特許第6151285号(P6151285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6151285管渠内ライニング管の支保工装置及び支保工の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6151285
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】管渠内ライニング管の支保工装置及び支保工の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E03F 7/00 20060101AFI20170612BHJP
【FI】
   E03F7/00
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-518(P2015-518)
(22)【出願日】2015年1月5日
(65)【公開番号】特開2016-125274(P2016-125274A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2016年3月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】592012650
【氏名又は名称】足立建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086036
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 仁士
(72)【発明者】
【氏名】山城 浜夫
(72)【発明者】
【氏名】柴田 弘至
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−007434(JP,A)
【文献】 特開2013−002133(JP,A)
【文献】 特開平07−269742(JP,A)
【文献】 特開2012−012850(JP,A)
【文献】 特開2008−025210(JP,A)
【文献】 特開2008−031755(JP,A)
【文献】 特開2005−248538(JP,A)
【文献】 米国特許第05817200(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 3/00−7/00
E21D 11/00−19/06
F16L 1/00−1/26、5/00−7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下埋設管渠内に、裏込め充填材の充填空間を存してその支保工装置の設置に先立って設置される円形断面のライニング管において、該ライニング管内に挿入設置され、該地下埋設管渠と該ライニング管との間隙に注入される裏込め充填材の充填圧に対抗する支保工装置であって、
下記(i)のフレーム体と下記(ii)の支柱とからなることを特徴とするライニング管の支保工装置。
(i)
剛性を有し、一定幅の薄肉状の板体を主体とし、頂部においてジャッキ部を有し、前記ライニング管の内面に沿って配され、実質的に円環状をなすフレーム体。
前記フレーム体は、前記ライニング管の下部側に配される下部側板と、該下部側板の両端に、外折れが規制され内方に折れ込み可能な枢着部を介して取り付けられる両上部側板とからなり、
前記下部側板は分割体をもって一体に組み立てられ、
前記ジャッキ部は、前記両上部側板の上端部に間隔を存して互いに対向するブラケットが張設され、該ブラケット間に押し広げ作用をなすねじ杆が架け渡されてなる。
(ii)
鉛直方向の荷重を支持する剛性の柱部を主体とし、上端において前記フレーム体の押し広げられた前記ジャッキ部のブラケットに固着係合する受座を有し、下端において前記フレーム体の下底に固定状態で着座し、前記柱部は伸縮可能とされてなる支柱。
【請求項2】
枢着部は、下部側板の上端面にピン管が管軸方向に固設され、前記ピン管と同軸上に上部側板の下端面に管軸方向にピン管が固設され、これらのピン管にピン杆が挿通される請求項1に記載のライニング管の支保工装置。
【請求項3】
枢着部は、フレーム体が真円状において外折れが規制される拘束を受ける請求項1又は2に記載のライニング管の支保工装置。
【請求項4】
下記(i)のフレーム体と下記(ii)の支柱とを有し、
(i)
剛性を有し、一定幅の薄肉状の板体を主体とし、頂部においてジャッキ部を有し、地下埋設管渠内に所定空間を存して設置される円形断面のライニング管の内面に接して配され、実質的に円環状をなすフレーム体。
前記フレーム体は、前記ライニング管の下部側に配される下部側板と、該下部側板の両端に、外折れが規制され内方に折れ込み可能な枢着部を介して取り付けられる両上部側板とからなり、
前記下部側板は分割体をもって一体に組み立てられ、
前記ジャッキ部は、前記両上部側板の上端部に間隔を存して互いに対向するブラケットが張設され、該ブラケット間に押し広げ作用をなすねじ杆が架け渡されてなる。
(ii)
鉛直方向の荷重を支持する剛性の柱部を主体とし、上端において前記フレーム体の押し広げられた前記ジャッキ部のブラケットに固着係合する受座を有し、下端において前記フレーム体の下底に固定状態で着座し、前記柱部は伸縮可能とされてなる支柱。
上記(i)のフレーム体と上記(ii)の支柱とからなるライニング管の支保工装置を使用してなされるライニング管の支保工の施工方法であって、
前記地下埋設管渠と前記ライニング管との間隙への裏込め充填材の充填前において、前記ライニング管内においてライニング管の管軸方向に適宜間隔を存して前記支保工装置を設置し、前記フレーム体を前記支柱の拘束により真円状に保持し、
前記支保工装置の間隔部に、その下端が該ライニング管の下底に直接又は間接に着座し、該ライニング管の管頂部を貫通してその上端が管渠の管頂内壁に当接する反力部材を設置し、該ライニング管への下方への押し下げ力を付与し、
しかる後、裏込め充填材を充填してなる、
ことを特徴とするライニング管の支保工の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、下水道管、上水道管及びガス管等の既設の管渠の更生のために、その管渠の内面にライニング層として設置されるライニング管の設置に関し、更に詳しくは、該ライニング管に挿入設置され該ライニング管に対する変形を防止する支保工装置及び当該支保工装置による施工方法に関する。特には、円形断面をなす該ライニング管に挿入設置され該ライニング管に対する変形を防止する支保工装置及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は先に、この種技術において、特開平10−121565号公報(以下「先行発明1」という)及び特開平10−121566号公報(以下「先行発明2」という)を提案した。
すなわち、先行発明1は、円形ライニング管の支保工装置に係り、構成において、
「地下埋設管渠の内面に設置される円形断面をなすライニング管において、該ライニング管内に挿入設置され該地下埋設管渠とライニング管との間隙に注入されるセメントミルクの充填圧に対抗する支保工装置であって、
フレームは互いに摺動するコーナー部材とサイド部材とにより多角形状をなし、前記サイド部材の外側には受座が装着され、間隔を存して配される該フレームの受座にライニング管の内面に当接する腹起し部材が架け渡されてなる。」
更に上記構成において、「フレームの上辺には反力部材が配されてなる。」こと。
作用:
使用において、フレームをライニング管内に所定間隔を保って立設し、フレームの受座に腹起し部材を架け渡す。フレームの受座の進退を調整し、腹起し部材をライニング管の内面に当接させる。反力部材はフレームの上辺よりライニング管を貫通してその先端を地下埋設管の内面頂部に当接させる。
地下埋設管とライニング管との間隙へのセメントミルクの注入において、本支保工装置によりライニング管の変形は防止される。また、セメントミルクの注入中のライニング管の浮上りは反力部材によって阻止される。
効果:
本円形ライニング管の支保工装置によれば、円形ライニング管の外部に充填されるセメントミルクの注入圧によるライニング管の変形を防止し、このため、円形ライニング管の肉厚を薄くでき、大きな経済的便益を得ることができる。更に、フレームは拡径自在となっており、ライニング管の管径の変化に容易に対応できる。
また、反力部材を使用することにより、ライニング管の浮上り防止対策にも有効である。
また、先行発明2は、矩形ライニング管の支保工装置に係り、構成において、
「地下埋設管渠の内面に設置される矩形断面をなすライニング管において、該ライニング管内に挿入設置され該地下埋設管渠とライニング管との間隙に注入されるセメントミルクの充填圧に対抗する支保工装置であって、
四角形状をなすフレームと、
該フレームの辺部の外側に装着される受座と、
間隔を存して立設される該フレームの受座にライニング管の内面に当接して架け渡される腹起し部材と、
前記フレームの上辺部及び両側辺部に配される反力部材と、
からなる。」
作用:
使用において、フレームを矩形ライニング管内に所定間隔を保って立設し、フレームの受座に腹起し部材を架け渡す。フレームの周長あるいは受座の進退を調整し、腹起し部材はライニング管の内面に当接させる。反力部材はフレームの上辺部及び両側辺部よりライニング管を貫通してその先端を地下埋設管の内壁面に当接させる。
地下埋設管とライニング管との間隙へのセメントミルクの注入において、本支保工装置によりライニング管Rの変形は防止される。また、セメントミルクの注入中のライニング管の浮上りは反力部材によって阻止される。
効果:
本ライニング管の支保工装置によれば、ライニング管の外部に充填されるセメントミルクの注入圧によるライニング管の変形を防止し、このため、ライニング管の肉厚を薄くでき、大きな経済的便益を得ることができる。更に、フレームは拡径自在となっており、ライニング管の管径の変化に容易に対応できる。
また、ライニング管の浮上り防止対策にも有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−121565号公報
【特許文献2】特開平10−121566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記先行発明を更に発展させたものであり、管渠内ライニング施工において施工工事中のライニング管内の流水抵抗を減少させ、更には、ライニング管内での作業性の向上を図る管渠内ライニング管の支保工装置を得ることを目的とする。
本発明は更に、当該支保工装置を使用してなされる支保工の施工方法を得ることも他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の管渠内ライニング管の支保工装置及び支保工の施工方法は上記目的を達成するため、以下の構成を採る。
(第1発明)
本発明の第1は、管渠内ライニング管の支保工装置に係り、請求項1に記載のとおり、
地下埋設管渠内に、裏込め充填材の充填空間を存してその支保工装置の設置に先立って設置される円形断面のライニング管において、該ライニング管内に挿入設置され、該地下埋設管渠と該ライニング管との間隙に注入される裏込め充填材の充填圧に対抗する支保工装置であって、
下記(i)のフレーム体と下記(ii)の支柱とからなることを特徴とする。
(i)
剛性を有し、一定幅の薄肉状の板体を主体とし、頂部においてジャッキ部を有し、前記ライニング管の内面に沿って配され、実質的に円環状をなすフレーム体。
前記フレーム体は、前記ライニング管の下部側に配される下部側板と、該下部側板の両端に、外折れが規制され内方に折れ込み可能な枢着部を介して取り付けられる両上部側板とからなり、
前記下部側板は分割体をもって一体に組み立てられ、
前記ジャッキ部は、前記両上部側板の上端部に間隔を存して互いに対向するブラケットが張設され、該ブラケット間に押し広げ作用をなすねじ杆が架け渡されてなる。
(ii)
鉛直方向の荷重を支持する剛性の柱部を主体とし、上端において前記フレーム体の押し広げられた前記ジャッキ部のブラケットに固着係合する受座を有し、下端において前記フレーム体の下底に固定状態で着座し、前記柱部は伸縮可能とされてなる支柱。
上記構成において、枢着部につき、
1)枢着部は、下部側板の上端面にピン管が管軸方向に固設され、前記ピン管と同軸上に上部側板の下端面に管軸方向にピン管が固設され、これらのピン管にピン杆が挿通されること、
2)上記1)の一態様として、下部側板の上端面にピン管が管軸方向に間隔を存して固設され、該間隔部に上部側板の下端面に管軸方向に固設されたピン管が嵌装され、これらのピン管にピン杆が挿通されること、
3)上記1)の更に別態様として、上部側板の下端面にピン管が管軸方向に間隔を存して固設され、該間隔部に下部側板の上端面に管軸方向に固設されたピン管が嵌装され、これらのピン管にピン杆が挿通されること、
4)枢着部は、フレーム体が真円状において外折れが規制される拘束を受けること、
5)上記4)の拘束の一態様として、下部側板の上端面と上部側板の下端面との対面するフランジ相互が当接すること、
6)上記4)の拘束の別な態様として、下部側板の上端面と上部側板の下端面とのいずれかに、あるいは各端面に突出体が突出して固設され、該一方の突出体が相手端面あるいは他方の突出体に当接すること、
は適宜採択される選択的事項である。
【0006】
(作用)
支保工装置の設置
管渠内でのライニング管の設置施工の終了後、裏込め材(セメントミルク)注入の行われる前に、本支保工装置のライニング管内での設置作業が実施される。
支保工装置のフレーム体を分割状態で、また収縮状態の支柱をライニング管内に搬入し、フレーム体を組み立て、上部側板を引き起すとともにそのジャッキ部を押し広げ作動させ、該フレーム体を円環状となす。次いで、支柱を伸長させ、その上端の受座を上記ジャッキ部のブラケットに係合させ、該支柱の上端及び下端をフレーム体に固定する。これにより、フレーム体は真円状を保持する。この状態の支保工装置をライニング管内に所定間隔をもって設置する。
これと同時に、本支保工装置の間に、管渠の内壁に反力を取るとともにライニング管を管渠の下底に押し付ける反力部材を設置する。
セメントミルク注入後の作用
管渠とライニング管との間にセメントミルク裏込め材を充填すると、該セメントミルクの流動(液体)状態下において、セメントミルクの充填圧がライニング管の側部に作用する。ライニング管に作用する側圧はライニング管に変形(幅方向の圧縮、高さの増加)を与えるが、本ライニング管の支柱の拘束作用によりフレーム体は真円状を保持し、これによりライニング管の変形が阻止される。
なお、セメントミルクによる浮力は反力部材によりライニング管の浮上りは阻止される。
ライニング管の内部空間
本支保工装置のフレーム体は、薄板状の環体よりなるとともにライニング管の内壁に沿って配され、また該フレーム体を剛的に保持する支柱は細身をもってライニング管を縦径に沿って配されるものであるので、その占有する空間は極めて小さく、十分な作業空間を与え、また施工中のライニング管内を流れる流水の流水抵抗が小さい。
【0007】
(第2発明)
本発明の第2は、管渠内ライニング管の支保工の施工方法に係り、請求項4に記載のとおり、
下記(i)のフレーム体と下記(ii)の支柱とを有し、
(i)
剛性を有し、一定幅の薄肉状の板体を主体とし、頂部においてジャッキ部を有し、地下埋設管渠の内面に所定空間を存して設置されるライニング管の内面に沿って配され、実質的に円環状をなすフレーム体。
前記フレーム体は、前記ライニング管の下部側に配される下部側板と、該下部側板の両端に、外折れが規制され内方に折れ込み可能な枢着部を介して取り付けられる両上部側板とからなり、
前記下部側板は分割体をもって一体に組み立てられ、
前記ジャッキ部は、前記両上部側板の上端部に間隔を存して互いに対向するブラケットが張設され、該ブラケット間に押し広げ作用をなすねじ杆が架け渡されてなる。
(ii)
鉛直方向の荷重を支持する剛性の柱部を主体とし、上端において前記フレーム体の押し広げられた前記ジャッキ部のブラケットに固着係合する受座を有し、下端において前記フレーム体の下底に固定状態で着座し、前記柱部は伸縮可能とされてなる支柱。
上記(i)のフレーム体と上記(ii)の支柱とからなるライニング管の支保工装置を使用してなされるライニング管の支保工の施工方法であって、
前記地下埋設管渠と前記ライニング管との間隙への裏込め充填材の充填前において、前記ライニング管内においてライニング管の管軸方向に適宜間隔を存して前記支保工装置を設置し、前記フレーム体を前記支柱の拘束により真円状に保持し、
前記支保工装置の間隔部に、その下端が該ライニング管の下底に直接又は間接に着座し、該ライニング管の管頂部を貫通してその上端が管渠の管頂内壁に当接する反力部材を設置し、該ライニング管への下方への押し下げ力を付与し、
しかる後、裏込め充填材を充填してなる、
ことを特徴とする。
上記構成において、枢着部につき、
1)枢着部は、下部側板の上端面にピン管が管軸方向に固設され、前記ピン管と同軸上に上部側板の下端面に管軸方向にピン管が固設され、これらのピン管にピン杆が挿通されること、
2)上記1)の一態様として、下部側板の上端面にピン管が管軸方向に間隔を存して固設され、該間隔部に上部側板の下端面に管軸方向に固設されたピン管が嵌装され、これらのピン管にピン杆が挿通されること、
3)上記1)の更に別態様として、上部側板の下端面にピン管が管軸方向に間隔を存して固設され、該間隔部に下部側板の上端面に管軸方向に固設されたピン管が嵌装され、これらのピン管にピン杆が挿通されること、
4)枢着部は、フレーム体が真円状において外折れが規制される拘束を受けること、
5)上記4)の拘束の一態様として、下部側板の上端面と上部側板の下端面との対面するフランジ相互が当接すること、
6)上記4)の拘束の別な態様として、下部側板の上端面と上部側板の下端面とのいずれかに、あるいは各端面に突出体が突出して固設され、該一方の突出体が相手端面あるいは他方の突出体に当接すること、
は適宜採択される選択的事項である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、以下の効果を有する。
1)本支保工装置のフレーム体は薄板状であるとともに支柱と一体となって円環状の真円を保ち、ライニング管に作用する外力に対抗し、ライニング管の有害な変形を阻止することができる。
2)本支保工装置の設置されたライニング管の内部は十分な作業空間を有し、作業者の移動、資材の運搬(搬入・搬出)・組立て等を効率的に作業が実施できる。
3)本支保工装置のライニング管内の占有部分は小さく、流水下で実施されるライニング施工において、ライニング管内を流れる流水の抵抗が小さく、不測の障害が防止され、安全な作業が実現できる。
4)本支保工装置のフレーム体は、ライニング管内に内接する環状体をなし、分割体をもって構成されるので、人孔の開口からの搬入、ライニング管内での搬入、組立て作業が容易になされる。特に、上部側板の内方への折れ込みはこの搬入作業に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のライニング管の支保工装置Sの一実施形態の全体を示す正面図(図2の1ー1線断面図)。
図2】ライニング管内における本支保工装置S及び反力部材の設置状況を示す縦断面図(図1の2−2線断面図)。
図3】本支保工装置Sのフレーム体の部分(下部側板の継手部分)の詳細断面図。
図4】本支保工装置Sのフレーム体の他の部分(底部)の詳細断面図。
図5】(a)本支保工装置Sのフレーム体の更に他の部分(枢着部)の詳細断面図(b図の5a−5a線断面図)。(b)a図の5b線矢視図。
図6】(a)本支保工装置Sのフレーム体の更に他の部分(上部側版のジャッキ部)の中央縦断面図。(b)a図の6−6線矢視図。
図7】(a)本支保工装置Sの支柱の部分(上部支柱)の詳細側面図。(b)a図の7線矢視図。
図8】(a)本支保工装置Sの支柱の他の部分(下部支柱)の詳細側面図。(b)a図の8線矢視図。
図9】本支保工装置Sの支柱の更に他の部分(中間支柱)の詳細側面一部断面図。
図10】(a)本支保工装置Sの支柱の更に他の部分(継手)の詳細平面図(b図の10a線矢視図)。(b)a図の10b線矢視図。
図11】反力部材のライニング管内設置図(図2の11−11線断面図) 。
図12】地下埋設管渠内のライニング施工の工事要領を示す断面図。
図13】フレーム体の枢着部の他の態様を示す断面図(図5(a)と同様の図)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の管渠内ライニング管の支保工装置及び支保工の施工方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1図11はその一実施形態のライニング管の支保工装置及び附属手段を示す。すなわち、図1及び図2は本支保工装置Sの全体の概略構成を示し、図3図10は本支保工装置Sの各部の構成を示し、図11は該支保工装置Sとともに使用される附属手段(反力部材)を示す。
これらの図において、Pは下水道管渠を示し、本実施形態ではコンクリート製の円形断面管渠構造を採る。Rは該下水道管渠P内に設置されるライニング管を示し、本実施形態では合成樹脂製(通常では塩化ビニル製)を採る。本発明ではライニング管の材質は問わないが、若干の弾性を示すことが本質的事項である。
【0011】
この支保工装置Sは、図1図2に示すように、ライニング管Rの内面に沿って配され、実質的に閉合状をなすフレーム体1と、該閉合状のフレーム体1の環頂部とフレーム体1の下底部とに介装される支柱2と、からなる。更には、本支保工装置Sによる管渠内のライニング施工において反力部材3が別途配される。これら(フレーム体1、支柱2、反力部材3)は所定の強度を採る限りにおいて素材は問わないが、通常は金属(鋼、アルミ等)製を採り、合成樹脂も除外されない。
【0012】
以下、各部材の細部構造を説明する。
フレーム体1図1図6参照)
フレーム体1は、剛性を有し、一定幅を有するとともに曲率を有する(薄肉)板状体をもって形成され、当該ライニング管Rの内面に沿って配されて実質的に閉合状の円環体をなす。
もっと詳しくは、前記フレーム体1は、該ライニング管Rの下底部に配される下部側板5と、該下部側板5の両方の上端に枢着部6を介して内方に折れ込み可能に取り付けられてライニング管Rの上部に配される上部側板7とからなり、該上部側板7はその中間部(すなわち環頂部)のジャッキ部8を介して2つの部分(7A,7B)に分れ、該ジャッキ部8の非作動において内方に折り込まれ、またジャッキ部8の作動により下部側板5、枢着部6、上部側板7、ジャッキ部8により閉合状のフレーム体1を形成する。
なお、本フレーム体1の剛性は、完全な剛体からなるものではなく、本発明の要求する一定限度の強度(後記するセメントミルクの充填圧による変形の阻止、等)を発現すれば足り、更に大きな負荷に対しては変形を許容するものである。
【0013】
下部側板5図3図5参照)
下部側板5は、剛性を有し、一定幅を有するとともに曲率を有する薄肉板状体をもって形成され、その素材にアルミ材、鋼材等の金属材が選ばれるが、他の素材(例えば、硬質合成樹脂)を除外しない。該下部側板5の曲率は、ライニング管Rの内面に沿う形状(曲率)に形成され、ライニング管Rの上部のほぼ半部に至る高さ(全体として270°)に及ぶ。
該下部側板5は薄肉であることを要件とするが、所定の剛性を保持する限りにおいて板状体、骨組体の諸態様を採ることができる。本実施形態では(図3参照)、曲面板10の内面に細幅の補剛材(リブ)を縁部11、縦方向12、横方向13に剛結した板体態様を示す。この場合、縁部のリブ11はフランジとなる。その他、板体態様に限らず、L型材(鋼、アルミ等)を組み合わせてなる骨組態様を除外するものではない。
【0014】
(セグメント)
該下部側板5は、ライニング管Rの内周面に沿い大部分を占めるものであるので、人孔の開口からの搬入、ライニング管R内での運搬、組立てを考慮して分割化される。
すなわち、その一態様として、図3(図面の曲率は強調されている。)に示すように、下部側板5は適宜箇所において円環体の軸方向に分割されてセグメント(底部側セグメント5A、側壁側セグメント5B)化され、更にその対接部に張設されたフランジ11相互を当接し、該フランジ11に穿設されたボルト挿通孔を介して締結具15(ボルト・ナット)をもって締結する態様を採る。
(底部)
図4(図面の曲率は強調されている。)に示すように、下部側板5の内面の底部には台座17が固設される。該台座17は、その底面が下部側板5の内面の曲率に一致し、上面が水平面をなす添設板17aと、添設板17aの上面に所定間隔を存して立設されるブラケット部材17bとからなる。該ブラケット部材17bにはボルト挿通孔が開設される。
該台座17は後記する支柱2の下部支柱31を受け、そのボルト挿通孔相互に挿通した締結具(ボルト・ナット)43をもって該下部支柱31を支持固定する。
【0015】
枢着部6図5参照)
枢着部6は、図5(図面の曲率は強調されている。)に示すように、ピン管6a、ピン管6b、ピン杆6cよりなり、同軸上に配されるピン管6a,6b内にピン杆6cが挿入されてなる。下部側板5の上端フランジ11にはピン管6aが管軸方向に間隔を存して固設され、該間隔部に上部側板7の下端フランジ11に固設されたピン管6bが嵌装され、これらのピン管6a,6bにピン杆6cが挿通される。
もっと詳しくは、ピン管6a,6bが取り付けられる下部・上部側板5,7の各フランジ11の外方(径方向)は平坦面Aとされ、各フランジ11の内方は開き角度をもって傾斜面Bとされる。これにより、枢着部6が閉じるとき下部・上部側板5,7の各フランジ11の相互は平坦面Aで当接して外折れが規制され、枢着部6が開くとき(上部側板7の内折れ状態)傾斜面B相互が当接する位置で停止する。
本実施形態において、上部側板7の内折れ角度は枢着部6の閉状態(外周での接線、0°)から90°〜100°程度(あるいはそれ以上)の開き角度を採る。
【0016】
枢着部6はこの態様に限らず、以下の態様を採ることができる。
1)下部側板の上端面に単一のピン管が管軸方向に固設され、前記ピン管と同軸上に上部側板の下端面に管軸方向に単一のピン管が固設され、これらのピン管を相並んで配し、これのピン管にピン杆が挿通される態様。
2)ピン管6a,6bがフランジ11の内端に取り付けられる態様。この態様では、枢着部6が閉じるとき下部・上部側板5,7のフランジ11相互の全面で受け、枢着部6が開くとき下部・上部側板5,7の停止位置を決めるストッパーが別途設けられる。
3)図13に更に別な枢着部6Aを示す。本枢着部6Aは、各フランジ11の表面の幅中央にピン管6a,6bが環軸方向に沿って固設され、かつ曲面板10の端面に突起体70(下部側板5側のもの70A、上部側板7側のもの70B)が突設される。突起体70の突出長はピン管6a,6bの半径長を採り、両突起体70A,70Bがその端面Aで当接して外折れ規制の機能をなす。この態様では、枢着部6と突起体70とで荷重の支持がなされ、また枢着部6が開くとき下部・上部側板5,7の停止位置を決めるストッパーが適宜設けられる。当該態様において、突起体70は曲面板10の縁に沿って連続して(すなわち一枚もの)固設される態様、あるいは間隔を置いて(すなわち複数枚で非連続)固設される態様を採ることができる。
4)上記3)の枢着部6Aの変形態様として、
4−1)突起体70A,70Bのいずれかのみとし、かつピン管6aの直径と同一を長さを採り、その突起体70(70A又は70B)で外折れ規制及び荷重支持をなす。
更には、その混合型として、突起体70A,70Bを交互に配する態様も可能である。
4−2)突起体70A,70Bを曲面板10の端面以外(例えば、ピン管6a,6bの外方のフランジ11上)に配すること。
【0017】
上部側板7、ジャッキ部8図5図6参照)
上部側板7は、下部側板5の両端に枢着部6を介して取り付けられ、ライニング管Rの上部に配される。該上部側板7はその中間部(すなわち環頂部)のジャッキ部8を介して2つの部分(7A,7B)に分れ、該ジャッキ部8の非作動において内方に折り込まれ、またジャッキ部8の作動により下部側板5、枢着部6、上部側板7、ジャッキ部8により閉合かつ円環状のフレーム体1を形成する。なお、一方の上部側板7Aはジャッキ部8のジャッキ作用をなす側であって、他方の上部側板7Bはジャッキ部8のジャッキ作用を受ける側である。
【0018】
(ジャッキ部8)(図6参照)
ジャッキ部8は図6(図面の曲率は強調されている。)に示すように、各上部側板7A,7Bの対面部にブラケット20が固設され、このブラケット20間にねじ作用をもって進退するねじ杆21が介装されてなる。
詳しくは、上部側板7A側のブラケット20(20A)の幅方向中央にねじ杆挿通孔20aが開設され、このねじ杆挿通孔に臨んでナット部材22が固設される。各ブラケット20A,20Bには2つのボルト挿通孔20bが開設される。該ブラケット20Aに対峙するブラケット20Bにはねじ杆挿通孔20aと同軸上に円環状のねじ杆受け23が固設される。
ねじ杆21は、ねじ部21a、回動部21b、先端部21cよりなり、ねじ部21aはナット部材22のねじ孔に螺合され、回動部21bの回動操作をもって進退動する。ねじ杆21の進出により先端部21cはねじ杆受け23内のブラケット20Bの前面に当接し、上部側板7A,7Bの相互を押し開く作用をなす。ねじ杆21の逆回動によりねじ杆21は退動し、先端部21cはブラケット20Bの前面より離れ、上部側板7A,7Bの相互の突っ張り力は喪失する。なお、ねじ杆受け23は適宜省略可能である。
【0019】
支柱2図7図10参照)
支柱2は、閉合状のフレーム体1の上端部とフレーム体1の下端とに介装設置され、上部支柱30、下部支柱31、これらの支柱30,31間に介装される中間支柱32を主体とし、更には下部支柱31と中間支柱32とを繋ぐ継手33を含む(図1参照)。
(上部支柱30)(図7参照)
上部支柱30は、円柱状の柱部35を主体とし、該柱部35の上端にフレーム体1の上端部への係合(取付け)を図るコ字形材よりなる受座36が固設され、該柱部35の下端にはねじ棒37が下方に延設されてなる。受座36の一方の側板にはジャッキ部8のねじ杆21の装入をなす凹溝36aが凹設され、両側板にはブラケット20のボルト挿通孔20bに対応する位置に締結具(ボルト・ナット)38の挿通されるボルト挿通孔36bが開設される。
(下部支柱31)(図8参照)
下部支柱31は、円柱状の柱部40を主体とし、該柱部40の上端にはフランジ41が張設され、該フランジ41の中心部には円形の嵌装孔41aが開設され、該柱部40の下端には座板42が固設される。該座板42のボルト挿通孔42aとフレーム体1の底部の台座17のブラケット部材17bのボルト挿通孔とを一致させ、これらのボルト挿通孔に装着される締結具(ボルト・ナット)43をもってフレーム体1との固定をなす。
(中間支柱32)(図9参照)
中間支柱32は、柱部45を主体とし、該柱部45の上部にねじ環46が固設され、ねじ環46の内面にはねじ46aが螺設され、ねじ環46の側部にハンドル47が取り付けられる。更に柱部45の下端にはフランジ48が張設され、該フランジ48の下面には円柱状のダボ49が突設されてなる。ねじ環46の内面のねじ46aには上部支柱30のねじ棒37が螺合され、ダボ49は下部支柱31の嵌装孔41aに回転を許容して挿入される。
(継手33)(図10参照)
継手33は、円環体を二つ割した2つの半環体51を主体とし、該半環体51の内面の上下には所定間隔を存して半環状の棚部51aが突設され、更に半環体51の両側にはフランジ52が張設され、該フランジ52にはボルト挿通孔52aが開設される。2つの半環体51を合し、それらのフランジ52のボルト挿通孔に装入される締結具(ボルト・ナット)をもって継手33を組み立てる。この組み立てられた継手33の内部には下部支柱31のフランジ41と中間支柱32のフランジ48を包持する空間を形成する。
【0020】
支柱2の組立て
支柱2自体の組立ては次のようである。
上部支柱30のねじ棒37に中間支柱32を螺合し、該螺合はねじ棒37の可及的最上部までなされ、これによりこれらの丈高は可及的短尺とされる。
この状態で中間支柱32の下端のダボ49を下部支柱31の上端のフランジ48の嵌挿孔41aに嵌挿する。これにより、中間支柱32のフランジ46と下部支柱31の上端のフランジ41とは中心を保って当接し、これらの合わさったフランジ48,41の側部より継手33の半環体51を嵌め合わせ、該継手33のフランジ52相互を締結具をもって一体化する。
これにより、上部支柱30、中間支柱32、下部支柱31及び継手33は同軸上に並び、中間支柱32は下部支柱31に対して回転のみ自由とされ、中間支柱32の回動により上部支柱30は上下動する。
【0021】
反力部材3図11参照)
反力部材3は、上下動をなす柱部60と、ライニング管Rの内底において複数のフレーム体1の台座17上に置かれ、該柱部60を支持する枕材61とからなる。
(柱部60)
柱部60は、上部の円管柱63、該円管柱63の下端面に当接される回動管64、該回動管64に螺合する台座65からなる。
もっと詳しくは、円管柱63は剛性の長尺の円管材よりなり、その上端部はライニング管Rの頂部に開設した開孔67を貫通し、上端面はライニング管Rの頂部内面に当接する。回動管64は、円管柱63と同径をなし、その上面は該円管柱63の下端面に当接し、その内面にはねじが螺設され、外側にはハンドル棒64aが径方向に取り付けられる。台座65は、外面にねじが螺設され、回動管64の内面のねじに螺合するねじ杆65aと、該ねじ杆65aが剛的に植設される底板65bとからなる。底板65bは相並ぶ枕材61を跨いで設置される。
回動管64はその回動により台座65のねじ杆65aを上下動し、回動管64に当接する円管柱63を回転を許容して上下動する。
(枕材61)
枕材61は、ライニング管Rの内底において複数のフレーム体1の台座17を跨ぎ、管軸方向に並列(2本)して長く設置され、その上に柱部60の台座65が置かれ、柱部60の押下げ力をフレーム体1を介してライニング管Rに伝える。本実施形態では反力部材3は枕材61を介する態様を採るが、枕材61を省略し、柱部60の台座65を直接ライニング管Rの内底に載置する態様を採ることができる。
【0022】
管渠P内のライニング施工
本実施形態のライニング管の支保工装置Sを使用してなされる管渠内のライニング施工工事を説明する。
図12はそのライニング施工工事の概要を示す。本施工工事においては、地下埋設管渠として円形断面をなす下水道管渠Pへの適用例を示す。図において、Q1は上流側人孔、O1はその開口、Q2は下流側人孔、O2はその開口であり、Eは管渠Pの埋設される地盤である。
【0023】
以下、施工手順に基づいて説明する。
(1) 既設の下水道管渠P内にライニング管Rを施工する。この施工に先立って、下水道管渠Pへの取付け管の開口は閉塞される。
【0024】
(2) ライニング管R内に本支保工装置Sを組み込む。
すなわち、先ずフレーム体1の分割体(少なくとも下部側板5の下方部とその余との3分割体、上部側板7は内方に折れ込まれて人孔Qの開口Oを通過する。)及び収縮状態の支柱2を人孔Qの開口Oを介してライニング管R内に搬入する。フレーム体1の分割部相互を締結し、更に枢着部6を介して内方に倒れ込んでいる上部側板7を引き起してブラケット20相互を相対峙させ、ジャッキ部8のねじ杆21を回動押し込んでフレーム体1を組み立てる。これにより、フレーム体1はライニング管Rの内面に沿って配される。
支柱2をフレーム体1内部の所定位置に設置する。支柱2は当初は上部支柱30が下方に収縮されており、中間支柱32をハンドル45をもって回動して上部支柱30を上方に伸長させ、上部支柱30の上端の受座36を相対峙するブラケット20に嵌め込み、ブラケット20と受座36とを締結する。これにより、フレーム体1は真円状を保持し、ライニング管Rはフレーム体1に内面より支持され、変形が補正されて真円状を保持する。支柱2の下部支柱31もフレーム体1の底部の台座17に締結する。
これにより、フレーム体1はライニング管Rの内面に密接して配される。
各フレーム体1及び支柱2を上記手順により、ライニング管R内で所定間隔をもって順次設置する。
【0025】
(2A)上記工程と同時に、反力部材3を搬入し、支保工装置S間に該反力部材3を設置する。すなわち、枕材61を複数(通常は2〜4)のフレーム体1の底部の台座17を跨いで設置し、該枕材61上に柱部60を設置する。そして、各反力部材3の設置位置のライニング管Rの頂部に反力部材3の円管柱63の挿通用の孔67が穿孔される。
【0026】
(2B)回動管64を回動してその上部の円管柱63を上方に押し上げ、更には、円管柱63を外方へ繰り出してその先端面を下水道管渠Pの壁内面の頂部に押し付ける。その反力は反力部材3の柱部60、枕材61を介してフレーム体1に伝達され、結果としてライニング管Rは管渠P内の下底に押し付けられる。円柱柱63の外方部分には予めセメントミルクとの剥離剤が塗布される。
この作用により、セメントミルクMの注入(後述)において、ライニング管Rは浮力を受けることになるが、反力部材3はこの浮力に抗してライニング管Rは常時管渠P内の下底に押し付けられる。
【0027】
(3) ライニング管Rの両端に、管渠Pとライニング管Rとの間隙を塞ぐ目張り工Vを施こし、該目張り工Vを貫通して下水道管渠Pとライニング管Rとの間隙にセメントミルクMを所定の圧力のもとに注入充填する。
セメントミルクMの充填によりライニング管Rは浮力と側圧を受け、ライニング管Rに変形(幅方向の圧縮、高さの増加)を与えるが、本ライニング管Rの支柱2の拘束作用によりフレーム体1は真円状を保持し、これによりライニング管Rの変形が阻止される。
【0028】
(4) セメントミルクMの固設を待って、あるいは所定の強度が発現したところで本支保工装置Sの解体をなす。
(4A)
先ず、反力部材3の解体をなす。すなわち、回動管54を回動して降下させて円管柱53から引き離し、台座55とともに撤去し、更に円管柱53を引き下ろし、これらの全て及び枕材51を撤去する。
(4B)
しかる後、本支保工装置Sにおいて、支柱2とフレーム体1との締結具37,43の締結を解除し、支柱2の上部支柱30を引き下げてその受座36をブラケット20から外し、支柱2を撤去する。
次いで、フレーム体1において、ねじ杆21を緩めて上部側板7(7A,7B)を内方へ折り込み、下部側板5の分割部の締結具15を緩め、フレーム体1を解体し、フレーム体1を人孔Qの開口を介して外部に搬出する。
これにより、ライニング管Rの下水道管渠Pへの設置は完了する。
【0029】
(実施形態の効果)
本実施形態のライニング管の支保工装置Sは、叙上のようにして使用されて管渠内のライニング施工が実施されるものであるので、以下の効果を有する。
1)本支保工装置Sのフレーム体1は、所定幅の薄板を主体とするとともに、ライニング管R内に内接する環状体をなし、かつ分割体をもって構成されるので、人孔Qの開口Oからの搬入、ライニング管R内での搬入、組立て作業が容易になされる。特に、上部側板7の内折れはこの搬入作業に寄与する。
2)本支保工装置Sのフレーム体1は、支柱2をもって保持されるので、剛性を発揮する該フレーム体1は真円状を良好に保持でき、外力によるライニング管Rの変形を阻止し、管渠内で裏込め材のセメントミルクの充填工程を含めてライニング施工中を通じてライニング管Rを真円状に保つことができる。
3)本支保工装置Sのフレーム体1は所定幅の薄板よりなり、その支柱2は細身であるので、作業者の作業空間が十分に確保され、作業者の移動の障害にならず、作業(資材の搬入、組立てを含む。)を円滑に行うことができる。
更には、流水下におけるライニング施工において、ライニング管R内の流水抵抗が極力小さくなり、不測の事故が防止できる。
【0030】
本発明は叙上の実施の形態にのみ限定されるものではなく、本発明の基本的技術思想の範囲内で種々設計変更が可能である。すなわち、以下の態様は本発明の権利範囲に属する。
1)本実施形態では、フレーム体1の下部側板5は3分割のセグメント化(5A,5B)されてなるが、人孔Qの開口の大きさ、その他を考慮してそれ以上に分割される態様を除外しない。この場合において、セグメント相互はフランジ11の当接を採る。
2)支柱2は、上部支柱30の受座36の固定、下部支柱31の下端の固定、更には柱部の剛性を保っての上下動、の各機能を保持する範囲内で本実施形態の改変が可能である。
その一態様として、中間支柱32を廃し、上部支柱30の下端のねじ棒37を下部支柱31の上部内面に形成したねじに螺合し、新たな継手33(本実施形態に準じる。図10参照)を上部支柱30の中間部位に配する。下方の上部支柱30には回動用のハンドルが設けられる。上部支柱30の回動により、継手33より上部は回転のみが許容され、上方の上部支柱30の受座36は上下動する。
【符号の説明】
【0031】
S……支保工装置、P……地下埋設(下水道)管渠、R……ライニング管、M……裏込め材(セメントミルク)
1……フレーム体、2……支柱、3……反力部材、5……下部側板、6……枢着部、6a, 6b……ピン管、6c……ピン杆、7……上部側板、8……ジャッキ部、20……ブラケット、21……ねじ杆、30……上部支柱、31……下部支柱、32……中間支柱、33……継手、36……受座、38,43……締結具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13