特許第6151566号(P6151566)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6151566太陽電池およびその製造方法、ならびに太陽電池モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6151566
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】太陽電池およびその製造方法、ならびに太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0224 20060101AFI20170612BHJP
   H01L 31/042 20140101ALI20170612BHJP
   H01L 31/0747 20120101ALI20170612BHJP
【FI】
   H01L31/04 262
   H01L31/04 500
   H01L31/06 455
【請求項の数】16
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2013-111200(P2013-111200)
(22)【出願日】2013年5月27日
(65)【公開番号】特開2014-229877(P2014-229877A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【弁理士】
【氏名又は名称】新宅 将人
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】寺下 徹
(72)【発明者】
【氏名】足立 大輔
【審査官】 吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−199045(JP,A)
【文献】 特開2011−204955(JP,A)
【文献】 特表2013−507781(JP,A)
【文献】 特開2009−231840(JP,A)
【文献】 特開平05−021822(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0101633(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0000564(US,A1)
【文献】 特開2009−140930(JP,A)
【文献】 特開2009−123607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078
H01L 31/18−31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換部と、前記光電変換部の一主面上の集電極とを有する太陽電池であって、
前記集電極は、前記光電変換部側から順に第一導電層と第二導電層とを含み、かつ、前記第一導電層と前記第二導電層の間に、開口部が形成された絶縁層を含み、
前記第一導電層は前記絶縁層により被覆されており、
前記第二導電層の一部が、前記絶縁層の前記開口部を通して前記第一導電層に導通されており、
前記第一導電層および前記第二導電層の表面粗さを各々Ra1およびRa2としたとき、Ra2=1.0〜10.0μm、Ra1>Ra2を満たす、太陽電池。
【請求項2】
前記第一導電層の表面粗さRa11.0μmより大きく10.0μm以下である、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記第一導電層は低融点材料を含み、前記低融点材料の熱流動開始温度Tは前記光電変換部の耐熱温度よりも低温である、請求項1または2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記光電変換部は、一導電型結晶シリコン基板の一主面上に、シリコン系薄膜および透明電極層をこの順に有し、
前記透明電極層上に前記集電極を有し、
前記低融点材料の熱流動開始温度Tが250℃以下である、請求項3に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記絶縁層が、前記光電変換部の第一導電層非形成領域上にも形成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記第二導電層は、銅からなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記太陽電池と配線部材を備える太陽電池モジュールであって、
前記配線部材は、導電性微粒子を含有する導電性接着剤により、前記太陽電池の前記集電極と接着されており、
前記集電極は、前記配線部材と接着される領域の略全面に前記導電性接着剤を有し、かつ、前記導電性微粒子により、前記配線部材と導通されており、
前記太陽電池は、前記配線部材により、外部回路もしくは他の太陽電池と接続されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項8】
前記集電極は、前記配線部材と接着される領域の全面に前記導電性接着剤を有し、前記配線部材と接していない、請求項7に記載の太陽電池モジュール。
【請求項9】
前記導電性接着剤に含まれる前記導電性微粒子は、粒子径が5μm〜15μmである、請求項7または8に記載の太陽電池モジュール。
【請求項10】
前記導電性微粒子が、Ni粒子もしくはAgコートCu粒子からなる、請求項7〜9のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項11】
前記配線部材の前記太陽電池側の最表面層が半田である、請求項7〜10のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の太陽電池を製造する方法であって、
前記光電変換部上に第一導電層が形成される第一導電層形成工程;
前記第一導電層上に絶縁層が形成される絶縁層形成工程;および
めっき法により第二導電層が形成されるめっき工程、をこの順に有し、
前記めっき工程において、前記第一導電層上の前記絶縁層の開口部を通じて、第二電極層を析出させる、太陽電池の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の太陽電池を製造する方法であって、
前記光電変換部上に低融点材料を含む第一導電層が形成される第一導電層形成工程;
前記第一導電層上に絶縁層が形成される絶縁層形成工程;
前記第一導電層が加熱されるアニール工程;および
めっき法により第二導電層が形成されるめっき工程、をこの順に有し、
前記アニール工程において、前記低融点材料の熱流動開始温度Tよりも高温のアニール温度Taで加熱処理が行われ、前記第一導電層上の絶縁層に前記開口部が形成される、太陽電池の製造方法。
【請求項14】
前記アニール工程におけるアニール温度Taが、前記光電変換部の耐熱温度よりも低温である、請求項13に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項15】
前記アニール工程におけるアニール温度Taが、250℃以下である、請求項13に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項16】
前記光電変換部は、一導電型結晶シリコン基板の一主面上に、シリコン系薄膜および透明電極層をこの順に有し、前記透明電極層上に前記集電極が形成される、請求項12〜15のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池およびその製造方法に関する。さらに、本発明は太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー問題や地球環境問題が深刻化する中、化石燃料にかわる代替エネルギーとして、太陽電池が注目されている。太陽電池では、半導体接合等からなる光電変換部への光照射により発生したキャリア(電子および正孔)を外部回路に取り出すことにより、発電がおこなわれる。光電変換部で発生したキャリアを効率的に外部回路へ取出すために、太陽電池の光電変換部上には集電極が設けられる。
【0003】
例えば、単結晶シリコン基板や多結晶シリコン基板を用いた結晶シリコン系の太陽電池では、受光面に細い金属からなる集電極が設けられる。また、結晶シリコン基板上に、非晶質シリコン層および透明電極層を有するヘテロ接合太陽電池でも、透明電極層上に集電極が設けられる。
【0004】
太陽電池の集電極は、一般に、スクリーン印刷法により、銀ペーストをパターン印刷することにより形成される。この方法は、工程自体は単純であるが、銀の材料コストが大きいことや、樹脂を含有する銀ペースト材料が用いられるために、集電極の抵抗率が高くなるとの問題がある。銀ペーストを用いて形成された集電極の抵抗率を小さくするためには、銀ペーストを厚く印刷する必要がある。しかしながら、印刷厚みを大きくすると、電極の線幅も大きくなるため、電極の細線化が困難であり、集電極による遮光損が大きくなる。
【0005】
これらの課題を解決するための手法として、材料コストおよびプロセスコストの面で優れるめっき法により集電極を形成する方法が知られている。例えば、特許文献1、2では、光電変換部を構成する透明電極上に、銅等からなる金属層がめっき法により形成された太陽電池法が開示されている。この方法においては、まず、光電変換部の透明電極層上に、集電極の形状に対応する開口部を有するレジスト材料層(絶縁層)が形成され、透明電極層のレジスト開口部に、電気めっきにより金属層が形成される。その後、レジストが除去されることで、所定形状の集電極が形成される。
【0006】
また、特許文献3では、透明電極上にSiO2等の絶縁層を設けた後、絶縁層を貫通する溝を設けて透明電極層の表面または側面を露出させ、透明電極の露出部と導通するように金属集電極を形成する方法が開示されている。具体的には、透明電極層の露出部に光めっき法等により金属シードを形成し、この金属シードを起点として電気めっきにより金属電極を形成する方法が提案されている。このような方法によれば、特許文献1,2のようにレジストを用いる必要がないため、材料コストおよびプロセスコスト面でより有利である。また、低抵抗の金属シードを設けることにより、透明電極層と集電極との間の接触抵抗を低下させることができる。
【0007】
また特許文献4では、導電性シードの凹凸を大きくすることにより、絶縁層製膜時に、光電変換部の導電性シード以外の部分の全面を覆い、導電性シード上に不連続な開口部を形成し、該開口部を通じてめっき層を形成する旨が記載されている。
【0008】
一方、太陽電池における集電極とその下の光電変換部の密着性、また太陽電池モジュールを用いた場合における、太陽電池と、他の太陽電池もしくは外部電極とを接続するための配線部材と、前記集電極との密着性などの検討がなされている。
例えば、特許文献5では、めっき法により形成する集電極に関し、めっき時の電流量などを所定の範囲にすることにより、集電極のRaを0.1〜0.6μmに制御する方法が提案されている。この方法により、めっき電極と導電性接着剤との密着性を向上させている。また特許文献6では、ITOなどの透明電極層表面のRaを5μm以上とすることで、集電極との密着性を高めることができる旨が記載されている。
【0009】
特許文献7では、太陽電池の集電極を導電体(配線部材)により接続するに当たり、集電極は芯材と表面層からなる導電体(配線部材)の表面層に埋め込まれ、該埋め込み部分以外の領域を導電性微粒子を含む接着樹脂により接合することにより、反り応力、セル割れや電極剥がれなどの発生を抑制できる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭60−66426号公報
【特許文献2】特開2000−58885号公報
【特許文献3】特開2011−199045号公報
【特許文献4】特表2013−507781号公報
【特許文献5】特開2011−204955号公報
【特許文献6】特開2007−005117号公報
【特許文献7】WO2008−023795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献3の方法によれば、高価なレジスト材料を用いることなく、めっき法により細線パターンの集電極を形成可能である。しかしながら、特許文献3では、絶縁層と透明電極層とを貫通する溝内で、透明電極層の側面と金属集電極とが接しているが、透明電極層の厚みは一般に100nm程度であるため、両者の接触面積が小さい。そのため、透明電極と集電極との間の抵抗が高くなり、集電極としての機能を十分に発揮できないとの問題がある。
【0012】
特許文献4では、凹凸が大きな導電性シードを用いて絶縁層を製膜することで絶縁層製膜の際に該凹凸上に開口部が形成されており、導電性シードの表面粗さは非常に大きく、この上にめっき層を形成した場合、めっき層の表面粗さも大きくなると考えられる。また導電性シードとめっき層の表面粗さの関係等についても何ら検討されておらず、モジュール化した際に信頼性の低下や破損等が生じると考えられる。
【0013】
また特許文献5では、集電極のRaが小さいため、集電極と導電性接着剤との密着性が不十分と考えられる。また所定のRaとするために最表面の第二導電層を高電流密度条件下において形成する必要があるため、集電極が高抵抗になり、低抵抗化の観点からは課題が残る。また特許文献6では、ITO等のRaを上記範囲にするために集電極形成分以外の領域にマスクをして酸溶液に浸漬する必要があり、マスク製作工程等の工程数が増えるという問題があった。
【0014】
また特許文献7では、集電極の略全面が配線部材に埋設し、集電極と配線部材が接着剤で接着されることになるが、接着剤が集電極と配線部材とを確実に接着させるためには、集電極の凸部の高さよりも接着剤の厚みを厚くするか、高い圧力での接続が必要になり、コストアップやセル割れによる工程不安定化が課題となる。
【0015】
本発明は、上記のような太陽電池の集電極形成に関わる従来技術の問題点を解決し、太陽電池の変換効率を向上させると共に、太陽電池モジュールの製造コストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、所定の集電極を用いることにより、太陽電池の変換効率が向上可能であり、さらに太陽電池モジュールを製造する場合の製造コストを低減することが可能であることを見出し、本発明に至った。
【0017】
すなわち、本発明は、以下に関する。
【0018】
光電変換部と、前記光電変換部の一主面上の集電極とを有する太陽電池であって、前記集電極は、前記光電変換部側から順に第一導電層と第二導電層とを含み、かつ、前記第一導電層と前記第二導電層の間に、開口部が形成された絶縁層を含み、前記第一導電層は前記絶縁層により被覆されており、前記第二導電層の一部が、前記絶縁層の前記開口部を通して前記第一導電層に導通されており、前記第一導電層および前記第二導電層の表面粗さを各々Ra1およびRa2としたとき、Ra2=1.0〜10.0μm、Ra1>Ra2を満たす、太陽電池。
【0019】
前記第一導電層の表面粗さRa11.0μmより大きく10.0μm以下であることが好ましい。
【0020】
前記第一導電層は低融点材料を含み、前記低融点材料の熱流動開始温度Tは前記光電変換部の耐熱温度よりも低温であることが好ましい。
【0021】
前記光電変換部は、一導電型結晶シリコン基板の一主面上に、シリコン系薄膜および透明電極層をこの順に有し、前記透明電極層上に前記集電極を有し、前記低融点材料の熱流動開始温度Tが250℃以下であることが好ましい。
【0022】
前記絶縁層が、前記光電変換部の第一導電層非形成領域上にも形成されていることが好ましい。
【0023】
前記第二導電層は、銅からなることが好ましい。
【0024】
また前記太陽電池と配線部材を備える太陽電池モジュールを用いることが好ましい。
【0025】
前記配線部材は、導電性微粒子を含有する導電性接着剤により、前記太陽電池の前記集電極と接着されており、前記集電極は、前記配線部材と接着される領域の略全面に前記導電性接着剤を有し、かつ、前記導電性微粒子により、前記配線部材と導通されており、前記太陽電池は、前記配線部材により、外部回路もしくは他の太陽電池と接続されていることが好ましい。
【0026】
前記集電極は、前記配線部材と接着される領域の全面に前記導電性接着剤を有し、前記配線部材と接していないことが好ましい。
【0027】
前記導電性接着剤に含まれる前記導電性微粒子は、粒子径が5μm〜15μmであることが好ましい。
【0028】
前記導電性微粒子が、Ni粒子もしくはAgコートCu粒子からなることが好ましい。
【0029】
前記配線部材の前記太陽電池側の最表面層が半田であることが好ましい。
【0030】
前記太陽電池は、前記光電変換部上に第一導電層が形成される第一導電層形成工程;前記第一導電層上に絶縁層が形成される絶縁層形成工程;および、めっき法により第二導電層が形成されるめっき工程、をこの順に有し、前記めっき工程において、前記第一導電層上の前記絶縁層の開口部を通じて、第二電極層を析出させることにより作製することが好ましい。
【0031】
前記光電変換部上に低融点材料を含む第一導電層が形成される第一導電層形成工程;前記第一導電層上に絶縁層が形成される絶縁層形成工程; 前記第一導電層が加熱されるアニール工程;および、めっき法により第二導電層が形成されるめっき工程、をこの順に有し、 前記アニール工程において、前記低融点材料の熱流動開始温度Tよりも高温のアニール温度Taで加熱処理が行われ、前記第一導電層上の絶縁層に前記開口部が形成されることが好ましい。
【0032】
前記アニール工程におけるアニール温度Taが、前記光電変換部の耐熱温度よりも低温であることが好ましい。
【0033】
前記アニール工程におけるアニール温度Taが、250℃以下であることが好ましい。
【0034】
前記光電変換部は、一導電型結晶シリコン基板の一主面上に、シリコン系薄膜および透明電極層をこの順に有し、前記透明電極層上に前記集電極が形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、めっき法により集電極が形成可能であるため、集電極が低抵抗化され、太陽電池の変換効率を向上することができる。また、従来技術のめっき法による集電極の形成方法では、絶縁層のパターニングプロセスが必要であるが、本発明によればパターン形成のためのマスクやレジストを用いずにめっき法によるパターン電極の形成が可能である。また本発明では、第一導電層と第二導電層の間に絶縁層を有し、第一導電層および第二導電層の表面粗さを所定の範囲にすることで、第一導電層と第二導電層の密着性を向上させることができる。また第二導電層の表面粗さを所定の範囲にすることで、高信頼性の太陽電池を作製できる。そのため、高効率で高信頼性の太陽電池を安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の太陽電池を示す模式的断面図である。
図2】一実施形態にかかるヘテロ接合太陽電池を示す模式的断面図である。
図3】本発明の一実施形態による太陽電池の製造工程の概念図である。
図4】低融点材料の加熱時の形状変化の一例を示す概念図である。
図5】低融点材料粉末の加熱時の形状変化、およびネッキングについて説明するための概念図である。
図6】焼結ネッキングが生じた金属微粒子のSEM写真である。
図7】本発明の一実施形態にかかる太陽電池モジュールの模式的断面図である。
図8】本発明の一実施形態にかかる集電極と配線部材の模式的断面図である。
図9】従来技術の一実施形態にかかる集電極と配線部材の模式的断面図である。
図10】めっき装置の構造模式図である。
図11】実施例における絶縁層の光学特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1に模式的に示すように、本発明の太陽電池100は、光電変換部50の一主面上に集電極7を備える。集電極7は、光電変換部50側から順に、第一導電層71と第二導電層72とを含む。第一導電層71と第二導電層72との間には、開口部を有する絶縁層9が形成されている。第二導電層72の一部は、例えば絶縁層9の開口部9hを介して、第一導電層71に導通されている。
【0038】
以下、本発明の一実施形態であるヘテロ接合結晶シリコン太陽電池(以下、「ヘテロ接合太陽電池」と記載する場合がある)を例として、本発明をより詳細に説明する。ヘテロ接合太陽電池は、一導電型の単結晶シリコン基板の表面に、単結晶シリコンとはバンドギャップの異なるシリコン系薄膜を有することで、拡散電位が形成された結晶シリコン系太陽電池である。シリコン系薄膜としては非晶質のものが好ましい。中でも、拡散電位を形成するための導電型非晶質シリコン系薄膜と結晶シリコン基板の間に、薄い真性の非晶質シリコン層を介在させたものは、変換効率の最も高い結晶シリコン太陽電池の形態の一つとして知られている。
【0039】
図2は、本発明の一実施形態に係る結晶シリコン系太陽電池の模式的断面図である。結晶シリコン系太陽電池101は、光電変換部50として、一導電型単結晶シリコン基板1の一方の面(光入射側の面)に、導電型シリコン系薄膜3aおよび光入射側透明電極層6aをこの順に有する。一導電型単結晶シリコン基板1の他方の面(光入射側の反対面)には、導電型シリコン系薄膜3bおよび裏面側透明電極層6bをこの順に有することが好ましい。光電変換部50表面の光入射側透明電極層6a上には、第一導電層71および第二導電層72を含む集電極7が形成されている。第一導電層71と第二導電層72との間には開口部を有する絶縁層9が形成されている。
【0040】
一導電型単結晶シリコン基板1と導電型シリコン系薄膜3a,3bとの間には、真性シリコン系薄膜2a,2bを有することが好ましい。裏面側透明電極層6b上には裏面金属電極8を有することが好ましい。
【0041】
まず、本発明の結晶シリコン系太陽電池における、一導電型単結晶シリコン基板1について説明する。一般的に単結晶シリコン基板は、導電性を持たせるために、シリコンに対して電荷を供給する不純物を含有している。単結晶シリコン基板は、シリコン原子に電子を導入するための原子(例えばリン)を含有させたn型と、シリコン原子に正孔を導入する原子(例えばボロン)を含有させたp型がある。すなわち、本発明における「一導電型」とは、n型またはp型のどちらか一方であることを意味する。
【0042】
ヘテロ接合太陽電池では、単結晶シリコン基板へ入射した光が最も多く吸収される入射側のへテロ接合を逆接合として強い電場を設けることで、電子・正孔対を効率的に分離回収することができる。そのため、光入射側のヘテロ接合は逆接合であることが好ましい。一方で、正孔と電子とを比較した場合、有効質量および散乱断面積の小さい電子の方が、一般的に移動度が大きい。以上の観点から、ヘテロ接合太陽電池に用いられる単結晶シリコン基板1は、n型単結晶シリコン基板であることが好ましい。単結晶シリコン基板1は、光閉じ込めの観点から、表面にテクスチャ構造を有することが好ましい。
【0043】
テクスチャが形成された一導電型単結晶シリコン基板1の表面に、シリコン系薄膜が製膜される。シリコン系薄膜の製膜方法としては、プラズマCVD法が好ましい。プラズマCVD法によるシリコン系薄膜の形成条件としては、基板温度100〜300℃、圧力20〜2600Pa、高周波パワー密度0.004〜0.8W/cmが好ましく用いられる。シリコン系薄膜の形成に使用される原料ガスとしては、SiH、Si等のシリコン含有ガス、またはシリコン系ガスとHとの混合ガスが好ましく用いられる。
【0044】
導電型シリコン系薄膜3は、一導電型または逆導電型のシリコン系薄膜である。例えば、一導電型単結晶シリコン基板1としてn型が用いられる場合、一導電型シリコン系薄膜、および逆導電型シリコン系薄膜は、各々n型、およびp型となる。p型またはn型シリコン系薄膜を形成するためのドーパントガスとしては、BまたはPH等が好ましく用いられる。また、PやBといった不純物の添加量は微量でよいため、予めSiHやHで希釈された混合ガスを用いることが好ましい。導電型シリコン系薄膜の製膜時に、CH、CO、NH、GeH等の異種元素を含むガスを添加して、シリコン系薄膜を合金化することにより、シリコン系薄膜のエネルギーギャップを変更することもできる。
【0045】
シリコン系薄膜としては、非晶質シリコン薄膜、微結晶シリコン(非晶質シリコンと結晶質シリコンとを含む薄膜)等が挙げられる。中でも非晶質シリコン系薄膜を用いることが好ましい。例えば、一導電型単結晶シリコン基板1としてn型単結晶シリコン基板を用いた場合の光電変換部50の好適な構成としては、透明電極層6a/p型非晶質シリコン系薄膜3a/i型非晶質シリコン系薄膜2a/n型単結晶シリコン基板1/i型非晶質シリコン系薄膜2b/n型非晶質シリコン系薄膜3b/透明電極層6bの順の積層構成が挙げられる。この場合、前述の理由から、p層側を光入射面とすることが好ましい。
【0046】
真性シリコン系薄膜2a,2bとしては、シリコンと水素で構成されるi型水素化非晶質シリコンが好ましい。単結晶シリコン基板上に、CVD法によってi型水素化非晶質シリコンが製膜されると、単結晶シリコン基板への不純物拡散を抑えつつ表面パッシベーションを有効に行うことができる。また、膜中の水素量を変化させることで、エネルギーギャップにキャリア回収を行う上で有効なプロファイルを持たせることができる。
【0047】
p型シリコン系薄膜は、p型水素化非晶質シリコン層、p型非晶質シリコンカーバイド層、またはp型非晶質シリコンオキサイド層であることが好ましい。不純物拡散の抑制や直列抵抗低下の観点ではp型水素化非晶質シリコン層が好ましい。一方、p型非晶質シリコンカーバイド層およびp型非晶質シリコンオキサイド層は、ワイドギャップの低屈折率層であるため、光学的なロスを低減できる点において好ましい。
【0048】
ヘテロ接合太陽電池101の光電変換部50は、導電型シリコン系薄膜3a,3b上に、透明電極層6a,6bを備えることが好ましい。透明電極層は、透明電極層形成工程により形成される。透明電極層6a,6bは、導電性酸化物を主成分とする。導電性酸化物としては、例えば、酸化亜鉛や酸化インジウム、酸化錫を単独または混合して用いることができる。導電性、光学特性、および長期信頼性の観点から、酸化インジウムを含んだインジウム系酸化物が好ましく、中でも酸化インジウム錫(ITO)を主成分とするものがより好ましく用いられる。ここで「主成分とする」とは、含有量が50重量%より多いことを意味し、70重量%以上が好ましく、90%重量以上がより好ましい。透明電極層は、単層でもよく、複数の層からなる積層構造でもよい。
【0049】
透明電極層には、ドーピング剤を添加することができる。例えば、透明電極層として酸化亜鉛が用いられる場合、ドーピング剤としては、アルミニウムやガリウム、ホウ素、ケイ素、炭素等が挙げられる。透明電極層として酸化インジウムが用いられる場合、ドーピング剤としては、亜鉛や錫、チタン、タングステン、モリブデン、ケイ素等が挙げられる。透明電極層として酸化錫が用いられる場合、ドーピング剤としては、フッ素等が挙げられる。
【0050】
ドーピング剤は、光入射側透明電極層6aおよび裏面側透明電極層6bの一方もしくは両方に添加することができる。特に、光入射側透明電極層6aにドーピング剤を添加することが好ましい。光入射側透明電極層6aにドーピング剤を添加することで、透明電極層自体が低抵抗化されるとともに、透明電極層6aと集電極7との間での抵抗損を抑制することができる。
【0051】
光入射側透明電極層6aの膜厚は、透明性、導電性、および光反射低減の観点から、10nm以上140nm以下であることが好ましい。透明電極層6aの役割は、集電極7へのキャリアの輸送であり、そのために必要な導電性があればよく、膜厚は10nm以上であることが好ましい。膜厚を140nm以下にすることにより、透明電極層6aでの吸収ロスが小さく、透過率の低下に伴う光電変換効率の低下を抑制することができる。また、透明電極層6aの膜厚が上記範囲内であれば、透明電極層内のキャリア濃度上昇も防ぐことができるため、赤外域の透過率低下に伴う光電変換効率の低下も抑制される。
【0052】
透明電極層の製膜方法は、特に限定されないが、スパッタ法等の物理気相堆積法や、有機金属化合物と酸素または水との反応を利用した化学気相堆積(MOCVD)法等が好ましい。いずれの製膜方法においても、熱やプラズマ放電によるエネルギーを利用することもできる。
【0053】
透明電極層作製時の基板温度は、適宜設定される。例えば、シリコン系薄膜として非晶質シリコン系薄膜が用いられる場合、200℃以下が好ましい。基板温度を200℃以下とすることにより、非晶質シリコン層からの水素の脱離や、それに伴うシリコン原子へのダングリングボンドの発生を抑制でき、結果として変換効率を向上させることができる。
【0054】
裏面側透明電極層6b上には、裏面金属電極8が形成されることが好ましい。裏面金属電極8としては、近赤外から赤外域の反射率が高く、かつ導電性や化学的安定性が高い材料を用いることが望ましい。このような特性を満たす材料としては、銀やアルミニウム等が挙げられる。裏面金属電極層の製膜方法は、特に限定されないが、スパッタ法や真空蒸着法等の物理気相堆積法や、スクリーン印刷等の印刷法等が適用可能である。
【0055】
透明電極層6a上に、集電極7が形成される。集電極7は、第一導電層71と、第二導電層72とを含む。第一導電層71は、導電性材料を含む。第一導電層71に含まれる前記導電性材料は、光電変換部の耐熱温度よりも低温の熱流動開始温度Tを有する、低融点材料を含むことが好ましい。
【0056】
本実施形態においては、第一導電層71と第二導電層72との間に開口部を有する絶縁層9が形成される。本発明の集電極7において、第二導電層72の一部は、第一導電層71に導通されている。ここで「一部が導通されている」とは、典型的には絶縁層に開口部が形成され、その開口部に第二導電層の材料が充填されていることによって、導通されている状態であり、また絶縁層の一部の膜厚が、数nm程度と非常に薄くなる(すなわち局所的に薄い膜厚の領域が形成される)ことによって、第二導電層72が第一導電層71に導通しているものも含む。例えば、第一導電層71の導電性材料がアルミニウム等の金属材料である場合、その表面に形成された酸化被膜(絶縁層に相当)を介して第一導電層71と第二導電層との間が導通されている状態が挙げられる。
【0057】
本発明においては、第一導電層上に開口部を有する絶縁層が形成されている。また第二導電層72の表面粗さは第一導電層71より小さくなる。すなわち、第一導電層71と第二導電層72の表面粗さを各々Ra1およびRa2としたとき、Ra1>Ra2を満たす。
【0058】
本発明においては、第一導電層と第二導電層の間に絶縁層を有することにより、第一導電層と第二導電層の密着性を向上させることができる。中でも、第一導電層の表面粗さRa1が1.0μmより大きいことが好ましい。前記範囲にすることにより、第一導電層と第二導電層の密着性をより向上させることが可能となる。また本発明においては、Ra2は1.0μm以上10.0μm以下が好ましい。
【0059】
ここで、図7(a)に示すように、太陽電池は、一般的に、配線部材34により他の太陽電池または外部電極と接続した太陽電池モジュール200として使用されている。この際、 図9(b)に示すように、太陽電池と配線部材の接続は、一般的に、導電性微粒子を含む導電性接着剤や半田などの接着剤を太陽電池の集電極と配線部材の間に介して接着することにより行われるが、例えば、接着剤として導電性接着剤を用いた場合、従来より、導電性微粒子が集電極の凹部に埋まることによる導通不良や、導電性接着剤と集電極との剥れにより信頼性が低下するといった問題点があった。
【0060】
上記問題点を解決するため、特許文献7に記載のように、太陽電池と配線部材を接続する際に、高い圧力を加えることで、集電極の凸部を配線部材に埋設し導通させ、さらに導電性接着剤を集電極と配線部材に接着させることでモジュールの信頼性を確保することが行われてきた。しかしながら、本発明者らの検討によれば、高い圧力を加えるとセル割れが発生しやすく工程が不安定になるといった課題が生じた。
【0061】
本発明においては、第二導電層の表面粗さを上記Ra2の範囲とすることにより、太陽電池モジュール200を作製する際、導電性接着剤との密着性がより向上し、図8(b)に示すように、集電極と配線部材とを導電性微粒子により導通させることができるため、信頼性をより向上させることが可能となる。この際、Ra2は、1.0μm以上が好ましく、3.0μm以上がより好ましい。またモジュール作製時に使用する導電性接着剤との密着強度、導電性微粒子での導通の点から10.0μm以下が好ましく、6.0μm以下がより好ましい。
【0062】
絶縁層9に、第一導電層と第二導電層とを導通させるための開口部を形成する方法は特に制限されず、レーザ照射、機械的な孔開け、化学エッチング等の方法が採用できる。一実施形態では、第一導電層中の導電性材料として低融点材料を用い、該低融点材料を熱流動させることによって、その上に形成された絶縁層に開口部を形成する方法が挙げられる。
【0063】
第一導電層中の低融点材料の熱流動により開口を形成する方法としては、低融点材料を含有する第一導電層71上に絶縁層9を形成後、低融点材料の熱流動開始温度T1以上に加熱(アニール)して第一導電層の表面形状に変化が生じさせ、その上に形成されている絶縁層9に開口(き裂)を形成する方法;あるいは、低融点材料を含有する第一導電層71上に絶縁層9を形成する際にT1以上に加熱することにより、低融点材料を熱流動させ、絶縁層の形成と同時に開口を形成する方法が挙げられる。
【0064】
以下、第一導電層中の低融点材料の熱流動を利用して、絶縁層に開口を形成する方法を図面に基づいて説明する。なお、本発明においては、以下の実施形態に限定されない。
【0065】
図3は、太陽電池の光電変換部50上への集電極7の形成方法の一実施形態を示す工程概念図である。この実施形態では、まず、光電変換部50が準備される(光電変換部準備工程、図3(A))。例えば、ヘテロ接合太陽電池の場合は、前述のように、一導電型シリコン基板上に、シリコン系薄膜および透明電極層を備える光電変換部が準備される。
【0066】
光電変換部の一主面上に、低融点材料711を含む第一導電層71が形成される(第一導電層形成工程、図3(B))。第一導電層の表面粗さ(Ra1)は、1.0μmより大きいことが好ましい。上記範囲にすることにより、この上に形成する第二導電層との密着性をより向上させることができる。
【0067】
第一導電層71上には、絶縁層9が形成される(絶縁層形成工程、図3(C))。絶縁層9は、第一導電層71上にのみ形成されていてもよく、光電変換部50の第一導電層71が形成されていない領域(第一導電層非形成領域)上にも形成されていてもよい。特に、ヘテロ接合太陽電池のように、光電変換部50の表面に透明電極層が形成されている場合は、第一導電層非形成領域上にも絶縁層9が形成されることが好ましい。
【0068】
絶縁層9が形成された後、加熱によるアニール処理が行われる(アニール工程、図3(D))。アニール処理により、第一導電層71がアニール温度Taに加熱され、低融点材料が熱流動することによって表面形状が変化し、それに伴って第一導電層71上に形成された絶縁層9に変形が生じる。絶縁層9の変形は、典型的には、絶縁層への開口部9hの形成である。開口部9hは、例えばき裂状に形成される。
【0069】
アニール処理により絶縁層9に開口部を形成した後に、めっき法により第二導電層72が形成される(めっき工程、図3(E))。第一導電層71は絶縁層9により被覆されているが、絶縁層9に開口部9hが形成された部分では、第一導電層71が露出した状態である。そのため、第一導電層71がめっき液に曝されることとなり、この開口部9hを起点として金属の析出が可能となる。このような方法によれば、集電極の形状に対応する開口部を有するレジスト材料層を設けずとも、集電極の形状に対応する第二導電層をめっき法により形成することができる。第二導電層の表面粗さ(Ra2)は、Ra1>Ra2を満たし、Ra2が1.0μm以上10.0μm以下であることが好ましい。このような表面粗さを有する第二導電層を用いることにより、モジュール化した際の配線部材との密着性をより向上させることができる。
【0070】
(第一導電層)
第一導電層71は、めっき法により第二導電層が形成される際の導電性下地層として機能する層である。そのため、第一導電層は電解めっきの下地層として機能し得る程度の導電性を有していればよい。なお、本明細書においては、体積抵抗率が10−2Ω・cm以下であれば導電性であると定義する。また、体積抵抗率が、10Ω・cm以上であれば、絶縁性であると定義する。
【0071】
一導電層第二導電層を形成する側の表面の表面粗さをRa1、第二導電層の表面粗さをRa2としたとき、Ra1>Ra2を満たす。またRa1が1.0μmより大きいことが好ましい。Ra1を上記範囲とすることにより、その上に形成する絶縁層や第二導電層との密着性をより向上させることができる。
【0072】
本発明においては、集電極として第一導電層/絶縁層/第二導電層の構成のものを用いており、後述のように、各層の製膜条件等によりRa2を所望の範囲に適宜設定しうると考えられるが、第一導電層上の絶縁層の表面粗さはRa1に影響を及ぼされうると考えられる。また同様にRa2もRa1に影響を及ぼされうると考えられる。従って、Ra2を所定の範囲とするために、Ra1を調整することが好ましい。この際、Ra1は3.0μm以上が好ましく、6.0μm以上がより好ましい。また10.0μm以下が好ましく、8.0μm以下がより好ましい。
【0073】
後述のように、上記範囲にすることで、第二導電層のRa2を容易に調整できるため、上記太陽電池を太陽電池モジュールとして用いる際、第二導電層と配線部材との密着性をより向上でき、モジュール性能をより向上させることができる。特に、第二導電層と配線部材とを、導電性微粒子を含有する導電性接着剤により接着させる場合、密着性をより向上させることができる。
【0074】
本発明においては、後述のように、第一導電層に含まれる導電性材料の粒子径、含有量、また粘度などの条件等を適宜調整することにより、Ra1を容易に上記範囲に設定することが出来る。特に、導電性材料として低融点材料を用いた場合、低融点材料の粒子径や含有量、また低融点材料以外(高融点材料など)の種類、含有量、または粘度などを適宜調整することにより容易にRa1を上記範囲に設定することができる。
【0075】
第一導電層71の膜厚は、コスト的な観点から20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましい。一方、第一導電層71のライン抵抗を所望の範囲とする観点から、膜厚は0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。
【0076】
第一導電層71は、導電性材料を含む。導電性材料としては、特に限定されず、例えば銀、銅、アルミニウムなどを用いることができる。導電性材料は、熱流動開始温度Tの低融点材料を含むことが好ましい。熱流動開始温度とは、加熱により材料が熱流動を生じ、低融点材料を含む層の表面形状が変化する温度であり、典型的には融点である。高分子材料やガラスでは、融点よりも低温で材料が軟化して熱流動を生じる場合がある。このような材料では、熱流動開始温度=軟化点と定義できる。軟化点とは、粘度が4.5×10Pa・sとなる温度である(ガラスの軟化点の定義に同じ)。
【0077】
低融点材料は、アニール処理において熱流動を生じ、第一導電層71の表面形状に変化を生じさせるものであることが好ましい。そのため、低融点材料の熱流動開始温度Tは、アニール温度Taよりも低温であることが好ましい。また、本発明においては、光電変換部50の耐熱温度よりも低温のアニール温度Taでアニール処理が行われることが好ましい。したがって、低融点材料の熱流動開始温度Tは、光電変換部の耐熱温度よりも低温であることが好ましい。
【0078】
光電変換部の耐熱温度とは、当該光電変換部を備える太陽電池(「太陽電池セル」または「セル」ともいう)あるいは太陽電池セルを用いて作製した太陽電池モジュールの特性が不可逆的に低下する温度である。例えば、図2に示すヘテロ接合太陽電池101では、光電変換部50を構成する単結晶シリコン基板1は、500℃以上の高温に加熱された場合でも特性変化を生じ難いが、透明電極層6や非晶質シリコン系薄膜2,3は250℃程度に加熱されると、熱劣化を生じたり、ドープ不純物の拡散を生じ、太陽電池特性の不可逆的な低下を生じる場合がある。そのため、ヘテロ接合太陽電池においては、第一導電層71は、熱流動開始温度Tが250℃以下の低融点材料を含むことが好ましい。
【0079】
低融点材料の熱流動開始温度Tの下限は特に限定されない。アニール処理時における第一導電層の表面形状の変化量を大きくして、絶縁層9に開口部9hを容易に形成する観点からは、第一導電層の形成工程において、低融点材料は熱流動を生じないことが好ましい。例えば、塗布や印刷により第一導電層が形成される場合は、乾燥のために加熱が行われることがある。この場合は、低融点材料の熱流動開始温度Tは、第一導電層の乾燥のための加熱温度よりも高温であることが好ましい。かかる観点から、低融点材料の熱流動開始温度Tは、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
【0080】
低融点材料は、熱流動開始温度Tが上記範囲であれば、有機物であっても、無機物であってもよい。低融点材料は、電気的には導電性であっても、絶縁性でも良いが、導電性を有する金属材料であることが望ましい。低融点材料が金属材料であれば、第一導電層の抵抗値を小さくできるため、電気めっきにより第二導電層が形成される場合に、第二導電層の膜厚の均一性を高めることができる。また、低融点材料が金属材料であれば、光電変換部50と集電極7との間の接触抵抗を低下させることも可能となる。
【0081】
低融点材料としては、低融点金属材料の単体もしくは合金、複数の低融点金属材料の混合物を好適に用いることができる。低融点金属材料としては、例えば、インジウムやビスマス、ガリウム等が挙げられる。
【0082】
第一導電層71は、導電性材料として、上記の低融点材料に加えて、低融点材料よりも相対的に高温の熱流動開始温度Tを有する高融点材料を含有することが好ましい。第一導電層71が高融点材料を有することで、第一導電層と第二導電層とを効率よく導通させることができ、太陽電池の変換効率を向上させることができる。例えば、低融点材料として表面エネルギーの大きい材料が用いられる場合、アニール処理により第一導電層71が高温に曝されて、低融点材料が液相状態になると、図4に概念的に示すように、低融点材料の粒子が集合して粗大な粒状となり、第一導電層71に断線を生じる場合がある。これに対して、高融点材料はアニール処理時の加熱によっても液相状態とならないため、第一導電層形成材料中に高融点材料を含有することによって、図4に示すような低融点材料の粗大化による第一導電層の断線が抑制され得る。
【0083】
高融点材料の熱流動開始温度Tは、アニール温度Taよりも高いことが好ましい。すなわち、第一導電層71が低融点材料および高融点材料を含有する場合、低融点材料の熱流動開始温度T、高融点材料の熱流動開始温度T、およびアニール処理におけるアニール温度Taは、T<Ta<Tを満たすことが好ましい。高融点材料は、絶縁性材料であっても導電性材料であってもよいが、第一導電層の抵抗をより小さくする観点から導電性材料が好ましい。また、低融点材料の導電性が低い場合は、高融点材料として導電性の高い材料を用いることにより、第一導電層全体としての抵抗を小さくすることができる。導電性の高融点材料としては、例えば、銀、アルミニウム、銅などの金属材料の単体もしくは、複数の金属材料を好ましく用いることができる。
【0084】
第一導電層71が低融点材料と高融点材料とを含有する場合、その含有比は、上記のような低融点材料粗大化による断線の抑止や、第一導電層の導電性、絶縁層への開口部の形成容易性(第二導電層の金属析出の起点数の増大)等の観点から、適宜に調整される。その最適値は、用いられる材料や粒径の組合せに応じて異なるが、例えば、低融点材料と高融点材料の重量比(低融点材料:高融点材料)は、5:95〜67:33の範囲である。低融点材料:高融点材料の重量比は、10:90〜50:50がより好ましく、15:85〜35:65がさらに好ましい。
【0085】
第一導電層71の材料として、例えば、金属粒子等の粒子状低融点材料が用いられる場合、アニール処理による絶縁層への開口の形成を容易とする観点から、低融点材料の粒径Dは、第一導電層の膜厚dの1/20以上であることが好ましく、1/10以上であることがより好ましい。低融点材料の粒径Dは、0.25μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましい。また、第一導電層71が、スクリーン印刷等の印刷法により形成される場合、粒子の粒径は、スクリーン版のメッシュサイズ等に応じて適宜に設定され得る。例えば、粒径は、メッシュサイズより小さいことが好ましく、メッシュサイズの1/2以下がより好ましい。なお、粒子が非球形の場合、粒径は、粒子の投影面積と等面積の円の直径(投影面積円相当径、Heywood径)により定義される。
【0086】
低融点材料の粒子の形状は特に限定されないが、扁平状等の非球形が好ましい。また、球形の粒子を焼結等の手法により結合させて非球形としたものも好ましく用いられる。一般に、金属粒子が液相状態となると、表面エネルギーを小さくするために、表面形状が球形となりやすい。アニール処理前の第一導電層の低融点材料が非球形であれば、アニール処理により熱流動開始温度T以上に加熱されると、粒子が球形に近付くため、第一導電層の表面形状の変化量がより大きくなる。そのため、第一導電層71上の絶縁層9への開口部の形成が容易となる。
【0087】
前述のごとく、第一導電層71は導電性であり、体積抵抗率が10−2Ω・cm以下であればよい。第一導電層71の体積抵抗率は、10−4Ω・cm以下であることが好ましい。第一導電層が低融点材料のみを有する場合は、低融点材料が導電性を有していればよい。第一導電層が、低融点材料および高融点材料を含有する場合は、低融点材料および高融点材料のうち、少なくともいずれか一方が導電性を有していればよい。例えば、低融点材料/高融点材料の組合せとしては、絶縁性/導電性、導電性/絶縁性、導電性/導電性が挙げられるが、第一導電層をより低抵抗とするためには、低融点材料および高融点材料の双方が導電性を有する材料であることが好ましい。
【0088】
第一導電層71の材料として上記のような低融点材料と高融点材料との組合せ以外に、材料の大きさ(例えば、粒径)等を調整することにより、アニール処理時の加熱による第一導電層の断線を抑制し、変換効率を向上させることも可能である。例えば、銀、銅、金等の高い融点を有する材料も、粒径が1μm以下の微粒子であれば、融点よりも低温の200℃程度あるいはそれ以下の温度T’で焼結ネッキング(微粒子の融着)を生じるため、本発明の「低融点材料」として用いることができる。このような焼結ネッキングを生じる材料は、焼結ネッキング開始温度T’以上に加熱されると、微粒子の外周部付近に変形が生じるため、第一導電層の表面形状を変化させ、絶縁層9に開口部を形成することができる。また、微粒子が焼結ネッキング開始温度以上に加熱された場合であっても、融点T’未満の温度であれば微粒子は固相状態を維持するため、図4に示すような材料の粗大化による断線が生じ難い。すなわち、金属微粒子等の焼結ネッキングを生じる材料は、本発明における「低融点材料」でありながら、「高融点材料」としての側面も有しているといえる。
【0089】
このような焼結ネッキングを生じる材料では、焼結ネッキング開始温度T’=熱流動開始温度Tと定義できる。図5は、焼結ネッキング開始温度について説明するための図である。図5(A)は、焼結前の粒子を模式的に示す平面図である。焼結前であることから、粒子は互いに点で接触している。図5(B)および図5(C)は、焼結が開始した後の粒子を、各粒子の中心を通る断面で切ったときの様子を模式的に示す断面図である。図5(B)は焼結開始後(焼結初期段階)、図5(C)は、(B)から焼結が進行した状態を示している。図5(B)において、粒子A(半径r)と粒子B(半径r)との粒界は長さaABの点線で示されている。
【0090】
焼結ネッキング開始温度T’は、rとrの大きい方の値max(r,r)と、粒界の長さaABとの比、aAB/max(r,r)が、0.1以上となるときの温度で定義される。すなわち、少なくとも一対の粒子のaAB/max(r,r)が0.1以上となる温度を焼結ネッキング開始温度という。なお、図6では単純化のために、粒子を球形として示しているが、粒子が球形でない場合は、粒界近傍における粒子の曲率半径を粒子の半径とみなす。また、粒界近傍における粒子の曲率半径が場所によって異なる場合は、測定点の中で最も大きな曲率半径を、その粒子の半径とみなす。例えば、図6(A)に示すように、焼結を生じた一対の微粒子A,B間には、長さaABの粒界が形成されている。この場合、粒子Aの粒界近傍の形状は、点線で示された仮想円Aの弧で近似される。一方、粒子Bの粒界近傍は、一方が破線で示された仮想円Bの弧で近似され、他方が実線で示された仮想円Bの弧で近似される。図6(B)に示されるように、rB2>rB1であるため、rB2を粒子Bの半径rとみなす。なお、上記の仮想円は、断面もしくは表面の観察像の白黒2値化処理により境界を定め、粒界近傍の境界の座標に基づいて最小二乗法により中心座標および半径を算出する方法により、決定できる。なお、上記の定義により焼結ネッキング開始温度を厳密に測定することが困難な場合は、微粒子を含有する第一導電層を形成し、加熱により絶縁層に開口部(き裂)が生じる温度を焼結ネッキング開始温度とみなすことができる。後述するように、絶縁層形成時に加熱が行われる場合は、絶縁層形成時の基板の加熱により開口部(き裂)が生じる温度を焼成ネッキング開始温度とみなすことができる。
【0091】
また、上記のように、第一導電層の導電性材料として、低融点材料を有するもの以外に、例えば、低融点材料を有さないもの(例えば上記高融点材料のみ、など)を用いることもできる。低融点材料を有さない場合であっても、上述のように、第一導電層を覆うように絶縁層を製膜した後、絶縁層に開口部を別途形成する方法などにより、第一導電層上の絶縁層に開口部を形成することができる。
【0092】
第一導電層の形成材料には、上記の導電性材料(例えば、低融点材料および/または高融点材料)に加えて、絶縁性材料を含むことが好ましい。絶縁性材料としては、バインダー樹脂等を含有するペースト等を好ましく用いることができる。また、スクリーン印刷法により形成された第一導電層の導電性を十分向上させるためには、熱処理により第一導電層を硬化させることが望ましい。したがって、ペーストに含まれるバインダー樹脂としては、上記乾燥温度にて硬化させることができる材料を用いることが好ましく、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂等が適用可能である。
【0093】
導電性材料として低融点材料を含むものを用いる場合、バインダー樹脂の硬化とともに低融点材料の形状が変化し、図3(D)に示すように、アニール処理時に、低融点材料近傍の絶縁層に開口(き裂)が生じやすくなる。なお、バインダー樹脂と導電性材料の比率は、いわゆるパーコレーションの閾値(導電性が発現する導電性材料含有量に相当する比率の臨界値)以上になるように設定すればよい。
【0094】
第一導電層71は、インクジェット法、スクリーン印刷法、導線接着法、スプレー法、真空蒸着法、スパッタ法等の公知技術によって作製できる。第一導電層71は、櫛形等の所定形状にパターン化されていることが好ましい。パターン化された第一導電層の形成には、生産性の観点からスクリーン印刷法が適している。スクリーン印刷法では、導電性材料を含む印刷ペースト、および集電極のパターン形状に対応した開口パターンを有するスクリーン版を用いて、集電極パターンを印刷する方法が好ましく用いられる。
【0095】
一方、印刷ペーストとして、溶剤を含む材料が用いられる場合には、溶剤を除去するための乾燥工程が必要となる。前述のごとく、この場合の乾燥温度は、光電変換部の耐熱温度よりも低いことが好ましい。例えば、光電変換部に透明電極層や非晶質シリコン系薄膜などを有する場合、乾燥温度は250℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることがさらに好ましい。また低融点材料を用いる場合、低融点材料の熱流動開始温度Tよりも高温であることが好ましい。乾燥時間は、例えば5分間〜1時間程度で適宜に設定され得る。
【0096】
上述のように、第一導電層に含まれる導電性材料の材料、粒子径、または含有量などを適宜調整することにより、Ra1を所定の範囲に容易に設定できる。例えば、第一導電層に印刷ペーストを有するものを用いた場合、印刷ペーストの粘度は、20Pa・s以上500Pa・s以下が好ましい。上記範囲とすることで、第一導電層のRa1をより容易に所定の範囲にすることが可能となる。
【0097】
粘度を20Pa・s以上とすることにより、高いアスペクト比とすることができ、遮光ロスやライン抵抗を軽減することができる。中でも50Pa・s以上であることがより好ましく、80Pa・s以上であることが特に好ましい。また透明導電層とのコンタクトを良好にするため印刷ペーストの粘度は500Pa・s以下であることが好ましく、400Pa・s以下であることがより好ましく、300Pa・s以下であることが特に好ましい。
【0098】
第一導電層は、複数の層から構成されてもよい。例えば、光電変換部表面の透明電極層との接触抵抗が低い下層と、導電性材料を含む上層からなる積層構造であっても良い。このような構造によれば、透明電極層との接触抵抗の低下に伴う太陽電池の曲線因子向上が期待できる。また、例えば、低融点材料含有層と、高融点材料含有層との積層構造や、導電性材料の含有量が多い下層と、導電性材料の含有量が少ない上層の積層構造とすることにより、第一導電層のさらなる低抵抗化が期待できる。
【0099】
以上、第一導電層が印刷法により形成される場合を中心に説明したが、第一導電層の形成方法は印刷法に限定されるものではない。例えば、第一導電層は、パターン形状に対応したマスクを用いて、蒸着法やスパッタ法により形成されてもよい。またインクジェット法などによりパターン形成されてもよい。
【0100】
(絶縁層)
第一導電層71上には、絶縁層9が形成される。ここで、第一導電層71が所定のパターン(例えば櫛形)に形成された場合、光電変換部50の表面上には、第一導電層が形成されている第一導電層形成領域と、第一導電層が形成されていない第一導電層非形成領域とが存在する。
【0101】
絶縁層9は、少なくとも第一導電層形成領域に形成される。本発明において、絶縁層9は、第一導電層71と第二導電層72との付着力の向上にも寄与すると考えられる。一般的に、集光効率を向上させる観点から細線化した集電極が好ましく用いられ、この場合、第一導電層と第二導電層の間の密着性をより向上させることが望まれている。
【0102】
本発明では、第一導電層と第二導電層の間に絶縁層を形成し、かつ、第一導電層のRa1を所定の範囲にすることにより、絶縁層の第二導電層側の表面に凹凸構造を容易に形成することができ、その上に形成する第二導電層との密着性が向上すると考えられる。その結果、集電極を細線化した際も、第一導電層と第二導電層の間の剥離防止効果がより期待できる。これにより、歩留まりの向上(剥がれ防止による効果)や集光効率の向上(細線化による効果)などがより期待できると考えられる。
【0103】
特に第一導電層としてAg層等を用い、その上にめっき法によりCu層が形成される場合などAg層とCu層の付着力は小さいが、酸化シリコン等の絶縁層上に、酸化シリコン等の絶縁層上にCu層が形成されることにより、第二導電層の付着力が高められ、太陽電池の信頼性を向上することが期待される。
【0104】
本発明において、絶縁層9は、第一導電層非形成領域上にも形成されていることが好ましく、第一導電層非形成領域の全面に形成されていることが特に好ましい。絶縁層が第一導電層非形成領域にも形成されている場合、めっき法により第二導電層が形成される際に、光電変換部をめっき液から化学的および電気的に保護することが可能となる。例えば、ヘテロ接合太陽電池のように光電変換部50の表面に透明電極層が形成されている場合は、透明電極層の表面に絶縁層が形成されることで、透明電極層とめっき液との接触が抑止され、透明電極層上への金属層(第二導電層)の析出を防ぐことができる。また、生産性の観点からも、第一導電層形成領域と第一導電層非形成領域との全体に絶縁層が形成されることがより好ましい。さらに、この場合、第一導電層が絶縁層により覆われているため、第一導電層を細線化した場合であっても、基板からの第一導電層の剥離を防止できるため、歩留まり向上効果がより期待できる。
【0105】
絶縁層9の材料としては、電気的に絶縁性を示す材料が用いられる。また、絶縁層9は、めっき液に対する化学的安定性を有する材料であることが望ましい。めっき液に対する化学的安定性が高い材料を用いることにより、第二導電層形成時のめっき工程中に、絶縁層が溶解しにくく、光電変換部表面へのダメージが生じにくくなる。また、第一導電層非形成領域上にも絶縁層9が形成される場合、絶縁層は、光電変換部50との付着強度が大きいことが好ましい。例えば、ヘテロ接合太陽電池では、絶縁層9は、光電変換部50表面の透明電極層6aとの付着強度が大きいことが好ましい。透明電極層と絶縁層との付着強度を大きくすることにより、めっき工程中に、絶縁層が剥離しにくくなり、透明電極層上への金属の析出を防ぐことができる。
【0106】
絶縁層9には、光吸収が少ない材料を用いることが好ましい。絶縁層9は、光電変換部50の光入射面側に形成されるため、絶縁層による光吸収が小さければ、より多くの光を光電変換部へ取り込むことが可能となる。例えば、絶縁層9が透過率90%以上の十分な透明性を有する場合、絶縁層での光吸収による光学的な損失が小さく、第二導電層形成後に絶縁層を除去することなく、そのまま太陽電池として使用することができる。そのため、太陽電池の製造工程を単純化でき、生産性をより向上させることが可能となる。絶縁層9が除去されることなくそのまま太陽電池として使用される場合、絶縁層9は、透明性に加えて、十分な耐候性、および熱・湿度に対する安定性を有する材料を用いることがより望ましい。
【0107】
絶縁層の材料は、無機絶縁性材料でも、有機絶縁性材料でもよい。無機絶縁性材料としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の材料を用いることができる。有機絶縁性材料としては、例えば、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリル、エポキシ、ポリウレタン等の材料を用いることができる。アニール処理における第一導電層の表面形状の変化に伴って生じる界面の応力等による、絶縁層への開口の形成を容易とする観点から、絶縁層の材料は、破断伸びが小さい無機材料であることが好ましい。
【0108】
このような無機材料の中でも、めっき液耐性や透明性の観点からは、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、サイアロン(SiAlON)、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、チタン酸バリウム、酸化サマリウム、タンタル酸バリウム、酸化タンタルフッ化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム等が好ましく用いられる。中でも、電気的特性や透明電極層との密着性等の観点からは、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、サイアロン(SiAlON)、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、チタン酸バリウム、酸化サマリウム、タンタル酸バリウム、酸化タンタルフッ化マグネシウム等が好ましく、屈折率を適宜に調整し得る観点からは、酸化シリコンや窒化シリコン等が特に好ましく用いられる。なお、これらの無機材料は、化学量論的(stoichiometric)組成を有するものに限定されず、酸素欠損等を含むものであってもよい。
【0109】
絶縁層9の膜厚は、絶縁層の材料や形成方法に応じて適宜設定される。第一導電層として、低融点材料を含むものを用いる場合、絶縁層9の膜厚は、アニール処理における第一導電層の表面形状の変化に伴って生じる界面の応力等によって、絶縁層に開口部が形成され得る程度に薄いことが好ましい。かかる観点から、絶縁層9の膜厚は、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましい。また、第一導電層非形成部における絶縁層9の光学特性や膜厚を適宜設定することで、光反射特性を改善し、太陽電池セル内部へ導入される光量を増加させ、変換効率をより向上させることが可能となる。このような効果を得るためには、絶縁層9の屈折率が、光電変換部50表面の屈折率よりも低いことが好ましい。また、絶縁層9に好適な反射防止特性を付与する観点から、膜厚は30nm〜250nmの範囲内で設定されることが好ましく、50nm〜250nmの範囲内で設定されることがより好ましい。なお、第一導電層形成領域上の絶縁層の膜厚と第一導電層非形成領域上の絶縁層の膜厚は異なっていてもよい。例えば、第一導電層形成領域では、アニール処理による開口部の形成を容易とする観点で絶縁層の膜厚が設定され、第一導電層非形成領域では、適宜の反射防止特性を有する光学膜厚となるように絶縁層の膜厚が設定されてもよい。
【0110】
ヘテロ接合太陽電池のように、光電変換部50の表面に透明電極層(一般には屈折率:1.9〜2.1程度)を有する場合、界面での光反射防止効果を高めて太陽電池セル内部へ導入される光量を増加させるために、絶縁層の屈折率は、空気(屈折率=1.0)と透明電極層との中間的な値であることが好ましい。また、太陽電池セルが封止されてモジュール化される場合、絶縁層の屈折率は、封止剤と透明電極層の中間的な値であることが好ましい。かかる観点から、絶縁層9の屈折率は、例えば1.4〜1.9が好ましく、1.5〜1.8がより好ましく、1.55〜1.75がさらに好ましい。また、屈折率を上記範囲にすることで、めっき液に対する撥水性を抑制できることから、めっき層の膜厚、膜質を容易に調整できると考えられる。
【0111】
絶縁層の屈折率は、絶縁層の材料、組成等により所望の範囲に調整され得る。例えば、酸化シリコンの場合は、酸素含有量を小さくすることにより、屈折率が高くなる。なお、本明細書における屈折率は、特に断りがない限り、波長550nmの光に対する屈折率であり、分光エリプソメトリーにより測定される値である。また、絶縁層の屈折率に応じて、反射防止特性が向上するように絶縁層の光学膜厚(屈折率×膜厚)が設定されることが好ましい。
【0112】
絶縁層は、公知の方法を用いて形成できる。例えば、酸化シリコンや窒化シリコン等の無機絶縁性材料の場合は、プラズマCVD法、スパッタ法等の乾式法が好ましく用いられる。また、有機絶縁性材料の場合は、スピンコート法、スクリーン印刷法等の湿式法が好ましく用いられる。これらの方法によれば、ピンホール等の欠陥が少なく、緻密な構造の膜を形成することが可能となる。
【0113】
中でも、より緻密な構造の膜を形成する観点から、絶縁層9はプラズマCVD法で形成されることが好ましい。この方法により、200nm程度の厚いものだけでなく、30〜100nm程度の薄い膜厚の絶縁層を形成した場合も、緻密性の高い構造の膜を形成することができる。
【0114】
例えば、図2に示す結晶シリコン系太陽電池のように、光電変換部50の表面にテクスチャ構造(凹凸構造)を有する場合、テクスチャの凹部や凸部にも精度よく膜形成できる観点からも、絶縁層はプラズマCVD法により形成されることが好ましい。緻密性が高い絶縁層を用いることにより、めっき処理時の透明電極層へのダメージを低減できることに加えて、透明電極層上への金属の析出を防止することができる。このように緻密性が高い絶縁膜は、図2の結晶シリコン系太陽電池におけるシリコン系薄膜3のように、光電変換部50内部の層に対しても、水や酸素などのバリア層として機能し得るため、太陽電池の長期信頼性の向上の効果も期待できる。
【0115】
なお、第一導電層71と第二導電層72との間にある絶縁層9、すなわち第一導電層形成領域上の絶縁層9の形状は、必ずしも連続した層状でなくてもよく、島状であっても良い。なお、本明細書における「島状」との用語は、表面の一部に、絶縁層9が形成されていない非形成領域を有する状態を意味する。
【0116】
本発明において、絶縁層9は、第一導電層71と第二導電層72との付着力の向上にも寄与し得る。例えば、下地電極層であるAg層上にめっき法によりCu層が形成される場合、Ag層とCu層との付着力は小さいが、酸化シリコン等の絶縁層上にCu層が形成されることにより、第二導電層の付着力が高められ、太陽電池の信頼性を向上することが期待される。
【0117】
上述のように、第一導電層として例えば低融点材料を有する場合、第一導電層71上に絶縁層が形成された後、第二導電層72が形成される前にアニール処理が行われる。アニール処理時に、第一導電層71が低融点材料の熱流動開始温度Tよりも高温に加熱され、低融点材料が流動状態となるために、第一導電層の表面形状が変化する。この変化に伴って、その上に形成される絶縁層9に開口部9hが形成される。したがって、その後のめっき工程において、第一導電層71の表面の一部が、めっき液に曝されて導通するため、図3(E)に示すように、この導通部を起点として金属を析出させることが可能となる。
【0118】
なお、この場合、開口部は主に第一導電層71の低融点材料711上に形成される。低融点材料が絶縁性材料の場合、開口部の直下は絶縁性であるが、低融点材料の周辺に存在する導電性の高融点材料にもめっき液が浸透するために、第一導電層とめっき液とを導通させることが可能である。
【0119】
アニール処理時におけるアニール温度(加熱温度)Taは、低融点材料の熱流動開始温度Tよりも高温、すなわちT<Taであることが好ましい。アニール温度Taは、T+1℃≦Ta≦T+100℃を満たすことがより好ましく、T+5℃≦Ta≦T+60℃を満たすことがさらに好ましい。アニール温度は、第一導電層の材料の組成や含有量等に応じて適宜設定され得る。
【0120】
また、前述のごとく、アニール温度Taは、光電変換部50の耐熱温度よりも低温であることが好ましい。光電変換部の耐熱温度は、光電変換部の構成により異なる。例えば、ヘテロ接合太陽電池や、シリコン系薄膜太陽電池のように透明電極層や非結晶質シリコン系薄膜を有する場合の耐熱温度は250℃程度である。そのため、光電変換部が非晶質シリコン系薄膜を備えるヘテロ接合太陽電池や、シリコン系薄膜太陽電池の場合、非晶質シリコン系薄膜およびその界面での熱ダメージ抑制の観点から、アニール温度は250℃以下に設定されることが好ましい。より高性能の太陽電池を実現するためにはアニール温度は200℃以下にすることがより好ましく、180℃以下にすることがさらに好ましい。これに伴って、第一導電層71の低融点材料の熱流動開始温度Tは、250℃未満であることが好ましく、200℃未満がより好ましく、180℃未満がさらに好ましい。
【0121】
一方、一導電型結晶シリコン基板の一主面上に逆導電型の拡散層を有する結晶シリコン太陽電池は、非晶質シリコン薄膜や透明電極層を有していないため、耐熱温度は800℃〜900℃程度である。そのため、250℃よりも高温のアニール温度Taでアニール処理が行われてもよい。
【0122】
なお、絶縁層への開口部の形成方法は、上記のように、絶縁層形成後にアニール処理を行う方法に限定されない。例えば、図3(C’)で示されるように、絶縁層90の形成と同時に開口部9hを形成することもできる。
【0123】
例えば、基板を加熱しながら絶縁層が形成されることで、絶縁層の形成と略同時に開口部が形成される。ここで、「絶縁層の形成と略同時」とは、絶縁層形成工程の他に、アニール処理等の別途の工程が行われていない状態、すなわち、絶縁層の製膜中、あるいは製膜直後の状態を意味する。製膜直後とは、絶縁層の製膜終了後(加熱停止後)から、基板が冷却され室温等に戻るまでの間も含むものとする。また、低融点材料上の絶縁層に開口部が形成される場合、低融点材料上の絶縁層の製膜が終わった後であっても、その周辺に絶縁層が製膜されることに追随して、低融点材料周辺の絶縁層に変形が生じ、開口部が形成される場合も含むものとする。
【0124】
絶縁層の形成と略同時に開口部を形成する方法としては、例えば、絶縁層形成工程において、第一導電層71の低融点材料711の熱流動開始温度T1よりも高い温度Tbに基板を加熱しながら、第一導電層71上に絶縁層9を製膜する方法が用いられる。低融点材料が流動状態となっている第一導電層上に絶縁層9が製膜されるため、製膜と同時に製膜界面に応力が生じ、例えばき裂状の開口が絶縁層に形成される。
【0125】
なお、絶縁層形成時の基板温度Tb(以下、「絶縁層形成温度」)とは、絶縁層の製膜開始時点の基板表面温度(「基板加熱温度」ともいう)を表す。一般に、絶縁層の製膜中の基板表面温度の平均値は、通常製膜開始時点の基板表面温度以上となる。したがって、絶縁層形成温度Tbが、低融点材料の熱流動開始温度T1よりも高温であれば、絶縁層に開口部等の変形を形成することができる。
【0126】
例えば、絶縁層9がCVD法やスパッタ法等の乾式法により形成される場合は、絶縁層製膜中の基板表面温度を低融点材料の熱流動開始温度T1よりも高温とすることにより、開口部を形成することができる。また、絶縁層9がコーティング等の湿式法により形成される場合は、溶媒を乾燥する際の基板表面温度を低融点材料の熱流動開始温度T1よりも高温とすることにより、開口部を形成することができる。なお、湿式法により絶縁層が形成される場合の「製膜開始時点」とは、溶媒の乾燥開始時点を指す。絶縁層形成温度Tbの好ましい範囲は、前記アニール温度Taの好ましい範囲と同様である。
【0127】
基板表面温度は、例えば基板表面に温度表示材(サーモラベルやサーモシールとも呼ばれる)や熱電対を貼り付けて測定することができる。また、加熱部(ヒーターなど)の温度は、基板の表面温度が所定範囲となるように適宜に調整することができる。
【0128】
絶縁層形成工程においてアニール処理を行う場合、絶縁層の材料および組成、製膜条件(製膜方法、基板温度、導入ガスの種類および導入量、製膜圧力、パワー密度等)を適宜調整することにより、絶縁層に開口部を形成することができる。プラズマCVD法により絶縁層9が形成される場合、緻密な膜を形成する観点から、絶縁層形成温度Tbは、130℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましく、150℃以上がさらに好ましい。また、絶縁層製膜時の基板表面の最高到達温度は、光電変換部の耐熱温度よりも低温であることが好ましい。
【0129】
プラズマCVDによる製膜速度は、より緻密な膜を形成する観点から、1nm/秒以下が好ましく、0.5nm/秒以下がより好ましく、0.25nm/秒以下がさらに好ましい。プラズマCVDにより、酸化シリコンが形成される場合の製膜条件としては、基板温度145℃〜250℃、圧力30Pa〜300Pa、パワー密度0.01W/cm2〜0.16W/cm2が好ましい。絶縁層の形成と略同時に開口部が形成された後、開口部の形成が不十分な箇所がある場合等は、さらに前述のアニール工程が行われてもよい。
【0130】
(第二導電層)
上記のように、開口部9hを有する絶縁層9が形成された後、第一導電層形成領域の絶縁層9上に第二導電層72がめっき法により形成される。この際、第二導電層として析出させる金属は、めっき法で形成できる材料であれば特に限定されず、例えば、銅、ニッケル、錫、アルミニウム、クロム、銀、金、亜鉛、鉛、パラジウム等、あるいはこれらの混合物を用いることができる。
【0131】
本発明における第二導電層は、上述のように表面粗さRa2が1.0μm以上10.0μm以下であることが好ましい。上記Ra2の範囲とすることにより、太陽電池モジュール200を作製する際、導電性接着剤との密着性がより向上し、図8(b)に示すように、集電極と配線部材とを導電性微粒子で導通させることができるため、信頼性をより向上させることが可能となる。この際、Ra2は、1.0μm以上が好ましく、3.0μm以上がより好ましい。またモジュール作製時に使用する導電性接着剤との密着強度、導電性微粒子での導通の点から10.0μm以下が好ましく、6.0μm以下がより好ましい。
【0132】
本発明において、上記Ra2とする方法としては、例えば、第二導電層の下に形成される層の表面の凹凸形状を調整する方法、第二導電層の形成条件を調整する方法、機械的研磨法などが挙げられる。前記第二導電層の下に形成される層の表面凹凸を調整する方法としては、上述のように、第一導電層のRa1を調整する方法や、その上に形成する絶縁層の表面粗さ(もしくは膜厚、製膜条件、または水との接触角等)を調整する方法などが挙げられる。また第二導電層の形成条件を調整する方法としては、例えばめっき液の温度、めっき時間やめっき時の電流等を調整したり膜厚を制御する方法などが挙げられる。中でも、太陽電池に与えるダメージをより抑制できる観点から、第二導電層の下に形成される層の表面の凹凸形状を調整する方法が好ましく、第二導電層の下に形成される層の表面の凹凸形状を調整し、かつ、第二導電層の形成条件を調整する方法がより好ましい。
【0133】
上述のように、Ra2は、絶縁層の表面粗さに影響を及ぼされうる。また絶縁層の表面粗さは、第一導電層のRa1に影響を及ぼされうる。従って、Ra1を適宜調整することにより、絶縁層の表面粗さを容易に所定の範囲に調整でき、またRa2も容易に所定の範囲に調整することができる。従って、Ra1は、Ra1>Ra2を満たす。Ra1は1.0μmより大きいことが好ましく、3.0μm以上がより好ましく、6.0μm以上がさらに好ましい。
【0134】
以上より、Ra1およびRa2をいずれも1.0μm以上10.0μm以下とし、Ra1>Ra2とすることにより、第一導電層と第二導電層の密着性を向上させつつ、第二導電層とその上に形成する導電性接着剤との密着性(コンタクト)を向上させることができる。これにより、変換効率が高く、信頼性の高い太陽電池を作製することが可能となる。
【0135】
太陽電池の動作時(発電時)には、電流は主として第二導電層を流れる。そのため、第二導電層での抵抗損を抑制する観点から、第二導電層のライン抵抗は、できる限り小さいことが好ましい。具体的には、第二導電層のライン抵抗は、1Ω/cm以下であることが好ましく、0.5Ω/cm以下であることがより好ましい。一方、第一導電層のライン抵抗は、電気めっきの際の下地層として機能し得る程度に小さければよく、例えば、5Ω/cm以下にすればよい。
【0136】
第二導電層は、無電解めっき法、電解めっき法のいずれでも形成され得るが、生産性の観点から、電解めっき法を用が好適である。電解めっき法では、金属の析出速度を大きくすることができるため、第二導電層を短時間で形成することができる。
【0137】
酸性銅めっきを例として、電解めっき法による第二導電層の形成方法を説明する。図10は、第二導電層の形成に用いられるめっき装置10の概念図である。光電変換部上に第一導電層および開口部を有する絶縁層が形成された基板12と、陽極13とが、めっき槽11中のめっき液16に浸されている。基板12上の第一導電層71は、基板ホルダ14を介して電源15と接続されている。陽極13と基板12との間に電圧を印加することにより、絶縁層9で覆われていない第一導電層の上、すなわちアニール処理により絶縁層に生じた開口部を起点として、選択的に銅を析出させることができる。
【0138】
酸性銅めっきに用いられるめっき液16は銅イオンを含む。例えば硫酸銅、硫酸、水を主成分とする公知の組成のものが使用可能であり、これに0.1〜10A/dmの電流を流すことにより、第二導電層である金属を析出させることができる。適切なめっき時間は、集電極の面積、電流密度、陰極電流効率、設定膜厚等に応じて適宜設定される。また、めっき液温度を変更することで、金属析出のレート、または膜質(表面凹凸)などの調整を可能にする。例えば、めっき液の温度を20〜40℃、電流を3〜6A/dm、めっき時間を3〜6分程度とすることにより、析出する金属の膜質、具体的には第二導電層の表面粗さ(R2)などを容易に所定の範囲(Ra1>Ra2)に調整できる。
【0139】
第二導電層は、複数の層から構成させても良い。例えば、Cu等の導電率の高い材料からなる第一のめっき層を、絶縁層の開口部を介して第一導電層上に形成した後、化学的安定性に優れる第二のめっき層を第一のめっき層の表面に形成することにより、低抵抗で化学的安定性に優れた集電極を形成することができる。
【0140】
めっき工程の後には、めっき液除去工程を設けて、基板12の表面に残留しためっき液を除去することが好ましい。めっき液除去工程を設けることによって、アニール処理で形成された絶縁層9の開口部9h以外を起点として析出し得る金属を除去することができる。開口部9h以外を起点として析出する金属としては、例えば絶縁層9のピンホール等を起点とするものが挙げられる。めっき液除去工程によってこのような金属が除去されることによって、遮光損が低減され、太陽電池特性をより向上させることが可能となる。
ここで、一般に、ITO等の透明電極層や、酸化シリコン等の絶縁層は親水性であり、基板12の表面や絶縁層9の表面の水との接触角は、10°程度あるいはそれ以下である場合が多い。一方、エアーブロー等によるめっき液の除去を容易にする観点からは、基板12の表面の水との接触角を20°以上とすることが好ましい。基板表面の接触角を大きくするために、基板12表面に撥水処理が行われてもよい。撥水処理は、例えば表面への撥水層の形成することにより行われる。撥水処理により、基板表面のめっき液に対する濡れ性を低下させることができる。
【0141】
なお、絶縁層9の表面への撥水処理に代えて、撥水性を有する絶縁層9が形成されてもよい。すなわち水との接触角θ大きい(例えば20°以上)の絶縁層9が形成されることにより、別途の撥水処理工程を省略できるため、太陽電池の生産性をより向上させることができる。絶縁層に撥水性を持たせる方法としては、例えば、絶縁層の製膜条件(例えば、製膜室に導入するシリコン原料ガスと酸素原料ガスの流量比)を変更したプラズマCVD法により、絶縁層としての酸化シリコン層を製膜する方法が挙げられる。
【0142】
本発明においては、集電極形成後(めっき工程後)に絶縁層除去工程が行われてもよい。特に、絶縁層として光吸収の大きい材料が用いられる場合は、絶縁層の光吸収による太陽電池特性の低下を抑制するために、絶縁層除去工程が行われることが好ましい。絶縁層の除去方法は、絶縁層材料の特性に応じて適宜選択される。例えば、化学的なエッチングや機械的研磨により絶縁層が除去され得る。また、材料によってはアッシング(灰化)法も適用可能である。この際、光取り込み効果をより向上させる観点から、第一導電層非形成領域上の絶縁層が全て除去されることがより好ましい。また、絶縁層9上に撥水層が形成されている場合、絶縁層9とともに撥水層も除去されることが好ましい。なお、絶縁層として光吸収の小さい材料が用いられる場合は、絶縁層除去工程が行われる必要はない。
【0143】
以上、ヘテロ接合太陽電池の光入射側に集電極7が設けられる場合を中心に説明したが、裏面側にも同様の集電極が形成されてもよい。ヘテロ接合太陽電池のように結晶シリコン基板を用いた太陽電池は、電流量が大きいため、一般に、透明電極層/集電極間の接触抵抗の損失による発電ロスが顕著となる傾向がある。これに対して、本発明では、第一導電層と第二導電層を有する集電極は、透明電極層との接触抵抗が低いため、接触抵抗に起因する発電ロスを低減することが可能となる。
【0144】
また、本発明は、ヘテロ接合太陽電池以外の結晶シリコン太陽電池や、GaAs等のシリコン以外の半導体基板が用いられる太陽電池、非晶質シリコン系薄膜や結晶質シリコン系薄膜のpin接合あるいはpn接合上に透明電極層が形成されたシリコン系薄膜太陽電池や、CIS,CIGS等の化合物半導体太陽電池、色素増感太陽電池や有機薄膜(導電性ポリマー)等の有機薄膜太陽電池のような各種の太陽電池に適用可能である。
【0145】
結晶シリコン太陽電池としては、一導電型(例えばp型)結晶シリコン基板の一主面上に逆導電型(例えばn型)の拡散層を有し、拡散層上に前記集電極を有する構成が挙げられる。このような結晶シリコン太陽電池は、一導電型層の裏面側にp層等の導電型層を備えるのが一般的である。このように、光電変換部が非晶質シリコン層や透明電極層を含まない場合は、低融点材料の熱流動開始温度Tおよびアニール温度Taは、250℃より高くてもよい。
【0146】
シリコン系薄膜太陽電池としては、例えば、p型薄膜とn型薄膜との間に非晶質の真性(i型)シリコン薄膜を有する非晶質シリコン系薄膜太陽電池や、p型薄膜とn型薄膜との間に結晶質の真性シリコン薄膜を有する結晶質シリコン系半導体太陽電池が挙げられる。また、複数のpin接合が積層されたタンデム型の薄膜太陽電池も好適である。このようなシリコン系薄膜太陽電池では、透明電極層や非晶質シリコン系薄膜の耐熱性を勘案して、低融点材料の熱流動開始温度Tおよびアニール温度Taは250℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることがさらに好ましい。
【0147】
本発明の太陽電池は、実用に供するに際して、例えば図7(a)に示すように、モジュール化されることが好ましい。太陽電池のモジュール化は、適宜の方法により行われる。例えば、集電極に配線部材が接続されることによって、複数の太陽電池セルが直列または並列に接続され、封止剤およびガラス板により封止されることによりモジュール化が行われる。
【0148】
前記配線部材と、前記太陽電池との接着は、導電性微粒子を含有する導電性接着剤を用いる方法や、半田付けにより太陽電池と接着される方法などが挙げられるが、熱ダメージをより抑制する観点から、導電性接着剤により太陽電池と接着されることが好ましい。また、前記配線部材により、前記太陽電池と外部回路、もしくは前記太陽電池と他の太陽電池とを接続して太陽電池ストリングを作製することが好ましい。なお、前記他の太陽電池についても、本発明における太陽電池を使用することが好ましい。
【0149】
導電性接着剤と配線部材との接着は、加熱処理を行うことにより行われることが好ましい。加熱温度は、光電変換部の耐久温度よりも低いことが好ましい。特に、ヘテロ接合太陽電池など、光電変換部に透明電極層などを有するものを用いる場合、加熱処理は250℃程度以下で行うことが好ましい。例えば、150℃〜180℃で、5秒〜15秒程度加熱することにより接着することができる。
【0150】
導電性接着剤と配線部材との接着は、太陽電池の集電極と配線部材とが破損しない程度の圧力にて行うことができる。ここで、上述のように、集電極が配線部材に埋め込まれることにより生じうる、太陽電池セルの破損をより抑制する観点から、圧力は2MPa以下がより好ましく、1MPa以下が更に好ましい。また、集電極と配線部材とを導電性微粒子により確実に導通する目的から、0.05MPa以上が好ましく、0.1MPa以上がより好ましい。上記範囲の圧力にて接着を行うことにより、太陽電池の集電極が配線部材に埋め込まれにくくなり、集電極と配線部材とが導電性接着剤を介して接着させることができる。これにより、太陽電池セルの破損をより抑制できる。
【0151】
導電性接着剤33は、電気的なコンタクトの観点から、図7(b)に示すように、太陽電池の前記集電極7上に形成されていることが好ましい。前記集電極は、前記配線部材と接着される領域の略全面に前記導電性接着剤を有することが好ましく、全面に有することがより好ましい。
【0152】
集電極と配線部材が接着される面のうちの「略全面」とは、図7(c’ )に示すように、90%以上が導電性接着剤により接することを意味する。95%以上が好ましく、100%すなわち全面(図7(c))がより好ましい。すなわち、集電極と配線部材が直接接してないことが好ましい。
【0153】
ここで「集電極と配線部材が接着される面」とは、例えば、配線部材の前記集電極側の面積が、集電極の面積よりも小さい場合は、配線部材の前記集電極側の面の面積を意味し、該面積のうちの90%以上が導電性接着剤により前記集電極と接していれば良い。この際、図7(c’)に示すように、配線部材の一部に導電性接着剤がない場合でも良いし、配線部材の全面に導電性接着剤が付着しており、かつ、配線部材の一部が直接集電極と接している場合(不図示)でも良い。
【0154】
上記のように集電極と配線部材を接着させることにより、集電極の略全面が配線部材と接する特許文献7と異なり、モジュールの破損を抑制させたまま密着性を向上させることができる。この際、本発明においては、集電極として前記Ra2を有する第二導電層を使用した場合、上述のように、集電極と配線部材が接着される面の略全面が導電性接着剤により接することができる。中でも、集電極と配線部材の密着性をより向上させ、また破損をより抑制できる観点から、上述のように、図8(b)に示すように、配線部材と集電極が前記導電性接着剤を介して(すなわち集電極とは配線部材とは接することなく)導通されていることが好ましい。
【0155】
上記は、集電極のバスバー電極上に導電性接着剤を介して配線部材を接着させた場合であるが、これに限定されるものではない。例えば、図7(e)に示すように、バスバーレスセルのフィンガー電極上に導電性接着剤を介して配線部材を接着させる場合でもよい。
【0156】
なお、集電極と配線部材の接着面は、例えば、集電極と配線部材とが交差する、集電極の線幅方向に平行な断面において、光学顕微鏡などにより該断面を観察することにより求めることができる。断面は、例えば、測定サンプルを樹脂で包埋後、機械研磨により形成することができる。また光学顕微鏡を用いた場合、例えば80倍〜100倍程度で観察することで求めることができる。
【0157】
前記導電性接着剤は、例えば導電性微粒子を樹脂ペーストに添加したものを用いることができる。ここで、樹脂ペーストとしては、例えば、エポキシ樹脂が用いられるが、イミド樹脂、フェノール樹脂等でも構わない。導電性接着剤の厚みは、集電極と配線部材とを確実に接着させるという観点から0.01〜0.05mmが好ましく、コストの観点から0.02mm〜0.03mmがより好ましい。
【0158】
導電性粒子としては、例えば、Ni、Au、Ag、Cu、Zn、In等の金属粉に加え、炭素粉等の導電性の紛体などでも構わない。さらに、導電性粒子は金属粉やエポキシ、アクリル、ポリイミド、フェノール等からなる粒子の表面を金属膜でコーティングしたものを用いる事も出来るが、コストや信頼性の観点からNiもしくはAgコートCuがより好ましい。また、平均粒径は、コストや加工のしやすさの観点から、1〜30μm、好ましくは平均粒径5〜15μm、平均粒径10μm程度の大きさがより好ましい。
【0159】
配線部材の材料は、特に制限されないが、図7(d)に示すように、表面が半田層で被覆された銅箔からなるものを用いることが好ましい。半田を銅箔の表面に形成することにより、銅箔の表面の腐食を防止する効果が期待できる。また、配線材で反射された光による電流向上の効果も期待できる。
【0160】
半田を構成する材料としては、Snを主成分として、Cu、Ni、Ag、Pbの内選ばれた1種以上の元素を有する合金半田で行うことが好ましい。例えば、Snが96.5質量%、Agが3.0質量%、Cuが0.5質量%の合金、Snが99〜99.5質量%、Cuが0.5〜1.0質量%の合金、Agが1〜1.5質量%、Biが30〜60質量%、残りがSnを主成分とする合金、Snが60質量%、Pbが40%質量%の合金、Cuが0.05〜2.0質量%、Niが0.001〜2.0質量%、残りがSnを主成分とする合金などとし、その他Snを主成分としてCu、Ni、Ag、Bi、Inなどを含む合金とすることが好ましい。コストの観点からSnが99〜99.5質量%、Cuが0.5〜1.0質量%の合金が好ましい。また、半田層の厚みは銅箔の酸化を防ぐために最低限の厚みでよく、20μm以下が好ましい。半田メッキ工程の厚みバラツキの安定性、コストの観点から10μm程度がより好ましい。
【0161】
次に、図7(a)に示すように、受光面側保護材上に、封止材、太陽電池ストリング、封止材及び裏面側保護材を順次積層して積層体とすることが好ましい。 次に、上記積層体を所定条件で加熱することにより、封止材を硬化させることが好ましい。そしてAlフレーム等を取り付けることで太陽電池モジュール200を作製することができる。
【0162】
受光面側保護材は、複数の太陽電池それぞれの受光面側(光入射面側)に配置し、太陽電池の表面を保護することが好ましい。受光面側保護材としては、透光性及び遮水性を有するガラス、透光性プラスチック等を用いることができる。裏面側保護材は、複数の太陽電池それぞれの裏面側に配置し、太陽電池の裏面を保護することが好ましい。裏面側保護材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルム、Al箔を樹脂フィルムでサンドイッチした構造を有する積層フィルム等を用いることができる。
【0163】
封止材は、受光面側保護材と裏面側保護材との間で太陽電池ストリングを封止する。封止材としては、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA),エチレンーエチルアクリレート共重合樹脂(EEA),ポリビニルブチラール樹脂(PVB),シリコン、ウレタン、アクリル、エポキシ等の透光性の樹脂を用いることができる。
【0164】
以上のようにして太陽電池モジュール200を作製することができるが、上記に限定されるものではない。
【実施例】
【0165】
以下、図2に示すヘテロ接合太陽電池に関する実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0166】
(表面粗さ測定)
第一導電層または第二導電層の表面を、キーエンス社製のレーザー顕微鏡VK−8510を用いて、JIS B 0601:2001(ISO 4287:1997に対応)に基づいて、表面粗さRaを測定した。
(粘度測定)
印刷ペーストの粘度は、株式会社ブルックフィールド社製の回転式粘度計により、溶液温度25℃回転速度10rpmで測定した。
(集電極と配線部材の断面観察)
測定サンプルを樹脂で包埋後、機械研磨により、集電極と配線部材が交差する領域において該集電極の線幅方向の断面を作製し、オリンパス社製の光学顕微鏡BX51を用いて、80倍に拡大し、光学顕微鏡観察を行った。
【0167】
(実施例1)
実施例1のヘテロ接合太陽電池を、以下のようにして製造した。
【0168】
一導電型単結晶シリコン基板として、入射面の面方位が(100)で、厚みが200μmのn型単結晶シリコンウェハを用い、このシリコンウェハを2重量%のHF水溶液に3分間浸漬し、表面の酸化シリコン膜が除去された後、超純水によるリンスが2回行われた。このシリコン基板を、70℃に保持された5/15重量%のKOH/イソプロピルアルコール水溶液に15分間浸漬し、ウェハの表面をエッチングすることでテクスチャが形成された。その後に超純水によるリンスが2回行われた。原子間力顕微鏡(AFM パシフィックナノテクノロジー社製)により、ウェハの表面観察を行ったところ、ウェハの表面はエッチングが最も進行しており、(111)面が露出したピラミッド型のテクスチャが形成されていた。
【0169】
エッチング後のウェハがCVD装置へ導入され、その光入射側に、真性シリコン系薄膜2aとしてi型非晶質シリコンが5nmの膜厚で製膜された。i型非晶質シリコンの製膜条件は、基板温度:170℃、圧力:100Pa、SiH4/H2流量比:3/10、投入パワー密度:0.011W/cm2であった。なお、本実施例における薄膜の膜厚は、ガラス基板上に同条件にて製膜された薄膜の膜厚を、分光エリプソメトリー(商品名M2000、ジェー・エー・ウーラム社製)にて測定することにより求められた製膜速度から算出された値である。
【0170】
i型非晶質シリコン層2a上に、逆導電型シリコン系薄膜3aとしてp型非晶質シリコンが7nmの膜厚で製膜された。p型非晶質シリコン層3aの製膜条件は、基板温度が170℃、圧力60Pa、SiH4/B2H6流量比が1/3、投入パワー密度が0.01W/cm2であった。なお、上記でいうB2H6ガス流量は、H2によりB2H6濃度が5000ppmまで希釈された希釈ガスの流量である。
【0171】
次にウェハの裏面側に、真性シリコン系薄膜2bとしてi型非晶質シリコン層が6nmの膜厚で製膜された。i型非晶質シリコン層2bの製膜条件は、上記のi型非晶質シリコン層2aの製膜条件と同様であった。i型非晶質シリコン層2b上に、一導電型シリコン系薄膜3bとしてn型非晶質シリコン層が4nmの膜厚で製膜された。n型非晶質シリコン層3bの製膜条件は、基板温度:170℃、圧力:60Pa、SiH4/PH3流量比:1/2、投入パワー密度:0.01W/cm2であった。なお、上記でいうPH3ガス流量は、H2によりPH3濃度が5000ppmまで希釈された希釈ガスの流量である。
【0172】
この上に透明電極層6aおよび6bとして、各々酸化インジウム錫(ITO、屈折率:1.9)が100nmの膜厚で製膜された。ターゲットとして酸化インジウムを用い、基板温度:室温、圧力:0.2Paのアルゴン雰囲気中で、0.5W/cm2のパワー密度を印加して透明電極層の製膜が行われた。裏面側透明電極層6b上には、裏面金属電極8として、スパッタ法により銀が500nmの膜厚で形成された。光入射側透明電極層6a上には、第一導電層71および第二導電層72を有する集電極7が以下のように形成された。
【0173】
第一導電層71の形成には、低融点材料としてのSnBi金属粉末(粒径DL=25μm、融点T1=141℃)と、高融点材料としての銀粉末(粒径DH=2〜3μm、融点T2=971℃)とを、20:80の重量比で含み、さらにバインダー樹脂としてエポキシ系樹脂を含む印刷ペーストが用いられた(粘度=80Pa・s)。この印刷ペーストを、集電極パターンに対応する開口幅(L=80μm)を有する#230メッシュ(開口幅:l=85μm)のスクリーン版を用いて、スクリーン印刷し、90℃で乾燥が行われた。
【0174】
第一導電層71が形成されたウェハが、CVD装置に投入され、絶縁層9として酸化シリコン層(屈折率:1.5)が、プラズマCVD法により100nmの厚みで光入射面側に形成された。
【0175】
絶縁層9の製膜条件は、基板温度:135℃、圧力133Pa、SiH4/CO2流量比:1/20、投入パワー密度:0.05W/cm2(周波数13.56MHz)であった。この条件で光入射面側に形成された絶縁層の屈折率(n)および消衰係数(k)は図11に示す通りであった。その後、絶縁層形成後のウェハが熱風循環型オーブンに導入され、大気雰囲気において、180℃で20分間、アニール処理が実施された。
【0176】
以上のようにアニール工程までが行われた基板12が、図10に示すように、めっき槽11に投入された。めっき液16には、硫酸銅五水和物、硫酸、および塩化ナトリウムが、それぞれ120g/l、130g/l、および70mg/lの濃度となるように調製された溶液に、添加剤(上村工業製:品番ESY−2B、ESY−H、ESY−1A)が添加されたものが用いられた。このめっき液を用いて、温度25℃、電流4A/dm2の条件でめっきが行われ、第一導電層71上の絶縁層上に、10μm程度の厚みで第二導電層72として銅が均一に析出した。第一導電層が形成されていない領域への銅の析出はほとんど見られなかった。
【0177】
その後、レーザー加工機によりセル外周部のシリコンウェハが0.5mmの幅で除去され、本発明のヘテロ接合太陽電池が作製された。
【0178】
次に導電性接着剤33として、エポキシ樹脂からなる樹脂中に、約10μm程度の球状のNi粒子が8wt%程度混合された導電性樹脂を、第二導電層として使用されるバスバー電極上に塗布し、その上に厚み10μmの半田層でめっきされた銅箔からなる配線部材を配置した後、1MPaの圧力を加えた。180℃、15秒圧力を加えることで、エポキシ樹脂を硬化させた。
この際、集電極(第二導電層)は、配線部材に埋め込まれていなかった。すなわち、第二導電層の配線部材と接する面の全面が前記導電性接着剤で覆われており、導電性微粒子により集電極と配線部材とが導通されていた。
【0179】
以上の様にして、配線部材34を張り付けた太陽電池を用い、ガラス、EVA(封止材)、太陽電池、EVA、及び裏面保護シートの順に積層させた。その後、大気圧での加熱圧着を5分間行い、EVA樹脂で太陽電池をモールドした。続いて、150℃にて50分間保持して、EVA樹脂を架橋させて太陽電池モジュール200とした。
【0180】
(実施例2〜3、参考例2)
第一導電層71形成用印刷ペーストの粘度および低融点材料径が表1に示すように変更された点を除いて、実施例1と同様にしてヘテロ接合太陽電池が作製された。
【0181】
(実施例4、参考例1)
第一導電層71形成用印刷ペーストの粘度および第一導電層71形成用の印刷ペースト中の低融点材料が、粒径DL=0.3〜0.7μmの銀微粒子に変更され、高融点材料が用いられなかった点を除いて、実施例1と同様にしてヘテロ接合太陽電池が作製された。
【0182】
(実施例5)
集電極と配線部材とを接続する工程での圧力が2MPaに変更され、さらに第一導電層71形成用印刷ペーストの粘度および低融点材料径が表1に示すように変更された点を除いて、実施例1と同様にしてヘテロ接合太陽電池が作製された。実施例5では、断面観察した際に、集電極は、配線部材に埋め込まれていなかった。すなわち略全面が導電性接着剤により接着されていた。
【0183】
(参考例3)
集電極と配線部材とを接続する工程での圧力が2MPaに変更され、さらに第一導電層71形成用印刷ペーストの粘度および低融点材料径が表1に示すように変更された点を除いて、実施例1と同様にしてヘテロ接合太陽電池が作製された。参考例3では、断面観察した際に、集電極と配線部材は略全面が導電性接着剤により接着されており、集電極の配線部材との接する面の一部(10%程度以下)が配線部材と接していた。
【0184】
(比較例1)
第一導電層形成用の印刷ペーストとして、低融点材料を含まない銀ペースト(すなわち金属材料粉末と銀粉末との比率を0:100としたもの)が用いられた点を除いて、実施例1と同様にして第一導電層(銀電極)71の形成までが行われた。その後、絶縁層形成工程、アニール工程、第二金属層形成工程のいずれも実施せず、この銀電極を集電極とするヘテロ接合太陽電池が作製された。
【0185】
(比較例2、3)
第一導電層71形成用低融点材料及び材料径が表1に示すように変更された点を除いて、実施例1と同様にしてヘテロ接合太陽電池が作製された。その後、絶縁層形成工程およびアニール工程を実施することなく、めっき法により第二導電層が形成された。比較例2,3では、第二導電層を形成することができたものの、めっき処理中に透明電極層が完全にエッチングされる不具合が生じており、太陽電池として機能するものが得られなかった。
【0186】
(太陽電池セル特性測定)
各実施例、参考例および比較例のヘテロ接合太陽電池セルの太陽電池特性の測定を行った。また、比較例1に示す方法において作製した太陽電池セルにおける太陽電池特性評価結果を基準(1.0)とし、実施例、参考例、比較例に係る太陽電池セルにおける太陽電池特性(セル性能)の評価結果を比較する事により、出力の相関を評価した。
【0187】
(剥離強度試験)
めっき前後の集電極の表面粗さと、該集電極と配線部材とを、導電性接着剤を用いて貼り付けた際の剥離強度との関係を検証した。
【0188】
具体的には、図8(a)、図9(a)に示すように、各実験例で得られた太陽電池の集電極の上に、幅:1mm、長さ:100mm、厚さ:100μmの銅箔を、導電性接着剤33を用いて接着した。この際、第二導電層がめっきにより形成されたものは、めっき前後が各々、第一導電層と第二導電層の表面粗さ(Ra1とRa2)を求め、第二導電層上に前記導電性接着剤を形成し、配線部材と接着させた。一方、比較例1など、めっきを行わなかったものについては、めっき前後の第一導電層の表面粗さ(Ra1)を求めた。
【0189】
ここで、導電性微粒子を含有する導電性接着剤33としては、平均粒子径が10μmであるNiフィラーを約8質量%含有するエポキシ系樹脂からなり、幅:1mm、長さ:50mm、厚さ:25μmのフィルム状導電性接着剤を用いた。この導電性接着剤33を介して、第二導電層72の上に、配線部材(銅箔)を配置し、180℃で、15秒、1.0MPaで押圧することにより、銅箔を接着した。
【0190】
その後、剥離強度試験器(IMADA社製 MX−2000N)を用いて、銅箔の法線方向に沿って、40mm/分の速度で配線部材(銅箔)を引張り、銅箔が剥離したときの最大荷重を剥離強度(g)として求めた。
【0191】
また、比較例1に示す方法において作製した太陽電池セルにおける剥離強度と、実施例、参考例、比較例に係る太陽電池セルにおける剥離強度を比較する事により、出力の相関を評価した。
【0192】
(セル破損率)
実施例、参考例、比較例に係る太陽電池と配線部材とを導電性接着剤を用いて接続した際のセル破損率を評価した。それぞれの太陽電池を10〜20枚作製し、破損したセル枚数を処理した枚数で割った割合を評価した。
【0193】
(温度サイクル試験)
実施例、参考例、比較例に係る太陽電池モジュールにおいて、JIS C 8917に従い、温度サイクル試験を実施した。具体的には、温度サイクル試験を実施する前のモジュール出力と、温度サイクル試験を実施した後のモジュール出力を比較する事により、出力の相関を評価した。また各実施例、参考例、比較例において作製した太陽電池モジュールにおける温度サイクル試験前の出力を各々1とし、温度サイクル試験実施後の出力すなわち、サイクル試験前後の保持率(モジュール性能)を比較する事により、出力の相関を評価した。保持率は、95%以上を合格とした。
【0194】
上記の結果をまとめたものを表1に示す。
【0195】
【表1】
【0196】
各実施例において、めっき工程により第二導電層として銅が析出したのは、アニール処理により第一導電層形成領域上の絶縁層に開口部が形成され、第一導電層がめっき液と接触(導通)し、この開口部を析出の起点として、めっきが行われたためである。
【0197】
表1から、第一導電層71形成用印刷ペーストの粘度または低融点材料径を変更することにより、第一導電層表面の表面粗さRa1を適宜調整できることがわかる。また第二導電層の形成条件を同じにした場合、Ra1の調整に伴い第二導電層表面の表面粗さRa2をも調整できることがわかる。実施例1と、実施例2もしくは実施例3と、参考例2と、を比較することにより、印刷ペーストの粘度を高くすると、第一導電層表面の表面粗さRa1を大きくでき、それに伴い、第二導電層表面の表面粗さRa2をも大きくできることがわかる。また、実施例1と、実施例3もしくは実施例2と、参考例2と、を比較することにより、低融点材料径を大きくすると、第一導電層表面の表面粗さRa1、第二導電層表面の表面粗さRa2を大きくできることがわかる。この結果から、上記実施形態において、第一導電層71形成用印刷ペーストの粘度または低融点材料径などを変更させることにより、第一導電層表面の表面粗さRa1や、第二導電層表面の表面粗さRa2を制御できると考えられる。
【0198】
各実施例及び各参考例と比較例1とのセルにおける太陽電池特性(セル性能)の比較から、本発明の太陽電池は、銀ペースト電極からなる集電極を有する従来の太陽電池に比べて、太陽電池セル特性が向上している。これは、実施例の太陽電池においては、集電極の抵抗が低くなり、曲線因子が向上したためと考えられる。
【0199】
また、比較例1,2と、参考例1と、を比較すると、いずれもRa1は1.0μm未満で同程度であったにも拘らず、比較例1と比較例2ではRa1=Ra2になり、参考例1ではRa1>Ra2となった。これは、参考例1では、第一導電層と第二導電層の間に、絶縁層を有しており、該絶縁層が第二導電層の表面粗さRa2に寄与したためと考えられる。また、本発明のめっき条件もRa2に寄与したと考えられる。
【0200】
実施例と参考例の比較より、Ra1が1.0μm程度の小さい範囲では、Ra1が大きくなるにつれてセル特性が向上した。またRa1が1.0μmより大きい実施例と、Ra1=11.3μmの参考例2では、セル特性がほぼ同程度になった。これは、Ra1が1.0μmより大きいことにより、第一導電層と第二導電層の密着性が向上したためと考えられる。
【0201】
剥離強度に関し、実施例および参考例は、比較例1に比べて剥離強度が向上した。また参考例と実施例を比べると、Ra1とRa2が1.0μm未満の参考例1に比べて、1.0μm以上の実施例では剥離強度がより向上した。また実施例4,1,2を比較すると、Ra1とRa2が1.0μmから大きくなるにつれて剥離強度も向上した。一方、実施例2,3と参考例2を比較すると、Ra1とRa2がさらに大きくなるにつれて剥離強度が少し減少した。この結果から、Ra1が6.0〜8.0μm、Ra2が3.0〜6.0μm程度が最も剥離強度が強くなると考えられる。
【0202】
また、比較例2と参考例1、比較例3と実施例3を各々比較すると、比較例2と参考例1はRa1やRa2が0.8μm程度、比較例3と実施例3はRa1が9.0μm程度、Ra2が8.0μm程度でほぼ同程度あるのに対し、剥離強度は、参考例1、実施例3の方が大きくなった。これは、参考例1と実施例3では、第一導電層と第二導電層の間に絶縁層を有するため、第一導電層と第二導電層の密着性が向上し、剥離強度にも寄与したためと考えられる。
【0203】
剥離強度は主に、第一導電層と第二導電層との密着性、また第二導電層と導電性接着剤等の接着剤との密着性に影響を及ぼされていると考えられることから、Ra1を6.0〜8.0μm程度にすることにより、第一導電層と第二導電層との密着性がより向上し、またRa2を3.0〜6.0μmとすることにより、第二導電層と接着剤との密着性がより向上すると考えられる。これは、上記範囲のRa1やRa2とすることで、最も高いアンカー効果が得られるためと考えられる。
【0204】
また、太陽電池と配線部材との接続圧力を2MPaに変更した実施例5と参考例3を各々比較すると、セル破損率は実施例5の方がより低くなった。これは、参考例3ではRa1、Ra2が10μmより大きく、粗いため、集電極と配線部材が接触し、接触点を起点にセルが破損しやすくなったのに対し、実施例5ではRa2が10μm以下(Ra2=5.0μm程度)と比較的小さいため、集電極と配線部材とが接触しにくくなり、よりセル破損率が低くなったと考えられる。
【0205】
各実施例と各参考例、及び比較例1とのモジュールにおける出力評価(保持率)の比較から、各実施例と各参考例の太陽電池モジュールは、銀ペースト電極からなる集電極を有する従来の太陽電池に比べて、温度サイクル試験後のモジュール効率が向上している。これは、各実施例及び各参考例の太陽電池においては、セル性能が高いことに加え、第一導電層と第二導電層の密着強度または第二導電層と導電性接着剤との密着強度が高いため、温度サイクル試験における信頼性が高くなったと考えられる。
【0206】
また、各実施例は各参考例と比べてモジュールに対する温度サイクル試験後の保持率が向上した。またモジュール性能は、上述した剥離強度と概ね同様の傾向となり、Ra1が6.0〜8.0μm程度、Ra2が3.0〜6.0μm程度の実施例1、2、実施例5で特に高くなった。これはRa1を大きくすることで第一導電層と第二導電層の密着強度が向上し、またRa1>Ra2を満たし、かつ、Ra2を1.0μm以上10.0μm以下とすることで第二導電層と導電性接着剤との密着強度が向上したためであると考えられる。
【0207】
以上、実施例を用いて説明したように、本発明によれば、絶縁層のパターニングを行うことなく、太陽電池の集電極を作製することができるため、高出力の太陽電池を低コストで提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0208】
1.一導電型単結晶シリコン基板
2.真性シリコン系薄膜
3.導電型シリコン系薄膜
6.透明電極層
7.集電極
71.第一導電層
711.低融点材料
72.第二導電層
8.裏面金属電極
9.絶縁層
9h.開口部
12.基板
13.陽極
14.基板ホルダ
15.電源
16.めっき液
33.導電性接着剤
34.配線部材
200.太陽電池モジュール
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