特許第6151641号(P6151641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6151641撮像装置、撮像システム、撮像方法および画像処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6151641
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】撮像装置、撮像システム、撮像方法および画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/225 20060101AFI20170612BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20170612BHJP
   G06T 5/00 20060101ALI20170612BHJP
   G03B 15/00 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   H04N5/225 400
   H04N5/232 290
   G06T5/00 710
   G03B15/00 H
   G03B15/00 N
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-526269(P2013-526269)
(86)(22)【出願日】2012年12月10日
(86)【国際出願番号】JP2012007863
(87)【国際公開番号】WO2013088690
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2015年5月28日
(31)【優先権主張番号】特願2011-271357(P2011-271357)
(32)【優先日】2011年12月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】河村 岳
【審査官】 藤原 敬利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−039448(JP,A)
【文献】 特開2008−245157(JP,A)
【文献】 特開2006−184844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/222− 5/257
G02B 5/00 − 5/136
G03B 15/00 −15/035
G03B 15/06 −15/16
G06T 1/00 − 1/40
G06T 3/00 − 5/50
G06T 9/00 − 9/40
H04N 1/40 − 1/409
H04N 1/46 , 1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影シーンの奥行きを示すデプスデータと、被写界深度を拡大しつつ前記被写界深度の範囲の光学ぼけが低減された復元画像データとを得るための画像を撮影する撮像装置であって、
回転非対称な形状の光学ぼけを有する格子状焦点レンズと、
前記格子状焦点レンズの一部または全部を回転させるアクチュエータと、
前記格子状焦点レンズが回転するたびに画像を撮影することにより、複数の撮影画像データを生成する撮像部とを備える
撮像装置。
【請求項2】
前記光学ぼけは、PSF(Point Spread Function)によって表され、
前記格子状焦点レンズは、前記PSFが奥行きに応じて変化するように構成されている
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記格子状焦点レンズは、空間周波数領域において前記PSFの一部の周波数成分の値が所定閾値以下となる周波数が1箇所以上存在するように構成されている
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記格子状焦点レンズは、空間周波数領域において前記PSFの一部の周波数成分の値が所定閾値以下となる周波数の値および数の少なくとも一方が奥行きに応じて変化するように構成されている
請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記格子状焦点レンズは、空間領域において前記PSFが複数のピークを有するように構成されている
請求項2〜4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記格子状焦点レンズは、互いに合焦位置が異なる複数の領域を有するレンズを含む
請求項1〜5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記格子状焦点レンズは、複数の開口が形成されたアパチャを含む
請求項1〜6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
撮像システムであって、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の撮像装置と、
前記撮像装置により生成された複数の撮影画像データを処理することにより、前記デプスデータと前記復元画像データとを生成する画像処理装置とを備え、
前記画像処理装置は、
前記複数の撮影画像データのうちの少なくとも1つの撮影画像データにおいて空間周波数成分の値が所定閾値以下となる周波数に基づいて前記デプスデータを生成するデプスデータ生成部と、
前記複数の撮影画像データに対応する光学ぼけに基づいて、前記複数の撮影画像データに対して復元処理を行うことにより、前記復元画像データを生成する復元処理部とを備える
撮像システム。
【請求項9】
回転非対称な形状の光学ぼけを有する格子状焦点レンズと、前記格子状焦点レンズを回転させるアクチュエータとを備える撮像装置を用いて、撮影シーンの奥行きを示すデプスデータと被写界深度を拡大しつつ前記被写界深度の範囲の光学ぼけが低減された復元画像データとを得るための画像を撮影する撮像方法であって、
画像を撮影する第1撮影ステップと、
前記アクチュエータを介して、前記格子状焦点レンズの一部または全部を回転させる回転ステップと、
前記格子状焦点レンズが回転された後に画像を撮影する第2撮影ステップとを含む
撮像方法。
【請求項10】
回転非対称な形状の光学ぼけを有する格子状焦点レンズと、前記格子状焦点レンズを回転させるアクチュエータとを備える撮像装置を用いて画像を撮影し、撮影された画像を処理する画像処理方法であって、
画像を撮影することにより、第1撮影画像データを生成する第1撮影ステップと、
前記アクチュエータを介して、前記格子状焦点レンズの一部または全部を回転させる回転ステップと、
前記格子状焦点レンズが回転された後に画像を撮影することにより、第2撮影画像データを生成する第2撮影ステップと、
前記第1および前記第2撮影画像データのうちの少なくとも一方において空間周波数成分の値が所定閾値以下となる周波数に基づいて、撮影シーンの奥行きを示すデプスデータを生成するデプスデータ生成ステップと、
前記第1および前記第2撮影画像データに対応する光学ぼけに基づいて、前記第1および前記第2撮影画像データに対して復元処理を行うことにより、被写界深度を拡大しつつ前記被写界深度の範囲の光学ぼけが低減された復元画像データを生成する復元ステップとを含む
画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置、撮像システム、撮像方法および画像処理方法に関し、特に撮影シーンの奥行きを示すデプスデータと光学ぼけが低減された復元画像データとを得るための撮像装置、撮像システム、撮像方法および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学ぼけを低減し、合焦範囲を拡大する被写界深度拡大(EDOF:Extended Depth of Field)技術として、主として以下の2つのアプローチが存在する。
【0003】
1つ目のアプローチは、奥行きによって変化しない単一の点像分布関数(PSF:Point Spread Function)を利用する技術である。具体的には、奥行きによって変化しないPSFが得られるように構成された光学系を用いて画像を撮影する。そして、単一のPSFを用いて撮影画像に対する復元処理を行う。これを以下、デプス・インバリアントな手法と称する。
【0004】
本アプローチにおいて最も効率が高い方法の1つとして、合焦位置を変化させながら撮影された画像を用いる方法(Focal SweepもしくはFlexible Depth of Field(F−DOF))が提案されている(非特許文献1を参照)。
【0005】
2つ目のアプローチは、奥行きによって変化するPSFを利用する技術である。具体的には、撮影シーンの奥行き(デプスデータ)を検出するとともに、検出された奥行きに対応するPSFを用いて撮影画像に対する復元処理を行う。これを以下、デプス・バリアントな手法と称する。
【0006】
本アプローチにおいて提案されている代表的な方法として、符号化アパチャ(Coded Aperture)、あるいは格子状焦点レンズ(Lattice Focal Lens)を用いて撮影された画像を用いる方法が提案されている(非特許文献2および3を参照)。特に、格子状焦点レンズは、両アプローチを通じて、最も効率よく被写界深度を拡大できることが知られている。
【0007】
さらに本アプローチにおいては、デプス・インバリアントな手法では得られない、デプスデータが同時に得られるというメリットもある。
【0008】
このようなEDOF技術によって、撮影画像の焦点が外れた領域における光学ぼけを低減することができ、撮影画像の被写界深度を拡大することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】"Flexible Depth of Field Photography", H. Nagahara, S. Kuthirummal, C. Zhou, and S. K. Nayar, European Conference on Computer Vision (ECCV), Oct, 2008
【非特許文献2】"4D Frequency Analysis of Computational Cameras for Depth of Field Extension", Anat Levin, Samuel W. Hasinoff, Paul Green, Fredo Durand, and William T. Freeman ACM Transactions on Graphics (Proc. SIGGRAPH 2009)
【非特許文献3】"Image and Depth from a Conventional Camera with a Coded Aperture", Anat Levin, Rob Fergus, Fredo Durand, William T. Freeman ACM Transactions on Graphics (Proc. SIGGRAPH 2007)
【非特許文献4】"Coded Aperture Pairs for Depth from Defocus", C. Zhou, S. Lin, and S. K. Nayar, IEEE International Conference on Computer Vision (ICCV), Oct, 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来の技術において、復元処理された撮影画像(以下、「復元画像」と呼ぶ)の画質が低い場合がある。
【0011】
そこで、本発明は、復元画像を撮影画像から得る場合に、復元画像の画質を向上させることができる撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係る撮像装置は、撮影シーンの奥行きを示すデプスデータと、被写界深度を拡大しつつ前記被写界深度の範囲の光学ぼけが低減された復元画像データとを得るための画像を撮影する撮像装置であって、回転非対称な形状の光学ぼけを有する格子状焦点レンズと、前記格子状焦点レンズの一部または全部を回転させるアクチュエータと、前記格子状焦点レンズが回転するたびに画像を撮影することにより、複数の撮影画像データを生成する撮像部とを備える。
【0013】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたは記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様に係る撮像装置によれば、復元画像の画質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施の形態に係る撮像システムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、実施の形態に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施の形態に係る光学デバイスに含まれるレンズの一例を示す外観図である。
図4図4は、実施の形態に係る光学デバイスの一例を説明するための図である。
図5図5は、実施の形態に係る光学デバイスの光学ぼけの一例を示す図である。
図6図6は、実施の形態に係る光学デバイスに含まれるアパチャの一例を示す外観図である。
図7図7は、実施の形態に係る光学デバイスの回転の一例を示す図である。
図8図8は、実施の形態に係る撮像装置の処理動作を示すフローチャートである。
図9図9は、実施の形態に係る撮像装置の処理動作を説明するための図である。
図10図10は、実施の形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
図11図11は、実施の形態に係る画像処理装置の処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(本発明の基礎となった知見)
本発明者は、上記のデプス・バリアントな手法では、デプス・インバリアントな手法と比べて、復元処理によって得られる復元画像の画質が低いという課題があることを見出した。以下に、その課題について説明する。
【0017】
上記のデプス・バリアントな手法では、撮影画像の空間周波数成分の値がゼロまたはゼロに近い値になる特性を利用して、撮影シーンの奥行き(デプスデータ)が検出される。つまり、光学デバイスは、撮影画像において一部の周波数成分が欠落または著しく損失するように構成される必要がある。
【0018】
このように一部の空間周波数成分が欠落または著しく失われた撮影画像に対して復元処理を行っても、該当の空間周波数成分を復元することができない。その結果、復元画像の画質が低くなる。具体的には、該当の空間周波数成分をもった被写体が撮像されたとき、その部分はぼけた状態で復元されるか、もしくはリンギングの生じた状態で復元されるかのいずれかである。
【0019】
そこで、本発明は、ぼけが低減された復元画像を撮影画像から得る場合に、復元画像の画質を向上させるための画像を撮影することができる撮像装置もしくは撮像方法、または復元画像の画質を向上させることができる撮像システムもしくは画像処理方法を提供する。
【0020】
本発明の一態様に係る撮像装置は、撮影シーンの奥行きを示すデプスデータと、光学ぼけが低減された復元画像データとを得るための画像を撮影する撮像装置であって、回転非対称な形状の光学ぼけを有する光学デバイスと、前記光学デバイスの一部または全部を回転させるアクチュエータと、前記光学デバイスが回転するたびに画像を撮影することにより、複数の撮影画像データを生成する撮像部とを備える。
【0021】
この構成によれば、光学デバイスは回転非対称な形状の光学ぼけを有する。つまり、回転前の光学デバイスの光学ぼけと、回転後の光学デバイスの光学ぼけとは、2次元平面空間における光学特性が互いに異なる。したがって、光学デバイスが回転するたびに撮影された複数の画像において、2次元平面空間上で光学ぼけによって失われる画像成分も互いに異なる。よって、複数の撮影画像データは、光学ぼけによって失われる画像成分を互いに補完することができる。このような複数の撮影画像データを用いて復元画像データが生成されれば、復元画像の画質を向上させることが可能となる。
【0022】
さらに、この構成によれば、光学デバイスを単純に回転させることにより、光学デバイスの光学ぼけを変化させることができる。したがって、画像を撮影するために光学デバイスをわざわざ交換する必要がなく、デプスデータと復元画像データとを得るための画像を容易に撮影することが可能となる。また、光学デバイスの光学ぼけの形状を比較的短時間に変化させることができ、応答性にすぐれた撮像装置を実現することができる。
【0023】
また、前記光学ぼけは、PSF(Point Spread Function)によって表され、前記光学デバイスは、前記PSFが奥行きに応じて変化するように構成されていることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、PSFを奥行きに応じて変化させることができる。つまり、PSFが奥行きに応じて変化しないように光学デバイスを構成する必要がないので、光学デバイスの構成を簡易にすることが可能となる。
【0025】
また、前記光学デバイスは、空間周波数領域において前記PSFの一部の周波数成分の値が所定閾値以下となる周波数が1箇所以上存在するように構成されていることが好ましい。
【0026】
この構成によれば、空間周波数領域においてPSFの一部の周波数成分の値が所定閾値以下となる周波数を存在させることができる。したがって、光学デバイスの設計あるいは構成を容易にすることができる。
【0027】
また、前記光学デバイスは、空間周波数領域において前記PSFの一部の周波数成分の値が所定閾値以下となる周波数の値および数の少なくとも一方が奥行きに応じて変化するように構成されていることが好ましい。
【0028】
この構成によれば、空間周波数領域においてPSFの一部の周波数成分の値が所定閾値以下となる周波数の値および数の少なくとも一方を奥行きに応じて変化させることができる。したがって、撮影画像データにおいて、空間周波数成分が欠落もしくは著しく損失した周波数を特定することにより、デプスデータを高精度に生成することが可能となる。つまり、デプスデータを高精度に生成するとともに、復元画像データの画質を向上させることが可能となる。
【0029】
また、前記光学デバイスは、空間領域において前記PSFが複数のピークを有するように構成されていることが好ましい。
【0030】
この構成によれば、空間領域においてPSFが複数のピークを有するように光学デバイスを構成することができる。したがって、光学デバイスが回転するたびに撮影された複数の画像における、光学ぼけによって失われる画像成分の補完効果を向上させることができる。
【0031】
また、前記光学デバイスは、互いに合焦位置が異なる複数の領域を有するレンズを含むことが好ましい。
【0032】
この構成によれば、光学デバイスが互いに合焦位置が異なる複数の領域を有するレンズを含むようにすることができる。このようなレンズを用いて撮影された画像を用いて被写界深度が拡大されれば、合焦位置を変化させながら撮影された画像を用いて被写界深度が拡大されるよりも、より少ない光量で効率的に被写界深度を拡大することができ、SN比が高い復元画像を得ることが可能となる。
【0033】
また、前記光学デバイスは、複数の開口が形成されたアパチャを含むことが好ましい。
【0034】
この構成によれば、光学デバイスが複数の開口が形成されたアパチャを含むようにすることもできる。したがって、光学デバイスの構成を簡易にすることができる。
【0035】
また、本発明の一態様に係る撮像システムは、上記に記載の撮像装置と、前記撮像装置により生成された複数の撮影画像データを処理することにより、前記デプスデータと前記復元画像データとを生成する画像処理装置とを備え、前記画像処理装置は、前記複数の撮影画像データのうちの少なくとも1つの撮影画像データにおいて空間周波数成分の値が所定閾値以下となる周波数に基づいて前記デプスデータを生成するデプスデータ生成部と、前記複数の撮影画像データに対応する光学ぼけに基づいて、前記複数の画像データに対して復元処理を行うことにより、前記復元画像データを生成する復元処理部とを備える。
【0036】
この構成によれば、上記撮像装置と同様の効果を奏することに加えて、上記撮像装置によって生成された撮影画像データを用いて、デプスデータと高画質な復元画像データとを生成することができる。
【0037】
また、本発明の一態様に係る撮像方法は、回転非対称な形状の光学ぼけを有する光学デバイスと、前記光学デバイスを回転させるアクチュエータとを備える撮像装置を用いて、撮影シーンの奥行きを示すデプスデータと光学ぼけが低減された復元画像データとを得るための画像を撮影する撮像方法であって、画像を撮影する第1撮影ステップと、前記アクチュエータを介して、前記光学デバイスの一部または全部を回転させる回転ステップと、前記光学デバイスが回転された後に画像を撮影する第2撮影ステップとを含む。
【0038】
これによれば、上記撮像装置と同様の効果を奏することができる。
【0039】
また、本発明の一態様に係る画像処理方法は、回転非対称な形状の光学ぼけを有する光学デバイスと、前記光学デバイスを回転させるアクチュエータとを備える撮像装置を用いて画像を撮影し、撮影された画像を処理する画像処理方法であって、画像を撮影することにより、第1撮影画像データを生成する第1撮影ステップと、前記アクチュエータを介して、前記光学デバイスの一部または全部を回転させる回転ステップと、前記光学デバイスが回転された後に画像を撮影することにより、第2撮影画像データを生成する第2撮影ステップと、前記第1および前記第2撮影画像データのうちの少なくとも一方において空間周波数成分の値が所定閾値以下となる周波数に基づいて、撮影シーンの奥行きを示すデプスデータを生成するデプスデータ生成ステップと、前記第1および前記第2撮影画像データに対応する光学ぼけに基づいて、前記複数の画像データに対して復元処理を行うことにより、復元画像データを生成する復元ステップとを含む。
【0040】
これによれば、上記撮像システムと同様の効果を奏することができる。
【0041】
以下、実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な一例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素は、任意の構成要素として説明される。
【0042】
(実施の形態)
図1は、実施の形態に係る撮像システムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、撮像システム10は、撮像装置100と、画像処理装置200とを備える。この撮像システム10は、撮像画像処理装置と呼ばれてもよい。
【0043】
撮像装置100は、デプスデータと復元画像データとを得るための画像を撮影する。具体的には、撮像装置100は、例えばデジタルスチルカメラあるいはデジタルビデオカメラなどである。
【0044】
デプスデータとは、撮影シーンの奥行きを示すデータである。すなわち、デプスデータは、撮像装置100から被写体までの距離を画素毎あるいは領域毎に示すデータである。このデプスデータは、画像処理において有用なデータである。例えば、デプスデータは、2次元画像データを、右目用画像および左目用画像を有する3次元画像データに変換するために利用される。また、このデプスデータは、例えば、2次元画像において背景に対応する領域を特定し、特定した領域のみをぼかすための画像処理において利用されてもよい。
【0045】
復元画像データとは、画像に対して復元処理を行うことにより得られる画像データである。ここで、復元処理とは、画像におけるぼけを低減し鮮鋭化する処理である。本発明における復元画像データは、復元処理により光学ぼけが低減された画像データ、すなわち撮影画像データよりも被写界深度が拡大された画像データを指すものとする。
【0046】
画像処理装置200は、撮像装置100から複数の撮影画像データを取得する。具体的には、画像処理装置200は、例えばパーソナルコンピュータあるいはクラウドサーバなどである。画像処理装置200は、例えば有線もしくは無線ネットワーク、または記録媒体などを介して、撮像装置100から複数の撮影画像データを取得する。さらに、画像処理装置200は、撮像装置100により生成された複数の撮影画像データを処理することにより、デプスデータと復元画像データとを生成する。
【0047】
なお、撮像装置100と画像処理装置200とは、必ずしも別体の装置として実現される必要はない。例えば、画像処理装置200は、撮像装置100に内蔵されてもよい。この場合、画像処理装置200は、1つの集積回路として実現されてもよい。
【0048】
以下、まず、撮像装置100の詳細な構成について説明する。
【0049】
図2は、実施の形態に係る撮像装置の機能構成を示すブロック図である。図2に示すように、撮像装置100は、光学デバイス110と、アクチュエータ120と、撮像部130とを備える。以下に、撮像装置100が備える各構成要素について説明する。
【0050】
光学デバイス110は、回転可能に配置されている。本実施の形態では、光学デバイス110は、光軸と平行な軸回りに回転可能に配置されている。なお、回転軸は、必ずしも光軸と平行である必要はない。つまり、光学デバイス110の回転軸は特定の方向に限定される必要はない。
【0051】
また、光学デバイス110は、回転非対称な形状の光学ぼけを有する。つまり、光学デバイス110は、回転された場合に光学ぼけの形状も回転するなど変化するように構成されている。
【0052】
本実施の形態では、光学ぼけは、PSFによって表される。また、光学デバイス110は、PSFが奥行きに応じて変化するように構成されている。つまり、光学デバイス110のPSFは奥行きに依存する。
【0053】
具体的には、光学デバイス110は、例えば、互いに合焦位置が異なる複数の領域を有するレンズを含めばよい。つまり、光学デバイス110は、例えば格子状焦点レンズを含めばよい。ここで、図3図5を用いて、光学デバイス110が互いに合焦位置が異なる複数の領域を有するレンズを含む場合を一例として光学デバイス110について説明する。
【0054】
図3は、実施の形態に係る光学デバイスに含まれるレンズの一例を示す外観図である。ここでは、光学デバイス110に含まれるレンズ111は、互いに合焦位置が異なる4つの領域111a〜111dを有するレンズである。具体的には、レンズ111は、表面の傾斜角度が互いに異なる4つの領域111a〜111dを有する矩形板状のレンズである。
【0055】
このレンズ111は、非特許文献3における格子状焦点レンズに相当する。格子状焦点レンズを用いて撮影された画像を用いて被写界深度が拡大されれば、合焦位置を変化させながら撮影された画像を用いて被写界深度が拡大されるよりも、より少ない光量で効率的に被写界深度を拡大することができ、SN比が高い復元画像を得ることが可能となる。
【0056】
図4は、実施の形態に係る光学デバイスの一例を説明するための図である。具体的には、図4は、光学デバイス110に入射した光の進行方向を示す。なお、説明の便宜のため、ここでは、レンズ111の4つの領域111a〜111dが光軸と垂直な方向に並んで配置されていると仮定する。
【0057】
図4から明らかなように、各領域の合焦位置が異なるので、各領域を通過した光のぼけ方も異なる。例えば、撮像面がAまたはBの位置にある場合には、1つの物体の像が離散的に互いに異なるぼけ方で複数形成される。つまり、光学デバイス110は、PSFが空間領域において複数のピークを有するように構成されている。
【0058】
図5は、実施の形態に係る光学デバイスの光学ぼけの一例を示す図である。具体的には、図5は、光学デバイス110のPSF、OTF(光学伝達関数:Optical Transfer Function)およびMTF(Modulation Transfer Function)を示す図である。OTFは、PSFをフーリエ変換したものの大きさである。つまり、OTFは、PSFを空間周波数領域で表したときの振幅値である。また、MTFは、OTFを特定の空間軸方向において断面化したものである。図5のMTFは、同図のOTFにおけるX軸方向(横軸方向)の空間周波数特性を示している。
【0059】
図5に示すように、光学デバイス110のPSFは、回転非対称な形状を有する。つまり、光学デバイス110は、PSFが回転非対称な形状を有するように構成されている。
【0060】
また、光学デバイス110のPSFは、奥行きに応じて変化している。つまり、光学デバイス110は、PSFが奥行きに応じて変化するように構成されている。
【0061】
また、図5のMTFを見ればわかるように、PSFは、空間周波数成分の値が所定閾値以下となる周波数が1箇所以上存在する。つまり、光学デバイス110は、空間周波数領域において、PSFの一部の周波数成分の値が所定閾値以下となる周波数が1箇所以上存在するように構成されている。この所定閾値とは、ゼロまたはゼロに非常に近い値である。以下において、このように空間周波数成分の値が所定閾値以下となる周波数によって特定される周波数領域上の点をゼロ点と呼ぶ。
【0062】
このゼロ点の位置および数の少なくとも一方は奥行きに応じて変化している。つまり、光学デバイス110は、空間周波数領域において、PSFの一部の周波数成分の値が所定閾値以下となる周波数の値および数の少なくとも一方が奥行きに応じて変化するように構成されている。
【0063】
また、OTFを見ればわかるように、光学デバイス110は、空間領域においてPSFが複数のピークを有するように構成されている。
【0064】
なお、図3図5で説明した光学デバイス110は一例であり、光学デバイス110は、必ずしもこのようなレンズ111を含む必要はない。例えば、光学デバイス110に含まれるレンズ111は、必ずしも4つの領域を有する必要はない。レンズ111は、互いに合焦位置が異なる2つもしくは3つ、または5つ以上の領域を有しても構わない。
【0065】
また、レンズ111は、必ずしも矩形板状のレンズである必要はない。例えば、レンズ111は、円板形状であってもよい。また例えば、レンズ111は、プリズムのような立体形状であっても構わない。
【0066】
また、レンズ111は、必ずしも、表面の傾斜角度が互いに異なる複数の領域を有する必要はない。例えば、レンズ111は、曲面形状が互いに異なる複数の領域を有してもよい。また例えば、レンズ111は、領域毎に屈折率が異なる材質からなる複数の領域を有してもよい。
【0067】
また、光学デバイス110は、レンズ111の代わりに、多焦点レンズを含んでもよい。また、光学デバイス110は、非点収差や像面湾曲などの各種レンズ収差を活用したレンズを含んでもよい。このような場合であっても、光学デバイス110は、図5に示すような、空間方向別に異なる非対称なぼけをなすPSFを有するように構成されることができる。
【0068】
また、光学デバイス110は、レンズ111の代わりに、一般的な焦点レンズと図6に示すようなアパチャを含んでもよい。または、光学デバイス110は、レンズ111と図6に示すようなアパチャとの両方を含んでもよい。
【0069】
図6は、実施の形態に係る光学デバイスに含まれるアパチャの一例を示す外観図である。
【0070】
アパチャ112には、複数の開口が形成されている。このアパチャ112は、非特許文献2における符号化アパチャに相当する。このように光学デバイス110にアパチャ112が含まれる場合も、光学デバイス110は、図5に示すような、空間方向別に異なる非対称なぼけをなすPSFを有するように構成されることができる。
【0071】
なお、アパチャ112は、光学デバイス110に含まれるアパチャの一例であり、必ずしも図6に示すようなアパチャである必要はない。つまり、アパチャに形成されている開口の数および形状は、必ずしも図6に示すような数および形状である必要はない。
【0072】
次に、図2の撮像装置100が備えるアクチュエータ120について説明する。
【0073】
アクチュエータ120は、光学デバイス110の一部または全部を回転させる。具体的には、アクチュエータ120は、撮像部130からの回転制御信号に従って、例えば電磁石などにより生じた動力を利用して光学デバイス110を回転させる。
【0074】
上述したように光学デバイス110のPSFは、回転非対称な形状を有する。したがって、アクチュエータ120は、光学デバイス110の一部または全部を回転させることにより、光学デバイス110のPSFの形状を変化させることができる。
【0075】
図7は、実施の形態に係る光学デバイスの回転の一例を示す図である。具体的には、図7は、回転前後において光学デバイス110を被写体側からみた図である。
【0076】
図7では、アクチュエータ120は、光学デバイス110を回転させることにより、光学デバイス110の回転方向の位置を示す角度を第1角度θ1から第2角度θ2に変化させる。
【0077】
ここでは、図7の(a)に示すように、光学デバイス110の回転方向の位置を示す角度が第1角度θ1であるときの、光学デバイス110の回転方向の位置を基準位置と呼ぶ。また、図7の(b)に示すように、光学デバイス110の回転方向の位置を示す角度が第2角度θ2であるときの、光学デバイス110の回転方向の位置を回転位置と呼ぶ。
【0078】
なお、図7では、光学デバイス110の回転角は90度であるが、必ずしも90度である必要ない。つまり、アクチュエータ120は、光学デバイス110のPSFの形状を変化させることができれば、どのような回転角だけ光学デバイス110を回転させても構わない。
【0079】
次に、図2の撮像装置100が備える撮像部130について説明する。
【0080】
撮像部130は、光学デバイス110が回転するたびに画像を撮影することにより、複数の撮影画像データを生成する。具体的には、撮像部130は、光学デバイス110の回転方向の位置が基準位置のときに画像を撮影し、その後、光学デバイス110の回転方向の位置が回転位置のときに再び画像を撮影する。図2に示すように、撮像部130は、シャッター131と、撮像素子132と、制御部133とを備える。
【0081】
シャッター131は、撮像素子132への光の入射を制御する。具体的には、シャッター131は、開閉動作を行うことにより、光学デバイス110を通過した光を撮影時に通過させ、非撮影時にさえぎる。なお、シャッター131は、制御部133からのシャッター制御信号に従って開閉動作を行う。
【0082】
撮像素子132は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの固体撮像素子である。撮像素子132は、入射した光を電気信号に変換することにより画像を撮影する。
【0083】
制御部133は、撮像装置100を制御する。具体的には、制御部133は、例えばシャッターボタンが押下された場合などに、シャッター制御信号をシャッター131に出力することにより、シャッター131を開閉させる。また、制御部133は、アクチュエータ120に回転制御信号を出力することにより、アクチュエータ120に光学デバイス110を回転させる。
【0084】
次に、以上のように構成された撮像装置100の動作について説明する。
【0085】
図8は、実施の形態に係る撮像装置の処理動作を示すフローチャートである。なお、図8では、光学デバイス110の回転方向の初期位置が基準位置である場合について説明する。
【0086】
まず、撮像部130は、画像を撮影することにより、第1撮影画像データを生成する(S101)。つまり、撮像部130は、光学デバイス110の回転方向の位置が基準位置であるときに画像を撮影する。すなわち、撮像部130は、光学デバイス110の回転方向の位置を示す角度が第1角度θ1であるときに画像を撮影する。
【0087】
続いて、撮像部130は、アクチュエータ120を介して、光学デバイス110の一部または全部を回転させる(S102)。つまり、撮像部130は、光学デバイス110の回転方向の位置を基準位置から回転位置に変化させる。すなわち、撮像部130は、光学デバイス110の回転方向の位置を示す角度を第1角度θ1から第2角度θ2に変化させる。
【0088】
最後に、撮像部130は、ステップS102において光学デバイス110が回転された後に画像を撮影することにより、第2撮影画像データを生成する(S103)。つまり、撮像部130は、光学デバイス110の回転方向の位置が回転位置であるときに画像を撮影する。すなわち、撮像部130は、光学デバイス110の回転方向の位置を示す角度が第2角度θ2であるときに画像を撮影する。
【0089】
このように撮像装置100は、デプスデータと復元画像データとを得るための複数の撮影画像データを得ることができる。次に、これらの撮像部130の処理動作の具体例を説明する。
【0090】
図9は、実施の形態に係る撮像装置の処理動作を説明するための図である。
【0091】
光学デバイス110の回転方向の位置が基準位置でない場合には、まず、制御部133は、光学デバイス110の回転方向の位置を基準位置するための回転制御信号を生成し、アクチュエータ120に出力する(時刻t1)。アクチュエータ120は、制御部133からの回転制御信号に従って光学デバイス110の回転させる(時刻t1〜t2)。その結果、光学デバイス110の回転方向の位置は、図7の(a)に示すような基準位置となる。本実施の形態では、光学デバイス110の回転方向の位置を示す角度が第1角度θ1になる。
【0092】
次に、制御部133は、シャッターを開閉させるためのシャッター制御信号を生成し、シャッター131に出力する(時刻t3)。シャッター131は、制御部133からのシャッター制御信号に従って、一定期間、シャッターを開放することにより、光学デバイス110を通過した光を撮像素子132に入射させる(時刻t3〜t4)。すなわち、撮像部130は、光学デバイス110の回転方向の位置が基準位置であるときに画像を撮影することにより、第1撮影画像データを生成する。
【0093】
制御部133は、光学デバイス110の回転方向の位置を基準位置から回転位置に変化させるための回転制御信号を生成し、アクチュエータ120に出力する(時刻t4)。つまり、制御部133は、光学デバイス110の回転方向の位置を基準位置から回転位置に変化させるための回転制御信号を生成する。
【0094】
アクチュエータ120は、回転制御信号に従って、光学デバイス110の一部または全部を回転させる(時刻t4〜t5)。その結果、光学デバイス110の回転方向の位置は、図7の(b)に示すような回転位置に変化する。
【0095】
制御部133は、シャッターを開閉させるためのシャッター制御信号を生成し、シャッター131に出力する(時刻t6)。シャッター131は、制御部133からのシャッター制御信号に従って、一定期間、シャッターを開放することにより、光学デバイス110を通過した光を撮像素子132に入射させる(時刻t6〜t7)。すなわち、撮像部130は、光学デバイス110の回転方向の位置が回転位置であるときに画像を撮影することにより、第2撮影画像データを生成する。
【0096】
以上のように、撮像装置100は、デプスデータと復元画像データを得るための画像を撮影することができる。次に、このように生成された撮影画像データを用いて、デプスデータと復元画像データとを生成する画像処理装置200について説明する。
【0097】
図10は、実施の形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。画像処理装置200は、撮像装置100により生成された複数の撮影画像データを処理することにより、デプスデータと復元画像データとを生成する。図10に示すように、画像処理装置200は、デプスデータ生成部210と、復元処理部230とを備える。
【0098】
デプスデータ生成部210は、複数の撮影画像データのうちの少なくとも1つの撮影画像データにおいて周波数成分の値が所定閾値以下となる周波数を特定する。そして、デプスデータ生成部210は、特定された周波数に基づいて、デプスデータを生成する。
【0099】
復元処理部230は、光学デバイス110の回転前における光学ぼけと、光学デバイス110の回転後における光学ぼけとに基づいて複数の撮影画像データに対して復元処理を行うことにより、復元画像データを生成する。つまり、復元処理部230は、光学デバイス110の回転方向の位置が基準位置のときのPSFと、光学デバイス110の回転方向の位置が回転位置のときのPSFとを用いて、複数の撮影画像データに対して復元処理を行う。
【0100】
次に、以上のように構成された画像処理装置200における処理動作について説明する。
【0101】
図11は、実施の形態に係る画像処理装置の処理動作を示すフローチャートである。ここでは、撮像装置100から2つの撮影画像データ(第1および第2撮影画像データ)が得られた場合について説明する。
【0102】
まず、デプスデータ生成部210は、第1および第2撮影画像データのうちの少なくとも一方において周波数成分の値が所定閾値以下となる周波数に基づいて、デプスデータを生成する(S201)。例えば、デプスデータ生成部210は、非特許文献2または3と同様の方法により、デプスデータを生成する。
【0103】
なお、デプスデータは、撮影画像データごとに生成することができる。したがって、デプスデータ生成部210は、第1および第2撮影画像データから第1および第2デプスデータを生成し、生成された第1および第2デプスデータの算術平均あるいは重み付き平均を上記デプスデータとして生成しても構わない。これにより、デプスデータ生成部210は、デプスデータの精度を向上させることが可能となる。
【0104】
次に、復元処理部230は、第1および第2撮影画像データを加算することにより、1つの加算画像データを生成する(S202)。
【0105】
続いて、復元処理部230は、光学デバイス110の回転前における光学ぼけと、光学デバイス110の回転後における光学ぼけとに基づいて加算画像データに対して復元処理を行うことにより、復元画像データを生成する(S203)。
【0106】
具体的には、復元処理部230は、例えば、光学デバイス110の回転方向の位置および奥行きに対応づけてPSFが予め保持されているメモリ(不図示)からPSFを取得する。より具体的には、復元処理部230は、第1撮影画像データの画素毎に、第1撮影画像データが撮影されたときの光学デバイス110の回転方向の位置と、デプスデータが示す奥行きとに対応するPSFをメモリから取得する。第2撮影画像データについても同様に、復元処理部230は、対応するPSFをメモリから取得する。
【0107】
そして、復元処理部230は、このように取得された第1撮影画像データに対応するPSF(以下、「第1PSF」という。)と第2撮影画像データに対応するPSF(以下、「第2PSF」という。)とを加算し、前述の加算画像データに対して復元処理を行う。
【0108】
復元処理とは、加算画像データのぼけを低減する処理である。具体的には、復元処理では、例えば、部分空間に区分した一部画像領域において、周波数変換後、第1PSFと第2PSFと加算して得られるPSFを周波数変換したもので加算画像データを除算する。その後再び空間領域に変換する。復元処理は、リチャードソン・ルーシ法あるいはウィーナフィルタ法を用いた処理であっても構わない。
【0109】
なお上記の復元処理部230による処理は一例であり、例えば、図11のフローチャートにおいて加算処理(S202)はなくてもよい。つまり、復元処理部230は、必ずしも、複数の撮影画像データを加算し、かつそれらに対応するPSFも加算のうえ復元処理を行う必要はない。例えば、復元処理部230は、非特許文献4に記載の式(8)と同様の方法により、複数の撮影画像データを加算せずに復元画像データを生成してもよい。
【0110】
なお、復元処理部230は、上記に挙げた処理を、すべて空間領域での2次元フィルタとして実施しても構わない。
【0111】
以上のように、本実施の形態に係る撮像装置100または撮像システム10では、光学デバイス110が回転非対称な形状の光学ぼけを有する。つまり、回転前の光学デバイスの光学ぼけと、回転後の光学デバイスの光学ぼけとは、2次元平面空間における光学特性が互いに異なる。したがって、光学デバイスが回転するたびに撮影された複数の画像において、2次元平面空間上で光学ぼけによって失われる画像成分も互いに異なる。よって、複数の撮影画像データは、光学ぼけによって失われる画像成分を互いに補完することができる。このような複数の撮影画像データを用いて復元画像データが生成されれば、復元画像の画質を向上させることが可能となる。
【0112】
さらに、本実施の形態に係る撮像装置100または撮像システム10によれば、光学デバイスを単純に回転させることにより、光学デバイスの光学ぼけを変化させることができる。したがって、画像を撮影するために光学デバイスをわざわざ交換する必要がなく、デプスデータと復元画像データとを得るための画像を容易に撮影することが可能となる。また、光学デバイスの光学ぼけの形状を比較的短時間に変化させることができ、応答性にすぐれた撮像装置を実現することができる。
【0113】
また、本実施の形態に係る撮像装置100または撮像システム10によれば、空間周波数領域においてPSFの一部の周波数成分の値が所定閾値以下となる周波数の値および数の少なくとも一方を奥行きに応じて変化させることができる。したがって、撮影画像データにおいて、空間周波数成分が欠落もしくは著しく損失した周波数を特定することにより、デプスデータを高精度に生成することが可能となる。つまり、デプスデータを高精度に生成するとともに、復元画像データの画質を向上させることが可能となる。
【0114】
また、本実施の形態に係る撮像装置100または撮像システム10によれば、空間領域においてPSFが複数のピークを有するように光学デバイスを構成することができる。したがって、光学デバイス110が回転するたびに撮影された複数の画像における、光学ぼけによって失われる画像成分の補完効果を向上させることができる。
【0115】
また、本実施の形態に係る撮像装置100または撮像システム10によれば、光学デバイスが互いに合焦位置が異なる複数の領域を有するレンズを含むようにすることができる。このようなレンズを用いて撮影された画像を用いて被写界深度が拡大されれば、格子状焦点レンズを用いて撮影された画像を用いて被写界深度が拡大されれば、合焦位置を変化させながら撮影された画像を用いて被写界深度が拡大されるよりも、より少ない光量で効率的に被写界深度を拡大することができ、SN比が高い復元画像を得ることが可能となる。
【0116】
以上、本発明の一態様に係る撮像装置100、画像処理装置200および撮像システム10について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも、本発明の範囲内に含まれる。
【0117】
例えば、上記実施の形態において、主として2つの撮影画像データが生成される場合について説明したが、3つ以上の撮影画像データが生成されてもよい。その場合、例えば、光学デバイスを2回以上回転させ、回転させるたびに画像が撮影されればよい。3つ以上の撮影画像データが用いられれば、光学ぼけによって失われる周波数成分の補完効果をさらに向上させることができ、復元画像の画質をさらに向上させることが可能となる。
【0118】
また、上記実施の形態に係る撮像装置あるいは画像処理装置は、さらに、撮影画像の色補正、ガンマ補正あるいはBayer補間などの一般的な画像処理を行う構成要素を備えても構わない。また、画像処理装置は、さらに、撮影画像データを一時的に保持するための記憶部を備えてもよい。
【0119】
また、上記実施の形態において、光学デバイス110の回転角は、特に限定しなかったが、光学ぼけによって失われる周波数成分が効率的に補完されるように予め決定された角度であることが好ましい。具体的には、回転角は、例えば、回転方向の複数の位置にそれぞれ対応するPSFの組合せのうち、加算されたPSFの周波数成分の最小値が最も大きくなるPSFの組合せが得られるような角度であればよい。これにより、複数の撮影画像データにおいて、光学ぼけによって失われる周波数成分の補完効果を高めることができ、復元画像の画質を向上させることができる。
【0120】
また、光学ぼけは、必ずしもPSFで表わされる必要はない。例えば、光学ぼけは、PSFを周波数領域に変換した後の、2次元複素数成分で表わされても構わない。
【0121】
また、上記実施の形態における画像処理装置200が備える構成要素の一部または全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。例えば、画像処理装置200は、デプスデータ生成部210と復元処理部230とを有するシステムLSIから構成されてもよい。
【0122】
システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含んで構成されるコンピュータシステムである。前記ROMには、コンピュータプログラムが記憶されている。前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータプログラムに従って動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0123】
なお、ここでは、システムLSIとしたが、集積度の違いにより、IC、LSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、あるいはLSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0124】
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
【0125】
また、本発明は、このような特徴的な構成要素を備える撮像装置、画像処理装置または撮像システムとして実現することができるだけでなく、撮像装置、画像処理装置または撮像システムに含まれる特徴的な構成要素が行う処理を実行する撮像方法または画像処理方法として実現することもできる。また、画像処理方法に含まれる特徴的な各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータプログラムとして実現することもできる。そして、そのようなコンピュータプログラムを、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)等のコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体あるいはインターネット等の通信ネットワークを介して流通させることができるのは、言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、デジタルスチルカメラあるいはデジタルビデオカメラなどの撮像装置などとして利用することができる。
【符号の説明】
【0127】
10 撮像システム
100 撮像装置
110 光学デバイス
111 レンズ
112 アパチャ
120 アクチュエータ
130 撮像部
131 シャッター
132 撮像素子
133 制御部
200 画像処理装置
210 デプスデータ生成部
230 復元処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11