【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、請求項1の主題において満たされ、そして好ましい実施形態は従属請求項に示され、詳細には明細書に示される。
【0014】
一実施形態において、本発明に係る組成物は、粉末成分および液体モノマー成分を含むポリメチルメタクリレートセメントであり、この組成物は、粒子に共有結合されたヒドロキシル基を含む少なくとも40m
2/gのBET表面を有する少なくとも1つの微粒子無機添加剤を含み、さらに室温で液体である少なくとも1つの脂肪酸エステルを含有する。
【0015】
本発明の論理的根拠は、チキソトロピック性効果ならびに抗接着性、生体適合性および/または吸収性を有する添加剤を骨セメント用組成物に添加することにある。この文脈において、本文献は同義の言語として組成物と骨セメントとを言及する。意外なことに、セメント練粉の形態における粘着性組成物は、粉末成分および液体モノマー成分が混合された直後に液だれせず、機械的応力にさらされるときのみ加工段階の間の流動性を有し、そして機械的応力の不存在下でほとんど流れない傾向を示した。
【0016】
骨セメント用組成物の成分として室温で液体である脂肪酸エステルを添加することが、得られるセメント練粉を未変性硬化性組成物と比べて金属表面にあまり接着性を示さないようにする知見は以外なことであった。2つの添加剤がセメント中で互いに相溶性であることも以外なことであった。
【0017】
本発明の主題は、少なくとも1つの有機ポリマーおよび少なくとも1つの重合性モノマーを含む骨セメント用組成物であって、当該組成物は硬化し、かつ
少なくとも1つのラジカル重合用モノマー、
少なくとも40m
2/gのBET表面を有し、共有結合されたヒドロキシル基を含む少なくとも1つの微粒子無機添加剤、
少なくとも1つの脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステル混合物、
を含みうる。
【0018】
本発明に係る、上記モノマーに溶解しうるポリマーは有機ポリマーとして用いられる。本発明に係る硬化性組成物も、セメント練粉、セメントまたは骨セメントの同義の用語を意味する。特に好ましい実施形態において、組成物はチキソトロピック性および硬化性の流体またはチキソトロピック性および硬化性のペーストである。好ましくは、天然オイル、MCTオイル(CAS番号73398−61−5)、中鎖脂肪酸(トリグリセリド)の混合物、具体的にはカプリン酸および天然由来のカプリル酸も脂肪酸エステルの混合物であるとも考えられる。
【0019】
本発明に係る効果を得るために、すなわち金属表面またはプラスチック表面への接着性を減少させ、かつ添加剤と組み合わせ、好ましくは上昇する圧力下のみで流動性を有する組成物を同時に得るための接着性は、所望の特性を可能とし具体的に説明されることが見いだされたに違いない。
【0020】
意外なことに、骨セメント組成物への少なくとも1つの脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステルの混合物の分画の添加は、加工段階の間の表面への組成物の接着を明確に減少させ、そして同時に骨空洞への移動後の組成物の効果における悪影響を及ぼさない、ということが見出された。無機添加剤は、組成物の製造段階の間、加工段階のおよび硬化段階の間、組成物に効果を及ぼす。無機添加剤は、この文脈においていくつかの要求を満たさなければならない:添加剤および組成物のさらなる成分、特に液体成分(脂肪酸エステルおよび/またはモノマー)は、好ましくは、標準圧力にさらしたときにもはや流動性を有しないペーストを素早く形成する必要があるが、加工段階の間、シリンジのカニューレを通して投与される明らかに高圧にさらされるとき、さらに圧力がかけられたときに組成物の粘度が明らかに減少し流動性を有するようになる。圧力の放出後、基本的に標準圧力(およそ1013.25hPa)、とりわけ骨空洞への組成物の分散後、硬化性組成物は増加した粘度に再度戻り、硬化段階の間に流動性を有しない。本発明において、脂肪酸エステルおよび無機添加剤を既定のBET表面のHO基と組み合わせることは、上記で詳述された要求を満たす組成物を提供することを可能とする。
【0021】
2つの添加剤は、硬化組成物の機械的特性に最小限の影響だけを及ぼし、すなわち従来のPMMAセメントと比べて硬化PMMAセメントの機械的特性に最小限の影響だけを及ぼし、このことはISO583の機械的要求を満たすPMMAセメントが得られることを可能とする。
【0022】
本発明において、少なくとも1つの脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステルの混合物は、好ましくは、(i)少なくとも1つの脂肪酸およびモノアルコール、ジオール、トリオールもしくはそれぞれ1〜15個の炭素原子を有する、特に1〜4個の炭素原子を有する、具体的に好ましくはC1〜C4のアルキル基を有する、またはポリエーテルポリオールであるポリオールを変換して得られるエステル、(ii)天然に存在する脂肪酸エステルまたは天然由来の脂肪酸エステル、および(iii)(i)および(ii)の脂肪酸エステルを含有する混合物、を含む。この文脈において、少なくとも1つの上記脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステルの混合物は、室温(18〜35℃、特に20〜およそ25℃またはおよそ36〜37.5℃の体温)(標準圧力)で、液体であるのが特に好ましい。脂肪酸エステルは、少なくとも1つの脂肪酸エステル基(例えば、オレイン酸の脂肪酸エステル基、および任意にさらなる脂肪酸エステル以外のエステル(特に、1〜18個の炭素原子を含むジカルボン酸エステル、好ましくはコハク酸のジカルボン酸エステルなど)を含むと理解される。
【0023】
脂肪酸アルキルエステルは、脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステルの混合物と同様に特に好ましいと証明されている。特にエステルのアルキル鎖に1〜15の炭素原子を有する脂肪酸アルキルエステル、好ましくはグリセロールの1〜4個の炭素原子または3個の炭素原子を有する脂肪酸アルキルエステル、ならびに好ましくは脂肪酸残渣に1〜30個の炭素原子を有する脂肪酸、特に1〜20個の炭素原子を有する脂肪酸、好ましくは3〜20個の炭素原子を有する脂肪酸を有し、飽和脂肪酸が好ましい。脂肪酸アルキルエステルも、脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステルの混合物として好ましいと証明されている。少なくとも1つのトリグリセリドまたは上記化合物のうちの少なくとも1つを含有する混合物もある。この文脈において、脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステルの混合物は一般的に飽和脂肪酸および/または不飽和脂肪酸を含み、飽和脂肪酸が好ましことが証明されている。
【0024】
好ましい脂肪酸エステルは、室温かつ標準圧力で、通常液体であるので、植物脂肪の脂肪酸メチルエステル(FAME)を含む。3つの脂肪酸を有するトリアシルグリセロールも適切である。周知のトリグリセリド、ヤシ油は主にトリグリセリドを含み、カプリル酸、ラウリン酸、カプリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびミリスチン酸由来の飽和脂肪酸残渣を含有する。
【0025】
本発明の別の主題は、粉末成分および少なくとも1つの液体モノマー成分を含むポリメチルメタクリレートセメントであり、当該組成物は少なくとも40m
2/gのBET表面を有し、共有結合されたヒドロキシル基を含む少なくとも1つの微粒子無機添加剤および少なくとも1つの室温で液体である脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステルの混合物を含む。
【0026】
体への望ましくない拡散または摩擦を防止するため、少なくとも1つの有機ポリマーの含有量が全ポリマー組成物に対して99.5重量%以上、特に99.8重量%以上、さらにより好ましくは99.9重量%以上である、特に純粋な組成物が与えられ、当該ポリマー中に外部の化合物の不純物は好ましくは0.5重量%以下、特に0.2重量%以下、さらにより好ましくは0.1重量%以下の割合を示す。この文脈において、特に、有機溶媒の含有量は0.5重量%以下である。
【0027】
重合性モノマーの含有量も、全モノマー組成物に対して、99.1重量%以上、特に99.5重量%、特に99.8重量%以上、特に好ましくは99.9重量%以上であり、モノマー中の外部の化合物の不純物は同時に0.5重量%以下、特に0.2重量%以下、好ましくは0.1重量%以下の割合を占める。
【0028】
少なくとも1つの微粒子無機添加剤の含有量はちょうど関連性がある。添加剤の含有量、特にSiO
2の含有量は、好ましくは、99.5重量%以上であり、かつ添加剤中の外部の化合物の不純物は好ましくは0.5重量%以下の割合を占める。おそらくセメント分解物質である物質(遊離酸または塩化物など)の含有量は、高耐用性の骨セメントを提供するため、体内の骨セメントの長い留置時間で低くあるべきである。
【0029】
詳細に上述されている理由のため、好ましい脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステルの混合物は、全組成物に対して、99.5重量%以上の脂肪酸エステル含有量を有し、脂肪酸エステルまたはこれらの混合物中の外部の化合物の不純物は0.5重量%以下の割合を占める。
【0030】
本発明に係る好適な微粒子無機添加剤は、その粒子(シラノール基)に共有結合されているHO−Si基を含む。粒子表面上に配置されている上記ヒドロキシル基は充填剤粒子間に水素結合を形成し、力学的エネルギーまたは熱エネルギーの作用を通して可逆的に放出されうる。
【0031】
微粒子無機添加剤は、発熱性酸化ケイ素、発熱性混合金属−酸化ケイ素、ベントナイト、モンモリロナイト、および当該添加剤の少なくとも2つを含有する混合物からなる群から選択される。
【0032】
さらに、疎水性にされた発熱性二酸化ケイ素を用いることも容易である。疎水性の二酸化ケイ素は、先行技術において、ジアルキルジクロロシラン(例えば、ジメチルジクロロシラン)を伴う発熱性二酸化ケイ素を処置することを通して製造されうる。
【0033】
少なくとも40m
2/g、特に好ましくは200m
2/g、および最も好ましくは300m
2/gのBET表面を有する発熱性二酸化ケイ素は、微粒子無機充填剤として特に好ましい。上記発熱性二酸化ケイ素は、50m
2/g、90m
2/g、200m
2/g、および380m
2/gの具体的なBET表面を有するAerosil(アエロジル)(登録商標)の商品名で市販されている。
【0034】
少なくとも200m
2/gのBET表面を有する発熱性酸化ケイ素は特に好ましい。微粒子無機添加剤として少なくとも300m
2/gのBET表面を有する発熱性酸化ケイ素を用いるのも好ましい。本発明に係る好適な微粒子無機添加剤は、好ましくは5〜9nm、好ましくは6〜8nmの平均直径(D50)を有する一次粒子を含み、とりわけ270〜330m
2/gの特定の表面を有するおよそ7nmの平均直径(D50)を有する一次粒子を含む。微粒子無機添加剤として、(焼成添加剤の)99.8重量%以上のSiO
2成分を含有する発熱性二酸化ケイ素ならびに添加剤に対して0.2重量%以下の塩化物および外部金属酸化物を含有するものを用いるのが特に好ましい。特に、酸化アルミニウム、酸化鉄、および酸化チタンが発熱性二酸化ケイ素中の外部金属酸化物として考えられる。
【0035】
BET測定は、ガス吸着を用いて固体表面の特徴を分析する手法である。この測定方法はDIN ISO 9277:2003−05(BET方法のガス吸着による固体の比表表面の測定)に記載されている。
【0036】
脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステルの混合物は、好ましくは飽和脂肪酸エステルおよび不飽和脂肪酸エステルの群から選択され、(i)飽和脂肪酸エステルの群は、カプリル酸(オクタン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、およびステアリン酸(オクタデカン酸)のエステルを含み、および(ii)不飽和脂肪酸エステルの群は、リノール酸、α−リノレン酸、γ−リノレン酸、キンセンカ酸、プニカ酸、α−エラエオステアリン酸、β−エラエオステアリン酸、アラキドン酸、チムノドン酸、クルパノドン酸、セルボン酸、ミリストレイン酸、ウンデシレン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリック酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、イコセニック(icosenic)酸、セトレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸のエステルを含み、(i)および(ii)のエステルは、(i)および/または(ii)とモノアルコール、ジオール、トリオールまたはポリオール(それぞれ1〜15個の炭素原子を有する)、特にグリセロール、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールまたはポリエーテルポリオールなどの1〜8個の炭素原子を有するもの由来の1以上の脂肪酸の変換により誘導される。
【0037】
メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、イソプロピルエステルまたはグリセリド、特にトリグリセリドは好ましい。室温で液体である飽和脂肪酸のエステルは、特に適切であると証明されている。このエステルは、特に、室温で液体である脂肪酸エステルとして、カプリル酸(オクタン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、およびステアリン酸(オクタデカン酸)およびこれらの混合物のメチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、ならびにイソプロピルエステルならびにグリセリドならびにこれらの混合物を包含する。室温で液体である液体デポー脂肪または脂肪酸エステルまたはこれらの混合物も適切である。
【0038】
以下の室温で液体である脂肪酸エステルまたはそれらの混合物は、特に適切であると証明されている:グリセロールトリカプリル酸塩(グリセロールトリオクチル酸塩)、グリセロールトリカプリン酸塩(グリセロールトリデカン酸塩)。上記脂肪酸の純度および良好な耐久性は同様に有利である。上記脂肪酸エステルの混合物はMygliol(ミグリオール)(登録商標)810として入手可能である。さらに、プロピレングリコールジカプリル酸エステルおよびプロピレンジカプリル酸エステルは、液体脂肪酸エステルとして用いられうる。上記エステルはMygliol(登録商標)840として入手可能である。さらにコハク酸および/またはオレイン酸を含有する同様の構造の天然オイルも脂肪酸エステルとして適切である。市販されているものは、組成物中の2つの脂肪酸(カプリン酸(C10:0)およびカプリル酸(C8:0))の割合が異なる天然オイルまたはMCTトリグリセリドであり、とりわけSasol(サソール)製のMygliol(登録商標)812、Cognis(コグニス)製のMyritol(登録商標)312、およびEvonik(エボリック)製のTegosoft(登録商標)CTである。これらすべてはおよそ50〜65%のカプリル酸(C8:0)およびおよそ30〜45%のカプリン酸(C10:0)に基づく脂質であり、きわめて少量のカプロン酸(C6:0)、ラウリン酸(C12:0)、およびミリスチン酸(C14:0)も含む。
【0039】
本発明に係る骨セメントは少なくとも1つの有機ポリマーまたは有機ポリマーの混合物を含む組成物であり、特に、モノマーに溶解性であり、有機ポリマーはポリアクリレートであり、当該有機ポリマーは、特にポリ(アルキル−2−アクリル酸アルキルエステル)、ポリ(アリール−2−アクリル酸アルキルエステル)、ポリ(アリールアルキル−2−アクリル酸アルキルエステル)、または上記ポリマーの少なくとも2つを含む混合物から選択され、それぞれ独立にアルキル基中に1〜18個の炭素原子、特に1〜4個の炭素原子を有し、それぞれ独立にアリール基中に6〜13個の炭素原子、特に6、10、12または13個の炭素原子を有し、それぞれ独立にアリールアルキル基中に6〜14個の炭素原子、特に8〜12個の炭素原子を有し、およびそれぞれ独立にアルキルエステル基中に1〜10個の炭素原子、特に1〜4個の炭素原子を有する。
【0040】
上記有機ポリマー、特にモノマーに溶解するポリマーは、ポリ(メタクリル酸メチルエステル)、ポリ(メタクリル酸エチルエステル)、ポリ(メチルメタクリル酸プロピルエステル)、ポリ(メタクリル酸イソプロピルエステル)、ポリ(メチルメタクリレート−co−メタクリレート)、ポリ(スチレン−co−メチルメタクリレート)、上記化合物のコポリマー、および少なくとも上記ポリマーの2つの混合物からなる群から選択され、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が特に好ましく用いられる。
【0041】
ラジカル重合用のモノマーに溶解しうるポリマーは、上記ラジカル重合用のモノマーに少なくとも10g/L、好ましくは少なくとも25g/L、より好ましくは少なくとも50g/L、およびさらにより好ましくは少なくとも100g/L溶解するポリマーであると理解されるものとする。重合性モノマーに溶解しうるポリマーはホモポリマーまたは共重合体でありうる。上記溶解性ポリマーは、好ましくは、少なくとも150,000g/mol、特に少なくとも200,000g/molおよび最大5,000,000g/mol以上の平均モル質量(Mw)(重量による)である。溶解性ポリマーは、例えば、メタクリル酸エステルのポリマーまたは共重合体でありうる。特に好ましい実施形態において、少なくとも1つの溶解性ポリマーは、ポリメタクリル酸メチルエステル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチルエステル(PMAE)、ポリメタクリル酸プロピルエステル(PMAP)、ポリメタクリル酸イソプロピルエステル、ポリ(メチルメタクリレート−co−メタクリレート)、ポリ(スチレン−co−メチルメタクリレート)、および上記ポリマーの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される。
【0042】
本発明に係る組成物中に含まれる上記ラジカル重合用のモノマーに溶解するポリマーの量は、通常、本発明に係る組成物の総重量に対して1〜85重量%の範囲である。したがって、以下のペーストA、B、および/またはDならびに粉末成分Cのポリマー成分は、互いに独立してペーストまたは粉末成分のそれぞれの全組成物に対して1〜85重量%でありうる。
【0043】
少なくとも1つのポリ(メタクリル酸メチルエステル)(PMMA)およびメタクリル酸メチルエステル(MMA)は、それぞれ、特に好ましい有機ポリマーとしておよびモノマーとして用いられ、さらなるモノマーまたはPMMAの共重合体を包含するそれらの混合物は適当なものとして用いられうる。
【0044】
好ましくは200,000g/mol以上の分子量(Mw)を有するポリマー、特にポリアクリレートは粉末成分製造用モノマーに溶解しうるポリマーとして用いられ、500,000g/mol以上の分子量が好ましい。500,000g/mol以下の分子量を有するポリマーもペースト中に用いられうる。この文脈において、好適な分子量は、一方では、ペーストまたは粉末成分が製造されるか否かにより、そしてさらなる成分がペースト中に存在することにより、ならびに用いられるモノマーに溶解しうるものを含むポリマーにより決定される。
【0045】
組成物に用いられるラジカル重合用のモノマーは、好ましくはそれぞれ独立に1〜18個の炭素原子、特に1〜4個の炭素原子の直鎖状、分枝状または環状アルキル基を有する、それぞれ独立に6〜13個の炭素原子のアリール基を有する、それぞれ独立に6〜14個の炭素原子、特に8〜12個の炭素原子のアリールアルキル基を有する、およびそれぞれ独立に1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜10個の炭素原子のアルキルエステル基を有する少なくとも1つのアルキル−2−アクリル酸アルキルエステル、アリール−2−アクリル酸アルキルエステル、アリールアルキル−2−アクリル酸アルキルエステルから選択され、アルキルエステル基は直鎖状、分枝状または環状のアルキル基、特に1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、または上記モノマーの少なくとも2つを含む混合物を含み得、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エステルまたはアルキルアクリル酸メチルエステルは好ましい。
【0046】
好ましくは、メタクリレートモノマーは、メタクリル酸エステルである。好ましくは、メタクリル酸エステルは、一官能基化メタクリル酸エステルである。好ましくは、上記物質は疎水性である。疎水性の一官能性メタクリル酸エステルの使用は水の吸収に起因した骨セメント体積における後での増加を可能とし、骨への損傷を予防する。好ましい実施形態において、一官能性のメタクリル酸エステルは、エステル基とは別にさらなる極性基を含有しない場合、疎水性である。一官能性の疎水性のメタクリル酸エステルは、好ましくはカルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基またはホスホネート基を含まない。
【0047】
本発明において用いられるラジカル重合用のモノマーは、好ましくは1,000g/mol未満のモル質量を有する。これは、モノマー混合物の成分であるラジカル重合用のモノマーも含み、モノマー混合物のラジカル重合用のモノマーのうちの少なくとも1つは1,000g/mol未満のモル質量を有する所定の構造を有する。
【0048】
ラジカル重合用のモノマーは好ましくは、5〜9の範囲のpH、好ましくは5.5〜8.5の範囲のpH、さらにより好ましくは6〜8の範囲のpH、および特に好ましくは6.5〜7.5の範囲のpHである、ラジカル重合用モノマーの水溶液であるのが好ましい。
【0049】
特に好ましい実施形態において、メタクリレートモノマーは、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステルまたは当該2つのモノマーの混合物である。
【0050】
好ましくは、本発明に係るペーストは、それぞれ、本発明に係るペーストの総重量に対して15〜85重量%、より好ましくは20〜70重量%、さらにより好ましくは25〜60重量%、および特に好ましくは25〜50重量%のラジカル重合用のモノマーを含有する。
【0051】
本発明に係る組成物は、溶解性有機ポリマー(特にポリメチルメタクリレート(PMMA))、およびラジカル重合用のモノマー(特にメタクリル酸メチルエステル)とは別に、微粒子無機添加剤を全組成物に対して0.01〜0.5重量%、特に0.01〜0.25重量%、好ましくは0.02〜0.14重量%の濃度で、および少なくとも1つの室温で液体である脂肪酸エステルを0.01〜10.0重量%、特に全組成物に対して、0.5〜8.0重量%、特に好ましくは1.0〜6.0重量%の濃度で含む。本発明において、粉末成分および液体モノマー成分を混合して得られるセメント練粉は、全組成物中に、微粒子無機添加剤を0.02〜0.14重量%の濃度で、かつ少なくとも1つの室温で液体である脂肪酸エステルを1.0〜6.0重量%の濃度で含む。上述されている成分に加えて、本発明に係る組成物は、放射線不透過性物質、重合開始剤および/または重合加速剤ならびに、任意に、追加の単なる肥厚効果を有する添加剤以外の他の充填剤を含む。
【0052】
本発明の一実施形態によれば、ペーストAおよびペーストBを含むキットは、
(a)ペーストAは、
(a1)少なくとも1つのラジカル重合用モノマー、特に15〜85重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは25〜60重量%、さらにより好ましくは25〜50重量%のラジカル重合用モノマー、
(a2)(a1)に溶解する少なくとも1つの有機ポリマー、特に5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、さらにより好ましくは20〜30重量%の有機ポリマー、
(a3)少なくとも1つの重合開始剤、特に0.1〜10重量%、好ましくは0.01〜8重量%、さらにより好ましくは0.01〜5重量%の重合開始剤、
を含有し、ならびに
(b)ペーストBが、それぞれペーストBの総重量に対して、
(b1)少なくとも1つのラジカル重合用モノマー、特に15〜85重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは25〜60重量%、さらにより好ましくは25〜50重量%のラジカル重合用モノマー、
(b2)(b1)に溶解する少なくとも1つの有機ポリマー、特に5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、さらにより好ましくは20〜30重量%の有機ポリマー、ならびに
(b3)少なくとも1つの重合加速剤、特に0.0005〜0.5重量%の重合加速剤、ならびに任意に(b1)に不溶性のさらなる成分(放射線不透過性物質および/または充填剤)を含有し、
それにより、ペーストAおよびBのうちの少なくとも1つが、成分(a4)および/または(b4)として少なくとも40m
2/gのBET表面を有する少なくとも1つの微粒子無機添加剤を含み、当該添加剤は共有結合されたヒドロキシル基を含み、かつ、ペーストAおよびBのうちの少なくとも1つは、成分(a5)および/または(b5)として少なくとも1つの脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステル混合物を含む。取って代わるものとして、各ペーストは脂肪酸エステル含有量を含有する。
【0053】
この文脈において、各ペーストは、微粒子無機添加剤を、ペーストAおよびBをおよそ1:1の比(いずれの値においても±0.5)で混合して得られうる全組成物に対して0.001〜2重量%、特に0.001〜1重量%(0.01〜0.5重量%、特に0.01〜0.25重量%、好ましくは0.02〜0.14重量%の添加剤など)で含み得、組成物中に存在しうる。したがって、少なくとも1つの室温で液体である脂肪酸エステルも、それぞれ互いに独立して0.01〜30重量%、特に0.01〜20重量%の濃度でいずれかのペースト中に存在しうる。ペーストAおよびBをおよそ1:1の比(いずれの値においても±0.5)で混合して得られ得る組成物の脂肪酸エステル含有物組成物は、全組成物に対して0.01〜10.0重量%、特に0.5〜8.0重量%、特に好ましくは1.0〜6.0重量%である。同様の態様を以下の粉末成分Cおよびモノマー成分Dに適用し、脂肪酸エステルは好ましくは、全組成物中に少なくとも1つの脂肪酸エステルを0.01〜10.0重量%含む、CおよびDから得られうる組成物中にモノマー成分Dのみ適切な量で添加される。この場合、CおよびDをおよそ2:1〜1:2の比で混合するのが好ましい。
【0054】
上記の定義されるモノマーおよびポリマーはペーストAおよびB中のモノマーおよびポリマーとして用いられる。
【0055】
さらなる実施形態において、粉末成分Cおよびモノマー成分Dを含むキットが請求され、
(c)粉末成分Cは、
(c1)少なくとも1つの粉末形状のポリアクリレート、特に1〜95重量%、好ましくは最大85重量%のポリアクリレート、
(c2)少なくとも1つの粉末形状の放射線不透過性物質、3〜60重量%、好ましくは3〜30重量%の放射線不透過性物質、および
(c3)少なくとも1つの重合開始剤、特に0.1〜10重量%、好ましくは0.01〜8重量%、さらにより好ましくは0.01〜5重量%、および、任意に、ペーストAの総重量に対して、さらなる成分(放射線不透過性物質および/または(a1)中に不溶性の充填剤など)
を含有し、そして
(d)モノマー成分Dは、それぞれペーストDの総重量に対して、
(d1)少なくとも1つのラジカル重合用モノマー、特に15〜85重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは25〜60重量%、さらにより好ましくは25〜50重量%、
(d2)任意に、(d1)に溶解する少なくとも1つの有機ポリマー、特に5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、さらにより好ましくは20〜30重量%、および
(d3)少なくとも1つの重合加速剤、少なくとも1つの重合加速剤、特に0.0005〜0.5重量%、および、任意に、(d1)に不溶性のさらなる成分、(放射線不透過性物質および/または充填剤など)を含有し、
少なくとも粉末成分Cまたはモノマー成分Dは、成分(C4)および/または(d4)として、少なくとも40m
2/gのBET表面を有する少なくとも1つの微粒子無機添加剤を含み、添加剤は、共有結合されたヒドロキシル基を含み、少なくともモノマー成分Dまたは粉末成分Cは、成分(C5)および/または(d5)として、少なくとも1つの脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステル混合物を含む。好ましくは、モノマー成分Dは、少なくとも1つの脂肪酸エステルまたは脂肪酸エステル混合物を含む。上述のとおり風末の形態である有機ポリマーは粉末形状ポリアクリレートとして用いられ、粉末形状PMMAが好ましい。一般に、添加剤の含有量は粉末成分およびペースト中の両方に存在しうる。好ましくは、少なくとも1つの脂肪酸はペースト中に存在する。
【0056】
2つのペーストAおよびBまたは2成分系の粉末成分Cおよびモノマー成分Dを組み合わせて得られた本発明に係る組成物の場合において、上記組成物は好ましくは少なくとも1つの重合開始剤(2成分系の1つのペースト中に存在した)および少なくとも1つの重合加速剤(2成分系の他のペースト中に存在した)を含有する。
【0057】
上記で定義されているモノマーおよびポリマーは、ペーストAおよびB中でモノマーおよびポリマーとして用いられる。
【0058】
通常、ペーストAおよび/またはBならびに粉末成分Cおよび/またはモノマー成分Dは、それぞれ互いに独立して放射線不透過性物質を含有する。
【0059】
上記のペーストAおよびBは任意の比率で互いに混合され得、ペーストAおよびBを実質的に1:1で混合しての使用は好ましいことがわかり、当該比率はそれぞれ互いに独立して±50%で変動しうる。
【0060】
さらに、本発明に係る、ペーストおよび/または粉末成分の組成物は、少なくとも1つの重合開始剤(好ましくはラジカル重合用のモノマーに溶解しうるもの)、少なくとも1つの重合加速剤(好ましくはラジカル重合用のモノマーに溶解しうるもの)、適用できる場合、少なくとも1つの重合共加速剤、または少なくとも1つの重合開始剤、少なくとも1つの重合加速剤、および適用できる場合、少なくとも1つの重合共加速剤を含有しうる。
【0061】
本発明に係る組成物である一成分系の場合、重合開始剤は、好ましくは活性化可能な 重合開始剤であり、例えば、組成物中に溶解または懸濁し、ペーストとして存在する光開始剤またはペーストに溶解または懸濁する光開始剤系である。重合開始剤は、例えば、容器部分、投薬設備または輸送カニューレ内で、一時的にペーストと接触して、開始剤または開始剤を与えるのに適当である。さらに、一成分系において、本発明に係る組成物またはペーストは活性化可能な重合開始剤とは別に電気伝導性の放射線不透過性物質も含有しうる。0.5〜500μmの粒径を有するコバルト、鉄、NdFeB、SmCo、コバルト−クロム鋼鉄、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、チタン−アルミニウム−ケイ素合金、およびチタン−ニオブ合金から構成される粒子は、本発明において特に適切である。放射線不透過性物質を熱する原因となる、500Hz〜50kHzの範囲内の周波数の代替磁界を通して上記電気伝導性の放射線不透過性物質に渦電流を導入するのは容易である。伝熱に起因して、開始剤は十分に加熱され、熱分解が誘導される。
【0062】
考えられる重合開始剤は、特に、過酸化物およびバルビツール酸誘導体であり、好ましくは少なくとも1g/L、より好ましくは少なくとも3g/L、さらにより好ましくは少なくとも5g/L、および特に好ましくは少なくとも10g/Lの過酸化物およびバルビツール酸誘導体は25℃で、重合性モノマーに溶解しうる。
【0063】
本発明に係る過酸化物は、少なくとも1つのペルオキソ基(−O−O−)を含有する化合物を意味すると理解される。過酸化物は、好ましくは遊離酸基を含まない。過酸化物は、無機過酸化物または有機過酸化物(例えば、毒性学的に許容し得るヒドロペルオキシドなど)で有り得る。特に好ましい実施形態において、過酸化物はクメンヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンモノヒドロペルオキシド、およびこれらの物質の少なくとも2つの混合物からなる群から選択される。
【0064】
バルビツール酸誘導体は、好ましくは1−一置換バルビツール酸、5−一置換バルビツール酸、1,5−二置換バルビツール酸、および1,3,5−三置換バルビツール酸からなる群から選択されるバルビツール酸誘導体である。本発明に係る特に詳細なペーストにおいて、バルビツール酸誘導体は、1,5−二置換バルビツール酸および1,3,5−三置換バルビツール酸からなる群から選択される。
【0065】
バルビツール酸の置換基の種類に関して限定されない。置換基は、例えば脂肪族または芳香族置換基でありうる。この文脈において、アルキル、シクロアルキル、アリルまたはアリール置換基は好ましい。置換基はヘテロ原子も包含しうる。特に、置換基はチオール置換基でありうる。したがって、1,5−二置換チオバルビツール酸または1,3,5−三置換チオバルビツール酸は好ましい。好ましい実施形態において、各置換基は1〜10個の炭素原子の長さ、より好ましくは1〜8個の炭素原子の長さ、および特に好ましくは2〜7個の炭素原子の長さを有する。本発明に係るバルビツール酸は、1位または5位のそれぞれに1つの置換基を有し、または1、3、5位に1つの置換基を有するのが好ましい。別の好ましい実施形態において、バルビツール酸誘導体は、1,5−二置換バルビツール酸または1,3,5−三置換バルビツール酸である。特に好ましい実施形態において、バルビツール酸誘導体は、1−シクロヘキシル−5−エチル−バルビツール酸、1−フェニル−5−エチル−バルビツール酸、および1,3,5−トリメチル−バルビツール酸からなる群から選択される。
【0066】
重金属塩および重金属錯体からなる群から選択される重金属化合物は、重合加速剤として好ましい。本発明において好ましい重金属化合物は水酸化銅(ii)、メタクリレート銅(ii)、アセチルアセトナト銅(ii)、2−エチルヘキサン酸銅(ii)、水酸化コバルト(ii)、2−エチルヘキサン酸コバルト(ii)、ベーシック炭酸銅(ii)、2−エチルヘキサン酸鉄(ii)、2−エチルヘキサン酸鉄(iii)、およびこれらの物質の少なくとも2つの混合物からなる群から選択される。
【0067】
本発明に係る組成物またはペーストの別の詳細において、重合加速剤は、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビスヒドロキシエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、塩化トリオクチルメチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化リチウム、サッカリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン、および1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノン−5−エン、フタルイミド、マレイミド、スクシンイミド、ピロメリット酸ジイミド、およびこれらの物質の少なくとも2つの混合物からなる群から選択される。
【0068】
本発明の別の有利な詳細において、重合加速剤として、重金属塩およびN,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビスヒドロキシエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、塩化トリオクチルメチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化リチウム、サッカリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン、および1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノン−5−エン、フタルイミド、マレイミド、スクシンイミド、およびピロメリット酸ジイミドを含む群からなる少なくとも1つとの組み合わせの使用を含む。この文脈において、2つまたは3つの重合加速剤は、本発明の範囲に開示される。
【0069】
本発明の有利な詳細は、本発明に係る組成物または少なくとも1つの重合共加速剤を含有するペーストA、BまたはDのいずれかからなり、適用できる場合、第三級アミンおよびアミジンは重合共加速剤として好ましく、そしてN,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビスヒドロキシエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−ウンデク−7−エン、および1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノン−5−エンが共加速剤として特に好ましい。
【0070】
本発明に係る組成物は、特にペースト形態で、本発明に係る組成物の総重量に対して、またはそれぞれ互いに独立して、ペーストA、BまたはDのいずれかの総重量に対して最大10重量%の量の重合開始剤、重合加速剤、共重合加速剤または重合開始剤、重合加速剤、および共重合加速剤を含有しうる。
【0071】
本発明に係る組成物は、特にペースト形態で、または粉末成分Cと同様にペーストA、BもしくはDの形態で上述した成分とは別のさらなる成分を含有しうる。
【0072】
本発明に係る組成物の好ましい実施形態、またはペーストA、BまたはDおよび粉末成分Cのいずれかの好ましい実施形態において、これらは、それぞれ互いに独立して、少なくとも1つの放射線不透過性物質を含みうる。放射線不透過性物質は、この分野で一般的な放射線不透過性物質でありうる。好適な放射線不透過性物質はラジカル重合用のモノマーに溶性または不溶性でありうる。放射線不透過性物質は、好ましくは金属酸化物(例えば、酸化ジルコニウムなど)、硫酸バリウム、毒性学的に許容し得る重金属粒子(適用できる場合、例えば、タンタルなど)、フェライト、磁鉄鉱(超磁気磁鉄鉱も)、および生体適合性カルシウム塩)、からなる群から選択される。上記放射線不透過性物質は、好ましくは、10nm〜500μmの範囲の粒径を有する。さらに、考えられる放射線不透過性物質は、3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨード安息香酸エステル、ガドリニウム化合物(1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−テトラ酢酸(DOTA)のエステルを含むガドリニウムキレート)も包含する。本発明に係る組成物またはペーストA、BまたはDおよび粉末成分Cのいずれかの放射線不透過性物質の濃度、特に二酸化ジルコニウムの濃度は、それぞれ互いに独立して、対応する全組成物に対して例えば、3〜30重量%の範囲でありうる。放射線不透過性物質は、本明細書において充填剤とは考えられない。
【0073】
さらに好ましい実施形態において、本発明に係る組成物または詳しく上述したいずれかのペーストは、少なくとも1つの着色料を含有しうる。着色料は、この分野において一般的な着色料で有り得、好ましくは食品の着色料でありうる。さらに、着色料は少なくとも1つのラジカル重合用モノマーに溶解性または不溶性でありうる。特に好ましい実施形態において、着色料はE101、E104、E132、E141(クロロフィリン)、E142、リボフラビン、およびリサミングリーンからなる群から選択される。本発明に係る用語「着色料」は、色ワニス(例えば、色ワニスグリーン、E104およびE132の混合物のアルミニウム塩など)も包含するだろう。
【0074】
さらに好ましい実施形態において、本発明に係る組成物は、少なくとも1つの生体適合性エラストマーを含有しうる。好ましくは、生体適合性エラストマーは、微粒子である。好ましくは、生体適合性エラストマーは、少なくとも1つのラジカル重合用モノマーに可溶性である。生体適合性エラストマーとしてブタジエンの使用は特に適切なものとして証明されている。
【0075】
さらに好ましい実施形態において、本発明に係る組成物は、吸着基を有する少なくとも1つのモノマーを含有しうる。吸着基は、例えば、アミド基でありうる。したがって、吸着基を有するモノマーは、例えば、メタクリル酸アミドでありうる。吸着基を有する少なくとも1つのモノマーを用いることは、関節内部人工器官に骨セメントを結合し、目的の態様で影響することを可能とするだろう。
【0076】
さらに好ましい実施形態において、本発明に係る組成物またはペーストA、BまたはDのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの安定剤含有しうる。安定剤は、ペーストに含有されるラジカル重合用のモノマーの自然の重合を妨げるのに好適であるべきである。さらに、安定剤は、本発明に係るペーストに含有される他の成分との干渉相互作用を起こすべきでない。当該種の安定剤は先行技術において公知である。好ましい実施形態において、安定剤は2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールおよび/または2,6−ジ−tert−ブチルフェノールである。
【0077】
本発明に係るキットは、少なくとも2つの成分からなる系であると理解されるものとする。以下において2つの成分(すなわちペーストAおよびペーストB)の対照が生成されるが、当該キットは、必要に応じて、2超の成分(例えば3、4、5または5超の成分)を適当に含有しうる。個々の成分は、好ましくは、1つのキットの構成要素の成分は別のキットの構成要素の成分と接触しないように包装して互いに分離して提供される。したがって、例えば個々のキットの構成成分を包装して互いに分離させ、そして保存容器内にそれらを一緒に貯蔵できる。
【0078】
好ましくは、キットは、第1容器および第2容器を含む適切な方法で骨セメント用組成物を製造する装置として設計され、第1容器はペーストAを含み、第2容器はペーストBを含み、少なくとも1つの容器は、開封され、ペーストAおよびペーストBを開封後に混合し、そしてペーストAおよびペーストBの混合用単位を混合する。したがって、本発明に係る組成物の製造用装置としてのキットは粉末成分Cおよびモノマー成分D用の第1容器を含みうる。
【0079】
キットを言及するにおいて、この目的のために、少なくとも2つのペーストAおよびBを、本発明に係る組成物が得られるように互いに混合される。それらの混合比は、好ましくは、0.5〜1.5重量部のペーストAおよび0.5〜1.5重量部ペーストBである。特に好ましい実施形態において、ペーストAおよびBのそれぞれの総重量に対して、それぞれ、ペーストAの分画は30〜70重量%であり、そしてペーストBの分画は30〜70重量%である。粉末成分Cおよびモノマー成分Dの混合比は、好ましくは、重量において、3:1〜1:3、特に2:2である。プロセスの混合は共通の混合装置(例えば、スタティックミキサーまたはダイナミックミキサー)と関与し得る。
【0080】
得られる組成物は、最終的に、キットのペーストを混合した後即座に不粘着性である(ISO 5833基準)。
【0081】
本発明に係る組成物は、組成物の製造後、特にペーストAおよびBまたは粉末成分Cおよびモノマー成分Dを混合した後20〜60秒で用いられうる。それゆえ、本発明に係る組成物は、漏出せず、混合して製造された後およそ20秒からきわめて迅速に用いられうる。共通の漏出しない本発明に係る組成物は、混合プロセス後およそ40秒も迅速に得られうる。したがって、製造される硬化性組成物は、その後8〜9分間加工されうる。したがって、組成物の加工用の有用性の可能性はおよそ8〜9分間に増加した。先行技術における同様の骨セメントは、混合プロセス後2〜3分間で漏出しなくなり、そして、その後7分間の間だけ加工でき、別の不利な点として、それらはカニューレに接着するので、カニューレを通して加圧するのは難しい。したがって、本発明に係る組成物は、迅速に利用でき、かつより長い時間利用しやすい点で有利である。
【0082】
本発明に係るペーストまたは硬化によるペーストCは、ペーストまたはキットに存在する成分が互いに混合されておよそ6〜8分後に高強度を得る。
【0083】
本発明の別の主題は、ペーストAおよびBまたは粉末成分Cおよびモノマー成分Dを混合して得られうる骨セメント、特に硬化性骨セメントまたは硬化骨セメントである。
【0084】
本発明の別の主題は、ペーストAおよびBまたは粉末成分Cおよびモノマー成分Dの混合により得られる本発明に係る組成物の重合を通して得られうる形体である。
【0085】
本発明に係る骨セメントおよび組成物またはキットは、骨粗鬆症の骨組織の増強中の使用、特に好ましくは、椎体形成術または椎骨形成術への使用、ならびに特に骨粗鬆症の骨組織中の穿孔の増強に適切である。また、骨空洞の充填用、大腿骨形成術用、椎体形成術用、スペーサ製造用、関節内部人工器官の機械的固定用、頭蓋骨欠陥の充填用もしくは局所的抗生物質治療用担体物質の製造用または医療用活性物質の局所的放出用担体物質としても適している。
【0086】
本発明に係るセメントは、カニューレ処置したスクリューを通して骨粗鬆症の骨組織に導入され、一度硬化され、骨組織およびカニューレ処置したスクリューの結合を安定化する。当該セメントは、椎体形成術および椎骨形成術においてだけでなく、それらから誘導される方法(椎体増幅形成術など)でも用いられうる。