(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鉄の酸化物、水酸化物若しくはオキシ水酸化物、又はニッケル若しくはコバルトの水酸化物又はそれらのオキシ水酸化物から選ばれる1種又は2種以上の鉄族化合物(A)の固体粒子を含有し、pHが3以上11以下であり、
鉄族化合物(A)の固体粒子を含有するラミネート加工下地用皮膜の形成のために用いられることを特徴とする水系金属表面処理剤。
前記鉄族化合物(A)を構成する金属原子のモル量の総和に対する前記無機化合物(B)を構成するリン原子及びフッ素原子のモル量の総和の割合(B/A)が、0.005以上2.0以下の範囲内である、請求項4に記載の水系金属表面処理剤。
ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂又は天然多糖類から選ばれる1種又は2種以上の水系樹脂(C)をさらに含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水系金属表面処理剤。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る水系金属表面処理剤、金属表面処理皮膜及び金属表面処理皮膜付き金属材料について詳細に説明する。なお、本発明は、その要旨を含む範囲で任意に変更可能であり、下記の実施形態のみに限定されない。
【0026】
[水系金属表面処理剤]
本発明に係る水系金属表面処理剤は、鉄、ニッケル若しくはコバルトの酸化物、それらの水酸化物又はそれらのオキシ水酸化物から選ばれる1種又は2種以上の鉄族化合物(A)を少なくとも含有する。こうした水系金属表面処理剤は、リン化合物又はフッ素化合物から選ばれる1種又は2種以上の無機化合物(B)をさらに含有することが好ましく、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂又は天然多糖類から選ばれる1種又は2種以上の水系樹脂(C)をさらに含有することが好ましい。
【0027】
以下、水系金属表面処理剤の構成要素及び処理対象について詳しく説明する。
【0028】
(鉄族化合物)
鉄族化合物(A)としては、鉄、ニッケル若しくはコバルトの酸化物、それらの水酸化物又はそれらのオキシ水酸化物を挙げることができる。具体的には、鉄の酸化物、ニッケルの酸化物、コバルトの酸化物、鉄の水酸化物、ニッケルの水酸化物、コバルトの水酸化物、鉄のオキシ水酸化物、ニッケルのオキシ水酸化物、コバルトのオキシ水酸化物を挙げることができる。これらの鉄族化合物(A)は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。これらのなかでも、鉄の水酸化物、ニッケルの水酸化物、コバルトの水酸化物、鉄のオキシ水酸化物、ニッケルのオキシ水酸化物、コバルトのオキシ水酸化物が好ましく用いられ、鉄の水酸化物と鉄のオキシ水酸化物が特に好ましく用いられる。
【0029】
それぞれの具体例としては、酸化鉄(II)(FeO)、酸化鉄(III)(Fe
2O
3)、四三酸化鉄(Fe
3O
4)、酸化ニッケル(II)(NiO)、酸化ニッケル(III)(Ni
2O
3)、酸化コバルト(II)(CoO)、酸化コバルト(III)(Co
2O
3)、水酸化鉄(III)(Fe(OH)
3)、水酸化鉄(II)(Fe(OH)
2)、水酸化ニッケル(III)(Ni(OH)
3)、水酸化ニッケル(II)(Ni(OH)
2)、水酸化コバルト(III)(Co(OH)
3)、水酸化コバルト(II)(Co(OH)
2)、オキシ水酸化鉄(FeOOH)、オキシ水酸化ニッケル(NiOOH)、オキシ水酸化コバルト(CoOOH)を挙げることができる。
【0030】
鉄族化合物(A)の結晶型は特に限定されず、各種の結晶型のものを用いることができる。
【0031】
鉄族化合物(A)は、その固体粒子を予め水性溶媒中に分散した分散溶液(例えばゾル等)として利用することが好ましい。この分散溶液は、鉄族化合物(A)の固体粒子そのものよりも取り扱いが容易であり、水系金属表面処理剤の製造が容易になるという利点がある。
【0032】
前記した水性溶媒とは、水を50質量%以上含有する溶媒のことである。水性溶媒に含まれる水以外の溶媒としては、ヘキサン、ペンタン等のアルカン系溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶媒;エタノール、1−ブタノール、エチルセロソルブ等のアルコール系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブトキシエチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホン系溶媒;ヘキサメチルリン酸トリアミド等のリン酸アミド系溶媒;等を挙げることができる。これらの水以外の溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
前記した分散溶液の調製方法は、例えば、鉄族化合物(A)の固体粒子を入手又は合成した後、水性溶媒中に分散剤を用いて分散する第1の方法と、鉄族化合物(A)の前駆体である水溶性塩を用い、水性溶媒中で、鉄族化合物(A)の分散液を製造する第2の方法がある。これらのうち、第2の方法が好ましく用いられる。
【0034】
前記した第2の方法は、具体的には、鉄、ニッケル又はコバルトの水溶性塩の酸性水溶液にアルカリ剤を添加し、必要に応じて分散剤や酸化剤を添加して、鉄、ニッケル若しくはコバルトの水酸化物又はそれらのオキシ水酸化物を水中で生成させ、その後、余分な不純物イオンを分離により除去する方法である。この第2の方法により、鉄、ニッケル若しくはコバルトの水酸化物又はそれらのオキシ水酸化物の固体粒子を含む分散溶液を調製することができる。
【0035】
鉄、ニッケル若しくはコバルトの水溶性塩としては、従来公知の塩を使用することができる。具体的には、塩化鉄、塩化ニッケル、塩化コバルト、硝酸鉄、硝酸ニッケル、硝酸コバルト、硫酸鉄、硫酸ニッケル、硫酸コバルト、フッ化鉄、フッ化ニッケル、フッ化コバルト、酢酸鉄、酢酸ニッケル、酢酸コバルト、クエン酸鉄、クエン酸ニッケル、クエン酸コバルト、蓚酸鉄、蓚酸ニッケル、蓚酸コバルト等を挙げることができる。鉄、ニッケル及びコバルトは、2価であっても3価であってもよい。また、これらの塩は、水和物であっても構わない。
【0036】
前記したアルカリ剤としては、従来公知のアルカリ剤を使用することができる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物を使用できる。また、ゾルの使用目的によってはナトリウムやカリウムの含有を好まない場合があり、その場合には、アンモニア、炭酸水素アンモニウム又は尿素を使用することができる。
【0037】
前記した分散剤としては、従来公知の分散剤を使用することができる。なかでもヒドロキシカルボン酸が好ましく、具体的には、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、ヒドロキシ吉草酸、グリセリン酸、トロパ酸、ベンジル酸等を挙げることができる。特に、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の2価以上のカルボキシル基を有するヒドロキシカルボン酸は、少ない含有量で分散できることから、好ましく用いることができる。
【0038】
前記した酸化剤としては、従来公知の酸化剤を使用することができる。なかでも過酸化水素や、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩が好ましい。
【0039】
前記した分離としては、イオン交換樹脂を用いた分離方法や、膜ろ過を用いた分離方法等があるが、限外ろ過膜を用いた分離方法が簡便であることから好ましい。
【0040】
鉄族化合物(A)の水系金属表面処理剤中での含有量は、全固形分に対して、1質量%以上、好ましくは5質量%以上である。鉄族化合物(A)の含有量の上限は特に限定されないが、後述の実施例に示すように、無機化合物(B)や水系樹脂(C)等を含まない場合はその全てが鉄属化合物(A)であってもよい。鉄族化合物(A)の含有量がこの範囲であることにより、金属表面処理皮膜を介した金属材料とラミネートフィルムとの初期密着性が良好であり、特に酸性液体に接触する環境下でも高い密着性(耐久密着性)が得られ、かつ、金属材料の耐食性を向上させることができる。
【0041】
鉄族化合物(A)の作用機構は現時点では未だ未解明の部分もあるが、鉄族化合物(A)を含まず、代わりに鉄、ニッケル又はコバルトの水溶性塩を含む水系金属表面処理剤で作製した金属表面処理皮膜は、性能発現しないことが本発明者の検討により判明している。鉄、ニッケル若しくはコバルトの酸化物、それらの水酸化物又はそれらのオキシ水酸化物である鉄族化合物(A)は水溶性塩と比較して耐酸性が高く、酸性液体等に接触した場合であっても溶解し難いために、その鉄族化合物(A)を含む水系金属表面処理剤で作製した金属表面処理皮膜は高い耐久密着性が得られるものと考えられる。加えて、鉄、ニッケル若しくはコバルトの水酸化物又はそれらのオキシ水酸化物は、その酸化物と比較して、水酸基が多く、金属材料やラミネートフィルムとの親和性が高くなる。そのため、そうした水酸化物又はオキシ水酸化物を含む水系金属表面処理剤で作製した金属表面処理皮膜は、金属材料とラミネートフィルムとの間でより高い密着性を発現させているものと考えられる。
【0042】
鉄族化合物(A)は、水系金属表面処理剤中で分散していることが好ましい。水系金属表面処理剤中で分散する鉄族化合物(A)の平均粒径は、1nm以上、500nm以下の範囲内であることが好ましい。平均粒径が1nm未満の場合は、結晶サイズが小さいために、結晶性が低く、場合によってはアモルファス状態で存在してしまう可能性がある。その結果として耐酸性が低くなり、酸性液体に接触する環境下での金属表面処理皮膜とラミネートフィルムとの間の耐久密着性が低下してしまうことがある。一方、平均粒径が500nmを超えると、成膜後の金属表面処理皮膜中で耐酸性のある鉄族化合物(A)の存在しない部分の体積率が増加するため、特に酸性液体に接触する環境下での耐久密着性が低下してしまう。なお、平均粒径は、1nm以上、100nm以下の範囲内であることがより好ましい。
【0043】
水系金属表面処理剤中に分散する鉄族化合物(A)の平均粒径は、動的光散乱法、レーザー回折法、遠心沈降法等の従来公知の測定方法を用いて測定することができる。具体的には、大塚電子株式会社製のダイナミック光散乱光度計(DLS−8000シリーズ)、株式会社堀場製作所製のレーザー回折/散乱式粒度分布計(LA−920)等を用いて測定することができる。なお、後述する金属表面処理皮膜付き金属材料に設けられている金属表面処理皮膜中の鉄族化合物(A)の平均粒径は、金属表面処理皮膜の表面又は断面を透過型電子顕微鏡(TEM)により直接観察することで測定することができる。
【0044】
(無機化合物)
無機化合物(B)としては、リン化合物とフッ素化合物の一方又は両方、すなわちリン化合物又はフッ素化合物から選ばれる1種又は2種以上が用いられる。無機化合物(B)は水系金属表面処理剤の必須の構成ではないが、無機化合物(B)をさらに含む水系金属表面処理剤で形成した金属表面処理皮膜は、ラミネートフィルムとの間の層間密着性(初期密着性、耐久密着性等)が向上し、金属材料の耐食性をさらに向上させることができる。
【0045】
リン化合物としては、リン酸類、リン酸エステル、有機ホスホン酸を挙げることができる。リン酸類としては、具体的には、リン酸(オルトリン酸)、メタリン酸、ポリリン酸を包含する縮合リン酸、及びその塩(アンモニウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩等)を挙げることができる。なお、メタリン酸は、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ヘキサメタリン酸等を包含する。また、ポリリン酸は、鎖状のリン酸縮合物であって、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸等を包含する。リン酸エステルとしては、具体的には、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、モノメチルホスフェート、ジメチルホスフェート、エチルホスフェート、ジエチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ジブチルホスフェート等を挙げることができる。有機ホスホン酸としては、具体的には、アミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸等を挙げることができる。これらのリン化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0046】
なかでも、リン酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩及びリチウム塩,及び、ポリリン酸(ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸等を包含する。)を包含する縮合リン酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、マグネシウム塩及びリチウム塩から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。なお、縮合リン酸塩には、ポリリン酸塩、メタリン酸塩及びウルトラリン酸等があり、金属とリンの原子比率Me
2O/P
2O
5(これをRと表記し、Meは一価の金属として計算する。)によって分類される。ポリリン酸塩は2≧R>1の場合であり、メタリン酸塩はR=1の場合であり、ウルトラリン酸塩はR<1の場合であるとされている。
【0047】
フッ素化合物としては、フッ酸、ケイフッ酸、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化リチウム、酸性フッ化ナトリウム、酸性フッ化カリウム、酸性フッ化アンモニウム、フルオロジルコニウム酸、フルオロジルコニウム酸アンモニウム、フルオロチタン酸、フルオロチタン酸アンモニウム等を挙げることができる。これらのフッ素化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0048】
なかでも、フッ化水素酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩及びリチウム塩から選ばれる1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0049】
これらの無機化合物(B)の含有量は、鉄族化合物(A)を構成する金属原子(鉄原子、ニッケル原子、コバルト原子)のモル量の総和に対する、無機化合物(B)を構成するリン原子及びフッ素原子のモル量の総和の割合(B/A)が、0.005以上、2.0以下の範囲内であることが好ましい。前記した割合がこの範囲内にあることにより、ラミネートフィルムの初期密着性、耐久密着性、及び金属材料の耐食性がさらに向上する。なお、無機化合物(B)の含有量は、前記した割合が0.01以上、1.0以下の範囲内であることがより好ましい。
【0050】
無機化合物(B)の作用機構は、現時点では未だ未解明の部分があるが、水系金属表面処理剤中にリン化合物及び/又はフッ素化合物が溶解していることにより、水系金属表面処理剤が金属材料に接液した時に、金属材料の表面がそのリン化合物やフッ素化合物で僅かにエッチングされて微細凹凸が形成し、その微細凹凸によるアンカー効果によって初期密着性と耐久密着性が向上したものと考えられる。また、金属表面処理皮膜中にリン化合物やフッ素化合物が存在することで、腐食因子であるアニオンの透過性が低くなり、その結果、金属材料の耐食性が向上したものと考えられる。
【0051】
(水系樹脂)
水系樹脂(C)としては、従来公知の水系樹脂が適用可能であるが、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂又は天然多糖類から選ばれる1種又は2種以上の水系樹脂を挙げることができる。こうした水系樹脂(C)を含む水系金属表面処理剤で処理して成膜された金属表面処理皮膜は、ラミネートフィルムとの間の密着性(初期密着性、耐久密着性)がさらに向上する。
【0052】
水系樹脂(C)は、水溶性又は水分散性(エマルション、ディスパーション)のいずれであっても構わない。また、水系樹脂(C)の水系金属表面処理剤中での極性も、カチオン性、ノニオン性、アニオン性のいずれであっても構わない。
【0053】
ポリエステル樹脂としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸等の多塩基酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、1,4−CHDM、1,6−ヘキサンジオール等のポリオールとを縮合させたポリエステルポリオール;前記した多塩基酸と、ポリマーポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートジオール、ポリブタジエンポリオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタジオール等のポリオールとを縮合させた縮合樹脂;等を挙げることができる。
【0054】
また、モノマーの一部にトリメリット酸やピロメリット酸等のカルボキシル基を3個以上持つモノマーを使用し、未反応のカルボン酸をアルカリで中和して可溶化又は水分散化させた水系樹脂、或いは、モノマーの一部にスルホフタル酸等のスルホン化したモノマーを使用して可溶化又は水分散化させた水系樹脂、も使用することができる。
【0055】
ウレタン樹脂としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等のポリオールと、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族イソシアネート及び/又は芳香族ポリイソシアネート化合物との縮重合物であるウレタン樹脂であって、前記ポリオールの一部としてポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールのようなポリオキシエチレン鎖を有するポリオールを用いて得られたポリウレタン等を挙げることができる。
【0056】
こうしたポリウレタンは、ポリオキシエチレン鎖の導入割合を高くすることより、非イオンの状態で水溶化又は水分散化させることができる。また、ポリイソシアネートとポリオールとから、両端にイソシアナト基を有するウレタンプレポリマーを製造し、これにヒドロキシル基を2個以上有するカルボン酸又はその反応性誘導体を反応させて両端にイソシアネート基を有する誘導体とし、次いで、トリエタノールアミン等を加えてアイオノマー(トリエタノールアミン塩)とし、そのアイオノマーを水に加えてエマルジョン又はディスパージョンとし、さらに必要に応じてジアミンを加えて鎖延長を行うことにより、アニオン性のウレタン樹脂を得ることができる。
【0057】
前記したアニオン性を有する水分散性のウレタン樹脂を製造する際に用いるカルボン酸及び反応性誘導体は、ウレタン樹脂に酸性基を導入するため、及びウレタン樹脂を水分散性にするために用いる。カルボン酸としては、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸、ジメチロールヘキサン酸等のジメチロールアルカン酸を挙げることができる。また、反応性誘導体としては、酸無水物のような加水分解性エステル等を挙げることができる。
【0058】
ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン;ポリエチレン;プロピレンとエチレンとα−オレフィンとの共重合体;等のポリオレフィンを、不飽和カルボン酸(例えばアクリル酸やメタクリル酸)で変性した変性ポリオレフィン;エチレンとアクリル酸(メタクリル酸)との共重合体;等を挙げることができる。これらのポリオレフィン樹脂に、さらに他のエチレン性不飽和モノマーを少量、共重合させたものでもよい。水性化の手段としては、ポリオレフィン樹脂に導入したカルボン酸を、アンモニアやアミン類で中和する手段を挙げることができる。
【0059】
エポキシ樹脂としては、2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物;ビスフェノールA若しくはビスフェノールFを骨格中の単位として有するエポキシ化合物;2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物にエチレンジアミン等のジアミンを作用させてカチオン化して得られるエポキシ樹脂;ビスフェノールA若しくはビスフェノールFを骨格中の単位として有するエポキシ化合物又はその他の2個以上のグリシジル基を有するエポキシ化合物の側鎖にポリエチレングリコールを付加させたノニオン性エポキシ樹脂;等を挙げることができる。
【0060】
エポキシ樹脂として、上記のように、ビスフェノールA若しくはビスフェノールFを骨格中の単位として有するエポキシ樹脂を用いることができるが、そうしたエポキシ樹脂のグリシジル基の一部又は全部がシラン変性又はリン酸変性されたエポキシ樹脂を用いてもよい。
【0061】
前記したビスフェノールA若しくはビスフェノールFを骨格中の単位として有するエポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリンとビスフェノールA若しくはビスフェノールFとの脱塩化水素及び付加反応の繰返しにより得られるもの;グリシジル基を2個以上、好ましくは2個有するエポキシ化合物と、ビスフェノールA若しくはビスフェノールFとの間の付加反応の繰返しにより得られるもの;等を挙げることができる。
【0062】
前記したエポキシ化合物の種類について詳細に例示すると、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、オルトフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p−オキシ安息香酸ジグリシジルエステル、テトラハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサハイドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、1,4−グリシジルオキシベンゼン、ジグリシジルプロピレン尿素、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、グリセロールアルキレンオキサイド付加物のトリグリシジルエーテル等を挙げることができる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2以上を併用して用いてもよい。
【0063】
前記したシラン変性の程度は、変性による効果が認められる程度以上であれば特に制限はなく、周知のシランカップリング剤を用いても構わない。
【0064】
フェノール樹脂としては、フェノール類(フェノール、ナフトール、ビスフェノール等)とホルムアルデヒドとの重縮合物であって、低分子量の水溶性樹脂若しくはエマルジョン樹脂を挙げることができる。これらの中で、自己縮合性のあるメチロール基を有するレゾール型フェノール樹脂が好ましい。
【0065】
アクリル樹脂としては、アクリルモノマーの単独重合物又は共重合物、さらにはこれらのアクリルモノマーと共重合し得る付加重合性モノマーとの共重合物、等を挙げることができる。こうしたアクリル樹脂は、水系金属表面処理剤に安定して存在し得るものであれば特に重合形態は限定されない。
【0066】
前記したアクリルモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、スルホエチルアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート等を挙げることができる。アクリルモノマーと共重合し得る付加重合性モノマーとしては、マレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、アクリロニトリル、ビニルスルホン酸等を挙げることができる。
【0067】
ポリビニル樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物若しくは完全ケン化物、ポリビニルピロリドン等を挙げることができる。
【0068】
前記したポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物及び完全ケン化物、並びに、酢酸ビニルと他のモノマーとの共重合物の部分ケン化物及び完全ケン化物を包含する。さらに、重合後のポリマーに、例えばカルボン酸、スルホン酸、リン酸等のアニオン基を導入した変性ポリマー;又は、ジアセトンアクリルアミド基、アセトアセチル基、メルカプト基、シラノール基等の架橋反応性を有する官能基を導入した変性ポリマー;等も適用することができる。
【0069】
なお、酢酸ビニルと共重合可能な単量体としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸及びそのエステル類、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン;(メタ)アクリルスルホン酸、エチレンスルホン酸、スルホン酸マレート等のオレフィンスルホン酸;(メタ)アリルスルホン酸ソーダ、エチレンスルホン酸ソーダ、スルホン酸ソーダ(メタ)アクリレート、スルホン酸ソーダ(モノアルキルマレート)、ジスルホン酸ソーダアルキルマレート等のオレフィンスルホン酸アルカリ塩;N−メチロールアクリルアミド、アクリルアミドアルキルスルホン酸アルカリ塩等のアミド基含有単量体;N−ビニルピロリドン、N−ビニルピロリドン誘導体;等を挙げることができる。
【0070】
ポリアミド樹脂及びポリイミド樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂を挙げることができる。水性化の手段は、構造中にカルボキシル基を導入させて行われる。
【0071】
天然多糖類としては、キトサン及びその誘導体等の天然多糖類、及びその誘導体を挙げることができる。キトサンとは、カニやエビ等の甲殻類より抽出される天然高分子であるキチンを60〜100モル%脱アセチル化することで得られる。例えば、100モル%脱アセチル化したキトサンは、N−アセチル−β−D−グルコサミンが1位と4位で結合した高分子物質である。
【0072】
前記したキトサン誘導体は、キトサンが持つ水酸基及び/又はアミノ基に対して、カルボキシル化、グルコール化、トシル化、硫酸化、リン酸化、エーテル化又はアルキル化した反応生成物である。具体的には、キトサン、カルボキシメチルキトサン、ヒドロキシエチルキトサン、ヒドロキシプロピルキトサン、ヒドロキシブチルキトサン、グリセリル化キトサン及びそれらの酸との塩等を挙げることができる。また、3級若しくは4級アミノ基又はその両方を持つ化合物を用い、キトサンにその3級化若しくは4級化アミノ基を導入した反応生成物;キトサンの持つアミノ基を直接アルキル化剤でアルキル化し、直接3級化若しくは4級化した3級又は4級アミノ基、又は、その両方を分子内に有する所謂カチオン化キトサン;及びそれらの酸との塩;であってもよい。
【0073】
上記した各種の水系樹脂(C)は、単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0074】
水系樹脂(C)の含有量は、水系金属表面処理剤の全固形分に対して、1質量%以下、90質量%以下の範囲内であることが好ましい。水系樹脂(C)の含有量がこの範囲にあると、金属表面処理皮膜とラミネートフィルムとの間の初期密着性及び耐久密着性が向上し、金属材料の耐食性がさらに向上する。水系樹脂(C)の好ましい含有量は、5質量%以上、80質量%以下の範囲内である。
【0075】
水系樹脂(C)の作用機構は現時点では未だ未解明の部分もあるが、金属表面処理皮膜中に水系樹脂(C)が存在することで、金属表面処理皮膜の緻密さが増し、かつ水系樹脂(C)自体が酸等に対する耐薬品性が高いことから性能に寄与しているものと考えられる。
【0076】
(その他)
本発明に係る水系金属表面処理剤は、金属材料の表面に塗布する際の作業性の観点から、必要に応じて各種の溶媒を含有することができる。溶媒としては、具体的には、例えば、水;ヘキサン、ペンタン等のアルカン系;ベンゼン、トルエン等の芳香族系;エタノール、1−ブタノール、エチルセロソルブ等のアルコール系;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系;酢酸エチル、酢酸ブトキシエチル等のエステル系;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系;ジメチルスルホキシド等のスルホン系溶媒;ヘキサメチルリン酸トリアミド等のリン酸アミド;等を挙げることができる。これらのうち、1種の溶媒を用いてもよいし、2種以上の溶媒を混合して用いてもよい。
【0077】
この他に、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、防菌防黴剤、着色剤等を、本発明の趣旨及び皮膜性能を損なわない範囲で添加し得る。
【0078】
水系金属表面処理剤のpHは、3以上、11以下の範囲にあることが好ましい。pHが3以上、11以下の範囲から外れた場合は、鉄族化合物(A)が水系金属表面処理剤中で一部溶解してしまい、特に酸性液体と接触する環境下で金属表面処理皮膜とラミネートフィルムとの間の耐久密着性が低下してしまうことがある。より好ましいpHは、6以上、10以下の範囲である。
【0079】
(処理剤の製造)
水系金属表面処理剤の製造方法は特に制限されない。例えば、鉄族化合物(A)と、必要に応じて含有してもよい無機化合物(B)、水系樹脂(C)及びその他添加剤と、溶媒とを、混合ミキサー等の撹拌機を用いて十分に混合して水系金属表面処理剤を製造することができる。
【0080】
(成分分析)
鉄族化合物(A)は、例えば、水系金属表面処理剤をアルミニウム板(A1050P)に塗工した後、80℃で乾燥して得られたサンプル皮膜を薄膜X線回折分析し、その回折パターンを解析することによって測定することができる。薄膜X線回折分析は、PANalytical製の薄膜X線回折装置(型番:Xpert−MPD)を用い、広角法、管電圧−電流:45kV−40mA、スキャン速度:0.025度/秒の条件で行う。
【0081】
無機化合物(B)は、水系金属表面処理剤をアルミニウム板(A1050P)に塗工した後、80℃で乾燥して得られたサンプル皮膜をXPS分析することによって測定することができる。XPS分析は、株式会社島津製作所製のXPS分析装置(型番:ESCA−850)を用い、励起X線:Mg−Kα、出力:8kV−30mA、測定領域:F1s,P2p、スパッタリング時間:2分間(5秒間隔)の条件で、深さ方向分析を行う。
【0082】
水系樹脂(C)は、水系金属表面処理剤の原液、又は必要に応じて水にて希釈したものを、FT−IR分析(Thermo Fisher Scientific社製、型番:Nicolet iS10、正反射法)で測定することができる。
【0083】
(処理対象)
水系金属表面処理剤は、金属材料を対象物として処理される。金属材料としては、例えば、純銅、銅合金(これらを「銅材料」ともいう。)、純アルミニウム、アルミニウム合金(これらを「アルミニウム材料」ともいう。)、普通鋼、合金鋼(これらを「鉄材料」ともいう。)、純ニッケル、ニッケル合金(これらを「ニッケル材料」ともいう。)、純亜鉛、亜鉛合金(これらを「亜鉛材料」ともいう。)等を挙げることができる。
【0084】
金属材料の形状や構造等は特に限定されず、例えば、板状、箔状等を挙げることができる。さらに、金属材料は、別の金属材料、セラミックス材料、有機材料等の基材上に、例えばめっき、蒸着、クラッド等の手法によって上記した銅材料、アルミニウム材料、鉄材料、ニッケル材料又は亜鉛材料等を被覆したものであってもよい。
【0085】
銅合金は、銅を50質量%以上含有するものが好ましく、例えば、黄銅等を挙げることができる。銅合金における銅以外の合金成分としては、例えば、Zn、P、Al、Fe、Ni等を挙げることができる。アルミニウム合金は、アルミニウムを50質量%以上含有するものが好ましく、例えば、Al−Mg系合金等を挙げることができる。アルミニウム合金におけるアルミニウム以外の合金成分としては、例えば、Si、Fe、Cu、Mn、Cr、Zn、Ti等を挙げることができる。合金鋼は、鉄を50質量%以上含有するものが好ましく、例えば、ステンレス鋼等を挙げることができる。合金鋼における鉄以外の合金成分としては、例えば、C、Si、Mn、P、S、Ni、Cr、Mo等を挙げることができる。ニッケル合金は、ニッケルを50質量%以上含有するものが好ましく、例えば、Ni−P合金等を挙げることができる。ニッケル合金におけるニッケル以外の合金成分としては、例えば、Al、C、Co、Cr、Cu、Fe、Zn、Mn、Mo、P等を挙げることができる。亜鉛合金は、亜鉛を50質量%以上含有するものが好ましく、例えば、Zn−Al系合金等を挙げることができる。アルミニウム合金におけるアルミニウム以外の合金成分としては、例えば、Al、Si、Fe、Cu、Mn、Cr、Zn、Ti等を挙げることができる。
【0086】
[金属表面処理皮膜及びその形成方法]
本発明に係る金属表面処理皮膜は、上記した水系金属表面処理剤で形成された皮膜である。その形成方法は、水系金属表面処理剤を金属材料の表面に塗布する工程(塗布工程)と、その塗布工程の後に水洗することなく乾燥して金属表面処理皮膜を形成する工程(皮膜形成工程)とを有する。なお、金属材料を予め脱脂又は酸洗等する前処理工程を有していても構わない。
【0087】
(塗布工程)
塗布工程は、水系金属表面処理剤を金属材料の表面に塗布する工程である。この塗布工程での塗布方法は特に限定されず、例えば、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、カーテンコート、スピンコート、これらの組み合わせ等の方法で塗布することができる。
【0088】
この塗布工程では、水系金属表面処理剤の使用条件は特に限定されない。例えば、水系金属表面処理剤を塗布する際の処理剤及び金属材料の温度は、10℃以上、90℃以下であることが好ましく、20℃以上、60℃以下であることがより好ましい。温度が60℃以下の場合は、無駄なエネルギーの使用を抑制することができるので、経済的な観点から好ましい。また、塗布時間は適宜設定することができる。
【0089】
(乾燥工程)
乾燥工程は、塗布工程の後に水洗することなく乾燥する工程である。この工程によって、金属表面処理皮膜を形成することができる。乾燥条件としては、最高到達温度が50℃以上、250℃以下の範囲であることが好ましい。最高到達温度が50℃未満の場合は、水系金属表面処理剤中の溶媒の蒸発に非常に長い時間を要してしまうことがあり、実用上好ましくない。一方、最高到達温度が250℃を超えると、エネルギーを無駄に使用してしまうことになり、経済的な観点から好ましくない。乾燥方法は特定されず、バッチ式の乾燥炉、連続式の熱風循環型乾燥炉、コンベアー式の熱風乾燥炉、又は、IHヒーターを用いた電磁誘導加熱炉等を利用した乾燥方法を適応できる。乾燥方法で設定する風量や風速等は任意に設定される。
【0090】
(金属表面処理皮膜)
金属表面処理皮膜は、上記した形成方法で得ることができる。その金属表面処理皮膜の皮膜量は、5mg/m
2以上、5000mg/m
2以下が好ましい。皮膜量が5mg/m
2未満では、金属表面処理皮膜のバリヤー性が低くなり、金属表面処理皮膜とラミネートフィルムとの間の耐久密着性、及び金属材料の耐食性が不十分になることがある。一方、皮膜量が5000mg/m
2を超えると、金属表面処理皮膜にクラックが入ってしまうことがあり、金属表面処理皮膜とラミネートフィルムとの間の初期密着性及び耐久密着性、及び金属材料の耐食性が不十分になることがある。より好ましい皮膜量は、10mg/m
2以上、1000mg/m
2以下である。
【0091】
得られた金属表面処理皮膜中には鉄族化合物(A)が含まれている。なかでも水酸化物又はオキシ水酸化物が含まれていることが好ましい。この鉄族化合物(A)の存在の有無は、得られた金属表面処理皮膜付き金属材料について薄膜X線回折法により確認可能である。具体的には、金属表面処理皮膜を測定サンプルとして採取し、その測定サンプルを薄膜X線回折分析し(PANalytical製のXpert−MPD、広角法、管電圧−電流:45kV−40mA、スキャン速度:0.025°/秒)、得られた回折パターンから鉄族化合物(A)の有無を判断することができる。
【0092】
金属表面処理皮膜に含まれる鉄族化合物(A)の平均粒径は、1nm以上、500nm以下の範囲内であることが好ましい。平均粒径が1nm未満の場合は、結晶サイズが小さいために、結晶性が低く、場合によってはアモルファス状態で存在してしまう可能性がある。そして、結果として耐酸性が低くなり、酸性液体に接触する環境下での金属表面処理皮膜とラミネートフィルムとの間の耐久密着性が低下してしまうことがある。一方、平均粒径が500nmを超えると、成膜後の金属表面処理皮膜中で耐酸性のある鉄族化合物(A)の存在しない部分の体積率が増加するため、特に酸性液体に接触する環境下での金属表面処理皮膜とラミネートフィルムとの間の耐久密着性が低下してしまうことがある。好ましい平均粒径は、1nm以上、100nm以下の範囲内である。この平均粒径は、金属表面処理皮膜の表面又は断面を透過型電子顕微鏡(TEM)により測定することができる。
【0093】
こうして得られた金属表面処理皮膜は、金属材料とラミネートフィルムとの間に設けられて、そのラミネートフィルムの密着性を向上させることができるとともに、金属材料の耐食性を向上させることができる。
【0094】
[金属表面処理皮膜付き金属材料]
本発明に係る金属表面処理皮膜付き金属材料10は、
図1に示すように、金属材料1と、その表面に設けられた上記金属表面処理皮膜2とを有する。この金属材料10では、通常、その金属表面処理皮膜2上に設けられたラミネートフィルム3をさらに有する。なお、ラミネートフィルム3は任意であり、ラミネートフィルム3がラミネートされるまでの間は、ラミネートフィルム3が無くてもよい。こうした金属材料10は、ラミネートフィルム3との密着性に優れ、耐食性に優れている。
【0095】
ラミネートフィルム3は、接着性、ガスバリアー性、導電性又は意匠性等を考慮し、用途に応じて任意に選択され、特に限定されるものではない。ラミネートフィルム3の材料としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等を挙げることができる。ラミネートフィルムは、これらの樹脂材料からなるフィルムを用い、金属表面処理皮膜2上にラミネートされる。
【実施例】
【0096】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳しく説明する。本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0097】
[金属基材]
・「Al」…A1100P(純アルミニウム、JIS H 4000:1999)、厚さ0.3mm
・「ADC」…ADC12(Al−Si−Cu系のアルミニウム合金、JIS H 5302:2006)、厚さ2.0mm
・「Cu」…C1020P(無酸素銅板、JIS H−3100)、厚さ0.3mm
・「Ni」…純ニッケル板(純度99質量%以上)、厚さ0.3mm
・「SUS」…SUS304板(オーステナイト系ステンレス)、厚さ0.3mm
・「EG」…電気亜鉛めっき鋼板(厚さ0.8mm、亜鉛めっき厚20μm)
【0098】
[1.水系金属表面処理剤の作製]
溶媒を水として、下記に示す鉄族化合物(A)と、必要に応じて含有していてもよい無機化合物(B)及び水系樹脂(C)とを組み合わせ、さらにアンモニア又は酢酸を用いてpH調整を行って、表1〜表3に示す実施例1〜48の水系金属表面処理剤と比較例1〜18の水系金属表面処理剤とを準備した。
【0099】
<鉄族化合物>
用いた鉄族化合物を以下に示す。なお、下記の鉄族化合物の平均粒径は、大塚電子株式会社製のダイナミック光散乱光度計(DLC‐6500)を用いて測定した値である。
【0100】
A1;水酸化ニッケル(II)ゾル(固形分10質量%、平均粒径50nm)
A2;オキシ水酸化鉄ゾル(固形分10質量%、平均粒径10nm)
A3;オキシ水酸化コバルトゾル(固形分5質量%、平均粒径20nm)
A4;水酸化鉄ゾル(III)ゾル(固形分5質量%、平均粒径30nm)
A5;オキシ水酸化ニッケルゾル(固形分10質量%、平均粒径60nm)
A6;水酸化コバルト(II)ゾル(固形分30質量%、平均粒径20nm)
A7;硝酸鉄(III)9水和物
A8;酢酸ニッケル(II)4水和物
A9;四三酸化鉄ゾル(固形分10質量%、平均粒径200nm)
A10;酸化コバルト(II)ゾル(固形分20質量%、平均粒径100nm)
A11;水酸化銅(II)ゾル(固形分20質量%、平均粒径20nm)
A12;水酸化ジルコニウムゾル(固形分15質量%、平均粒径30nm)
A13;オキシ水酸化鉄ゾル(固形分10質量%、平均粒径1μm)
A14;水酸化ニッケル(II)ゾル(固形分10質量%、平均粒径700nm)
【0101】
<リン化合物又はフッ素化合物(B)>
B1;リン酸アンモニウム[(NH
4)
3PO
4]
B2;トリポリリン酸ナトリウム[Na
4P
2O
7]
B3;ヘキサメタリン酸ナトリウム[(NaPO
3)
6](P
2O
7として65〜70%)
B4;フッ化アンモニウム[NH
4F]
B5;酸性フッ化ナトリウム[NaFHF]
【0102】
<水系樹脂(C)>
(C1;ポリエステル樹脂)
エチレングリコール(90mol%)及びトリメチロールプロパン(10mol%)からなるアルコール成分と、イソフタル酸(40mol%)、テレフタル酸(41mol%)、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム(2mol%)及び無水トリメリット酸(17mol%)からなる酸成分との縮合反応によるアニオン性のポリエステル樹脂(固形分(NVC.)30%)を次の方法で合成した。クライゼン管及び空気冷却器を取り付けた1000mLの丸底フラスコに、1molの全酸成分と2molの全アルコール成分と触媒(酢酸カルシウム0.25g、N−ブチルチタネート0.1g)とを入れ、系内を窒素置換し、180℃に加熱して内容物を融解させた。そして、浴温を200℃に上げ、約2時間加熱撹拌し、エステル化又はエステル交換反応を行わせた。次に、浴温を260℃に上げ、約15分後に系内を0.5mmHgまで減圧し、約3時間反応(重縮合反応)させた。反応終了後、窒素導入下で放冷し、内容物を取り出した。取り出した内容物に最終pHが6〜7になる適当量のアンモニア水(水は固形分25%になる量)を加え、オートクレーブ中で100℃で2時間加熱撹拌し、水系エマルジョンのポリエステル樹脂を得た。
【0103】
(C2;ウレタン樹脂)
ポリエステルポリオール(アジピン酸/3−メチル−1,5−ペンタンジオール、数平均分子量1000、官能基数2.0、水酸基価112.2)100質量部、トリメチロールプロパン3質量部、ジメチロールプロピオン酸25質量部、イソホロンジイソシアネート85質量部をMEK中で反応させて、ウレタンプレポリマーを得た。これにトリエチルアミン9.4質量部を混合し、水に投入し、前記ウレタンプレポリマーを水に分散させ、エチレンジアミンで伸長させて、分散体を得た。メチルエチルケトンを留去して、不揮発分を30質量%含むウレタン樹脂の水性分散体を得た。得られた水性分散体中に分散したカルボキシル基含有ポリウレタンの酸価は49(KOHmg/g)であった。
【0104】
(C3;ポリオレフィン樹脂)
4つ口フラスコに、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体(プロピレン成分68モル%、エチレン成分8モル%、ブテン成分24モル%、重量平均分子量60,000)100質量部、無水マレイン酸10質量部、メタクリル酸メチル10質量部、及びジクミルパーオキサイド1質量部を投入し、180℃にて2時間撹拌し、反応させた。重量平均分子量が45,000、無水マレイン酸のグラフト重量が8.4質量%の変性ポリオレフィン樹脂組成物を得た。その後、4つ口フラスコに、前記変性ポリオレフィン100質量部、ジメチルエタノールアミン10質量部、及びポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩10質量部を投入し、撹拌羽根で100℃、2時間均一に撹拌し、溶融させた後、90℃のイオン交換水300質量部を加えてさらに1時間撹拌し、pH8.0の水性ポリオレフィン樹脂を得た。
【0105】
(C4;エポキシ樹脂1)
オルトリン酸85g及びプロピレングリコールモノメチルエーテル140gを仕込み、エポキシ当量250のビスフェノールA型エポキシ樹脂425gを徐々に添加し、80℃で2時間反応させた。反応終了後、50℃以下で、29質量%アンモニア水溶液150gを徐々に添加し、さらに水1150gを添加して、酸価35、固形分濃度25質量%のリン酸変性エポキシ樹脂のアンモニア中和品を得た。
【0106】
(C5;エポキシ樹脂2)
窒素ガス導入管、温度計、分水器及び撹拌装置を備えた反応器中で、エポキシ当量188を有するビスフェノールAをベースとするエポキシ樹脂(ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル)6150質量部をビスフェノールA1400質量部、ドデシルフェノール335質量部、p−クレゾール470質量部及びキシレン441質量部と共に窒素雰囲気下で125℃に加熱し、10分間反応させた。次に、130℃に加熱し、かつエポキシ重合触媒としてN,N’−ジメチルベンジルアミン23質量部を添加した。エポキシ当量が880に達するまでこの温度に維持した。添加剤ポリエーテル(BYK Chemie社製、商品名:K−2000)90質量部を添加し、100℃に維持した。30分後にブチルアルコール211質量部及びイソブタノール1210質量部を添加した。
【0107】
この直後、ジエチレントリアミンとメチルイソブチルケトンを混合し、その後、130℃〜150℃で加熱還流を行って生成水を除去し、150℃で生成水の留出が停止した時点で冷却して得られたケチミン467質量部とメチルエタノールアミン450質量部の混合物を反応器に添加し、100℃に温度調節した。さらに30分後に温度を105℃に上げ、かつN,N’−ジメチルアミノプロピルアミン80質量部を添加した。アミン添加の75分後、プロピレングリコール化合物(BASF社製、商品名:Plastilit 3060)903質量部を添加し、プロピレングリコールフェニルエーテル725質量部で希釈して冷却し、アミノ基含有エポキシ樹脂を作製した。その後、アミノ基含有エポキシ樹脂87.5質量部、さらに10%酢酸13質量部を配合して均一に撹拌した後、脱イオン水193.5質量部を強く撹拌しながら約15分間を要して滴下して、エポキシ樹脂のエマルジョンを得た。
【0108】
(C6;フェノール樹脂)
4つ口フラスコに、フェノール100質量部、37%ホルムアルデヒド146.6質量部、水酸化バリウム7質量部、及び水酸化リチウム1質量部を仕込み、80℃で水溶性が6倍になるまで反応させ、その後、尿素13質量部を仕込み、粘度2Pa・sまで真空脱水を行った。その後、50%乳酸及び純水を添加して、pH7.4、粘度1Pa・sのレゾール型フェノール樹脂を得た。
【0109】
(C7;アクリル樹脂1)
アクリルアミドとヒドロキシアルキル基含有アクリル酸エステルとの共重合体(不揮発分濃度:15.0質量%、粘度:3mPa・s、pH=3.5、Tg:130℃、アニオン)を用いた。
【0110】
(C8;アクリル樹脂2)
アクリルアミド重合体の水溶液(不揮発分濃度:22.0質量%、粘度:90mPa・s)を用いた。
【0111】
(C9;ポリビニルアルコール)
鹸化度:99%、粘度:12mPa・S、アセトアセチル化度:9.8%、平均分子量:50000のアセトアセチル化ポリビニルアルコールを用いた。
【0112】
(C10;ポリアミドイミド樹脂)
無水トリメリット酸1106.2g、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート1455.8g、N−メチル−2−ピロリドン2562.0gを、温度計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに入れ、乾燥させた窒素気流中で撹拌しながら約2時間かけて徐々に昇温して130℃まで上げた。反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら130℃を保持し、このまま約6時間加熱を続けた後に反応を停止させ、ポリアミドイミド樹脂溶液を得た。このポリアミドイミド樹脂溶液の不揮発分(200℃、2時間)は約50質量%で、粘度(30℃)は約85.0Pa・sであった。また、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は約17,000で、カルボキシル基及び酸無水物基を開環させたカルボキシル基を合わせた酸価は約40であった。このポリアミドイミド樹脂溶液2,700gを、温度計、撹拌機、冷却管を備えたフラスコに入れ、乾燥させた窒素気流中で撹拌しながら徐々に昇温して50℃まで上げた。50℃に達したところでトリエチルアミンを447.1g(4当量)添加し、50℃に保ちながら十分に撹拌した後、撹拌しながら徐々にイオン交換水を加えた。最終的にイオン交換水が1348.8g(30質量%)となるまで加えて、透明で均一な耐熱性のポリアミドイミド樹脂を得た。
【0113】
(C11;天然多糖類)
下記構造式のグリセリル化キトサン(数平均分子量:1〜10万、グリセリル化:1.1)を用いた。
【0114】
【化1】
【0115】
[2.供試材の作製]
表1〜表3に示した実施例1〜48及び比較例1〜18に記載した金属基材をファインクリーナー359E(日本パーカライジング株式会社製のアルカリ脱脂剤)の2%水溶液で50℃、10秒間スプレー脱脂した後、水洗して表面を清浄にした。続いて、金属基材の表面の水分を蒸発させるために、80℃で1分間、加熱乾燥した。脱脂洗浄した金属基材の表面に、表1に示す実施例1〜48及び比較例1〜18の水系金属表面処理剤を#8SUSマイヤーバーを用い、バーコートによって塗布し、熱風循環式乾燥炉内で180℃、1分間乾燥し、金属基材の表面に金属表面処理皮膜を形成した。また、比較例19〜24に記載の金属基材を上記のように脱脂、水洗の後に加熱乾燥したものも試験に用いた。表1〜表3は、準備した水系金属表面処理剤と、得られた金属表面処理皮膜の成膜量とをまとめたものである。
【0116】
【表1】
【0117】
【表2】
【0118】
【表3】
【0119】
[3.鉄族化合物(A)の平均粒径測定]
実施例2、実施例22、実施例39及び実施例40で得られた金属表面処理皮膜付き金属材料について、透過型電子顕微鏡(TEM)で断面観察を行い、鉄族化合物(A)の平均粒径を見積もった。鉄族化合物(A)の平均粒径は、各々、約50nm、10nm、1000nm、700nmであった。
【0120】
[4.ラミネート性能評価]
その後、以下に示すラミネート法により、金属基材の金属表面処理皮膜上にラミネートフィルムを貼り合わせた。
【0121】
(ラミネート1)
金属基材の金属表面処理皮膜が形成された面に、片面をコロナ処理したポリエステルフィルム(膜厚16μm)を250℃、面圧が5MPaで10秒間熱圧着することにより、ポリエステルフィルムを積層した金属表面処理皮膜付き金属材料を製造した。
【0122】
(ラミネート2)
金属基材の金属表面処理皮膜が形成された面に、酸変性ポリプロピレンのディスパージョンをロールコーティングした後、熱風循環式乾燥炉内で200℃、1分間乾燥することにより、厚さ5μmの接着層を形成した。その後、その接着層と、厚さ30μmのポリプロピレンフィルムとを、250℃、0.1MPaで10秒間熱圧着することにより、ポリプロピレンフィルムを積層した金属表面処理皮膜付き金属材料を製造した。
【0123】
<4.1.初期密着性>
ラミネート1によりラミネートフィルムを設けた金属表面処理皮膜付き金属材料と、ラミネート2によりラミネートフィルムを設けた金属表面処理皮膜付き金属材料について、エリクセン試験機により5mm押し出した後に碁盤目テープ剥離試験(1mmピッチ)を実施し、ラミネートフィルムの初期密着性を下記のランク1〜3で評価した。
【0124】
3:ラミネートフィルムの剥離が全くない。
2:ラミネートフィルムの一部が剥離した。
1:ラミネートフィルムが全面剥離した。
【0125】
<4.2.耐久密着性>
ラミネート1によりラミネートフィルムを設けた金属表面処理皮膜付き金属材料について、プレッシャクッカー試験を実施した。条件は、125℃、2気圧×1時間であり、市販の滅菌装置を用いた。その後乾燥し、フィルム面をピンセットの先で引っ掻き、外観を目視で観察し、下記のランク1〜4で評価した。
【0126】
4:ラミネートフィルムの剥離が全く起こらない。
3:ラミネートフィルムは剥離するが、抵抗が非常に高い。
2:ラミネートフィルムは剥離するが、抵抗が高い。
1:ラミネートフィルムは非常に弱い力で剥離する、又はラミネートフィルムが既に剥離している。
【0127】
<4.3.耐食性>
ラミネート2によりラミネートフィルムを設けた金属表面処理皮膜付き金属材料について、JIS H 8502に準拠し、CASS試験を24時間実施した後の外観を目視で観察し、下記のランク1〜4で評価した。
【0128】
4:全く外観に変化なし。
3:ラミネートフィルムの剥離(浮き)及びラミネートフィルム下の腐食の発生面積率が5%未満。
2:ラミネートフィルムの剥離(浮き)及びラミネートフィルム下の腐食の発生面積率が20%未満。
1:ラミネートフィルムの剥離(浮き)及びラミネートフィルム下の腐食の発生面積率が20%以上。
【0129】
<4.4.耐内容物性1>
ラミネート2によりポリプロピレンフィルムをラミネートした金属表面処理皮膜付き金属材料について、オートクレーブ容器を用い、食酢/油/ケチャップ=1/1/1(質量比)の液中で、135℃×30分間浸漬した。その後、さらに50℃にて2週間静置させ、水洗、乾燥の後にフィルム面をピンセットの先で引っ掻き、外観を目視で観察し、下記のランク1〜4で評価した。
【0130】
4:ラミネートフィルムの剥離が全く起こらない。
3:ラミネートフィルムは剥離するが、抵抗が非常に高い。
2:ラミネートフィルムは剥離するが、抵抗が高い。
1:ラミネートフィルムは非常に弱い力で剥離する、又はラミネートフィルムが既に剥離している。
【0131】
<4.5.耐内容物性2>
ラミネート1によりポリエステルフィルムをラミネートした金属表面処理皮膜付き金属材料について、チャーミーマイルドR(ライオン株式会社製、クエン酸、界面活性剤が主成分の弱酸性洗剤)の原液中に50℃×8週間浸漬した。その後、水洗、乾燥の後にフィルム面をピンセットの先で引っ掻き、外観を目視で観察し、下記のランク1〜4で評価した。
【0132】
4:ラミネートフィルムの剥離が全く起こらない。
3:ラミネートフィルムは剥離するが、抵抗が非常に高い。
2:ラミネートフィルムは剥離するが、抵抗が高い。
1:ラミネートフィルムは非常に弱い力で剥離する、又はラミネートフィルムが既に剥離している。
【0133】
<4.6.耐内容物性3>
ラミネート2によりポリプロピレンフィルムをラミネートした金属表面処理皮膜付き金属材料について、キシダ化学株式会社製の電解液(商品名:LBG−00015、電解質:1M−LiPF
6、溶媒:EC/DMC/DEC=1/1/1(容量%))中に浸漬した後、60℃の恒温槽中に7日間投入した。その後、供試材を取り出し、イオン交換水中に1分間浸漬しながら揺動して洗浄した後、熱風循環式乾燥炉内で100℃、10分間乾燥した。その後、フィルム面をピンセットの先で引っ掻き、外観を目視で観察し、下記のランク1〜4で評価した。
【0134】
4:ラミネートフィルムの剥離が全く起こらない。
3:ラミネートフィルムは剥離するが、抵抗が非常に高い。
2:ラミネートフィルムは剥離するが、抵抗が高い。
1:ラミネートフィルムは非常に弱い力で剥離する、又はラミネートフィルムが既に剥離している。
【0135】
[結果]
結果を表4及び表5に示す。
【0136】
【表4】
【0137】
【表5】
【0138】
表4に示すように、実施例1〜48で得られた金属表面処理皮膜付き金属材料は、ラミネートフィルムを形成した後の初期密着性、耐久密着性、耐食性及び耐内容物性に優れることが確認された。一方、表5に示すように、比較例1〜24は、実施例に比べて、初期密着性、耐久密着性、耐食性及び耐内容物性に劣っていた。