特許第6151710号(P6151710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6151710液体リング真空ポンプ及び液体リング真空ポンプのためのインペラー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6151710
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】液体リング真空ポンプ及び液体リング真空ポンプのためのインペラー
(51)【国際特許分類】
   F04C 25/02 20060101AFI20170612BHJP
   F04C 19/00 20060101ALI20170612BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   F04C25/02 P
   F04C19/00 B
   F04C29/00 U
   F04C29/00 D
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-542804(P2014-542804)
(86)(22)【出願日】2012年11月21日
(65)【公表番号】特表2014-533803(P2014-533803A)
(43)【公表日】2014年12月15日
(86)【国際出願番号】EP2012073150
(87)【国際公開番号】WO2013076107
(87)【国際公開日】20130530
【審査請求日】2015年8月24日
(31)【優先権主張番号】11190049.4
(32)【優先日】2011年11月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506370881
【氏名又は名称】ステアリング・インダストリー・コンサルト・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Sterling Industry Consult GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100118625
【弁理士】
【氏名又は名称】大畠 康
(74)【代理人】
【識別番号】100176463
【弁理士】
【氏名又は名称】磯江 悦子
(74)【代理人】
【識別番号】100183232
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 敏行
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・タム
(72)【発明者】
【氏名】ハイナー・ケスタース
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・シュッツェ
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−021587(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0233654(US,A1)
【文献】 実公昭47−019677(JP,Y1)
【文献】 特開平03−032792(JP,A)
【文献】 実開平05−007987(JP,U)
【文献】 特開昭62−037293(JP,A)
【文献】 実開昭60−149895(JP,U)
【文献】 中国実用新案第201650734(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 25/02
F04C 19/00
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプハウジング(20)と前記ポンプハウジング(20)に偏心して搭載されたインペラー(14)とを有する液体リング真空ポンプにおいて、
前記インペラー(14)は、弾性係数が2000N/mm24000N/mm2である材料からなることを特徴とする液体リング真空ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の液体リング真空ポンプにおいて、
前記インペラー(14)は非繊維強化材料からなることを特徴とする液体リング真空ポンプ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体リング真空ポンプにおいて、
前記インペラー(14)はプラスチック材料からなることを特徴とする液体リング真空ポンプ。
【請求項4】
請求項に記載の液体リング真空ポンプにおいて、
前記インペラー(14)は、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、またはポリフェニレンサルファイド(PPS)からなることを特徴とする液体リング真空ポンプ。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか1に記載の液体リング真空ポンプにおいて、
前記インペラー(14)のベーン(23)の数は10〜20枚であることを特徴とする液体リング真空ポンプ。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか1に記載の液体リング真空ポンプにおいて、
前記インペラー(14)はディスク状突起(25)を有し、このディスク状突起(25)はハブ(24)から半径方向外側に延び、ポンプの運転中、液体リングに入り込むことを特徴とする液体リング真空ポンプ。
【請求項7】
請求項に記載の液体リング真空ポンプにおいて、
前記インペラー(14)のベーン(23)は、前記ディスク状突起(25)よりもさらに液体リングに入り込むことを特徴とする液体リング真空ポンプ。
【請求項8】
偏心して取り付けられたポンプのシャフト(18)に堅く接続されるためのハブ(24)と、前記ハブ(24)から半径方向外側に延びる複数のベーン(23)とを有し、前記複数のベーン(23)は、一端側において、半径方向の長さの少なくとも半分に亘ってディスク状突起(25)で覆われている、請求項1乃至7のいずれか1に記載のタイプの液体リング真空ポンプのためのインペラーにおいて、
前記インペラーは、弾性係数が2000N/mm24000N/mm2である材料からなることを特徴とする液体リング真空ポンプのためのインペラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプハウジングとこのポンプハウジング内に偏心して搭載されたインペラーとを有する液体リング真空ポンプに関する。さらに、本発明はこの種のポンプのためのインペラーに関する。この主のポンプは容器(コンテナ)その他の密閉スペースを排気(真空排気)するために使用することができる。ポンプの入口開口部は被排気スペースに接続されており、そのスペース内のガスは前記入口開口部を通して吸い込まれ、ポンプ内で圧縮され、出口開口部から再び排出される。
【背景技術】
【0002】
液体リング真空ポンプでは、液体リングはインペラーによって動き続ける。その結果、インペラーのベーン間にあるチャンバーは液体リングによって密封される。インペラーはポンプハウジング内に偏心して搭載されることから、液体リングはインペラーの角位置に応じて異なる程度でチャンバー内に入り込み、その結果、チャンバーの容量(容積)を変更するピストンとして作用する。この目的のために要求される全ての力は、インペラーによって伝達されるので、インペラーは高負荷のかかる部材である。
【0003】
特に、インペラーは、顕著な両振り(交番)荷重を受ける。なぜならば、液体リングがチャンバーに入っていく最中か、チャンバーから出て行く最中であるかに応じて、力がベーンに対して色々な方向に作用するからである。今日まで、ポンプの安定した低振動動作はインペラーが剛性高く設計されているときのみ可能であると思われてきた。高い剛性は、両振り荷重下でのインペラーの変形を回避する状況を達成する。インペラーの変形は望ましくない。それは、インペラーとポンプハウジングとの間のトレランスを大きくする必要があるからである。しかし、トレランスの増加により漏れ流が増大し、これは同時に、ポンプ効率度の低下を意味する。
【0004】
インペラーは複数種類の負荷を受ける。遠心力及び加速力に加えて、特にベーンの圧力負荷が問題となってくる。圧力側と吸込側との間の移行部で、曲げの結果として両振り荷重に至る圧力の顕著な変化を判定できる。大きい両振り(交番)曲げストレスは、処理中、ブレード根元で生じる。そのような大きい両振り(交番)曲げストレスは、凝縮物も配送(delivered)されている場合にさらに増加する。原理的に、液体リング真空ポンプにおいては、キャビテーションを回避できない。キャビテーションは表面の損傷となるばかりか、前記負荷に加えて、さらなる両振り曲げストレスが生じる。これらの負荷に対抗できる材料をインペラーの製造用に選ぶ必要がある。
【0005】
従来の液体リング真空ポンプでは、インペラーは主として金属材料で作られている。例えば、溶接鋼構造、ネズミ鋳鉄ホイール、及びステンレス鋼製または青銅製のホイールがある。これらの材料の弾性係数は原則として100000N/mm2よりも大きい。繊維強化プラスチックでできたインペラーも知られている(CN 201650734)。この場合、弾性係数は20000N/mm2程度の大きさである。今日まで、機械的に高い負荷がかかる部材は繊維強化プラスチックから作られるものであって、非強化プラスチックからは作られないということは、当業者にとって非常に当たり前のことであったので、明示的にこれについて語る価値さえなかった(例えば、Feragallah W H: “Liquid ring vacuum pumps and compressors”, January 1, 1985, Beltz Offsetdruck, page 187参照)。
【0006】
特に、材料の強度、耐化学性(耐薬品性)、キャビテーション抵抗、及び価格が材料選択に影響を与える。
【0007】
高剛性を有するインペラーの一つの不利益は、ポンプの運転中にインペラーが被るジョルト(激しい振動)様(jolt-like)の負荷が、実質的に無濾過な態様でポンプの別の部材にまで伝達されることにある。特にキャビテーションが液体リングで生じる場合、インペラーのジョルト様負荷が予期される。インペラーが高い剛性を有する場合、キャビテーションのリスクがある動作状態は断固として避けなければならない。したがって、液体リング真空ポンプは通常、常にキャビテーション限界から明確な距離が維持される(つまり、明確に隔たっている)ように運転される。しかし、結果として、可能な効率度の一部が犠牲となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題及び課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、キャビテーションの結果としての損傷のリスクを低減する液体リング真空ポンプを提供するという目的に基づく。冒頭で述べた先行技術を出発点として、この目的は、請求項1に記載の発明特定事項によって達成される。本発明によれば、インペラーは、弾性係数が4000N/mm2未満である材料からなる。有利な実施形態は従属請求項中に見出すことができる。
【0009】
それ故、本発明は、力の影響の下で従来の材料からなるインペラーよりも相当大きく変形する材料のインペラーを提案するものである。その材料は、そのコンプライアンスにより、発生する両振り荷重とキャビテーションフォースに対してへこんだり撓んだりするのに適しており、その結果としてストレスを消失させるのに適している。本発明は、付随する不利益はポンプの耐キャビテーション性を向上させることで相殺されることを認識している。キャビテーション中に生じるジョルト様の負荷はインペラーによって緩衝されるので、ポンプの他の構成部材に未濾過状態のままで伝達されることはない。その結果、寿命を大きく減らすことなく、ポンプをキャビテーション限界により近いところで運転することが可能となる。このようなキャビテーション限界付近での運転の結果、ポンプの効率度が向上する。
【0010】
キャビテーションによる損傷はインペラー自体にも生じる。まず、局所的高負荷の結果、表面が攻撃を受ける。続いて、損傷はインペラーの構造内部にも進んでくる。特に、インペラーが繊維強化プラスチックからなる場合に、このことが生じる。つまり、インペラーは、繊維がインペラーの表面に達している箇所で最初の損傷を受ける。キャビテーションの小泡は、キャビテーションの発生中、開いた繊維に蓄積し、内破した際に大きな表面損傷となり得る。したがって、インペラーは非繊維強化プラスチックからなるのが好ましい。これにより、損傷のための作用点が少ない均質表面となる。
【0011】
インペラーをプラスチックで作ると、製造は安価となる。さらに、非繊維強化プラスチック材料は、キャビテーション中のノイズエミッションが低いという利点がある。なぜならば、非繊維強化プラスチックは十分な緩衝特性を有するからである。例えば、ポリオキシメチレン(POM)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド(PA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、またはポリフェニレンサルファイド(PPS)が適している。これらの材料の弾性係数は2000N/mm2から4000N/mm2までの間にある。
【0012】
インペラーは好ましくは、ハブを備えている。このハブを介して、ポンプのシャフトへの堅固な接続が得られる。シャフトはポンプハウジングに偏心して取り付けられている。一方、ハブはインペラーの中央にある。複数のベーンがハブから半径方向外側に延びている。ベーンの数は、例えば、10から20である。
【0013】
液体リングと一緒になって、各場合に2つのベーンで囲まれたチャンバーがポンプの作業チャンバーを形成する。配送すべきガスの供給と排出を可能とするために、それらのチャンバーは一端側に開いている。その一端側を通して、インペラーはポンプのコントロールディスクに隣接している。このコントロールディスクには、入口開口部と出口開口部が適切な箇所に設けられている。漏れ流を最小にするために、前記ベーンとコントロールディスクとの間のギャップはできるだけ小さく保たれる。ベーンは軸方向に対して傾斜することができ、その結果として、インペラーは流れ力によってコントロールディスクの方向に押される。
【0014】
チャンバーはインペラーの反対端側で密封されているのが好ましい。このために、インペラーは、前記ハブから半径方向外側に延びるディスク状突起を有することができる。このディスク状突起の半径方向外側の延びは、ポンプの運転中、ディスク状突起がその全周に亘って液体リングに入り込む程度のものである。液体リングへの力の効果的伝達のために、ベーンはディスク状突起よりも液体リング中に張り出しているのが好ましい。
【0015】
さらに、本発明は、この種の液体リング真空ポンプのためのインペラーに関する。このインペラーは、偏心して取り付けされたポンプのシャフトに堅固に接続するためのハブを有する。複数のベーンが前記ハブから半径方向外側に延びている。これらのベーンは、一端側において、それらの半径方向長さ(radial extent)の少なくとも半分に亘ってディスク状突起に覆われている。本発明によれば、インペラーは弾性係数が4000N/mm2よりも小さい材料からなる。
【0016】
前記インペラーは、好ましくは、プラスチック材料からワンピースで、つまり、継ぎ目なしに、作られる。このプラスチック材料は、強化されていないことがさらに好ましい。このインペラーは、本発明に係る前記ポンプに関して上述したさらなる構成を備えることができる。
【0017】
これに続く箇所では、本発明を添付の図面を参照しながら有利な実施形態により説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1はこの発明に係る液体リング真空ポンプの概略断面図である。
図2図2は、図1のポンプの側面図である。
図3図3は、この発明に係るインペラーの斜視図を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1に示した液体リング真空ポンプにおいて、インペラー14がポンプハウジング20に偏心して搭載されている。ポンプ内部の液体は、回転しているインペラー14によって動かされ、ポンプハウジング20の外壁部から内部へと半径方向に延びる液体リングを形成する。偏心搭載により、インペラー14のベーンは角位置に応じて異なる深さで液体リング内へと張り出している。その結果、2つのベーン間のチャンバー22の容積(容量)は変わる。したがって、液体リングは、インペラー14の回転中チャンバー内を上下動するピストンのように作用する。
【0020】
入口開口部16からポンプの内部へとダクトが延びており、そのポンプ内部でインペラー14が回転する。ダクトは、インペラー14のベーンが液体リングから出現する領域に開口している。したがって、その領域で、2つのベーン間のチャンバーは拡大する。拡大するチャンバーの結果として、ガスは入口開口部16からチャンバー内へと吸い込まれる。チャンバーがそれの最大容量に達した後、インペラー14のさらなる回転中に、液体リングは再度チャンバー内へ進入する。液体リングがさらに入り込んでくる結果としてガスが十分に圧縮されると、ガスは出口開口部17から再び大気圧で放出される。この種の液体リング真空ポンプは、入口開口部16に接続されたスペースを例えば50ミリバールの圧力になるまで真空排気する働きをする。
【0021】
図2によると、インペラー14はシャフト18を介して駆動モータ19に接続されている。このポンプはモジュラーデザインのもので、駆動モータとインペラー14とがポンプハウジング20に一緒に収容されている。さらに、ポンプハウジング20上に配置された制御部21を介して、電気エネルギが駆動モータ19に供給されると共に、ポンプの回転速度が設定される。
【0022】
図3によると、インペラー14は、15枚のベーン23を有する。これらのベーン23は、中央のハブ24から半径方向外側に延びている。ハブ24を介して、インペラー14はポンプのシャフト18に接続されている。ベーン23は、半径方向に関しての湾曲を含む3次元形状を有する。設置後の状態において、インペラー14の端部側(図3において見える側)はポンプのコントロールディスクの方向に向いている。したがって、各場合において2つのベーン23間に配置されたチャンバー22はコントロールディスクに向かって開いており、その結果、コントロールディスクの開口部を通して配送すべきガスを供給・排出することができる。
【0023】
他端側において、インペラー14は、ハブ24から半径方向外側に延びるディスク状突起25を有する。ディスク状突起25の半径方向の延び(長さ)は、ポンプの運転中このディスク状突起25がその全周に亘って液体リング中に入り込めるようにできる程度のものである。ベーン23はこのディスク状突起25よりも半径方向に幾分突き出ているので、ベーン23と液体リングとの間での力の効果的伝達が達成できる。
【0024】
インペラー14は、非繊維強化プラスチック材料から継ぎ目無し(ワンピース)で作られる。その材料の弾性係数は2000N/mm2〜4000N/mm2である。したがって、その材料は比較的柔軟性があり、その結果、インペラー上のジョルト様の負荷はその材料によって一部が吸収されることができる。
【0025】
前記材料は繊維強化されたものでないので、インペラーは均質(等質)の表面を有する。キャビテーションの結果として、大きい圧力で高速のスパイクが作動液に局所的に生じても、表面はその負荷に耐えることができ、インペラーの損傷は生じない。これらの理由から、本発明のインペラーによる成果として、液体リング真空ポンプをキャビテーション限界付近で運転することできるので、ポンプの効率度が高まる。
図1
図2
図3