特許第6151694号(P6151694)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6151694シュリンクフィルムおよびシュリンクラベル
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  • 特許6151694-シュリンクフィルムおよびシュリンクラベル 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6151694
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】シュリンクフィルムおよびシュリンクラベル
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20170612BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   B32B27/30 B
   B32B27/32 C
【請求項の数】2
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-524721(P2014-524721)
(86)(22)【出願日】2013年6月25日
(86)【国際出願番号】JP2013067326
(87)【国際公開番号】WO2014010406
(87)【国際公開日】20140116
【審査請求日】2016年5月25日
(31)【優先権主張番号】特願2012-154587(P2012-154587)
(32)【優先日】2012年7月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000238005
【氏名又は名称】株式会社フジシールインターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】100101362
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 幸久
(72)【発明者】
【氏名】阪野 真志
(72)【発明者】
【氏名】梅田 英明
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 彰
【審査官】 清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−262981(JP,A)
【文献】 特開2002−086637(JP,A)
【文献】 特開2008−132621(JP,A)
【文献】 特開2009−062052(JP,A)
【文献】 特開2009−006530(JP,A)
【文献】 特開2002−225203(JP,A)
【文献】 特開平11−131037(JP,A)
【文献】 特開平10−279774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B65D 23/08
25/36
65/40
G09F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂を50重量%以上含む樹脂層(A層)と、
ポリスチレン系樹脂を20〜80重量%、ポリプロピレン系樹脂を20〜80重量%含む樹脂層(B層)と、
ポリプロピレン系樹脂を50重量%以上含む樹脂層(C層)とが、
A層/B層/C層/B層/A層の順に、他の層を介さずに積層された積層構造を有し、 A層中に含まれるポリスチレン系樹脂中の、スチレン系単量体に由来する構成単位の含有量が85〜95重量%、ジエンに由来する構成単位の含有量が5〜15重量%であり、 B層中に含まれるポリスチレン系樹脂中の、スチレン系単量体に由来する構成単位の含有量が50〜80重量%、ジエンに由来する構成単位の含有量が20重量%以上50重量%未満であることを特徴とするシュリンクフィルム。
【請求項2】
請求項1に記載のシュリンクフィルムを含むシュリンクラベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シュリンクフィルムに関する。より詳しくは、ポリプロピレン系樹脂から構成される樹脂層とポリスチレン系樹脂から構成される樹脂層を有し、低比重および高収縮性であり、なおかつ、層間強度にも優れる異種積層シュリンクフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、お茶や清涼飲料水等の飲料用容器として、PETボトルなどのプラスチック製ボトルや、ボトル缶等の金属製ボトル等が広く用いられている。これらの容器には、表示や装飾性、機能性の付与のためプラスチックラベルを装着する場合が多く、例えば、装飾性、加工性(容器への追従性)、広い表示面積等のメリットから、シュリンクフィルム(熱収縮性フィルム)に印刷層が設けられたシュリンクラベル等が広く使用されている。
【0003】
上記シュリンクフィルムとしては、フィルムに様々な機能を付与する目的で、異なる樹脂素材を積層した異種積層フィルムが知られている。例えば、低比重性と溶剤によるセンターシール性を両立させたシュリンクフィルムとして、ポリオレフィン樹脂層を芯材とし、その両面に酸変性ポリエチレン樹脂を介してポリスチレン系樹脂を主成分とする樹脂層が積層された熱収縮性ラベル用フィルムが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、低比重性に加え、良好な印刷適性、溶剤シール性、寸法安定性を有するシュリンクフィルムとして、オレフィン系樹脂からなる層の両表面に水添スチレン系樹脂からなる接着樹脂層を介して、スチレン系樹脂からなる両外層を設けた熱収縮性積層フィルムが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の熱収縮性ラベル用フィルムや特許文献2に記載の熱収縮性積層フィルムは、いずれも、収縮性が十分に高くないため、より高収縮性のシュリンクフィルムが求められている。なおかつ、特に異種積層フィルムにおいては、層間剥離によるトラブルの生じない、高い層間強度を有するシュリンクフィルムが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3286594号公報
【特許文献2】特開2002−86637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
即ち、本発明の目的は、ポリスチレン系樹脂を主成分として構成される樹脂層とポリプロピレン系樹脂を主成分として構成される樹脂層とを有する、低比重かつ高収縮性の異種積層フィルムであり、なおかつ、高い層間強度を有するシュリンクフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、シュリンクフィルムを、ポリスチレン系樹脂を特定量含む樹脂層(A層)と、ポリスチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂をそれぞれ特定量含む樹脂層(B層)と、ポリプロピレン系樹脂を特定量含む樹脂層(C層)とが、A層/B層/C層/B層/A層の順に、他の層を介さずに積層された積層構造を有するものとし、さらに、A層、B層中に含まれるポリスチレン系樹脂中の、スチレン系単量体に由来する構成単位の含有量、ジエンに由来する構成単位の含有量を、それぞれ、特定の範囲に制御することにより、低比重かつ高収縮性であり、さらに高い層間強度を有する優れたシュリンクフィルムが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリスチレン系樹脂を50重量%以上含む樹脂層(A層)と、ポリスチレン系樹脂を20〜80重量%、ポリプロピレン系樹脂を20〜80重量%含む樹脂層(B層)と、ポリプロピレン系樹脂を50重量%以上含む樹脂層(C層)とが、A層/B層/C層/B層/A層の順に、他の層を介さずに積層された積層構造を有し、A層中に含まれるポリスチレン系樹脂中の、スチレン系単量体に由来する構成単位の含有量が85〜95重量%、ジエン(特に、共役ジエン)に由来する構成単位の含有量が5〜15重量%であり、B層中に含まれるポリスチレン系樹脂中の、スチレン系単量体に由来する構成単位の含有量が50〜80重量%、ジエン(特に、共役ジエン)に由来する構成単位の含有量が20重量%以上50重量%未満であることを特徴とするシュリンクフィルムを提供する。
【0009】
また、本発明は、前記のシュリンクフィルムを含むシュリンクラベルを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシュリンクフィルムは、上記特定の構成を有することにより、低比重であり、さらに高収縮性を有する。なおかつ、各層間の層間強度が高く、製造工程、流通過程において、層間剥離によるトラブルが生じない。このため、PETボトル等の容器に装着するシュリンクラベル用の基材フィルムとして特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、加温層間剥離試験に用いたサンプルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のシュリンクフィルムは、ポリスチレン系樹脂を50重量%以上含む樹脂層(以下、「A層」と称する場合がある)と、ポリスチレン系樹脂を20〜80重量%、ポリプロピレン系樹脂を20〜80重量%含む樹脂層(以下、「B層」と称する場合がある)と、ポリプロピレン系樹脂を50重量%以上含む樹脂層(以下、「C層」と称する場合がある)とを、少なくとも有する。
【0013】
上記A層中に含まれるポリスチレン系樹脂中の、スチレン系単量体に由来する構成単位の含有量は85〜95重量%であり、ジエンに由来する構成単位の含有量は5〜15重量%である。また、上記B層中に含まれるポリスチレン系樹脂中の、スチレン系単量体に由来する構成単位の含有量は50〜80重量%であり、ジエンに由来する構成単位の含有量は20重量%以上50重量%未満である。
【0014】
他の表現によれば、A層中に含まれるポリスチレン系樹脂を構成する単量体成分全量(100重量%)中の、スチレン系単量体の含有量が85〜95重量%であり、ジエンの含有量が5〜15重量%であることが好ましい。また、上記B層中に含まれるポリスチレン系樹脂を構成する単量体成分全量(100重量%)中の、スチレン系単量体の含有量が50〜80重量%であり、ジエンの含有量が20重量%以上50重量%未満であることが好ましい。
【0015】
本発明のシュリンクフィルムは、フィルム中に、C層の両側(両面側)にA層がB層を介して積層された積層構造、即ち、A層/B層/C層/B層/A層の順に、他の層を介さずに積層された積層構造(3種5層の積層構造)を少なくとも有する。なお、上記のA層/B層/C層/B層/A層の積層構造において、C層の両側に各1層ずつ設けられたA層同士、B層同士は、それぞれ同一の樹脂組成からなる層であることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲内で、異なる樹脂組成の層であってもよい。また、C層の両側に各1層ずつ設けられたA層同士、B層同士は、同一の厚みの層であってもよいし、異なる厚みの層であってもよい。
【0016】
本発明のシュリンクフィルムとしては、特に限定されないが、例えば、A層(表面層)/B層(中間層)/C層(中心層)/B層(中間層)/A層(表面層)の3種5層積層フィルムなどが挙げられる。本発明のシュリンクフィルムは、さらに、A層、B層、C層以外の層を有していてもよい。上記のA層、B層、C層以外の層は、特に限定されないが、上記3種5層の積層構造を含む積層フィルムの製膜工程でインラインで設けることができる層が好ましく、例えば、アンカーコート層、易接着層、帯電防止剤層などのコーティング層が挙げられる。
【0017】
[A層]
上記A層は、ポリスチレン系樹脂を少なくとも含む樹脂層である。上記ポリスチレン系樹脂は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0018】
上記ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体を必須の単量体(モノマー)成分として構成される重合体である。即ち、分子中(1分子中)に、スチレン系単量体に由来する構成単位を少なくとも含む重合体である。上記ポリスチレン系樹脂は、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。
【0019】
上記スチレン系単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−イソブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレンなどが挙げられる。中でも、入手し易さ、材料価格などの観点から、スチレンが好ましい。なお、上記スチレン系単量体は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0020】
上記ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、スチレンの単独重合体である一般ポリスチレン(GPPS)等のスチレン系単量体の単独重合体;2種以上のスチレン系単量体のみを単量体成分として構成される共重合体、スチレン−ジエン系共重合体、水添スチレン−ジエン系共重合体、スチレン−重合性不飽和カルボン酸エステル系共重合体等の共重合体が挙げられる。中でも、スチレン−ジエン系共重合体が好ましい。
【0021】
上記スチレン−ジエン系共重合体は、スチレン系単量体及びジエン(特に、共役ジエン)を必須の単量体成分として構成される共重合体である。即ち、分子中(1分子中)に、スチレン系単量体に由来する構成単位、及びジエン(特に、共役ジエン)に由来する構成単位を少なくとも含む重合体である。
【0022】
上記ジエンとしては、特に限定されないが、共役ジエンが好ましく、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、クロロプレンなどが挙げられる。中でも、層間強度の観点から、1,3−ブタジエンが特に好ましい。なお、上記ジエンは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0023】
上記スチレン−ジエン系共重合体を構成する単量体成分は、さらに、上記スチレン系単量体及び上記ジエン以外の単量体成分を含んでいてもよい。上記スチレン系単量体及び上記ジエン以外の単量体成分としては、例えば、ビニル系モノマー、重合性不飽和カルボン酸エステル、重合性不飽和無水カルボン酸などが挙げられる。
【0024】
上記スチレン−ジエン系共重合体の共重合の形態は、特に限定されないが、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体などが挙げられる。中でも、ブロック共重合体が好ましく、例えば、スチレンブロック(S)−ジエンブロック(D)型、S−D−S型、D−S−D型、S−D−S−D型等が挙げられる。
【0025】
上記スチレン−ジエン系共重合体としては、具体的には、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン・イソプレン−スチレンブロック共重合体(SBIS)などが挙げられる。中でも、好ましくは、SBSである。なお、これらの共重合体は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0026】
A層中に含まれるポリスチレン系樹脂(A層中に含まれるポリスチレン系樹脂全体)中の、スチレン系単量体に由来する構成単位の含有量は、A層中に含まれる全てのポリスチレン系樹脂の総重量(100重量%)に対して、85〜95重量%であり、好ましくは85〜90重量%である。上記含有量を85重量%以上とすることにより、A層及びシュリンクフィルムの収縮性が向上する。一方、上記含有量が95重量%を超える場合には、A層がかたくなり過ぎて、シュリンクフィルムの製造中にフィルムが切れやすくなり、生産性が低下する。
【0027】
A層中に含まれるポリスチレン系樹脂(A層中に含まれるポリスチレン系樹脂全体)中の、ジエンに由来する構成単位の含有量は、A層中に含まれる全てのポリスチレン系樹脂の総重量(100重量%)に対して、5〜15重量%であり、好ましくは10〜15重量%である。なお、特に、A層中に含まれるポリスチレン系樹脂中の、共役ジエンに由来する構成単位の含有量が、上記範囲を満たすことが好ましい。上記含有量を15重量%以下とすることにより、A層及びシュリンクフィルムの収縮性が向上する。一方、上記含有量が5重量%未満の場合には、A層がかたくなり過ぎて、シュリンクフィルムの製造中にフィルムが切れやすくなり、生産性が低下する。
【0028】
なお、A層中に含まれるポリスチレン系樹脂が2種以上のポリスチレン系樹脂を含む混合樹脂である場合、上記スチレン系単量体に由来する構成単位の含有量、及び上記ジエンに由来する構成単位の含有量は、それぞれ、混合樹脂中の含有量である。
【0029】
上記スチレン系単量体に由来する構成単位の含有量及び上記ジエンに由来する構成単位の含有量は、A層中に含まれるポリスチレン系樹脂の組成(各ポリスチレン系樹脂中に含まれる各構成単位の含有量、及びA層中に含まれる全てのポリスチレン系樹脂中の各ポリスチレン系樹脂の含有量)により制御することができる。より具体的には、例えば、A層中に含まれるポリスチレン系樹脂が、スチレン系単量体に由来する構成単位の含有量がs1(重量%)及びジエンに由来する構成単位の含有量がd1(重量%)であるポリスチレン系樹脂(PS1)と、スチレン系単量体に由来する構成単位の含有量がs2(重量%)及びジエンに由来する構成単位の含有量がd2(重量%)であるポリスチレン系樹脂(PS2)のみから構成される混合樹脂であり、上記混合樹脂(PS1とPS2の混合樹脂)100重量%中のPS1の含有量がW1(重量%)、PS2の含有量がW2(重量%)である場合には、上記混合樹脂中のスチレン系単量体に由来する構成単位の含有量及びジエンに由来する構成単位の含有量は、一般的に、以下のように制御できる。なお、B層中のスチレン系単量体に由来する構成単位の含有量及びジエンに由来する構成単位の含有量についても同様である。
スチレン系単量体に由来する構成単位の含有量(重量%)=(s1×W1+s2×W2)/100
ジエンに由来する構成単位の含有量(重量%)=(d1×W1+d2×W2)/100
【0030】
上記構成単位(スチレン系単量体に由来する構成単位及びジエンに由来する構成単位)や上記構成単位の含有量の分析・測定は、特に限定されないが、例えば、核磁気共鳴(NMR)、ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)などにより行うことができる。なお、他の樹脂層(B層、C層など)や樹脂における構成単位や構成単位の含有量の分析・測定も同様にして行うことができる。
【0031】
上記ポリスチレン系樹脂は、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、BASF社製「スタイロルクス S」(SBS)などが挙げられる。
【0032】
A層中のポリスチレン系樹脂の含有量は、A層の総重量(100重量%)に対して、50重量%以上(50〜100重量%)であり、好ましくは80〜100重量%、より好ましくは90〜100重量%である。上記含有量が50重量%未満では、A層の収縮性が低下し、シュリンクフィルムの収縮性が低下する。なお、A層中に2種以上のポリスチレン系樹脂が含まれる場合には、上記「A層中のポリスチレン系樹脂の含有量」は、A層中に含まれる全てのポリスチレン系樹脂の含有量の合計量である。また、特に、A層中のスチレン−ジエン系共重合体の含有量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0033】
上記A層は、必要に応じて、上記ポリスチレン系樹脂以外の成分(添加成分)、例えば、滑剤、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、難燃剤、着色剤、ピニング剤(アルカリ土類金属)等を含んでいてもよい。
【0034】
[B層]
上記B層は、ポリスチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂を少なくとも含む樹脂層である。上記ポリスチレン系樹脂及び上記ポリプロピレン系樹脂は、それぞれ、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0035】
上記ポリスチレン系樹脂(即ち、B層中に含まれるポリスチレン系樹脂)は、スチレン系単量体を必須の単量体(モノマー)成分として構成される重合体である。即ち、分子中(1分子中)に、スチレン系単量体に由来する構成単位を少なくとも含む重合体である。
上記ポリスチレン系樹脂は、単独重合体であってもよいし、共重合体であってもよい。
【0036】
上記スチレン系単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−イソブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレンなどが挙げられる。中でも、入手し易さ、材料価格などの観点から、スチレンが好ましい。なお、上記スチレン系単量体は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0037】
上記ポリスチレン系樹脂(即ち、B層中に含まれるポリスチレン系樹脂)としては、特に限定されないが、例えば、スチレンの単独重合体である一般ポリスチレン(GPPS)等のスチレン系単量体の単独重合体;2種以上のスチレン系単量体のみを単量体成分として構成される共重合体、スチレン−ジエン系共重合体、水添スチレン−ジエン系共重合体、スチレン−重合性不飽和カルボン酸エステル系共重合体等の共重合体が挙げられる。中でも、スチレン−ジエン系共重合体が好ましい。
【0038】
上記スチレン−ジエン系共重合体は、スチレン系単量体及びジエン(特に、共役ジエン)を必須の単量体成分として構成される共重合体である。即ち、分子中(1分子中)に、スチレン系単量体に由来する構成単位、及びジエン(特に、共役ジエン)に由来する構成単位を少なくとも含む重合体である。
【0039】
上記ジエンとしては、特に限定されないが、共役ジエンが好ましく、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、クロロプレンなどが挙げられる。中でも、1,3−ブタジエンが特に好ましい。なお、上記ジエンは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0040】
上記スチレン−ジエン系共重合体を構成する単量体成分は、さらに、上記スチレン系単量体及び上記ジエン以外の単量体成分を含んでいてもよい。上記スチレン系単量体及び上記ジエン以外の単量体成分としては、例えば、ビニル系モノマー、重合性不飽和カルボン酸エステル、重合性不飽和無水カルボン酸などが挙げられる。
【0041】
上記スチレン−ジエン系共重合体の共重合の形態は、特に限定されないが、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体などが挙げられる。中でも、ブロック共重合体が好ましく、例えば、スチレンブロック(S)−ジエンブロック(D)型、S−D−S型、D−S−D型、S−D−S−D型等が挙げられる。
【0042】
上記スチレン−ジエン系共重合体としては、具体的には、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン・イソプレン−スチレンブロック共重合体(SBIS)などが挙げられる。中でも、好ましくは、SBSである。なお、これらの共重合体は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0043】
B層中に含まれるポリスチレン系樹脂(B層中に含まれるポリスチレン系樹脂全体)中の、スチレン系単量体に由来する構成単位の含有量は、B層中に含まれる全てのポリスチレン系樹脂の総重量(100重量%)に対して、50〜80重量%(50重量%以上80重量%以下)であり、好ましくは60〜80重量%である。上記含有量を80重量%以下にすることによりB層中に含まれるポリスチレン系樹脂及びB層がやわらかくなり、シュリンクフィルムの層間強度、特に常温時の層間強度が向上する。一方、上記含有量が50重量%未満では、B層がやわらかくなり過ぎて、シュリンク加工時(加温時)の層間強度が低下して、シュリンク加工時に層間剥離(デラミネーション)が生じやすくなる。
【0044】
B層中に含まれるポリスチレン系樹脂(B層中に含まれるポリスチレン系樹脂全体)中の、ジエンに由来する構成単位の含有量は、B層中に含まれる全てのポリスチレン系樹脂の総重量(100重量%)に対して、20重量%以上50重量%未満であり、好ましくは20〜40重量%である。なお、特に、B層中に含まれるポリスチレン系樹脂中の、共役ジエンに由来する構成単位の含有量が、上記範囲を満たすことが好ましい。上記含有量を20重量%以上にすることによりB層中に含まれるポリスチレン系樹脂及びB層がやわらかくなり、シュリンクフィルムの層間強度、特に常温時の層間強度が向上する。一方、上記含有量が50重量%以上では、B層がやわらかくなり過ぎて、シュリンク加工時(加温時)の層間強度が低下して、シュリンク加工時に層間剥離(デラミネーション)が生じやすくなる。
【0045】
なお、B層中に含まれるポリスチレン系樹脂が2種以上のポリスチレン系樹脂を含む混合樹脂である場合、上記スチレン系単量体に由来する構成単位の含有量、及び上記ジエンに由来する構成単位の含有量は、それぞれ、混合樹脂中の含有量である。
【0046】
上記ポリスチレン系樹脂(即ち、B層中に含まれるポリスチレン系樹脂)は、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、BASF社製「スタイロルクス T」(SBS)、旭化成(株)製「L462」(SBS)などが挙げられる。
【0047】
上記ポリプロピレン系樹脂(即ち、B層中に含まれるポリプロピレン系樹脂)は、プロピレンを必須の単量体成分として構成される重合体である。即ち、分子中(1分子中)にプロピレンに由来する構成単位を少なくとも含む重合体である。上記ポリプロピレン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン);プロピレンと1種以上のオレフィン(プロピレン以外のオレフィン)を必須の単量体成分として構成される共重合体(プロピレン共重合体)等が挙げられる。上記プロピレン共重合体としては、中でも、プロピレンと1種以上のα−オレフィンを必須の単量体成分として構成される共重合体(プロピレン−α−オレフィン共重合体)が好ましい。上記プロピレン共重合体は、分子中(1分子中)にプロピレンに由来する構成単位およびオレフィンに由来する構成単位を少なくとも含む共重合体である。また、上記プロピレン−α−オレフィン共重合体は、分子中(1分子中)にプロピレンに由来する構成単位およびα−オレフィンに由来する構成単位を少なくとも含む共重合体である。上記プロピレン−α−オレフィン共重合体の共重合成分として用いられるα−オレフィンとしては、例えば、エチレンや、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどの炭素数4〜20のα−オレフィンが挙げられる。上記α−オレフィンは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。上記プロピレン共重合体(プロピレン−α−オレフィン共重合体等)は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。
【0048】
上記プロピレン共重合体としては、上記の中でも、エチレンを共重合成分とするエチレン−プロピレンランダム共重合体(プロピレン−エチレンランダム共重合体とも称する)が特に好ましい。上記エチレン−プロピレンランダム共重合体において、エチレンとプロピレンの比率は、例えば、前者/後者(重量比)=2/98〜5/95(好ましくは3/97〜4.5/95.5)程度の範囲から選択することができる。また、上記プロピレン共重合体(特に、エチレン−プロピレンランダム共重合体)としては、低温収縮性やシュリンクフィルムの腰の強さの観点から、アイソタクチックインデックスが90%以上のものが好ましい。
【0049】
上記ポリプロピレン系樹脂(即ち、B層中に含まれるポリプロピレン系樹脂)は、製膜加工適性の観点から、メタロセン触媒を用いて重合して得られたポリプロピレン系樹脂(メタロセン触媒系ポリプロピレン系樹脂)が好ましい。上記メタロセン触媒としては、公知乃至慣用のオレフィン重合用メタロセン触媒を用いることができる。上記ポリプロピレン系樹脂の重合方法(共重合方法)としては、特に限定されず、スラリー法、溶液重合法、気相法などの公知の重合方法が挙げられる。
【0050】
上記ポリプロピレン系樹脂は、上記の中でも、メタロセン触媒系ホモポリプロピレン、メタロセン触媒系プロピレン−α−オレフィン共重合体(特に、メタロセン触媒系プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、中でも、メタロセン触媒系プロピレン−エチレンランダム共重合体)が特に好ましい。
【0051】
上記ポリプロピレン系樹脂(B層中に含まれるポリプロピレン系樹脂)中のプロピレン含有量(即ち、ポリプロピレン系樹脂中のプロピレンに由来する構成単位の含有量)は、ポリプロピレン系樹脂の総重量(100重量%)に対して、50〜100重量%が好ましく、より好ましくは60〜100重量%である。
【0052】
上記ポリプロピレン系樹脂(B層中に含まれるポリプロピレン系樹脂)は、市販品を用いてもよい。市販品としては、日本ポリプロ(株)製「ウィンテック WFX6」(メタロセン触媒系プロピレン−エチレンランダム共重合体)、三菱化学(株)製「ゼラス #7000、#5000」などが市場で入手できる。
【0053】
B層中のポリスチレン系樹脂の含有量は、B層の総重量(100重量%)に対して、20〜80重量%である。上記含有量が20重量%未満の場合にはA層とB層の層間強度が低下する。一方、上記含有量が80重量%を超える場合にはC層とB層の層間強度が低下する。さらに、シュリンクフィルムを低比重とする観点からは、上記含有量は、20〜50重量%が好ましく、より好ましくは25〜45重量%、さらに好ましくは30〜40重量%である。なお、B層中に2種以上のポリスチレン系樹脂が含まれる場合には、上記「B層中のポリスチレン系樹脂の含有量」は、B層中に含まれる全てのポリスチレン系樹脂の含有量の合計量である。また、特に、B層中のスチレン−ジエン系共重合体の含有量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0054】
B層中のポリプロピレン系樹脂の含有量は、B層の総重量(100重量%)に対して、20〜80重量%である。上記含有量が20重量%未満の場合にはC層とB層の層間強度が低下する。一方、上記含有量が80重量%を超える場合にはA層とB層の層間強度が低下する。さらに、シュリンクフィルムを低比重とする観点からは、上記含有量は、35〜60重量%が好ましく、より好ましくは40〜55重量%、さらに好ましくは45〜55重量%である。なお、B層中に2種以上のポリプロピレン系樹脂が含まれる場合には、上記「B層中のポリプロピレン系樹脂の含有量」は、B層中に含まれる全てのポリプロピレン系樹脂の含有量の合計量である。
【0055】
B層は、熱収縮時の容器へのフィット性を向上する観点から、ポリエチレン系樹脂を含んでいてもよい。上記ポリエチレン系樹脂(即ち、B層中に含まれるポリエチレン系樹脂)は、エチレンを必須の単量体成分として構成される重合体である。即ち、分子中(1分子中)にエチレンに由来する構成単位を少なくとも含む重合体である。上記ポリエチレン系樹脂としては、特に限定されず、公知乃至慣用のポリエチレンを用いることが可能で、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)などが挙げられる。中でも、密度が0.930(g/cm3)未満の低密度ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンを含む)が好ましく、特に好ましくは直鎖状低密度ポリエチレンである。さらに、メタロセン触媒を用いて重合した直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセン触媒系LLDPE)が最も好ましい。上記ポリエチレン系樹脂は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。上記ポリエチレン系樹脂としては、市販品を用いることも可能であり、例えば、宇部丸善ポリエチレン(株)製LLDPE「2040FC」、日本ポリエチレン(株)製「カーネル KF380」、「カーネル KF260T」、「カーネルKS340T」や(株)プライムポリマー製「エボリュー SP2040」などが市場で入手可能である。
【0056】
B層中のポリエチレン系樹脂の含有量は、B層の総重量(100重量%)に対して、1〜10重量%が好ましく、より好ましくは1〜5重量%である。
【0057】
B層は、シュリンクフィルムの収縮性向上の観点から、高分子可塑剤を含んでいてもよい。上記高分子可塑剤としては、例えば、ロジン系樹脂(ロジン、重合ロジン、水添ロジン及びそれらの誘導体、樹脂酸ダイマーなど)、テルペン系樹脂(テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペン−フェノール樹脂など)、石油樹脂(脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂)などが挙げられる。中でも、石油樹脂が好ましい。上記高分子可塑剤は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。上記高分子可塑剤としては、荒川化学工業(株)製「アルコン」、ヤスハラケミカル(株)製「クリアロン」、出光興産(株)製「アイマーブ」などが市販品として入手できる。
【0058】
B層は、必要に応じて、上記以外の成分(添加成分)、例えば、滑剤、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、ピニング剤(アルカリ土類金属)等を含んでいてもよい。
【0059】
B層は、本発明の効果を損なわない範囲内で、回収原料(再生材)を含んでいてもよい。その場合のB層中の回収原料の含有量は、リサイクル性の観点から、B層の総重量(100重量%)に対して、1〜75重量%が好ましく、より好ましくは1重量%以上、50重量%未満である。ただし、回収原料は本発明のシュリンクフィルムの製造より生じたもの(いわゆる自己回収品)が好ましい。
【0060】
[C層]
上記C層は、ポリプロピレン系樹脂を少なくとも含む樹脂層である。上記ポリプロピレン系樹脂は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0061】
上記ポリプロピレン系樹脂(即ち、C層中に含まれるポリプロピレン系樹脂)は、プロピレンを必須の単量体成分として構成される重合体である。即ち、分子中(1分子中)にプロピレンに由来する構成単位を少なくとも含む重合体である。上記ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン);プロピレンと1種以上のオレフィン(プロピレン以外のオレフィン)を必須の単量体成分として構成される共重合体(プロピレン共重合体)等が挙げられる。上記プロピレン共重合体としては、中でも、プロピレンと1種以上のα−オレフィンを必須の単量体成分として構成される共重合体(プロピレン−α−オレフィン共重合体)が好ましい。上記プロピレン共重合体は、分子中(1分子中)にプロピレンに由来する構成単位およびオレフィンに由来する構成単位を少なくとも含む共重合体である。また、上記プロピレン−α−オレフィン共重合体は、分子中(1分子中)にプロピレンに由来する構成単位およびα−オレフィンに由来する構成単位を少なくとも含む共重合体である。上記プロピレン−α−オレフィン共重合体の共重合成分として用いられるα−オレフィンとしては、例えば、エチレンや、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどの炭素数4〜20のα−オレフィンが挙げられる。上記α−オレフィンは、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。上記プロピレン共重合体(プロピレン−α−オレフィン共重合体等)は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。
【0062】
上記プロピレン共重合体としては、上記の中でも、エチレンを共重合成分とするエチレン−プロピレンランダム共重合体(プロピレン−エチレンランダム共重合体とも称する)が特に好ましい。上記エチレン−プロピレンランダム共重合体において、エチレンとプロピレンの比率は、例えば、前者/後者(重量比)=2/98〜5/95(好ましくは3/97〜4.5/95.5)程度の範囲から選択することができる。また、上記プロピレン共重合体(特に、エチレン−プロピレンランダム共重合体)としては、低温収縮性やシュリンクフィルムの腰の強さの観点から、アイソタクチックインデックスが90%以上のものが好ましい。
【0063】
上記ポリプロピレン系樹脂(即ち、C層中に含まれるポリプロピレン系樹脂)は、60〜80℃程度の低温収縮性及び熱収縮時の容器へのフィット性を向上する観点から、メタロセン触媒を用いて重合して得られたポリプロピレン系樹脂(メタロセン触媒系ポリプロピレン系樹脂)が好ましい。上記メタロセン触媒としては、公知乃至慣用のオレフィン重合用メタロセン触媒を用いることができる。上記ポリプロピレン系樹脂の重合方法(共重合方法)としては、特に限定されず、スラリー法、溶液重合法、気相法などの公知の重合方法が挙げられる。
【0064】
上記ポリプロピレン系樹脂は、上記の中でも、メタロセン触媒系ホモポリプロピレン、メタロセン触媒系プロピレン−α−オレフィン共重合体(特に、メタロセン触媒系プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、中でも、メタロセン触媒系プロピレン−エチレンランダム共重合体)が特に好ましい。
【0065】
上記ポリプロピレン系樹脂(C層中に含まれるポリプロピレン系樹脂)中のプロピレン含有量(即ち、ポリプロピレン系樹脂中のプロピレンに由来する構成単位の含有量)は、シュリンクフィルムの収縮性、強度、比重の観点から、ポリプロピレン系樹脂の総重量(100重量%)に対して、50〜100重量%が好ましく、より好ましくは60〜100重量%である。
【0066】
上記ポリプロピレン系樹脂の重量平均分子量は、C層を形成する樹脂の溶融挙動を好ましい範囲に制御する観点から、10万〜50万が好ましく、より好ましくは20万〜40万である。
【0067】
上記ポリプロピレン系樹脂(C層中に含まれるポリプロピレン系樹脂)は、市販品を用いてもよく、日本ポリプロ(株)製「ウィンテック WFX6」(メタロセン触媒系プロピレン−エチレンランダム共重合体)、三菱化学(株)製「ゼラス #7000、#5000」などが市場で入手できる。
【0068】
C層中のポリプロピレン系樹脂の含有量は、C層の総重量(100重量%)に対して、50重量%以上(50〜100重量%)であり、好ましくは55〜95重量%、より好ましくは55〜90重量%、さらに好ましくは55〜85重量%である。C層中のポリプロピレン系樹脂の含有量を50重量%以上とすることにより、シュリンクフィルムが低比重となり、また、シュリンクフィルムの収縮性が向上する。なお、C層中に2種以上のポリプロピレン系樹脂が含まれる場合には、上記「C層中のポリプロピレン系樹脂の含有量」は、C層中に含まれる全てのポリプロピレン系樹脂の含有量の合計量である。
【0069】
C層は、フィルム切れを防止し、シュリンク加工性を向上させる観点から、ポリエチレン系樹脂を含んでいてもよい。上記ポリエチレン系樹脂(即ち、C層中に含まれるポリエチレン系樹脂)は、エチレンを必須の単量体成分として構成される重合体である。即ち、分子中(1分子中)にエチレンに由来する構成単位を少なくとも含む重合体である。上記ポリエチレン系樹脂としては、特に限定されず、公知乃至慣用のポリエチレンを用いることが可能で、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)などが挙げられる。中でも、密度が0.930(g/cm3)未満の低密度ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンを含む)が好ましく、特に好ましくは直鎖状低密度ポリエチレンである。さらに、メタロセン触媒を用いて重合した直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセン触媒系LLDPE)が最も好ましい。上記ポリエチレン系樹脂は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。上記ポリエチレン系樹脂としては、市販品を用いることも可能であり、例えば、宇部丸善ポリエチレン(株)製LLDPE「2040FC」、日本ポリエチレン(株)製「カーネル KF380」、「カーネル KF260T」、「カーネルKS340T」や(株)プライムポリマー製「エボリュー SP2040」などが市場で入手可能である。
【0070】
C層中のポリエチレン系樹脂の含有量は、C層の総重量(100重量%)に対して、1〜10重量%が好ましく、より好ましくは1〜5重量%である。
【0071】
C層は、シュリンクフィルムの収縮性向上の観点から、高分子可塑剤を含んでいてもよい。上記高分子可塑剤としては、例えば、ロジン系樹脂(ロジン、重合ロジン、水添ロジン及びそれらの誘導体、樹脂酸ダイマーなど)、テルペン系樹脂(テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペン−フェノール樹脂など)、石油樹脂(脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂)などが挙げられる。中でも、石油樹脂が好ましい。上記高分子可塑剤は、1種のみを使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。上記高分子可塑剤としては、荒川化学工業(株)製「アルコン」、ヤスハラケミカル(株)製「クリアロン」、出光興産(株)製「アイマーブ」などが市販品として入手できる。
【0072】
高分子可塑剤を添加する場合の、C層中の高分子可塑剤(特に、石油樹脂)の含有量は、C層の総重量(100重量%)に対して、5〜30重量%が好ましく、より好ましくは10〜25重量%である。上記含有量が30重量%を超えると、シュリンクフィルムが脆くなる場合がある。一方、上記含有量が5重量%未満では高分子可塑剤の添加の効果が小さい場合がある。
【0073】
C層は、必要に応じて、上記以外の成分(添加成分)、例えば、滑剤、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、ピニング剤(アルカリ土類金属)等を含んでいてもよい。
【0074】
上記C層は、本発明の効果を損なわない範囲内で、回収原料を含んでいてもよい。その場合のC層中の回収原料の含有量は、リサイクル性、収縮性の観点から、C層の総重量(100重量%)に対して、1〜75重量%が好ましく、より好ましくは1重量%以上、50重量%未満である。なお、回収原料とは、製品化の前後やフィルムエッジなどの非製品部分、中間製品から製品フィルムを採取した際の残余部分や規格外品などのフィルム屑、ポリマー屑からなるリサイクル原料である。ただし、回収原料は本発明のシュリンクフィルムの製造より生じたもの(いわゆる自己回収品)が好ましい。
【0075】
[シュリンクフィルム]
本発明のシュリンクフィルムは、A層とB層とC層とが、A層/B層/C層/B層/A層の順に、他の層を介さずに積層された積層構造(3種5層の積層構造)を少なくとも含む。本発明のシュリンクフィルムは、特に限定されないが、A層/B層/C層/B層/A層の3種5層積層シュリンクフィルムであることが好ましい。なお、上記の「A層/B層/C層/B層/A層の順に、他の層を介さずに積層された」とは、より具体的には、C層の両面にB層が、B層とC層の間に接着剤層などの他の層を挟まずに積層されており、さらに、それぞれのB層のC層側とは反対側の表面にA層が、A層とB層の間に接着剤層などの他の層を挟まずに積層されていることを示す。
【0076】
上記A層/B層/C層/B層/A層の3種5層の積層構造は共押出により形成されることが好ましい。
【0077】
本発明のシュリンクフィルムは、収縮性の観点から、配向したフィルム(1軸配向フィルム、2軸配向フィルムまたは多軸配向フィルム)である。本発明のシュリンクフィルム中のA層、B層、C層の全ての樹脂層が配向していることが好ましい。全ての樹脂層が無配向の場合には、良好な収縮性を得ることができない。本発明のシュリンクフィルムは、特に限定されないが、1軸配向フィルム又は2軸配向フィルムが好ましく、中でも、フィルムの1軸方向[特に、フィルムの幅方向(筒状シュリンクラベルではラベルの周方向となる方向)]に強く配向しているフィルム(特に、実質的に幅方向の1軸配向フィルム)が好ましい。フィルムの長手方向(幅方向と直交する方向)に強く配向した実質的に長手方向の1軸配向フィルムであってもよい。
【0078】
本発明のシュリンクフィルムにおいて、A層の厚み(1層のみの厚み)は、特に限定されないが、1〜20μmが好ましく、より好ましくは3〜15μmである。A層の厚みが20μmを超えると、シュリンクフィルムの比重が高くなり、低比重を達成できなくなる場合がある。一方、1μm未満では、シュリンクフィルムの収縮性が低下(熱収縮率が低下)する場合がある。
【0079】
本発明のシュリンクフィルムにおいて、B層の厚み(1層のみの厚み)は、特に限定されないが、1〜20μmが好ましく、より好ましくは3〜15μmである。B層の厚みが20μmを超えると、シュリンクフィルムの比重が高くなり、低比重を達成できなくなる場合がある。一方、1μm未満では、層間強度が低下する場合がある。
【0080】
なお、高収縮性を得る観点からは、A層の厚み(1層のみの厚み)は、B層の厚み(1層のみの厚み)以上であることが好ましい。
【0081】
本発明のシュリンクフィルムにおいて、C層の厚み(1層のみの厚み)は、特に限定されないが、10〜70μmが好ましく、より好ましくは15〜50μmである。C層の厚みが70μmを超えると熱収縮率が低下する場合がある。一方、10μm未満では、A層とC層との間の収縮応力差が大きくなりすぎてシュリンク加工時の層間剥離を抑制できなくなる場合や収縮が急激に起こり仕上がり性が低下する場合がある。
【0082】
本発明のシュリンクフィルムにおいて、シュリンクフィルムの総厚み100%に対する、A層全体の厚み(全てのA層の厚みの合計)の割合は5〜40%が好ましく、より好ましくは10〜30%である。上記割合が5%未満の場合には、シュリンクフィルムの収縮性が低下(熱収縮率が低下)する場合がある。一方、上記割合が40%を超える場合には、シュリンクフィルムの比重が高くなり低比重を達成できなくなる場合や、シュリンク加工時の層間剥離が生じる場合がある。
【0083】
本発明のシュリンクフィルムにおいて、シュリンクフィルムの総厚み100%に対する、B層全体の厚み(全てのB層の厚みの合計)の割合は5〜25%が好ましく、より好ましくは10〜25%である。上記割合が5%未満の場合には、シュリンク加工前後において層間剥離が生じる場合がある。一方、上記割合が25%を超える場合には、シュリンクフィルムの収縮性が低下(熱収縮率が低下)する場合や、シュリンクフィルムの比重が高くなり低比重を達成できなくなる場合がある。
【0084】
本発明のシュリンクフィルムにおいて、シュリンクフィルムの総厚み100%に対する、C層の厚みの割合は50〜80%が好ましく、より好ましくは50〜70%である。上記割合が50%未満の場合(C層の厚みが薄すぎる場合)には、シュリンクフィルムの比重が高くなり、低比重を達成できなくなる場合がある。一方、上記割合が80%を超える場合(C層の厚みが厚すぎる場合)には、シュリンクフィルムの収縮性が低下(熱収縮率が低下)する場合がある。
【0085】
本発明のシュリンクフィルムの総厚みは、特に限定されないが、20〜100μmが好ましく、より好ましくは20〜80μm、さらに好ましくは20〜60μmである。
【0086】
本発明のシュリンクフィルム(シュリンク加工前)の、23℃(常温)における層間強度(常温層間強度と称する場合がある)は、1.0(N/15mm)以上が好ましく、より好ましくは1.4(N/15mm)以上である。上記層間強度が1.0(N/15mm)未満の場合には、印刷や筒状に成形する加工等の加工工程(シュリンクラベルの製造工程)時に、樹脂層同士がはがれて、生産性が低下したり、品質上の問題となる場合がある。なお、上記層間強度は、T型剥離試験(JIS K 6854−3に準拠、引張速度:200mm/分)における、シュリンクフィルム中で最も層間強度の低い層間の強度をいう。
【0087】
本発明のシュリンクフィルム(シュリンク加工前)の、主配向方向の、90℃、10秒(温水処理)における熱収縮率(「熱収縮率(90℃、10秒)」と称する場合がある)は、特に限定されないが、45%以上が好ましく、より好ましくは45〜80%である。
熱収縮率(90℃、10秒)が45%未満の場合には、シュリンクラベルを容器に熱で密着させる工程において、収縮が十分でないため、容器の形に追従困難となり、特に複雑な形状の容器に対して仕上がりが悪くなることがある。なお、上記「主配向方向」とは主に延伸処理が施された方向(最も熱収縮率が大きい方向)であり、一般的には長手方向又は幅方向であり、例えば、幅方向に実質的に1軸延伸されたフィルム(実質的に幅方向の1軸配向フィルム)の場合には幅方向である。
【0088】
なお、本発明のシュリンクフィルム(シュリンク加工前)の、主配向方向と直交する方向の熱収縮率(90℃、10秒)は、特に限定されないが、−5〜10%が好ましい。
【0089】
本発明のシュリンクフィルム(シュリンク加工前)の密度(比重)は、特に限定されないが、0.97g/cm3以下(例えば、0.90〜0.97g/cm3)が好ましく、より好ましくは0.90〜0.95g/cm3である。上記密度(比重)が0.97g/cm3以下であることにより、シュリンクフィルムが軽量となるため好ましい。また、シュリンクラベルとして用いたときには、回収時に、比重の違いを利用して、PETボトルなどの容器と容易に分別ができるため好ましい。
【0090】
本発明のシュリンクフィルムのヘイズ(ヘーズ)値[JIS K 7105準拠、厚み40μm換算、単位:%]は、15%未満が好ましく、より好ましくは7.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満である。ヘイズ値が15%以上の場合には、シュリンクフィルムの内側(シュリンクラベルを容器に装着した時に容器側になる面側)に印刷を施し、シュリンクフィルムを通して印刷を見せるシュリンクラベルの場合、製品とした際に、印刷が曇り、装飾性が低下することがある。ただし、ヘイズ値が15%以上の場合であっても、シュリンクフィルムを通して印刷を見せる上記用途以外の用途においては十分に使用可能である。
【0091】
本発明のシュリンクフィルムは、溶融製膜法によって作製されることが好ましい。また、上記積層構造は共押出(多層押出)により形成されることが好ましい。即ち、本発明のシュリンクフィルムは、溶融押出法(特に、共押出法)により製造されることが好ましい。より具体的には、本発明のシュリンクフィルムは、溶融押出(共押出)により未延伸フィルム(未延伸シート)を形成した後、該未延伸フィルムを延伸することにより製造されることが好ましい。さらに、上記シュリンクフィルムの表面には、必要に応じて、コロナ放電処理等の慣用の表面処理が施されてもよい。
【0092】
上記シュリンクフィルムの各樹脂層(例えば、A層、B層、C層)を形成する原料として、混合原料を用いる場合、各成分の混合方法は特に限定されず、例えば、ドライブレンドにより混合原料を得てもよいし、1軸又は2軸混練機を用いて各成分を溶融混練して混合原料を得てもよい。また、マスターペレット(例えば、特定の成分を比較的高濃度に混合したもの)を用いてもよい。
【0093】
上記溶融押出(共押出)においては、それぞれ所定の温度に設定した複数の押出機に、各樹脂層(A層、B層、C層など)を形成する原料(樹脂又は樹脂組成物)をそれぞれ投入し、Tダイ、サーキュラーダイなどから溶融押出(共押出)する。この際、マニホールドやフィードブロックを用いて、所定の層構成とすることが好ましい。また必要に応じて、ギアポンプを用いて供給量を調節してもよく、さらにフィルターを用いて、異物を除去するとフィルム破れが低減できるため好ましい。なお、押出温度は、用いる原料の種類によっても異なり、特に限定されないが、各樹脂層を形成する原料の成型温度領域が近接していることが好ましい。即ち、各樹脂層の押出温度は近接していることが好ましい。具体的には、A層を形成する原料の押出温度は180〜240℃が好ましく、B層を形成する原料の押出温度は180〜240℃、C層を形成する原料の押出温度は180〜240℃が好ましい。また、合流部やダイの温度は200〜240℃とすることが好ましい。上記共押出したポリマーを、冷却ドラム(冷却ロール)などを用いて急冷することにより、未延伸積層フィルム(シート)を得ることができる。
【0094】
1軸配向、2軸配向などの配向フィルムは、未延伸積層フィルムを延伸することにより作製できる。上記延伸は、所望の配向に応じて選択でき、例えば、長手方向(フィルムの製造ライン方向。縦方向又はMD方向とも称する)および幅方向(長手方向と直交する方向。横方向又はTD方向とも称する)の2軸延伸でもよいし、長手方向または幅方向の1軸延伸でもよい。また、延伸方式は、ロール方式、テンター方式、チューブ方式等の何れの方式を用いてもよい。上記延伸処理における延伸条件は、用いる原料の種類やシュリンクフィルムの要求特性等によって異なり、特に限定されない。一般的には70〜110℃(好ましくは、70〜95℃)の延伸温度で、少なくとも長手方向、幅方向のうちのいずれか一方に2〜8倍程度の延伸倍率で行うことが好ましい。例えば、幅方向に実質的に1軸延伸されたフィルムの延伸処理は、例えば、必要に応じて長手方向に1.01〜1.5倍(好ましくは1.05〜1.3倍)程度に延伸した後、幅方向に2〜7倍(好ましくは3〜6.5倍、さらに好ましくは4〜6倍)程度延伸することが好ましい。
【0095】
本発明のシュリンクフィルムにおいて、A層は、スチレン系単量体に由来する構成単位の含有量が多く、ジエンに由来する構成単位の含有量の少ない、比較的かたいポリスチレン系樹脂を主成分とする。上記組成のA層は高収縮性であるため、A層を設けることにより、シュリンクフィルムの収縮性が向上し(熱収縮率が高くなり)、本発明のシュリンクフィルムを含むシュリンクラベル(特に筒状シュリンクラベル)の容器に対する装着性、仕上がり性が良好となる。特に複雑な形状の容器に対しても、優れた装着性を発揮する。
また、C層は、比重の小さなポリプロピレン系樹脂を主成分とするため、C層を設けることにより、シュリンクフィルムが低比重となり、シュリンクフィルムを軽量化できる。さらに、本発明のシュリンクフィルムを含むシュリンクラベルが、回収時に比重の違いを利用してPETボトル等の容器と容易に分別ができるため、リサイクル性に優れる。
【0096】
しかしながら、A層のポリスチレン系樹脂とC層のポリプロピレン系樹脂とは、親和性が悪いため、一般的には、A層とC層とを積層したフィルムは、両層間に層間剥離が生じやすい。さらに、A層のポリスチレン系樹脂とC層のポリプロピレン系樹脂とは、熱収縮挙動が大きく異なるため、A層とC層とを有する積層シュリンクフィルムにシュリンク加工(熱収縮加工)を施した場合には、A層とC層との熱収縮挙動の違いに起因して層間剥離がより生じやすくなる。これに対して、A層とC層との間に、A層に用いられるポリスチレン系樹脂とC層に用いられるポリプロピレン系樹脂との混合樹脂からなる中間層を設けることにより層間強度を向上させることを試みたが、ポリスチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂との親和性が悪いことに起因すると考えられるが、上記中間層では十分な層間強度を得ることはできなかった。
【0097】
そこで、本発明者らはさらに検討した結果、A層に用いられるポリスチレン系樹脂よりも、スチレン系単量体に由来する構成単位の含有量が少なく、ジエンに由来する構成単位の含有量の多い、比較的やわらかいポリスチレン系樹脂と、ポリプロピレン系樹脂を特定の割合で含む樹脂層(B層)を、A層とC層との間に設けることにより、層間強度が向上した優れた積層シュリンクフィルムが得られることを見出した。本発明のシュリンクフィルムにおけるB層は、ポリスチレン系樹脂およびポリプロピレン系樹脂を、それぞれ、特定量以上含むため、ポリスチレン系樹脂を主成分とするA層とポリプロピレン系樹脂を主成分とするC層の両方に対して、高い接着性を有する。さらに、B層の柔軟性に主たる影響を及ぼすポリスチレン系樹脂中の、スチレン系単量体に由来する構成単位の含有量及びジエンに由来する構成単位の含有量が特定範囲にあり、B層は適切な範囲の柔軟性を有する。このため、本発明のシュリンクフィルムは、常温時にも加温時(シュリンク加工時)にも高い層間強度を有する。
【0098】
[シュリンクラベル]
本発明のシュリンクフィルムはシュリンクラベルとして好ましく用いることができる。
なお、本明細書において、本発明のシュリンクフィルムを含むシュリンクラベルを「本発明のシュリンクラベル」と称する場合がある。本発明のシュリンクラベルとしては、例えば、本発明のシュリンクフィルム(基材)の少なくとも一方の面側に印刷層を有するシュリンクラベルが挙げられる。また、本発明のシュリンクラベルは、印刷層の他にも、保護層、アンカーコート層、プライマーコート層、接着剤層(例えば、感圧性接着剤層、感熱性接着剤層等)、コーティング層などを有していてもよく、さらに、不織布、紙等の層を有していてもよい。本発明のシュリンクラベルの層構成としては、例えば、印刷層/A層/B層/C層/B層/A層、印刷層/A層/B層/C層/B層/A層/印刷層などが好ましい。なお、本発明のシュリンクフィルムは、印刷層を設けない場合にも、それ自体でシュリンクラベルとして用いることも可能である。即ち、本発明のシュリンクラベルは、本発明のシュリンクフィルムのみからなるシュリンクラベルであってもよい。
【0099】
上記印刷層は、例えば、商品名やイラスト、取り扱い注意事項等を表示した層である。
上記印刷層は、例えば、印刷インキを塗布することにより形成される。塗布の方法は、生産性、加工性などの観点から、シュリンクフィルム製膜後に公知慣用の印刷手法を用いて塗布を行うオフラインコートが好ましい。印刷手法としては、慣用の方法を用いることができ、例えば、グラビア印刷またはフレキソ印刷が好ましい。上記印刷層の形成に用いられる印刷インキは、例えば、顔料、バインダー樹脂、溶剤、その他の添加剤等を含む。上記バインダー樹脂としては、特に限定されないが、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系樹脂、セルロース系樹脂、ニトロセルロース系樹脂などが使用できる。上記顔料としては、特に限定されないが、例えば、酸化チタン(二酸化チタン)等の白顔料、銅フタロシアニンブルー等の藍顔料、カーボンブラック、アルミフレーク、雲母(マイカ)、その他着色顔料等が用途に合わせて選択、使用できる。また、顔料として、その他にも、光沢調整などの目的で、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、アクリルビーズ等の体質顔料も使用できる。上記溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの有機溶媒や水など印刷インキに通常用いられるものを使用できる。上記の顔料、バインダー樹脂、溶剤は、それぞれ、1種のみを使用してもよいし2種以上を使用してもよい。
【0100】
上記印刷層は、特に限定されないが、活性エネルギー線硬化性の樹脂層であってもよい。過剰の熱によるフィルムの変形を防ぐ場合などに有効である。なお、上記活性エネルギー線としては、例えば、可視光、紫外線、電子線などが挙げられる。
【0101】
上記印刷層の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1〜10μmが好ましい。厚みが0.1μm未満である場合には、印刷層を均一に設けることが困難である場合があり、部分的な「かすれ」が起こったりして、装飾性が損なわれたり、デザイン通りの印刷が困難となる場合がある。また、厚みが10μmを超える場合には、印刷インキを多量に消費するため、コストが高くなったり、均一に塗布することが困難となったり、印刷層がもろくなって、剥離しやすくなったりする。また、印刷層の剛性が高くなり、シュリンク加工時にシュリンクフィルムの収縮に印刷層が追従しにくくなる場合がある。
【0102】
本発明のシュリンクラベルは、例えば、ラベル両端を溶剤や接着剤でシールし筒状にして容器に装着されるタイプの筒状シュリンクラベルや、ラベルの一端を容器に貼り付け、ラベルを巻き回した後、他端を一端に重ね合わせて筒状にする巻き付け方式のシュリンクラベルとして用いることができる。本発明のシュリンクフィルムは、筒状シュリンクラベルを容器に装着する際のセンターシール部分での層間剥離(装着デラミ)の抑制に効果的である観点から、上記の中でも、筒状シュリンクラベルに特に好ましく用いられる。即ち、本発明のシュリンクラベルは、筒状シュリンクラベルであることが好ましい。
【0103】
本発明のシュリンクラベルは筒状シュリンクラベルに加工してもよい。例えば、シュリンクラベルの主配向方向が周方向となるように円筒状に成形する。具体的には、主配向方向に所定幅を有するシュリンクラベルを、シュリンクラベルの表側が外面(外側)となるように主配向方向の両端を重ね合わせて筒状に形成し、ラベルの一方の側縁部に、帯状に約2〜4mm幅で、テトラヒドロフラン(THF)などの溶剤や接着剤(以下、「接着剤等」と称する場合がある)を内面に塗布し、該接着剤等塗布部を、他方の側縁部の外面に接着し、筒状のシュリンクラベルを得る。なお、上記の接着剤等を塗工する部分及び接着する部分には、印刷層が設けられていないことが好ましい。上記において、シュリンクラベルの「表側」とは、ラベルのデザインを見る側(デザインが正しく見える方の面側)を意味する。また、シュリンクラベルの「外面」とは、シュリンクラベルを容器に装着する場合に、容器とは接しない側(容器とは反対側、即ち円筒の外側)の表面を意味し、シュリンクラベルの「内面」とは、容器と接する側(容器側)の表面を意味する。
【0104】
なお、筒状シュリンクラベルにラベル切除用のミシン目を設ける場合は、所定の長さ及びピッチのミシン目を周方向と直交する方向に形成する。ミシン目は慣用の方法(例えば、周囲に切断部と非切断部とが繰り返し形成された円板状の刃物を押し当てる方法やレーザーを用いる方法等)により施すことができる。ミシン目を施す工程は、例えば、印刷工程の後や、筒状加工工程の前後などに設けることができる。
【0105】
上記筒状シュリンクラベルのセンターシール強度は、2N/15mm以上が好ましい。
センターシール強度が2N/15mm未満の場合には、加工工程や製品化した後に、センターシール部分がはがれて、生産性を低下させたり、ラベル脱落の原因となる場合がある。
【0106】
本発明のシュリンクラベルは、特に限定されないが、飲料用容器などの容器に装着して、ラベル付き容器として用いられる。なお、本発明のシュリンクラベルは、容器以外の被着体に用いられてもよい。本発明のシュリンクラベル(特に、筒状シュリンクラベル)を、例えば、表側が容器と反対側にくるように配置させ熱収縮させることによって容器に装着することにより、ラベル付き容器(本発明のシュリンクラベルを有するラベル付き容器)が得られる。上記容器には、例えば、PETボトルなどのソフトドリンク用ボトル、宅配用牛乳瓶、調味料などの食品用容器、アルコール飲料用ボトル、医薬品容器、洗剤、スプレーなどの化学製品の容器、カップ麺容器などが含まれる。上記容器の形状としては、特に限定されないが、例えば、円筒状、角形等のボトルタイプや、カップタイプなどの様々な形状が挙げられる。また、上記容器の材質としては、特に限定されないが、例えば、PETなどのプラスチック、ガラス、金属などが挙げられる。
【0107】
上記ラベル付き容器は、例えば、筒状シュリンクラベルを、所定の容器に外嵌した後、加熱処理によって筒状シュリンクラベルを熱収縮させ、容器に追従密着させること(シュリンク加工)によって作製できる。上記加熱処理の方法としては、例えば、熱風トンネルやスチームトンネルを通過させる方法、赤外線などの輻射熱で加熱する方法等が挙げられる。特に、80〜100℃のスチームで処理する(スチームおよび湯気が充満した加熱トンネルを通過させる)方法が好ましい。また、上記加熱処理の処理時間は、特に限定されないが、生産性、経済性の観点から、4〜20秒が好ましい。
【実施例】
【0108】
以下に、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、以下では、比較例についても、便宜上、表面層をA層、中心層をC層、表面層と中心層の間の中間層をB層と称している。
【0109】
表1には、実施例、比較例における、A層原料、B層原料、C層原料の樹脂組成(樹脂の種類と含有量(重量%));A層中に含まれるポリスチレン系樹脂中のスチレンに由来する構成単位、ジエンに由来する構成単位の含有量(重量%);B層中に含まれるポリスチレン系樹脂中のスチレンに由来する構成単位、ジエンに由来する構成単位の含有量(重量%)等を記載した。また、得られたシュリンクフィルムの総厚み、層厚み比、密度(比重)、評価結果等を示した。
【0110】
表2には、実施例、比較例で用いた樹脂の説明(樹脂名(商品名)、メーカー、樹脂内容など)を記載した。
【0111】
実施例1
A層を構成する原料(A層原料)として、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(BASF社製、「スタイロルクス S」)100重量%を用いた。
B層を構成する原料(B層原料)として、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(BASF社製、「スタイロルクス T」)30重量%、メタロセン触媒系プロピレン−エチレンランダム共重合体(日本ポリプロ(株)製、「ウィンテック WFX6」)49重量%、直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製「カーネル KF260T」)3.5重量%、及び石油樹脂(荒川化学工業(株)製「アルコン P125」)17.5重量%を用いた。B層中のポリスチレン系樹脂の含有量は30重量%、ポリプロピレン系樹脂の含有量は49重量%である。
C層を構成する原料(C層原料)として、メタロセン触媒系プロピレン−エチレンランダム共重合体(日本ポリプロ(株)製、「ウィンテック WFX6」)70重量%、直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製「カーネル KF260T」)5重量%、及び石油樹脂(荒川化学工業(株)製「アルコン P125」)25重量%を用いた。
【0112】
なお、BASF社製、「スタイロルクス S」は、スチレンに由来する構成単位の含有量(スチレン含有量)が88重量%、ブタジエンに由来する構成単位の含有量(ブタジエン含有量)が12重量%であるスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)である。また、BASF社製、「スタイロルクス T」は、スチレンに由来する構成単位の含有量(スチレン含有量)が75重量%、ブタジエンに由来する構成単位の含有量(ブタジエン含有量)が25重量%であるスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)である。
【0113】
210℃に加熱した押出機aに上記A層原料、210℃に加熱した押出機bに上記B層原料、210℃に加熱した押出機cに上記C層原料を投入した。上記3台の押出機を用いて、溶融押出(共押出)を行った。押出機cから押し出される樹脂が中心層、押出機bから押し出される樹脂が中心層の両側の層(中間層)となり、押出機aから押し出される樹脂がさらにその両側の層(表面層)となるように合流ブロックを用いて合流させ、Tダイ(スリット間隔:1mm)より押し出した後、25℃に冷却したキャスティングドラム上で急冷して、3種5層積層未延伸フィルムを得た。なお、溶融押出の際の各押出機の吐出量の比(押出機a:押出機b:押出機c)は1:1:2であった。
次に、厚みを調整した未延伸フィルムを、幅方向に80℃で5倍延伸することにより、シュリンクフィルム(実質的に幅方向の1軸配向フィルム)を得た。得られたシュリンクフィルムの総厚みは40μm、層厚み比(A層:B層:C層:B層:A層)は1:1:4:1:1、密度(比重)は0.95g/cm3であった。
【0114】
実施例2、実施例4、比較例1、比較例3〜4、比較例6
表1に示すとおり、B層原料を変更して、実施例1と同様にして、シュリンクフィルムを得た。
【0115】
実施例3
表1に示すとおり、B層原料及びC層原料を変更して、実施例1と同様にして、シュリンクフィルムを得た。
【0116】
比較例2
表1に示すとおり、A層原料及びB層原料を変更して、実施例1と同様にして、シュリンクフィルムを得た。
【0117】
比較例5
表1に示すとおり、A層原料を変更して、実施例1と同様にして、シュリンクフィルムを得た。
【0118】
(評価)
実施例、比較例で得られたシュリンクフィルムについて、以下の方法で評価を行った。
【0119】
(1)常温層間強度(T型剥離試験)
実施例、比較例で作製したシュリンクフィルム(シュリンク加工前)について、以下の方法で、常温層間強度を測定した。
シュリンクフィルムから、シュリンクフィルムの長手方向(シュリンクフィルムの製膜方向)に15mmの幅で、シュリンクフィルムの幅方向(長手方向と直交方向)に200mmの長さの長方形のサンプル[長さ200mm(シュリンクフィルムの幅方向)×幅15mm(シュリンクフィルムの長手方向)]を採取した。なお、以下で、サンプルの長辺方向とはシュリンクフィルムの幅方向をさし、サンプルの幅方向とはシュリンクフィルムの長手方向をさす。
サンプルの長辺方向(シュリンクフィルムの幅方向)を測定方向として、下記の条件でT型剥離試験(JIS K 6854−3に準拠)を行い、層間の剥離荷重を測定した。
剥離荷重の平均値を常温層間強度(N/15mm)とした。
(測定条件)
測定装置 : 島津製作所(株)製オートグラフ(AG−IS:ロードセルタイプ500N)
温湿度 : 温度23±2℃、湿度50±5%RH
初期チャック間隔 : 40mm
サンプル幅 : 15mm
試験回数 : 3回
引張速度 : 200mm/分
ストローク: 150mm(破断した場合には中断し、その点までのデータを得た。) 前半削除範囲 : 50mm
感度 : 1
なお、上記常温層間強度は、積層構造の中で最も層間強度の弱い層間を剥離して評価した。上記常温層間強度が1.0(N/15mm)以上であれば良好、1.4(N/15mm)以上であれば特に良好と判断できる。
【0120】
(2)加温層間剥離試験
実施例、比較例で作製したシュリンクフィルム(シュリンク加工前)から、それぞれ、シュリンクフィルムの長手方向に15mmの幅で、シュリンクフィルムの幅方向に長い長方形のフィルム片を、2本採取した。次いで、上記2本のフィルム片のうちの、一方のフィルム片の長辺方向(シュリンクフィルムの幅方向)の端部を、他方のフィルム片の長辺方向の端部に、テトラヒドロフラン(THF)を用いて接着(シール)して、図1に示すような、一本の長方形のサンプルを作製した。上記サンプルの幅方向はシュリンクフィルムの長手方向であり、サンプルの長辺方向はシュリンクフィルムの幅方向である。また、上記サンプルの幅は15mmであり、長さは150mmとなるように調節した。さらに、シール幅は4mmとした。
なお、図1は本試験に用いたサンプルの概略図(平面図)であり、図1中の符号11はサンプル、符号12はシール部、矢印Aはサンプルの長辺方向(シュリンクフィルムの幅方向)を示す。
上記サンプルを用いて、加温層間剥離試験を行った。
サンプルの長辺方向の両端を固定できる治具に、サンプルを、たるみがないように取り付けた(サンプルの長辺方向の両端を固定した)。次いで、サンプルを取り付けた治具を、90℃の温水中に10秒間浸漬した後、温水中から取り出し、取り出した直後に、サンプルのシール部を観察した。
サンプルのシール部に層間剥離(デラミ)が見られない場合には加温層間強度が良好(○)、層間剥離(デラミ)が見られた場合には加温層間強度が不良(×)と評価し、表1に記載した。
【0121】
(3)主配向方向の熱収縮率(90℃、10秒)
実施例、比較例で得られたシュリンクフィルム(シュリンク加工前)から、測定方向(主配向方向:実施例、比較例ではシュリンクフィルムの幅方向)に長さ120mm(標線間隔100mm)、幅5mmの長方形のサンプルを作製した。
上記サンプルを90℃の温水中で、10秒熱処理(無荷重下)し、熱処理前後の標線間隔の差を読み取り、以下の計算式で熱収縮率(90℃、10秒)を算出した。
熱収縮率(90℃、10秒)(%) = (L0−L1)/L0×100 L0 : 熱処理前の標線間隔(主配向方向)
1 : 熱処理後の標線間隔(主配向方向)
【0122】
(4)密度(比重)
実施例、比較例で得られたシュリンクフィルムの密度(比重)は、JIS K 7112に準拠して測定した。
【0123】
【表1】
【0124】
【表2】
【0125】
表1からもわかるとおり、本発明のシュリンクフィルム(実施例)は、低比重かつ高収縮性であり、なおかつ、常温における層間強度が高く、さらに加温時においても層間剥離しにくい優れた特性を有していた。一方、B層中にポリプロピレン系樹脂を含まないシュリンクフィルム(比較例1、2)、B層中のポリスチレン系樹脂の含有量が少ないシュリンクフィルム(比較例3)、B層中のポリプロピレン系樹脂の含有量が少ないシュリンクフィルム(比較例4)、B層中に含まれるポリスチレン系樹脂中のスチレン系単量体に由来する構成単位の含有量が多い(ジエンに由来する構成単位の含有量が少ない)シュリンクフィルム(比較例6)は、常温における層間強度が不十分であり、加温時においても層間剥離しやすいものであった。また、A層中に含まれるポリスチレン系樹脂中のスチレン系単量体に由来する構成単位の含有量が少ない(ジエンに由来する構成単位の含有量が多い)シュリンクフィルム(比較例2、5)は、熱収縮率が低く収縮性が不十分であった。
【符号の説明】
【0126】
11 サンプル
12 シール部
A サンプルの長辺方向(シュリンクフィルムの幅方向)
図1