特許第6151574号(P6151574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6151574
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】車両のリヤアンダミラー
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/04 20060101AFI20170612BHJP
【FI】
   B60R1/04 Z
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-116117(P2013-116117)
(22)【出願日】2013年5月31日
(65)【公開番号】特開2014-234055(P2014-234055A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2016年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】大島 研介
(72)【発明者】
【氏名】志岐 有太
【審査官】 倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/136206(WO,A1)
【文献】 実公昭47−003928(JP,Y1)
【文献】 特開2009−143537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/02 − 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右幅方向において凸面状の鏡面を備えており、
車両の後部に取り付けられて用いられる車両のリヤアンダミラーであって、
前記鏡面の非傾斜の起立姿勢の正面視においては、前記鏡面の下辺は、左右幅方向の両端部が中央部よりも下方に下がった曲線であり、
前記鏡面をその正面方向に傾斜させた姿勢で前記車両の後部に取り付けた状態においては、前記下辺の前記両端部が前記中央部よりも下方に下がる程度が前記鏡面の非傾斜の起立姿勢状態と比較して小さくなることにより、前記鏡面の正面視において前記下辺を略水平な直線状とすることが可能とされていることを特徴とする、車両のリヤアンダミラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のリヤウインドウの上部または上方に配されて、車両の後部下方周辺を視認するのに用いられる車両のリヤアンダミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のリヤアンダミラーの一例として、図5に示すようなものがある(たとえば、特許文献1を参照)。
図5に示すリヤアンダミラーBは、車両の後部下方周辺を映すための鏡面6が、左右幅方向において曲率半径Rcの凸面とされ、かつ上下高さ方向において曲率半径Rdの凹面とされたものである。
このような構成によれば、鏡面6が左右幅方向において凸面とされているために、車幅方向の広範囲を鏡面6に映すことが可能である。一方、鏡面6が上下高さ方向において凹面とされていることにより、鏡像を正立像とし、視認性をよくすることが可能である。
【0003】
しかしながら、従来においては、次のように改善すべき余地があった。
すなわち、従来のリヤアンダミラーBは、図5(b)に示すように、非傾斜の起立姿勢の正面視において、鏡面6の全体形状がたとえば矩形状とされ、下辺60が略水平な直線状の形態とされている。ところが、リヤアンダミラーBが車両の後部に実際に取り付けられて使用される場合には、図6(b)に示すように、リヤアンダミラーBは正面方向に適当な角度θ’で傾斜した姿勢とされる。したがって、このような傾斜姿勢における正面視、すなわち車両の運転者から見た鏡面6の形状は、図6(a)に示すように、下辺60および上辺61がともに下向き凸状の曲線となる。
一方、図7に示すように、鏡面6に車両のリヤバンパや車両後方の景色などが映る場合には、これらが湾曲した状態に見える。同図では、車両のリヤバンパの像Icと、車両後方の地面に描かれた車両後方に延びる直線(たとえば、駐車場の枠線など)の像Idが鏡面6に映った状態が示されているが、リヤバンパの像Icは湾曲しており、また直線の像Idは、斜めに傾いた状態に見える。
【0004】
従来においては、前記したように、鏡面6には湾曲または斜めに傾いた像Ic,Idが映るのに対し、鏡面6の下辺60および上辺61は曲線である。これでは、車両の後退時において、車両をたとえば真後ろに後退させようとする場合に、その後退方向の目安となる基準、すなわち車両の後退方向と平行または垂直なものが存在しない。したがって、運転者は歪んだ像Ic,Idに惑わされ、車両後退方向を正確に認識し難くなる虞がある。このような虞は、適切に防止または抑制することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2011/136206公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、車両後退方向などを従来よりも容易かつ正確に認識することが可能な車両のリヤアンダミラーを提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供される車両のリヤアンダミラーは、左右幅方向において凸面状の鏡面を備えており、車両の後部に取り付けられて用いられる車両のリヤアンダミラーであって、前記鏡面の非傾斜の起立姿勢の正面視においては、前記鏡面の下辺は、左右幅方向の両端部が中央部よりも下方に下がった曲線であり、前記鏡面をその正面方向に傾斜させた姿勢で前記車両の後部に取り付けた状態においては、前記下辺の前記両端部が前記中央部よりも下方に下がる程度が前記鏡面の非傾斜の起立姿勢状態と比較して小さくなることにより、前記鏡面の正面視において前記下辺を略水平な直線状とすることが可能とされていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、鏡面をその正面方向に傾斜させた姿勢に設定し、リヤアンダミラーを車両の後部に実際に取り付けて使用する場合には、運転者からみて鏡面の下辺が略水平な直線状に見えるようにすることができる。したがって、鏡面に映った全体の像が湾曲したり、斜めに傾斜していたとしても、鏡面の下辺を方向確認のための基準とし、車両後退時に運転者の知覚に混乱を生じないようにすることが可能となる。その結果、車両後退方向などを従来よりも容易かつ正確に認識することができる。
【0010】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る車両のリヤアンダミラーの使用状態時の一例を示す概略図である。
図2図1に示すリヤアンダミラーを示し、(a)は、(c)のIIa−IIa断面図であり、(b)は、(c)の平面図であり、(c)は、正面図であり、(d)は、右側面図であり、(e)は、(c)のIIe−IIe断面図である。
図3図1および図2に示すリヤアンダミラーを傾斜させた状態を示し、(a)は、正面図であり、(b)は、右側面図である。
図4図3に示した傾斜状態のリヤアンダミラーの鏡面に像が映った状態の一例を模式的に示す正面図である。
図5】従来技術の一例を示し、(a)は、(b)のVa−Va断面図であり、(b)は、正面図であり、(c)は、右側面図である。
図6図5に示したリヤアンダミラーを傾斜させた状態を示し、(a)は、正面図であり、(b)は、右側面図である。
図7図6に示した傾斜状態のリヤアンダミラーの鏡面に像が映った状態の一例を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0013】
図1に示す車両のリヤアンダミラーAは、車両1の後部下方周辺を視認するのに用いられるものであり、車両1のリヤウインドウの上部または上方に、ブラケット2を用いて取り付けられている。好ましくは、このリヤアンダミラーAは、車室内の車幅方向略中央位置に配設される。車両1に室内付けのハイマウントストップランプが取り付けられている場合には、このストップランプ用のハウジングの前面側にリヤアンダミラーAが配設され、外部からのストップランプの視認性を損なわないようにされる。
【0014】
リヤアンダミラーAは、たとえば樹脂板の表面にクロムなどの金属メッキ処理を施して構成されており、この金属膜によって形成された鏡面3を有している。ただし、鏡面3の形成手段は、これに限定されない。図2に示すように、鏡面3は、中心軸C1を中心として左右幅方向において適当な曲率半径Raの凸面とされている。また、鏡面3は、上下高さ方向において適当な曲率半径Rbの凹面でもある。
【0015】
鏡面3は、非傾斜の起立姿勢の正面視においては、図2(c)に示すように、鏡面3の下辺30は、左右幅方向の両端部30aが中央部30bよりも下方に下がった曲線とされている。ここで、鏡面3の「非傾斜の起立姿勢の正面視」とは、「鏡面3の凸面(半径Raの凸面)の曲率の中心軸C1が非傾斜とされた状態(鉛直方向に延びた状態)での正面視」、あるいは「中心軸C1に対して直交する方向からの正面視」と同義である。鏡面3の上辺31は、下辺30と同様に、たとえば左右幅方向の両端部31aが中央部31bよりも下方に下がった曲線とされている。
【0016】
前記したリヤアンダミラーAは、図1に示すように、車両1の後部に実際に取り付けられて使用される場合には、たとえば図3に示すような姿勢に設定される。すなわち、リヤアンダミラーAは、鏡面3がその正面方向に適当な角度θだけ傾けられた姿勢とされる。角度θは、鉛直軸CVに対する中心軸C1の傾き角であり、たとえば60°程度である。ただし、この角度θは、リヤアンダミラーAの取り付け高さや、自動車の種類、仕様により適宜選択される。
【0017】
図3に示したリヤアンダミラーAの傾斜姿勢では、鏡面3の下辺30は、正面視において略水平な直線状となる。また、鏡面3の上辺31は、曲率半径が大きく、水平な直線に比較的近い曲線となる(ただし、後述するように、鏡面3の上辺31についても、下辺30と同様に、略水平な直線状となるように構成することができる)。
【0018】
前記したリヤアンダミラーAによれば、次のような作用が得られる。
【0019】
リヤアンダミラーAが車両後部に取り付けられて実際に使用される場合には、図3に示した姿勢に設定される。図4に示すように、鏡面3に映る像は、図7に示した場合と同様であり、たとえばリヤバンパ10の像Iaは湾曲し、また車両後方の地面に描かれた車両後方に延びる直線の像Ibは斜めに傾いた状態となる。これに対し、本実施形態では、鏡面3の下辺30は略水平な直線状であり、しかもこの下辺30の近傍には、自車の一部(リヤパンバ10)の像Iaが映る。したがって、鏡面3の下辺30を方向確認のための歪みのない基準とすれば、運転者は鏡面3に映った像の歪みに惑わされることなく、車両後退方向などを容易かつ正確に認識することが可能となる。このため、適切な運転操作を行なう上で好ましいものとなる。
【0020】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る車両のリヤアンダミラーの各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0021】
上述の実施形態では、鏡面3は、上下高さ方向において凹面とされているために、車両に近い場所の像が鏡面の下側に映り、車両から離れた位置の像が鏡面の上側に映り、視認性をよくするのに好ましいが、本発明はこれに限定されず、鏡面が上下高さ方向において、たとえば凸面や非凹凸面とされている場合にも本発明を適用することができる。なお、鏡面3を上下高さ方向において凹面とする場合には、この凹面の曲率半径を各所同一に設定することに代えて、鏡面の左右幅方向中心部からその両端部に進むにしたがって漸次小さくなるようにしてもよい。このような手段を採用すれば、曲面に映る像の上下方向の湾曲度合いを小さくすることが可能である。
【0022】
本発明における鏡面は、要は、左右幅方向において凸面状の鏡面であって、非傾斜の起立姿勢の正面視において、鏡面の下辺は左右幅方向の両端部が中央部よりも下方に下がった曲線であることにより、所定の傾斜状態での使用時には、正面視において前記下辺が略水平な直線状に見える構成であればよい。鏡面の上辺についても、両端部が中央部よりも
下方に下がった曲線とすることにより、リヤアンダミラーの使用時において略水平状の直線状に見えるように構成することが可能であり、本発明においては、このような構成をさらに採用することもできる。鏡面を傾斜状態に設定した際には、鏡面の全体が略矩形状に見えるように構成することが可能であるが、必ずしもこれに限定されず、たとえば鏡面の上辺と下辺との長さを相違させることにより全体を台形状にするなど、矩形以外の形状に見えるようにしてもよい。
【0023】
リヤアンダミラーを車両後部に取り付ける場合には、鏡面が車両の真正面を向くように設定することに代えて、たとえば運転席側を向くように設定してもよい。このような設定を行なうと、鏡面に映る像が斜めに傾くことを解消し、または緩和することが可能であり、視認性の一層の向上、および車両後退方向についての正確な判断がより容易となる利点が得られる。本発明に係る車両のリヤアンダミラーは、本発明が意図する構成の鏡面を有していればよく、具体的な材質や、車両への取り付け方法なども限定されない。本発明は、車室内に取り付けられるリヤアンダミラーに限らず、車外(車両の後方)に取り付けられるリヤアンダミラーにも適用することができる。
【符号の説明】
【0024】
A 車両のリヤアンダミラー
3 鏡面
30 下辺
30a 両端部(鏡面の下辺の)
30b 中央部(鏡面の下辺の)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7