(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6151610
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】モールド金型及び樹脂モールド装置並びに樹脂モールド方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/12 20060101AFI20170612BHJP
B29C 45/27 20060101ALI20170612BHJP
B29C 45/02 20060101ALI20170612BHJP
B29C 45/38 20060101ALI20170612BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
B29C33/12
B29C45/27
B29C45/02
B29C45/38 E
H01L21/56 T
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-184943(P2013-184943)
(22)【出願日】2013年9月6日
(65)【公開番号】特開2015-51557(P2015-51557A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 高志
【審査官】
今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−260026(JP,A)
【文献】
特開平11−145169(JP,A)
【文献】
特開2011−009589(JP,A)
【文献】
特開2012−192532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00 − 33/76
B29C 45/00 − 45/84
H01L 21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを載置する一方の金型と、金型クランプ面にキャビティ凹部が形成された他方の金型とでワークがクランプされるモールド金型であって、
前記一方の金型には、キャビティ凹部に位置を合わせて前記ワークが載置固定されるインサートブロックと、
前記インサートブロックに隣接して設けられ前記キャビティ凹部へ供給するモールド樹脂が装填されるポットが設けられ、前記インサートブロックに対して接離動可能に設けられたポットインサートと、
前記インサートブロック及び前記ポットインサートが隣接して組み付けられ、前記インサートブロックに載置されたワークを前記ポットインサートに向かってワーク端面を押動する整列ブロックを備えたチェイスブロックと、
前記一方の金型と他方の金型の型閉じ動作に合わせて、前記整列ブロックを移動させてワーク端面を押動し当該ワークの反対側端面を前記チェイスブロックより離間した前記ポットインサートの端面に押し当てる移動機構を備えており、
前記ポットインサートは、前記ワーク端面が突き当てられたままその上面を前記インサートブロックに向かって押え込むフランジ部が形成されており、当該フランジ部には前記ポットから前記キャビティ凹部に向かってモールド樹脂を供給する樹脂路が形成されていることを特徴とするモールド金型。
【請求項2】
前記ポットインサートの昇降動作並びに前記整列ブロックの移動動作は、エジェクタピンプレートのエジェクト動作と連動しており、型開き動作によって前記エジェクタピンの突出動作に伴って前記整列ブロックが前記ワークの端面から離間し前記ポットインサートが前記ワークから離れる方向に移動し、型閉じ動作によって前記エジェクタピンの退避動作に伴い前記整列ブロックが前記ワーク端面を押動し、前記ワーク端面が前記ポットインサート押し当てられたままその上面が当該ポットインサートによって押え込まれる請求項1記載のモールド金型。
【請求項3】
前記他方の金型は、前記ポットインサートに対向配置されたセンターインサートと、前記インサートブロックに対向配置され、前記キャビティ凹部が形成されたキャビティインサートが前記センターインサートに対して所定の隙間が設けられてチェイスブロックに吊り下げ支持されており、前記他方の金型には型閉じする際に前記キャビティインサートに当接して前記センターインサートに向かって押動して前記隙間を解消する押動手段が設けられている請求項1又は請求項2記載のモールド金型。
【請求項4】
前記他方の金型には、前記センターインサート及び前記キャビティインサートに設けられた樹脂路を覆うリリースフィルムが吸着保持されている請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項記載のモールド金型。
【請求項5】
前記他方の金型には前記整列ブロックに対向する位置に逃げ凹部が形成されており、当該逃げ凹部には、前記キャビティ凹部に充填されるモールド樹脂をオーバーフローキャビティが形成されている請求項1乃至請求項4のうちいずれか1項記載のモールド金型。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のうちいずれか1項記載のモールド金型と、
前記モールド金型を開閉する型開閉機構と、
前記ポットに挿入されたプランジャを作動させるトランスファ機構と、を備えたことを特徴とする樹脂モールド装置。
【請求項7】
型開きしたモールド金型のうち一方の金型のインサートブロックにワークを供給する工程と、
前記モールド金型の型閉じ動作に連動して整列ブロックによってワーク端面を押動することによって当該ワーク反対側端面をポットインサートに押し当てて整列させる工程と、
前記ポットインサートを前記ワークに接近させるように移動させてフランジ部を整列された前記ワークのゲート側ランナエリアに重ね合わせてクランプする工程と、
前記ワークを前記インサートブロックに吸着保持したまま前記モールド金型を型閉じし、ポットから溶融したモールド樹脂を前記フランジ部に形成されたランナゲートを通じて他方の金型に形成されたキャビティ凹部に充填して加熱硬化させる工程と、
加熱硬化後の前記モールド金型の型開きを開始し、前記ワークの吸着保持を解除する工程と、
前記型開き動作の進行とともに前記ポットインサートを前記フランジ部が前記ワークより離れる方向に移動させてゲートブレイクさせるとともに、前記ワークを押動していた前記整列ブロックをワーク端部より退避させる工程と、
型開きした前記モールド金型より前記成形後のワークを取り出す工程と、を含むことを特徴とする樹脂モールド方法。
【請求項8】
前記モールド金型を型閉じする際に、キャビティインサートに当接して隣接するセンターインサートに向かって押動してインサートどうしの隙間を解消する工程を有する請求項7記載の樹脂モールド方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサートブロックに載置される基板を対向配置されたセンターブロックにより位置決めしてクランプするモールド金型及び樹脂モールド装置並びに樹脂モールド方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂封止装置は、ワークを型開きしたモールド金型に搬入して位置決めした後クランプして樹脂封止される。ワークとしては、樹脂基板(有機基板)、セラミック基板やリードフレーム等(以下、単に基板と略す)が用いられ、封止樹脂と共に搬入装置に保持されてモールド金型へ搬入される。基板はモールド金型によりクランプされ、溶融したモールド樹脂が基板を横切って(横断して)キャビティに圧送されて樹脂モールドされる。
【0003】
ワークが樹脂モールドされる際に、モールド樹脂が基板端面を横切って通過すると、樹脂が基板端面(側面)に付着してハンドリングの妨げになり、後工程で不要樹脂を除去する必要が生ずる。特に、
図13に示すように粘度が低いモールド樹脂(LED用透明樹脂など)の場合、基板51端面から樹脂漏れ55が多く発生するため、オートモールド装置による自動生産が不可能になり、漏れた樹脂を除去するメンテナンス作業に時間と労力を要する。
また、
図13に示すように基板51上をキャビティ52(パッケージ部)へ供給される成形品ランナ53の剥離性を向上させるため、基板51上にランナエリアを含む金めっきエリア54の形成が必要となるが、基板51の製造コストが高くなってしまう。
【0004】
ワークの縁や端面(側面)を汚すことなく樹脂モールドする樹脂モール装置として、以下の技術が提案されている。下型のポット周囲を覆うホルダー部材を装着して、ホルダー部材によりワークをクランプすると共にホルダー部材に形成されたランナを通じてキャビティへモールド樹脂を充填することで、基板の縁や側面にモールド樹脂が付着しないようにした樹脂モールド装置が提案されている(特許文献1参照)。
また、同様に一方の金型に載置された被成形品を押えプレートによって押さえ、押えプレートとの対向面にランナゲートが形成された他方の金型を型閉じしてモールド樹脂をキャビティに充填するようにした樹脂モールド装置が提案されている(特許文献2参照)。
或いは、基板上にゲート溝を有するゲートプレートを配置して、ゲートプレートと上型、上型と下型間にキャビティの側目に連通するサイドゲートを設け、このサイドゲートを通じてモールド樹脂をキャビティに充填する樹脂モールド方法も提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−508911号公報
【特許文献2】特開平11−284002号公報
【特許文献3】特公平6−33020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1乃至3に示す樹脂モールド装置及び方法において、モールド樹脂として粘度が低い樹脂(LED用透明樹脂など)を用いた場合には、基板にホルダー部材(特許文献1)、押えプレート(特許文献2)、ゲートプレート(特許文献3)を重ね合わせたとしても、基板が金型に対して位置決めされていない、即ち、金型と基板端部との間に隙間が存在するため、流動性の高い樹脂が基板端部から漏れる可能性が解消していない。特に有機基板は基板端面精度及び外形精度が低いものもあり、金型に搬入されてプレヒートされると、基板に伸びや反りが発生し易く、また、位置決めピンの位置精度及び孔精度が低く、位置決め用のピンやブロックとの間に隙間が発生し基板の位置ずれを起こしやすい。この基板の位置ずれにより基板端面へ樹脂漏れが生じてメンテナンスのため生産停止となり装置稼動率が低下する。また、成形品の位置ずれにより不良品が発生し、成形品質が低下する。
また、ワーク(基板)を金型に載置してから、別途ホルダー部材(特許文献1)、押えプレート(特許文献2)、ゲートプレート(特許文献3)を一部重なり合うように重ね合わせるため、ワークを金型にセットするための工数がかかるうえに基板とホルダー部材等との位置合わせを行う必要があるため、作業性が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は上記従来技術の課題を解決し、ワーク端面精度や樹脂の粘度によらず、樹脂漏れを防いでメンテナンスを省力化し、高い成形品質を維持できるモールド金型及び樹脂モールド装置並びに樹脂モールド方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
即ち、ワークを載置する一方の金型と、金型クランプ面にキャビティ凹部が形成された他方の金型とでワークがクランプされるモールド金型であって、前記一方の金型には、キャビティ凹部に位置を合わせて前記ワークが載置固定されるインサートブロックと、前記インサートブロックに隣接して設けられ前記キャビティ凹部へ供給するモールド樹脂が装填されるポットが設けられ、前記インサートブロックに対して上下接離動可能に設けられたポットインサートと、前記インサートブロック及び前記ポットインサートが隣接して組み付けられ、前記インサートブロックに載置されたワークを前記ポットインサートに向かってワーク端面を押動する整列ブロックを備えたチェイスブロックと、前記一方の金型と他方の金型の型閉じ動作に合わせて、前記整列ブロックを移動させてワーク端面を押動し当該ワークの反対側端面を前記チェイスブロックより離間した前記ポットインサートの端面に押し当てる移動機構を備え
ており、前記ポットインサートは、前記ワーク端面が突き当てられたままその上面を前記インサートブロックに向かって押え込むフランジ部が形成されており、当該フランジ部には前記ポットから前記キャビティ凹部に向かってモールド樹脂を供給する樹脂路が形成されていることを特徴とする。
【0009】
上記モールド金型を用いれば、ワークをインサートブロックに載置してモールド金型を型閉じする際に、整列ブロックを移動させてワーク端面を押動し当該ワークの反対側端面をチェイスブロックより離間した位置にあるポットインサートの端面に押し当てることでワークのランナゲート側端面とポットインサート間に隙間が生ずることがなく整列させることができる。
また、ワークは整列状態でポットインサートのフランジ部とインサートブロックに挟み込まれた状態で、フランジ部に形成された樹脂路を通じてキャビティ凹部に向かってモールド樹脂を供給することができるので、ワーク端面精度や樹脂粘度によらずワークと金型間の隙間から樹脂漏れするのを防ぐことができる。
【0011】
前記フランジ部には、前記樹脂路を形成するテーパー部の傾斜と交差し前記キャビティ凹部の側壁面をする逆テーパー部が形成されていると、樹脂モールド後に型開きとともにポットインサートがインサートブロックより離れる方向に移動すると、成形品のうちテーパー部と逆テーパー部の交差する部位に応力集中が生じて成形品から不要樹脂を確実にゲートブレイクすることができる。
【0012】
前記ポットインサートの昇降動作並びに整列ブロックの移動動作は、エジェクタピンプレートのエジェクト動作と連動しており、型開き動作によって前記エジェクタピンの突出動作に伴って前記整列ブロックが前記ワークの端面から離間し前記ポットインサートが前記ワークから離れる方向に移動し、型閉じ動作によって前記エジェクタピンの退避動作に伴い前記整列ブロックが前記ワーク端面を押動し、前記ワーク端面が前記ポットインサート押し当てられたままその上面が当該ポットインサートによって押え込まれることが好ましい。
これにより、成形品を金型から離型させるエジェクタピンの昇降動作を利用してポットインサートをワークに対して昇降させてワークの位置決めと成形品のゲートブレイク動作を行わせることができ、モールド金型が有するエジェクタ機構を改変するだけで、ワークの位置決め及び成形品の離型を行うことができる。
【0013】
前記他方の金型は、前記ポットインサートに対向配置されたセンターインサートと、前記インサートブロックに対向配置され、前記キャビティ凹部が形成されたキャビティインサートが前記センターインサートに対して所定の隙間が設けられてチェイスブロックに吊り下げ支持されており、前記他方の金型には型閉じする際に前記キャビティインサートに当接して前記センターインサートに向かって押動して前記隙間を解消する押動手段が設けられていることが好ましい。
これにより、モールド金型を型閉じする際に、キャビティインサートのポット側側面が対向するセンターインサートの側面に隙間なく押し当てることができ、フィラー径の小さい樹脂や粘度の低い樹脂の樹脂漏れを防ぐことができる。
【0014】
前記他方の金型には、前記センターインサート及び前記キャビティインサートに設けられた樹脂路を覆うリリースフィルムが吸着保持されていると、金型面の樹脂汚れが発生せず、しかも金型間の隙間からの樹脂漏れを防ぐことができる。
【0015】
前記他方の金型には前記整列ブロックに対向する位置に逃げ凹部が形成されており、当該逃げ凹部には、前記キャビティ凹部に充填されるモールド樹脂をオーバーフローキャビティが形成されていてもよい。
この場合には、モールド樹脂が確実にキャビティ凹部に充填され、かつ成形品にボイドの発生も少なくなる。
【0016】
樹脂モールド装置においては、上述したモールド金型と、前記モールド金型を開閉する型開閉機構と、前記ポットに挿入されたプランジャを作動させるトランスファ機構と、を備えたことを特徴とする。
これにより、ワーク端面精度や樹脂粘度によらず成形品質を安定させ、金型メンテナンスも軽減することができる。また、ワークのランナ部に金めっきエリアを省略することができるので、製品コストを下げることができる。
【0017】
樹脂モールド方法においては、型開きしたモールド金型のうち一方の金型のインサートブロックにワークを供給する工程と、前記モールド金型の型閉じ動作に連動して整列ブロックによってワーク端面を押動することによって当該ワーク反対側端面をポットインサートに押し当てて整列させる工程と、前記ポットインサートを前記ワークに接近させるように移動させてフランジ部を整列された前記ワークのゲート側ランナエリアに重ね合わせてクランプする工程と、前記ワークを前記インサートブロックに吸着保持したまま前記モールド金型を型閉じし、ポットから溶融したモールド樹脂を前記フランジ部に形成されたランナゲートを通じて他方の金型に形成されたキャビティ凹部に充填して加熱硬化させる工程と、加熱硬化後の前記モールド金型の型開きを開始し、前記ワークの吸着保持を解除する工程と、前記型開き動作の進行とともに前記ポットインサートを前記フランジ部が前記ワークより離れる方向に移動させてゲートブレイクさせるとともに、前記ワークを押動していた前記整列ブロックをワーク端部より退避させる工程と、型開きした前記モールド金型より前記成形後のワークを取り出す工程と、を含むことを特徴とする。
これにより、ワーク端面精度や樹脂粘度によらず成形品質を安定させ、成形品の離型動作やゲートブレイクを確実に行うことができ、金型メンテナンスも軽減することができる。
また、前記モールド金型を型閉じする際に、キャビティインサートに当接して隣接するセンターインサートに向かって押動してインサートどうしの隙間を解消する工程を有していてもよい。
【発明の効果】
【0018】
上記モールド金型を用いれば、ワーク端面精度や樹脂粘度によらずワークと金型間の隙間から樹脂漏れするのを防ぐことができる。よって、樹脂漏れを防いでモールド金型のメンテナンスを省力化し、高い成形品質を維持することができる。また、樹脂モールド装置、樹脂モールド方法においては、ワーク端面精度や樹脂粘度によらず成形品質を安定させ、成形品の離型動作やゲートブレイクを確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】樹脂モールド装置の型開き状態の断面説明図である。
【
図2】樹脂モールド動作の工程を示す断面説明図である。
【
図3】
図2に続く樹脂モールド動作の工程を示す断面説明図である。
【
図4】
図3に続く樹脂モールド動作の工程を示す断面説明図である。
【
図5】
図4に続く樹脂モールド動作の工程を示す断面説明図である。
【
図6】
図5に続く樹脂モールド動作の工程を示す断面説明図である。
【
図7】
図6に続く樹脂モールド動作の工程を示す断面説明図である。
【
図8】
図7に続く樹脂モールド動作の工程を示す断面説明図である。
【
図9】
図8に続く樹脂モールド動作の工程を示す断面説明図である。
【
図10】他例に係る樹脂モールド装置の型閉じ状態の断面説明図である。
【
図11】他例に係る樹脂モールド装置の型開き状態の断面説明図である。
【
図12】下型の正面図及び平面図、並びにモールド金型の断面説明図である。
【
図13】従来の課題を示すワーク及びモールド金型の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るモールド金型及び樹脂モールド装置の好適な実施の形態について添付図面と共に詳述する。以下の実施形態では、基板として有機基板を用い、上型側にキャビティ凹部が形成され下型側にポットが形成されるトランスファモールド用のモールド金型及び樹脂モールド装置について説明する。
【0021】
図1において、樹脂モールド装置は、可動型である下型1(一方の金型)と固定型である上型2(他方の金型)を備えたモールド金型3と、モールド金型3を開閉する型開閉機構(電動モータ、トグルリンク機構等;図示せず)と、下型2に備えたポット4に挿入されたプランジャ5を作動させるトランスファ機構と、を備えている。以下、モールド金型3の構成を具体的に説明する。
【0022】
下型1には、キャビティ凹部に位置を合わせてワークが載置固定される下型インサートブロック6と、下型インサートブロック6に隣接して設けられキャビティ凹部へ供給するモールド樹脂が装填されるポット4が設けられ、下型インサートブロック6に対して昇降可能に設けられたポットインサート7と、これらが組み付けられる下型チェイスブロック8を備えている。
【0023】
下型チェイスブロック8は、下型インサートブロック6に載置されたワークWをポットインサート7に向かってワーク端面を押動する整列ブロック9と、モールド金型1の型閉じ動作に合わせて、整列ブロック9を移動させてワーク端面を押動し当該ワークの反対側端面を下型インサートブロック6より上昇したポットインサート7の端面に押し当てる移動機構10を備えている。
【0024】
ポットインサート7は、ワーク端面が突き当てられたままその上面を下型インサートブロック6に向かって押え込むフランジ部7aが形成されている。当該フランジ部7aの上面にはポット4からキャビティ凹部に向かってモールド樹脂を供給する樹脂路(テーパー部7b;ランナゲート)が周縁部に向かって下方に傾斜するように彫り込まれている。また、フランジ部7aの下面には、樹脂路を形成するテーパー部7bの傾斜と交差しキャビティ凹部の側壁面を
形成する逆テーパー部7cが上方に傾斜するように彫り込まれている。
【0025】
ポットインサート7は、中央部に筒状のポット4が長手方向に複数箇所(
図12(B)では5カ所)に一体に組み付けられ、各ポット4内にはプランジャ5が昇降可能に挿入されている。また、ポットインサート7は、支持ピン7dにより支持されており、支持ピン7dは、ポット付勢ピン7eによって支持されている。支持ピン7dの外周には当該支持ピン7dを押し下げる向きに付勢されたコイルばね7fが嵌め込まれている。ポット付勢ピン7eは下型チェイスブロック8より下方に設けられた図示しないエジェクタピンプレートに立設されている。よって、型開きする際にエジェクタピンが下型クランプ面より突き出す際に、支持ピン7dはポット付勢ピン7eによって上方に向かって押し上げられる。
【0026】
下型インサートブロック6には、ワークWを吸着保持する吸引孔6aが設けられている。吸引孔6aは図示しない吸引装置に接続されている。整列ブロック9は、下型インサートブロック6のワーク搭載エリア6bの外側にスライド可能に設けられている。整列ブロック9には、ワークWの外側端面に押し当てられた際に、ワーク上面を押さえる爪部9aが形成されている。
【0027】
整列ブロック9は、移動機構10により下型インサートブロック6の上面に沿ってスライドする。整列ブロック9には嵌合孔9bが設けられており、該嵌合孔9bには揺動ピン10aの先端が嵌め込まれている。揺動ピン10aは、下型チェイスブロック8上に支点10bを中心に揺動可能に支持されている。具体的には、揺動ピン10aの支点10bが設けられた当接部10cの一方端には、コイルばね10dが当接している。このコイルばね10dは、揺動ピン10aを支点10bを中心として反時計回り方向へ常時付勢している。また、当接部10cの他方端には、揺動支持ピン10eが当接している。揺動支持ピン10eは、下型チェイスブロック8より下方に設けられた図示しないエジェクタピンプレートに立設されている。整列ブロック9は、
図12(B)に示すようにワークWの外側端面に沿って長手方向に4か所に設けられている。
【0028】
また、下型インサートブロック6上に設けられた整列ブロック9の外側近傍には、押動ブロック11(押動手段)が下型インサートブロック6の上面より突出して設けられている。押動ブロック11は支持ブロック12に一体に支持されており、支持ブロック12は、下型チェイスブロック8との間に設けられたコイルばね12aによって上方に付勢されている。押動ブロック11には傾斜面(テーパー面)11aが形成されている。この傾斜面11aは、後述する上型キャビティインサートに設けられた傾斜面とリリースフィルム16を介して当接するようになっている。押動ブロック11は、
図12(B)に示すように下型インサートブロック6の幅方向で外側側面のコーナー部近傍に2カ所ずつ合計4か所に設けられている。
【0029】
上述したポットインサート7の昇降動作と整列ブロック9のスライド動作は、エジェクタピンプレートによるエジェクト動作と連動して行われる。即ち、モールド金型3の型開き動作によってエジェクタピン(図示せず)が下型クランプ面より突出し、整列ブロック9がワークWの端面から離間しポットインサートブロック7が下型チェイスブロック8から離間するように押し上げられる。
また、モールド金型3の型閉じ動作によってエジェクタピン(図示せず)が下型クランプ面より退避し、整列ブロック9がワークWの外側端面を押動し、下型チェイスブロック8に近づいてワークWの端面が下型チェイスブロック8に押し当てられたままその上面がフランジ部7aによって下型インサートブロック6に向かって押え込まれる。
なお、エジェクタピンプレートにポット付勢ピン7e、揺動支持ピン10eなどを設ける代わりに、個別の駆動手段(シリンダ、ソレノイド等)を設けて行ってもよい。
【0030】
上型2は、ポットインサート7に対向配置された上型センターインサート13と、下型インサートブロック6に対向配置され、第一キャビティ凹部14a(パッケージ部成形)とそれより深い第二キャビティ凹部14b(レンズ部成形)が形成された上型キャビティインサート14が上型センターインサート13に対して所定の隙間G(例えば2〜3mm程度)が設けられて上型チェイスブロック15に吊り下げ支持されている。
【0031】
上型センターインサート13のポット対向面には、樹脂路となる上型カル13a及び上型ランナゲート13bが彫り込まれている。上型センターインサート13は、コイルばね13cを介して上型チェイスブロック15に吊り下げ支持されている。
上型キャビティインサート14は、キャビティインサート14Aとキャビティ底部を構成するキャビティ駒14Bを備えている。キャビティインサート14Aとキャビティ駒14Bは、上型チェイスブロック15にコイルばねを介して吊り下げ支持されていてもよい。キャビティインサート14Aには、ランナゲート14cと第一キャビティ凹部14a、整列ブロック9の逃げ凹部14d、押動ブロック11の傾斜面11aに当接する傾斜面(テーパー面)14eが形成されている。
またキャビティ駒14Bには、第一キャビティ凹部14aの底部と第二キャビティ凹部14bが形成されている。キャビティインサート14Aは、上型チェイスブロック15に対して突き当てピン14fとその周囲に設けられたコイルばね14gによって上型センターインサート13に向かって付勢されている。
【0032】
また、上型センターインサート13及び上型キャビティインサート14を含む上型クランプ面には、リリースフィルム16が吸着保持される。リリースフィルム16は、厚さ0.5mm程度で耐熱性を有するもので、金型面より容易に剥離するものであって、柔軟性、伸展性を有するもの、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEPフィルム、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニリジン等を主成分とした単層又は複層膜が好適に用いられる。なお、ワーク端面精度が高い場合や、フィラー径の大きなモールド樹脂を用いる場合には、リリースフィルム16を省略することも可能である。
【0033】
上記モールド金型3を型閉じする際、下型1に設けられた押動ブロック11の傾斜面11aがリリースフィルム16を介して上型キャビティインサート14の傾斜面14eに当接して上型センターインサート13に向かって押動して隙間Gを解消する(
図5参照)。これにより、上型センターインサート13の上型ランナゲート13bと上型キャビティインサート14(キャビティインサート14A)のランナゲート14cとの隙間を解消して樹脂漏れを防ぐことができる。
また、押動ブロック11は上型キャビティインサート14にリリースフィルム16を介して押動することにより、リリースフィルム16のテンションの作用し難い幅方向の皺伸ばし効果も得られる。
【0034】
図12(A)に下型1の正面図を示す。ポットインサート7及び下型インサートブロック6は、下型チェイスブロック8に組み付けられ、長手方向両側にエンドブロック18A,18Bで位置決めされている。また、下型チェイスブロック8の周縁部には、下型ロックブロック8a,8bが対向して設けられている。これらは、上型2に上型チェイスブロック15に設けられる上型ロックブロック(図示せず)と噛み合って位置合わせするようになっている。
【0035】
図12(C)において、モールド金型3が型開きした状態では、図示しないエジェクタピンプレートはエジェクト動作、即ちエジェクタピンを下型クランプ面より突き出した状態にあることから、ポット付勢ピン7eが下型チェイスブロック8より突き出して支持ピン7dをコイルばね7fの付勢に抗して突き上げて、ポットインサート7を下型チェイスブロック8から離れた状態で支持する。このときフランジ部7aは下型インサート6に載置されたワークWから離間した状態にある(
図12(A)参照)。
【0036】
また、揺動支持ピン10eが下型チェイスブロック8より突き出して揺動ピン10aを支点10bを中心に時計回り若しくは反時計回り方向に回転させて、ワークWの両側に対向配置された整列ブロック9をワークWの端面から離れた外側へ下型インサートブロック6上をスライドさせる。これにより、下型インサートブロック6のワーク搭載エリア6bの上方を開放してワークWを載置することができる。
【0037】
ここで、樹脂モールド方法の一例について
図2乃至
図9を参照して説明する。ポットインサート7の両側に供給されるワークWのうち一方側を例示して説明するものとする。
図2において、型開きしたモールド金型3のうち下型インサートブロック6のワーク搭載エリア6bにワークWが供給される。また、ポット4内には、モールド樹脂(液状樹脂、顆粒状樹脂、粒体樹脂(パウダー状樹脂)、シート樹脂、タブレット樹脂等)が供給される。
このとき、前述したように図示しないエジェクタピンプレートはエジェクト動作にあるため、ポットインサート7は上昇位置にありフランジ部7aと下型インサート6は離間した状態にある。また、整列ブロック9はワーク搭載エリア6bから離れた位置にある。
【0038】
次に
図3において、モールド金型3の型閉じ動作を開始する。即ち図示しない型開閉機構を作動させて、可動型である下型1を上型2に接近させる。このとき、図示しないエジェクタピンプレートはエジェクト動作を終了させるため、ポット付勢ピン7eが下型チェイスブロック8の内部へ退避し支持ピン7dがコイルばね7fの付勢によって押し戻されるため、ポットインサート7が下型チェイスブロック8に接近し始める。
また、揺動支持ピン10eが下型チェイスブロック8の内部へ退避しコイルばね10dの付勢により揺動ピン10aが支点10bを中心に反時計回り方向に回転して、整列ブロック9をワークWの端面に当接させたままスライドさせて押動しワークWの反対側端面をポットインサート7に突き当てて整列させる。
【0039】
図4において、モールド金型3の型閉じが進行すると、ポットインサート7が下型チェイスブロック8に接近させるように下降してフランジ部7aが整列されたワークWのゲート側ランナエリアに重ね合わせてクランプする。このとき、整列ブロック9はワークWの端面を押動したままの状態にある。この状態で、図示しない吸引装置を作動させて、ワークWを下型インサートブロック6の吸引孔6aより吸引してワーク吸着エリア6bに吸着保持する。
【0040】
また、
図5に示すように第一キャビティ凹部14a及び第二キャビティ凹部14bを含む上型2のクランプ面には、リリースフィルム16が吸着保持される。また、モールド金型3を型閉じする際に、押動ブロック11の傾斜面11aがリリースフィルム16を介して上型キャビティインサート14(キャビティインサート14A)の傾斜面14eに当接しながら型閉じすることにより、当該上型キャビティインサート14を上型センターインサート13に向かって押動してインサートどうしの隙間Gを解消する。
また、押動ブロック11の傾斜面11aが、リリースフィルム16を介して傾斜面14aをスライドすることでリリースフィルム16の皺伸ばし効果が得られる。なお、整列ブロック9は、キャビティインサート14Aの逃げ凹部14dに収容されるので、金型クランプ動作に支障はない。
【0041】
そして、金型クランプ状態でトランスファ機構を作動させて、ポット4から溶融したモールド樹脂を、フランジ部7aに形成されたランナゲート、具体的には上型カル13a、上型ランナゲート13b、ランナゲート14cを通じて第一キャビティ凹部14a更には第二キャビティ凹部14bへ充填し、加熱硬化させる。
【0042】
次に、
図6において、加熱硬化後のモールド金型3の型開きを開始する。下型インサートブロック6の吸引孔6aの吸引動作を停止し、ワークWのワーク吸着エリア6bへの吸着保持を解除する。リリースフィルム16は上型クランプ面に吸着保持されており、ワークWは下型インサートブロック6に吸着され、整列ブロック9の爪部9aがワークWを押さえているので、下型1が下降すると、リリースフィルム16が成形品17より離型(剥離)する。
押動ブロック11(傾斜面11a)がリリースフィルム16を介して上型キャビティインサート14(キャビティインサート14A)の傾斜面14eとの当接状態を外れると、上型キャビティインサート14が上型センターインサート13から離れて隙間Gが形成される。また、リリースフィルム16の吸引を停止しエアーを噴出させるかテンションを強めること或いはこれらを併用することでリリースフィルム16を上型クランプ面より剥離させる。
【0043】
次に、
図7において、モールド金型3の型開き動作が進行すると、図示しないエジェクタピンプレートのエジェクト動作が進行し、ポット付勢ピン7eが下型チェイスブロック8より突き出して支持ピン7dをコイルばね7fの付勢に抗して突き上げて、ポットインサート7が下型チェイスブロック8より離れる向きに移動する。このとき、樹脂路が形成されたフランジ部7aがワークWより離れることで、成形品17のうち不要樹脂17bと製品17aとの境界部に応力集中が生ずる。フランジ部7aに形成されたテーパー部7bと逆テーパー部7cが先細り状に交差するように形成されているため、不要樹脂17bと製品17aとの境界部に応力集中が生じ易くなっている。
【0044】
また、
図8に示すように、揺動支持ピン10eが下型チェイスブロック8より突き出して揺動ピン10aを支点10bを中心に時計回り方向に回転させて、ワークWの端面に当接して押動していた整列ブロック9がワークWに端面から退避した位置へ下型インサートブロック6上をスライドする。
【0045】
モールド金型3の型開きが更に進行すると、
図9に示すように、ポットインサート7に形成された不要樹脂17bと製品17aが境界部からゲートブレイクする。そして、ワークWをワーク搭載エリア6bから取り出すことで製品17aがモールド金型3から取り出される。また、不要樹脂17bは、ポットインサート7のフランジ部7aから分離することで廃棄される。
【0046】
上記樹脂モールド装置及び方法によれば、ワーク端面精度や樹脂粘度によらず成形品質を安定させ、成形品の離型動作やゲートブレイクを確実に行うことができ、金型メンテナンスも軽減することができる。
【0047】
次に、モールド金型3の他例について
図10及び
図11を参照して説明する。なお、前述した実施例と同一部材には同一番号を付して詳細説明を援用するものとする。
図11に示すように、上型キャビティインサート14に形成された整列ブロック9に対向する逃げ凹部14dには、それより深さが深いがオーバーフローキャビティ14hが形成されている。
【0048】
図10に示すように、モールド金型3を型閉じしてワークWをクランプした状態で、トランスファ機構を作動させると、モールド樹脂がポット4から上型カル13a、上型ランナゲート13b、ランナゲート14cを通じて第一キャビティ凹部14a更には第二キャビティ凹部14bへ充填され、第一キャビティ凹部14aのゲート側と反対側(外端側)から整列ブロック9の爪部9aの上面を通過して逃げ凹部14d更にはオーバーフローキャビティ14hへオーバーフローさせた状態で加熱硬化させる。
これにより、第一キャビティ凹部14a及び第二キャビティ凹部14bへ混入したボイドを押し出してモールド樹脂の充填性を高めることができ、成形品質を向上させることができる。なお、オーバーフローした不要樹脂17cは、整列ブロック9の上面に成形されるため、型開きにより整列ブロック9がワークWより離れる方向にスライドする動作によって、製品17aより分離する。
【0049】
上述したモールド金型3を用いれば、ワーク端面精度や樹脂粘度によらずワークWと金型間の隙間から樹脂漏れするのを防ぐことができる。よって、樹脂漏れを防いでモールド金型3のメンテナンスを省力化し、高い成形品質を維持することができる。また、樹脂モールド装置、樹脂モールド方法においては、ワーク端面精度や樹脂粘度によらず成形品質を安定させ、成形品17の離型動作やゲートブレイクを確実に行うことができる。
【0050】
上記モールド金型においては、上型2を固定型、下型1を可動型としたが、上型2が可動型、下型1が固定型であってもよいし、双方を可動型としてもよい。また、ポット4が上型2に形成され、キャビティ凹部が下型1に形成されていてもよい。
また、ワークWはLED用樹脂を用いた基板に限らず、半導体チップが基板上にフリップチップ接続、ワイヤボンディング接続されたものなど他の成形品に対しても用いることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 下型 2 上型 3 モールド金型 4 ポット 5 プランジャ 6 下型インサートブロック 6a 吸引孔 6b ワーク搭載エリア 7 ポットインサート 7a フランジ部 7b テーパー部 7c 逆テーパー部 7d 支持ピン 7e ポット付勢ピン 7f コイルばね 8 下型チェイスブロック 9 整列ブロック 9a 爪部 9b 嵌合孔 10 移動機構 10a 揺動ピン 10b 支点 10c 当接部 10d コイルばね 10e 揺動支持ピン 11 押動ブロック 11a 傾斜面 12 支持ブロック 12a コイルばね 13 上型センターインサート 13a 上型カル 13b 上型ランナゲート 13c コイルばね 14 上型キャビティインサート 14A キャビティインサート 14B キャビティ駒 14a 第一キャビティ凹部 14b 第二キャビティ凹部 14c ランナゲート 14d 逃げ凹部 14e 傾斜面 14f 突き当てピン 14g コイルばね 14h オーバーフローキャビティ 15 上型チェイスブロック 16 リリースフィルム 17 成形品 17a 製品 17b,17c 不要樹脂 18A,18B エンドブロック