(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
段ボールシートの表面に当接する押罫部(11)の表面が、その長さ方向に延びるように設けた1本の頂部凸条(12a)と、この頂部凸条(12a)を挟んで押罫部(11)の幅方向の両側にそれぞれ並行する複数本の側部凸条(12b)とを備えて凹凸形状に形成され、前記頂部凸条(12a)が最も突出して、前記頂部凸条(12a)及び側部凸条(12b)のそれぞれの頂部が全体として山形状となっており、その押罫部(11)により段ボールシートを押し込んで、段ボールシートに折曲用の罫線を入れる押罫部材(10)において、
前記側部凸条(12b)は、その頂部が前記押罫部(11)の表面側の内部寄りに設定された第1仮想曲線(C11)に接する側部小凸条(12b1)と、その頂部が前記第1仮想曲線(C11)よりも前記押罫部(11)の表面側の外部に設定された第2仮想曲線(C12)に接する側部大凸条(12b2)から成り、
前記押罫部(11)における頂部凸条(12a)とこれに最も接近した両側の側部大凸条(12b2)の間に、それぞれ少なくとも1本の側部小凸条(12b1)が配置されていることを特徴とする押罫部材。
前記押罫部(11)は、頂部凸条(12a)の両側のそれぞれに、頂部凸条(12a)に交差する方向に延びる複数の交差溝(14)が押罫部(11)の長さ方向に間隔をあけて設けられ、前記交差溝(14)により、頂部凸条(12a)の両側の側部小凸条(12b1)及び側部大凸条(12b2)の少なくとも1本が分断された形状となっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の押罫部材。
【背景技術】
【0002】
波状の中芯紙の両側にライナー紙を貼り合わせた段ボールシートには、段状に形成された波の高さ、波の形状、厚さ、品質等が相違する中芯紙と、厚さ、品質等が相違するライナー紙との組み合わせによって様々な性状を有する数多くの種類が存在し、硬さが合紙程度に硬いものもある。
【0003】
例えば、一般的な中芯紙の波形の高さは、Aフルートの場合5mm、Cフルートの場合4mm、Bフルートの場合3mm、Eフルートの場合1.5mm、Fフルートの場合0.6mm、Gフルートの場合0.5mmであり、段ボールシートには、これらのいずれかを一層とする両面段ボールシート、これらのいずれかを組み合わせて二層とする複両面段ボールシート、これらのいずれかを組み合わせて三層とする複々両面段ボールシート(トリプルウォールシート)等がある。
【0004】
そして、使用される紙の品質によっても異なるが、段ボールシートの一般的な厚さは、中芯紙の波形の高さに複数枚のライナー紙の厚さを加えた約0.5mm〜15mmとなっており、厚い段ボールシート程、弾性や剛性が大きくなる傾向にあるので、押圧による罫線を入れ難くなる。
【0005】
また、中芯紙の波形のピッチにも様々な大きさのものがあり、波形の高さが高く厚手のもの程、ピッチが大きくなっているために、複両面段ボールシートや複々両面段ボールシートの場合、各層での空間部を有する中芯紙の波形状のどの部位が互いに合致して段ボールシートが形成されているのかは分からない。
【0006】
このような多種類の段ボールシートを打ち抜くことによって、例えば、
図8に示すような段ボール箱形成用のブランクA
1を形成する場合、木製の基盤にブランクA
1の輪郭形成用の外形打抜刃を取り付けると共に、その外形打抜刃の内側に、上記ブランクA
1の縦罫線L
1及び横罫線L
2を罫入れする押罫部材を取り付けて抜型を形成し、その抜型によって段ボールシートに罫線を入れつつ打ち抜くようにしている。また、ロール状の罫入ロールを備えた罫線形成装置で罫線を形成する場合もあり、その場合、生産性を上げるために、段ボールシートの種類に応じて罫線形成装置の罫入ロールを交換することはない。
【0007】
ここで、ブランクA
1の縦罫線L
1は、段ボールシートAの波形の段状に成形された中芯紙S
2の段目Cに縦方向にほぼ平行し、一方、横罫線L
2は上記中芯紙S
2の段目Cと直交する横方向に延びている。
【0008】
上記のような縦罫線L
1及び横罫線L
2を段ボールシートAに入れる押罫部材として、
図9に示すようなものが一般的に使用されている。この押罫部材50は、金属製の帯板材の一方の端縁部を押罫部51とし、その押罫部51により段ボールシートAの一面を押し込むことにより中芯紙S
2の波形状部を押し潰して溝状の縦罫線L
1及び横罫線L
2を形成するものである。
【0009】
押罫部材50の帯板材は、通常、上下方向の高さ寸法が20数mm程度とされ、両側面間の板厚である幅寸法については、段ボールシートの性状に応じて、0.5mm〜10mmのものが使い分けられる。
【0010】
ところで、
図9に示す押罫部材50は、押罫部51の表面が断面形状を凸形とする円弧状で全長にわたり凹凸のない滑らかな形状となっており、一方、段ボールシートAは、押圧力に抗して復元しようとする大きな弾性を有することから、押罫部材50の押罫部51により段ボールシートAの表面を厚さ方向に押し込んで罫線L
1、L
2を形成する際、段ボールシートAの表面に対する押罫部51の押圧力が分散し、段ボールシートAの反発に負けて、鮮明な罫線L
1、L
2を入れることができない場合が多い。
【0011】
また、特に、中芯紙S
2の段目Cに平行する縦罫線L
1を形成する場合には、中芯紙S
2の波形状のどの部位を押罫部51で押し潰すことになるのかは分からないために、押し潰される形状もまちまちであるので、形成される縦罫線L
1の鮮明度が異なることとなり、段ボールシートAを高精度に折り曲げることができない場合がある。
【0012】
さらに、押罫部51の表面が凹凸を有さない滑らかな形状であることに起因して、押罫部51で押し潰す中芯紙S
2の部位によっては、押罫部51の表面が段ボールシートAの表面に食い込むに従い、段ボールシートAの表面が押罫部51の表面上で滑って、縦罫線L
1に対し左右方向にずれ動くことがあるので、段ボールシートAの表面上の予定した正確な位置に罫線を形成することができなかったり、形成される罫線に蛇行が生じたりするという問題が発生する。
【0013】
ここで、
図8に示すブランクA
1は、パネルP
1とパネルP
4とが、段目Cに平行する3本の縦罫線L
1のうち、両側2本の縦罫線L
1に沿って折り曲げられ、一側のパネルP
1に連続して形成された継代片P
5と他側のパネルP
4の端縁部とが重ね合わされ、その重なり部が接着されることにより、偏平に折り畳まれた段ボール箱とされる。
【0014】
このとき、縦罫線L
1での折曲精度が悪い場合、一側のパネルP
1と他側のパネルP
4に相対的な傾きが生じたり、対角位置の稜部をなす縦罫線L
1の間の寸法に誤差が生じたりして、精度の高い段ボール箱を形成することができず、周壁を角筒状に開箱した際、歪んだ形状の箱体となることがあり、このような段ボール箱は不良品となる。
【0015】
そのような不都合を解消して精度の高い折り曲げが得られるようにするため、本件特許出願と出願人及び発明者が同一である出願に係る下記特許文献1においては、
図10に示すような押罫部材60が提案されている。
【0016】
この押罫部材60では、段ボールシートAを押圧する押罫部61に、幅方向の中央に位置する1本の頂部凸条62aと、この頂部凸条62aを挟んで押罫部61の幅方向の両側にそれぞれ並行する複数本の側部凸条62bとが設けられて、押罫部61の表面が凹凸形状に形成されている。
【0017】
そして、頂部凸条62a及び側部凸条62bの頂部が押罫部材60の幅方向の中心線l上の一点を中心とし、全体として山形状の頂部を有する凸形をなす円弧状の仮想曲線C
21に内側から接し、全体として頂部凸条62aを頂部とする山形状の凸形に形成されている。また、頂部凸条62aとその両側の側部凸条62bの間、及び側部凸条62bの隣り合うもの同士の間には、高さ方向に窪んだ凹溝63が形成されて、頂部凸条62a及び側部凸条62bのそれぞれの頂部と凹溝63の底部との間の側面が傾斜面となっている。
【0018】
なお、この押罫部材60の押罫部61における全ての側部凸条62bは、凹溝63の底部からの突出量が均一であって、その高さは比較的低いものとなっている。また、下記特許文献1には、頂部凸条62aのみを仮想曲線C
21から少し突出させた実施形態も記載されている。
【0019】
このような押罫部材60で罫線を入れる加工を行うと、押罫部61で押圧された段ボールシートの表面は、頂部凸条62aの頂部により最初に押し込まれ、押し潰されながらその両側の傾斜面に沿ってスムーズに凹溝63に入り込み、さらにその両側の側部凸条62bに順次当接すると共に、各側部凸条62bの側面の傾斜面に沿いつつ、隣り合う側部凸条62bの間の凹溝63にスムーズに入り込んで、押罫部61の表面に波状に沿うことになる。このため、段ボールシートの表面が押罫部61の表面上で頂部凸条62aの両側方向へずれ動く現象が少しは抑制される。
【0020】
また、本件特許出願と出願人及び発明者が同一である出願に係る下記特許文献2においては、
図11に示すように、頂部凸条62aの両側のそれぞれに、頂部凸条62aに交差する方向に延びる複数の交差溝64が押罫部61の長さ方向に間隔をあけて設けられ、この交差溝64により、頂部凸条62aの両側に位置する側部凸条62bが分断された形状となっているものが記載されている。
【0021】
このような交差溝64を設けておくと、押圧された段ボールシートの表面が交差溝64にも入り込むので、段ボールシートの表面が押罫部61の表面上で頂部凸条62aの長さ方向へずれる現象も抑制され、罫線の加工精度をさらに高めることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、上記特許文献1,2に記載された押罫部材60では、幅方向の中央に位置する頂部凸条62aの両側にそれぞれ設けられた複数本の側部凸条62bの全ての突出量が小さく均一であるため、段ボールシートAを押し込む押圧力が不足して、段ボールシートAの表面が押罫部材60の幅方向にずれ動く現象を抑制しきれず、正確な位置に罫線を形成できない場合があるほか、形成される罫線に蛇行が生じやすくなる場合がある。
【0024】
このような問題は、中芯紙の波形のピッチが大きい厚手の段ボールシートのほか、中芯紙が複層になっている複両面段ボールシートや複々両面段ボールシートに罫線を形成する場合において、中芯紙の段目に平行する縦罫線を形成する場合に特に生じやすい。
【0025】
そこで、この発明は、様々な性状の段ボールシートに対して、高い精度で正確な位置に罫線を入れることができ、段ボールシートを罫線の幅方向中央部で正確かつ容易に直線状に折り曲げられるようにして、製造される段ボール箱の不良率を低減できる押罫部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記のような課題を解決するため、この発明は、段ボールシートの表面に当接する押罫部の表面が、その長さ方向に延びるように設けた1本の頂部凸条と、この頂部凸条を挟んで押罫部の幅方向の両側にそれぞれ並行する複数本の側部凸条とを備えて凹凸形状に形成され、前記頂部凸条が最も突出して、前記頂部凸条及び側部凸条のそれぞれの頂部が全体として山形状となっており、その押罫部により段ボールシートを押し込んで、段ボールシートに折曲用の罫線を入れる押罫部材において、
前記側部凸条は、その頂部が前記押罫部の表面側の内部寄りに設定された第1仮想曲線に接する側部小凸条と、その頂部が前記第1仮想曲線よりも前記押罫部の表面側の外部に設定された第2仮想曲線に接する側部大凸条から成るものとしたのである。
【0027】
また、前記押罫部における頂部凸条とこれに最も接近した両側の側部大凸条の間に、それぞれ少なくとも1本の側部小凸条が配置されているものとしたのである。
【0028】
また、前記頂部凸条を中心として、前記押罫部の両側が対称形状となっているものとしたのである。
【0029】
或いは、前記押罫部における頂部凸条を挟んだ一側と他側では、側部小凸条及び側部大凸条の少なくともいずれかの本数が異なり、前記押罫部の両側が非対称形状となっているものとしたのである。
【0030】
また、前記押罫部は、頂部凸条の両側のそれぞれに、頂部凸条に交差する方向に延びる複数の交差溝が押罫部の長さ方向に間隔をあけて設けられ、前記交差溝により、頂部凸条の両側の側部小凸条及び側部大凸条の少なくとも1本が分断された形状となっているものとしたのである。
【発明の効果】
【0031】
この発明に係る押罫部材では、押罫部で段ボールシートを押し込む際、頂部凸条が最初に罫線の中央位置で段ボールシートを強く押し潰し、その後、順次両側の側部大凸条で段ボールシートを比較的強く押し潰すと共に、側部小凸条で段ボールシートを比較的弱く押し潰すこととなる。
【0032】
これにより、罫入れ加工時における段ボールシートのずれ動きが防止されて、正確な位置で幅方向の中央部が最も強く押し潰され、その両側が幅方向に強弱をつけて押し潰された罫線が形成され、段ボールシートが罫線の幅方向中央部で正確かつ容易に直線状に折り曲げられるようになる。
【0033】
また、段ボールシートを特に縦罫線部で折り曲げる際、その折れ曲がりが頂部凸条による押潰部から外れた場合、頂部凸条に最も近接している一対の側部大凸条による押潰部があるため、この部分より大きく外れて折れ曲がる現象を防止することができる。
【0034】
さらに、段ボールシートを、中芯紙の波形の高さによって規定される厚さや両面段ボールシート、複両面段ボールシート又は複々両面段ボールシートといった構造に関らず、また紙質の強弱に関らず、表面に過剰な張力を作用させることなく十分に押し潰して、正確な位置に鮮明な罫線を入れ、製造される段ボール箱の不良率を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0037】
図1に示すように、この発明に係る押罫部材10を使用するプラテンダイカッタは、波形状の中芯紙S
2を一層とする両面の段ボールシートAを支持するステンレス製のカッティングプレート1と、その上方に対向する罫入れ型2とが接離するものである。罫入れ型2は、木製の合板から成る基盤3にレーザー加工等によって溝状のスリット4を形成し、このスリット4に段ボール箱のブランクの輪郭を打ち抜く切刃(図示省略)と共に、押罫部材10を圧入したものとなっている。
【0038】
押罫部材10は、上下方向の高さ寸法が20数mm程度、両側面間の厚さが0.5mm〜10mmとされ、長さが適宜寸法とされた金属製の帯板材を素材としており、その帯板材の上下方向の一端部が押罫部11とされている。そして、多様な段ボールシートAの性状に応じて、適宜寸法に製作された押罫部材10が使用される。
【0039】
図2に示すように、この発明の第1実施形態である押罫部材10の押罫部11には、形成する罫線の長さ方向に延びるように、幅方向の中央部に、上記背景技術で説明した従来の押罫部材60の頂部凸条62aに相当する頂部凸条12aが設けられ、この頂部凸条12aを挟んで押罫部11の幅方向の両側に、上記背景技術で説明した従来の押罫部材60の側部凸条62bに相当する側部凸条12bとしての側部小凸条12b
1及び側部大凸条12b
2が交互に並行するように設けられ、これにより、押罫部11の表面は凹凸形状に形成されている。
【0040】
また、頂部凸条12aとその両側の側部小凸条12b
1の間及び隣り合う側部小凸条12b
1と側部大凸条12b
2の間には、それぞれ凹溝13が設けられており、各凹溝13は、その両側の頂部凸条12a、側部小凸条12b
1又は側部大凸条12b
2の頂部より高さ方向に窪んでいる。
【0041】
そして、頂部凸条12a、側部小凸条12b
1及び側部大凸条12b
2の側面は、それらの頂部から凹溝13の底部へ続く傾斜面とされ、押罫部11の表面は滑らかな波状になっている。
【0042】
押罫部11の表面は、押罫部材10の幅方向の中心線lの両側を対称形状としており、頂部凸条12a、側部小凸条12b
1及び側部大凸条12b
2は、頂部凸条12aの頂部が最も突出し、それぞれの頂部が全体として頂部凸条12aを頂部とする山形状の凸形となるように配置されている。
【0043】
また、頂部凸条12a、側部小凸条12b
1及び側部大凸条12b
2の各頂部は、後述のように段ボールシートAに罫線Lを入れる際に、段ボールシートAの破損を防止するため、それぞれ丸味を有するように面取りされ、それらの間の凹溝13の底部も丸味を有するように面取りされた形状とされている。なお、面取り形状は多角形状であってもよい。また、側部小凸条12b
1及び側部大凸条12b
2は、頂部凸条12aほどは段ボールシートAを強く押し込まないので、必ずしも面取りしておく必要はない。
【0044】
ここで、側部小凸条12b
1は、その頂部が凹溝13の底部寄り、すなわち押罫部11の表面側における内部寄りに設定され、全体として山形状の頂部を有する凸形をなす第1仮想曲線C
11の内側に接し、側部大凸条12b
2は、その頂部が第1仮想曲線C
11よりも凹溝13の底部から離れるように、すなわち第1仮想曲線C
11よりも押罫部11の表面側における外部に設定され、全体として山形状の頂部を有する凸形をなす第2仮想曲線C
12の内側に接するものとされている。
【0045】
これにより、上述のように、側部凸条12bは、その側方の凹溝13の底部からの突出量が小さく高さが低い側部小凸条12b
1と、その側方の凹溝13の底部からの突出量が大きく高さが高い側部大凸条12b
2から構成され、これらが頂部凸条12aを挟んで押罫部11の幅方向の両側に交互に並行するものとなっている。
【0046】
また、頂部凸条12aは、その頂部が後述の罫線Lの形成時に段ボールシートAを破損させることがない範囲で、第2仮想曲線C
12の頂部よりも突出するものとされている。このように突出させておくと、頂部凸条12aの頂部が第2仮想曲線C
12に接している場合に比べて、後述のように段ボールシートAに罫線Lを入れる際、罫線Lの溝の中心線が所定の位置でより鮮明なものとなる。
【0047】
なお、頂部凸条12aの頂部は、押罫部11の頂部をなすという条件を満たす限り、第2仮想曲線C
12の内側へ位置させてもよい。このような形状であっても、後述の罫線Lの形成に際し、段ボールシートAを頂部凸条12aで側部小凸条12b
1や側部大凸条12b
2よりも強く押し潰すことができる。
【0048】
ここで、第1仮想曲線C
11及び第2仮想曲線C
12は、それぞれ幅方向の中心線l上の一点を中心とする真円の円弧としているが、これらは、全体として山形状の頂部を有する凸形をなす楕円の一部を構成する曲線や放物線状の曲線であってもよく、全体として山形状の凸形であれば多少波打っていてもよい。また、第1仮想曲線C
11と第2仮想曲線C
12とは、必ずしも同様の形状でなくてもよく、第2仮想曲線C
12が第1仮想曲線C
11の外側に設定されていればよい。
【0049】
また、頂部凸条12a、側部小凸条12b
1及び側部大凸条12b
2のそれぞれは、中心線l上の一点から放射状に伸びるように突出しているが、中心線lに平行に伸びるように突出するものとしてもよい。
【0050】
ところで、段ボールシートAには、上記背景技術で説明したように様々な性状を有する多種のものが存在し、罫入れ加工に際して、
図1(I)、(II)及び
図8に示すような空間部を有する波形状の中芯紙S
2のどの部位を押し潰すか分からないため、押罫部材10によって中芯紙S
2が押し潰される形状もまちまちであって、全ての種類の段ボールシートAを破損することなく一定した精度の罫線Lを形成することは困難である。
【0051】
また、段ボールシートAの正確な位置に罫線Lを入れて、その罫線Lに沿ってブランクA
1を正確に折り曲げて段ボール箱にする必要はあるが、段ボールシートAの多様な特質を考慮すると、極めて正確な形状の押罫部11を有する押罫部材10を使用して罫線Lを入れたとしても、必要以上にコストを要するのみであり、形成される罫線Lの精度にそれほど差が生じないのが実情である。
【0052】
従って、押罫部11の側部小凸条12b
1の頂部及び側部大凸条12b
2の頂部が、上述のように設定された第1仮想曲線C
11及び第2仮想曲線C
12から±0.2mm程度ずれていても、それぞれ振れのある第1仮想曲線C
11及び第2仮想曲線C
12に接しているとみなすことができ、押罫部11が全体として頂部凸条12aを頂部とする山形状の凸形となっていれば、作用効果上の問題はない。このため、押罫部材10の製作に際しては、過剰な高精度を追求する必要がなく、コストを抑制することができる。
【0053】
上記のような押罫部材10により、
図1に示すようなプラテンダイカッタで段ボールシートAに罫線Lを入れる際には、
図1(I)に示すように、押罫部材10の押罫部11が下向きになるように罫入れ型2をプラテンダイカッタに装着して、罫入れ型2をカッティングプレート1へ接近させる。
【0054】
この加工において、
図1(II)に示すように、押罫部11で段ボールシートAを押し込む際、頂部凸条12aが最初に罫線Lの中央位置で段ボールシートAを強く押し潰し、その後、順次両側の側部大凸条12b
2で段ボールシートAを比較的強く押し潰すと共に、側部小凸条12b
1で段ボールシートAを比較的弱く押し潰すこととなる。
【0055】
また、上記背景技術で説明した従来の押罫部材60と同様に、押罫部材10の頂部凸条12a、側部小凸条12b
1及び側部大凸条12b
2のそれぞれは、頂部凸条12aを中心として押罫部11の両側方向へ凹凸形状となるように並行して配列され、これらの頂部凸条12a、側部小凸条12b
1及び側部大凸条12b
2の頂部と凹溝13の底部との間の側面が傾斜面となっているので、段ボールシートAはこの傾斜面に沿って凹溝13へスムーズに入り込んで、押罫部11の表面に波状に沿うことになる。
【0056】
従って、段ボールシートAが頂部凸条12aによる押込部に対して左右にずれ動く現象が防止され、正確な位置に罫線Lを形成することができる。
【0057】
さらに、頂部凸条12aの両側において、これに最も近接している比較的高い一対の側部大凸条12b
2で段ボールシートAを比較的強く押し込むので、段ボールシートAが頂部凸条12aによる押込部に対して左右にずれ動く現象がより確実に防止され、他の側部大凸条12b
2によっても、ずれ動きの防止作用が補強される。
【0058】
また、段ボールシートAは、側部小凸条12b
1では比較的弱く押圧されるので、段ボールシートAが特に柔らかくて弱いものである場合には、段ボールシートAに破損を生じさせることなく、罫線Lを形成することができる。
【0059】
さらにまた、段ボールシートAには、頂部凸条12aによる押潰部を中心に左右対称に罫線Lが形成されるので、頂部凸条12aによる押潰部を中心として、段ボールシートAを正確に折り曲げることができる。
【0060】
また、段ボールシートAを、特に
図8に示す縦罫線L
1で折り曲げる際、その折れ曲がりが頂部凸条12aによる押潰部から外れた場合、頂部凸条12aに最も近接している一対の側部大凸条12b
2による押潰部があるため、この部分より大きく外れて折れ曲がる現象を防止することができる。
【0061】
そして、段ボールシートAを、上述の
図8に示すような中芯紙S
2の波形の高さによって規定される厚さや両面段ボール、複両面段ボール又は複々両面段ボールといった構造に関らず、また、紙質の強弱に関らず、表面に過剰な張力を作用させることなく十分に押し潰して、正確な位置に鮮明な罫線Lを入れることができ、製造される段ボール箱の不良率を低減することができる。
【0062】
また、頂部凸条12aとその両側において最も近接している一対の側部大凸条12b
2のそれぞれの間に、高さの低い側部小凸条12b
1が設けられ、段ボールシートAがこの側部小凸条12b
1で比較的弱く押し潰されるので、頂部凸条12aでの押し潰しが鮮明になって、段ボール箱の組み立てに際し、段ボールシートAを罫線Lの中央で正確に折り曲げることができる。
【0063】
なお、頂部凸条12aとこれに最も近接している側部大凸条12b
2の間に側部小凸条12b
1がない場合には、頂部凸条12aでの段ボールシートAの押潰部に近接した位置に、頂部凸条12aに最も近接している側部大凸条12b
2による段ボールシートAの押潰部ができるので、頂部凸条12aによる段ボールシートAの押潰部が不鮮明になって、段ボールシートAを頂部凸条12aでの押潰部を中心として正確に折り曲げることができなくなる恐れがある。従って、頂部凸条12aとこれに最も近接している側部大凸条12b
2の間に側部小凸条12b
1を設けておく方が好ましい。
【0064】
また、
図2の例では、押罫部11の両側の最も外側にそれぞれ側部小凸条12b
1を設けたものを図示しているが、押罫部11の両側のすくなくともいずれかの最も外側
に側部大凸条12b
2を設けると、幅方向の対応する側端が鮮明な罫線Lを形成することができるので、段ボールシートAの性状や罫線Lを設ける場所に応じて、このような配置としてもよい。
【0065】
また、上記第1実施形態では、頂部凸条12aの両側において、それぞれ側部小凸条12b
1と側部大凸条12b
2が交互に並んだものを例示しているが、これらの頂部凸条12a、側部小凸条12b
1及び側部大凸条12b
2の頂部が全体として山形状の凸形となるように配置されておれば、側部小凸条12b
1と側部大凸条12b
2の配置パターンは特に限定されるものではない。例えば、
図3に示す第2実施形態のように、側部小凸条12b
1同士が連続して隣り合ったり、側部大凸条12b
2同士が連続して隣り合ったりするものとしてもよい。
【0066】
ただし、この場合においても、頂部凸条12aとこれに最も接近した両側の側部大凸条12b
2の間には、それぞれ少なくとも1本の側部小凸条12b
1を配置しておくのが好ましい。これにより、押罫部11で段ボールシートAを押し込む際、段ボールシートAの表面が頂部凸条12aの側面に沿って移動しやすくなり、段ボールシートAの紙質が柔らかくて弱くても、段ボールシートAの表面の破れが防止される。また、頂部凸条12aによる段ボールシートAの押し潰しが鮮明になり、この押潰部で段ボールシートAを正確に折り曲げることができる。
【0067】
この第2実施形態の場合も、側部小凸条12b
1は、その頂部が全体として山形状の頂部を有する凸形をなす第1仮想曲線C
11の内側に接し、側部大凸条12b
2は、その頂部が第1仮想曲線C
11よりも外部に設定され全体として山形状の頂部を有する凸形をなす第2仮想曲線C
12の内側に接するものとする。
【0068】
すなわち、この第2実施形態においても、側部凸条12bとしての側部小凸条12b
1及び側部大凸条12b
2を、頂部凸条12aから押罫部11の両側方向へそれぞれ並行して配列することにより、頂部凸条12a、側部小凸条12b
1及び側部大凸条12b
2のそれぞれの頂部が全体として山形状の凸形となるようにする。なお、頂部凸条12aは、第2仮想曲線C
12の頂部より少し突出させてもよい。
【0069】
また、上記各実施形態では、押罫部材10の幅方向の中心線lの両側が対称形状となった押罫部11を例示しているが、例えば、
図4に示す第3実施形態のように、押罫部11は、頂部凸条12aの頂部が押罫部材10の幅方向の中心線lから片側へ偏った偏軸線p上に位置するものとしてもよく、頂部凸条12aを挟んだ一側の側部小凸条12b
1及び側部大凸条12b
2の少なくともいずれかと、他側の側部小凸条12b
1及び側部大凸条12b
2の少なくともいずれかの本数が異なるものとしてもよい。
【0070】
この場合においても、頂部凸条12aを挟んで押罫部11の幅方向の両側に、側部凸条12bとしての側部小凸条12b
1及び側部大凸条12b
2が交互に並行するように設けられ、それぞれの頂部が全体として頂部凸条12aを頂部とする山形状の凸形となるように配置されたものとする。
【0071】
また、この第3実施形態においても、側部小凸条12b
1は、その頂部が全体として山形状の頂部を有する凸形をなす第1仮想曲線C
11の内側に接し、側部大凸条12b
2は、その頂部が第1仮想曲線C
11よりも外部に設定された全体として山形状の頂部を有する凸形をなす第2仮想曲線C
12の内側に接するものとするが、頂部凸条12aは、第2仮想曲線C
12より少し突出させてもよい。
【0072】
このような非対称の押罫部11を有する押罫部材10は、特に、フォルダグルアによる段ボール箱の製造工程のように、段ボールシートAの罫線Lを挟んだ一側を固定し、他側を揺動させて段ボールシートAを折り曲げる場合や、罫線Lを挟んだ一側と他側とを異なる折曲速度で揺動させて折り曲げる場合に使用するとよい。
【0073】
その際、段ボールシートAの固定せずに揺動させる側または速く揺動させる側に多数本の側部小凸条12b
1及び側部大凸条12b
2が配置されるように使用すると、折曲抵抗が釣り合って、段ボールシートAを所定の位置で正確に折り曲げることができる。
【0074】
さらに、上記第1実施形態を基本とした
図5に示す第4実施形態のように、押罫部11は、頂部凸条12aの両側のそれぞれに、頂部凸条12aに交差する方向に延びる複数の交差溝14が押罫部11の長さ方向に間隔をあけて設けられ、この交差溝14により、頂部凸条12aの両側に位置する側部小凸条12b
1及び側部大凸条12b
2が分断された形状となるようにしてもよい。
【0075】
このような交差溝14を設けておくと、段ボールシートAを押圧する際、段ボールシートAの表面が交差溝14へ入り込むために、押罫部11と段ボールシートAの接触面が大きくなって、押罫部材10の長さ方向への段ボールシートAのずれ動きが防止されると共に、段ボールシートAの表面が頂部凸条12aに接近する方向へ寄せられて、頂部凸条12aにより強く押し潰されるので、段ボールシートAを折り曲げて段ボール箱を製造する場合、罫線Lにおける折曲位置の精度がさらに向上し、段ボール箱の不良発生率を著しく低減することができる。なお、短い交差溝14によって、側部小凸条12b
1及び側部大凸条12b
2の少なくとも1本を分断するようにしても、同様の作用効果が得られる。
【0076】
なお、押罫部11の頂部凸条12aを挟んだ両側の交差溝14は、頂部凸条12aの長さ方向における位置が揃っている必要はなく、千鳥状にずれていてもよい。また、交差溝14が中央の頂部凸条12aに対して傾斜したものを例示しているが、交差溝14は、頂部凸条12aに対して直交する方向に延びるものであってもよい。
【0077】
上記各実施形態においては、加工対象の段ボールシートAの厚さが厚い程、押罫部11の幅方向の寸法を大きくし、多数本の側部小凸条12b
1及び側部大凸条12b
2を備えたものとすることが好ましい。
【0078】
ところで、上記各実施形態では、プラテンダイカッタに装着される罫入れ型の押罫部材10について例示したが、上記各実施形態のような押罫部11は、
図6に示すように、ロータリーダイカッタに装着される罫入れ型の押罫部材10に適用してもよい。
【0079】
ロータリーダイカッタは、アンビルロール20に対向配置されたダイロール21の外周に罫入れ型22を装着し、罫入れ型22の湾曲した木製の基盤23に切刃24と側面視で円弧状に湾曲した押罫部材10とを固設しておき、アンビルロール20とダイロール21の間に段ボールシートAを送り込んで切刃24により所定形状に打ち抜くと共に、押罫部材10により段ボールシートAに罫入加工を施すものである。
【0080】
また、例えば、フォルダグルアに使用される
図7に示すような罫入ユニットの罫入ロールを、上記各実施形態のような押罫部11を備えた押罫部材10としてもよい。
【0081】
この罫入ユニットは、段ボールシートAを矢印方向に送る上下一対の搬送ローラ30の下流側に、互いに逆方向に回転する一対の回転軸31、32を上下に配置し、上側の回転軸31に罫入ロールとして押罫部材10を取り付け、下側の回転軸32に凹凸のない滑らかな表面を有する受ロール33を取り付け、押罫部材10と受ロール33の間に送り込まれた段ボールシートAに罫入加工を施すものである。
【0082】
このように、段ボールシートAを送りつつ、回転に伴い段ボールシートAに罫入加工を施す押罫部材10においても、押罫部11を上記各実施形態のような形状とすることにより、正確な位置に鮮明な罫線を入れることができ、製造される段ボール箱の不良率を低減することができる。