特許第6151837号(P6151837)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6151837
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】濾布及びその製造方法、並びに、濾過機
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/16 20060101AFI20170612BHJP
   B01D 39/08 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   B01D39/16 A
   B01D39/08 Z
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-212687(P2016-212687)
(22)【出願日】2016年10月31日
【審査請求日】2016年10月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516326553
【氏名又は名称】株式会社タカラ工芸社
(74)【代理人】
【識別番号】100110559
【弁理士】
【氏名又は名称】友野 英三
(72)【発明者】
【氏名】押川 哲徳
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−094586(JP,A)
【文献】 特開昭54−101564(JP,A)
【文献】 特開平09−010512(JP,A)
【文献】 特開2011−136318(JP,A)
【文献】 実開平06−003405(JP,U)
【文献】 特開2013−063376(JP,A)
【文献】 特開2004−202317(JP,A)
【文献】 特開2014−198303(JP,A)
【文献】 特開平10−230107(JP,A)
【文献】 特許第3431689(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/08、39/16
B01D 46/00
B01D 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過機に適用される通気度が7.0cm/cm・sec以上の濾布において、濾過対象物が通過する前記濾布の濾過部以外であって、前記濾過対象物を閉塞するように接する前記濾布の圧着部の全面の通気度が0.1〜6.0cm/cm・secとなるように、前記全面がシリコンゴムで被覆されていることを特徴とする濾布。
【請求項2】
濾過機に適用される通気度が7.0cm/cm・sec以上の濾布において、濾過対象物が通過する前記濾布の濾過部以外であって、前記濾過対象物を閉塞するように接する前記濾布の圧着部の全面の通気度が0.1〜6.0cm/cm・secとなるように、前記全面が変性ポリプロピレンで被覆されていることを特徴とする濾布。
【請求項3】
濾過機に適用される通気度が7.0cm/cm・sec以上の濾布において、濾過対象物が通過する前記濾布の濾過部以外であって、前記濾過対象物を閉塞するように接する前記濾布の圧着部の全面の通気度が0.1〜6.0cm/cm・secとなるように、前記全面が前記シリコンゴムと前記変性ポリプロピレンの混合物で被覆されていることを特徴とする濾布。
【請求項4】
前記シリコンゴムがフッ素系シリコンゴムであることを特徴とする請求項又はに記載の濾布。
【請求項5】
濾過機に適用される通気度が7.0cm/cm・sec以上の濾布において、濾過対象物が通過する前記濾布の濾過部以外であって、前記濾過対象物を閉塞するように接する前記濾布の圧着部の全面の通気度が0.1〜6.0cm/cm・secとなるように、前記全面が溶融・融着されていることを特徴とする濾布。
【請求項6】
前記全面に、前記シリコンゴムを溶剤に溶解した溶液、前記シリコンゴムを溶剤に分散したエマルション、又は、前記シリコンゴムを水に分散したエマルションを塗布又は印刷した後、乾燥することにより製造される請求項に記載の濾布の製造方法。
【請求項7】
前記全面に、前記変性ポリプロピレンを溶剤に溶解した溶液、前記変性ポリプロピレンを溶剤に分散したエマルション、又は、前記変性ポリプロピレンを水に分散したエマルションを塗布又は印刷した後、乾燥することにより製造される請求項に記載の濾布の製造方法。
【請求項8】
前記全面に、前記シリコンゴムと前記変性ポリプロピレンとを溶剤に溶解した溶液、前記変性ポリプロピレンを溶剤に分散したエマルションに前記シリコンゴムを溶解したエマルション、前記シリコンゴムを溶剤に分散したエマルションに前記変性ポリプロピレンを溶解したエマルション、前記変性ポリプロピレンと前記シリコンゴムを溶剤に分散したエマルション、又は、前記変性ポリプロピレンと前記シリコンゴムを水に分散したエマルションを塗布又は印刷した後、乾燥することにより製造される請求項に記載の濾布の製造方法。
【請求項9】
前記シリコンゴムが、前記フッ素系シリコンゴムであることを特徴とする請求項又はに記載の濾布の製造方法。
【請求項10】
前記全面に、炭酸ガスレーザー又はファイバーレーザーを照射することにより製造される請求項に記載の濾布の製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の濾布を装着したことを特徴とする濾過機。
【請求項12】
請求項乃至のいずれか一項に記載の方法で製造される濾布を装着したことを特徴とする濾過機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種濾過機に適用可能な濾布及びその濾布の製造方法、並びに、濾過機に関する。特に、湿式濾過機に適した濾布及びその製造方法、並びに、湿式濾過機に関する。
【背景技術】
【0002】
濾過は、湿式濾過及び乾式濾過に大別されるが、今日では、環境保護や品質向上等の観点から必要不可欠なものとなっている。湿式濾過は、排水の浄化や廃棄物の再資源化及び容量軽減等、或は、インキ・塗料・食品・油脂等の化学工業製品の品質向上や安定生産等のための重要な工程である。そのため、湿式濾過は、上下水道汚泥処理、屎尿排水処理、製紙・パルプ排水処理、砕石排水処理、メッキ排水処理、製鉄・鉱工業排水処理、インキ・塗料・食品・油脂等における固液分離に利用されている。同様に、乾式濾過も、自然環境や家庭環境を保護するため、あらゆる装置及び産業における気体と固体を分離する集塵に利用されている。特に、廃棄物処理、ガス化炉、熱分解炉等から排出される処理ガス中に含まれる有害物質やダストを取り除くことを目的としている。
【0003】
そして、湿式濾過には、加圧式、減圧式、遠心式、及び、隔膜式があるが、加圧式濾過は、処理効果・処理量に優れ、保守管理が容易で、維持費が安価であるという観点から、幅広い分野で適用されている。特に、多数の濾過室で濾布を通過して固体を液体から分離するフィルタープレス濾過機は、処理効率が高く、維持費が安価なバランスの取れた処理設備として、上下水道、化学工場、及び、一般排水等の濾過に数多く導入されている。
【0004】
乾式濾過は、吸引式と押込み式があるが、吸引式が大半で、ダストの払落し方法により多種多様な濾過機が存在する。しかしながら、両者の濾過に用いる濾布の材質は、基本的には同じで、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン等の繊維が数多く集まった糸を編んだ織布や、これらの繊維を糸にすることなく3次元的に重ね合わせ結合した不織布を用いている。
【0005】
本発明の技術背景を説明するために、フィルタープレス濾過機を例に挙げて説明する。一般に、フィルタープレス濾過機の濾過原理は、図1の濾過部Aに示したように、多数の濾板1を配置すると共に、対向する濾板1の間に2枚の濾布2を配置し、油圧シリンダ5で濾板1を加圧して濾布2を挟み込み、その2枚の濾布2の間に濾過処理液を濾過処理液供給口11から供給してその水圧で濾過処理液を濾過し、濾液排出口12から濾液を排出した後、濾板1の間隔を広げて2枚の濾布に残る固体の残滓であるケーキ13を脱離、落下して排出するというものである。濾板1に、(図示しない)ダイヤフラムが設けられている場合も多く、油圧シリンダ5で濾板1を加圧して濾過処理液を濾過した後、更にダイヤフラムでケーキ13を圧搾し、ケーキの固形分を高めることができる(非特許文献1)。最近では、上記濾過部Aの周辺に、濾布駆動装置7、濾布蛇行防止装置8、濾布張力制御装置9、濾布洗浄装置10等を備え、濾布の交換、ケーキの掻き落とし作業、部品交換等の維持管理を容易にし、安定な運転を可能とする濾布無端濾布走行式フィルタープレスが開発されている(非特許文献1)。
【0006】
しかしながら、上記フィルタープレス濾過機には、油圧シリンダ5で濾板1を加圧した後、2枚の濾布2の間に濾過処理液を濾過処理液供給口11から供給してその水圧で濾過処理液を濾過し、濾液排出口12から濾液を排出する工程において、濾過処理液及び濾液が漏洩するという問題、逆に、濾液を排出した後、濾板1の間隔を広げて2枚の濾布に残る固体の残滓であるケーキ13を脱離、落下して排出する工程において、濾布の剥離が困難で、ケーキ13の脱離が困難であるという問題がある。前者の問題により、濾過処理液及び濾液の回収を行う必要がある上、後者の問題により、濾過処理工程の停滞が生じ、濾布洗浄の強化を図らなければならず、総合的な濾過処理能力の低下を招くことになる。
【0007】
このような課題は、加圧式であるフィルタープレス濾過機では、一般的に見逃されており、図2及び3を用いて更に詳しく説明する。図2(a)には、ダイヤフラムを設けていないフィルタープレス濾過機の濾過工程の詳細を示す、濾板及び濾布を側面から見た模式図である。濾板1の間に配置された2枚の濾布2が、加圧された濾板1のシール部1−4で圧着され、密閉された濾過室1−3が形成された後、その空間に濾過処理液供給路1−1から供給された濾過処理液が、その水圧で濾過される。一般的に、2MPa以上の圧力が加えられる。そして、濾液が濾液排出路1−2から排出され、濾過が完了すると、濾板1の間隔が広げられ、ケーキ13を脱離する。図2(b)は、濾板1とダイヤフラム1’−5を備えたダイヤフラム濾板1’を交互に配列している場合であり、圧搾空気又は圧搾水供給路1’−6から供給される空気又は水の圧力により更にケーキ13の含水率を低下させるものである。
【0008】
このような工程で生じる問題を、図2(a)及び(b)にそれぞれ対応した濾板1及び1’を正面から見た模式図である図3(a)及び(b)、並びに、図2(a)及び(b)にそれぞれ対応した濾布2及び2’を正面から見た模式図である図4(a)及び(b)を用いて説明する。すなわち、上述した濾過工程において、濾板1及び1’のシール部1−4及び1’−4、並びに、濾布2及び2’のシール部2−4及び2’−4、には、極めて大きな圧力が負荷されるにもかかわらず、濾過処理液供給路1−1及び1’−1、濾室1−3及び1’−3、及び、濾液排出路1−2及び1’−2から、濾板のシール部1−4及び1’−4並びに濾布のシール部2−4及び2’−4を経由して濾過処理液及び濾液が漏洩するというシール性の問題が生じる一方、大きな圧力が負荷されることによって、濾布の剥離が困難で、ケーキ13の脱離が困難である剥離性という矛盾する問題が生じるのである。
【0009】
これらの問題に対して、フィルタープレス濾過機の部品の改良、及び、この濾過機で使用する濾布の改良という観点から検討されている。
【0010】
シール性の問題については、例えば、特許文献1は、ダイヤフラム濾板のダイヤフラムの材質をポリエーテル・ポリエステル系熱可塑性エラストマーとし、耐油性を向上させと共に、シール部の硬度を制御することによって、シール部の強固で確実なシールを実現している。また、特許文献2では、濾過処理液供給路の近傍及び濾液排出路の近傍にゴム製のОリング設けて濾過処理液及び濾液に対するシール性を高めている。そして、特許文献3は、濾過処理液供給路の近傍をポリプロピレンのような変形可能な樹脂で形成する方法を開示している。実際、現在では、軽量で、柔軟性、耐腐食性を有し、シール性に優れたポリプロピレンで成形された濾板を用いることが多い(例えば、非特許文献2)。更に、従来から、濾枠で支持された円環状ゴム製シール材が、シール性を高めるために、濾板のシール部に設けられた円周上の溝に配設されているが、特許文献4では、その操作性の改良が試みられており、未だ簡単な方法でシール性を解決する手段が見出されていないものと考えられる。
【0011】
剥離性の問題は、例えば、特許文献5では、濾布の上部の非濾過面(シール部の上部)に弾性部材を設け、濾布の振動を濾布全体に伝えてケーキの剥離性を高め、非濾過面における濾布の撓みを改善している。また、特許文献6では、濾布の濾過面に筋状に剥離材を形成して、ケーキの剥離性を高めている例が認められる。
【0012】
しかしながら、以上、いずれの手段も、原理的に、シール性と剥離性のいずれか一方を解決する可能性が認められるものの、シール性と剥離性の矛盾する双方の問題を同時に解決する手段とは言い難い。
【0013】
一方、乾式濾過においても、濾過対象物が気体と固体の混合物であるという点が異なるだけで、非濾過面から排気ガス等の濾過処理ガスが漏洩することによって、固体と気体を分離する集塵能力が低下するため、それを防止することができる濾布が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平7−96105号公報
【特許文献2】特開平11−19413号公報
【特許文献3】特開2013−86035号公報
【特許文献4】特開2014−233674号公報
【特許文献5】特開2014−76436号公報
【特許文献6】特開2012−157838号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】株式会社クボタ、優秀環境装置、39巻、9−17頁(2013年7月)
【非特許文献2】氣工社、氣工社の濁水処理装置カタログ、氣工社ホームページ、http://www.kikosha.co.jp/katarogu_pdf/ktn_kfp.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、湿式濾過においては、濾過処理液及び濾液の漏洩を防止することができると共に、濾布の剥離及びケーキの脱離が容易な湿式濾過機に適した濾布及びその製造方法を提供することである。更に、本発明の課題は、その濾布を装着した、濾過処理液及び濾液の漏洩が少なく、濾布の剥離及びケーキの脱離が容易で、総合的に濾過処理能力に優れた湿式濾過機を提供することである。一方、乾式濾過においては、濾過対象物である有害物質やダストの非濾過面からの漏洩が少ない濾布及びその製造方法を提供すると共に、その濾布を装着した、有害物質やダストの漏洩が少ない乾式濾過機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、湿式濾過機に装着するために必要な濾布の非濾過面の通気度を制御することにより、濾過処理液及び濾液の漏洩が少なく、濾布の剥離及びケーキの脱離を容易に行えることを見出し、本発明の完成に至った。
【0018】
すなわち、本発明は、濾過対象物が通過する濾布の濾過部以外に、通気度が6.0cm/cm・sec以下である領域を設けることを特徴とする濾布である。
【0019】
濾布に使用することができる織布及び不織布は、濾布の捕集性、処理量、剥離性、及び、目詰まり性と使用する濾過機とから選択され、幅広い通気度を有しているものがある。しかし、濾布の捕集性、処理量、剥離性、及び、目詰まり性のバランスから、通気度が8.0以上の織布及び不織布を用いる。従って、濾過工程において、非濾過面は大きな圧力が負荷されているにもかかわらず、非濾過面から濾過処理液及び濾液が漏洩する。そこで、濾布の濾過処理液供給口等の開口部を除く濾過部以外に、通気度が6.0cm/cm・sec以下である領域を設けることによって、非濾過面から濾過処理液及び濾液が漏洩することを防止することが可能となる。特に、濾過処理液及び濾液の漏洩を防止することを主たる目的とする場合には、濾過部以外において、6.0cm/cm・sec以下の通気度である領域が、濾過対象物が閉塞されるように周設されることが好ましい。この領域の形状や面積は、用途に応じて適宜決定されるが、濾過処理液供給口等の開口部を除く濾過部以外全面に形成してもよい。更に、その通気度は、4.0cm/cm・sec以下であることがより好ましく、2.0cm/cm・sec以下であることがより更に好ましい。
【0020】
一方、濾布の剥離及び濾布からのケーキの脱離を主たる目的とする場合には、濾過部以外において、6.0cm/cm・sec以下の通気度である領域が、必ずしも濾過対象物が閉塞されるように周設される必要はなく、濾布の剥離及びケーキの脱離が促進されるように部分的に形成すればよい。この領域の形状及び面積等も、用途に応じて適宜決定される。更に、その通気度は、4.0cm/cm・sec以下であることがより好ましく、2.0cm/cm・sec以下であることがより更に好ましい。
【0021】
このように、通気度の制御によって漏洩性が改善されるのは、濾過処理液及び濾液が濾布を通過するのを遮断するためであるが、剥離性が改善されるのは、次のように考えられる。後述するように、シリコンゴム等を濾布に塗布して剥離性を向上させるだけでなく、通気度が低下することは、濾布の表面積を減少させ、濾布、濾板、及び、ケーキとの接触面積を低減する効果があるためである。
【0022】
そして、本発明は、上記濾過部以外の通気度が6.0cm/cm・sec以下である領域が、シリコンゴム単独、塩素化ポリプロピレン、又は、シリコンゴムと塩素化ポリプロピレンの混合物で被覆されていることを特徴とする濾布である。ここで、シリコンゴムは、非濾過面の濾布のシール性及び剥離性という矛盾する問題点を解決することができる。このようにシリコンゴムは剥離性に優れているが、逆に、濾布との接着性が悪いため、塩素化ポリプロピレンによりその問題を解決している。
【0023】
更に、非塩素化という観点から、本発明は、上記濾過部以外の通気度が6.0cm/cm・sec以下である領域が、酸変性ポリプロピレン単独又はシリコンゴムと酸変性ポリプロピレンの混合物で被覆されていることを特徴とする濾布である。ここで、酸変性ポリプロピレンは、上記塩素化ポリプロピレンと同様の役割を果たすものである。なお、本明細書では、塩素化ポリプロピレンは、酸変性した塩素化ポリプロピレンを含むが、酸変性ポリプロピレンは、塩素を含まない酸変性した非塩素化ポリプロピレンのことをいうものとする。
【0024】
そして、このような濾過対象物が通過する濾布の濾過部以外の通気度が6.0cm/cm・sec以下である領域は、シリコンゴムを溶剤に溶解した溶液、塩素化ポリプロピレンを溶剤に溶解した溶液、酸変性ポリプロピレンを溶剤に溶解した溶液、シリコンゴムと塩素化ポリプロピレンとを溶剤に溶解した溶液、又は、シリコンゴムと酸変性ポリプロピレンとを溶剤に溶解した溶液を塗布又は印刷した後、乾燥することにより製造される。上述したように、非塩素化という観点から、塩素化ポリプロピレンの替わりに酸変性ポリプロピレンを用いて製造することが好ましい。
【0025】
また、生産性という観点から、シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルション、塩素化ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルション、酸変性ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルション、シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションに、塩素化ポリプロピレンを溶解もしくは塩素化ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルション、塩素化ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションにシリコンゴムを溶解もしくはシリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルション、シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションに酸変性ポリプロピレンを溶解もしくは酸変性ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルション、又は、酸変性ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションにシリコンゴムを溶解もしくはシリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルションを、上記領域に塗布又は印刷した後、乾燥することにより製造されることがより好ましい。これは、エマルションの方が固形分濃度を上げることができ、塗布又は印刷回数を低減することができるからである。
【0026】
更に、脱溶剤化という観点から、濾布に、シリコンゴムを水に分散した水系エマルション、塩素化ポリプロピレンを水に分散した水系エマルション、酸変性ポリプロピレンを水に分散した水系エマルション、シリコンゴムと塩素化ポリプロピレンとを水に分散した水系エマルション、又は、シリコンゴムと酸変性ポリプロピレンとを水に分散した水系エマルションを上記領域に塗布又は印刷した後、乾燥することにより製造されることが好ましい。
【0027】
また、更なる生産性改善及び低価格化という観点から、本発明の濾布は、上記濾過部以外の上記領域の通気度が、濾布に炭酸ガスレーザー又はファイバーレーザーを照射して濾布の繊維や糸を溶融・融着させることにより達成されることがより更に好ましい。この場合、濾布の繊維や糸の溶融・融着が通気度を低下させ、濾過処理液及び濾液の通過を遮断するが、このような通気度の低下に伴う濾布の表面積の低下が、濾布、濾板、及び、ケーキとの接触面積を低減させて剥離性を高める。
【0028】
そして、本発明は、濾過対象物が通過する濾布の濾過部以外に、通気度が6.0cm/cm・sec以下である領域が設けられている濾布を装着したことを特徴とする濾過機である。このような濾布は、シリコンゴム単独、塩素化ポリプロピレン単独、酸変性ポリプロピレン単独、シリコンゴムと塩素化ポリプロピレンの混合物、又は、シリコンゴムと酸変性ポリプロピレンの混合物で上記領域が被覆されている濾布が好ましく、炭酸ガスレーザー又はファイバーレーザーで上記領域が溶融・融着されている濾布であることがより好ましい。
【0029】
更に、濾過対象物が通過する濾布の濾過部以外に、通気度が6.0cm/cm・sec以下である領域が設けられている濾布を装着した濾過機において、このような濾布は、シリコンゴムを溶剤に溶解した溶液、塩素化ポリプロピレンを溶剤に溶解した溶液、酸変性ポリプロピレンを溶剤に溶解した溶液、シリコンゴムと塩素化ポリプロピレンとを溶剤に溶解した溶液、シリコンゴムと酸変性ポリプロピレンとを溶剤に溶解した溶液、シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルション、塩素化ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルション、酸変性ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルション、シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションに塩素化ポリプロピレンを溶解もしくは塩素化ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルション、塩素化ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションにシリコンゴムを溶解もしくはシリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルション、シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションに酸変性ポリプロピレンを溶解もしくは酸変性ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルション、酸変性ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションにシリコンゴムを溶解もしくはシリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルション、シリコンゴムを水に分散した水系エマルション、塩素化ポリプロピレンを水に分散した水系エマルション、酸変性ポリプロピレンを水に分散した水系エマルション、シリコンゴムと塩素化ポリプロピレンとを水に分散した水系エマルション、又は、シリコンゴムと酸変性ポリプロピレンとを水に分散した水系エマルションを塗布又は印刷した後、乾燥することにより製造される濾布であることが好ましいが、炭酸ガスレーザー又はファイバーレーザーを照射することにより製造される濾布であることがより好ましい。
【0030】
このような濾布は、各種合成繊維を数多く束ねた糸を編んだ織布や繊維を糸にすることなく3次元的に重ね合わせ結合した不織布等が好ましく用いられるが、濾過対象物の固体の材質や粒子径、濾過対象物の性状等によって選定される。
【0031】
まず、繊維の材質は、繊維にすることができるものであれば特に限定されるものではないが、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等の脂肪族系ポリアミド、ノーメックス(登録商標)やケブラー(登録商標)等のアラミドと呼ばれる耐熱性を高めた芳香族系ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド、及び、芳香族ポリエーテルケトン樹脂等の熱可塑性合成樹脂、綿等の天然繊維、ガラス、炭素繊維、及び、金属等を用いることができる。しかし、耐薬品性、耐溶剤性、耐酸化性、濾過された固体の剥離性、及び、炭酸ガスレーザーを用いる場合の熱溶融性等の観点から上記熱可塑性合成樹脂が好ましい。更に、価格も考慮すると、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等の脂肪族系ポリアミドがより好ましい。中でも、ポリプロピレンがより更に好ましい。
【0032】
濾布の構造は、捕集性、処理量、濾過された固体の剥離性、目詰まり性、強度、耐久性、及び、価格等から、用途及び目的に応じて選択されるが、織布及び不織布のいずれも好ましく用いられる。しかし、特に、湿式濾過機においては、強度及び耐久性という観点から、織布がより好ましく用いられる。
【0033】
更に、織布の場合、繊維の形態及び繊維を撚った糸の織組織によって、捕集性、処理量、濾過された固体の剥離性、目詰まり性、強度、耐久性、及び、価格等に、それぞれの特徴があり、用途及び目的に応じて選択され、いずれも好ましく用いることができる。
【0034】
繊維の形態としては、長繊維を撚ったモノフィラメント糸及びマルチフィラメント糸、又は、短繊維を撚ったスパン糸、いずれも用いることができるが、捕集性及び強度を重視する場合にはスパン糸を、処理量、剥離性、及び、目詰まり性を重視する場合にはモノフィラメント糸を、バランスの取れた特性が求められる場合にはマルチフィラメント糸を用いることが好ましい。
【0035】
織組織としては、図5の各種濾布の織組織の模式図に示したように、平織(a)、綾織(b)、朱子織(c)、及び、(図示していない)二枚の濾布を重ねた二重織があり、いずれも用いることができるが、捕集性を重視する場合には平織を、処理量、剥離性、及び、目詰まり性を重視する場合には朱子織を、バランスの取れた特性が求められる場合には綾織又は二重織を用いることが好ましい。特に、二重織は、表面に低通気性・高剥離性の濾布織組織、裏面に高通気性の濾布組織を有する濾布を重ねるものが、上記各種特性を兼ね備える上で好ましい組織である。
【0036】
次いで、通気度を制御するために、濾布に塗布又は印刷するポリマー溶液及びポリマーエマルションを構成する、シリコンゴム、塩素化ポリプロピレン、及び、酸変性ポリプロピレンの溶液、非水系エマルション、及び、水系エマルションとしては、次のようなものを用いることができる。
【0037】
シリコンゴム溶液としては、例えば、信越化学工業社製のKR−114B、KR−165、KR−169等、東レ・ダウコーニング社製のSE9186L CLEAR、SR2430等、及び、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のYE−5505等を上げることができる。更に、例えば、信越化学工業社製のKR−2038のような溶剤を含まない場合は、塩素化ポリプロピレンを溶剤に溶解した溶液又は酸変性ポリプロピレンを溶剤に溶解した溶液に、そのまま又は溶剤に溶解した溶液として用いることができる。
【0038】
また、一般的にRTV(Room Temperature Vulcanizing)シリコンゴムとして市販されている各種液状又はペースト状シリコンゴムも、塩素化ポリプロピレンを溶剤に溶解した溶液又は酸変性ポリプロピレンを溶剤に溶解した溶液に、そのまま又は溶剤に溶解した溶液として用いることができる。このようなRTVゴムは、一液硬化型もしくは二液硬化型、又は、縮合型もしくは付加型という硬化方式に関わらず用いられ、例えば、信越化学工業社製のKE−347、KE−4896、KE−1830、KE−41、KE−441、FE−123、KE−42、KE−45S等の各種一液硬化型RTVシリコンゴム、信越化学工業社製のKE−1800T(A/B)、KE−1800(A/B/C)KE−1031(A/B)、KE−106、KE−109E(A/B)、ASP−1120(A/B)等に代表される各種二液又は三液硬化型RTVシリコンゴム、東レ・ダウコーニング社製のRLB−9200−20、RLB−9200−30、RLB−9200−40、RLB−9200−50、RLB−9200−60、RLB−9200−70等の各種二液硬化型RTVシリコンゴム、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のTSE3843−W、TSE388、TSE3944、TSE3971、TSE322、TSE3221S等の各種一液硬化型RTVシリコンゴム、及び、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のTSE3360、TSE3033、TSE3476、TSE3477等の各種二液硬化型RTVシリコンゴム等を上げることができる。
【0039】
特に、耐熱性、耐油性、耐水性等に優れたシール・ガスケット・ダイヤフラム、Oリング等に適したものが好ましく、信越化学工業社製のKE−3479、KE−348、KE−4897、KE−4898、KE−1820、KE−1825、KE−1831、KE−1833、KE−1885、KE−3417、KE−3418、KE−3490、KE−4890、KE−40RTV、KE−41、KE−42、KE−44、KE−45、KE−441、KE−445、及び、東レ・ダウコーニング社製のRLB−9200−20、RLB−9200−30、RLB−9200−40、RLB−9200−50、RLB−9200−60、RLB−9200−70を挙げることができる。
【0040】
中でも、信越化学工業社製のFE−123、FE−61、X−32−1619、東レ・ダウコーニング社製のFL30−9201、FL40−9201、FL60−9201、FL70−9201のフロロシリコーンゴムが、耐油性、耐水性、耐熱性、及び、剥離性という観点からより更に好ましい。
【0041】
シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションとしては、例えば、東レ・ダウコーニング社製のPRX308DISPERSION CLEAR等を用いることができる。
【0042】
シリコンゴムを水に分散した水系エマルションとしては、信越化学工業社製のPOLON−MF56、POLON−MF−40、KM−2002−L−1、KM−2002−T、KM−9772、KM−9749、及び、東レ・ダウコーニング社製のIE−7170等を用いることができる。
【0043】
また、濾過の方式や用途等によっては、耐油性、耐水性、耐熱性、及び、剥離性等を高める目的で、シリコンパウダーを加える方が好ましい場合もある。シリコンパウダーとしては、東レ・ダウコーニング社製のEP−5500、EP−2601、EP−2720、及び、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の各種トスパール(登録商標)を挙げることができる。シリコンパウダーの水分散液としては、信越化学工業社製のKM−9729、X−52−1133等、及び、東レ・ダウコーニング社製のDY33−430M、DY33−440F、33ADDITIVE、BY29−119等を用いることができる。
【0044】
以上の各種シリコンゴムは、濾過の方式や用途等に応じ選択されるが、一種で用いることもできるが、二種以上を配合して用いることが好ましい場合もある。また、列挙したシリコンゴムの種類によっては、縮合反応又は付加反応による硬化が必要な場合があり、その場合は、適宜硬化触媒を塗布する前に添加し、ポットライフ時間内に塗布又は印刷される。
【0045】
塩素化ポリプロピレンを溶剤に溶解した溶液としては、東洋紡社製のハードレン(登録商標)13−LP、13−LLP、14−LWP、15−LP、15−LLP、16−LP、DX−526P、CY−9122P、CY−9124P、HM−21P、M−28P、F−2P、F−6P、CY−1132(既に溶解済み)等、三菱化学社製サーフレン(登録商標)、及び、日本製紙社製スーパークロン(登録商標)を溶剤に溶解して用いることができる。ただし、例えば、東洋紡社製ハードレン(登録商標)15−LPBのように既に溶液として市販されているものを用いる方が好ましい。また、塩素化ポロプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションは、例えば、酸変性した塩素化ポリプロピレン溶液である上記CY−1132にn−ヘキサン及びアルコールを添加することによって作製することができる。
【0046】
塩素化ポリプロピレンを水に分散した水系エマルションとしては、東洋紡社製のハードレン(登録商標)EH−801、EW−530、及び、EW−8511等や、日本製紙社製スーパークロン(登録商標)を水に分散した水系エマルション等を挙げられる。
【0047】
非塩素系の酸変性ポリプロピレンを溶剤に溶解した溶液としては、東洋紡社製のハードレン(登録商標)NS−2002や、三菱化学社製モディック(登録商標)及び住友化学社製スミフィット(登録商標)、住化ケムテックス社製B1401、H1301、Z9918、Z9921等を溶剤に溶解した溶液が挙げられる。非塩素系の酸変性ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションとしては、東洋紡社製のハードレン(登録商標)TD−15B等がある。
【0048】
非塩素系の酸変性ポリプロピレンを水に分散した水系エマルションとしては、東洋紡社製のハードレン(登録商標)NZ−1004やNZ−1015、三菱化学社製アプトロック、及び、住友化学社製スミフィット(登録商標)、住化ケムテックス社製Z9901、Z9911、Z9915、Z9917、J2001、I3403等を水に分散した水系エマルションを挙げられる。
【0049】
以上の変性ポリプロピレン(以下、塩素化ポリプロピレン及び酸変性ポリプロピレンを総称して「変性ポリプロピレン」という。)についても、濾布の材質に応じて選択されるが、一種で用いることもできるが、二種以上を配合して用いることが好ましい場合もある。
【0050】
以上、各種シリコンゴム、その溶液、その非水系エマルション、及び、その水系エマルションから少なくとも一種以上が、各種塩素化ポリプロピレン、その溶液、その非水系エマルション、及び、その水系エマルションから少なくとも一種以上が、そして、各種酸変性ポリプロピレン、その溶液、その非水系エマルション、及び、その水系エマルションから少なくとも一種以上が選択されて、通気度を制御する塗料が作製される。すなわち、シリコンゴムを溶剤に溶解した溶液、塩素化ポリプロピレンを溶剤に溶解した溶液、酸変性ポリプロピレンを溶剤に溶解した溶液、シリコンゴムと塩素化ポリプロピレンとを溶剤に溶解した溶液、シリコンゴムと酸変性ポリプロピレンとを溶剤に溶解した溶液、シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルション、塩素化ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルション、酸変性ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルション、シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションに塩素化ポリプロピレンを溶解もしくは塩素化ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルション、塩素化ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションにシリコンゴムを溶解もしくはシリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルション、シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションに酸変性ポリプロピレンを溶解もしくは酸変性ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルション、酸変性ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションにシリコンゴムを溶解もしくはシリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルション、シリコンゴムを水に分散した水系エマルション、塩素化ポリプロピレンを水に分散した水系エマルション、酸変性ポリプロピレンを水に分散した水系エマルション、シリコンゴムと塩素化ポリプロピレンとを水に分散した水系エマルション、又は、シリコンゴムと酸変性ポリプロピレンとを水に分散した水系エマルションの塗料を用いて、非濾過面の通気度が制御された濾布を作製することができる。
【0051】
そして、これらのシリコンゴムと変性ポリプロピレンの配合比(重量比)は、シリコンゴム:変性ポリプロピレンが、100:0〜0:100の範囲で配合されて塗料が作製されるが、90:10〜10:90であることが好ましく、83:17〜17:83であることがより更に好ましい。通気度が所定の範囲に入っていたとしても、濾過におけるシリコンゴムの濾布からの脱離等を抑制するために、シリコンゴムと濾布の接着力が必要な場合には、変性ポリプロピレンを10重量部以上いれることが好ましい。逆に、シール性という観点から、シリコンゴムが10重量部未満になると、濾過対象物や濾液の漏洩が激しくなると共に、ケーキの剥離性も悪化する。なお、上記シリコンゴムの配合量は、シリコンゴムに硬化触媒を必要とする場合は、硬化触媒をシリコンゴムに含むものである。
【0052】
以上のようなシリコンゴムと変性ポリプロピレンとを混合又は溶解した各種塗料を、濾過対象物が通過する濾布の濾過部以外に塗布する方法としては、刷毛、ローラー、及び、ヘラ等を用いて選択的に塗布する方法、スプレーガン、塗布ガン、及び、ディスペンサー等を用いて選択的に塗布する方法、スクリーン印刷、オフセット印刷、及び、グラビア印刷等を用いて選択的に塗布する方法等、特に限定されるものではない。なお、塗料を塗布する前に、濾布と塗料との濡れ性及び濾布と樹脂との接着性を改善する目的で、濾布のアルコール洗浄、コロナ処理、プラズマ処理等の前処理を行うことが好ましい場合もある。また、乾燥は、常温乾燥でも構わないが、工程短縮を目的として、濾布の材質に応じて加熱乾燥することもできる。
【0053】
一方、炭酸ガスレーザー又はファイバーレーザーは、特に限定されるものではないが、濾過機によっては0.3mm〜2.0mm程度の厚さの濾布を用いる場合があり、濾過対象物が通過する濾布の濾過部以外だけに照射する必要性があるので、ワークエリアが広く、パターン照射可能で、濾布の材質、厚さ、織組織等に応じて、レーザーのパワーを制御できるものが好ましい。このような炭酸ガスレーザー又はファイバーレーザー加工装置としては、smartDIYs社製Smart Laser CO2、Universal Laser Systems社製VLSシリーズ、PLSシリーズ、 ILSシリーズ、及び、PLS6MW、Trotec社製Speedyシリーズ、SPシリーズ、及び、GSシリーズ、Epilog社製各種Epilog Laser及び各種LaserLife、Gravograph社製LSシリーズ、GCC社製LaserPro(登録商標)シリーズ、SEI社製XYシリーズ等を用いることができる。特に、炭酸ガスレーザーの加工装置である、Universal Laser Systems社製ILSシリーズ及びPLS6MW、Trotec社製GSシリーズ、Epilog社製LaserLifeのCBFシリーズ、CSHシリーズ、LCRシリーズ、LCGシリーズ、LCIシリーズ、CSEシリーズ、及び、LEWシリーズ、Gravograph社製LS1000Xp、及び、SEI社製MERCURY609シリーズが特に好ましい。
【0054】
炭酸ガスレーザー又はファイバーレーザーによる濾布の溶融・融着によって通気度を制御する方法では、濾布の繊維の材質のままであるため、シリコンゴム及び/又は変性ポリプロピレンから成る塗料の塗布によって通気度を制御する方法のような、濾布との密着性を考慮する必要がなく、より好ましい通気度の制御方法である。
【発明の効果】
【0055】
本発明により、図6(a)〜(b)に示したように、いずれの織組織の濾布においても、シリコン樹脂及び変性ポリプロピレンの被覆、又は、炭酸ガスレーザーによる繊維及び糸の溶融・融着によって、目止めされて通気度が制御される。湿式濾過機において、このような非濾過面の通気度が制御された濾布が用いられることによって、濾過処理液及び濾液の漏洩が防止できる。また、繊維が剥離性に優れた材質で被覆されると共に、通気度の低下は濾布の表面積を低減するため、濾布の剥離及びケーキの脱離が容易な濾布が塗布や印刷等の簡易な方法で製造できる。
【0056】
また、レーザー加工の場合、ポリプロピレン等のような本来剥離性に優れた材質の濾布を用いれば、その材質の性質を変化させることなく通気度が制御されるため、濾布の剥離及びケーキの脱離が容易な濾布が効率的に製造される。そして、本発明の濾布を装着した湿式濾過機により、濾過処理液及び濾液の漏洩濾布の剥離及びケーキの脱離が容易に行える、総合的に濾過処理能力に優れた湿式濾過機を提供することができる。
【0057】
更に、本発明の原理から、本発明の濾布は、上述した加圧式の湿式濾過機だけでなく、減圧式、遠心式、隔膜式等の湿式濾過機だけでなく、乾式濾過機における濾過対象物である排気ガス等の濾過処理ガスの漏洩防止にも適用でき、集塵効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】フィルタープレス濾過機の側面から見た概念図である。
図2】フィルタープレス濾過機の濾過工程の詳細を示す、濾板、濾布、及び、ダイヤフラムを側面から見た模式図である。
図3】フィルタープレス濾過機の濾板を正面から見た模式図である。
図4】フィルタープレス濾過機の濾布を正面から見た模式図である。
図5】各種濾布の織組織の模式図である。(a)平織、(b)綾織、(c)朱子織。
図6】本発明の一実施形態に係る濾布の織組織の模式図である。(a)平織、(b)綾織、(c)朱子織。
図7】濾過処理液及び濾液の漏洩試験を行ったフィルタープレス実験機の側面から見た概念図である。
図8】濾過処理液及び濾液の漏洩試験を行ったフィルタープレス実験機の濾板、濾布を側面から見た模式図(a)とその濾布を正面から見た模式図(b)である。
図9】乾式濾過の代表例である集塵機断面の概念図である。
図10】本発明の一実施形態である集塵機のバグフィルターの外観図(a)とその断面の模式図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、本発明を、実施形態を用いてより詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能であり、特許請求の範囲に記載した技術思想によってのみ限定されるものである。
【0060】
加工する前の濾布としては、中尾フィルター工業社製の、材質がポリプロピレンで、厚さ1mm、質量490g/m、通気度8cm/cm・sec(カタログ値)である図5(b)に示したような綾織のPP26Fを使用した。
【0061】
各種シリコンゴムと変性ポリプロピレンとから構成される塗料は、次に示すものを用いた。
<塗料1>
シリコンゴムと塩素化ポリプロピレンとを溶剤に溶解した溶液は、信越化学工業社製KR−165シリコンゴム溶液と東洋紡社製ハードレン(登録商標)15−LPB塩素化ポリプロピレン溶液とを、シリコンゴム/塩素化ポリプロピレンが50/50重量部となり、固形分濃度が30重量%となるように混合して作製した。
<塗料2>
塩素化ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションにシリコンゴムを溶解した非水系エマルションは、東洋紡社製CY−1132のトルエン溶液をナフサ(CAS6471−42−0)/n−ヘキサンに添加することによって作製した非水系エマルションに、溶剤を含まない信越化学工業社製KR−2038を、シリコンゴム/塩素化ポリプロピレンが50/50重量部となり、固形分濃度が30重量%となるように溶解し、濃度を調整して作製した。
<塗料3>
シリコンゴムと酸変性ポリプロピレンとを溶剤に溶解した溶液は、信越化学工業社製KR−114Bシリコンゴム溶液と東洋紡社製ハードレン(登録商標)NS−2002とを、シリコンゴム/酸変性ポリプロピレンが50/50重量部となり、固形分濃度が28.5重量%となるように混合し、濃度を調整して作製した。
<塗料4>
酸変性ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションにシリコンゴムを溶解した非水系エマルションは、東洋紡社製ハードレン(登録商標)TD−15Bの酸変性ポリプロピレン非水系エマルションに、溶剤を含まない信越化学工業社製KR−2038を、シリコンゴム/酸変性ポリプロピレンが50/50重量部となり、固形分濃度が30重量%となるように溶解し、濃度を調整して作製した。
<塗料5−1>
シリコンゴム単独の塗料として、シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションである東レ・ダウコーニング社製のPRX308DISPERSION CLEARのシリコンゴム非水系エマルション(固形分濃度30重量%)をそのまま用いた。
<塗料5−2>
シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションに、塩素化ポリプロピレンを溶解した非水系エマルションは、東レ・ダウコーニング社製のPRX308DISPERSION CLEARのシリコンゴム非水系エマルションと東洋紡社製ハードレン(登録商標)15−LPB塩素化ポリプロピレン溶液とを、シリコンゴム/塩素化ポリプロピレンが83/17重量部となり、固形分濃度が30重量%となるように混合して作製した。
<塗料5−3>
シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションに、塩素化ポリプロピレンを溶解した非水系エマルションは、東レ・ダウコーニング社製のPRX308DISPERSION CLEARのシリコンゴム非水系エマルションと東洋紡社製ハードレン(登録商標)15−LPB塩素化ポリプロピレン溶液とを、シリコンゴム/塩素化ポリプロピレンが50/50重量部となり、固形分濃度が30重量%となるように混合して作製した。
<塗料5−4>
シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションに、塩素化ポリプロピレンを溶解した非水系エマルションは、東レ・ダウコーニング社製のPRX308DISPERSION CLEARのシリコンゴム非水系エマルションと東洋紡社製ハードレン(登録商標)15−LPB塩素化ポリプロピレン溶液とを、シリコンゴム/塩素化ポリプロピレンが17/83重量部となり、固形分濃度が30重量%となるように混合して作製した。
<塗料5−5>
塩素化ポリプロピレン単独の塗料として、塩素化ポリプロピレンを溶剤に溶解した東洋紡社製ハードレン(登録商標)15−LPB塩素化ポリプロピレン溶液をそのまま用いた。
<塗料6>
シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションに、酸変性ポリプロピレンを溶解した非水系エマルションは、東レ・ダウコーニング社製のPRX308DISPERSION CLEARのシリコンゴム非水系エマルションと東洋紡社製ハードレン(登録商標)NS−2002の酸変性ポリプロピレンとを、シリコンゴム/酸変性ポリプロピレンが50/50重量部となり、固形分濃度が20重量%となるように混合して作製した。
<塗料7>
シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションに、塩素化ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルションは、東レ・ダウコーニング社製のPRX308DISPERSION CLEARのシリコンゴム非水系エマルションと東洋紡社製CY−1132のトルエン溶液をナフサ(CAS6471−42−0)/n−ヘキサンに添加することによって作製した非水系エマルションとを、シリコンゴム/塩素化ポリプロピレンが50/50重量部となり、固形分濃度が30重量%となるように混合し、濃度を調整して作製した。
<塗料8>
シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションに、酸変性ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルションは、東レ・ダウコーニング社製のPRX308DISPERSION CLEARのシリコンゴム非水系エマルションと東洋紡社製ハードレン(登録商標)TD−15Bの酸変性ポリプロピレン非水系エマルションとを、シリコンゴム/酸変性ポリプロピレンが50/50重量部となり、固形分濃度が20重量%となるように混合して作製した。
<塗料9>
シリコンゴムと塩素化ポリプロピレンとを水に分散したエマルションは、シリコンゴムのエマルションである信越化学工業社製KM−9772と塩素化ポリプロピレンのエマルションである東洋紡社製ハードレン(登録商標)EH−801とを、シリコンゴム/塩素化ポリプロピレンが50/50重量部となり、固形分濃度が30重量%となるように混合し、濃度を調整して作製した。
<塗料10>
シリコンゴムと酸変性ポリプロピレンとを水に分散したエマルションは、シリコンゴムのエマルションである信越化学工業社製KM−9772と酸変性ポリプロピレンのエマルションである東洋紡社製ハードレン(登録商標)NZ−1004とを、シリコンゴム/酸変性ポリプロピレンが50/50重量部となり、固形分濃度が30重量%となるように混合し、濃度を調整して作製した。
<塗料11>
酸変性ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションにフッ素系シリコンゴムを溶解した非水系エマルションは、東洋紡社製ハードレン(登録商標)TD−15Bの酸変性ポリプロピレン非水系エマルションに二液硬化型フッ素系シリコンゴムである東レ・ダウコーニング社製FL40−9201を、フッ素系シリコンゴム/酸変性ポリプロピレンが50/50重量部となり、固形分濃度が30重量%となるように溶解し、濃度を調整して作製した。
【0062】
上記各種塗料は、種々の通気度となるように刷毛で、非濾過面全面に塗布し、常温で乾燥し、24時間放置した後、通気性試験及び漏洩試験を行った。
【0063】
濾布の炭酸ガスレーザーによる溶融・融着は、炭酸ガスレーザー加工装置として、SEI社製MERCURY609X−TYPE(NRG)タイプを用い、波長9.3μmの炭酸ガスレーザーを用い、出力400W、スポット径100μm、駆動解像度50dpi、プロッタスピード800mm/minの加工条件で行った。この場合も、非濾過面全面を溶融・融着した。通気度の制御は、出力を変更することによって制御された。
【0064】
通気度は、フラジール形通気性試験機を用いて行った。測定方法は、試験片を取り付けた後、傾斜形気圧計が125Paの圧力となるように空気吸い込みファンを調整し、試験片の表裏の圧力差を一定に保つときの垂直形気圧計の示す圧力と、使用した空気孔の種類から、試験片を通過する空気量(cm/cm・sec)を求め、この空気量を通気度として規定した。
【0065】
濾過処理液及び濾液の漏洩試験は、図7に示したような、濾板1、濾布2、フロントアーム3、リアフレーム4、油圧シリンダ5、ガイドレール6、濾過処理液供給口11、濾液排出口12という基本構成からなる簡易型プレスフィルターを作製して行った。図8(a)は、濾板1と濾布2を側面から見た模式図で、図8(b)は、その濾布2を正面から見た模式図である。油圧シリンダ5で、濾板1がガイドレール6に沿って移動し、シール部1−4で濾過室1−3が密閉され、濾過処理液が、濾板1の濾過処理液供給路1−1から濾布2の濾過処理液供給路2−1を通って濾室1−3で濾過され、濾液が濾液排出路1−2を通って濾液排出口12から排出される。ここで、濾布のシール面2−4から濾過処理液及び濾液が漏洩するので、濾布のシール面2−4の通気度がそれらに及ぼす影響を観察した。また、濾板1を開放した時の、濾布の剥離及び濾布からのケーキの剥離を観察した。
【0066】
このようにして実験した結果を表に示す。表から明らかなように、通気度が6.0cm/cm・sec以下であれば、シリコンゴム及び変性ポリプロピレンから構成される塗料の塗布においても、炭酸ガスレーザーの照射においても、濾過処理液及び濾液の漏洩が少なく、濾布の剥離性及びケーキの脱離性もよく、通気度と特性との間に良好な相関性が認められた。また、シリコンゴムと変性ポリプロピレンの配合比も、重量比で100:0〜0:100の範囲に亘って良好な結果が認められた。一方、炭酸ガスレーザーによる通気度を制御する場合、レーザーの出力に適正な範囲が存在し、大きすぎると濾布が溶融して穴が開き、漏洩性が悪くて、ケーキが目詰まりし、剥離性が悪い。一方、小さすぎると濾布の繊維や糸の溶融・融着が不十分で、表面積の低下が認められない。
【0067】
【表1】
【0068】
更に、本発明の一実施形態として、乾式濾過機として、図9に示すような集塵機において、非濾過面の通気度を制御した濾布を用いて作製したバグフィルター14を適用した場合の含塵空気の漏洩防止効果を検討した。集塵機は、ケーシング14の上部に配置されたバグフィルター保持板15に筒状のバグフィルター16が多数吊り下げられており、バグフィルター保持板15を境として、下方が集塵エリア17
、上方が清浄空気エリア18とされる。集塵エリア17には、含塵空気入口19とダスト排出口23が設けられており、清浄空気エリア18には、清浄空気出口20とエアータンク21に接続されたブローチューブ22が設けられている。含塵空気入口19から流入される含塵ガスは、バグフィルター16でダスト等が濾過され、清浄な空気となって清浄空気エリア18を経て、清浄空気出口20から排出される。バグフィルター16に集められたダスト等は、エアータンク21からブローチューブ22によって吐出される逆洗空気で洗浄され、そのダスト等はダスト排出口23から除去される。
【0069】
ここで、バグフィルター16は、図10(a)のような外観をしており、図10(b)に示すように、バグフィルター保持板15に固定されている。このため、バグフィルター16は、縫製によって(縫い目16−3)、芯材16−1を通す部分が形成されたり、濾過面16−2とシール面16−4等が接合されたりして形成される。ここで、シール面16−4は、非濾過面であり、湿式濾過機と同様、ここから含塵ガスが漏洩する。そこで、バグフィルター16の濾布として、中尾フィルター工業社製の、材質がポリプロピレンで、厚さ0.7mm、質量260g/m、通気度8cm/cm・sec(カタログ値)である図5(C)に示したような朱子織のPP2027Sを使用し、塗料5−3を用いて、シール面16−4の通気度が0.1cm/cm・secとなるようにした。また、SEI社製MERCURY609X−TYPE(NRG)タイプを用い、波長9.3μmの炭酸ガスレーザーを用い、出力40W、スポット径100μm、駆動解像度50dpi、プロッタスピード800mm/minの条件で、シール面16−4を加工し、通気度が4.0cm/cm・secとなるようにした。
【0070】
塗料及び炭酸ガスレーザーでシール面を加工した濾布を用いて作製したバグフィルターを用いると、シール面16−4からの含塵ガスの漏洩がなく、同量のダストを集塵する時間が短縮された。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上、本発明は、非濾過面の通気度を制御した濾布を用いる濾過機に幅広く使用することが可能である。特に、実施例では、フィルタープレス濾過機を対象として説明しているが、これに限定されるわけではなく、加圧式では、タンク加圧式濾過機、ベルトプレス濾過機、キャンドル濾過機、クロスフロー濾過機等にも適用できる。また、減圧式では、ベルトフィルター濾過機、オリバー濾過機、アメリカンディスク濾過機、プレヨン濾過機、ムアリーフ濾過機等の減圧式濾過機、遠心式では、縦型や横型の遠心分離機、及び、アノード型やカソード型の隔膜式濾過機等の各種湿式濾過機に利用することができる。また、湿式濾過機だけでなく、非濾過面を有する濾布を使用するならば、原理的に、排気ガス等の濾過処理ガスの漏洩を効果的に防止することができるので、集塵機に代表される、吸引式及び押込み式の各種乾式濾過機にも応用することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
A 濾過部
1 濾板
1−1 濾過処理液供給路
1−2 濾液排出路
1−3 濾過室
1−4 シール部
1’圧搾式濾板
1’−1 濾過処理液供給路
1’−2 濾液排出路
1’−3 濾過室
1’−4 濾板シール部
1’−5 ダイヤフラム
1’−6 圧搾空気又は圧搾水供給路
2 濾布
2−1 濾過処理液供給穴
2−3 濾過面
2−4 シール面
2’圧搾式濾布
2’−1 濾過処理液供給穴
2’−3 濾過面
2’−4 シール面
2’−6 圧搾空気又は圧搾水供給穴
2−6 縦糸
2−7 横糸
2−8 溶融・融着した糸
3 フロントフレーム
4 リアフレーム
5 油圧シリンダ
6 ガイドレール
7 濾布駆動装置
8 濾布蛇行防止装置
9 濾布張力制御装置
10 濾布洗浄装置
11 濾過処理液供給口
12 濾液排出口
13 ケーキ
14 ケーシング
15 バグフィルター保持板
16 バグフィルター
16−1 芯材
16−2 濾過面
16−3 縫い目
16−4 シール面
16−5 バグフィルター留め具
17 集塵エリア
18 清浄空気エリア
19 含塵空気入口
20 清浄空気出口
21 エアータンク
22 ブローチューブ
23 ダスト排出口
【要約】
【課題】本発明の課題は、濾過処理液及び濾液の漏洩を防止することができ、濾布の剥離及びケーキの脱離が容易な湿式濾過機に適した濾布、及び、その濾布を製造する方法を提供することである。更に、濾過処理液及び濾液の漏洩がなく、濾布の剥離及びケーキの脱離が容易な湿式濾過機を提供することである。
【解決手段】本発明の濾布は、濾布の非濾過面に通気度が6.0cm/cm・sec以下である領域が設けられていることを特徴としており、その製造方法として、シリコンゴム系目止め材を塗布すること、或は、炭酸ガスレーザーを照射することを特徴としている。また、本発明の湿式濾過機は、これらの濾布を装着したことを特徴としている。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10