特許第6151305号(P6151305)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6151305充填材パイルの造成方法および該造成方法に用いる掘削ヘッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6151305
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】充填材パイルの造成方法および該造成方法に用いる掘削ヘッド
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/08 20060101AFI20170612BHJP
【FI】
   E02D3/08
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-109405(P2015-109405)
(22)【出願日】2015年5月29日
(65)【公開番号】特開2016-223133(P2016-223133A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2016年12月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515146453
【氏名又は名称】株式会社ガイナ
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】門田 謙和
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−009252(JP,A)
【文献】 特開2014−196594(JP,A)
【文献】 特開2004−116018(JP,A)
【文献】 特開2010−018981(JP,A)
【文献】 特開平10−239141(JP,A)
【文献】 特開平09−031959(JP,A)
【文献】 特開平08−291680(JP,A)
【文献】 特開平02−213515(JP,A)
【文献】 特開平03−090791(JP,A)
【文献】 特開昭63−161217(JP,A)
【文献】 特開2015−054275(JP,A)
【文献】 特開2014−034805(JP,A)
【文献】 特開2005−232868(JP,A)
【文献】 米国特許第06238141(US,B1)
【文献】 特開2000−170483(JP,A)
【文献】 実開昭49−139806(JP,U)
【文献】 特開2005−188220(JP,A)
【文献】 実開平01−124898(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00
E02D 3/08
E02D 3/10
E02D 3/12
E02D 5/56
E02D 9/02
E21B 7/04
E21B 7/18
E21B 7/20
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの先端に、先端が開放された先細円筒状の掘削ヘッドであって、基端部にケーシングに取り付け可能なジョイントを備え、先端部を斜め切り形状にして軸方向に対し傾斜した傾斜面を設けた掘削ヘッドを取り付け、前記掘削ヘッド内に土砂が侵入するのを防止した状態で、前記ケーシングを回転させながら、設計深度まで貫入し、設計深度に到達後、前記ケーシングを引き上げながら、前記ケーシングに充填材を投入して掘削孔内に充填材を所定高さ充填する充填工程と、前記ケーシングを前記充填材を充填した区間に再度貫入して充填材を圧密する圧密工程と、を複数回繰り返すことにより、順次、上方に充填材による充填材パイルを構築することを特徴とする充填材パイルの造成方法。
【請求項2】
請求項1記載の充填材パイルの造成方法において、前記ケーシングを回転させながら貫入する際に、圧縮空気または水を用いることで摩擦を軽減し、土砂の排出せずに貫入して行くことを特徴とする充填材パイルの造成方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の充填材パイルの造成方法において、前記ケーシングは、自走可能な建柱車に装着した回転駆動装置に着脱可能としたケーシングであることを特徴とする充填材パイルの造成方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の充填材パイルの造成方法において、前記掘削ヘッドを設計深度まで貫入する際には、前記ケーシングおよび掘削ヘッドを圧縮空気で満たし、または前記掘削ヘッドの先端から圧縮空気を噴出させて、圧縮空気の圧力で前記掘削ヘッド内に土砂が侵入するのを防止することを特徴とする充填材パイルの造成方法。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか一項に記載の充填材パイルの造成方法において、前記掘削ヘッドの先端部に開閉機構を設け、前記掘削ヘッドを設計深度まで貫入する際には、前記掘削ヘッドの先端部を閉じることにより前記掘削ヘッド内に土砂が侵入するのを防止することを特徴とする充填材パイルの造成方法。
【請求項6】
請求項5記載の充填材パイルの造成方法において、前記ケーシングの貫入時に、前記ケーシングおよび掘削ヘッドを圧縮空気で満たしておくことを特徴とする充填材パイルの造成方法。
【請求項7】
ケーシングに取り付け可能なジョイントを備え、先端部を斜め切り形状にして軸方向に対し傾斜した傾斜面を設けた掘削ヘッドであって、前記ジョイントを備えた内管とその外側に装着された外管とで二重管構造とし、正転時は前記外管の傾斜面が前記内管の傾斜面と反対側に位置して先端が閉じた状態となり、逆転時は前記外管の傾斜面が前記内管の傾斜面と同じ側に位置して先端が開口された状態となるようにした掘削ヘッドをケーシングの先端に取り付け、前記ケーシングを正回転させながら、設計深度まで土を排出せずに貫入し、設計深度に到達後、前記ケーシングを逆回転させて先端を開口させ、前記ケーシングを引き上げながら、前記ケーシング内に充填材を投入して掘削孔内に充填材を所定高さ充填する充填工程と、前記ケーシングを前記充填材を充填した区間に再度貫入して充填材を圧密する圧密工程と、を複数回繰り返すことにより、順次、上方に充填材による充填材パイルを構築することを特徴とする充填材パイルの造成方法。
【請求項8】
先細円筒状の掘削ヘッドであって、基端部に地盤改良機のロッドまたはケーシングに取り付け可能なジョイントを備え、先端部を斜め切り形状にして軸方向に対し傾斜した傾斜面を設けてなり、前記掘削ヘッドを、前記ジョイントを備えた内管とその外側に装着された外管とで二重管構造とし、正転時は前記外管の傾斜面が前記内管の傾斜面と反対側に位置して先端が閉じた状態となり、逆転時は前記外管の傾斜面が前記内管の傾斜面と同じ側に位置して先端が開口された状態となるようにしたことを特徴とする掘削ヘッド。
【請求項9】
請求項記載の掘削ヘッドにおいて、軸方向に先細のテーパー状に形成してなる圧密部を有する先端部と、軸方向に同径になるように形成した孔壁形成部を有する中間部とを備えていることを特徴とする掘削ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砕石等の充填材による充填材パイルを低トルク・低荷重の施工機械で効率よく造成する方法およびその造成方法に適した掘削ヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤改良を目的とする締め固め工法として、中空管を地盤の設計深度まで貫入した後、地表まで引き抜く過程で、前記中空管を一定深さ引き抜き管内に投入された砂や砕石等の中詰材を排出する引き抜き工程と、前記中空管を再び貫入して中詰材を締め固める再貫入工程とを繰り返し行うことにより、所定強度の締め固め中詰柱状体を造成するコンパクション工法と呼ばれる方法が知られている。
【0003】
中詰材の締め固め方法として、バイブロハンマー等を用いる動的締め固めを行う方法と、オーガーモーターの回転力もしくは重機の押込荷重を利用する静的締め固め行う方法がある。一般的にこれらは、高トルク、高荷重の大型機械での施工を想定しており、戸建住宅等の狭小地で施工を行うには不都合があった。
【0004】
そこで、一般住宅においても施工可能な中詰柱状体の築造工法がいくつか提案されており、特許文献1は下端に螺旋状の掘削翼を備えた回転軸と前記回転軸の掘削翼より上部を包囲する円筒状の中空管であって、周壁に長さ方向に沿って複数の開閉自在な投入孔からなら二列の砕石投入列を形成した中空管と、前記中空管の下端を開閉する半円形で相互にその厚さ寸法だけ上方または下方にずれて配された中空管側開閉板及び回転軸側開閉板からなる開閉手段であって、該中空管の下部内周に固設されている開閉手段と、前記中空管の上端と前記回転軸の対応部位との間に構成する該一定角度範囲の回転が完了すると、この時点から該中空管に同方向の回転を伝える回転伝達手段と、前記回転軸と前記中空管との相互の回転方向の自由な動きは許容しつつ上下方向には相互を連結する上下方向には相互を連結する上下方向連結手段と、で構成した無排土砕石杭形成具が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−237141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載の発明によれば、中空管に土砂を侵入させず中空間を所定深度まで貫入し、砕石柱の構築が可能であると推察され、中空管の下端部に備えた螺旋状の掘削翼は貫入および中詰材の締め固めに補助的に機能しているが、螺旋状の掘削翼は土砂を上昇させる働きがあるため先端に土詰まりを生じさせる可能性があるほか、該掘削翼は鉛直方向の締め固めは良好に行えるものの水平方向へ中詰材を広げるという効果は低いという問題があった。
【0007】
本発明では、トルク・押込荷重の低い小型施工機械でも、土砂や地下水を地上に排出することなく効率良く充填材パイルを造成できる方法、および掘進性に優れ、かつ良好な充填材パイルを効率よく造成するのに適した掘削ヘッドを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の充填材パイルの造成方法は、ケーシングの先端に、先端が開放された先細円筒状の掘削ヘッドであって、基端部にケーシングに取り付け可能なジョイントを備え、先端部を斜め切り形状にして軸方向に対し傾斜した傾斜面を設けた掘削ヘッドを取り付け、掘削ヘッド内に土砂が侵入するのを防止した状態で、ケーシングを回転させながら、設計深度まで土砂を排出せずに貫入し、設計深度に到達後、ケーシングを引き上げながら、ケーシングに充填材を投入して掘削孔内に充填材を所定高さ充填する充填工程と、ケーシングを前記充填材を充填した区間に再度貫入して充填材を圧密する圧密工程と、を複数回繰り返すことにより、順次、上方に充填材による充填材パイルを構築することを特徴とするものである。
【0009】
充填材としては、砕石が一般的であるが、砕石以外に、砂利、砂、セメントミルク等の充填材を用いることもできる。
【0010】
また、ケーシングを回転させながら貫入する際に、圧縮空気または水を用いることで摩擦を軽減することができる。すなわち、ケーシングの先端あるいは外周位置から圧縮空気または水を噴出させながら貫入することで無排土の貫入をスムーズに行うことが可能となる。
【0011】
ケーシングは自走可能な比較的小型の建設機械に装着した回転駆動装置に着脱可能としたケーシングを使用することができる。ここで言う比較的小型の建設機械としては、建柱車を挙げることができ、住宅の基礎あるいは狭隘な場所での施工を低コストで効率よく行うことができる。
【0012】
掘削ヘッドとしては、先細円筒状の掘削ヘッドであって、基端部にケーシングに取り付け可能なジョイントを備えたものなどを使用することができ、特に、先端部を斜め切り形状にして軸方向に対し傾斜した傾斜面を設けた掘削ヘッドを用いれば、掘削性を大幅に向上させることができる。
【0013】
また、本発明の造成方法において、掘削ヘッド内に土砂が侵入するのを防止する手段としては、掘削ヘッドを設計深度まで貫入する際に、ケーシングおよび掘削ヘッドを圧縮空気で満たし、または前記掘削ヘッドの先端から圧縮空気を噴出させて、圧縮空気の圧力で掘削ヘッド内に土砂が侵入するのを防止する手段を用いることができる。
【0014】
また、掘削ヘッド内に土砂が侵入するのを防止する手段としては、掘削ヘッドの先端部に開閉機構を設け、掘削ヘッドを設計深度まで貫入する際には、掘削ヘッドの先端部を閉じることにより掘削ヘッド内に土砂が侵入するのを防止するようにすることができる。
【0015】
掘削ヘッドの先端部に開閉機構を設ける場合も、必要に応じ、ケーシングの貫入時に、ケーシングおよび掘削ヘッドを圧縮空気で満たしておくようにしてもよい。
【0016】
本発明の充填材パイルの造成方法の他の形態としては、ケーシングに取り付け可能なジョイントを備え、先端部を斜め切り形状にして軸方向に対し傾斜した傾斜面を設けた掘削ヘッドであって、ジョイントを備えた内管とその外側に装着された外管とで二重管構造とし、正転時は外管の傾斜面が内管の傾斜面と反対側に位置して先端が閉じた状態となり、逆転時は外管の傾斜面が内管の傾斜面と同じ側に位置して先端が開口された状態となるようにした掘削ヘッドをケーシングの先端に取り付け、ケーシングを正回転させながら、設計深度まで土を排出せずに貫入し、設計深度に到達後、ケーシングを逆回転させて先端を開口させ、ケーシングを引き上げながら、ケーシング内に充填材を投入して掘削孔内に充填材を所定高さ充填する充填工程と、ケーシングを前記充填材を充填した区間に再度貫入して充填材を圧密する圧密工程と、を複数回繰り返すことにより、順次、上方に充填材による充填材パイルを構築するようにしてもよい。
【0017】
本発明の掘削ヘッドは、先細円筒状の掘削ヘッドであって、基端部に地盤改良機のロッドまたはケーシングに取り付け可能なジョイントを備え、先端部を斜め切り形状にして軸方向に対し傾斜した傾斜面を設けたことを特徴とするものである。先端部を斜め切り形状にして軸方向に対し傾斜した傾斜面を設けることで、通常の先端が平らに切断された形状のものに比べ、掘削速度が格段に向上する。
【0018】
さらに、具体的な形態としては、この掘削ヘッドについて、軸方向に先細のテーパー状に形成してなる圧密部を有する先端部と、軸方向に同径になるように形成した孔壁形成部を有する中間部とを設けた構造とすることができる。孔壁形成部を設けることで、より確実な圧密と孔壁崩壊を防ぐことが可能となる。
【0019】
さらに、充填材パイルの造成方法に用いる場合の掘削ヘッドとしては、掘削ヘッドを、ジョイントを備えた内管とその外側に装着された外管とで二重管構造とし、正転時は前記外管の傾斜面が前記内管の傾斜面と反対側に位置して先端が閉じた状態となり、逆転時は外管の傾斜面が内管の傾斜面と同じ側に位置して先端が開口された状態となるようにした掘削ヘッドを用いることで、充填材パイルの造成をより効率的に短時間で行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、小型施工機械においても土を排出することなく圧密を伴って効率的に、地盤に穿孔することが可能となる。
【0021】
本発明では、掘削ヘッド内に土を侵入させることなく地盤に掘削ヘッドを貫入することが可能であり、任意の深さにて砕石、砂、セメントミルク等の充填材を掘削孔内に排出することが可能である。
【0022】
本発明によれば、小型施工機械においても土を排出することなく圧密を伴うため、掘削孔周辺の地盤を締め固めることができ、充填材柱状体を地上まで確実に構築することが可能となる。
【0023】
本発明によれば、小型施工機械においても土を排出することなく圧密を伴うため、掘削孔周辺の地盤を締め固めることができ、充填材柱状体を地上まで確実に構築することが可能となる。
【0024】
先端部を斜め切り形状にして軸方向に対し傾斜した傾斜面を設けた掘削ヘッドを用いることで、通常の先端が平らに切断された形状のものに比べ、掘削速度が格段に向上する。
また、掘削ヘッドを二重管構造とし、正転と逆転により先端が開閉する構造を加えることで、充填材パイルの施工をより効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の充填材パイルの造成方法における一実施形態を示す鉛直断面図である。
図2図1の施工方法に用いられる二重管構造の掘削ヘッドの一実施形態における先端開閉機構を説明するための斜視図である。
図3図2に対応する正面図である。
図4】二重管構造の掘削ヘッドの内管と外管を分離して示した側面図である。
図5】二重管構造の掘削ヘッドの開閉機構を説明するための水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図2図5は、本発明の掘削ヘッド21の一実施形態を示したもので、内管1および外管2からなる二重管構造を有し、先端圧密部3、孔壁形成部4、ジョイント部5からなる。先端圧密部3は先端部をテーパー状にして軸方向に対し傾斜した傾斜面3aを設け、傾斜面3aは開閉部3bを有する。孔壁形成部4は傾斜面を有さない同径の円筒で構成され、ジョイント部5はケーシング22もしくは回転動力装置と接続可能な構造を有する。
【0027】
また、外管2の外周面には、掘削ヘッド21の軸方向に延びる摩耗防止リブ13が3条設けられており、掘削時に外管2の外周面が摩耗するのを防止している。摩耗防止リブ13は3条に限らず任意の数設けることができるが、特に、掘削ヘッド21の先端が斜めに形成され掘削翼的な機能を有する傾斜面3a近傍に設けた摩耗防止リブ13は掘削補助の機能も有する。
【0028】
図4に示ように、内管1を外管2に挿入し、内管1の外周面を摺動する摺動用リング6を介して固定ボルト7にて内管1と外管2を固定すれば、内管1と外管2は軸方向に対しては不動であるが、外管2の動きが固定された場合には一定角度の回転が可能となる。
【0029】
内管1の先端部は軸に対して対称に2つの傾斜面を有しており、一方は閉口面11であり、一方は開口面12である。掘削ヘッドを地盤に貫入する際は傾斜面3aと閉口面11が面一になるように取付けを行うことで、土を掘削ヘッド内に侵入させることなく貫入できるほか、貫入時の抵抗を軽減することができる。
【0030】
図5を用いて掘削ヘッド21の開閉機構を説明する。内管1は回転キー8を、外管2は回転キー溝9を備えており、本実施例では180度回転可能に取り付けられている。外管2を固定し、内管1を軸に対して右回転させると内管のみが180度回転した後、開閉キー8が外管2に取り付けられているストッパー10に当接し(図5(a)の状態)、以降は内管1と外管2が一体となって回転する。
【0031】
この状態で、外管2を固定し内管1を軸方向に対して左回転させると、内管1のみが180度回転した後、開閉キー8がストッパー10に当接し(図5(b)の状態)、内管1と外管2が一体となって回転する構造である。
【0032】
この動きによって、内管1の閉口面11と開口面12を任意に選択することができ、地盤に当接した側に開口面12を選択すると、砕石、砂利、砂、セメントミルク等の充填材を掘削ヘッド21の先端部から地盤へと排出することが可能となる。
【0033】
図2および図3は、掘削ヘッド21の先端が閉じ、閉口面11が見えている状態(図2(a)、図3(a))から掘削ヘッド21の先端が開口し、開口面12が見えている状態(図2(h)、図3(h))までの動作を示したものである。
【0034】
本実施例では、回転角度が180度になるように回転キー8、回転キー溝9、及びストッパー10を配置したが、例えばストッパー10の幅を変更することで回転角度は任意に設定することが可能となる。
【0035】
また、本実施例は地盤内に充填材を排出することを前提としたものであるが、地盤の穿孔のみを行う場合、鋼管杭のように地中に埋め込みを行う場合などは開閉手段を有しない掘削ヘッドを用いることが可能である。掘削ヘッドに備えるジョイント部は、装置の運搬ならびに充填材投入に考慮し取り付けてあるものであり、充填材の投入が必要でない場合や、運搬可能な長さであればジョイント部は取付けなくても良い。
【0036】
次に、図1を用いて、上述の掘削ヘッド21を用いた中詰柱状体(充填材パイル)の造成方法について説明する。この施工は、掘削ヘッド21をジョイント部5によりケーシング22に接続し、ケーシング22の基端部を回転動力を有する地盤改良機に取り付けて行い、地盤の改良または補強を行う。
【0037】
本実施例では、掘削ヘッド21、ケーシング22を一体として地盤貫入装置と呼ぶ。ケーシング22は掘削ヘッド21よりも小径のものを用いている。これは、小トルク、小型施工機械で施工を行うことに配慮したものであり、貫入抵抗の軽減を目的としている。従って、十分な貫入能力を有する施工機械を用いる場合はケーシング22と掘削ヘッド21は同径であっても問題ない。地盤改良機は種々あるが、本発明では回転動力を有する地盤改良機であれば何でもよいので、図では省略している。
【0038】
本実施例における施工手順は以下の通りである。なお、掘削ヘッド21の各部については、図2図5の符号を用いて説明する。
前記地盤貫入装置を、掘削ヘッド21ならびにケーシング22内を圧縮空気または水で満たし、先端より噴出しながら設計深度まで土を排出しないで、回転させながら貫入する(図1(a)、(b)参照)。
【0039】
次に、貫入時の回転方向と反対方向に回転させることにより、掘削ヘッド21の外管2は土圧によって動きが停止したまま、内管1のみを回転させることが可能であり、この動作によって先端の開口面12が開口する(図1(c)参照)。
【0040】
次に、ケーシング22ならびに掘削ヘッド21内に砕石を投入する。砕石の投入は設計深度分を一挙に投入してもよいし、ジョイント部5の接続を解除することにより随時砕石を投入する方法でも良い。
【0041】
砕石投入が完了したら、例えば50cm程度地盤改良装置を引き上げ(図1(d)参照)、砕石を貫入孔に排出したのち、引き上げと同程度の50cm程度地盤改良装置を、回転を伴って貫入し砕石を地盤に押し広げる(図1(e)参照)。
【0042】
次の工程からは、100cm程度地盤改良装置を引き上げ(図1(f)参照)、砕石を貫入孔に排出した後、引き上げ高さの半分程度の50cm程度地盤改良装置を、回転を伴って貫入し砕石を地盤に押し広げる(図1(g)参照)。
【0043】
以降、100cm引き上げ、50cm程度貫入を地上まで繰り返すことにより掘削ヘッド21の先端の2倍程度の直径を有する砕石柱を造成する(図1(h)参照)。
【0044】
先端の深度、押込み荷重、トルク、エアー圧、鉛直性を計測し、確認しながら施工を行えば、より確実な砕石柱状体の築造が可能となる。
【0045】
ここでは、100cm引き上げ、50cm貫入の例を示したが、引き上げ高さ、貫入深さは自在に変更することが可能であり、例えば、同じ深度で数回引き上げ、貫入を繰り返し行うことにより砕石柱の直径を実施例よりも拡大することも可能である。地盤の強度が十分で、透水性等を確保するのみでよいのであれば、貫入工程を省略し、地盤改良装置の引き抜きのみを行って砕石柱を形成しても良い。
【0046】
使用充填材は砕石の代わりに、砂、再生砕石等でも良い。また、セメントミルクを排出することも可能でありこの場合は、貫入工程を省略し、掘削ヘッドと同径の柱状体を形成する方法が良い。
【0047】
ここでは、圧縮空気または水を先端より噴出する方法による実施例を示したが、掘削ヘッドならびにケーシングに配管を施してもよいし、側面より噴出する方法を用いても良い。
【0048】
次に充填材を用いない場合の実施例について説明する。
前記地盤貫入装置を、回転を伴い、掘削ヘッド21ならびにケーシング22内を圧縮空気または水で満たし、先端より噴出しながら設計深度まで土を排出しないで貫入し、回転動力装置とケーシング22を切り離し地中に設置することで鋼管杭となる。
また、地盤改良に限らず、地盤に土を排出せず穿孔する装置として井戸や水抜き孔の施工にも利用可能である。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、本発明の目的および趣旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…内管、2…外管、3…先端圧密部、3a…傾斜面、3b…開閉部、4…孔壁形成部、5…ジョイント部、6…摺動用リング、7…固定ボルト、7a…ボルト孔、8…開閉キー、9…開閉キー溝、10…ストッパー、11…閉口面、12…開口面、13…摩耗防止リブ、
21…掘削ヘッド、22…ケーシング、
G…地盤、P…充填材柱状体
図1
図2
図3
図4
図5