特許第6151330号(P6151330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6151330
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】傾斜磁場電源及び磁気共鳴映像装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20170612BHJP
   G01R 33/389 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   A61B5/05 340
   G01N24/06 530Y
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-215733(P2015-215733)
(22)【出願日】2015年11月2日
(62)【分割の表示】特願2011-13600(P2011-13600)の分割
【原出願日】2011年1月26日
(65)【公開番号】特開2016-19922(P2016-19922A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2015年11月2日
(31)【優先権主張番号】特願2010-19596(P2010-19596)
(32)【優先日】2010年1月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】堀 雅志
(72)【発明者】
【氏名】三浦 資弘
(72)【発明者】
【氏名】濱谷 和宏
【審査官】 原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0309598(US,A1)
【文献】 特開昭63−009910(JP,A)
【文献】 特開平04−231027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
H01F 7/20
H02M 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜磁場電源装置から空間座標軸の各軸方向に対応する各傾斜磁場コイルに電流を供給することにより、静磁場空間に前記空間座標軸方向の各方向に沿って磁場が変化する傾斜磁場を形成する磁気共鳴映像装置において、
前記傾斜磁場電源装置は、一次巻き線に供給された電力を複数の二次巻き線によって電流出力回路に供給する変圧器であって、前記二次巻き線の相数が前記一次巻き線の相数の自然数倍であり、前記一次巻き線の各相に対して、同じ相数ずつの二次巻き線が巻かれ、前記二次巻き線の各相として、前記空間座標軸の各軸方向に対応する出力チャネルが巻かれていて、前記一次巻き線の各相における前記出力チャネル分の複数の二次巻き線のうち同一の前記軸方向に関する前記出力チャネル分の複数の前記二次巻き線は、前記各相に対応する一次巻き線の心線方向及び同心円方向のうち少なくとも一方にいて、他の前記軸方向に関する二次巻き線を挟んで分離して配置されている変圧器を有する磁気共鳴映像装置。
【請求項2】
エコープラナーイメージングを実行する場合において、前記配置されている各相の二次巻き線のうち、読み出し方向に対応する出力チャネルに対応する二次巻き線の各相を用いて、各軸方向に対応する各傾斜磁場コイルに電流を供給する制御手段をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の磁気共鳴映像装置。
【請求項3】
空間座標軸の各軸方向に対応する各傾斜磁場コイルに電流を供給することにより、静磁場空間に前記空間座標軸方向の各方向に沿って磁場が変化する傾斜磁場を形成する磁気共鳴映像装置に用いられる傾斜磁場電源装置であって、
一次巻き線に供給された電力を複数の二次巻き線によって電流出力回路に供給する変圧器であって、前記二次巻き線の相数が前記一次巻き線の相数の自然数倍であり、前記一次巻き線の各相に対して、同じ相数ずつの二次巻き線が巻かれ、前記二次巻き線の各相として、前記空間座標軸の各軸方向に対応する出力チャネルが巻かれていて、前記一次巻き線の各相における前記出力チャネル分の複数の二次巻き線は、前記各相に対応する一次巻き線の心線方向及び同心円方向のうち少なくとも一方にいて、他の前記軸方向に関する二次巻き線を挟んで分離して配置されている変圧器を有する傾斜磁場電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
磁気共鳴映像化装置に用いられる傾斜磁場電源の変圧器等に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴映像装置は、固有の磁気モーメントを持つ核の集団が一様な静磁場中に置かれたときに、特定の周波数で回転する高周波磁場のエネルギーを共鳴的に吸収する現象を利用して、物質の化学的及び物理的な微視的情報を映像化し、あるいは化学シフトスペクトラムを観測する装置である。この様な磁気共鳴映像装置は、人体の解剖学的な断面図を非侵襲的に得る方法として極めて有効である。特に、骨におおわれた脳などの中枢神経系の診断装置として、広く活用されている。
【0003】
この様な磁気共鳴映像装置においては、空間の直交軸(すなわち、x,y,z軸)の各方向に対し磁場の強度が線形に変化する磁場(傾斜磁場)を形成するための機構として、傾斜磁場コイル、当該傾斜磁場コイルに電流を供給するための傾斜磁場電源装置等が設けられている。
【0004】
図10は、一般的な傾斜磁場電源装置の構成を示した図である。同図に示すように、傾斜磁場電源装置50は、Xチャネル(Xch)の傾斜磁場電源51、Yチャネル(Ych)の傾斜磁場電源52、Zチャネル(Zch)の傾斜磁場電源53を有している。また、傾斜磁場電源装置の駆動電源には、例えば3相AC400Vの電力が用いられる。傾斜磁場電源装置50に供給された3相400Vの電力は、当該傾斜磁場電源装置50内の電源変圧器(トランス)において変圧分配され、各傾斜磁場電源51、52、53に供給される。各傾斜磁場電源51、52、53は、制御装置からの制御に従ってそれぞれ独立に動作し、対応する座標軸方向に傾斜磁場を発生させるための傾斜磁場コイルに電流を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−199782号公報
【特許文献2】特開2008−307309号公報
【特許文献3】特開平10−5189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の傾斜磁場電源には、例えば次のような問題がある。すなわち、従来の磁気共鳴映像装置の傾斜磁場電源装置の電源変圧器は、例えば図11に示すように、3相(U相、V相、W相)の各一次巻き線に対して、単相の二次巻き線を巻いている。この単相の二次巻き線は、例えば図11に示すように、各チャネルに対応する二次巻き線は、U相、V相、W相の各相の間で空間的に均等に配置されない(例えば、図11のXチャネル(Xch)について見てみると、W相の一次巻き線に巻き付けられたXチャネル(Xch)の二次巻き線の数は、U相、V相の一次巻き線に巻き付けられたXチャネル(Xch)の二次巻き線の数に比して少ない。)。従って、Xチャネル(Xch)、Yチャネル(Ych)、Zチャネル(Zch)の各出力チャネルに対応する一次巻き線の各相の負荷に偏りができることになる。このため、特定の出力チャネルに対応する一次巻き線の各相の負荷に偏りができ、出力時の電圧変動が大きくなるという問題がある。
【0007】
さらに、近年、出力電流値は増加する傾向にあり、傾斜磁場電源装置の電圧変動は多発し易い傾向にあると言える。このため、磁気共鳴映像装置は、出力電圧の値に応じてインターロックし、後段の回路を保護する機能を有している。しかしながら、電圧変動の幅が大きいと、電圧値がインターロックの閾値を超えるような撮像法を実施できなくなってしまう。特に、エコープラナーイメージング(EPI:Echo Planar Imaging)の様な撮像法を実行する場合には、リードチャネルに集中的に電流が流れることになるため、特定の出力チャネルに対応する一次巻き線の各相の負荷に偏りができやすい。また、
電源変圧器の一次巻き線の各相が各出力チャネルに対して担保する電力を平準化(leveling)し、出力チャネル間で出力電流に偏りがあっても、従来に比して安定して電力を共有することができる傾斜磁場電源装置、及び当該傾斜磁場電源装置を具備する磁気共鳴映像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0009】
実施形態の磁気共鳴映像装置は、傾斜磁場電源装置から空間座標軸の各軸方向に対応する各傾斜磁場コイルに電流を供給することにより、静磁場空間に前記空間座標軸方向の各方向に沿って磁場が変化する傾斜磁場を形成する磁気共鳴映像装置において、前記傾斜磁場電源装置は、一次巻き線に供給された電力を、複数の二次巻き線によって電流出力回路に供給する変圧器であって、前記二次巻き線の相数が前記一次巻き線の相数の自然数倍であり、前記一次巻き線の各相に対して、同じ相数ずつの二次巻き線が巻かれ、前記二次巻き線の各相として、前記空間座標軸の各軸方向に対応する出力チャネル分が巻かれていて、前記一次巻き線の各相における前記出力チャネル分の複数の二次巻き線のうち同一の前記軸方向に関する前記出力チャネル分の複数の前記二次巻き線は、前記各相に対応する一次巻き線の心線方向及び同心円方向のうち少なくとも一方において、他の前記軸方向に関する二次巻き線を挟んで分離して配置されている変圧器を有する
施形態の傾斜磁場電源装置は、空間座標軸の各軸方向に対応する各傾斜磁場コイルに電流を供給することにより、静磁場空間に前記空間座標軸方向の各方向に沿って磁場が変化する傾斜磁場を形成する磁気共鳴映像装置に用いられる傾斜磁場電源装置であって、一次巻き線に供給された電力を複数の二次巻き線によって電流出力回路に供給する変圧器であって、前記二次巻き線の相数が前記一次巻き線の相数の自然数倍であり、前記一次巻き線の各相に対して、前記空間座標軸の各軸方向に対応する出力チャネルが巻かれていて、前記一次巻き線の各相における前記出力チャネル分の複数の二次巻き線は、前記各相に対応する一次巻き線の心線方向及び同心円方向のうち少なくとも一方について、他の前記軸方向に関する二次巻き線を挟んで分離して配置されている変圧器を有する
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態に係る磁気共鳴映像装置1のブロック構成図を示している。
図2図2は、傾斜磁場電源装置17の構成を説明するためのブロック図である。
図3図3は、傾斜磁場電源装置17が有する変圧器171の構成の一例を示す図である。
図4図4は、実施例1を説明するための図である。
図5図5は、Xチャネル、Yチャネル、Zチャネルのそれぞれに対応する二次巻き線U相を、一次巻き線U相に対して一つずつ巻き付けた場合の二次巻き線同士の磁気結合を説明するための図である。
図6図6(a)、(b)、(c)は、Xチャネル、Yチャネル、Zチャネルのそれぞれに対応する二次巻き線U相を、一次巻き線U相に対してそれぞれ5個ずつ巻き付けた場合の二次巻き線同士の磁気結合を説明するための図である。
図7図7は、エコープラナーイメージング(EPI)のスキャンシーケンスの一例を示した図である。
図8図8は、各相に対応する各一次巻き線に巻き付ける二次巻き線を各相5個とした場合において、各チャネルに対応させる二次巻き線を分散配置した変圧器の例である。
図9図9(a)、(b)、(c)は、図8に示した二次巻線の分散配置における磁気結合の様子を示した図である。
図10図10は、一般的な傾斜磁場電源装置の構成を示した図である。
図11図11は、従来の傾斜磁場電源装置の変圧器の構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0012】
図1は、本実施形態に係る磁気共鳴映像装置1のブロック構成図を示している。同図に示すように、本磁気共鳴映像装置1は、静磁場磁石11、冷却系制御部12、傾斜磁場コイル13、高周波送信コイル14、高周波受信コイル15、送信部18、受信部19、データ処理部20、表示部24を具備している。
【0013】
静磁場磁石11は、静磁場を発生する磁石であり、一様な静磁場を発生する。
【0014】
冷却系制御部12は、静磁場磁石11の冷却機構を制御する。
【0015】
傾斜磁場コイル13は、静磁場磁石11の内側に設けられ、且つ静磁場磁石11よりも短軸であり、X、Y、Z軸の各軸方向毎に設けられている。各傾斜磁場コイル13は、独立した出力チャネルを形成し、傾斜磁場電源装置17から供給されるパルス電流を傾斜磁場に変換する。この傾斜磁場コイル13が発生する傾斜磁場によって、信号発生部位(位置)が特定される。
【0016】
なお、Z軸方向は、本実施形態では静磁場の方向と同方向にとるものとする。また、本実施形態において、傾斜磁場コイル13及び静磁場磁石11は円筒形をしているものとする。また、傾斜磁場コイル13は、所定の支持機構によって真空中に配置される。これは、静音化の観点から、パルス電流の印加によって発生する傾斜磁場コイル13の振動を、音波として外部に伝播させないためである。
【0017】
高周波送信コイル(RF送信コイル)14は、被検体の撮像領域に対して、磁気共鳴信号を発生させるための高周波パルスを印加するためのコイルである。この高周波送信コイル14は全身用RFコイルであり、例えば腹部等を撮像する場合には、受信コイルとしても使用することができる。
【0018】
高周波受信コイル(RF受信コイル)15は、被検体の近傍、好ましくは密着させた状態で当該被検体を挟むように設置され、被検体から磁気共鳴を受信するためのコイルである。当該高周波受信コイル15は、一般的には、部位別に専用の形状を有する。
【0019】
なお、図1では、高周波送信コイルと高周波受信コイルとを別体とするクロスコイル方式を例示したが、これらを一つのコイルで兼用するシングルコイル方式を採用する構成であってもよい。
【0020】
傾斜磁場電源装置17は、傾斜磁場を形成するためのパルス電流を発生し、各傾斜磁場コイル13に個別に供給する。なお、この傾斜磁場電源装置17の詳しい構成については、後述する。
【0021】
送信部18は、発振部、位相選択部、周波数変換部、振幅変調部、高周波電力増幅部(それぞれ図示せず)を有しており、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信用高周波コイルに送信する。当該送信によって高周波送信コイル14から発生した高周波によって、被検体の所定原子核の磁化は、励起状態となる。
【0022】
受信部19は、増幅部、中間周波数変換部、位相検波部、フィルタ、A/D変換器(それぞれ図示せず)を有する。受信部19は、高周波コイル14から受信した、核の磁化が励起状態から基底状態に緩和するとき放出する磁気共鳴信号(高周波信号)に対して、増幅処理、発信周波数を利用した中間周波数変換処理、位相検波処理、フィルタ処理、A/D変換処理を施す。
【0023】
表示部24は、磁気共鳴画像、所定の走査画面等を表示する。
【0024】
データ処理部20は、受信後のデータを処理して磁気共鳴画像を生成する計算機システムであり、記憶部201、制御部202、データ収集部203、再構成部204、信号補正部205、入力部207を有している。
【0025】
記憶部201は、収集された磁気共鳴画像、各種スキャンシーケンスを実行するためのプログラム(例えば、エコープラナーイメージング(EPI)を実行するためのスキャンシーケンス)等を記憶する。
【0026】
制御部202は、図示していないCPU、メモリ等を有しており、システム全体の制御中枢として、本磁気共鳴映像装置を静的又は動的に制御する。特に、制御部20は、エコープラナーイメージング(EPI)等のスキャンシーケンスを実行する際に、傾斜磁場電源装置17等を制御する。
【0027】
データ収集部203は、受信部19によってサンプリングされたディジタル信号を収集する。
【0028】
再構成部204は、データ収集部203によって収集されたデータに対して、後処理すなわちフーリエ変換等の再構成等を実行し、被検体内の所望核スピンのスペクトラムデータあるいは画像データを求める。
【0029】
入力部207は、オペレータからの各種指示・命令・情報をとりこむため入力装置(マウスやトラックボール、モード切替スイッチ、キーボード等)を有している。
【0030】
表示部24は、データ処理部20から入力したスペクトラムデータあるいは画像データ等を表示する出力手段である。
【0031】
(傾斜磁場電源装置)
次に、本磁気共鳴映像装置1が具備する傾斜磁場電源装置17について詳しく説明する。
【0032】
図2は、傾斜磁場電源装置17の構成を説明するためのブロック図である。同図に示すように、傾斜磁場電源装置17は、変圧器171、整流器173、Xch出力回路(Xch電力スイッチ)175x、Ych出力回路(Ych電力スイッチ)175y、Zch出力回路(Zch電力スイッチ)175z、制御回路177を有している。
【0033】
変圧器171は、一次巻き線の相数と同一相数、或いは一次巻き線の相数の定数(2以上の整数)倍の二次巻き線を有する。本実施形態においては、説明を具体的にするため、一次巻き線の相数と二次巻き線の相数とが同一である場合を例とする。各相に対応する二次巻き線は、各相の一次巻き線に対して巻かれ、出力チャネル毎に分配して配置されている。本実施形態では、説明を具体的にするために、相数をU相、V相、W相の3相とする場合を想定する。従って、本変圧器171は、例えば図3に示すように、一次巻き線U相に対してXch出力に対応する二次巻き線U相、Ych出力に対応する二次巻き線U相、Zch出力に対応する二次巻き線U相がそれぞれ巻き付けられている。また、同様に、一次巻き線V相に対してXch出力に対応する二次巻き線V相、Ych出力に対応する二次巻き線V相、Zch出力に対応する二次巻き線V相がそれぞれ巻き付けられ、さらに、一次巻き線W相に対してXch出力に対応する二次巻き線W相、Ych出力に対応する二次巻き線W相、Zch出力に対応する二次巻き線W相がそれぞれ巻き付けられている。
【0034】
なお、相数を3とする当該例に拘泥されず、一次巻き線と二次巻き線との相数が同一であれば、本発明の技術的思想は、相数がいくつであっても適用可能である。
【0035】
整流器173は、変圧器171からの出力される交流電力から、直流電圧、直流電流を生成する。
【0036】
Xch出力回路175x、Ych出力回路175y、Zch出力回路175zは、それぞれ制御回路177からの制御信号に従って、整流器173からの直流電力をパルス電流として所定のタイミングで対応するチャネルの傾斜磁場コイルに出力する。
【0037】
制御回路177は、制御部202からの制御に従って、Xch出力回路175x、Ych出力回路175y、Zch出力回路175zから対応するチャネルの傾斜磁場コイルへの電流出力に関する制御を行う。
【0038】
上述の様に、本傾斜磁場電源装置17の変圧器171は、二次巻き線の相数を一次巻き線と同一(今の場合三相)とし、一次巻き線の各相に対して二次巻き線の各相を巻き付けている。従って、出力チャネル間で出力電流に偏りがあっても、一次巻き線の各相に負荷が偏ることを防止することができる。
【0039】
なお、一次巻き線と相数を同一とする二次巻き線の配置の形態は、上記図3の例に拘泥されず、他にも種々のものか考えられる。以下、二次巻き線の配置のバリエーションについて、以下実施例に従って説明する。
【0040】
(実施例1)
本実施例1に係る二次巻き線の配置形態は、各相に対応する各一次巻き線に巻き付ける二次巻き線を各相複数とするものである。
【0041】
図4は、本実施例を説明するための図であり、例えば一次巻き線U相に対応して、Xch出力に対応する二次巻き線U相、Ych出力に対応する二次巻き線U相、Zch出力に対応する二次巻き線U相をそれぞれ5個ずつ(5回路ずつ)、同心円方向(巻き線方向)に沿って配置した例を示した図である。一次巻き線V相、一次巻き線W相に対する二次巻き線の構成も同様である。
【0042】
この様な構成によれば、U相、V相、W相の各相に対応する各一次巻き線に対して、U相、V相、W相の各相に対応する二次巻き線が同数ずつ(図4の例では5個ずつ)巻き付けられている。この様に、U相、V相、W相の各相に対応する各一次巻き線に対して、Xch、Ych、Zchの各出力に対応する二次巻き線の数を同数にすることで、各相の一次巻き線が各出力に対応する二次巻き線に対して担保する電力を平準化することができる。その結果、出力チャネル間で出力電流に偏りがある場合であっても、一次巻き線の負荷に偏りがなく、安定した二次側電圧を供給することができる。
【0043】
(実施例2)
一般に、一次巻き線、二次巻き線の間の電磁的相互作用に加え、二次巻き線間においても電磁的相互作用が発生する。係る電磁的相互作用が完全でない場合、負荷が重く大きな電流を流すチャネルと、負荷が軽く大きな電流を流さないチャネルとが存在すると、負荷の軽いチャネルの二次巻き線の電圧が、許容度を超えて上昇してしまうことがある。本実施例2に係る二次巻き線の配置形態は、この問題を解決するため、各相に対応する各一次巻き線に各相に対応する二次巻き線を巻き付ける場合において、各出力チャネルに対する二次巻き線同士の磁気結合を平準化させるものである。
【0044】
図5は、例えば一次巻き線U相に対してXch出力に対応する二次巻き線U相、Ych出力に対応する二次巻き線U相、Zch出力に対応する二次巻き線U相をそれぞれ一つずつ巻き付けた場合の二次巻き線同士の磁気結合を説明するための図である。
【0045】
同図に示すように、二次巻き線Sy(Ychに対応)は一次巻き線U相の中央部に、二次巻き線Sx(Xchに対応)は一次巻き線U相の一端側に、二次巻き線Sz(Zchに対応)は一次巻き線U相の他端側に、それぞれ配置されている。
【0046】
同図の二次巻き線の配置形態において、出力チャネルとしてXチャネル(Xch)を選択した場合には、二次巻き線Sxのみに電流が供給され、他の二つの二次巻き線Sy、Szには、電流が少ししか供給されない。従って、一次巻き線U相によって形成される磁束B1は、一次巻き線U相に対して偏在する二次巻き線Sxによる磁束B2xと主に結合することになる。また、二次巻き線Sx−二次巻き線Szの間において、もれ磁束があると考えられる。
【0047】
この様に二次巻き線Sxにのみ偏って電流が流れる場合には、もれ磁束の影響により、例えばZチャネルに対応する二次巻き線Szの出力電圧が意図せずに上昇することがある。これは、二次巻き線Sxの電流による磁束を打ち消すべく増加した一次巻き線による磁束の増加分を相殺するために、二次巻き線Szにおいて磁束が増加するからである(すなわち、理想的には、二次巻き線Sxの電流の増加による鉄芯内の磁束の増加は、1次巻き線側による磁束の増加によって打ち消される。しかしながら、実際には、二次巻き線Szの位置では、二次巻き線SxとSzとの間のもれ磁束により、増加した1次巻き線側の磁束と二次巻き線Sxの磁束とが完全に相殺されない。このため、二次巻き線Szにおいて磁束が増加し、二次巻き線Szの電圧が増加するからである。)。係る現象は、二次巻き線Szにのみ偏って電流が流れる場合にも二次巻き線Sxに対して発生する(二次巻き線Syにのみ偏って電流が流れる場合には、二次巻き線Sx、Szへの距離が十分近く均等であり、影響は少ない)。
【0048】
また、図6(a)、(b)、(c)は、図4に示した二次巻き線の配置形態(すなわち、各相に対応する各一次巻き線に巻き付ける二次巻き線を各相5個としたもの)における磁場結合を説明するための図である。同図の形態においても、一次巻き線による磁束B1は鉄心に対し広く分布しているのに対して、特定の出力チャネルに接続されている二次巻き線の磁束S2x、S2y、S2zはコイル構造により鉄心に対して局所的に分布している。このため、例えば出力チャネルとしたXチャネルを選択した場合、図5の例と同様に、他のチャネルに対応する二次巻き線の出力電圧が上昇しることになる。
【0049】
この様な二次巻き線Szの出力電圧の上昇は、通常意図した動作ではなく、出力電圧を不安定にする。磁気共鳴映像装置の傾斜磁場電源装置では、後段の回路保護のために出力電圧の値でのインターロックを持たせている。従って、電圧変動の幅が大きく電圧値がインターロックの閾値を越えた場合、撮像を実施することができない。この様な問題は、例えば、図7に示すようなエコープラナーイメージング(EPI)に代表される、特定の軸方向(同図の例では、読み出し(RO)方向)に大きな電力供給を行う場合には、二次巻き線側に流す電流の各軸用二次巻き線間の偏りが大きくなるため、特に顕著である。
【0050】
ここで、エコープラナーイメージングとは、励起用高周波パルスを印加すると同時に、スライス用傾斜磁場(SE軸)を印加してスライス面内の磁化を選択的に励起した後、再収束高周波パルスを印加してから、スライス面に平行な方向に読出し用傾斜磁場(RO軸)を複数回スイッチングさせて印加し、同時にスライス用傾斜磁場と平行で且つ読出し用傾斜磁場と直交する方向に位相エンード用傾斜磁場(PE軸)を印加する撮像シーケンスである。なお、必要に応じて、再収束高周波パルスが印加されない場合もある。
【0051】
また、特定のチャネルに大電力を供給するイメージングシーケンスは、当然ながら、エコープラナーイメージングに拘泥されない。例えば、他の例として、高速フーリエ法、拡散強調イメージングなどを挙げることができる。高速フーリエ法は位相エンコード用傾斜磁場が読出し用勾配磁場の反転毎にパルス的に印加される点がEPI法とは異なっている。 また、拡散強調イメージングは、MPG(Motion Probing Gradient)パルスをEPIシーケンスに付加したシーケンスであり、例えばスピンエコー型のEPI法を用いる場合は再収束高周波パルスの前後にMPGパルスを加えるものである。
【0052】
これらのイメージングシーケンス等においてもより好適な映像化を実現するため、本実施例2に係る二次巻き線の配置形態では、各相に対応する各一次巻き線に対して各相の二次巻き線を、各チャネル毎でもれ磁場の発生する二次巻き線が集中しないように、空間的に分散させて配置する。
【0053】
図8は、例えば一次巻き線U相に巻き付ける二次巻き線を各相5個とした場合において、各チャネルに対応させる二次巻き線を分散配置した変圧器の例である。同図に示すように、二次巻き線S1、S7、S13、S4、S10はXチャネルに、二次巻き線S6、S12、S3、S9、S15はYチャネルに、二次巻き線S11、S2、S8、S14、S5はZチャネルに、それぞれ接続されている。すなわち、各チャネルの出力に対応する複数の二次巻き線は、各相に対応する各一次巻き線に対して、鉄芯の心線方向(軸方向)D1について混在するように配置される(心線方向D1について各チャネルの出力に対応する二次巻き線が少なくとも一つ配置される)ことになる。また、各チャネルの出力に対応する複数の二次巻き線は、同心円方向D2についても混在するように配置される(同心円方向D2について各チャネルの出力に対応する二次巻き線が少なくとも一つ配置される)ことになる。
【0054】
この様な配列・接続形態を採用した場合、出力チャネルをXチャネルとした場合の二次巻き線側の磁束B2x、出力チャネルをYチャネルとした場合の二次巻き線側の磁束B2y、出力チャネルをZチャネルとした場合の二次巻き線側の磁束B2zは、それぞれ図9(a)、(b)、(c)の様になる。従って、各出力チャネルに対応する二次巻き線間の漏れ磁束を心線方向D1について平準化させ、磁気結合が弱い部分を平準化させることができる。その結果、出力チャンネル間で出力電流に偏りがあっても出力の電圧変動が少なく安定した傾斜磁場電源出力を提供することができる。
【0055】
(効果)
以上述べた構成によれば、以下の効果を得ることができる。
【0056】
本磁気共鳴映像装置によれば、傾斜磁場電源装置に用いられる変圧器の一次巻き線、二次巻き線共に相数を同じにして、一次巻き線の各相に対して二次巻き線の各相が巻かれた構成を採用している。従って、出力チャネル間で出力電流や出力電圧に偏りがあっても、各相に対応する各一次巻き線に偏って負荷がかかることを防止することができる。その結果、一次巻き線の各相が各出力チャネルに対して担保する電力を平準化し、従来に比して安定して電力を共有することができる。
【0057】
また、本磁気共鳴映像装置によれば、各相に対応する各一次巻き線に対して、各チャネルの出力に対応する二次巻き線の数を同心円方向について実質的に等価にすることで、各相の一次巻き線が各出力に対応する二次巻き線に対して担保する電力を平準化することができる。その結果、出力チャネル間で出力電流に偏りがある場合であっても、一次巻き線の負荷に偏りがなく、安定した二次側電圧を供給することができる。
【0058】
さらに、本磁気共鳴映像装置によれば、各相に対応する各一次巻き線に対して、心線方向D1について各チャネルに対応する二次巻き線が少なくとも一つ配置されると共に、同心円方向D2について各チャネルに対応する二次巻き線が少なくとも一つ配置される。従って、出力チャネルに対応する二次巻き線間の漏れ磁束を心線方向について平準化させ、磁気結合が弱い部分を平準化させることができる。その結果、出力チャンネル間で出力電流に偏りがあっても出力の電圧変動が少なく安定した傾斜磁場電源出力を提供することができる。
【0059】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…磁気共鳴映像装置、11…静磁場磁石、12…冷却系制御部、13…傾斜磁場コイル、14…高周波送信コイル、15…高周波受信コイル、17…傾斜磁場電源装置、18…送信部、19…受信部、20…データ処理部、24…表示部、171…変圧器、173…整流器、175x…Xch出力回路、175y…Ych出力回路、175z…Zch出力回路、177…制御回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11