特許第6151350号(P6151350)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6151350生体試料を処理するための試料処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6151350
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】生体試料を処理するための試料処理システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20170612BHJP
   G01N 35/04 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   G01N35/02 D
   G01N35/04 G
   G01N35/02 C
   G01N35/02 B
【請求項の数】30
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-502387(P2015-502387)
(86)(22)【出願日】2013年5月23日
(65)【公表番号】特表2015-511717(P2015-511717A)
(43)【公表日】2015年4月20日
(86)【国際出願番号】EP2013060693
(87)【国際公開番号】WO2013174961
(87)【国際公開日】20131128
【審査請求日】2014年9月29日
(31)【優先権主張番号】102012208707.9
(32)【優先日】2012年5月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501401397
【氏名又は名称】ハミルトン・ボナドゥーツ・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ナンド・ジョヴァノリ
【審査官】 東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0126286(US,A1)
【文献】 特開平09−089907(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0102736(US,A1)
【文献】 特開2002−333450(JP,A)
【文献】 実開平03−115857(JP,U)
【文献】 特開2006−177961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料の処理のための試料処理システムであって、
第1および第2の方向(X,Y)により規定される平面に、本質的に水平に配置される受取板(14)、
第1および第2の作業アーム(20,22)であって、前記受取板(14)に対して前記第1の方向(X)に沿って移動可能であり、前記受取板(14)を横切る前記第2の方向(Y)に沿って互いに対して本質的に平行に延在し、前記第1の作業アーム(20)上に、前記第2の方向(Y)に沿って、かつ前記第1および前記第2の方向(X,Y)に垂直な第3の方向(Z)に沿って移動可能な少なくとも1つのピペットデバイス(40,42)が取り付けられており、前記第2の作業アーム(22)に、前記第2の方向(Y)に沿って、かつ前記第1および前記第2の方向(X,Y)に垂直な第3の方向(Z)に沿って移動可能な少なくとも1つのグリップデバイス(50)が取り付けられており、前記グリップデバイス(50)上に設けられたグリッパ(54)が前記第3の方向(Z)に平行なグリッパ回転軸(GA)の周りに回転可能である、第1および第2の作業アーム、ならびに
前記ピペットデバイス(40,42)および前記グリップデバイス(50)を制御するための制御デバイス
を有する試料処理デバイス(12)と、
試料で満たされる、または試料もしくは試薬で満たすことができる複数の試料容器(68)と、
試料、または溶解バッファなどの前記試料処理に必要なさらなる試薬の吸引および分注のため、前記ピペットデバイス(40,42)により使用することができる複数のピペットチップ(48)と
を備え、
前記試料容器(68)および前記ピペットチップ(48)が、それぞれ対応する試料容器キャリア(64,66)およびピペットチップキャリア(44)によって前記受取板(14)上に配置された、試料処理システムにおいて、
前記少なくとも1つのグリップデバイス(50)上に第1のセンサデバイス(51)が取り付けられ、前記第1のセンサデバイス(51)が、試料容器(68)上に取り付けられた識別パターン(90)を検出するように構成され、前記制御デバイスが前記グリップデバイス(50)を制御するように構成され、それにより、グリップされた試料容器(68)が試料容器キャリア(64,66)の中に前記識別パターン(90)が検出された位置に対して所定の回転位置に配置され、その結果、前記試料容器キャリア(64,66)の中に前記グリップデバイス(50)により配置された複数の試料容器(68)が、本質的に同じようにして、前記それぞれの識別パターン(90)に関して位置合わせされる、または位置合わせすることができ、前記試料処理システムは、前記第1の方向(X)に沿って前記受取板(14)上で移動可能な装填デバイス(70)を備え、前記装填デバイス(70)が、ピペットチップキャリア(44)および/または閉め具キャリア(82)および/または試料容器キャリア(64,66)および/または前記試料処理に必要なさらなるキャリア(84)を前記第2の方向(Y)に沿って前記受取板(14)に向かってまたは前記受取板(14)から離れて動かし、前記装填デバイス(70)が、第1の縁部(18)と反対の前記受取板の第2の縁部(19)に沿って移動可能であるように構成され、かつ、前記装填デバイス(70)が第2のセンサデバイス(74)を備え、前記第2のセンサデバイス(74)によって、ピペットキャリア(44)および/または閉め具キャリア(82)および/または試料容器キャリア(64,66)および/またはさらなるキャリア(84)の識別パターンが検出可能であり、かつ/または試料容器キャリア(64,66)に収容される試料容器(68)のうちの少なくとも1つの識別パターン(90)が検出可能であることを特徴とする、試料処理システム。
【請求項2】
前記試料処理デバイスが、少なくとも1つの閉蓋デバイス(60,62)を備え、前記閉蓋デバイス(60,62)が、前記閉蓋デバイス(60,62)の中に収容された試料容器(68)が、蓋、ストッパなどの対応する閉蓋要素(67)が取り外されて前記試料容器(68)を開く、またはそのような閉蓋要素(67)と接続されて前記試料容器(68)を閉じるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の試料処理システム。
【請求項3】
前記グリップデバイス(50)によって、開いたまたは閉まった試料容器(68)が、前記閉蓋デバイス(60,62)に送達され、または前記閉蓋デバイス(60,62)から除去できるように前記制御デバイスが構成されることを特徴とする、請求項2に記載の試料処理システム。
【請求項4】
前記試料容器(68)から取り外された使用済み閉蓋要素(69)、または別個の未使用の閉蓋要素(69)をグリップすることができ、前記閉蓋デバイス(60,62)から移動され、または前記閉蓋デバイス(60,62)へと移動されるように、前記グリップデバイス(50)が構成されることを特徴とする、請求項2または3に記載の試料処理システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つのピペットデバイス(40,42)が、前記閉蓋デバイス(60,62)内に置かれた開いた試料容器(68)に向かって移動可能であり、前記対応する試料容器(68)から試料を抽出することができるように、前記試料処理デバイスが構成されることを特徴とする、請求項2から4のいずれか一項に記載の試料処理システム。
【請求項6】
少なくとも1つの閉蓋要素キャリア(82)をさらに備え、前記少なくとも1つの閉蓋要素キャリア(82)によって、未使用の閉蓋要素(67)を、前記受取板(14)上に設けることができる、または設けることを特徴とする、請求項2から5のいずれか一項に記載の試料処理システム。
【請求項7】
使用済みピペットチップ(48)および/または使用済み閉蓋要素(67)を廃棄するための廃棄容器(39)を備え、前記廃棄容器(39)が、前記第2の方向に沿って延びる前記受取板(14)の第3の縁部(21)にぶら下がって配置されることを特徴とする、請求項2から6のいずれか一項に記載の試料処理システム。
【請求項8】
前記グリップデバイス(50)が複数の移動可能なグリッパ(54)を備え、前記複数の移動可能なグリッパ(54)が、試料容器(68)または閉蓋要素(67)を前記グリッパ(54)によって外側からグリップすることができるように構成されることを特徴とする、請求項2から7のいずれか一項に記載の試料処理システム。
【請求項9】
インキュベータデバイス(80)をさらに備え、前記インキュベータデバイス(80)が前記受取板(14)上に配置され、前記インキュベータデバイス(80)に複数の試料容器(68)を収容することができることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の試料処理システム。
【請求項10】
前記第1の作業アーム(20)上に取り付けられたピペットデバイス(40,42)の数が、前記第2の作業アーム(22)上のグリップデバイス(50)の数と同じであり、前記数が、1から4であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の試料処理システム。
【請求項11】
前記第1の作業アーム(20)から前記第2の作業アーム(22)への方向に前記第1の方向(X)に沿って前記受取板(14)上に、
前記第2の方向(Y)に沿って、互いに隣り合ってそれぞれが配置される、複数のピペットチップフレーム(46)を有するピペットチップキャリア(44)と、
インキュベータ(80)であって、特定のタイプの24の試料容器を収容するのに好適なインキュベータ(80)と、
特定のタイプの試料容器のための未使用の閉蓋要素(67)を有する少なくとも1つの閉蓋要素キャリア(42)と、
試薬のための容器(84)と、
第2のタイプの試料容器のための少なくとも1つの試料容器キャリア(66)と、
第1または第3のタイプの試料容器のための少なくとも1つの試料容器キャリア(64)と、
前記第1または前記第3のタイプの試料容器のための試料容器キャリア(64')と、
前記第2のタイプの試料容器のための試料容器キャリア(66')と、
前記第1および前記第3のタイプの試料容器用に構成された、少なくとも1つの閉蓋デバイス(60)であって、そのような閉蓋デバイス(60)が前記第2の方向(Y)に沿って互いに隣り合って配置される少なくとも1つの閉蓋デバイス(60)と
が配置されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の試料処理システム。
【請求項12】
前記第2のタイプの試料容器用に構成される少なくとも1つのさらなる閉蓋デバイス(62)をさらに備える、請求項11に記載の試料処理システム。
【請求項13】
生体試料のための処理方法であって、
生体試料が含まれる少なくとも1つの閉まった試料容器(68)を有する少なくとも1つの試料容器キャリア(64,66)を設けるステップと、
前記少なくとも1つの試料容器キャリア(64,66)を試料処理デバイス(12)の受取板(14)上に移動するステップと
を含む処理方法において、
各試料容器が処理されるまで繰り返し実施される、以下のステップ、すなわち
前記試料容器(68)または別の試料容器(68)を前記試料処理デバイス(12)のグリップデバイス(50)によってグリップするステップと、
前記グリップデバイス(50)によって、前記試料容器(68)を回転することにより、前記試料容器(68)に含まれる試料を混合するステップと、
前記グリップデバイス(50)に取り付けられた第1のセンサデバイス(51)によって、前記試料容器(68)に取り付けられた識別パターン(90)を検出するステップと、
さらなる処理のために、前記グリップデバイス(50)によって、前記試料処理デバイス(12)の中の所望の位置に前記試料容器(68)を配置するステップと
を含み、
生物学的プローブを含む、前記閉まった試料容器(68)が、第1のタイプの試料容器であり、方法が以下のステップ、すなわち、対応する試料容器キャリア(66)の中に、少なくとも1つの、閉まっていない、空の第2のタイプの試料容器を設けるステップであって、前記第1および前記第2のタイプの試料容器上に識別パターン(90)が取り付けられ、前記第1および前記第2のタイプの2つの試料容器が常に同一の識別パターン(90)を備えるステップをさらに含み、
前記試料容器キャリア(64,66)の中へ前記試料容器を配置するステップの期間に、前記試料容器(68)に取り付けられた前記識別パターン(90)が、前記グリップデバイス(50)上のセンサユニット(51)によって検出され、前記識別パターン(90)が検出された回転位置に対し、前記試料容器(68)が所定の回転位置で前記試料容器キャリア(64,66)の中に配置され、それにより、前記試料容器キャリアの中に、前記グリップデバイス(50)によって配置された複数の試料容器(68)が、本質的に同じようにして、それぞれの識別パターン(90)に対して位置合わせされ、
前記受取板(14)上で移動可能な装填デバイス(70)が第2のセンサデバイス(74)を備え、前記第2のセンサデバイス(74)によって、ピペットキャリア(44)および/または閉め具キャリア(82)および/または試料容器キャリア(64,66)および/またはさらなるキャリア(84)の識別パターンが検出可能であり、かつ/または試料容器キャリア(64,66)に収容される試料容器(68)のうちの少なくとも1つの識別パターン(90)が検出可能であることを特徴とする、処理方法。
【請求項14】
各試料容器(68)が処理されるまで繰り返し実施される、以下のさらなるステップ、すなわち
前記試料容器(68)を閉蓋デバイス(60,62)の中に配置するステップと、
前記閉蓋デバイスによって前記閉蓋デバイス(60,62)内に収容された前記試料容器(68)の閉蓋要素(67)を取り外すステップと、
前記試料容器(68)から、および前記閉蓋デバイス(60,62)から前記取り外された閉蓋要素(67)を、前記グリップデバイス(50)によって除去するステップと、
前記閉蓋デバイス(60,62)による取り外すステップの後、前記閉蓋要素(67)を除去するステップの前に、前記グリップデバイス(50)によって前記閉蓋要素(67)を回転させ、前記取り外すステップ後に有効な可能性がある前記閉蓋要素(67)と前記試料容器(68)の間の係合を解除するステップと
をさらに含む、請求項13に記載の処理方法。
【請求項15】
未使用のピペットチップ(48)を有する少なくとも1つのピペットチップキャリア(44)を設けるステップと、前記少なくとも1つのピペットチップキャリア(44)を前記試料処理デバイス(12)の前記受取板(14)上に移動するステップとをさらに含む、請求項14に記載の処理方法。
【請求項16】
各試料容器(68)が処理されるまで繰り返し実施される、以下のステップ、すなわち
ピペットデバイス(40)によって前記ピペットチップキャリア(44)からピペットチップ(48)を収集するステップと、
特定の試料容器(68)から所望の量の前記試料を吸引するステップと、
前記ピペットチップ(48)に収容されている前記試料を別の空の試料容器(68)に分注するステップと、
使用済みピペットチップ(48)を廃棄するステップと
をさらに含む、請求項15に記載の処理方法。
【請求項17】
各試料容器(68)が処理されるまで繰り返し実施される、以下のステップ、すなわち
前記グリップデバイス(50)によって前記閉蓋デバイス(60,62)内に置かれた前記試料容器(68)上に、以前に除去された使用済みの閉蓋要素(69)を配置するステップ、または未使用の閉蓋要素(69)を配置するステップと、
前記閉蓋デバイス(60,62)によって前記閉蓋デバイス(60,62)内に置かれた前記試料容器(68)を閉じるステップと、
前記グリップデバイス(50)による前記閉蓋要素(67)を配置するステップの後、前記閉蓋要素(67)を閉じるステップの前に、前記グリップデバイス(50)によって前記閉蓋要素(67)を回転させ、前記閉蓋要素(67)を配置するステップの後に閉蓋要素(67)と前記試料容器(68)の間に最初の係合を行うステップと、
前記グリップデバイス(50)によって前記閉蓋デバイス(60,62)から再び閉められた試料容器(68)を除去するステップと、
前記再び閉められた試料容器(68)を試料容器キャリア(64,66)の中に配置するステップと
をさらに含む、請求項14から16のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項18】
前記第1および前記第2のタイプの前記試料容器を有する前記試料容器キャリア(64,66)の移動期間に、単一の前記試料容器(68)上、および前記試料容器キャリア(64,66)上の前記識別パターン(90)が検出されて記憶され、前記第1のタイプの各試料容器に対し、同一の識別パターンを有する前記第2のタイプの試料容器が存在するかどうか、前記識別パターン(90)が比較される、請求項13に記載の処理方法。
【請求項19】
前記試料が分注される前記空の試料容器が前記第2のタイプの試料容器である、請求項16または18に記載の処理方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの試料容器キャリア(64,66)を設けるステップが、前記試料処理デバイス(12)の前の提供領域(16)上で、前記試料処理デバイス(12)の外で実施される、請求項13から19のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項21】
前記試料処理デバイス(12)の前記受取板(14)から提供領域(16)に前記試料容器キャリア(64,66)を自動で移動し、前記試料容器キャリアを手動で取り出すステップをさらに含む、請求項13から20のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項22】
試料容器(68)用に未使用の閉蓋要素(67)を有する閉蓋要素キャリア(82)を設けるステップをさらに含む、請求項13から21のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項23】
前記閉蓋要素キャリア(82)を、前記試料処理デバイス(12)の前記受取板(14)上に手動で置くステップをさらに含む、請求項22に記載の処理方法。
【請求項24】
試料容器(68)の中で前記試料を混合するステップが、廃棄容器(39)の領域中への前記試料容器の搬送後に前記グリップデバイス(50)によって実施される、請求項13から23のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項25】
前記生体試料は、血液、唾液、分泌物などの体液、または組織試料である、請求項1に記載の試料処理システム。
【請求項26】
PCRによるDNA分析のための試料の調製のためのシステムである、請求項1に記載の試料処理システム。
【請求項27】
前記第1および第2の作業アーム(20,22)は前記受取板(14)の第1の縁部(18)に沿って移動可能である、請求項1に記載の試料処理システム。
【請求項28】
前記生体試料は、血液、唾液、分泌物などの体液、または組織試料である、請求項13に記載の処理方法。
【請求項29】
前記試料容器(68)に含まれる前記試料は、液体の生物学的材料、または少なくとも1つの試薬と少なくとも部分的に溶解した生物学的材料の混合物である、請求項13に記載の処理方法。
【請求項30】
前記試料容器(68)は、毎分約500から2000回転で、前記グリップデバイス(50)によって回転させられる、請求項13に記載の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料、より詳細には、血液、唾液、分泌物などの体液、または組織試料の処理、より詳細には、PCRによるDNA分析のための試料の調製のための試料処理システムに関し、この試料処理システムは、
第1および第2の方向(X,Y)により規定される平面に、本質的に水平に配置される受取板(14)、
第1および第2の作業アームであって、受取板に対して第1の方法(X)に沿って、好ましくは受取板の第1の縁部に沿って移動可能であり、受取板を横切る第2の方向に沿って互いに対して本質的に平行に延在し、第1の作業アームに、第2の方向(Y)ならびに第1の方向および第2の方向に垂直な第3の方向(Z)に移動可能な少なくとも1つのピペットデバイスが取り付けられており、第2の作業アームに、第2の方向(Y)ならびに第1の方向および第2の方向に垂直な第3の方向(Z)に移動可能なグリップデバイスが取り付けられており、グリップデバイス上に設けられたグリッパが第3の方向(Z)に平行なグリッパ回転軸の周りに回転可能である、第1および第2の作業アーム、ならびに
ピペットデバイスおよびグリップデバイスを制御するための制御デバイスを有する試料処理デバイスと、
試料、特に液体試料で満たされる、または試料もしくは試薬で満たすことができる複数の試料容器と、
試料液、または溶解バッファなどの試料処理に必要なさらなる試薬の吸引および分注のため、ピペットデバイスによって使用することができる複数のピペットチップとを備え、
試料容器およびピペットチップは、それぞれ対応する試料容器キャリアおよびピペットチップキャリアによって受取板上に配置される。
【背景技術】
【0002】
そのような試料処理システムの例は、特許文献1によって知られている。この知られている試料処理システムで、試料容器がマトリックス形状に配置される試料容器キャリアは、試料処理デバイス内の第1の作業平面上に手動で入れられる。次いで、試料容器は、ロボットアームによって試料容器キャリアから別個に取り出される。ロボットアームは、グリップされた試料容器をバーコードリーダへ、続けて混合デバイスに搬送する。混合後、試料容器は、別のグリッパにより保持器に搬送され、保持器に固定され、そのため、グリッパによって、試料容器上にねじ締めされた閉蓋がゆるめられて取り外される。閉蓋を開けた後、閉蓋がグリッパにより保持され、ピペットデバイスによって、試料液が試料容器から取り出され、別の試料容器に送達される(いわゆる、アリコート化)。ピペットを行った後、第1の試料容器は再び閉められ、試料容器キャリアの中に戻される。続けて、アリコートされた試料は、実施される分析に関連して、加熱、混合、ピペットなどさらなる処理ステップを通る。このシステム中の異なる処理ステップは、部分的に重複する異なる平面上で実施される。さらに、ロボットアーム、グリッパおよびリフトデバイスなどのいくつかの異なる搬送デバイスが、試料処理システム内で試料容器を、特に、異なる平面に、また混合ステーション、閉蓋ステーションなど異なるプロセスステーションの中に移動させるのに必要である。それぞれが一緒になり、たった1つの特別な処理ステップに必要な多くの個別の構成要素を有する複雑で入れ子になった構成が生じる。さらに、異なる平面を有する配置は、欠陥がある試料容器または閉め具の開閉の問題などのために、生物学的材料を取り出す場合に下に位置する全ての平面が汚染される危険を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2010/056903号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
知られているシステムの欠点を回避することができる、簡略化した試料処理システムおよび方法を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのために、本発明の第1の態様によれば、試料容器の中に含まれる、特に、液体の生物学的材料または少なくとも1つの試薬と溶解もしくは分解される生物学的材料との混合物の試料液が、グリッパでグリップされた試料容器をグリッパの回転軸の周りに、好ましくは、毎分約500〜200回転で回転することにより、グリップデバイスによって混合されるように試料処理デバイスの制御デバイスが構成されることが提案される。
【0006】
したがって、グリッパデバイスは、知られているロボットアームについての場合のように、試料容器の搬送のためにだけ使用されるのではなく、そのために特定の混合デバイスが試料処理システム内に設けられなければならない必要はなく、試料液を混合するために追加で使用される。追加の構成要素を節約することができるので、このことによって、試料処理システムまたは試料処理デバイスの構成が簡略化する。さらに、このことによって、試料処理の処理ステップを最適化することが可能になる。
【0007】
第2の態様によれば、さらなる発展形態または自蔵式でもあるものとして、少なくとも1つのグリップデバイスに第1のセンサデバイスが取り付けられ、第1のセンサデバイスが、試料容器に取り付けられた識別パターン、特にバーコードを検出するように構成され、制御デバイスがグリップデバイスを制御するように構成され、それにより、グリップされた試料容器が試料容器キャリアの中に識別パターンが検出された位置に対して所定の回転位置に配置され、その結果、試料容器キャリアの中にグリップデバイスにより配置された複数の試料容器が、本質的に同じようにして、それぞれの識別パターンに関して位置合わせすることができる、または位置合わせされることが提案される。
【0008】
試料容器に取り付けられた識別パターンを検出するためのセンサデバイスを設けることによって、プロセスフローのさらなる最適化が可能になる。センサデバイスがグリップデバイスとともに動かされるので、処理される試料容器は、識別パターンを読み取ることができる試料処理デバイス内の特定の位置に動かされなければならない必要がない。対照的に、試料容器のそのような識別は、試料容器のグリップおよび試料容器キャリアからの試料容器の取出しのすぐ後に実施することができ、一方、グリップデバイスは、試料についてのさらなる処理ステップが実施される位置に、それまでに動かされる。識別パターンとして、1次元バーコード、2Dバーコードなど、様々な知られている実現形態のバーコードが可能である。当然、やはり、数字、文字などといった、さらなるパターンまたはサインが、識別パターンとして使用することができ、またはバーコードを補うことができる。
【0009】
さらなる発展形態として、試料処理デバイスが、少なくとも1つの閉蓋デバイスを備え、この閉蓋デバイスが、閉蓋デバイスの中に収容された試料容器が、蓋、ストッパなどの対応する閉蓋要素が取り外されて試料容器を開ける、またはそのような閉蓋要素と接続されて試料容器を閉めるように構成されることが提案される。好ましくは、閉蓋デバイスは、堅く固定された閉蓋要素、特にねじ閉蓋要素またはねじ蓋の取り外し、およびそのような閉蓋要素の固定を、対応するトルクを使用して実施することができるように形成される。
【0010】
このコンテキストでは、グリップデバイスにより、開いたまたは閉まった試料容器が、閉蓋デバイスに入れられ、閉蓋デバイスから取り出すことができるように制御デバイスが構成されることが、さらに想到される。そのために、別個の未使用の閉蓋要素または試料容器から取り外された使用済み閉蓋要素がグリップ可能であり、閉蓋デバイスへと移動され、また閉蓋デバイスから離されるように、グリップデバイスを構成することができる。グリップデバイスは、例えばねじ閉め具の場合、試料容器に関して閉蓋要素の回転の少なくとも一部を行うことにより、対応する試料容器から既に取り外された閉蓋要素を最終的に取り除くためにも使用することができる。当然、グリップデバイスは、反対の場合、試料容器の閉蓋期間に、試料容器上に閉蓋要素を置き、次いで、例えば少なくとも一部の回転によって、閉蓋要素と試料容器の間の主な係合を行うこともできる。しかし、このプロセスでは、グリップデバイスが、固定式にねじ止めされた位置から高トルクを使用して閉蓋要素を取り外す、または閉蓋要素を固定式にねじ止めされた位置に締めるように働くことは、考慮されていない。
【0011】
好ましくは、少なくとも1つのピペットデバイスが、試料容器に関して移動可能であり、閉蓋デバイスの中に含まれ、開けられて、対応する試料容器から試料液を抽出することができるように、試料処理デバイスが構成される。
【0012】
さらに、試料処理システムが、少なくとも1つの閉蓋要素キャリアを備え、少なくとも1つの閉蓋要素キャリアによって、未使用の閉蓋要素が、受取板上に設けられることができる、または設けられることが提案される。
【0013】
試料処理システムは、使用済みピペットチップおよび/または使用済み閉蓋要素を廃棄するための廃棄容器をさらに備えることができ、好ましくは、廃棄容器は、特に、第2の方向に沿って延びる受取板の第3の縁部にぶら下がって配置される。廃棄容器として、プラスチックでできた袋状容器を使用することができるが、しっかりした壁を有する箱状容器も考えられる。
【0014】
グリップデバイスは、好ましくは複数の移動可能なグリッパを備え、移動可能なグリッパは、試料容器または閉蓋要素をグリッパによって外側からグリップすることができるように構成される。好ましい実施形態では、90°ステップで分散され円周方向に沿って配置される、4つのグリッパが設けられる。しかし、4つのグリッパよりも少ない、またはより多い場合も考えられる。グリッパは、好ましくは、異なるタイプの試料容器または対応する閉蓋要素が、グリッパによりグリップ、回転、および搬送することができるように形成される。グリッパは、したがって、知られている容器のPreserCyt(登録商標)アンプル、SurePath(商標)アンプルまたはPCR Mediaチューブなど、異なる試料容器およびそれらの閉蓋要素の処理に、変わらずに使用することができる。当然、これを可能にするために、制御デバイスは、異なる試料容器をグリッパによりグリップすることができるように、グリップデバイスまたはそのグリッパを制御することができるように構成される。
【0015】
試料処理システムは、インキュベータデバイスをさらに含むことができ、インキュベータデバイスは受取板に配置され、インキュベータデバイスに複数の試料容器を収容することができる。インキュベータデバイスは、調製ステップ、特に、例えばDNA鎖を変性させることができるDNA分析を可能にする。
【0016】
好ましくは、試料処理システムが、第1の方向(X)に沿って受取板に向かって移動可能な装填デバイスを備え、装填デバイスが、ピペットチップキャリアおよび/または閉め具キャリアおよび/または試料容器キャリアおよび/または試料処理に必要なさらなるキャリアを第2の方向(Y)に沿って受取板に向かってまたは受取板から離れて動かし、好ましくは、装填デバイスが、第1の縁部と反対の受取板の第2の縁部に沿って移動可能であるように構成される。装填デバイスは、受取板の外側、したがって試料処理デバイスの外側にも、あらゆるタイプのキャリアを手動で提供すること、ピペットチップ、試料容器、または閉蓋要素を有するキャリアを自動で押し込むまたは押し出すことを可能にする。
【0017】
装填デバイスは、好ましくは第2のセンサユニットを備え、第2のセンサユニットによって、ピペットキャリアおよび/または閉め具キャリアおよび/または試料容器キャリアおよび/またはさらなるキャリアの、識別パターン、特にバーコードが検出可能であり、かつ/または第2のセンサユニットによって、試料容器キャリアに収容される少なくとも1つの試料容器の識別パターン、特にバーコードが検出可能である。これに起因して、提供され手動で満たされたキャリアを制御することができ、試料処理デバイスを正しく満たすことを、制御デバイスによって制御することができる。さらに、どのタイプの試料容器キャリアが、例えば、試料容器の対応にしたがってグリップデバイスの制御を実施することができる、どのタイプの試料容器とともに装填されたのかを決定することもできる。
【0018】
さらなる発展形態として、第1の作業アームに取り付けられたピペットデバイスの数が、第2の作業アーム上のグリップデバイスの数と同じであり、好ましくは数は、1から4であることが提案される。いくつかのピペットデバイスまたはグリップデバイスが存在する場合、いくつかの試料容器を同時に処理することができる。
【0019】
試料処理システムの例示的な充填法または構成では、第1の作業アームから第2の作業アームへの方向に第1の方向(X)に沿って受取板上に、
複数のピペットチップフレームを有するピペットチップキャリア、好ましくは、第2の方向(Y)に沿って、互いに隣り合ってそれぞれが配置される96のピペットチップを有する5つのピペットチップフレームと、
好ましくは、インキュベータ、特に、特定のタイプの24の試料容器を収容するのに好適なインキュベータと、
好ましくは、特定のタイプの試料容器のための未使用閉蓋要素を有する少なくとも1つの閉蓋要素キャリアと、
好ましくは、試薬、特に溶解バッファのための容器と、
第2のタイプの試料のための少なくとも1つの試料容器キャリア、好ましくは、それぞれ、第2のタイプのための24の試料容器のための複数の試料容器キャリアと、
第2または第3のタイプの試料容器のための少なくとも1つの試料容器キャリア、好ましくは、それぞれ、第1のタイプの12の試料容器のための、またはそれぞれ、第3のタイプの6の試料容器のための複数の試料容器キャリアと、
第1または第3のタイプの試料容器のための試料容器キャリアと、
第2のタイプの試料容器のための試料容器キャリアと、
第1および第3のタイプの試料容器に好適な少なくとも1つの閉蓋デバイスであって、好ましくは、そのような閉蓋デバイスが第2の方向(Y)に沿って互いに隣り合う少なくとも1つの閉蓋デバイスと
が配置されることが考えられる。
【0020】
第1のタイプの試料容器は、例えば、SurePath(商標)アンプルであってよい。第3のタイプの試料容器として、PreservCyt(登録商標)アンプルが考えられる。PCR Mediaチューブは、第2のタイプの試料容器として使用することができる。特許請求されるタイプへの、特定の試料容器のこうした適用は、純粋に例示であり、他の名称または商品名の下で知られている試料容器も使用することができる。
【0021】
そのために、さらなる発展形態として、試料処理システムが、少なくとも1つのさらなる閉蓋デバイスを備え、第2のタイプの試料容器用に、好ましくは、第2の方向(Y)に沿って互いに隣り合うそのような閉蓋デバイス用に構成されることが提案される。したがって、試料処理システム内で、少なくとも2つの異なるタイプの試料容器を、それぞれの閉蓋デバイスにより開閉することができる。全てのタイプの試料容器をグリップ、搬送、および回転することができるグリップデバイスに相関して、フレキシブルに使用可能な試料処理システムが生じ、このことは、非常に異なる処理方法にも適合することができる。
【0022】
さらに、生体試料、より詳細には、血液、唾液、分泌物のような体液、または組織試料のための処理方法が提案され、以下のステップ、すなわち
生体試料を含む少なくとも1つの閉まった試料容器を有する少なくとも1つの試料容器キャリアを設けるステップと、
少なくとも1つの試料容器キャリアを試料処理デバイスの受取板上に移動するステップと
を含み、
本発明による方法が、各試料容器が処理されるまで好ましくは繰り返し実施される以下のステップ、すなわち
前記試料容器または別の試料容器を試料処理デバイスのグリップデバイスでグリップするステップと、
グリップデバイスで、好ましくは毎分約500から2000回転で試料容器を回転することにより、試料容器に含まれる試料液、特に液体の生物学的材料、または少なくとも1つの試薬と少なくとも部分的に溶解した生物学的材料の混合物を混合するステップと、
グリップデバイスによってさらなる処理のために、試料処理デバイス内の所望の位置に試料容器を配置するステップと
を含む。
【0023】
処理方法は、各試料容器が処理されるまで好ましくは繰り返し実施される、以下のさらなるステップ、すなわち
試料容器を閉蓋デバイスの中に配置するステップと、
閉蓋デバイスによって閉蓋デバイス内に収容された試料容器の閉蓋要素を取り外すステップと、
試料容器から、および閉蓋デバイスからグリップデバイスによって、取り外された閉蓋要素を除去するステップと、
好ましくは、閉蓋デバイスによる取り外すステップの後、閉蓋要素を除去するステップの前に、グリップ要素によって閉蓋要素を回転させ、取り外すステップ後に有効な可能性がある閉蓋要素と試料容器の間の係合を解除するステップと
を好ましくは含む。
【0024】
さらなる発展形態として、処理方法において、未使用のピペットチップを有する少なくとも1つのピペットチップキャリアが設けられ、少なくとも1つのピペットチップキャリアが試料処理デバイスの受取板上に移動されるステップが提案される。
【0025】
さらに処理方法は、各試料容器が処理されるまで好ましくは繰り返し実施される、以下のステップ、すなわち
ピペットデバイスによってピペットチップキャリアからピペットチップを収集するステップと、
特定の試料容器から所望の量の試料液を吸引するステップと、
ピペットチップに収容されている試料液を別の空の試料容器に分注するステップと、
使用済みピペットチップを廃棄するステップと
を好ましくは含むことができる。
【0026】
これらの処理ステップは、特にアリコート化であってよい。アリコート化のプロセスでは、試料容器の中に含まれる全量の試料から分析される一部の量(アリコート化部)が取り出され、好ましくはピペットを行うことによりさらなる試料容器の中に入れることができる。アリコート化のプロセスでは、やはり、全試料のほんの一部分がいくつかの試料へと分割され、取り出された試料(アリコート)は、必ずしも分析されるものではなく、分類の1種と言うことができる。
【0027】
加えて、処理方法は、試料容器の各々が処理されるまで好ましくは繰り返し実施される、以下のステップ、すなわち
グリップデバイスによって、閉蓋デバイス内に置かれた試料容器において、以前に除去された使用済みの閉蓋要素を交換するステップ、または未使用の閉蓋要素を配置するステップと、
閉蓋デバイスによって、閉蓋デバイス内に置かれた試料容器を閉じるステップと、
好ましくは、グリップデバイスによる交換するステップの後、閉蓋要素を閉じるステップの前に、グリップデバイスによって閉蓋要素を回転させ、閉蓋要素を配置するステップの後に閉蓋要素と試料容器の間に主な係合を行うステップと、
グリップデバイスによって、閉蓋デバイス上の再び閉められた試料容器を除去するステップと、
再び閉められた試料容器を、特に試料容器キャリアの中に、好ましくは試料容器が取り出された試料容器キャリアの中に配置するステップと
をさらに含むことが提案される。
【0028】
処理方法内で、生物学的プローブを備える、閉まった試料容器が、第1のタイプの試料容器であってよく、ここで、方法が以下のステップ、すなわち、対応する試料容器キャリアの中に、少なくとも1つの、閉まっていない、好ましくは空の、第2のタイプの試料容器を設けるステップであって、第1のタイプおよび第2のタイプの試料容器上に識別パターン、好ましくはバーコードが取り付けられ、第1のタイプおよび第2のタイプの2つの試料容器が常に同一の識別パターンを備えるステップをさらに含むことができる。
【0029】
そのために、さらなる発展形態として、第1のタイプおよび第2のタイプの試料容器を有する試料容器キャリアの移動期間に、単一の試料容器上、および好ましくは試料容器キャリア上の識別パターンが検出されて記憶され、第1のタイプの各試料容器に対し、同一の識別パターンを有する第2のタイプの試料容器が存在するかどうか、識別パターンが比較されることが提案される。
【0030】
試料容器キャリアの中へ試料容器を配置するステップの期間に、試料容器に取り付けられた識別パターンを、グリップデバイス上のセンサユニットによって検出することができ、試料容器は、識別パターンが検出された回転位置に対し、所定の回転位置で試料容器キャリアの中に配置することができ、そのため、試料容器キャリアの中に、グリップデバイスによって配置された複数の試料容器が、本質的に同じようにして、それぞれの識別パターンに対して位置合わせされる。
【0031】
処理方法において、試料液が分注される空の試料容器は、第2のタイプの試料容器であってよい。
【0032】
好ましくは、処理方法において、設けるステップは、試料処理デバイスの上流に設けられる面で、試料処理デバイスの外で実施される。
【0033】
さらに、処理方法は、次のステップ、すなわち、試料処理デバイスの受取板から提供面に試料容器キャリアを自動で移動し、試料容器キャリアを手動で取り出すステップも含むことができる。
【0034】
加えて、処理方法について、試料容器用に、特に第2のタイプの試料容器用に、未使用の閉蓋要素を有する閉蓋要素キャリアが設けられることが提案される。
【0035】
そのために、閉蓋要素キャリアは、試料処理デバイスの受取板上に手動で置くことができる。
【0036】
グリップデバイスによって試料容器の中で試料液を混合するステップが、好ましくは、廃棄容器の領域中への試料容器の搬送後に実施される。
【0037】
以下で、本発明は、実施形態に関して、例示的に、かつ非限定的に記載されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】試料処理システムの試料処理デバイスの実施形態を示す概略斜視図である。
図2】試料容器およびそのキャリアならびにピペットチップおよびそのキャリアなど、試料処理デバイスに追加されるシステムのさらなる構成要素を有する試料処理システムの可能な構成を示す概略斜視図である。
図3】試料処理デバイスのグリップデバイスの実施形態を示す概略拡大斜視図である。
図4】異なるタイプの試料容器の開閉のための処理方法のための試料処理システムの構成を示す概略簡略上面図である。
図5】異なるタイプの試料容器の開閉のための処理方法のための試料処理システムの別の構成を示す概略簡略上面図である。
図6】試料のアリコート化のための処理方法のための試料処理システムの構成を示す概略簡略上面図である。
図7】試料のアリコート化およびさらなる処理のための処理方法のための試料処理システムの構成を示す概略簡略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、概略斜視図で、試料処理デバイス12を有する試料処理システム10を示す。試料処理デバイス12は、基板上に図示されていない基本構造を用いて配置される受取板14を備える。基本構造は、試料処理デバイス12と接続することができ、またはテーブルなど別個の要素であってよい。受取板14は、第1の方向Xおよび第2の方向Yに延在する平面を形成する。受取板の第1の縁部18に沿って、X方向に沿って移動可能な、2つの作業アーム20および22が配置される。これらの2つの作業アーム20および22は、図示されていない駆動デバイスにより駆動され、作業アーム20および22が受取板14に対して動くことができるように、移動可能または回転式に支持される。作業アーム20および22は、それぞれ、受取板14上に支持される(部分的に覆われる)垂直支持物24および26、およびそこに取り付けられる水平支持物28および30を備える。水平支持物は、垂直支持物24、26の反対の終端に、第3の方向Zに上向きに指し、図示されていない案内物を有するロール36で係合される転動支持物32、34を備える。案内物は、試料処理デバイス12の図示されていないフレーム構造の部分である。そのようなフレーム構造は、受取板14の上に設けられ、この場では図示されていない壁および開口を有する筐体も備えることができる。
【0040】
第1の作業アーム20上に複数のピペットデバイス40が、第1の作業アーム20の水平支持物28に沿って、互いに隣り合って配置される。全てのピペットデバイス40は、Y方向に沿って水平支持物28に関して移動可能である。さらに、各ピペットデバイスは、垂直のZ方向に沿って追加で移動可能である、ピペットチャンネル42を備える。各ピペットデバイスは、自動ピペット処理を実施することができるように、対応する制御プログラムがインストールされているデスクトップコンピュータまたはノートブックなどの図示されていない制御デバイスで制御することができる。本明細書で例に図示される4つのピペットデバイス40は、より少なくてもより多くてもよいのだが、別個に制御されて、ピペットデバイスの可能なまたは所望の位置に水平支持物28に沿って到達し、対応するピペットチャンネル42をZ方向に位置決めし、所望の量の液体を吸引または分注が可能となることができる。
【0041】
第2の作業アーム22上に複数のグリップデバイス50が、第2の作業アーム22の水平支持物30に沿って、互いに隣り合って配置される。全てのグリップデバイス50は、Y方向に沿って水平支持物30に関して移動可能である。さらに、各グリップデバイス50は、垂直のZ方向にも移動可能である、図1で扱われた(図3を参照)、グリップ手段52を備える。各グリップデバイスは、自動グリップ処理を実施することができるように、対応する制御プログラムがインストールされているデスクトップコンピュータまたはノートブックなどの図示されていない制御デバイスによって制御することができる。本明細書で例示的に図示される4つのグリップデバイス50は、より少なくてもより多くてもよいのだが、別個に制御されて、グリップデバイスの可能なまたは所望の位置に水平支持物30に沿って到達し、対応するグリップ手段52をZ方向に位置決めすることができる。
【0042】
さらに、受取板14上に、閉蓋デバイス60および62が、図1の受取板14の右縁部に配置される。X方向の特定の位置に、複数の閉蓋デバイス60または62が、Y方向に沿って互いに隣り合って配置され、今回の例では、それぞれ4つの閉蓋デバイス60、62が配置される。配置された閉蓋デバイスのこの数は、単なる例示であり、より多くの、またはより少ない閉蓋デバイス60、62を設けることもできる。閉蓋デバイス60、62は、閉め具、特にねじ閉め具を試料容器から取り外す、またはねじ閉め具を試料容器に締めるように構成される。そのために、4つの閉蓋デバイス60は、例えば、あるタイプの試料容器およびそれらの閉蓋要素(蓋)用に構成することができ、4つの閉蓋デバイス62は、異なるタイプの試料容器およびそれらの閉蓋要素(蓋)用に設けることができる。閉蓋デバイス60または62の数は、したがってピペットデバイス40の数またはグリップデバイス50の数またはそれらの倍数に対応する。このことによって、ピペットデバイス40またはグリップデバイス50の数に対応する複数の試料容器の近似的な同期処理が可能になる。
【0043】
Y方向に沿って、受取板14の第2の縁部19に沿って延在する装填面16が、受取板14の前に配置される。この装填面上に、処理される材料を提供することができる。装填デバイス70によって、それぞれのキャリア上に配置された材料を、装填面16から受取板14にY方向に沿って動かすことができ、または再びそこから取り去ることができる。そのために、装填デバイス70がキャリアドライブ72を備え、キャリアドライブ72は、キャリア上に形成されたギアロッドの中に、歯車によって係合することができる(図示せず)。装填デバイス70は、X方向に沿って、受取板14および装填面16に対して移動可能でもあり、そのため、対応する図示されていない駆動ユニットを備える。さらに、装填デバイス上にセンサデバイス74が取り付けられ、センサデバイス74によって、使用済み材料におけるバーコードなどの識別パターンを検出し、読み取り、図示されていない制御デバイスに転送することができることに留意しなければならない。制御デバイスは、装填デバイス70の移動および装填デバイス70による材料キャリアの移動を制御するようにも構成される。
【0044】
さらに、受取板の右縁部21上に、開口38の範囲を定めるフレーム37が示される。このフレーム37上に、図示されていない廃棄容器として、例えばプラスチックの袋を取り付けることができる。しっかりした壁を有する可撓性でない廃棄容器(例えば、箱)を配置することも考えられる。試料処理システムの構成によれば、廃棄容器は、試料処理プロセスに好適な、受取板14または試料処理デバイス12の位置にも配置することができる。
【0045】
図2は、図1と同様の試料処理システム10の概略図を示しており、ここで、試料処理デバイス12の受取板14上に、試料処理システム10のさらなる構成要素が、例示的な方法で配置されている。図2に関して、最も左にピペットチップキャリア44が配置され、その中に複数のピペットチップフレーム46が収容される。それぞれのピペットチップフレーム46の中に、複数のピペットチップ48が、好ましくはマトリックス状に配置される。ピペットチップ48を、対応するピペットデバイス40のピペットチャンネルと自動的に接続することができ、ピペット、すなわち液体の吸引および分注を実施することができる。本明細書で図示されているピペットチップキャリア44は、最大5つのピペットチップフレーム46を収容することができる。ピペットチップフレームは、今回の例では、8×12のマトリックス配置で96のピペットチップ48を備える。当然、異なる数のピペットチップを有する異なるピペットチップフレームも、1つのそのようなピペットチップキャリアの中に収容することができる。
【0046】
閉蓋デバイス60用試料容器の左側に隣接するキャリア64および66は、この図に示されていない複数の試料容器の代わりに図示されている。試料容器68の簡略化した例が、図3に図示されている。試料容器として、PreserCyt(登録商標)アンプル、SurePath(商標)アンプルまたはPCR Mediaチューブなどの、一般的に知られている試料容器を使用することができる。図2の図示された例は、図7の概略配置にしたがう構成を示す。本明細書で、試料容器キャリア64は、PerserCyt(登録商標)アンプルまたはSurePath(商標)アンプルなど、第1のタイプの試料容器68用に構成される。試料容器キャリア66は、PCR Mediaチューブなどの第2のタイプの試料容器68用に設けられる。異なるタイプの試料容器は異なる寸法を有しており、このことは、試料容器キャリア64、66の中の試料容器について、異なる大きさの受容開口64-1および66-1により図示されている。
【0047】
試料処理システム10は、図示された構成では、特に、第2のタイプの試料容器用に構成された、インキュベータ80をさらに備える。インキュベータ80内に、試料容器68が例示的に示されており、試料容器68は、閉蓋要素(蓋、ストッパ)67によって閉められる。インキュベータは、ピペットチップキャリア44の隣に配置される。インキュベータ80の隣に、ねじ閉め具などの、未使用の閉蓋要素用の閉蓋要素キャリア82が配置される。ここでは、これらの閉蓋要素は、図示されない。例示的に、試料容器68を閉じる、図3に図示される閉蓋要素が参照される。特に、閉蓋要素キャリア82に収容される、スタックされた閉蓋要素(蓋)を、異なるタイプのそれぞれの試料容器用に提供することができる。閉蓋要素キャリア82と第1の試料容器キャリア66の間に、さらに液体容器84が配置され、その中に、溶解バッファなどの試薬を含むことができる。
【0048】
図3は、試料処理システム10のグリップデバイス50または試料処理デバイス12の拡大概略斜視図を示す。既に述べたように、グリップデバイス50は、グリップ手段52を備える。このグリップ手段52は、今回の例では、4つの別個のグリッパまたはグリップアーム54を備え、これらは、対応する旋回軸SAの周りに旋回することができる。この回転性に起因して、グリッパ54、特にそのグリップ部55は、互いに向かって移動し、また互いから離れるように移動して、試料容器68および/または閉蓋要素67をグリップし、または試料容器68および/または閉蓋要素67を解放させることができる。グリップ手段52は、グリップ手段52を回転させることができる、見ることができない回転ドライブおよびグリッパ回転軸GAの周りのグリッパ54が設けられる。ドライブデバイスは、56で表示され、グリップ手段に接続される軸58を介してグリップアーム54の旋回をもたらす。全グリップデバイス50、特にやはり、グリップ手段50の見ることができない回転ドライブおよびドライブデバイス56は、Z方向に沿って移動可能な固定グリッパベース53に関するものである。グリッパベース53は、第2の作業アーム23の水平支持体30上でY方向に沿って移動可能に配置される。Z方向に沿ったグリップ手段52の移動は、さらなるデバイス59によって実施される。グリップデバイスの基本構造、特にグリップデバイスのグリップベース53は、ピペットデバイス40の基本構造と類似または同じ構造を備えることができることに留意されたい。
【0049】
グリップデバイス50は、試料処理システムの図示されていない制御デバイスに接続され、それにより制御される。制御により、試料容器68または閉蓋要素67を、グリップおよび保持することができる。さらに、制御デバイスは、グリップ手段52の回転を引き起こすように構成され、ここで、グリップされた試料容器68またはグリップされた閉蓋要素67が、やはり同時に回転される。これは、一方では、試料容器68の位置合わせに、他方では、試料容器内の試料液の混合に使用することができる。試料液の混合は、このプロセスで好ましくは、毎分グリップ手段52の約500〜2000回転で実施される。
【0050】
グリップ手段52の回転性によって、グリップされた試料容器68の位置合わせが可能になり、そのため、試料容器68に取り付けられたバーコードなどの識別パターン90を、グリッパベース53上に設けられたセンサデバイス51によって検出することができる。したがって、どの試料容器68がグリップデバイス50により処理されるのかを決定することが可能である。さらに、このことに起因して、試料容器のバーコードをセンサデバイス51から検出することができる位置に対し、規定された回転位置にグリップされた試料容器68を運ぶことも可能である。そのような位置を基準として取った場合、例えば試料容器68をその試料容器キャリア64、66の中のこの特定の回転位置に置くために、試料容器を、所望の相対回転位置の中に運び、この位置に保つことができる。このことによって、試料容器キャリア64、66内に含まれる全ての試料容器68の、本質的に同一の位置合わせが可能になり、そのため、全ての試料容器68のバーコードは、全て同じ方向、好ましくは、装填デバイス70のセンサデバイス74を指す方向を向いている(図1図2)。したがって、センサデバイスキャリア64、66に含まれる試料容器68またはそれらのバーコード90は、試料処理デバイス10からの試料容器キャリア64、66の移動期間に決定することができる。そのために、試料容器キャリア64、66は、試料容器68のバーコード90を見ることを可能にする、対応する凹部を有する。したがって、キャリアまたは容器上に存在する、試料容器64、66、単一の試料容器68、またはバーコード90を、確実に正しい処理をすることが可能なように、中断することなく、容器の処理期間のキャリア/容器の装填期間、およびキャリア/容器の除荷期間に決定することができる。
【0051】
さらに、例えば、試料処理デバイス12の中に、装填デバイス70のセンサデバイス74の方向にバーコード90が位置合わせされていない試料容器68は、グリップデバイス50により試料容器キャリアを装填した後にグリップされ、今まで認識されていない試料容器のバーコード90を、センサデバイス51によって後で決定することができることも可能である。したがって、対応する試料容器キャリア64、66の中の試料容器68の最初の位置合わせにおける誤差を、自動的に補正することができる。
【0052】
試料処理システム10の以下の可能な構成およびこれらの構成によって実施可能な方法が、図4から図7に関して詳述される。部分的に、説明のために参照符号が使用されており、対応する構成要素が図4から図7には図示されていないので、参照符号は、図1から図3にのみ含まれている。
【0053】
図4は、閉蓋デバイス60、62による、試料容器の自動開/閉の例示的な構成を示す。図示された構成では、例えばSurePath(商標)(SP)タイプなどの、第1のタイプの12の試料容器をそれぞれ有する最大8の試料容器キャリア64が開かれる、または閉められることが仮定される。SP試料容器の代わりに、開かれる、または閉められる、PCR Mediaチューブ(CPM)などの第2のタイプの試料容器も装填することができる。特に、例えば、それぞれ24の試料容器を有する、6つの試料容器キャリア64の中の第1のタイプの72の試料容器(SP)、および対応する試料容器キャリア66の中の第2のタイプの96の試料容器(CPM)といった、閉められた試料容器を開けるための、混合配置も考えられる。
【0054】
第1に、試料容器キャリア64、66は、装填面16において、閉められた試料容器が手動で提供される。これは、破線により図示される試料容器64により簡略化された形で概略的に図示されている。この提供する配置では、試料容器、ピペットチップなどのための異なるキャリア44、64、66がホルダ65と係合され、ホルダ65は、提供面16に沿って規則的な距離で配置される。単一の試料容器キャリア64、66は、装填面16から受取板14にY方向に沿って装填デバイス70によって続けて動かされる。このプロセスでは、装填デバイス70は、次の試料容器を装填することができるように、試料容器キャリアを各々装填した後にX方向に沿って少しだけ移動する。処理される全ての試料容器キャリア64、66が装填されたらすぐに、試料容器を開くステップが始まることができる。そのために、右(第2)作業アーム22およびその上に取り付けられたグリップデバイス50が制御される。1つの試料容器は、各グリップデバイス50、ここでは例示的に4つのグリップデバイスによりグリップされ、試料容器キャリア64、66から(上向きにつり上げられて)除去される。このプロセスでは、それぞれの試料容器68におけるバーコード90は、グリップデバイス50上のセンサデバイス51によって読み取ることができる。続けて、グリップされた試料容器は、そのタイプ、特に第1のタイプの試料容器(SP)に基づいて、閉蓋デバイス60の中に、または特に第2のタイプの試料容器(CPM)に基づいて、閉蓋デバイス62の中に置かれる。単一の閉蓋デバイス60、62は、そこに収容された試料容器から対応する閉蓋要素(好ましくは、ねじ閉め具または蓋)を取り外す。閉蓋要素は、ほぼ完全に取り外されるとすぐに、閉蓋要素をそれぞれのグリップデバイスによりグリップすることができ、必要ならば、閉蓋要素は、例えば、グリッパの回転軸54の周りの、グリップ手段52とグリッパ54の1つの部分的な回転により、完全にゆるめることができる。グリップされた閉蓋要素は、次いで試料容器から取り外され、2次元的に39によって示される廃棄容器に搬送することができる。グリップデバイスが廃棄容器39の上に位置に到達したらすぐに、閉蓋要素をゆるめさせて廃棄容器39の中に落とすことができる。続けて、開いた試料容器をグリップし、それを閉蓋デバ
イス60、62から取り除くために、グリップデバイスがそれぞれの閉蓋デバイス60、62の中のここで開いた試料容器に再び動かされる。開いた試料容器は、今後、試料容器キャリア64、66の中に再び置かれ、好ましくは、各開いた試料容器は、試料容器キャリアから閉められた状態で取り出された、試料容器の最初の位置に搬送される。開いた試料容器を搬送するまたは置く間に、一方では確かに正しい処理を行い、他方では位置合わせされた位置の特定の回転位置に動かすことによって試料容器キャリアの中へと試料容器を置くことができるように、試料容器に設けられたバーコード90をセンサデバイス51を使用して読み取ることができる。すなわち、全ての試料容器が本質的に同じようにして位置合わせされ、そのため、試料容器それぞれのバーコードは、装填デバイス70のセンサデバイス74によりキャプチャすることができる。
【0055】
開いた試料容器の閉蓋のプロセスにおいて、開いた試料容器は、装填面16上で試料容器キャリア64、66の中に提供され、装填デバイス70によって装填される。続けて、開いた試料容器は、第2の作業アーム上にあるグリップデバイスによってグリップされ、閉蓋デバイス60、62の中に置かれる。その後、グリップデバイスは、閉蓋要素キャリア82に動かされ、閉蓋要素キャリア82上で、未使用の閉蓋要素が、閉められる試料容器のために提供される。閉蓋要素キャリアは、試料処理デバイスの中、すなわち受取板上に事前に、好ましくは手動で配置されている。グリップデバイスは、それぞれ未使用の閉蓋要素をグリップし、それを、閉蓋デバイス60、62内の対応する開いた試料容器に搬送する。グリップデバイスによって、閉蓋要素がそれぞれの試料容器上に、好ましくは、試料容器上にゆるくねじ止めされる少なくとも1回の部分的な回転によって置かれて、閉蓋要素と試料容器の間に第1の係合を可能にする。続けて、閉蓋デバイスが閉蓋要素で試料容器を堅く閉めることができるように、閉蓋要素は、グリップデバイスによりゆるんだままにされる。次いで、閉められた試料容器がグリップデバイスによって閉蓋デバイス60、62から取り出され、試料容器キャリアに再び搬送される。好ましくは、それぞれの閉められた試料容器は、試料容器キャリア64、66から開いた状態で取り出された試料容器の最初の位置に搬送される。開いた試料容器を搬送するまたは置く間に、一方では確かに正しい処理を行い、他方では試料容器キャリアの中の位置合わせされた位置に試料容器を置くことができるように、試料容器に設けられたバーコードを読み取ることができる。すなわち、全ての試料容器が本質的に同じようにして位置合わせされ、そのため、試料容器それぞれのバーコードは、装填デバイス70のセンサデバイス74によりキャプチャすることができる。
【0056】
全ての装填された試料容器の開閉後に、完全に処理された(開いた、または閉じた)試料容器を有する試料容器キャリア64、66は、装填デバイス70によって受取板から装填面16に(Y方向に)動かされ、そこで試料容器は、好ましくは手動で取り出され、必要ならば、隣接するさらなる試料処理デバイス中の処理ステップへと送達される。今回の例では1サイクル当たり4つの試料容器がほぼ同期して処理されうるので、試料容器が開けられうるまたは閉められうる前述のステップが繰り返し実施されることは明らかである。したがって、例えば、96の試料容器が処理される場合、試料容器が開いた状態から閉まった状態に(またはその逆に)遷移されるまで、4つの試料容器で24サイクルが実施されなければならない。装填デバイスが、互いの後に何回かの装填または除荷プロセスを自然に実施する、またはそうすることができる場合にも、第2の作業アームまたはグリップデバイスおよび閉蓋デバイスによって実施されるこれらの繰り返されるステップ内に、装填デバイスによる試料容器キャリア64、66の装填および除荷の方法ステップは含まれない。
【0057】
図5は、図4に類似の試料容器を開閉するための構成を示す。しかしここでは、1つの試料容器キャリア64の中にたった6つの類例を設置することができる、第3のタイプの試料容器が例示的に考慮される。第1のタイプの試料容器(SP)および第3のタイプの試料容器(PC)について、好ましくは同じ試料容器キャリア64を使用することができる。しかし、第1のタイプの12の試料容器(SP)の代わりに、第3のタイプのたった6つの試料容器(PC)がそれぞれ収容される場合がある。すなわち、2つの隣接する第3のタイプの試料容器(PC)の間に空間がある。図示された構成で、最大60の第3のタイプの試料容器(PC)を開けること、またはこのタイプの試料容器に好適な未使用閉蓋要素で、それらを閉めることが可能である。プロセスは、図4に関し、そこで記載した第1および第2のタイプの試料容器について上に記載されたものと同じである。
【0058】
試料容器の開閉のみが実施される必要がある試料処理システムによる処理方法では、通常ピペットチップは使用されず、オプションのインキュベータも使用されない。典型的には、図4および図5で、左側にスタンバイ位置で図示され、ピペットデバイスが設けられている第1の作業アーム20も必要ではない。
【0059】
この点に関し、ピペットデバイスの代わりに、第1の作業アーム上にグリップデバイスを設けることも考えられる。このことによって、実施される処理ステップは、グリップデバイスを有する1つの作業アームから実行されず、両方の作業アームに最適化して分割することができるので、2つの作業アームおよびその上に取り付けられたグリップデバイスによって、より速く試料容器の開閉を実施することができる処理デバイスが得られることになる。
【0060】
図6は、試料容器に含まれる試料のアリコート化の方法を実施するための、試料処理システムの構成を示す。装填面16上に、第1のタイプの試料容器(SP)または第3のタイプの試料容器(PC)を有する複数の試料容器キャリア64が設けられる。さらに、第2のタイプの試料容器(CPM)用の複数の試料容器キャリア66が、同じようにして設けられる。最後に、複数のピペットチップフレーム46を有するピペットチップキャリア44およびそこに含まれる未使用のピペットチップ48も設けられる。試料容器およびピペットチップ用の異なるキャリア44、64、66は、装填デバイス70によって受取板14の方向に動かされ、そのため、その後試料処理デバイスは、キャリア44、64、66で満たされる。上で既に記載されたように、キャリアおよび試料容器またはそれらのバーコードを、装填デバイス70のセンサデバイス74によりキャプチャすることができ、そのため、各試料容器の位置は、特にどの試料容器キャリアに収容されているのか、受取板のどの位置に試料容器キャリアが装填されたのかを考慮に入れて一意に識別することができる。
【0061】
通常、第1のタイプの試料容器(SP)または第3のタイプの試料容器(PC)は、アリコートを取らなければならない試料全体を含む。これらの試料容器は、典型的には閉められている。
【0062】
本方法では、複数、好ましくは4つの第1のタイプの試料容器が、第2の作業アーム22上のグリップデバイス50によってグリップされ、廃棄容器39の方向に動かされる。試料容器を有するグリップデバイスがそこに到達すると、試料容器は、グリップ手段によりグリッパの回転軸GAの周りに、好ましくは毎分約500〜2000回転で回転され、そのため、それぞれの試料容器内の試料を、良好に混合することができる。混合後、試料容器は、このタイプの試料容器用のそれぞれの閉蓋デバイス60に搬送される。閉まった試料容器を置いて開放した後に、試料容器の閉蓋要素(好ましくは、ねじ蓋)は、閉蓋デバイス60によって取り外される。取り外された閉蓋要素は、グリップデバイスによりグリップされ、その容器から除去される。ここで、グリップデバイスは、必要ならば(部分的な)回転も実施し、閉蓋要素と試料容器の間の、既に取り外された係合を解除する。続けて、グリップデバイスは、廃棄容器39の方向に動かされる。ここで、グリップされた閉蓋要素は、廃棄され、またはそれぞれのグリップデバイスの中に残って、後で再び試料容器上に置かれる。
【0063】
第1の作業アーム20およびそこに取り付けられたピペットデバイス40によって、ピペットチップ(チップ)が、対応するピペットチップキャリア44から集められる。ピペットチップは、このプロセスで、ピペットデバイスのピペットチャンネルと自動的に結合される。第1の作業アームは、次いで閉蓋デバイスの方向(X)に動かされる。各ピペットデバイスは、それぞれの閉蓋デバイスの中に収容される1つの試料容器上に配置される。続けて、ピペットチップは、それぞれの試料容器の中に下げられて、試料の、500または1000μlなどの特定の量を取り出す(吸引する)。吸引後、試料液を含むピペットチップを有するピペットデバイスは、対応する第2のタイプの試料容器(CPM)に動かされ、そのため、吸引された試料を、そのような今まで空だった試料容器の中に送達(分注)することができる。分注後、第1の作業アーム20は、廃棄容器39の方向に動かされ、そこで、使用済みのピペットチップが排出されて廃棄される。次いで、第1の作業アームがピペットチップキャリア44の方向に再び動かされる。
【0064】
第2の作業アーム22は、ここで、廃棄容器39の領域の中の第2の作業アームの位置、または図6に図示されるような、右縁部における第2の作業アームのスタンバイ位置から、閉蓋デバイス60に再び動かされて、第2の作業アームの中に保持された閉蓋要素を閉蓋デバイス内の試料容器上に再び置くことを可能にすることができる。これらの閉蓋要素を再使用する代わりに、これらの閉蓋要素が(廃棄容器39の中に)廃棄され、未使用の閉蓋要素がグリップデバイスによって、例えば、インキュベータと第2のタイプの試料容器(CPM)用の試料容器キャリア66の間の、図6ではまだ空のままにされていた位置から集められることも考えられる。使用済みまたは新しい閉蓋要素を置く間に、グリップデバイスは、好ましくは固定試料容器に関して閉蓋要素を(部分的に)回転させることにより、閉蓋要素と試料容器の間に、主な比較的ゆるい係合を生じさせることができる。次いで、グリップデバイスにより閉蓋要素がゆるんだままにされ、閉蓋要素を締めることにより試料容器の実際の閉蓋を閉蓋デバイスが実施する。以下で、(再)閉蓋された試料容器は、グリップデバイスによりグリップされて、試料容器キャリア内の試料容器の位置に戻すことができ、そこに置くことができる。上の図4および図5に関して既に記載されたように、試料容器は、グリップデバイス50上のセンサデバイス51を使用することにより、試料容器キャリア内に再び試料容器を置く間に、位置合わせすることができる。ここで提示された構成内のこの位置合わせプロセスについて、バーコードがセンサデバイス51により認識された試料容器は、グリップ回転軸GAの周りに約160°〜220°回転されて、装填デバイスのセンサデバイス74の方向に関して試料容器のバーコードを位置合わせする必要があることを想定することができる。もちろん、2つのセンサデバイス51または74の配置にしたがって、異なる回転角がやはり可能または必要である。
【0065】
試料が第1のタイプの試料容器(SP)または第3のタイプの試料容器(PC)の中の各試料から上述の方法で抽出され、アリコートが第2のタイプの対応する試料容器の中に含まれた後、異なる試料容器キャリア64、66およびピペットチップキャリア44が、受取板から装填デバイス70によって再び除去され、そのため、異なる試料容器キャリア64、66およびピペットチップキャリア44を、装填面で再び取り出すことができる。特に、アリコートを有する閉められていない第2のタイプの試料容器(CPM)は、好ましくは、さらなる処理ステップ、特に、生物学的プローブの分析用の、隣接するさらなる処理デバイスに提供される。本明細書に記載されるプローブのアリコート化の方法では、インキュベータ80は使用されない。
【0066】
図7は、図6にしたがう構成に加えて、試薬、特に溶解バッファを有する容器84が、(ここでは第2のタイプの試料容器の未使用の閉蓋要素用の)閉蓋要素キャリア82と第2のタイプの試料容器(CPM)用の試料容器キャリア66の間にやはり設けられる最終構成を示す。試薬、好ましくは溶解バッファを、第1のタイプの試料容器(SP)または第2のタイプの試料容器(CPM)にピペットデバイスによって加えることができ、そのため、生物学的プローブと試薬の混合物を、好ましくは第2のタイプの試料容器の中に生成することができる。試薬を有する試料アリコートを含む、第2のタイプの試料容器は、上に記載した方法に類似して閉じることができる。好ましくは、閉まった容器は、次にインキュベータ80の中に置かれ、試料および試薬の混合物内で、特定の化学反応を生じさせる。所望の培養時間後に、第2のタイプの試料容器を、対応する試料容器キャリア66の中の元の位置に再び搬送することができ、ここで、必要ならば、閉蓋要素は再び事前に除去される。最後に、プローブおよび試薬の混合物を有する、閉まったまたは開いた第2のタイプの試料容器は除荷することができ、さらなるプロセスデバイスで必要ならば、さらなる処理ステップを施すことができる。
【0067】
さらに、全ての構成において、試料容器キャリア64'および66'は、図に関して、閉蓋デバイス60、62の左側に置かれていることに留意されたい。これらの試料容器キャリア64'および66'は、異なる方法の始めでは空であり、処理期間に、試料容器または試料容器に含まれる試料で問題が発生した場合にのみ、それぞれのタイプの試料容器で満たされる。そのような問題は、例えば、バーコードが認識できない、ピペットの間にエラーが検出されるなどの場合がある。
【0068】
提案された方法は、図6または図7にしたがう構成で実施されるが、第1または第3のタイプの試料容器各々について、同一の試料は同一の印を付けられた試料容器にやはり含まれるように、同一のバーコードを有する第2のタイプの試料容器が存在する。試料容器キャリアの装填/除荷期間、および単一の試料の処理(グリップ、混合、搬送)期間にバーコードを読み取るために2つの別個のセンサデバイス51、73を使用することにより、どの試料容器が装填されたのか、どの試料容器がどの処理ステップを受けたのか、およびどの試料容器が再び除荷されたのかを最適な方法でキャプチャすることが可能である。明らかに、必要ならば、どの試料容器が、欠陥があるものとして識別され、試料容器キャリア64'または66'のうちの1つに置かれているのかもキャプチャされる。
【0069】
グリップデバイスは、試料容器を単にグリップし搬送するためにのみ使用されるわけではなく、グリップデバイスは、バーコードを検出し、バーコードが読み取られた位置に基づいて試料容器を位置合わせするためにも構成されることが、全ての構成または方法に共通する。さらに、図6および図7の例示的な構成にしたがうグリップデバイスは、試料容器を特殊な混合デバイスの中に搬送して置く必要なしに、混合器として使用することができる。それぞれが一緒になり、1つまたは複数の記載したグリップデバイスを有する提案した試料処理システムにしたがって、最適化された処理フローがもたらされる。
【0070】
上記の処理ステップは、試料処理システムの、相応にプログラムされ図示されない制御デバイス(コンピュータ)によって実施される。制御デバイス(コンピュータ)は、センサデバイス、装填デバイス、作業アーム、ピペットおよびグリップデバイス、ならびにそれらのドライブなどの様々な構成要素に接続され、そのため、様々な構成要素の相応の制御または規制が可能になる。しかし、制御/規制の詳細は、本明細書ではこれ以上詳細に述べない。また、制御デバイスにより制御されうる全ての構成要素が本明細書で述べられるわけではないにも関わらず、任意の種類で実施される方法ステップに能動的に寄与する全ての構成要素は、制御デバイスに接続されると想定することができる。
【符号の説明】
【0071】
10 試料処理システム
12 試料処理デバイス
14 受取板
16 装填面
18 第1の縁部
19 第2の縁部
20 作業アーム
21 右縁部
22 作業アーム
24 垂直支持物
26 垂直支持物
28 水平支持物
30 水平支持物
32 転動支持物
34 転動支持物
36 ロール
37 フレーム
38 開口
39 廃棄容器
40 ピペットデバイス
42 ピペットチャンネル
44 ピペットチップキャリア
46 ピペットチップフレーム
48 ピペットチップ
50 グリップデバイス
51 センサデバイス
52 グリップ手段
53 固定グリッパベース
54 グリッパ、グリップアーム
55 グリップ部
56 ドライブデバイス
58 軸
59 デバイス
60 閉蓋デバイス
62 閉蓋デバイス
64 試料容器キャリア、センサデバイスキャリア、キャリア
64' 試料容器キャリア
64-1 受容開口
66 試料容器キャリア、センサデバイスキャリア、キャリア
66' 試料容器キャリア
66-1 受容開口
67 閉蓋要素
68 試料容器
70 装填デバイス
72 キャリアドライブ
73 センサデバイス
74 センサデバイス
80 インキュベータ
82 閉蓋要素キャリア
84 液体容器
90 識別パターン、バーコード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7