−80などの界面活性剤もしくは鉱油および/またはキレート化剤を反応溶液に添加することが可能である。たとえば、界面活性剤および/またはキレート化剤を反応剤の1つに添加することが可能であり、または反応チャンバー内に直接供給することが可能である。
【0071】
キレート化剤は、粒子成長時に金属イオンと「配位結合」する、かつ粒子サイズを制御するための機構を提供しうる、作用剤である。反応に添加しうるキレート化剤の例としては、たとえば、硫酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素、またはそれらの任意の組合せが挙げられうる。
【0072】
反応器の特定の実施形態では、反応剤入口ポートは、ステンレス鋼チューブで作製される。プローブ先端に対して反応剤入口ポートの位置を変化させることができるように、チューブを移動可能に調整することが可能である。いくつかの実施形態では、反応チャンバーは、2mL〜1Lの容積を有しうる。チャンバーのサイズの増加が超音波処理能力の増加により相殺され、超音波照射強度が約0.1W/mL〜50W/mLの間に維持されるかぎり、さらに大きいサイズの反応チャンバー、たとえば、25L以上の容積を有する反応チャンバーが可能と考えられる。
【0073】
特定の実施形態では、反応剤流量は、独立して、反応チャンバーのサイズに依存して、1mL/分〜1L/分の間に設定することが可能である。反応チャンバー内の反応剤および生成された遷移金属化合物粒子の滞留時間が、5秒間超になるように(ここで、滞留時間は、反応剤の全流量で割り算された反応チャンバーの容積として計算される)、反応剤流量および反応器チャンバーを選択することが可能である。特定の実施形態では、滞留時間は、30秒間以上である。いくつかの実施形態では、反応剤の滞留時間は、5分間以上でありうる。いくつかの実施形態では、反応剤入口ポートは、反応剤を反応空間内に方向付け、この空間で、超音波照射は、約0.1W/mL〜50W/mLの間の強度で提供され、それにより、反応剤は、超音波照射から離れた位置に移動する前に反応させることが可能になる。一例では、反応剤入口ポートは、超音波照射源近傍、たとえば、プローブ先端近傍に反応剤を方向付ける。
【0074】
特定の実施形態では、プローブにより提供される超音波照射は、プローブ先端の最大振幅の10〜100%でありうる。Branson Sonifier 450Aにより振動されるプローブ先端の最大振幅は、約150ミクロンである。他のソニファイヤーにより、より大きい振幅で他の選択肢のプローブ先端を振動させることが可能である。他の選択肢として、ダイヤフラムプレートソニファイヤーなどの他の超音波照射システムをより大きい振幅に振動させることが可能である。特定の実施形態では、加熱ジャケットまたは冷却ジャケットを用いて、反応器の温度を−20℃〜100℃の温度に維持することが可能である。
【0075】
特定の一反応では、1M MnSO4溶液および1M NHHCO溶液を5mL/分で50mL反応チャンバーに注入し、全振幅の80%の超音波照射(または約1.9W/mL)に付した。氷浴中で反応の周囲温度を0℃に維持した。その結果生成された炭酸マンガン粒子を図9および図10に示す。これらの粒子は、1.40g/mL(または結晶嵩密度の約38%)のタップ密度を有する。
【0076】
他の反応では、1M MnSO溶液および1M NHHCO溶液を5mL/分で50mL反応チャンバーに注入し、全振幅の80%の超音波照射(または約1.9W/mL)に付した。反応の周囲温度を90℃に維持した。その結果生成された炭酸マンガン粒子を図11および図12に示す。これらの粒子は、1.71g/mL(または結晶嵩密度の約46%)のタップ密度を有する。
【0077】
異なるサイズの反応チャンバーを有する反応器は、異なる物理的性質を有する粒子を生成することが可能である。たとえば、図13図14、および図15(すべて同一スケールで示される)は、図9〜12に示される粒子の形成に対して以上に記載したのと類似の反応条件を用いて、それぞれ3mL、50mL、および500mL反応チャンバーにより生成された炭酸マンガン粒子を示している。80%の振幅で、それぞれ約32W/mL、約1.9W/mL、および0.19W/mLで反応を行った。生成された粒子は、示されるように、さまざまなサイズおよびサイズ分布を有し、図14に示される粒子は、大きいサイズ分布で良好に造形された球状粒子を有し、図15に示される粒子は、狭いサイズ分布で不規則に造形された粒子を有する。
【0078】
ニッケルマンガンコバルト源が任意のモル比でニッケル、マンガン、およびコバルトを含むニッケルマンガンコバルト炭酸塩粒子は、ニッケルマンガンコバルト源と炭酸源との反応を介して形成可能である。たとえば、ニッケルマンガンコバルト炭酸塩粒子は、(Ni1/3Mn1/3Co1/3)CO粒子でありうる。これは、ニッケルマンガンコバルト源、たとえば、1/3NiSO、1/3MnSO、および1/3CoSO((Ni1/3Mn1/3Co1/3)SOもしくはNMC硫酸塩として簡略表現で記される)、または1/3Ni(NO、1/3Mn(NO、および1/3Co(NO(同様に(Ni1/3Mn1/3Co1/3)(NOとして簡略表現で記される)を提供する遷移金属塩と、炭酸源、たとえば、重炭酸アンモニウム(NHHCO)と、の反応を介して形成可能である。遷移金属塩に対する以上の化学式中、遷移金属成分TMは、Ni1/3Mn1/3Co1/3に対応し、塩の対イオンSは、それぞれ、SOまたは(NOに対応する。他の実施形態では、ニッケルマンガンコバルト源は、簡略表現で(Ni1/3Mn1/3Co1/3)(CHCOO)または(Ni1/3Mn1/3Co1/3)Clであってもよく、炭酸源は、たとえば、(NHCO、NaHCO、NaCO、KHCO、またはKCOであってもよい。
【0079】
特定の一実施形態では、0.2M NMC硫酸塩溶液および1M NHHCO溶液を5mL/分で50mL反応器に注入し、全振幅の80%の超音波照射(または約1.9W/mL)に付した。得られたNMC炭酸塩粒子を図16に示す。
【0080】
他の実施形態では、0.2M NMC硫酸塩溶液および2M NHHCO溶液を3℃に冷却した後、70℃に加熱された50mL反応器に5mL/分で注入し、全振幅の80%の超音波照射(または約1.9W/mL)に付した。得られたNMC炭酸塩粒子(図17に示される)は、1.25g/mLのタップ密度(または等モルの結晶嵩密度の約36%)を有する。
【0081】
収集後、生成された粒子はいずれも、たとえば80℃で数時間、乾燥させることが可能である。
【0082】
MnCO粒子を生成するためのそのほかの実施形態
本発明のさらなる実施形態によれば、大きな空間内で高強度超音波処理を用いて、例示的な粒子を形成することが可能である。大きな空間では、より大きい粒子を得ることが可能であり、有利には、形成される粒子の狭いサイズ分布を得ることが可能であり、高強度(高W/mL)では、球状または疑似球状の粒子を得ることが可能である。ほぼ等しい濃度の反応剤を用いて、大過剰の1つの反応剤を有する影響を回避することが可能である。狭いサイズ分布を有する粒子とは、粒子の少なくとも90%が平均直径から25μm以内の直径を有するサイズ分布を有する粒子であると理解されたい。いくつかの実施形態では、粒子は、粒子の少なくとも90%が平均直径から15μm以内の直径を有するものであろう。他の実施形態では、粒子は、粒子の少なくとも90%が平均直径から10μm以内の直径を有するものであろう。さらに他の実施形態では、粒子は、粒子の少なくとも90%が平均直径から5μm以内の直径を有するものであろう。いくつかの実施形態では、粒子は、粒子の少なくとも90%が1μm〜50μmの範囲内であるサイズ分布を有する。他の例では、粒子の少なくとも90%は、1μm〜30μmの範囲内である。さらに他の例では、粒子の少なくとも90%は、3μm〜20μmの範囲内である。またさらなる例では、粒子の少なくとも90%は、3μm〜10μmの範囲内である。
【0083】
球状粒子は下流で使用するのに有利であるが、サイズ分布が狭くかつタップ密度が比較的高ければ、完全に球状ではない疑似球状または不規則形状の粒子もまた望ましい。
【0084】
300mL超の反応チャンバーは、大容積であるとみなしうる。350mL〜700mLの反応チャンバー容積を用いることにより、有利には、粒子の狭いサイズ分布を得ることが可能であると同時に、ハイスループットが可能である。超音波処理装置が、反応空間内に約0.1W/mL〜50W/mLの強度を有する超音波照射を提供するのに適したものであれば、かつ流量が、好適な滞留時間を可能にするのに適したものであれば、700mLを超える容積、たとえば、1L、5L、10L、および25Lの容積を使用しうる。
【0085】
特定の一試験構成では、内設ソニケーターを反応剤入口に隣接させて、350mLの反応チャンバーを使用した。一例では、過剰の反応剤−過剰のNHHCOを有する濾液は、濾液にMnSOを添加した後、望ましくない沈殿を生じることが見いだされた。さらに、過剰のMnSOは、NHHCOを添加すると沈殿を生じることが判明したが、これもまた望ましくない。
【0086】
MnSOとNHHCOとの反応は、所望の生成物MnCOだけでなく、COおよびHOと共に、(NHSOをも生成する。MnSOとNaCOとの反応は、同様に、所望の生成物MnCOだけでなく、NaSOをも生成する。図18は、反応剤の1つが有意に過剰に存在するときに起こりうる沈殿の概略図である。左側の反応チャンバー(1802)内では、NHHCOおよび/またはNaCO(1804)が過剰に存在する。この場合、反応チャンバーの「NHHCOおよび/またはNaCO塩溶液」内の沈殿は、MnSO入口(1806)近傍で起こる。右側の反応チャンバー(1812)内では、MnSO(1814)が過剰に存在する。この場合、反応チャンバーの「MnSO塩溶液」内の沈殿は、NHHCOおよび/またはNaCO入口(1816)近傍で起こる。プローブ(1808および1818)を含むものとして両方の例でここに示されるソニケーターは、他の選択肢として、反応チャンバーに装着されたダイヤフラムシステムや任意の数の超音波トランスデューサーなどの他の型の超音波処理装置を含みうる。入口近傍でのこの局所沈殿は、望ましくない。過剰の反応剤が存在するこれらの例では、反応チャンバーに入るとすぐに沈殿が起こる。つまり、沈殿は、比較的高濃度でかつごく少数の粒子の存在下で起こる。これにより、粒子サイズの広い分布を生じる。狭いサイズ分布を達することが望ましい。したがって、過剰の反応剤を回避することにより、広いサイズ分布の粒子を生成する可能性は、低減される。
【0087】
図19は、いずれの反応剤も過剰に存在しないときの反応の概略図である。反応チャンバー(1902)内では、NHHCOおよび/またはNaCO(1904)ならびにMnSO(1906)が提供されて、所望のMnCO粒子だけでなく、(NHSOおよび/もしくはNaSO、または溶解状態でこれらの生成物の混合物も生成される。この際、いずれの進入する反応剤も、他方の「塩溶液」に出合うことがないので、反応剤をより均質に混合させた後、沈殿が起こる。これにより、おそらく沈殿がより低濃度でかつさらに多くの粒子の周りに起こるので、より均一な粒子成長がもたらされる。沈殿が起こる前に均質な混合を可能にするために、チャンバー内で互い比較的遠く離して2つの反応剤の入口ポートを配置することが有利なこともある。
【0088】
NaCOを用いると、粒子の良好なタップ密度および良好な均一性(狭いサイズ分布)が得られることが判明した。1.6〜2.2g/mLの良好なタップ密度を達成することが可能であり、いずれの反応剤も過剰に存在しないような量でMnSOと共にNaCOを使用したとき、約2.1g/mLのタップ密度が観測された。反応を70℃で行ったところ、比較的均一な疑似球状粒子が生成された。
【0089】
一例では、50mL反応チャンバー内で1M MnSOと共に2M NHHCOを使用し、全振幅の80%の超音波照射(約1.9W/mL)に付した。過剰のNHHCOが観測された。広いサイズ分布が観測された。観測されたタップ密度は1.85g/mLであった。図20の上側部分は、広いサイズ分布で得られたMnCO粒子を示すSEM顕微鏡写真を提供する。比較として、他の例では、300mL反応チャンバー内で0.5M MnSOと共に0.6M NHHCOを使用し、全振幅の80%の超音波照射(約0.32W/mL)に付した。過剰は観測されず、狭いサイズ分布が達成された。この例でのタップ密度は、1.70g/mLであった。図20の下側部分は、狭いサイズ分布で得られたMnCO粒子を示すSEM顕微鏡写真を提供する。これらの例から、過剰の反応剤を提供することは、広いサイズ分布が得られるので、望ましくないことが示される。
【0090】
他の例では、水から開始した反応で0.6M NHHCOおよび0.5M MnSOを使用した。この場合、反応剤は、ほぼ等価量で使用され、過剰は、観測されなかった。得られた粒子は、狭いサイズ分布および1.70g/mLのタップ密度を有していた。比較として、水から開始する代わりに、0.5M(NHSO(反応の副生成物)から反応を開始した。この場合、過剰は観測されなかったが、広いサイズ分布が観測され、タップ密度は1.87g/mLであった。両方の実験で、300mL反応チャンバーを使用し、全振幅の80%の超音波照射(約0.32W/mL)に付した。この例から、多量の(NHSOもまた、狭いサイズ分布を達成するうえで望ましくないことが示唆される。
【0091】
さらなる例では、望ましい狭いサイズ分布でMnCOに対して2.05g/mLのタップ密度が達成された。この例では、1.08M NaCOと共に1M MnSOを使用した。700mL反応チャンバーを100%の振幅(約0.17W/mL)の超音波照射に付した。この例の条件は、80%の振幅のソニケーターおよび各反応剤に対して5mL/分の流量を含んでいだ。pH調整を行わずに65℃で反応を続けた。この例では、きわめて望ましいタップ密度、適正な粒子サイズ、および狭いサイズ分布で、MnCO粒子が達成された。図21は、この例で得られた粒子を示している。良好な粒子サイズおよび狭いサイズ分布を示すために、より高倍率(右側)さらにはより低倍率(左側)で、得られたMnCO粒子を示すSEM顕微鏡写真が提供されている。
【0092】
有利には、反応チャンバー内の滞留時間が数分間程度であるので、粒子の生成は、より迅速かつ効率的である。1〜2Mの非常に高い反応濃度を用いて、粒子の生成を行うことが可能である。さらに、記載の方法では、pHをモニターする必要もなければ、界面活性剤などの他の追加の化学品も必要でない。この例で得られる高収率は、一定しており、より少ない廃物を生じるので、効率の増大およびコストの削減を行える可能性がある。
【0093】
記載の配置および方法を用いて、狭いサイズ分布の粒子を得ることが可能である。小型の反応チャンバーでは、おそらく反応前の反応剤の不適切な混合に起因して、小さい粒子および広いサイズ分布を生じる可能性がある。したがって、容積を300mL超に増大させることにより(適切な装置を用いれば、700mLまたは25L超の容積にスケールアップすることが可能である)、反応チャンバー内での均質混合が可能になるので、より大きいかつより均一なサイズの粒子が生成されるようになる。
【0094】
試験した追加の例および条件では、1M MnSOと1M NHHCOとの反応(5mL/分の流量で)でプローブの振幅を0%から100%まで20%の増分で変化させることにより、タップ密度は定常的に増加することが判明した。一般的には、高振幅(または高超音波処理強度(高W/mL))では、より球状の粒子が得られる。約50mLの連続反応器容積を使用したとき約1.2W/mLに対応する約50%の振幅領域(直径1.2cmのフラットなプローブ先端を備えたBranson Sonifier(商標)450Aを用いて水性媒体中で約60Wの出力パワー)では、粒子は、不規則形状から疑似球形状および球形状にさらに移行する。
【0095】
700mL連続反応器内で100%の振幅で同一反応剤を用いて流量を調整した場合、10mL/分以下の流量では、望ましいタップ密度が得られる。より大きい流量は、より高いスループットに好適である。より大きい流量をより大きい反応空間と共に使用しうる(適切な超音波処理パワーを用いて)。
【0096】
本開示に係る粒子は、たとえば約1M MnSOおよび約1M NaCOを、たとえばそれぞれ50mL/分の流量で、たとえば1Lの容積の十分に混合された反応チャンバー内に流動させることにより、取得しうる。0.1M (NHSOなどのキレート化剤をMnSOと共に添加してもよい。超音波照射は、照射が空間内全体に実質的に均一になるように、かつ送達されるパワー密度がたとえば1W/mL超になるように、反応空間の内容物に送達される。いくつかの例では、パワー密度は、約3W/mLでありうる。超音波源は、照射源が円筒反応チャンバーの端部全体または反応チャンバーの表面全体に拡がるように、反応チャンバーの外表面に装着された2つ以上の超音波トランスデューサーであってもよい。好ましくは、反応チャンバーの許すかぎり2つの入口ポートを遠く離して配置し、両方の入口ポートから実質的に等距離になるように出口ポートを配置することが可能である。
【0097】
超音波プローブ先端などの局在化超音波照射源(不均一)を使用する反応チャンバーでは、反応チャンバーの許すかぎり2つの入口ポートを遠く離して配置し、両方の入口ポートから等距離になるように出口ポートを配置することが望ましいこともある。
【0098】
狭いサイズ分布にするには、反応剤入口ポートを分離することが望ましい。反応剤入口ポートを分離すれば、沈殿が起こる前に反応剤を希釈して反応チャンバーの内容物と十分に混合することが可能になる。
【0099】
MnCO粒子の生成
図22は、それぞれ5mL/分で供給される1M MnSOおよび1.5M NaCOを用いて、撹拌下で70℃の700mL連続反応器内で生成されたMnCO3粒子を示している。生成された粒子は、1.47g/mL(または結晶嵩密度の約40%)のタップ密度を有する。
【0100】
図23は、それぞれ5mL/分で供給される1M MnSOと1.5M NaCOとの反応により、100%の振幅(約0.17W/mL)の超音波処理下(Branson 450A、20kHz、400W、10%〜100%の振幅制御)で、70℃の700mL連続反応器内で生成されたMnCO粒子を示している。生成された粒子は、1.65g/mL(または結晶嵩密度の約45%)のタップ密度を有する。反応時に超音波処理を行わないと、大きなアグロメレート化粒子を生じ(図22に示されるとおり)、一方、反応時に超音波処理を行うと、より少ないアグロメレート化粒子を生じる(図23)。
【0101】
図24は、反応器の温度が70℃であり、かつ反応器が、2つの反応剤溶液をプローブヘッドに方向付けるように配置された2つの入口ポートを有する以外は、図7に示されるものと同一の条件下で連続反応器を用いて生成されたMnCO粒子を示している。生成された粒子は、1.79g/mL(または結晶嵩密度の約48%)のタップ密度を有する。
【0102】
図25は、NHHCOの代わりにNaCOを使用した以外は、図24に示されるものと同一の条件を用いて生成されたMnCO粒子を示している。生成された粒子は、1.74g/mL(または結晶嵩密度の約47%)のタップ密度を有する。
【0103】
図26は、1M NaCOおよび1.5M MnSOを5mL/分で供給したとき、100%の振幅(または約0.17W/mL)の超音波処理下で70℃の700mL連続反応器内で生成されたMnCO粒子を示している。得られた粒子は、1.73g/mLのタップ密度を有する。広いサイズ分布が観測された。
【0104】
比較として、図27は、図26で観測された粒子と同一の条件下で1M MnSOと共に1.05M NaCOを使用したときに生成されたMnCO粒子を示している。得られた粒子は、1.94g/mLのタップ密度を有する。過剰は観測されず、より大きい粒子のより狭いサイズ分布が達成された。
【0105】
図28は、最初に0.5M (NHSO(反応の副生成物)(蒸溜水の代わりに)が仕込まれた70℃に保持された300mL連続反応器に、0.7M NHHCOおよび0.5M MnSOをそれぞれ5mL/分で添加して、反応剤を80%の振幅(または約0.32W/mL)の超音波処理下で反応させたときに生成されたMnCO粒子を示している。得られた粒子は、1.87g/mLのタップ密度を有する。過剰は観測されず、広いサイズ分布が観測された。この例から、多量の(NHSOは、狭いサイズ分布を達成するうえで望ましくないことが示唆される。しかしながら、MnCO粒子は、比較的大きかった。このことから、多量の(NHSOは、大きい粒子を取得するうえでは望ましく、さらに、(NHSOの量を変化させることにより、粒子サイズ制御が可能であることが示唆される。
【0106】
図29は、0.05M(NHSOと1M MnSOとの混合物を1.05M NaCOと共にそれぞれ5mL/分で70℃に保持された700mL連続反応器に添加して、100%の振幅(または約0.17W/mL)の超音波処理下で反応させたときに生成されたMnCO粒子を示している。得られた粒子は、2.02g/mLのタップ密度を有する。
【0107】
図30は、0.03M(NH4)SOと1M MnSOとの混合物を1.08M NaCOと共にそれぞれ5mL/分で70℃に保持された700mL連続反応器に添加して、100%の振幅(または約0.17W/mL)の超音波処理下で反応させたときに生成されたMnCO粒子を示している。得られた粒子は、2.11g/mLのタップ密度を有する。図30および31中に示された粒子から、少量の(NHSOは、より均一なサイズ分布の比較的大きい粒子を達成するうえで望ましいことが示唆される。
【0108】
図31は、本出願の範囲内で示された試料の粒子サイズ分布プロットを示している。パネルAは、図22に示される試料の粒子サイズ分布を示しており、パネルBは、図23に示される試料の粒子サイズ分布を示しており、パネルCは、図7に示される試料の粒子サイズ分布を示しており、パネルDは、図24に示される試料の粒子サイズ分布を示しており、パネルEは、図25に示される試料の粒子サイズ分布を示しており、パネルFは、図17に示される試料の粒子サイズ分布を示しており、パネルGは、図26に示される試料の粒子サイズ分布を示しており、パネルHは、図27に示される試料の粒子サイズ分布を示しており、パネルIは、図28に示される試料の粒子サイズ分布を示しており、パネルJは、図29に示される試料の粒子サイズ分布を示しており、そしてパネルKは、図30に示される試料の粒子サイズ分布を示している。
【0109】
以上の説明では、実施形態の徹底した理解を提供すべく、説明を目的として、多くの詳細事項が記載されている。しかしながら、これらの特定の詳細事項が必要とされないことは、当業者には明らかであろう。
【0110】
以上で説明した実施形態は、単なる例にすぎないとみなされる。当業者であれば、本明細書に添付されている特許請求の範囲によってのみ規定される範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に対して変形、変更、および変化を加えることが可能である。
【0111】
本明細書に挙げられた文書および引用文献はすべて、参照により組み込まれる。
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