(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記穿孔工程は、前記小径部と同じ内径で前記クラッドロッドを貫通する小径貫通孔を形成する小径孔穿孔工程と、前記小径貫通孔の一端側の内径を広げて前記大径部を形成する大径部形成工程と、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ用母材の製造方法。
前記穿孔工程において、前記クラッドロッドの一端側に開口部を有して貫通しない空孔を前記大径部となるように形成した後、前記大径部から前記クラッドロッドの他端側まで貫通する空孔を前記小径部となるように形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ用母材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る光ファイバ用母材の製造方法、及び、これを用いた光ファイバの製造方法の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、理解の容易のため、それぞれの図において各部の縮尺や縦横比は実際とは異なる。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る光ファイバの長手方向に垂直な断面の様子を示す図である。本実施形態の光ファイバはマルチコアファイバとされる。
図1に示すように、マルチコアファイバ1は、複数のコア10と、複数のコア10の外周面を隙間なく囲むクラッド20と、クラッド20の外周面を被覆する内側被覆層31と、内側被覆層31の外周面を被覆する外側被覆層32とを備える。なお、
図1にはコア10が7つ備えられる形態を例示しているが、本発明においてコア10の数及び位置は特に限定されない。
【0024】
マルチコアファイバ1では、それぞれのコア10が所定の間隔を有して配置されている。それぞれのコア10の直径は、例えば、6μm以上10μm以下とされ、クラッド20の直径は、例えば、125μm以上230μm以下とされる。また、それぞれのコア10の屈折率はクラッド20の屈折率よりも高く、それぞれのコア10のクラッド20に対する比屈折率差は、例えば、0.2%以上0.5%以下とされる。
【0025】
また、マルチコアファイバ1は、例えば、コア10がゲルマニウム等の屈折率が高くなるドーパントが添加されたシリカガラスから成り、クラッド20が何ら添加物の無いシリカガラスから成る構成や、コア10が何ら添加物の無いシリカガラスから成り、クラッド20がフッ素等の屈折率が低くなるドーパントが添加されたシリカガラスから成る構成とされる。
【0026】
図2は、
図1に示したマルチコアファイバ1を製造するための光ファイバ用母材であるマルチコアファイバ用母材1Pの長手方向に垂直な断面の様子を示す図である。マルチコアファイバ用母材1Pは略円柱状の形状をしている。また、マルチコアファイバ用母材1Pは、それぞれのコア10となる複数のロッド状のコアガラス体10Pと、それぞれのコアガラス体10Pを囲むロッド状のクラッドガラス体20Pとから構成されている。コアガラス体10Pは、コア10と同じ材料から構成され、クラッドガラス体20Pはクラッド20と同じ材料から構成される。このようなマルチコアファイバ用母材1Pが線引きされ、内側被覆層31及び外側被覆層32に被覆されることにより、
図1に示すマルチコアファイバ1となる。
【0027】
次に、
図2に示すマルチコアファイバ用母材1Pの製造方法、及び、該マルチコアファイバ用母材1Pを用いた
図1に示すマルチコアファイバ1の製造方法について説明する。
【0028】
図3は、マルチコアファイバ用母材1Pの製造方法、及び、マルチコアファイバ1の製造方法の工程を示すフローチャートである。
図3に示すように、マルチコアファイバ用母材1Pの製造方法は、準備工程P1と、穿孔工程P2と、挿入工程P3と、封止工程P4と、一体化工程P5と、を備える。そして、マルチコアファイバ1の製造方法は、このようにして製造されたマルチコアファイバ用母材1Pを線引きする線引工程P6を更に備える。以下、これらの各工程について説明する。
【0029】
<準備工程P1>
準備工程P1は、クラッド20となるクラッドガラス体20Pを有するクラッドロッド1Ps(
図6等参照)、及び、コア10となるコアガラス体10Pを有するコアロッド10Ps(
図6等参照)を準備する工程である。クラッドロッド1Ps及びコアロッド10Psはそれぞれ円柱状のガラスロッドである。コアロッド10Psは円柱状のコアガラス体10Pとコアガラス体10Pの外周面を被覆する被覆層20Pcとを備えている。被覆層20Pcは、クラッドガラス体20Pと同じガラス体からなる層である。
【0030】
なお、コアロッド10Psは挿入工程P3までに準備されていれば良く、後述する穿孔工程P2より後に準備されてもよい。
【0031】
<穿孔工程P2>
次に、穿孔工程P2を行う。穿孔工程P2は、コアロッド10Psを挿入するための貫通孔20H(
図5参照)をクラッドロッド1Psに形成する工程である。具体的には、準備したクラッドロッド1Psにおけるコアガラス体10Pの中心が位置すべき場所を中心として、クラッドロッド1Psの長手方向に沿った貫通孔20Hを形成する。本実施形態では、
図2に示すようにマルチコアファイバ用母材1Pが7つコアガラス体10Pを有するので、7つそれぞれのコアガラス体10Pが配置される位置に貫通孔20Hを形成する。
【0032】
貫通孔20Hは、一端側にコアロッド10Psの外径より大きな内径の大径部22を有し、他端側にコアロッド10Psの外径より小さな内径の小径部21を有する。貫通孔20Hが小径部21を有することによって、貫通孔20Hの大径部22に挿入されたコアロッド10Psは、小径部21側への移動を制限される。大径部22の内径と小径部21の内径との差は0.2mm以上であることが好ましい。大径部22に挿入されたコアロッド10Psの小径部21側への移動を抑制しやすくなるためである。
【0033】
このような貫通孔20Hを形成する穿孔工程P2の具体例について
図4及び
図5を参照しつつ説明する。
図4及び
図5は、それぞれ穿孔工程P2の一部を説明する図であり、クラッドロッド1Psの長手方向に沿った断面の様子を示す図である。
図4及び
図5では便宜的に長手方向と径方向の縮尺を変え、クラッドロッド1Psのうち一部のみを示し、1つの貫通孔20Hの形成過程を示すが、他の貫通孔20Hも同様に形成される。
【0034】
本実施形態では、穿孔工程P2は、小径部21と同じ内径でクラッドロッド1Psを貫通する小径貫通孔を形成する小径孔穿孔工程P21と、小径貫通孔の一端側の内径を広げて大径部22を形成する大径部形成工程P22と、を有する。
【0035】
図4は、小径孔穿孔工程P21後のクラッドロッド1Psの長手方向に平行な断面を示す図である。小径孔穿孔工程P21は、
図4に示すように小径部21と同じ内径でクラッドロッド1Psを貫通する小径貫通孔21Hを形成する工程である。小径貫通孔21Hを形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、ドリルを使った機械加工が挙げられる。
【0036】
図5は、大径部形成工程P22後のクラッドロッド1Psの長手方向に平行な断面を示す図である。大径部形成工程P22は、小径貫通孔21Hの一端側(
図4に破線で示した部分)の内径を広げる工程である。小径貫通孔21Hのうち拡径された部分が大径部22となり、拡径されなかった部分が小径部21となる。大径部22の形成する部分の長さは、当該大径部22に挿入されるコアロッド10Psの長さと同じであることが好ましい。また、小径貫通孔21Hの内径を広げる方法としては、機械加工またはエッチング加工が好ましい。
【0037】
機械加工によって小径貫通孔21Hの内径を広げる方法としては、例えば、ドリルで小径貫通孔21Hの内周面を削る方法が挙げられる。このとき、小径貫通孔21Hの内周面の表面粗さを低減させつつ小径貫通孔21Hの内径を広げることが好ましい。例えば、小径孔穿孔工程P21で用いたドリルツールよりも砥粒番手が細かいドリルで小径貫通孔21Hの内周面を研磨しつつ大径部22を形成することができる。このような機械加工を行うことによって、大径部22の内周面の平滑化と大径部22の形成とを同時に行うことができる。従って、少ない工数で平滑な内周面を有する大径部22を形成することができる。
【0038】
大径部22の内周面はコアロッド10Psの外周面と接する部分であり、平滑化されていることが好ましい。大径部22の内周面が平滑化されることによって、挿入工程P3においてコアロッド10Psの外周面に傷がつくことや、一体化工程P5においてコアロッド10Psの外周面と大径部22の内周面との間に不要な空間が形成されること等を抑制できる。
【0039】
また、エッチング加工によって小径貫通孔21Hの内径を広げる方法としては、液相による方法と気相による方法とが挙げられる。液相によるエッチング加工の具体例としては、小径貫通孔21Hが形成されたクラッドロッド1Psを、長手方向が垂直になるようにエッチング液に浸漬させ、ちょうど大径部22となる部分だけがエッチング液に浸漬するようにする。この時、クラッドロッド1Psの外周面もエッチング液に接することになるので、クラッドロッド1Psの外周面もエッチング加工されること加味してクラッドロッド1Psを少し太目に形成しおくことや、クラッドロッド1Psの外周面をマスキングしてクラッドロッド1Psの外周面がエッチング液に接触することを避けることが好ましい。また、小径貫通孔21Hのうち大径部22が形成される側の開口部を封止し、当該開口部が下になるようにしてクラッドロッド1Psを立て、大径部22となる部分にだけエッチング液が接するように小径貫通孔21Hの他方の開口部から小径貫通孔21Hにエッチング液を注入する方法も挙げられる。
【0040】
一方、気相でエッチング加工する場合、小径貫通孔21Hのうち小径部21となる側がエッチングガスを流す上流側になることが好ましい。例えば、エッチングガスとして知られているSF
6は、それ自体ではエッチング作用を示さず、熱分解、プラズマ等により、エッチング作用を持つ活性ガス種とすることによってエッチングが行われる。すわなち、小径部21となる側がエッチングガスを流す上流側とされることによって、上流側ではエッチングガスを不活性のままとし、小径貫通孔21Hのうち大径部22となる下流側の部分では加熱を行う等してエッチングガスを活性化させてエッチング加工を実施し、大径部22を形成することができる。
【0041】
上記エッチング加工は、大径部22の内周面の小さな凹凸を除去したり、大径部22の内周面から水酸基等の不純物を除去したりすることができる。従って、エッチング加工によっても大径部22の形成と大径部22の内面の平滑化とを同時に行うことができる。
【0042】
上記エッチング加工に用いるエッチング液としては、例えば、フッ酸やバッファードフッ酸、あるいはフッ酸やBHFと硝酸の混酸などが挙げられる。また、上記エッチング加工に用いるエッチングガスとしては、例えば、SF
6、CF
4、C
2F
6、SiF
4などのフッ化物ガスなどが挙げられる。
【0043】
なお、大径部形成工程P22において小径貫通孔21Hのうち大径部22となる部分を機械加工によって拡径する場合、当該機械加工を行った後に上述したようにして大径部22となる部分に対して更にエッチング加工を施すことが好ましい。これにより、大径部22の内周面の不純物を除去することができる。この場合、エッチング加工によって小径貫通孔21Hが拡径される分を考慮して小径貫通孔21Hに機械加工を施すことが好ましい。
【0044】
<挿入工程P3>
次に、挿入工程P3を行う。挿入工程P3は、コアロッド10Psを貫通孔20Hに挿入する工程である。具体的には、貫通孔20Hのうち大径部22側の開口部20Aから大径部22にコアロッド10Psを挿入する。こうして、クラッドロッド1Psは、貫通孔20Hにコアガラス体10Pとなるコアロッド10Psが挿入された状態となる。
図6は、貫通孔20Hにコアロッド10Psが挿入された状態におけるクラッドロッド1Psの長手方向に平行な断面の様子を示す図である。
図6では便宜的にクラッドロッド1Psの一部のみを示しており、1つの貫通孔20Hとそこに挿入されている1つのコアロッド10Psが表れているが、他の貫通孔20H及びそこに挿入されているコアロッド10Psも同様の状態となる。
【0045】
<封止工程P4>
次に、封止工程P4を行う。封止工程P4は、貫通孔20Hの大径部22側の開口部20Aを封止する工程である。開口部20Aを封止する方法としては、例えば、
図7に示すように、クラッドロッド1Psのうち開口部20A側の底面に封止材40を溶着し、全ての開口部20Aを封止材40によって覆う方法が挙げられる。この封止材40には、例えば、ガラス板を用いることができる。なお、
図7は、
図4〜
図6と同様に、便宜的にクラッドロッド1Psの一部のみを示している。
【0046】
<一体化工程P5>
次に、一体化工程P5を行う。一体化工程P5は、封止工程P4の後、コアロッド10Psの外周面全体が大径部22の内周面と一体化される工程である。
【0047】
一体化工程P5は、例えば、コアロッド10Psが挿入されたクラッドロッド1Psを横型旋盤に設置し、クラッドロッド1Psを回転させながら加熱することによって、コアロッド10Psの外周面と大径部22の内周面と一体化される工程とされる。
図8は、コアロッド10Psが挿入されたクラッドロッド1Psがセットされた状態の横型旋盤を示す図である。
図8に示すように、横型旋盤50は、クラッドロッド1Psの両端部をチャッキング可能な一対のチャッキング部55a、55bと、貫通孔20H内を真空引き可能な真空ポンプ51と、クラッドロッド1Psの長手方向に移動可能とされ、クラッドロッド1Psの外周面を加熱可能なバーナ58と、を主な構成として備える。
【0048】
本実施形態において、チャッキング部55aは、クラッドロッド1Psの一方の端部をチャッキングし、チャッキング部55bは、クラッドロッド1Psの他方の端部をチャッキングし、チャッキング部55a,55bにより、クラッドロッド1Psは支持される。
【0049】
バーナ58は、例えば、酸水素バーナとされ、上述のようにクラッドロッド1Psの長手方向に沿って移動可能に構成される。
【0050】
本工程において、バーナ58またはクラッドロッド1Psをクラッドロッド1Psの長手方向に沿って往復移動させることにより、クラッドロッド1Psを加熱する。この加熱により、クラッドロッド1Psの貫通孔20Hが縮小され、コアロッド10Psの外周面全体が大径部22の内周面と一体化される。このようにしてコアロッド10Psの外周面全体が大径部22の内周面と一体化されることによって、コアロッド10Psの外周面と大径部22の内周面との間の不要な空間がなくなる。そして、このとき、コアロッド10Psの被覆層20Pcはクラッドガラス体20Pの一部となる。こうして、
図2に示すマルチコアファイバ用母材1Pが得られる。
【0051】
また、本工程では上記加熱と同時に真空ポンプ51によって貫通孔20H内を真空引きすることが好ましい。真空ポンプ51は貫通孔20H内を真空引き可能なポンプであれば特に限定されない。真空ポンプ51による真空引きに先立って、クラッドロッド1Psの小径部21側の開口部20Bにはガラス管54が取り付けられる。このガラス管54を介して真空ポンプ51によって、クラッドロッド1Psの小径部21側の開口部20Bから貫通孔20Hの内周面とコアロッド10Psの外周面との間の空間を真空引きする。このように真空引きすることによって、貫通孔20Hの内周面とコアロッド10Psの外周面との間に空気が残留することを抑制できる。なお、
図8では簡略化して示しているが、ガラス管54は全ての貫通孔20Hの開口部20Bに取り付けられ、全ての貫通孔20Hが真空ポンプ51によって真空引きされる。
【0052】
コアロッド10Psの外周面と大径部22の内周面との一体化は、大径部22の開口部20A側から行うのが好ましい。開口部20A側からコアロッド10Psの外周面と大径部22の内周面とが一体化させることによって、貫通孔20Hの内周面とコアロッド10Psの外周面との間に空気が残留することを抑制し易くなる。
【0053】
上記のように横型旋盤を用いてクラッドロッドとコアロッドとが一体化される際、従来の方法では回転振動やクラッドロッドの外周部と中間部との温度差によってコアロッドの位置が所定の位置からずれることがある。しかしながら、本発明によれば、貫通孔20Hに小径部21が設けられていることによって、コアロッド10Psが小径部21側に移動することが抑制される。また、大径部22側の開口部20Aが封止されていることによって、コアロッド10Psが大径部22側の開口部20Aから押し出されることも抑制される。すなわち、コアロッド10Psの位置が所定の位置からずれることが抑制される。
【0054】
<線引工程P6>
次に、線引工程P6を行う。
図9は、線引工程P6の様子を示す図である。
【0055】
まず、マルチコアファイバ用母材1Pを紡糸炉110に設置する。そして、紡糸炉110の加熱部111を発熱させて、マルチコアファイバ用母材1Pを加熱する。このときマルチコアファイバ用母材1Pの下端は、例えば2000℃に加熱され溶融状態となる。そして、マルチコアファイバ用母材1Pからガラスが溶融して、ガラスが線引きされる。そして、線引きされた溶融状態のガラスは、紡糸炉110から出ると、すぐに固化して、それぞれのコアガラス体10Pがそれぞれのコア10となり、クラッドガラス体20Pがクラッド20となり、複数のコア10とクラッド20とから構成されるマルチコアファイバの素線となる。その後、このマルチコアファイバの素線は、冷却装置120を通過して、適切な温度まで冷却される。冷却装置120に入る際、マルチコアファイバの素線の温度は、例えば1800℃程度であるが、冷却装置120を出る際には、例えば40℃〜50℃となる。
【0056】
次に、上記マルチコアファイバの素線は、内側被覆層31となる紫外線硬化性樹脂が入ったコーティング装置131を通過し、この紫外線硬化性樹脂で被覆される。更に紫外線照射装置132を通過し、紫外線が照射されることで、紫外線硬化性樹脂が硬化して内側被覆層31が形成される。次に、外側被覆層32となる紫外線硬化性樹脂が入ったコーティング装置133を通過し、この紫外線硬化性樹脂で被覆される。更に紫外線照射装置134を通過し、紫外線が照射されることで、紫外線硬化性樹脂が硬化して外側被覆層32が形成され、
図1に示すマルチコアファイバ1となる。
【0057】
そして、マルチコアファイバ1は、ターンプーリー141により方向が変換され、リール142により巻取られる。
【0058】
こうして
図1に示すマルチコアファイバ1である光ファイバが製造される。
【0059】
以上説明したように、本実施形態のマルチコアファイバ用母材1Pの製造方法によれば、コアロッド10Psの位置が所定の位置からずれることを抑制できる。従って、当該マルチコアファイバ用母材1Pの製造方法を用いる光ファイバの製造方法によれば、製造過程においてコアロッド10Psの位置が所定の位置からずれることを抑制でき、マルチコアファイバ1のコア10の直径が設定値からずれることを抑制できる。
【0060】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図10は、本発明の第2実施形態に係る光ファイバの長手方向に垂直な断面の様子を示す図である。第1実施形態と同一または同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0061】
本実施形態の光ファイバはPANDA型の偏波保持ファイバとされる。
図10に示すように、偏波保持ファイバ11は、コア10と、コア10を挟むように配置された一対の応力付与部12と、コア10及び応力付与部12を隙間なく囲むクラッド20と、クラッド20の外周面を被覆する内側被覆層31と、内側被覆層31の外周面を被覆する外側被覆層32とを備える。なお、
図10にはクラッド20の中心に配置される1つのコア10と該コア10を挟む一対の応力付与部12が備えられる形態を例示しているが、本発明においてコア10及び応力付与部12の数及び位置は特に限定されない。
【0062】
応力付与部12は、例えば、クラッド20より熱膨張係数が大きい材料で構成される。すなわち、コア10、クラッド20、及び、応力付与部12を構成する材料を含む光ファイバ用母材を線引きする際に、上記のように応力付与部12をクラッド20よりも熱膨張係数が大きい材料で構成することによって、各材料が冷えて固まる過程において応力付与部12がクラッド20よりも大きく縮むので、コア10を挟むように配置する一対の応力付与部12からコア10に応力が付与される。より具体的には、一対の応力付与部12は、間に配置されたコア10に対して、その一対の応力付与部12が並ぶ方向には引っ張り応力を加えるとともに、この方向に垂直な方向には圧縮応力を加える。一対の応力付与部12から引張応力及び圧縮応力を加えられたコア10は、光弾性効果により複屈折率が誘起され、これらの互いに垂直な2つの方向の偏波モードで異なる伝搬定数を有する。このため、コア10を伝搬する光は、応力付与部12が並ぶ方向がスロー軸とされ、当該方向に垂直な方向がファスト軸とされる。
【0063】
このような応力付与部12を構成する材料の例としては、ホウ素等のドーパントが添加された石英ガラスを挙げることができる。石英ガラスに添加されるホウ素等の量を調整することによって、石英ガラスの熱膨張係数を調整することができる。
【0064】
図11は、
図10に示した偏波保持ファイバ11を製造するための光ファイバ用母材である偏波保持ファイバ用母材11Pの長手方向に垂直な断面の様子を示す図である。偏波保持ファイバ用母材11Pは略円柱状の形状をしている。また、偏波保持ファイバ用母材11Pは、コア10となるロッド状のコアガラス体10Pと、応力付与部12となる応力付与ガラス体12Pと、これらを囲むロッド状のクラッドガラス体20Pとから構成されている。応力付与ガラス体12Pは応力付与部12と同じ材料から構成される。このような偏波保持ファイバ用母材11Pが線引きされ、内側被覆層31及び外側被覆層32に被覆されることにより、
図10に示す偏波保持ファイバ11となる。
【0065】
次に、
図11に示す偏波保持ファイバ用母材11Pの製造方法、及び、該偏波保持ファイバ用母材11Pを用いた
図10に示す偏波保持ファイバ11の製造方法について説明する。
【0066】
図12は、偏波保持ファイバ用母材11Pの製造方法、及び、偏波保持ファイバ11の製造方法の工程を示すフローチャートである。偏波保持ファイバ用母材11Pの製造方法は、準備工程P11と、穿孔工程P12と、挿入工程P13と、封止工程P14と、一体化工程P15と、を備える。そして、偏波保持ファイバ11の製造方法は、このようにして製造された偏波保持ファイバ用母材11Pを線引きする線引工程P16を更に備える。以下、これらの各工程について説明する。
【0067】
<準備工程P11>
準備工程P11は、準備工程P1で準備したクラッドロッド1Ps及びコアロッド10Psに加えて応力付与ロッド12Psも準備する以外は、準備工程P1と同様である。応力付与ロッド12Psは円柱状の応力付与ガラス体12Pと応力付与ガラス体12Pの外周面を被覆する被覆層22Pc(
図14参照)とを備えている。被覆層22Pcは、クラッドガラス体20Pと同じガラス体からなる層である。
【0068】
なお、応力付与ロッド12Ps及びコアロッド10Psは挿入工程P13までに準備されていれば良く、後述する穿孔工程P12より後に準備されてもよい。
【0069】
<穿孔工程P12>
次に、穿孔工程P12を行う。穿孔工程P12は、応力付与ロッド12Psを挿入するための貫通孔22H、及び、コアロッド10Psを挿入するための貫通孔20Hをクラッドロッド1Psに形成する工程である。
図13は、穿孔工程P12後のクラッドロッド1Psの長手方向に沿った断面の様子を示す図である。
【0070】
貫通孔22Hは、準備したクラッドロッド1Psにおける応力付与ガラス体12Pの中心が位置すべき場所を中心として、クラッドロッド1Psの長手方向に沿って形成される。また、貫通孔22Hは、一端側に応力付与ロッド12Psの外径より大きな内径の大径部26を有し、他端側に応力付与ロッド12Psの外径より小さな内径の小径部25を有する。貫通孔22Hが小径部25を有することによって、貫通孔22Hの大径部26に挿入された応力付与ロッド12Psは、小径部25側への移動を制限される。大径部26の内径と小径部25の内径との差は0.2mm以上であることが好ましい。大径部26に挿入された応力付与ロッド12Psの小径部25側への移動を抑制しやすくなるためである。
【0071】
このような貫通孔22Hを形成する具体的な方法は、上述した穿孔工程P2における貫通孔20Hの形成方法と同様とすることができる。
【0072】
<挿入工程P13>
次に、挿入工程P13を行う。挿入工程P13は、応力付与ロッド12Psを大径部26に挿入し、コアロッド10Psを大径部22に挿入する工程である。こうして、クラッドロッド1Psは、貫通孔22Hに応力付与ロッド12Psが挿入され、貫通孔20Hにコアロッド10Psが挿入された状態となる。
図14は、応力付与ロッド12Ps及びコアロッド10Psが挿入された状態における、クラッドロッド1Psの長手方向に平行な断面の様子を示す図である。
【0073】
<封止工程P14>
次に、封止工程P14を行う。封止工程P14は、貫通孔22Hの大径部26側の開口部22A及び貫通孔20Hの大径部22側の開口部20Aを封止する工程である。開口部22A及び開口部20Aを封止する方法としては、例えば、
図15に示すように、クラッドロッド1Psのうち開口部22A及び開口部20A側の底面に封止材40を溶着し、全ての開口部22A及び開口部20Aを封止材40によって覆う方法が挙げられる。
図15は、封止工程P14後のクラッドロッド1Psの長手方向に平行な断面の様子を示す図である。
【0074】
<一体化工程P15>
次に、一体化工程P15を行う。一体化工程P15は、封止工程P14の後、応力付与ロッド12Psの外周面全体が大径部26の内周面と一体化されるとともに、コアロッド10Psの外周面全体が大径部22の内周面と一体化される工程である。
【0075】
一体化工程P15は、例えば、応力付与ロッド12Ps及びコアロッド10Psが挿入されたクラッドロッド1Psを横型旋盤に設置し、クラッドロッド1Psを回転させながら加熱することによって、応力付与ロッド12Psの外周面全体が大径部26の内周面と一体化されるとともに、コアロッド10Psの外周面全体が大径部22の内周面と一体化される工程とされる。これらを加熱する方法は、一体化工程P5と同様である。一体化工程P5において真空ポンプ51によって貫通孔20Hを真空引きしたのと同様に、上記加熱と同時に貫通孔22Hも真空引きすることが好ましい。このように真空引きすることによって、貫通孔22Hの内周面と応力付与ロッド12Psの外周面との間に空気が残留することを抑制できる。
【0076】
このようにして応力付与ロッド12Psの外周面全体が大径部26の内周面と一体化されるとともに、コアロッド10Psの外周面全体が大径部22の内周面と一体化されることによって、応力付与ロッド12Psの外周面と大径部26の内周面との間、及び、コアロッド10Psの外周面と大径部22の内周面との間の不要な空間がなくなる。そして、このとき、応力付与ロッド12Psの被覆層22Pcとコアロッド10Psの被覆層20Pcとは、クラッドガラス体20Pの一部となる。こうして、
図11に示す偏波保持ファイバ用母材11Pが得られる。
【0077】
上記のように横型旋盤を用いる際、従来の方法では回転振動やクラッドロッド1Psの外周部と中間部との温度差によって応力付与ロッド12Psやコアロッド10Psの位置が所定の位置からずれることがある。しかしながら、本発明によれば、第1実施形態で説明したように、コアロッド10Psの位置が所定の位置からずれることが抑制される。さらに、第2実施形態では、小径部25が設けられていることによって応力付与ロッド12Psの小径部25側への移動が抑制され、大径部26側の開口部22Aが封止されていることによって応力付与ロッド12Psが大径部26側の開口部から押し出されることも抑制される。すなわち、応力付与ロッド12Psの位置も所定の位置からずれることが抑制される。
【0078】
<線引工程P16>
次に、線引工程P16を行う。線引工程P16は上記線引工程P6と同様である。こうして
図10に示す偏波保持ファイバ11である光ファイバが製造される。
【0079】
以上説明したように、本実施形態の偏波保持ファイバ用母材11Pの製造方法によれば、応力付与ロッド12Ps及びコアロッド10Psの位置が所定の位置からずれることを抑制できる。従って、当該偏波保持ファイバ用母材11Pの製造方法を用いる光ファイバの製造方法によれば、製造過程において応力付与ロッド12Ps及びコアロッド10Psの位置が所定の位置からずれることを抑制でき、偏波保持ファイバ11の応力付与部12及びコア10の直径が設定値からずれることを抑制できる。
【0080】
以上、本発明について好適な実施形態を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0081】
つまり、本発明の光ファイバ用母材の製造方法は、上述の実施形態に限らず、クラッドロッドに大径部及び小径部を備える貫通孔を形成する工程を有する光ファイバ用母材の製造方法ならば、他の構造の光ファイバ用母材の製造方法にも適用することができる。
【0082】
例えば、上記実施形態では、準備工程P1,P11において貫通孔を有しない略円柱状のクラッドロッドを準備し、該クラッドロッドに大径部及び小径部を有する貫通孔を形成する例について説明したが、貫通孔を有しないクラッドロッドに替えて、
図4に示す貫通孔を有する石英管を、準備工程においてクラッドロッドとして準備しても良い。つまり、小径貫通孔21Hが形成された状態のクラッドロッドを準備しても良い。この場合、穿孔工程において当該石英管が有する貫通孔を加工する、すなわち、大径部形成工程を行うことによって、大径部22,26及び小径部21,25を有する貫通孔を形成することができる。
【0083】
また、上記第2実施形態では応力付与ロッド12Psとコアロッド10Psとを同時にクラッドロッド1Psに挿入して一体化させているが、本発明はかかる形態に限定されない。例えば、コアロッド10Psとクラッドロッド1Psとを何等かの方法で一体化させた後、貫通孔22Hを形成し、応力付与ロッド12Psを貫通孔22H挿入し、応力付与ロッド12Psをクラッドロッド1Psと一体化させてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では穿孔工程P2,P12において小径貫通孔を形成した後に大径部を形成しているが、穿孔工程において、大径部を形成した後に小径部を形成しても良い。この場合、穿孔工程において、クラッドロッドの一端側に開口部を有して貫通しない空孔を大径部22,26となるように形成した後、大径部22,26からクラッドロッドの他端側まで貫通する空孔を小径部21,25となるように形成する。ただし、上記実施形態のように小径貫通孔を形成した後に大径部を形成することによって、少ない工数で効率良く内周面が平滑な大径部を有する貫通孔を形成することができる。
【0085】
また、上記実施形態では封止工程P4,P14において封止材40を用いたが、封止工程は、大径部22,26の開口部20A,22Aを封止できる工程であればよい。例えば、大径部22,26の開口部20A,22A側の端部において挿入ロッドの外周面と大径部22,26の内周面とを加熱等して一体化させることによって、大径部22,26の開口部20A,22Aを封止してもよい。このとき、封止工程P4,P14と一体化工程P5,P15とを一連の工程として行うこともできる。
【0086】
また、上記実施形態では、封止工程P4,P14の後に一体化工程P5,P15を行い、コアロッド10Psや応力付与ロッド12Psとクラッドロッド1Psとが一体化されたものをマルチコアファイバ用母材1Pや偏波保持ファイバ用母材11Pとして、線引工程P6,P16を行うものとした。しかし、本発明はこれに限らず、一体化工程P5,P15と線引工程P6,P16とを同時に行うことができる。この場合、封止工程P4,P14を終え、挿入ロッドが挿入された状態で封止されたクラッドロッドを光ファイバ用母材としてのマルチコアファイバ用母材1Pや偏波保持ファイバ用母材11Pとする。そして、この光ファイバ用母材を紡糸炉110に設置する。そして、封止された側から線引きを行う。この際に、一体化工程P5,P15と同様にして真空引きをする。
【0087】
また、これまでの説明では挿入ロッドが略円柱状である形態について説明したが、本発明はかかる形態に限定されない。他の実施形態にかかる挿入ロッドの長手方向に平行な断面を
図16及び
図17に示す。
図16に示す挿入ロッド110Psは、軸心方向に対する垂直面に対して傾斜した傾斜面16を有する。挿入ロッド110Psがこのような傾斜面16を有することによって、挿入ロッド110Psを大径部に挿入した後、大径部と小径部との間で空気が流通できる流路が形成されやすくなる。そのため、挿入ロッド110Psの外周面と貫通孔の内周面との間に形成される空間を小径部側の開口部から真空引きすることが容易になる。傾斜面16を形成する方法としては、例えば、研磨等の機械加工が挙げられる。
【0088】
図17に示す挿入ロッド120Psは、貫通孔に挿入されたときに小径部側となる端部の外周に切り込み17を有する。挿入ロッド120Psがこのような切り込み17を有することによって、挿入ロッド120Psを大径部に挿入した後、大径部と小径部との間で空気が流通できる流路が形成されやすくなる。そのため、挿入ロッド120Psの外周面と貫通孔の内周面との間に形成される空間を小径部側の開口部から真空引きすることが容易になる。切り込み17を形成する方法としては、例えば、ドリルツール等による機械加工が挙げられる。
【0089】
さらに、同様の観点から、小径部のうち少なくとも大径部側端部の内周面は粗く形成されることが好ましい。より具体的には、挿入ロッドの一端を大径部と小径部との境まで挿入した状態で大径部と小径部との間で空気の流通が可能となるように、小径部のうち少なくとも大径部側端部の内周面が粗く形成されることが好ましい。このように小径部の内周面が粗く形成されることによっても、挿入ロッドの外周面と貫通孔の内周面との間に形成される空間を小径部側の開口部から真空引きすることが容易になる。このように小径部の内周面を粗く形成する方法としては、例えば、小径孔穿孔工程において砥粒番手が粗いドリルで小径貫通孔を形成する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0091】
(実施例1)
外径80mm、長さ500mmのシリカガラスから成る円柱状のクラッドロッドを準備し、このクラッドロッドの中心と該中心を中心とする正六角形の各頂点に対応する位置とに貫通孔を形成した。これらの貫通孔は、最初にドリル径17.0mmのドリルツールで小径貫通孔を形成し、該小径貫通孔の一部をドリル径17.3mmで砥粒番手が細かいドリルツールを用いて拡径することによって形成した。拡径した範囲は、小径貫通孔の一方の開口部から深さ400mmまでの範囲である。その結果、内径17.3mm、長さ400mmの大径部、及び、内径17.0mm、長さ100mmの小径部を有する貫通孔が形成された。次に、各貫通孔の小径部側の開口部に石英管を溶着した。続いて、長さ400mm、外径17.1mmの円柱状のコアロッドを7本準備し、それらを大径部に挿入した。コアロッドを大径部に挿入した後、横型旋盤によりクラッドロッドを外周面側から加熱した。そして、大径部側の開口部において、コアロッドの外周面と大径部の内周面とを一体化させ、大径部側の開口部を封止した。このようにして、マルチコアファイバ用母材が得られた。この旋盤加工の際、コアロッドの位置が所定の位置からずれることはなかった。次に、小径部側の開口部に溶着した石英管から真空引きをしながらマルチコアファイバ用母材を線引きすることによって、外径180μmのマルチコアファイバが得られた。線引き後に残った光ファイバ用母材を確認したところ、全てのコアロッドは大径部に挿入された時の位置にあり、コアロッドの位置が所定の位置からずれる現象は見られなかった。
【0092】
(実施例2)
外径80mm、長さ500mmのシリカガラスから成る円柱状のクラッドロッドを準備し、このクラッドロッドの中心と該中心を中心とする正六角形の各頂点に対応する位置とに貫通孔を形成した。これらの貫通孔は、以下のようにして形成した。すなわち、最初にドリル径17.0mmのドリルツールで小径貫通孔を形成し、該小径貫通孔の全体をドリル径17.3mmで砥粒番手が細かいドリルツールを用いて拡径した。その後、小径貫通孔の内側のうち一方の開口部から深さ400mmまでの範囲だけをフッ酸を浸漬させ、その部分の内径を0.2mm拡径させて大径部を形成した。その結果、内径17.5mm、長さ400mmの大径部、及び、内径17.3mm、長さ100mmの小径部を有する貫通孔が形成された。次に、各貫通孔の小径部側の開口部に石英管を溶着した。続いて、長さ400mm、外径17.4mmの円柱状のコアロッドを7本準備し、それらを大径部に挿入した。コアロッドを大径部に挿入した後、横型旋盤によりクラッドロッドを外周面側から加熱した。そして、大径部側の開口部において、コアロッドの外周面と大径部の内周面とを一体化させ、大径部側の開口部を封止した。このようにして、マルチコアファイバ用母材が得られた。この旋盤加工の際、コアロッドの位置が所定の位置からずれることはなかった。次に、小径部側の開口部に溶着した石英管から真空引きをしながらマルチコアファイバ用母材を線引きすることによって、外径180μmのマルチコアファイバが得られた。線引き後に残った光ファイバ用母材を確認したところ、全てのコアロッドは大径部に挿入された時の位置にあり、コアロッドの位置が所定の位置からずれる現象は見られなかった。
【0093】
(比較例1)
外径80mm、長さ500mmのシリカガラスから成る円柱状のクラッドロッドを準備し、クラッドロッドの中心と該中心を中心とする正六角形の各頂点に対応する位置とに貫通孔を形成した。これらの貫通孔は、最初にドリル径17.0mmのドリルツールで貫通孔を形成し、該貫通孔の全体をドリル径17.3mmで砥粒番手が細かいドリルツールを用いて拡径した。その後、貫通孔の内周面全体をフッ酸に浸漬させ、貫通孔の内径を0.2mm拡径させた。その結果、内径17.5mm、長さ500mmの貫通孔が形成された。続いて、長さ400mm、外径17.4mmの円柱状のコアロッドを7本準備し、それらを貫通孔に挿入してマルチコアファイバ用母材が得られた。次に、マルチコアファイバ用母材を線引きすることによって、外径180μmのマルチコアファイバが得られた。線引き後に残った光ファイバ用母材を確認したところ、クラッドロッドの外周側に配置したコアロッドの末端部は挿入時の位置から17mm移動し、クラッドロッドの中心に配置したコアロッドの末端部は挿入時の位置から35mm移動していた。
【0094】
以上より、クラッドロッドに形成されるコアロッドを挿入するための貫通孔が小径部を備えることによって、コアロッドの位置が所定の位置からずれることを抑制される結果となった。