【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、湿式濾過機に装着するために必要な濾布の非濾過面の通気度を制御することにより、濾過処理液及び濾液の漏洩が少なく、濾布の剥離及びケーキの脱離を容易に行えることを見出し、本発明の完成に至った。
【0018】
すなわち、本発明は、濾過対象物が通過する濾布の濾過部以外に、通気度が6.0cm
3/cm
2・sec以下である領域を設けることを特徴とする濾布である。
【0019】
濾布に使用することができる織布及び不織布は、濾布の捕集性、処理量、剥離性、及び、目詰まり性と使用する濾過機とから選択され、幅広い通気度を有しているものがある。しかし、濾布の捕集性、処理量、剥離性、及び、目詰まり性のバランスから、通気度が8.0以上の織布及び不織布を用いる。従って、濾過工程において、非濾過面は大きな圧力が負荷されているにもかかわらず、非濾過面から濾過処理液及び濾液が漏洩する。そこで、濾布の濾過処理液供給口等の開口部を除く濾過部以外に、通気度が6.0cm
3/cm
2・sec以下である領域を設けることによって、非濾過面から濾過処理液及び濾液が漏洩することを防止することが可能となる。特に、濾過処理液及び濾液の漏洩を防止することを主たる目的とする場合には、濾過部以外において、6.0cm
3/cm
2・sec以下の通気度である領域が、濾過対象物が閉塞されるように周設されることが好ましい。この領域の形状や面積は、用途に応じて適宜決定されるが、濾過処理液供給口等の開口部を除く濾過部以外全面に形成してもよい。更に、その通気度は、4.0cm
3/cm
2・sec以下であることがより好ましく、2.0cm
3/cm
2・sec以下であることがより更に好ましい。
【0020】
一方、濾布の剥離及び濾布からのケーキの脱離を主たる目的とする場合には、濾過部以外において、6.0cm
3/cm
2・sec以下の通気度である領域が、必ずしも濾過対象物が閉塞されるように周設される必要はなく、濾布の剥離及びケーキの脱離が促進されるように部分的に形成すればよい。この領域の形状及び面積等も、用途に応じて適宜決定される。更に、その通気度は、4.0cm
3/cm
2・sec以下であることがより好ましく、2.0cm
3/cm
2・sec以下であることがより更に好ましい。
【0021】
このように、通気度の制御によって漏洩性が改善されるのは、濾過処理液及び濾液が濾布を通過するのを遮断するためであるが、剥離性が改善されるのは、次のように考えられる。後述するように、シリコンゴム等を濾布に塗布して剥離性を向上させるだけでなく、通気度が低下することは、濾布の表面積を減少させ、濾布、濾板、及び、ケーキとの接触面積を低減する効果があるためである。
【0022】
そして、本発明は、上記濾過部以外の通気度が6.0cm
3/cm
2・sec以下である領域が、シリコンゴム単独、塩素化ポリプロピレン、又は、シリコンゴムと塩素化ポリプロピレンの混合物で被覆されていることを特徴とする濾布である。ここで、シリコンゴムは、非濾過面の濾布のシール性及び剥離性という矛盾する問題点を解決することができる。このようにシリコンゴムは剥離性に優れているが、逆に、濾布との接着性が悪いため、塩素化ポリプロピレンによりその問題を解決している。
【0023】
更に、非塩素化という観点から、本発明は、上記濾過部以外の通気度が6.0cm
3/cm
2・sec以下である領域が、酸変性ポリプロピレン単独又はシリコンゴムと酸変性ポリプロピレンの混合物で被覆されていることを特徴とする濾布である。ここで、酸変性ポリプロピレンは、上記塩素化ポリプロピレンと同様の役割を果たすものである。なお、本明細書では、塩素化ポリプロピレンは、酸変性した塩素化ポリプロピレンを含むが、酸変性ポリプロピレンは、塩素を含まない酸変性した非塩素化ポリプロピレンのことをいうものとする。
【0024】
そして、このような濾過対象物が通過する濾布の濾過部以外の通気度が6.0cm
3/cm
2・sec以下である領域は、シリコンゴムを溶剤に溶解した溶液、塩素化ポリプロピレンを溶剤に溶解した溶液、酸変性ポリプロピレンを溶剤に溶解した溶液、シリコンゴムと塩素化ポリプロピレンとを溶剤に溶解した溶液、又は、シリコンゴムと酸変性ポリプロピレンとを溶剤に溶解した溶液を塗布又は印刷した後、乾燥することにより製造される。上述したように、非塩素化という観点から、塩素化ポリプロピレンの替わりに酸変性ポリプロピレンを用いて製造することが好ましい。
【0025】
また、生産性という観点から、シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルション、塩素化ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルション、酸変性ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルション、シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションに、塩素化ポリプロピレンを溶解もしくは塩素化ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルション、塩素化ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションにシリコンゴムを溶解もしくはシリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルション、シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションに酸変性ポリプロピレンを溶解もしくは酸変性ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルション、又は、酸変性ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションにシリコンゴムを溶解もしくはシリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルションを、上記領域に塗布又は印刷した後、乾燥することにより製造されることがより好ましい。これは、エマルションの方が固形分濃度を上げることができ、塗布又は印刷回数を低減することができるからである。
【0026】
更に、脱溶剤化という観点から、濾布に、シリコンゴムを水に分散した水系エマルション、塩素化ポリプロピレンを水に分散した水系エマルション、酸変性ポリプロピレンを水に分散した水系エマルション、シリコンゴムと塩素化ポリプロピレンとを水に分散した水系エマルション、又は、シリコンゴムと酸変性ポリプロピレンとを水に分散した水系エマルションを上記領域に塗布又は印刷した後、乾燥することにより製造されることが好ましい。
【0027】
また、更なる生産性改善及び低価格化という観点から、本発明の濾布は、上記濾過部以外の上記領域の通気度が、濾布に炭酸ガスレーザー又はファイバーレーザーを照射して濾布の繊維や糸を溶融・融着させることにより達成されることがより更に好ましい。この場合、濾布の繊維や糸の溶融・融着が通気度を低下させ、濾過処理液及び濾液の通過を遮断するが、このような通気度の低下に伴う濾布の表面積の低下が、濾布、濾板、及び、ケーキとの接触面積を低減させて剥離性を高める。
【0028】
そして、本発明は、濾過対象物が通過する濾布の濾過部以外に、通気度が6.0cm
3/cm
2・sec以下である領域が設けられている濾布を装着したことを特徴とする濾過機である。このような濾布は、シリコンゴム単独、塩素化ポリプロピレン単独、酸変性ポリプロピレン単独、シリコンゴムと塩素化ポリプロピレンの混合物、又は、シリコンゴムと酸変性ポリプロピレンの混合物で上記領域が被覆されている濾布が好ましく、炭酸ガスレーザー又はファイバーレーザーで上記領域が溶融・融着されている濾布であることがより好ましい。
【0029】
更に、濾過対象物が通過する濾布の濾過部以外に、通気度が6.0cm
3/cm
2・sec以下である領域が設けられている濾布を装着した濾過機において、このような濾布は、シリコンゴムを溶剤に溶解した溶液、塩素化ポリプロピレンを溶剤に溶解した溶液、酸変性ポリプロピレンを溶剤に溶解した溶液、シリコンゴムと塩素化ポリプロピレンとを溶剤に溶解した溶液、シリコンゴムと酸変性ポリプロピレンとを溶剤に溶解した溶液、シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルション、塩素化ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルション、酸変性ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルション、シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションに塩素化ポリプロピレンを溶解もしくは塩素化ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルション、塩素化ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションにシリコンゴムを溶解もしくはシリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルション、シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションに酸変性ポリプロピレンを溶解もしくは酸変性ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルション、酸変性ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションにシリコンゴムを溶解もしくはシリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルション、シリコンゴムを水に分散した水系エマルション、塩素化ポリプロピレンを水に分散した水系エマルション、酸変性ポリプロピレンを水に分散した水系エマルション、シリコンゴムと塩素化ポリプロピレンとを水に分散した水系エマルション、又は、シリコンゴムと酸変性ポリプロピレンとを水に分散した水系エマルションを塗布又は印刷した後、乾燥することにより製造される濾布であることが好ましいが、炭酸ガスレーザー又はファイバーレーザーを照射することにより製造される濾布であることがより好ましい。
【0030】
このような濾布は、各種合成繊維を数多く束ねた糸を編んだ織布や繊維を糸にすることなく3次元的に重ね合わせ結合した不織布等が好ましく用いられるが、濾過対象物の固体の材質や粒子径、濾過対象物の性状等によって選定される。
【0031】
まず、繊維の材質は、繊維にすることができるものであれば特に限定されるものではないが、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等の脂肪族系ポリアミド、ノーメックス(登録商標)やケブラー(登録商標)等のアラミドと呼ばれる耐熱性を高めた芳香族系ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイド、及び、芳香族ポリエーテルケトン樹脂等の熱可塑性合成樹脂、綿等の天然繊維、ガラス、炭素繊維、及び、金属等を用いることができる。しかし、耐薬品性、耐溶剤性、耐酸化性、濾過された固体の剥離性、及び、炭酸ガスレーザーを用いる場合の熱溶融性等の観点から上記熱可塑性合成樹脂が好ましい。更に、価格も考慮すると、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等の脂肪族系ポリアミドがより好ましい。中でも、ポリプロピレンがより更に好ましい。
【0032】
濾布の構造は、捕集性、処理量、濾過された固体の剥離性、目詰まり性、強度、耐久性、及び、価格等から、用途及び目的に応じて選択されるが、織布及び不織布のいずれも好ましく用いられる。しかし、特に、湿式濾過機においては、強度及び耐久性という観点から、織布がより好ましく用いられる。
【0033】
更に、織布の場合、繊維の形態及び繊維を撚った糸の織組織によって、捕集性、処理量、濾過された固体の剥離性、目詰まり性、強度、耐久性、及び、価格等に、それぞれの特徴があり、用途及び目的に応じて選択され、いずれも好ましく用いることができる。
【0034】
繊維の形態としては、長繊維を撚ったモノフィラメント糸及びマルチフィラメント糸、又は、短繊維を撚ったスパン糸、いずれも用いることができるが、捕集性及び強度を重視する場合にはスパン糸を、処理量、剥離性、及び、目詰まり性を重視する場合にはモノフィラメント糸を、バランスの取れた特性が求められる場合にはマルチフィラメント糸を用いることが好ましい。
【0035】
織組織としては、
図5の各種濾布の織組織の模式図に示したように、平織(a)、綾織(b)、朱子織(c)、及び、(図示していない)二枚の濾布を重ねた二重織があり、いずれも用いることができるが、捕集性を重視する場合には平織を、処理量、剥離性、及び、目詰まり性を重視する場合には朱子織を、バランスの取れた特性が求められる場合には綾織又は二重織を用いることが好ましい。特に、二重織は、表面に低通気性・高剥離性の濾布織組織、裏面に高通気性の濾布組織を有する濾布を重ねるものが、上記各種特性を兼ね備える上で好ましい組織である。
【0036】
次いで、通気度を制御するために、濾布に塗布又は印刷するポリマー溶液及びポリマーエマルションを構成する、シリコンゴム、塩素化ポリプロピレン、及び、酸変性ポリプロピレンの溶液、非水系エマルション、及び、水系エマルションとしては、次のようなものを用いることができる。
【0037】
シリコンゴム溶液としては、例えば、信越化学工業社製のKR−114B、KR−165、KR−169等、東レ・ダウコーニング社製のSE9186L CLEAR、SR2430等、及び、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のYE−5505等を上げることができる。更に、例えば、信越化学工業社製のKR−2038のような溶剤を含まない場合は、塩素化ポリプロピレンを溶剤に溶解した溶液又は酸変性ポリプロピレンを溶剤に溶解した溶液に、そのまま又は溶剤に溶解した溶液として用いることができる。
【0038】
また、一般的にRTV(Room Temperature Vulcanizing)シリコンゴムとして市販されている各種液状又はペースト状シリコンゴムも、塩素化ポリプロピレンを溶剤に溶解した溶液又は酸変性ポリプロピレンを溶剤に溶解した溶液に、そのまま又は溶剤に溶解した溶液として用いることができる。このようなRTVゴムは、一液硬化型もしくは二液硬化型、又は、縮合型もしくは付加型という硬化方式に関わらず用いられ、例えば、信越化学工業社製のKE−347、KE−4896、KE−1830、KE−41、KE−441、FE−123、KE−42、KE−45S等の各種一液硬化型RTVシリコンゴム、信越化学工業社製のKE−1800T(A/B)、KE−1800(A/B/C)KE−1031(A/B)、KE−106、KE−109E(A/B)、ASP−1120(A/B)等に代表される各種二液又は三液硬化型RTVシリコンゴム、東レ・ダウコーニング社製のRLB−9200−20、RLB−9200−30、RLB−9200−40、RLB−9200−50、RLB−9200−60、RLB−9200−70等の各種二液硬化型RTVシリコンゴム、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のTSE3843−W、TSE388、TSE3944、TSE3971、TSE322、TSE3221S等の各種一液硬化型RTVシリコンゴム、及び、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のTSE3360、TSE3033、TSE3476、TSE3477等の各種二液硬化型RTVシリコンゴム等を上げることができる。
【0039】
特に、耐熱性、耐油性、耐水性等に優れたシール・ガスケット・ダイヤフラム、Oリング等に適したものが好ましく、信越化学工業社製のKE−3479、KE−348、KE−4897、KE−4898、KE−1820、KE−1825、KE−1831、KE−1833、KE−1885、KE−3417、KE−3418、KE−3490、KE−4890、KE−40RTV、KE−41、KE−42、KE−44、KE−45、KE−441、KE−445、及び、東レ・ダウコーニング社製のRLB−9200−20、RLB−9200−30、RLB−9200−40、RLB−9200−50、RLB−9200−60、RLB−9200−70を挙げることができる。
【0040】
中でも、信越化学工業社製のFE−123、FE−61、X−32−1619、東レ・ダウコーニング社製のFL30−9201、FL40−9201、FL60−9201、FL70−9201のフロロシリコーンゴムが、耐油性、耐水性、耐熱性、及び、剥離性という観点からより更に好ましい。
【0041】
シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションとしては、例えば、東レ・ダウコーニング社製のPRX308DISPERSION CLEAR等を用いることができる。
【0042】
シリコンゴムを水に分散した水系エマルションとしては、信越化学工業社製のPOLON−MF56、POLON−MF−40、KM−2002−L−1、KM−2002−T、KM−9772、KM−9749、及び、東レ・ダウコーニング社製のIE−7170等を用いることができる。
【0043】
また、濾過の方式や用途等によっては、耐油性、耐水性、耐熱性、及び、剥離性等を高める目的で、シリコンパウダーを加える方が好ましい場合もある。シリコンパウダーとしては、東レ・ダウコーニング社製のEP−5500、EP−2601、EP−2720、及び、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の各種トスパール(登録商標)を挙げることができる。シリコンパウダーの水分散液としては、信越化学工業社製のKM−9729、X−52−1133等、及び、東レ・ダウコーニング社製のDY33−430M、DY33−440F、33ADDITIVE、BY29−119等を用いることができる。
【0044】
以上の各種シリコンゴムは、濾過の方式や用途等に応じ選択されるが、一種で用いることもできるが、二種以上を配合して用いることが好ましい場合もある。また、列挙したシリコンゴムの種類によっては、縮合反応又は付加反応による硬化が必要な場合があり、その場合は、適宜硬化触媒を塗布する前に添加し、ポットライフ時間内に塗布又は印刷される。
【0045】
塩素化ポリプロピレンを溶剤に溶解した溶液としては、東洋紡社製のハードレン(登録商標)13−LP、13−LLP、14−LWP、15−LP、15−LLP、16−LP、DX−526P、CY−9122P、CY−9124P、HM−21P、M−28P、F−2P、F−6P、CY−1132(既に溶解済み)等、三菱化学社製サーフレン(登録商標)、及び、日本製紙社製スーパークロン(登録商標)を溶剤に溶解して用いることができる。ただし、例えば、東洋紡社製ハードレン(登録商標)15−LPBのように既に溶液として市販されているものを用いる方が好ましい。また、塩素化ポロプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションは、例えば、酸変性した塩素化ポリプロピレン溶液である上記CY−1132にn−ヘキサン及びアルコールを添加することによって作製することができる。
【0046】
塩素化ポリプロピレンを水に分散した水系エマルションとしては、東洋紡社製のハードレン(登録商標)EH−801、EW−530、及び、EW−8511等や、日本製紙社製スーパークロン(登録商標)を水に分散した水系エマルション等を挙げられる。
【0047】
非塩素系の酸変性ポリプロピレンを溶剤に溶解した溶液としては、東洋紡社製のハードレン(登録商標)NS−2002や、三菱化学社製モディック(登録商標)及び住友化学社製スミフィット(登録商標)、住化ケムテックス社製B1401、H1301、Z9918、Z9921等を溶剤に溶解した溶液が挙げられる。非塩素系の酸変性ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションとしては、東洋紡社製のハードレン(登録商標)TD−15B等がある。
【0048】
非塩素系の酸変性ポリプロピレンを水に分散した水系エマルションとしては、東洋紡社製のハードレン(登録商標)NZ−1004やNZ−1015、三菱化学社製アプトロック、及び、住友化学社製スミフィット(登録商標)、住化ケムテックス社製Z9901、Z9911、Z9915、Z9917、J2001、I3403等を水に分散した水系エマルションを挙げられる。
【0049】
以上の変性ポリプロピレン(以下、塩素化ポリプロピレン及び酸変性ポリプロピレンを総称して「変性ポリプロピレン」という。)についても、濾布の材質に応じて選択されるが、一種で用いることもできるが、二種以上を配合して用いることが好ましい場合もある。
【0050】
以上、各種シリコンゴム、その溶液、その非水系エマルション、及び、その水系エマルションから少なくとも一種以上が、各種塩素化ポリプロピレン、その溶液、その非水系エマルション、及び、その水系エマルションから少なくとも一種以上が、そして、各種酸変性ポリプロピレン、その溶液、その非水系エマルション、及び、その水系エマルションから少なくとも一種以上が選択されて、通気度を制御する塗料が作製される。すなわち、シリコンゴムを溶剤に溶解した溶液、塩素化ポリプロピレンを溶剤に溶解した溶液、酸変性ポリプロピレンを溶剤に溶解した溶液、シリコンゴムと塩素化ポリプロピレンとを溶剤に溶解した溶液、シリコンゴムと酸変性ポリプロピレンとを溶剤に溶解した溶液、シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルション、塩素化ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルション、酸変性ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルション、シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションに塩素化ポリプロピレンを溶解もしくは塩素化ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルション、塩素化ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションにシリコンゴムを溶解もしくはシリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルション、シリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションに酸変性ポリプロピレンを溶解もしくは酸変性ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルション、酸変性ポリプロピレンを溶剤に分散した非水系エマルションにシリコンゴムを溶解もしくはシリコンゴムを溶剤に分散した非水系エマルションを混合した非水系エマルション、シリコンゴムを水に分散した水系エマルション、塩素化ポリプロピレンを水に分散した水系エマルション、酸変性ポリプロピレンを水に分散した水系エマルション、シリコンゴムと塩素化ポリプロピレンとを水に分散した水系エマルション、又は、シリコンゴムと酸変性ポリプロピレンとを水に分散した水系エマルションの塗料を用いて、非濾過面の通気度が制御された濾布を作製することができる。
【0051】
そして、これらのシリコンゴムと変性ポリプロピレンの配合比(重量比)は、シリコンゴム:変性ポリプロピレンが、100:0〜0:100の範囲で配合されて塗料が作製されるが、90:10〜10:90であることが好ましく、83:17〜17:83であることがより更に好ましい。通気度が所定の範囲に入っていたとしても、濾過におけるシリコンゴムの濾布からの脱離等を抑制するために、シリコンゴムと濾布の接着力が必要な場合には、変性ポリプロピレンを10重量部以上いれることが好ましい。逆に、シール性という観点から、シリコンゴムが10重量部未満になると、濾過対象物や濾液の漏洩が激しくなると共に、ケーキの剥離性も悪化する。なお、上記シリコンゴムの配合量は、シリコンゴムに硬化触媒を必要とする場合は、硬化触媒をシリコンゴムに含むものである。
【0052】
以上のようなシリコンゴムと変性ポリプロピレンとを混合又は溶解した各種塗料を、濾過対象物が通過する濾布の濾過部以外に塗布する方法としては、刷毛、ローラー、及び、ヘラ等を用いて選択的に塗布する方法、スプレーガン、塗布ガン、及び、ディスペンサー等を用いて選択的に塗布する方法、スクリーン印刷、オフセット印刷、及び、グラビア印刷等を用いて選択的に塗布する方法等、特に限定されるものではない。なお、塗料を塗布する前に、濾布と塗料との濡れ性及び濾布と樹脂との接着性を改善する目的で、濾布のアルコール洗浄、コロナ処理、プラズマ処理等の前処理を行うことが好ましい場合もある。また、乾燥は、常温乾燥でも構わないが、工程短縮を目的として、濾布の材質に応じて加熱乾燥することもできる。
【0053】
一方、炭酸ガスレーザー又はファイバーレーザーは、特に限定されるものではないが、濾過機によっては0.3mm〜2.0mm程度の厚さの濾布を用いる場合があり、濾過対象物が通過する濾布の濾過部以外だけに照射する必要性があるので、ワークエリアが広く、パターン照射可能で、濾布の材質、厚さ、織組織等に応じて、レーザーのパワーを制御できるものが好ましい。このような炭酸ガスレーザー又はファイバーレーザー加工装置としては、smartDIYs社製Smart Laser CO2、Universal Laser Systems社製VLSシリーズ、PLSシリーズ、 ILSシリーズ、及び、PLS6MW、Trotec社製Speedyシリーズ、SPシリーズ、及び、GSシリーズ、Epilog社製各種Epilog Laser及び各種LaserLife、Gravograph社製LSシリーズ、GCC社製LaserPro(登録商標)シリーズ、SEI社製XYシリーズ等を用いることができる。特に、炭酸ガスレーザーの加工装置である、Universal Laser Systems社製ILSシリーズ及びPLS6MW、Trotec社製GSシリーズ、Epilog社製LaserLifeのCBFシリーズ、CSHシリーズ、LCRシリーズ、LCGシリーズ、LCIシリーズ、CSEシリーズ、及び、LEWシリーズ、Gravograph社製LS1000Xp、及び、SEI社製MERCURY609シリーズが特に好ましい。
【0054】
炭酸ガスレーザー又はファイバーレーザーによる濾布の溶融・融着によって通気度を制御する方法では、濾布の繊維の材質のままであるため、シリコンゴム及び/又は変性ポリプロピレンから成る塗料の塗布によって通気度を制御する方法のような、濾布との密着性を考慮する必要がなく、より好ましい通気度の制御方法である。