特許第6151688号(P6151688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6151688複数の結合されたエネルギー源を用いた材料の表面処理方法及び装置。
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6151688
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】複数の結合されたエネルギー源を用いた材料の表面処理方法及び装置。
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/24 20060101AFI20170612BHJP
   C08J 7/00 20060101ALI20170612BHJP
   C23C 16/503 20060101ALI20170612BHJP
   C23C 16/48 20060101ALI20170612BHJP
   C23C 16/54 20060101ALI20170612BHJP
   C23C 14/22 20060101ALI20170612BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   H05H1/24
   C08J7/00 302
   C08J7/00CFD
   C23C16/503
   C23C16/48
   C23C16/54
   C23C14/22 Z
   C23C26/00 E
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-517937(P2014-517937)
(86)(22)【出願日】2012年6月28日
(65)【公表番号】特表2014-527257(P2014-527257A)
(43)【公表日】2014年10月9日
(86)【国際出願番号】GB2012051516
(87)【国際公開番号】WO2013001306
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2015年6月23日
(31)【優先権主張番号】61/501,874
(32)【優先日】2011年6月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513327126
【氏名又は名称】エムティーアイエックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 滋
(72)【発明者】
【氏名】ミストリー、プラビン
【審査官】 山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−185315(JP,A)
【文献】 特開2010−129197(JP,A)
【文献】 特開昭63−303071(JP,A)
【文献】 特開平10−018042(JP,A)
【文献】 特開平11−286561(JP,A)
【文献】 特表2011−512459(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0120782(US,A1)
【文献】 特開平08−244123(JP,A)
【文献】 特開2003−201570(JP,A)
【文献】 特開平06−168923(JP,A)
【文献】 特開2009−179853(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00481722(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/24
C08J 7/00
C23C 14/22
C23C 16/48
C23C 16/503
C23C 16/54
C23C 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(102,402,404)の処理方法であって、
2つの離間した電極(e1/e2;212/214;412/414;452/454)を含む処理領域(124)に高電圧(HV)交流(AC)大気圧(AP)プラズマを生成するに、前記電極はローラ(212/214;412/414)として提供され、前記ローラ間に前記基材が供給されることを許容するように、当該ローラ間にギャップを伴って、一方のローラが他方のローラに対して平行して配置されており、
第1のエネルギー源とは異なる少なくとも1つの第2のエネルギー源を前記プラズマに仕向けて当該プラズマと相互作用させて、ハイブリッドプラズマを取得するに、前記第2のエネルギー源は少なくとも1つのレーザビームであり、前記少なくとも1つのレーザビーム(132)は、前記プラズマ中に前記電極にほぼ平行でかつ前記電極間に仕向けられ、
前記少なくとも1つのレーザビームは、処理されている基材の上面に対して1〜10度の角度(α)で仕向けられることで、前記2つの電極によって生成されている前記プラズマと同時に反応しながら、処理されている基材に直接照射され、
前記ハイブリッドプラズマを、処理領域(124)における基材と相互作用させる、
方法。
【請求項2】
前記レーザビームを仕向けるレーザは、以下の特徴の少なくとも1つを備えている:
前記レーザはエキシマレーザを備える;
前記レーザは、紫外線(UV)波長範囲で作動する;
前記レーザは、少なくとも25ワットの出力パワーで作動する、
請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記基材を処理する前に、先駆物質(323,437)が基材上に供給(122,322,422)される、請求項1、2いずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記基材を処理した後に、仕上げ物質(327,439)が基材上に供給(126,326,426)される、請求項1〜いずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記基材は、合成布材料、ポリエステル、有機材料、コットン、ウールからなる群から選択された材料である、請求項1〜いずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
材料を処理する装置(100,400A,400B,400C,400D,400E,400F,400G)であって、
処理領域(124)にプラズマを生成する2つの離間した電極(e1/e2;212/214;412/414)であって、前記2つの電極はローラ(212/214;412/414)として提供され、前記ローラ間に前記基材が供給されることを許容するように、当該ローラ間にギャップを伴って、一方のローラが他方のローラに対して平行して配置されている、電極と、
対応する1つあるいは複数のビーム(132)を前記処理領域に仕向け、前記プラズマ及び処理されている材料相互作用させる、1つあるいは複数のレーザ(130)と、
前記少なくとも1つのレーザビームを、処理されている基材の上面に対して1〜10度の角度(α)で仕向け、前記2つの電極によって生成されている前記プラズマと同時に反応しながら、処理されている基材に直接照射させる手段と、
を備え装置。
【請求項7】
さらに、前記第1ローラ及び第2ローラに近接して配置された第3ローラ、第4ローラ(416/418)を備え、第1ローラ、第2ローラ、第3ローラ、第4ローラ(412,414,416,418)の外側表面間に、処理領域(124)を規定し、プラズマを収容するセミエアタイトキャビティ(440)を形成する、請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記第3ローラ及び第4ローラ(436, 438)の少なくとも1つは、金属外側層(437, 439)を備える、請求項に記載の装置。
【請求項9】
さらに、前記第1ローラ及び第2ローラ(412,414)を囲むように配置され、キャビティ(440)を規定するシールド(420)を備える、請求項に記載の装置。
【請求項10】
液体、あるいは固体、あるいは噴霧化された形式の先駆物質を吐出するノズル(322,422)と、
処理されている材料に仕上げ材料(327)を吐出するノズル(326)と、
の少なくとも1つを備える、請求項6〜9いずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記電極(e1/e2;212/214;412/414)はセラミックで被覆されている、請求項6に記載の装置。
【請求項12】
生地基材を処理するための請求項6〜11いずれか1項に記載の装置の使用であって、前記生地基材は、合成布材料、ポリエステル、有機材料、コットン、ウールからなる群から選択される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国出願61/501,874(2011年6月28日出願)の出願日の利益を主張するものである。
本発明は、材料及び種々の基材、より詳しくは布など、の表面処理に係り、より詳しくは、組み合わされた複数の種々のエネルギー源、典型的にはエネルギー源の1つは大気圧プラズマ(AP)である、による材料の処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スマート生地の開発は、先進的なプラズマ技術、マイクロ波エネルギー源、ある場合には化学処理を通して獲得可能な耐汚染性、防水性、色堅ろう度、及び他の特徴のような種々の特性を向上させるためにアクティブな領域として着目されている。
【0003】
大気圧プラズマ処理(APT)は、繊維の内部特性に影響を与えずに親水性のような繊維表面の特性を向上させるものであり、生地の製造業者や加工業者によって、天然繊維や合成繊維の表面特性を向上し、付着性、濡れ性、印刷適性、染色性を向上させ、また、材料の縮みを低減するために用いられ得る。
【0004】
大気圧プラズマ(すなわち、APプラズマないし常圧プラズマ)は、プラズマにおける圧力が周囲雰囲気の圧力と略同じであるような特別の場合に用いられる名称である。APプラズマは卓越した技術的重大性を有している。なぜなら、低気圧プラズマや高気圧プラズマに比べて、外気圧とは異なる圧力レベルを維持するための高コストな反応容器を必要としないからである。また、多くの場合、APプラズマは製造ラインに簡単に組み込むことができる。種々の形式のプラズマ励起が可能であり、その中には、AC(交流)励起、DC(直流)励起、低周波数励起、ラジオ波による励起、マイクロ波励起、が含まれる。ここで、交流励起によるAPプラズマのみが、注目すべき産業的重大性を獲得している。
【0005】
一般に、APプラズマは交流励起(コロナ放電)及びプラズマジェットによって生成される。プラズマジェットにおいて、パルス化電流アークが、プラズマジェット中の高電圧放電(5−15kV,10−100kHz)によって生成される。処理ガス、この放電領域を通過して流れるオイルフリー圧縮空気のような、が励起され、プラズマ状態へ変換される。そして、このプラズマが、ジェットヘッドを通して、被処理材料の表面へ到着する。このジェットヘッドは地表ポテンシャルにあり、そのようにしてプラズマストリームの電位担持部分を大抵抑える。さらに、ジェットヘッドは、出射ビームのジオメトリを決定する。複数のジェットヘッドが、処理される基材の対応する領域と相互作用するために用いられる。例えば、数メートルの処理幅を有するシート材料は、ジェット列によって処理され得る。
【0006】
大気圧及び真空プラズマ法は、接着、印刷、塗装、重合化、他の機能的ないし装飾的コーティングのために材料表面を清浄化しまた活性化することに用いられている。大気圧処理は、真空プラズマに比べて、材料の継続処理に適している。他の表面処理手法は、先駆コーティングを重合化するためにマイクロ波エネルギーを用いる。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、材料の処理(表面処理や改質のような)の改良された技術を提供することを目的としており、材料は、例えば、基材、より詳しくは、生地(織物、編物、不織布を含む)のようなものであり、そして、広範囲に、処理を実施するための、高電圧によって生成されたプラズマ(大気圧プラズマ(AP)のような)と種々の追加のエネルギー源(レーザ照射のような)を組み合わせることを含み、表面のみならず、処理されている材料のコアを変化させ得るものであり、また、ドライ環境で導入されたガスや先駆物質を用い得る。種々のエネルギー源の組み合わせが開示される。
【0008】
本発明の実施形態は、広範囲に、レーザと高電圧により生成された大気圧(AP)プラズマのような、互いに相互作用する少なくとも2つの組み合わされたエネルギー源を用いて、工業用の生地や他の材料を処理し生成する方法及び装置を含む。
【0009】
本明細書に記載された技術は、生地材料の自動処理システムに容易に組み込むことができる。機能性は、エッチングやアブレーティングのような非水系クリーニング、表面でのラジカル生成による活性化、を通して、また、所望の機能性特性を同時にまた選択的に増大しあるいは低減させることによって得られる。疎水性、親水性、難燃性、防菌性、収縮低減、繊維精錬、撥水性、低温染色、向上された染料取り込み及び染色堅ろう度などの特性が、材料の表面におけるラジカルの生成のような、化学的および/あるいは形態学的変化を生成するプロセスによって、実現ないし増進され、また、増大ないし低減される。先進的な物質組成のナノスケールコーティングのような、材料のコーティングが適用されて処理され得る。
【0010】
大気圧プラズマエネルギーに、レーザ、X線、電子ビーム、マイクロ波あるいは他の様々なエネルギー源のような1つあるいは複数の追加(第2)のエネルギー源を組み合わせる(ハイブリダイズ)ことによって、基材処理のためのより効果的(商業的に実用的な)なエネルギー環境が生成される。第2のエネルギー源は、大気圧プラズマエネルギーと組み合わされて(協働、同時に)適用されて所望の特性を得るようしても、および/あるいは、大気圧プラズマエネルギーと連続して(並んで、選択的)適用されて所望の特性を得るようにしてもよい。
【0011】
第2のエネルギー源は、別個に生成されたプラズマプリューム(plume)に作用して、より効果的でエネルギッシュなプラズマ環境を生成し、また、このハイブリッド処理を受けている材料の表面に、場合によってはコア、に直接作用する能力を有している。
【0012】
本明細書に開示された技術は、限定されないものの、生地(有機及び無機の両方)、紙、合成紙、プラスチック、典型的にはフラットシート形状(ヤール物)の他の類似の材料の処理に適用可能である。本明細書に開示された技術は、プラスチックないし金属の押し出し、圧延、射出成型、紡績、カージング、織り込み、ガラス成形、基材エッチング及びクリーニング、任意の物質によるコーティングの処理に適用可能であり、実際的には、任意の物質の処理技術にも適用可能である。ガラスのフラットシート(タッチスクリーンに用いるような)のような剛性材料も、本明細書に開示された技術によって処理することができる。
【0013】
1つの態様では、本発明は基材(102,402,404)の処理方法を提供し、
2つの離間した電極(e1/e2;212/214;412/414;452/454)を含む処理領域(124)にプラズマを生成し、
第1のエネルギー源とは異なる少なくとも1つの第2のエネルギー源を前記プラズマに仕向けて当該プラズマと相互作用させ、ハイブリッドプラズマを取得し、
前記ハイブリッドプラズマを、処理領域(124)における基材と相互作用させる。
【0014】
他の態様では、本発明は材料を処理する装置(100,400A,400B,400C,400D,400E,400F,400G)を含み、当該装置は、
処理領域(124)にプラズマを生成する2つの離間した電極(e1/e2;212/214;412/414)と、
対応する1つあるいは複数のビーム(132)を前記処理領域に仕向け、前記プラズマ及び処理されている材料の少なくとも1つと相互作用させる、1つあるいは複数のレーザ(130)と、
を備えている。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、生地基材を処理するための本明細書に記載した装置の使用に係る。
【0016】
他の態様では、本発明は、本明細書に記載された方法により取得された生地材料に係る。
【0017】
さらに他の態様では、本発明は、材料処理のためのプラズマの生成方法に係る。
【0018】
本発明の効果には、限定されないものの、さらなる処理や仕上げのために表面を清浄化し活性化するためのよりエネルギッシュで効果的なプラズマを生成する方法が含まれる。例えば、連続波(CW)でもパルスでもよい紫外線(UV)レーザ照射は、電磁的に生成された大気圧プラズマと組み合わさって、表面を処理するためのより高度にイオン化されたエネルギッシュな反応環境を生成する。結果として得られるハイブリット化されたエネルギーは、個々の部分の合計よりも大きい効果を有する。パルスレーザエネルギーがプラズマを駆動することに用いられ、
波が生成され、そして、レーザエネルギーが得られたプラズマ波を促進し、砂浜に波が叩きつけられるように基材に作用する。
【0019】
促進され、よりエネルギッシュなプラズマは、繊維または処理された基材の表面にラジカルを生成し始め、生成され始めたラジカルにイオン化基を付着させる。表面に増大した有極特性を与えるカルボキシル、ヒドロキシルあるいはその他のような機能基の付着は、より大きい親水性や他の望ましい機能特性をもたらす。
【0020】
本発明は、材料基材が存在する制御された大気環境において有利にエネルギー源を組み合わせる。最終結果は、基材表面における転換及び物質合成であり、基材は、単に被覆されることとは対照的に物理的に変化するであろう。
【0021】
例示の実施形態では、高周波RFプラズマが、処理ウィンドウの幅に亘って延び、回転し、駆動されるローラ(rotating and driven rollers)間に形成されたエンベロープ(すなわち、キャビティやチェンバー)内に生成される。生成されたプラズマ場は、処理領域の幅に亘って一貫しており、また、大気圧で作動する。高出力紫外線(UV)レーザが、前記プラズマ、および/あるいは、処理されている基材と相互作用するために提供される。レーザからのビームは、処理領域全体に亘って一貫したパワー密度を呈する方形断面を有するように形成される。複数の(例えば4種類)の環境ガス及び先駆物質の任意の組み合わせを、ハイブリッドプラズマチェンバーに定住するする単一のフィードに合体させるためにガスデリバリシステムを用いてもよい。さらに、前処理あるいは後処理を問わず、処理されている材料に、ゾルゲルあるいは処理促進剤の薄い一貫性の層を適用することができる、スプレーないしミストデリバリシステムを用意してもよい。
【0022】
プラズマとフォトニクス(UVレーザのような)を組み合わせるプロセスはドライであり、大気圧で行われ、安全で不活性なガス(窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素のような)を用いる。レーザ及びプラズマのパワー強度を変え、そして、環境ガスやゾルゲルの添加、および/あるいは、他の有機先駆物質や無機先駆物質を変更することによって、すなわち、製法(recipe)を変えることによって、本システムは幅広い種類の処理アプリケーションを生成できることになる。
【0023】
処理には、清浄、調整、材料の性能強化を含む幾つものアプリケーションがある。
清浄について、レーザは、プラズマの効果的なパワーを増大させると共に、独立して基材材料に作用する。
染色のような2次処理のための基材材料の調整について、繊維表面が制御された様式でアブレートされ、材料(生地材料のような)の親水性を増大させる。さらに、システムの処理ゾーンに環境ガスを導入することによって、材料(例えば、生地)の表面にケミストリーが生成され、もって、染色媒体と反応して、より効率的な染色浸透をもたらし、あるいは、より強いカラーリングプロセスをもたらし、あるいは染色温度の低減をもたらすようなケミストリーが得られる。例えば、布地の繊維を調整することで、酸化クロム染料のより制御された取り込みを与え、得られるブラックの強度を向上させる。したがって、本プロセスには、染料の化学成分を削減し、環境に与えるネガティブな影響や処理コストを低減し得る可能性がある。
性能強化について、本処理は、基材の表面で物質合成を獲得する。レーザ及びプラズマの周波数及びパワー強度を変えて、他の物質を処理環境に導入することによって、本システムは基材の表面をアブレートし、基材と環境ガスとの間の一連の化学反応が、生地ウェブの繊維の表面に新しい物質を合成する。
【0024】
開示の実施形態、それの幾つかの非限定的な例が添付の図面に示されている、についての参照が詳細に行われる。これらの図面は、一般に、概念図である。図面における幾つかの要素は誇張されており、また、幾つかの要素は、図示上の明瞭さのため省略されているであろう。図面におけるそれぞれの要素間の関係、例えば、上、下、左、右、上方、下方等、は、これらが図面においてどのように見えかつ配置さているかを参照するものである。本明細書における用語や専門用語は、限定的に解釈されるものではなく、記述目的のためであることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の実施形態に係る処理システムの図である。
図2図2は、図1に示す処理システムのプラズマ領域の部分斜視図である。
図2A図2Aは、図1に示す処理システムのプラズマ領域の部分斜視図である。
図3図3は、本発明の実施形態にしたがう、図1の処理システムの前処理領域、プラズマ領域、後処理領域の部分斜視図である。
図4A】本発明の実施形態にしたがった、図1の処理システムの処理領域の要素の図である。
図4B】本発明の実施形態にしたがった、図1の処理システムの処理領域の要素の図である。
図4C】本発明の実施形態にしたがった、図1の処理システムの処理領域の要素の図である。
図4D】本発明の実施形態にしたがった、図1の処理システムの処理領域の要素の図である。
図4E】本発明の実施形態にしたがった、図1の処理システムの処理領域の要素の図である。
図4F】本発明の実施形態にしたがった、図1の処理システムの処理領域の要素の図である。
図4G】本発明の実施形態にしたがった、図1の処理システムの処理領域の要素の図である。
【発明の詳細な説明】
【0026】
本発明は一般に材料(布のような)の特性を改質するための材料の処理(表面処理のような)に関するものである。
【0027】
本発明の開示を説明するために種々の実施形態について記載されるが、これらは本発明を限定するものではなく例示として解釈される。本発明は、一般に種々の実施形態の文脈に沿って説明されるが、これらの特定の実施形態に本発明を限定減する意図はないことを理解されたい。各実施形態は、本発明の1ついあるいは複数の観点の例ないし実現である。本発明の種々の特徴が単一の実施例の文脈で記載されるかもしれないが、これらの特徴は分離して提供されたり、あるいは、互いの適切な任意の組み合わせとして提供されたりしてもよい。逆に、本発明は別個の実施形態の文脈に沿って記載されるかもしれないが、本発明は、単一の実施形態として実現されてもよい。
【0028】
以下、主として、ロール型(円筒コアに巻装された材料の長いシート)で供給された生地である基材の表面処理について議論する。限定されないものの材料合成を含む1つあるいは複数の処理が、生地基材の一方あるいは両方の表面に適用されてもよく、また、追加の材料が導入されてもよい。本明細書において、基材は、2つの表面を備えた材料の薄いシートであり、2つの表面は、正面及び後面、ないし、上面及び下面と呼ぶことができる。
【0029】
本発明の幾つかの実施形態
以下の施形態及びその観点は、システム、ツール、方法と共に記載され説明されるが、これらは例証ないし例示であり、範囲を限定するものではない。特定の構成態様及び詳細が本発明の理解を提供するように示される。しかしながら、ここで述べられた特定の詳細の幾つかを用いることなく、本発明が実施され得ることは、当業者にとって明らかである。さらに、周知特徴については、本発明の説明が不明瞭とならないよう省略ないし簡略化されるであろう。
【0030】
図1は、表面処理システム100全体、及び、基材102の表面処理などの処理の実施手法を示す。提示される図において、基材102は、システム100を通して右から左に向かって進むように示してある。
【0031】
基材102は、例えば、生地材料であり、ロール上の長いシートとしてのヤール物として提供される。例えば、処理される基材は、コットン/ポリステルのような繊維状の生地材料であり、約1メートル幅、約1ミリ厚、約100メートル長である。
【0032】
例えば基材102の1m×1mの領域であって、まだ処理されていないセクション102Aは、システム100の投入セクション100Aにおいて供給リールR1から繰り出されるように図示されている。この投入セクション100Aから、基材102は装置100の処理部120を通って通過する。処理された後に、基材102は処理装置120から出て、巻取リールR2上での巻き取りのような、適切な手法で回収される。例えば基材102の1m×1mの領域であって、処理されたセクション102Bは、システム100の産出セクション100Aにおいて巻取リールR1に巻き取られるように図示されている。種々のローラRが、システムを通して材料を案内するために、システム100の種々のセクションの間(図示)及びセクション中(図示せず)に提供される。
【0033】
処理部120は一般に3つの領域(区域ないしゾーン)を有している:
−任意の前処理(すなわち、先駆材料)領域122、
−処理(すなわち、プラズマ)領域124、
−任意の後処理(すなわち、仕上げ)領域126
【0034】
処理領域124は、高電圧(HV)交流(AC)大気圧プラズマ(AP)を生成するコンポーネントを備えており、これらの要素はよく知られており、その中の幾つかは以下に詳しく述べられる。
【0035】
第2のエネルギー源として、ビーム132を提供するレーザ130が提供され、ビーム132は主処理領域124において大気圧プラズマと相互作用し、また、基材102の表面に当たる。
【0036】
上述の種々のコンポーネント及び要素の作動を制御するためにコントローラ140が提供されてもよく、また、通常のヒューマンインターフェース(入力部、表示部等)を備えていてもよい。
【0037】
図2は、主処理領域124の部分及びいくつかの作用要素を示す。3つの直交する軸x、y、zが図示されている(図1において、対応するx軸、y軸が示されている)。
【0038】
2つの長尺状の電極212(e1)、214(e2)が示してあり、一方が陰極であり、他方が陽極であるとする。2つの電極は、互いにだいたい平行で、y軸に平行して延びるように配置されており、また、互いにx方向に離間している。例えば、電極e1、e2は、ロッド、チューブ、その他の回転可能な円筒状電極材料のような形の任意の適切な様式で形成され、また、名目上、処理される材料の厚さのクリアランスを許容する十分な距離だけ、互いに離れている。電極e1、e2は処理される基材102の上面102aの約1mm上方に配置されている。
【0039】
電極e1、e2は、任意の適切な様式で電圧が印加され、結果として得られる陰極/陽極対の長さに沿って、プラズマ反応ゾーンと呼ばれる電極e1、e2の間及び電極e1、e2を囲む直近の空間に大気圧プラズマが生成される。
【0040】
上述のように、主処理領域124へとレーザビーム132が仕向けられ、基材102の表面に当たる。ここで、レーザビーム132はy軸にほぼ沿うように向けられ、ほぼ電極e1、e2に平行かつ電極e1、e2間で、かつ、基材102の上面102aの少し上に示されており、2つの電極e1、e2によって生成されたプラズマ(プリューム)と相互作用するようになっている。例示の適用では、ビームのフットプリントは、約30mmx15mmの方形である。ビームは、プラズマとの所望の相互作用をより良く獲得し、および/あるいは、所望の直接の基材放射をより良く獲得するように、垂直あるいは水平に仕向けられてもよい。
【0041】
レーザビーム132は、わずかにしかしながら十分にオフアングル(“off angle”)で仕向けられ、2つの電極e1、e2間で生成されたプラズマと同時に反応しながら、処理される基材102に直接放射される。より詳細には、レーザビーム132は、基材の上面102aに当たらないように、基材102の上面102aに対して約0°である角度“a”を形成してもよい。あるいは、レーザビーム132は、基材の上面102aに当たるように、基材102の上面102aに対して約1〜10°より小さい角度である角度“a”を形成してもよい。ビーム132の他の配向も可能であり、例えば、基材102の上面102aに対して垂直(“a”=90°)でもよい。レーザビーム132は、2つの電極e1、e2によって生成されたプラズマの選択された部位あるいは基材102の選択された部位、あるいは両方と相互作用するように、従来のガルバノメータなどを用いて走査される。
【0042】
プラズマは、高電圧(HV)交流(AC)のような第1のエネルギー源を用いて生成される。第2の別個のエネルギー源(レーザなどの)がプラズマと相互作用し、結果としてハイブリッドプラズマが得られ、ハイブリッドプラズマは、処理されている基材(材料)と相互作用(処理領域において)するようになっている。第1のエネルギー源と相互作用することに加えて、第2のエネルギー源はまた、処理されている材料と直接相互作用するようになっている。基材や他の気体(2次あるいは先駆)との直接の相互作用は、それ自身のレーザによって持続されるプラズマを形成し、それは、さらに、高電圧により生成されたプラズマと相互作用し、反応環境により高いエネルギーを付与する。
【0043】
基材102(処理されている材料)は、主処理領域(区域)124を通過する時に複数のローラによって案内される。図2Aは、これらのローラのうちの1つのローラ214が、プラズマを生成する陰極/陽極対の陽極として機能し、他のローラ212が陰極として機能する(陰極と陽極が逆であってもよい)ことを示している。図2では、基材102は2つの電極e1、e2の両方の一側(図示では下方)に配置されており、図2Aでは、基材102は2つの電極e1、e2の間に配置されることに留意されたい。両方の場合において、電極e1、e2によって生成されたプラズマは、基材102の少なくとも一方の表面に作用する。陽極及び陰極は、セラミックのような絶縁材料で被覆されていてもよい。
【0044】
本発明はいかなる特定の配置、すなわち、電極e1、e2の構成態様に限定されるものではなく、図2、2Aに示した実施例はいくつかの可能性を単に例示する意図であることを理解されたい。さらに、例えば、2つの電極e1、e2を用いることに代えて、プラズマを供給するプラズマジェット列(図示せず)を提供し、基材102の表面102aの上に所望のプラズマを形成してもよい。
【0045】
図3は、前処理領域(区域)122において、処理される材料の全幅を覆うようなスプレーヘッド(ノズル)の列322、あるいは他の適切な手段が、固相、液相あるいは気相の先駆物質323を基材102上へ吐出し、抗菌性、難燃性、超疎水性、超親水性などの特定の特性の処理を可能とすることが示してある。
【0046】
前処理領域(区域)122と主処理領域(区域)124との間に中間バッファゾーンを設けて、前処理で適用された材料が基材に浸み込む(吸収される)時間を許容するようにしてもよい。この処理は、単一の材料長を走らせるが、バッファは、例えば、最大200mの生地まで維持する。例えば、処理されている材料(ヤール物などの)が20メートル/分でシステムを通って送られている時に、これによって、システムを通して材料の流れを止めることなく、前処理(122)とハイブリットプラズマ処理(124)との間に数分間の乾燥時間を許容するであろう。
【0047】
同様に、後処理領域126において、処理された(124)材料の全幅を覆うようなスプレーヘッド(ノズル)の列326、あるいは他の適切な手段が、固相、液相あるいは気相の仕上げ材料327を基材102上へ吐出し、基材に望ましい特性を浸透させてもよい。
【0048】
処理領域 (124)の幾つかの実施形態
図4A〜Gは、処理領域124における要素の種々の実施形態を例示する。
【0049】
図4Aは、実施形態
400Aを示し、
―第1(上側)ローラ412は、電極e1として機能するように作動し、約10cmの直径で、2メートルの長さ(ページ内の方向)を有している。ローラ412は金属コアとセラミック(電気的に絶縁性)外方表面とを有している。
―第2(下側)ローラ414は、電極e2 として機能するように作動し、約15cmの直径で、2メートルの長さ(ページ内の方向)を有している。ローラ414は金属コアとセラミック(電気的に絶縁性)外方表面とを有している。
―第2ローラ414は、第1ローラ412に平行すると共に直下(図示において)に配置されており、第1ローラ412と第2ローラ414とのギャップ(間隔)は、ローラ412、414との間に供給される基材材料402(102と比較)の厚さに対応(例えば少し小さい)している。材料移動の方向は、矢印で示すように右から左である。基材402は、上面402a(102aと比較)と、下面402b(102bと比較)と、を有している。
―第1ローラ412は、陽極/陰極対の陽極として機能し、高電圧(HV)が供給されるようになっている。第2ローラ414は、陽極/陰極対の陰極として機能し、グラウンドされている。
―第1(右側)ニップローラないしフィードローラ416(n1)は、第1ローラ412の右下(図示において)四分円部位に隣接し、第2ローラ414の右上(図示において)四分円部位に隣接して配置されている。ローラ416は、約12cmの直径で、2メートルの長さ(ページ内の方向)を有している。ローラ416の外方表面はローラ412の外方表面に接触している。ローラ416の外方表面とローラ414の外方表面とのギャップ(間隔)は、ローラ416、414の間に供給される基材材料402(102と比較)の厚さ(少し小さい)に対応している。
―第2(左側)ニップローラないしフィードローラ418(n2)は、第1ローラ412の左下(図示において)四分円部位に隣接し、第2ローラ414の左上(図示において)四分円部位に隣接して配置されている。ローラ418は、約12cmの直径で、2メートルの長さ(ページ内の方向)を有している。ローラ418の外方表面はローラ412の外方表面に接触している。ローラ418の外方表面とローラ414の外方表面とのギャップ(間隔)は、ローラ418、414の間に供給される基材材料402(102と比較)の厚さ(少し小さい)に対応している。
―一般に、ニップローラないしフィードローラ416、418は、陽極と陰極412、414間の短絡を防止するように絶縁外方表面を備えている。
【0050】
このようなローラ412、414、416、418の配置によって、4つのローラ412、414、416、418の外方表面間に、処理領域124を規定しプラズマを含んだセミエアタイトキャビティ(“440”)を形成する。キャビティ440は全体として、上側、右側、下側ローラ412、416、414の間の空間の第1(右側)部分440aと、上側、左側、下側ローラ412、418、414の間の空間の第2(左側)部分440bと、を含んでいる。キャビティ440の右側部位440aのリード線の端部の塗り潰し丸●は、キャビティ内へのガスフローを表している。キャビティ440の左側部位440bのリード線の端部の塗り潰し四角■は、レーザビーム(132)を表している。
【0051】
キャビティ440で生成されるプラズマは、大気圧プラズマ(AP)である。よって、キャビティ440のシーリングは必要ない。しかしながら、エンドキャップないしプレート(図示せず)が、ローラ412、414、416、418の端部に配置され、キャビティ440から出入りするガスフローを収容し(部分的に閉じ込め)かつ制御する。
【0052】
図4Bは実施形態400Bを示し、左右のローラ416、418は、ローラ412、414から少し外方に移動しており、より厚いおよび/あるいはより剛性の大きい基材が処理されることを許容するようにキャビティ440を開放している。しかしながら、このことは、陽極、陰極の各電極の独立したすなわち直接の駆動を必要とするであろう。材料は、外部のフィーディング及び弛み取りローラによって、反応ゾーンを通過するように駆動されるであろう。
【0053】
図4Cは、実施形態400Cを示し、左右のローラ(416、418)の代わりに、概ね逆U形状のシールド420が用いられ、左右の部位440a、440bを有するキャビティ440を規定している。シールド420は、1つのローラ412(材料がフィードされ通過する部分を除いて)の実質的に完全に周りに配置されており、また、少なくとも他方のローラ414の周りの一部に配置されている。追加のシールド(図示せず)が下側ローラ414の下方に配置されていてもよい。
【0054】
図4Dは剛性基材の処理に適合する実施形態400Dを示す。上述の基材402は、布などのように柔軟性を備えていた。タッチスクリーンディスプレイのガラスのような剛性基材を、ハイブリッドプラズマ及び先駆物質を用いて処理してもよい。上面404a、下面404bを有する剛性基材404が上側ローラ(e1)412と下側ローラ(e2)414との間を通過する。ノズル422(322と比較)の列が、液体、固体、あるいは、噴霧化形式などの先駆物質を提供するように配置される。図4Cで参照される420のようなシールド(図示せず)がハイブリッドプラズマを含むように組み込まれても良い。
【0055】
図4Eは、円筒状の電極e1、e2ではなく、HVプラズマノズル(ジェット)430の列を組み込んだ構成態様400Eを示す。例えば、処理領域124には、10個のジェット430が20cm間隔で設けられる。剛性基材404が示してある。ノズル422(322と比較)の列が、基材がハイブリッドプラズマに晒される前に、前処理領域122において、噴霧化形式などで先駆材料を基材404上に提供するように配置される。例えば、前処理領域122には、10個のジェット422が20cm間隔で設けられる。図4Cで参照される420のようなシールド(図示せず)がハイブリッドプラズマを含むように組み込まれても良い。この構成態様は、金属あるいは他の導電性基材の処理を可能とする。
【0056】
図4Fは、実施形態400Dを示し、電極e1(すなわち陽極)として機能するように動作する第1(上側)ローラ412と、電極e2(すなわち陰極)として機能するように動作する第2(下側)ローラ414と、2つのニップローラ436、438(416、418と比較)と、を有している。
【0057】
実施形態400A(図4A)と対照的に、この実施形態では、ローラ436、438は、上側及び下側ローラ412、414から外方に少し(例えば1cm)離れている。したがって、プラズマを収容するものではあるが、フィードローラとしては機能せず、別個のフィードローラ(図示せず)を設けることが必要となるであろう。
【0058】
右側ローラ436(416と比較)は、表面に層すなわち被覆437を有するものとして示してある。右側ローラ436(418と比較)は、表面に層すなわち被覆439を有するものとして示してある。例えば、ハイブリッドプラズマ処理領域124のローラ436、438は、金属箔(あるいは、金属外方層)によって包まれており、プロセスにおいて、高エネルギーハイブリッドプラズマおよび/あるいはレーザ(第2エネルギー源)によってエッチングされ、反応性金属プラズマを含むプリュームが形成され、これが基材表面ラジカルとすぐに結合し、基材材料上に金属組成物のナノレイヤーコーティングを形成する。金属材料(箔、層)は、プラズマによって制御可能にエッチングあるいはアブレートされ、放出される金属成分は、プラズマと反応して、ナノスケール層などとして、基材上に堆積される。
【0059】
ローラ436、438の金属材料コーティングは、例えば、チタン、銅、アルミニウム、金、銀の1つあるいは任意の組み合わせを含む。一方のローラがある1つの材料で被覆され、他方のローラが別個の材料で被覆されてもよい。ローラ436、438の様々な異なる部分が様々な異なる材料で被覆されてもよい。一般に、これらの材料がアブレートされる時には、処理領域124において蒸気先駆物質を形成する(したがって、前処理領域124で先駆物質を提供するノズル322、422とは対照的であろう)。
【0060】
図4Gは、ローラ(412、414)ではなく、2枚のフラットシートである、プレート電極452、454を用いた実施形態400Gを示し、2つの電極は互いに離間して配置されて処理領域(反応/合成ゾーン)124を形成し、当該領域を通って材料404のシートが供給される。処理領域に供給されるガスは丸○440aで示してあり、レーザビームは四角□440bで示してある。前処理区域122において先駆物質を吐出するためにノズル422が設けられる。後処理区域126において仕上げ物質を吐出するためにノズル426が設けられる。
【0061】
付加的特徴
特に示してはいないが、ハイブリッドエネルギー処理(124)の後に基材102上に供給された仕上げ物質が、隣接した2次的プラズマあるいはハイブリッドプラズマに曝されることで、ハイブリッドプラズマによる表面の活性化に続いて供給された仕上げ物質を乾燥、密閉、反応させてもよい。
【0062】
特に示してはいないが、処理された基材に種々の望ましい特徴や特性を付与するために、酸素、窒素、水素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウムなどの種々のガス、あるいは、シランやシロキサンをベースとする材料などの化合物が、例えば処理領域124内で、プラズマに導入されてもよい。
【0063】
処理されている材料に防菌性を付与するために、非銀ベース・シラン/シロキサンや3(トリヒドロキシルシリル)プロピルジメチル・オクタデシル・アンモニウムクロリドのような塩化アルミニウム族のような先駆物質を導入してもよい。シロキサン及びエトキシシラン(疎水性を向上させる)と同様に、疎水性に影響を与えるために他のシラン/シロキサン基を用いてもよい。プラズマの気相においてヘキサエチルジオシランを適用することは、紡織繊維の表面を滑らかにし、疎水性のレベルの指標である接触角を増大する。
【0064】
負のドラフト、すなわち大気部分真空を採用して、プラズマ組成成分を引き込み、多孔性基材の厚さにさらに浸透させてもよい。図3は、処理領域124において、その上を基材102が通過するプラテン(ベッド)324のような吸引手段を示し、吸引手段は、所望の効果を生成するように、複数の孔を備えており、適切な様式で吸引手段(図示せず)に接続されている。プラテン324は、プラズマを生成させる電極の1つとして機能してもよい。あるいは、ローラ等を適宜変形(孔を備え、かつ、吸引手段に接続させる)してこの機能を実施するようにしてもよい。
【0065】
本プロセスはドライであり、低い環境への影響を有し、残存ないし副生成ガスや成分は本来的に安全であり、当該システムから排出され、そして適切な様式で、リサイクルされ、あるいは、処分されることを理解されたい。
【0066】
少なくとも2つのエネルギー源を用いた材料の処理方法が提供され、前記2つのエネルギー源は、(i)高エネルギー電磁場を通過する種々のガスによって生成される大気圧プラズマと、(ii)前記プラズマと相互作用し、ハイブリッドプラズマを生成する少なくとも1つのレーザと、を含む。レーザは、308nm以下のような紫外線波長範囲で動作する。レーザは、100ワットより大きい、150ワットより大きい、200ワットより大きい、を含む、少なくとも25ワットの出力パワーで動作するエキシマレーザを含んでいる。レーザは、350-400Hzのような25Hz以上の周波数のパルスでもよく、ピコ秒ないしフェムト秒レーザを含む。1つのレーザがプラズマ(及び基材)と相互作用するものとして記載したが、2つ以上のレーザを用いることは本発明の範囲内である。
【0067】
処理領域においてプラズマを生成する幾つかの例示的なパラメータは、アルゴン80%、酸素ある二酸化炭素20%のガス混合物において、HV生成プラズマについては、1−2Kw(キロワット)、308nmUVレーザについては、500mjoules、350Hz、である。
【0068】
レーザを用いることに代えてあるいは加えて、処理領域の長さに沿って配置した、紫外線ランプあるいは高出力UVLED(発光ダイオード)のアレイのような紫外線(UV)源を用いて、大気圧プラズマへエネルギーを仕向けて、ハイブリッドプラズマを生成すると共に、処理されている材料と相互作用(材料に対するエッチング、反応や合成など)するようにしてもよい。
【0069】
主として、上記では、基材102の一方の表面102aを処理することについて示し、幾つかの例示的な処理について記載した。材料102の反対の下面102bについて、材料102をループバックさせて処理室124を通過させるなどして、処理を行うことは本発明の範囲内である。材料の第2の表面を処理するために、様々なエネルギー源及び環境、先駆材料及び仕上げ材料が用いられてもよい。このようにして、材料の両面が処理される。また、処理を、処理されている材料の表面の内部にまで及ぼして、内部(コア)材料の特性を変えたり増大させたりしてもよいことが理解される。幾つかの場合には、材料の上面及び下面、及びコアが一側から効果的に処理される。
【0070】
本システムは、シート形式以外の材料を処理することに用いられ得る。例えば、本発明は、ハイブリッドエネルギー・アニーリングによって、有機発光ダイオード(OLEDs)の光学的及び形態学的特性を向上させることに用いられる。このような個別の材料は、なにかしらの適切な様式によって、システムを通して運搬(搬送)される。
【0071】
他のタイプのエネルギーが、組み合わされて、あるいは、互いに連続して適用されることで、増大された処理能力を生成してもよい。例えば、材料を処理する方法は、マイクロ波とレーザ、マイクロ波と電磁的に生成されたプラズマ、プラズマとマイクロ波、あるいは、プラズマ、レーザ、パルス化可能なマイクロ波電子サイクロトン共鳴(ECR)の様々な組み合わせなどの、少なくとも2つのエネルギー源の組み合わせを用いるものである。
【0072】
2つのエネルギー源は、(i)高エネルギー電磁場を通過する種々のイオン化ガスを用いた大気圧プラズマと、放射を生成し、高イオン化プラズマ及び処理される表面に直接に仕向ける紫外線(UV)源と、を備えている。UV源は、処理領域の範囲に沿って配置された高出力UVLED(発光ダイオード)のアレイを含む。高出力紫外線LEDは、プラズマと相互作用してプラズマにより高いエネルギーを与え、また、基材に直接作用して当該基材をエッチングしたり、反応したりする。
【0073】
自動化材料搬送システムによって、材料を、組み合わされたエネルギー源によって生成されたエネルギー場を通るように制御可能に送り出してもよい。
【0074】
以下のような一連の処理ステップが実施され、
ステップ1―(任意)先駆物質アプリケーション、
ステップ2―ハイブリッドエネルギーへの暴露、
ステップ3―(任意)先駆物質あるいは仕上げ物質アプリケーション、
ステップ4―ハイブリッドエネルギーへの暴露、
全てのステップは、システム内で直ちに連続する方式で達成される。
【0075】
本プロセスに対して、気体/気相先駆物質をプラズマ反応ゾーンに直接付加することができるデリバリーシステムを導入することは、本発明の範囲内である。
【0076】
幾つかの代表的な処理プロセスパラメータ
処理1 親水性
先駆物質
ポリジメチルシロキサン・ハイドロキシカット(PMDSOハイドロキシカット)
代替:コポリマー(ジメチルシロキサンおよび/あるいはジメチルシランのブレンド)
レーザ
周波数 250Hz
パワー 380mJ
プラズマ
キャリアガス アルゴン … 80%
反応ガス 酸素… 20%
流速 15liter/min 圧力: 1barより僅かに高い
パワー 2KW
【0077】
処理2 染色性
先駆物質
先駆物質や他の先駆触媒無し
レーザ
周波数 250Hz
パワー 380mJ
プラズマ
キャリアガス アルゴン … 80%
反応ガス 酸素または窒素 … 20%
流速 15liter/min 圧力:1barより僅かに高い
パワー 2KW
【0078】
処理3 疎水性
先駆物質
オクタメチルシクロテトラシロキサン/ポリジメチルシラン・ブレンド (水溶性)、ポリグリコールエーテル(水溶性)を伴うジメチルポリシロキサンと混合されたハイドロジェンメチルポリシロキサン、あるいは、上記とジメチルポリシロキサンの組み合わせ。水溶性ブレンドを用いることで、アプリケーション、費用効果、アウトプット性能結果に基づく必要な濃度に、材料を脱イオン水で希釈することが可能となる。水溶性ブレンドは、適切な添加剤を用いて生成される。これらは、本質的に、油を水と混合してエマルジョン、一般にエマルジョン分散剤のサイズで記載され、すなわち、マクロあるいはミクロ(マクロは>100ミクロン、ミクロは<30ミクロン)、を生成する方法である。
代替:コポリマー(ジメチルシロキサンおよび/あるいはジメチルシランのブレンド)
レーザ
周波数 少なくとも350Hz
パワー 少なくとも450mJ
プラズマ
キャリアガス 窒素、アルゴン、ヘリウム … 80%
反応ガス 二酸化炭素あるいは窒素 … 2-20%
流速 10-40liter/min 圧力:1barより僅かに高い
パワー 0.5−1KW
【0079】
処理4 難燃性能
先駆物質
シラン/シロキサンをベースとしたコポリマー及びターポリマー、および、主要な無機化合物、本質的にはチタン、シリコン、ジルコニウム、ホウ素の遷移酸化物を伴うポリボロシロキサン。また、有機シリコン/オキシエチル改質ポリボロシロキサンのような、シロキサンコポリマーやターポリマーを含むホウ素が含まれる。基材物質の種類やアウトプット要求に基づいて、最近の新しい亜リン酸ブレンドをベースとする幾つかの限定的な物質組成を用いてもよい。ポリグリコールエーテル(水溶性)を伴うポリジメチルシロキサンと混合されたオクタメチルシクロテトラシロキサン/ポリジメチルシラン・ブレンド(水溶性)、あるいは、上記とポリジメチルシロキサンとの以下の添加剤を伴う組み合わせ。
― シラン/シロキサンに添加されるカルシウムメタホウ酸塩
― シラン/シロキサンに添加されるシリコン酸化物
― チタンイソプロポキシド添加剤
― 二酸化チタン(ルチル)
― リン酸アンモニウム
― 酸化アルミニウム
― ホウ酸亜鉛
― プレセラミック・オリゴマーを含むリン酸ホウ素
― エアロゲル及びハイドロジェル、低あるいは高密度架橋ポリアクリル酸塩
― ナノ/マイクロ封入組成物
実施例:ジメチルシロキサン、および/あるいは、ポリボロシロキサンを伴うジメチルシランであって、二酸化チタン、二酸化シリコン(ヒュームド、ゲル、あるいはアモルファス)、酸化アルミニウム等の酸化物の5〜10%の容量範囲の遷移酸化物が付加されている。
ここに記載された先駆物質が、ハイブリッドプラズマ(例えば、レーザを用いる)を用いることによって、ここで記載されたシステムにおける材料の難燃性を高める。ここに記載された先駆物質が、非ハイブリッドプラズマ(例えば、レーザを用いない)を用いることによって、材料処理システムにおける材料の難燃性(あるいは、他の特性)を高めることは本発明の範囲内である。
レーザ
周波数 少なくとも350Hz
パワー 少なくとも450mJ
プラズマ
キャリアガス 窒素、アルゴン、ヘリウム … 80%
反応ガス 二酸化炭素あるいは窒素 … 2-20%
流速 10-20liter/min 圧力: 1barより僅かに高い
パワー 0.5−1KW
【0080】
処理5 抗菌性
先駆物質
ジメチルオクタデシル(3トリエトキシルプロピル)アンモニウムクロリドの付加を伴う、疎水性プラットフォームとしてのシラン/シロキサン・ブレンド。
ポリグリコールエーテル(水溶性)を伴うポリジメチルシロキサンと混合されたオクタメチルシクロテトラシロキサン/ポリジメチルシラン・ブレンド(水溶性)、あるいは、上記とポリジメチルシロキサンとの以下の添加剤を伴う組み合わせ。
− ジメチルオクタデシル(3トリメトキシシリルプロピル) アンモニウムクロリド
― キトサン
レーザ
周波数 少なくとも350Hz
パワー 少なくとも450mJ
プラズマ
キャリアガス 窒素、アルゴン、ヘリウム … 80%
反応ガス 二酸化炭素あるいは窒素 … 2-20%
流速 10-20liter/min
圧力:1barより僅かに高い
パワー 0.5-1KW
【0081】
本発明は、限られた数の実施形態に関連して記載されたが、これらは本発明の範囲を限定するように解釈されるべきでなく、幾つかの実施形態の例として解釈される。当業者は、他の可能性のある変形、改良、実施を想起することができ、これらは、本明細書の開示に基づいて、本発明の範囲内であると考えられ、またクレーム化されてもよい。
図1
図2
図2A
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G