(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態である車両用制御装置10を示す概略図である。
図1に示すように、車両用制御装置10は、動力源としてエンジン11およびモータジェネレータ(電動モータ)12を備えたパワーユニット13を有している。パワーユニット13には無段変速機14が設けられており、無段変速機14にはプライマリプーリ15およびセカンダリプーリ16が設けられている。プライマリプーリ15の一方側には、入力クラッチ17およびトルクコンバータ18を介してエンジン11が連結されている。一方、プライマリプーリ15の他方側には、ロータ軸19を介してモータジェネレータ12が連結されている。また、セカンダリプーリ16には、出力クラッチ20を介して駆動輪出力軸21が連結されている。駆動輪出力軸21には、ディファレンシャル機構22を介して駆動輪23が連結されている。また、エンジン11のクランク軸24には、始動モータと発電機との機能を兼ね備えたISG25が駆動ベルト26を介して連結されている。なお、出力クラッチ20は所謂ヒューズクラッチとして機能しており、駆動輪23から無段変速機14に向けて過度なトルクが伝達される状況においては、出力クラッチ20をスリップさせて無段変速機14を保護している。
【0010】
無段変速機14は、モータジェネレータ12のロータ軸19に連結されるプライマリ軸30と、これに平行となるセカンダリ軸31とを有している。プライマリ軸30にはプライマリプーリ15が設けられており、プライマリプーリ15の背面側にはプライマリ室32が区画されている。また、セカンダリ軸31にはセカンダリプーリ16が設けられており、セカンダリプーリ16の背面側にはセカンダリ室33が区画されている。さらに、プライマリプーリ15およびセカンダリプーリ16には駆動チェーン34が巻き掛けられている。プライマリ室32に供給されるプライマリ圧とセカンダリ室33に供給されるセカンダリ圧とを調整することにより、プーリ溝幅を変化させて駆動チェーン34の巻き掛け径を変化させることが可能となる。これにより、プライマリ軸30からセカンダリ軸31に対する無段変速が可能となる。
【0011】
エンジン11と無段変速機14との間、つまりエンジン11とモータジェネレータ12との間には、解放状態と締結状態とに制御される入力クラッチ17が設けられている。入力クラッチ17は、トルクコンバータ18のタービン軸35に連結されるクラッチハブ36と、プライマリ軸30に連結されるクラッチドラム37とを備えている。クラッチハブ36には摩擦板38が取り付けられており、クラッチドラム37には摩擦板38に対向する摩擦板39が取り付けられている。また、クラッチドラム37にはピストン40が組み込まれており、ピストン40の背面側には締結油室41が区画されている。締結油室41に作動油を供給することにより、ピストン40を締結方向に移動させて摩擦板38,39を互いに押し付けることができ、入力クラッチ17を締結状態に切り換えることが可能となる。一方、締結油室41から作動油を排出することにより、摩擦板38,39の押し付けを解除することができ、入力クラッチ17を解放状態に切り換えることが可能となる。
【0012】
入力クラッチ17を解放状態に制御することにより、プライマリプーリ15とエンジン11とを切り離すことが可能となる。これにより、走行モードをモータ走行モードに設定することができ、エンジン11を停止させてモータジェネレータ12の動力のみを駆動輪23に伝達することが可能となる。一方、入力クラッチ17を締結状態に制御することにより、プライマリプーリ15とエンジン11とを接続することが可能となる。これにより、走行モードをエンジン走行モードとしてのパラレル走行モードに設定することができ、モータジェネレータ12およびエンジン11の動力を駆動輪23に伝達することが可能となる。なお、エンジン走行モードとしては、モータジェネレータ12とエンジン11との双方を駆動するパラレル走行モードに限られることはなく、エンジン動力を駆動輪23に伝達する走行モードであれば如何なる走行モードであっても良い。例えば、エンジン走行モードとして、モータジェネレータ12を空転させ、エンジン動力のみを駆動輪23に伝達するエンジン走行モードを採用しても良い。
【0013】
エンジン11と入力クラッチ17との間にはトルクコンバータ18が設けられている。トルクコンバータ18は、クランク軸24にフロントカバー50を介して連結されるポンプインペラ51と、このポンプインペラ51に対向するとともにタービン軸35に連結されるタービンランナ52とを備えている。また、トルクコンバータ18には、クラッチプレート53を備えたロックアップクラッチ54が組み込まれている。クラッチプレート53は、タービン軸35に連結されるタービンハブ55に対して軸方向に移動自在に設けられている。クラッチプレート53のタービンランナ52側にはアプライ室56が区画されており、クラッチプレート53のフロントカバー50側にはリリース室57が区画されている。アプライ室56に作動油を供給してリリース室57から作動油を排出することにより、ロックアップクラッチ54を締結状態に制御することが可能となる。一方、リリース室57に作動油を供給してアプライ室56から作動油を排出することにより、ロックアップクラッチ54を解放状態に制御することが可能となる。
【0014】
ここで、
図2はロックアップクラッチ54の油圧制御系60の一例を示す概略図である。
図2において、
図1に示す部材と同一の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図2に示すように、ロックアップクラッチ54には、デューティ電磁弁61によって制御されるロックアップ制御弁62が接続される。ロックアップ制御弁62には、アプライ油路63およびリリース油路64が接続されている。アプライ油路63は、ロックアップクラッチ54のアプライ室56に接続されており、リリース油路64は、ロックアップクラッチ54のリリース室57に接続されている。また、ロックアップ制御弁62には、アプライ室56やリリース室57に対して調圧された作動油を供給する供給油路65a,65bが接続されている。さらに、ロックアップ制御弁62には、アプライ室56やリリース室57から排出された作動油をオイルパン等に案内する排出油路66が接続されている。
【0015】
ロックアップ制御弁62には、スプール弁軸67が移動自在に設けられるとともに、スプール弁軸67の一端側にはバネ部材68が設けられ、スプール弁軸67の他端側にはパイロット圧室69が設けられている。パイロット圧室69に供給されるパイロット圧を調整することにより、スプール弁軸67を軸方向にスライドさせることが可能となる。スプール弁軸67を一端側の締結位置にスライドさせることにより、アプライ油路63と供給油路65aとを連通させることが可能となり、リリース油路64と排出油路66とを連通させることが可能となる。これにより、アプライ室56に作動油を供給してリリース室57から作動油を排出することができ、ロックアップクラッチ54を締結状態に制御することが可能となる。一方、スプール弁軸67を他端側の解放位置にスライドさせることにより、アプライ油路63と排出油路66とを連通させることが可能となり、リリース油路64と供給油路65bとを連通させることが可能となる。これにより、リリース室57に作動油を供給してアプライ室56から作動油を排出することができ、ロックアップクラッチ54を解放状態に制御することが可能となる。また、スプール弁軸67の停止位置を調整することにより、アプライ油路63やリリース油路64に対する供給油路や排出油路66の連通面積を調整することができ、ロックアップクラッチ54のトルク容量つまり締結力を自在に調整することが可能となる。
【0016】
ロックアップ制御弁62のパイロット圧室69には、パイロット圧路70を介してデューティ電磁弁61が接続されている。デューティ電磁弁61は、後述する制御ユニット81によって制御されるデューティソレノイドバルブである。例えば、デューティ電磁弁61を最小のデューティ比(0%)で制御した場合には、パイロット圧が最小値に調圧されてスプール弁軸67が解放位置に移動し、ロックアップクラッチ54が解放状態に制御される。一方、デューティ電磁弁61を最大のデューティ比(100%)で制御した場合には、パイロット圧が最大値に調圧されてスプール弁軸67が締結位置に移動し、ロックアップクラッチ54が締結状態に制御される。また、デューティ電磁弁61に対するデューティ比を0%〜100%の間で制御することにより、パイロット圧を最小値〜最大値の間で制御することができ、スプール弁軸67を一端側の締結位置と他端側の解放位置との間で停止させることが可能となる。すなわち、デューティ電磁弁61に対するデューティ比を0%〜100%の間で制御することにより、ロックアップクラッチ54の締結力を自在に調整することが可能となっている。このように、デューティ電磁弁61によって、ロックアップクラッチ54の作動油を給排制御することにより、ロックアップクラッチ54の締結力を調整することが可能となる。なお、前述の説明では、デューティ比を上昇させることでロックアップクラッチ54の締結力を上昇させているが、これに限られることはなく、デューティ比を上昇させることでロックアップクラッチ54の締結力を低下させる構成であっても良い。
【0017】
続いて、無段変速機14、トルクコンバータ18、入力クラッチ17、出力クラッチ20等に対する作動油の供給について説明する。
図1に示すように、トルクコンバータ18等に対して作動油を供給するため、パワーユニット13には、プライマリ軸30等によって回転駆動されるメカポンプ71と、モータ72によって回転駆動される電動ポンプ73とが設けられている。また、パワーユニット13には、作動油の供給先や圧力を制御するため、複数の電磁バルブや油路によって構成されるバルブユニット74が設けられている。
【0018】
メカポンプ71は、一方向クラッチ75を備えたチェーン機構76を介してプライマリ軸30に連結されている。一方向クラッチ75は、正転方向に回転するプライマリ軸30からメカポンプ71に動力を伝達する一方、これとは逆向きの動力伝達を遮断している。さらに、メカポンプ71は、一方向クラッチ77を備えたチェーン機構78を介してトルクコンバータ18に固定される中空軸79に連結されている。一方向クラッチ77は、正転方向に回転する中空軸79からメカポンプ71に動力を伝達する一方、これとは逆向きの動力伝達を遮断している。すなわち、プライマリ軸30が中空軸79よりも速く回転する場合には、モータジェネレータ12側のプライマリ軸30によってメカポンプ71が駆動される一方、中空軸79がプライマリ軸30よりも速く回転する場合には、エンジン11側の中空軸79によってメカポンプ71が駆動される。なお、プライマリ軸30の正転方向とは、前進走行時におけるプライマリ軸30の回転方向である。また、中空軸79の正転方向とは、エンジン11駆動時におけるクランク軸24の回転方向である。
【0019】
このように、メカポンプ71は、モータジェネレータ12側のプライマリ軸30によって駆動される構造を有するとともに、エンジン11側の中空軸79によって駆動される構造を有している。これにより、パラレル走行モードにおいては、エンジン11によってメカポンプ71を駆動することができ、メカポンプ71からバルブユニット74に作動油を供給することが可能となる。また、モータ走行モードにおいても、プライマリ軸30が回転する車両走行時には、プライマリ軸30によってメカポンプ71を駆動することが可能となる。また、モータ走行モードにおいては、車速低下に伴ってプライマリ軸30の回転速度が所定の閾値を下回ると、電動ポンプ73を駆動させてメカポンプ71の吐出圧力の低下を補っている。また、モータ走行モードでの車両停止時においては、電動ポンプ73の駆動状態が継続されることになるが、車速が上昇してプライマリ軸30の回転速度が所定の閾値を上回った場合には、メカポンプ71の吐出圧力が回復することから電動ポンプ73は停止される。
【0020】
続いて、モータ走行モードからパラレル走行モードへの切換制御について説明する。ここで、
図3は車両用制御装置10の構成を示す概略図である。
図3において、
図1に示す部材と同一の部材については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図3に示すように、車両用制御装置10は、パワーユニット13の制御系80を備えている。また、車両用制御装置10には、第1モード設定部、第2モード設定部、ロックアップ制御部および入力クラッチ制御部として機能する制御ユニット81が設けられている。制御ユニット81には、エンジン11の回転速度(クランク軸24の回転速度,以下、エンジン回転数Neと記載する)を検出するエンジン回転センサ82、モータジェネレータ12の回転速度を検出するモータ回転センサ83が接続されている。制御ユニット81には、タービン軸35の回転速度(以下、タービン回転数Ntと記載する)を検出するタービン回転センサ84、プライマリ軸30の回転速度(以下、プライマリ回転数Npと記載する)を検出するプライマリ回転センサ85、セカンダリ軸31の回転速度を検出するセカンダリ回転センサ86が接続されている。制御ユニット81には、運転手による図示しないセレクトレバーの操作状況を検出するインヒビタスイッチ87、運転手による図示しないアクセルペダルの操作状況を検出するアクセルセンサ88、運転手による図示しないブレーキペダルの操作状況を検出するブレーキセンサ89が接続されている。
【0021】
制御ユニット81は、エンジン11を制御する図示しないスロットルバルブやインジェクタ等に接続され、制御ユニット81からの制御信号によってエンジン回転数やエンジントルクが制御される。また、制御ユニット81は、モータジェネレータ12を制御するインバータ90に接続され、制御ユニット81からの制御信号によってモータ回転数やモータトルクが制御される。さらに、制御ユニット81は、ロックアップクラッチ54、入力クラッチ17、出力クラッチ20等を制御するバルブユニット74に接続され、制御ユニット81からの制御信号によって各クラッチ17,20,54が締結状態や解放状態に制御される。また、制御ユニット81は、アクセル開度や車速等に応じて設定される要求駆動力に基づいて走行モードを設定している。例えば、要求駆動力が小さい場合には、走行モードとしてモータ走行モードが設定される一方、要求駆動力が大きい場合には、走行モードとしてパラレル走行モードが設定される。なお、制御ユニット81は、制御信号等を演算するCPU、制御プログラム、演算式およびマップデータ等を格納するROM、一時的にデータを格納するRAM等によって構成される。
【0022】
続いて、モータ走行モードからパラレル走行モードへの切換制御の実行手順をタイミングチャートに沿って説明する。
図4はパラレル走行モードへの切換制御の実行手順の一例を示すタイミングチャートである。
図5は
図4に記載されるエンジン回転数Ne等の推移を拡大して示す部分拡大図である。なお、
図4および
図5においては、図面の理解を容易にするため、各回転数Nt,Np,Neが重なる場合であっても、各回転数Nt,Np,Neを若干ずらして記載している。
図4および
図5においては、ロックアップクラッチ54をL/Uと省略して記載している。
【0023】
前述したように、モータ走行モードが設定される場合には、入力クラッチ17が解放され、エンジン11が停止され、モータジェネレータ12が駆動される。一方、パラレル走行モードが設定される場合には、入力クラッチ17が締結され、エンジン11が駆動され、モータジェネレータ12が駆動される。すなわち、アクセルペダルの踏み込み操作等に伴って、モータ走行モードからパラレル走行モードに切り換える際には、エンジン11が停止状態から始動されるとともに、入力クラッチ17が解放状態から締結される。また、モータ走行モードからパラレル走行モードに切り換える際には、入力クラッチ17の締結後におけるエンジン回転数Neの過度な吹け上がりを防止するため、ロックアップクラッチ54を解放状態から締結状態に制御している。
【0024】
以下、走行モードの切換制御過程におけるロックアップクラッチ54の締結制御について説明する。
図4に示すように、モータ走行モードにおいては、ロックアップクラッチ54の制御フェーズがフェーズ1(Ph1)に設定される。
図4に符号X1で示すように、フェーズ1においては、デューティ電磁弁61が所定の目標値D1でデューティ制御される。目標値D1とは、最小値(例えば0%)と最大値(例えば100%)との間に設定されるデューティ比であり、ロックアップクラッチ54を待機状態に制御するためのデューティ比である。このように、デューティ電磁弁61を目標値D1で制御することにより、クラッチプレート53がフロントカバー50に対して接触を開始する位置で保持される。すなわち、モータ走行モードにおいては、目標デューティ比を最小値(0%)に設定してロックアップクラッチ54を解放状態に制御するのではなく、目標デューティ比を最小値(0%)よりも大きな目標値D1に設定してロックアップクラッチ54を待機状態に制御している。これにより、ロックアップクラッチ54を締結制御する際の応答性を高めることが可能となる。なお、モータ走行モードにおいては、エンジン11が停止されるとともに入力クラッチ17が解放されるため、ロックアップクラッチ54を待機状態に制御しても、エンジンストールや振動等を発生させることはない。
【0025】
また、フェーズ1で用いた目標値D1は、ロックアップクラッチ54の制御精度を高めるため、ロックアップクラッチ54の解放制御において学習される。例えば、制御ユニット81は、ロックアップクラッチ54を解放するため、デューティ電磁弁61のデューティ比を徐々に低下させる際に、エンジン回転数Neとタービン回転数Ntとの回転数差を監視している。そして、制御ユニット81は、エンジン回転数Neとタービン回転数Ntとの回転数差が所定値を超えた時点において、デューティ電磁弁61を制御していたデューティ比を目標値D1として更新する。なお、目標値D1を学習させる際には、エンジン11が停止するモータ走行モードでの学習制御を禁止したり、ロックアップクラッチ54が急速に解放される解放時の学習制御を禁止したりすることで学習精度を向上させている。さらに、学習制御によって得られた目標値D1が、ロックアップクラッチ54およびその油圧制御系60の構成等から想定される範囲を外れた場合においては、目標値D1の更新を禁止している。
【0026】
続いて、
図4および
図5に符号X2で示すように、アクセルペダルの踏み込み操作等に応じて再始動ロックアップフラグが設定されると、走行モードをパラレル走行モードに切り換えるため、ロックアップクラッチ54を待機状態に維持したままエンジン11が始動される。エンジン11が始動されると、入力クラッチ17の入力側と出力側との回転速度差、つまりタービン回転数Ntとプライマリ回転数Npとの回転数差ΔN1(ΔN1=Nt−Np)に基づいて、ロックアップクラッチ54の制御状態が設定される。
図4および
図5に符号X3で示すように、エンジン始動によってタービン回転数Ntが上昇し、回転数差ΔN1が所定の閾値αを下回ると(|ΔN1|<α)、制御フェーズがフェーズ2(Ph2)に移行する。フェーズ2においては、回転数差ΔN1が所定の閾値βを下回るまで(|ΔN1|<β)、デューティ電磁弁61に対するデューティ比が徐々に引き上げられる。ここで、
図5に示すように、閾値βは、閾値αよりも小さな0に近い値に設定されている。
【0027】
図4および
図5に符号X4で示すように、エンジン始動後にタービン回転数Ntが上昇して回転数差ΔN1が閾値βを下回ると、入力クラッチ前後の回転速度が同期することから、入力クラッチ17が解放状態から締結状態に切り換えられる。このように、入力クラッチ17が締結されてタービン軸35が拘束されると、ロックアップクラッチ54の負荷が増大してスリップが開始される。そして、ロックアップクラッチ54がスリップすることにより、エンジン回転数Neがタービン回転数Ntから乖離して上昇することになる。また、エンジン始動後に回転数差ΔN1が閾値βを下回ると、前述のように入力クラッチ17が締結されるだけでなく、制御フェーズがフェーズ3(Ph3)に移行する。
図4に示すように、フェーズ3においては、所定の加算値dを加えることでデューティ比を急速に引き上げた後に、デューティ比を徐々に引き上げるようにしている。すなわち、
図4に符号X5で示すように、フェーズ3においては、デューティ比D2での制御によって得られるロックアップクラッチ54の目標締結力に向けて、ロックアップクラッチ54の締結力が所定の第3変化率で急速に引き上げられる。そして、ロックアップクラッチ54が目標締結力に達すると、
図4に符号X6で示すように、第3変化率よりも小さな第1変化率でロックアップクラッチ54の締結力が引き上げられる。
【0028】
フェーズ3における締結力の引き上げは、ロックアップクラッチ54の入力側と出力側との回転速度差、つまりエンジン回転数Neとプライマリ回転数Npとの回転数差ΔN2(ΔN2=Ne−Np)が所定の閾値
(所定値)γに到達するまで継続される。そして、
図4および
図5に符号X7で示すように、回転数差ΔN2が閾値γに到達すると(ΔN2≧γ)、制御フェーズがフェーズ4(Ph4)に移行する。このフェーズ4においては、
図4に符号X8で示すように、第1変化率よりも小さな第2変化率でデューティ比が徐々に引き上げられる。そして、
図4および
図5に符号X9で示すように、エンジン回転数Neとプライマリ回転数Npとが同期し、回転数差ΔN2がほぼ0になると、制御フェーズがフェーズ5(Ph5)に移行する。フェーズ5においては、デューティ比が最大値(100%)まで急速に引き上げることにより、ロックアップクラッチ54が締結状態に制御される。これにより、パラレル走行モードへの切換制御に伴うロックアップクラッチ54の締結制御が完了する。
【0029】
図4および
図5に示すように、フェーズ3からフェーズ4に移行する際の判定基準となる閾値γは、回転数差ΔN2の拡大過程と縮小過程との境界近傍に設定されている。すなわち、
図4に符号X6で示すように、回転数差ΔN2が閾値γに到達する迄は、回転数差ΔN2が拡大する過程であることから、ロックアップクラッチ54の締結力を第1変化率で急速に増加させている。一方、
図4に符号X8で示すように、回転数差ΔN2が閾値γに到達した後には、回転数差ΔN2が縮小する過程であることから、ロックアップクラッチ54の締結力を第1変化率よりも小さな第2変化率で緩やかに増加させている。
【0030】
このように、ロックアップクラッチ54の締結力を増加させることにより、入力クラッチ締結後におけるエンジン回転数Neの過度な上昇を抑制しつつ、ロックアップクラッチ54を滑らかに締結することが可能となる。これにより、エンジン回転数Neの過度な上昇を抑制することができるため、車両の燃費性能や静粛性能を向上させることが可能となる。また、エンジン回転数Neの過度な上昇を抑制することができるため、運転手に違和感を与えることがなく、車両のドライバビリティーを向上させることが可能となる。また、ロックアップクラッチ54の締結制御によってエンジン回転数Neの過度な上昇を抑制するため、入力クラッチ17の締結制御によってエンジン回転数Neの過度な上昇を抑制する必要がなく、入力クラッチ17に掛かる負荷つまりイナーシャトルクを軽減することが可能となる。これに対し、
図4に二点鎖線Zで示すように、回転数差ΔN2の拡大過程や縮小過程に拘らず、一様にデューティ比を引き上げた場合には、エンジン回転数Neの過度な上昇を抑制することができずに、車両の燃費性能や静粛性能を低下させることになるのである。
【0031】
また、回転数差ΔN1が閾値βを下回る場合には、制御フェーズをフェーズ3に移行させ、加算値dを加えてデューティ比を急速に引き上げている。すなわち、入力クラッチ17の締結タイミングに合わせて、ロックアップクラッチ54の締結力を急速に引き上げている。これにより、エンジン回転数Neの上昇を効果的に抑制することができ、車両の燃費性能や静粛性能を向上させることが可能となる。ところで、パラレル走行モードに移行する際のエンジン始動制御においては、複数のエンジン始動パターンが設定されている。すなわち、アクセルペダルの操作量が小さい場合には、エンジン始動直後の目標エンジン回転数が低く設定される一方、アクセルペダルの操作量が大きい場合には、エンジン始動直後の目標エンジン回転数が高く設定される。このため、エンジン始動直後の目標エンジン回転数に応じて、フェーズ3で加算される加算値dの大きさを変化させている。すなわち、エンジン始動直後の目標エンジン回転数(目標エンジン回転速度)が低いほどに加算値dを小さく設定する一方、エンジン始動直後の目標エンジン回転数が高いほどに加算値dを大きく設定している。このように、エンジン始動直後の目標エンジン回転数に応じて加算値dを増減させることにより、ロックアップクラッチ54の締結力を適切に増減させることができ、エンジン回転数Neの過度な上昇を適切に抑制することが可能となる。
【0032】
前述の説明では、回転数差ΔN2と閾値γとを比較判定することで、ロックアップクラッチ54の制御状態をフェーズ3からフェーズ4に移行させているが、これに限られることはない。例えば、所定時間毎に回転数差ΔN2の増減率を算出することにより、回転数差ΔN2が拡大するか否かを直接的に判定しても良い。この場合には、回転数差ΔN2の増減率が増加側に更新される場合には、回転数差ΔN2の拡大過程であると判定し、ロックアップクラッチ54の締結力を第1変化率で急速に増加させる。一方、回転数差ΔN2の増減率が減少側に更新される場合には、回転数差ΔN2の縮小過程であると判定し、ロックアップクラッチ54の締結力を第1変化率よりも小さな第2変化率で緩やかに増加させる。
【0033】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明では、入力クラッチ17を摩擦クラッチとして記載しているが、これに限られることはなく、入力クラッチ17としてドグクラッチ等の噛合クラッチを用いても良い。また、入力クラッチ17として油圧制御される油圧クラッチを用いているが、これに限られることはなく、入力クラッチ17として電磁力を用いて制御される電磁クラッチを用いても良い。さらに、前述の説明では、デューティ電磁弁61からのパイロット圧によって制御されるロックアップ制御弁62を用いているが、これに限られることはなく、ロックアップ制御弁62をデューティ制御によって直に駆動されるデューティ電磁弁として構成しても良い。
【0034】
前述の説明では、入力クラッチ17の出力側の回転速度として、プライマリ回転数Npを用いているが、これに限られることはなく、例えばモータジェネレータ12の回転速度を用いても良い。前述の説明では、モータ走行モードで走行している状態から、走行モードをパラレル走行モードに切り換えているが、これに限られることはなく、モータ走行モードで停車している状態から、走行モードをパラレル走行モードに切り換えても良い。また、図示する場合には、パワーユニット13に変速機構を組み込んでいるが、これに限られることはなく、パワーユニット13から変速機構を削減しても良い。さらに、図示する場合には、変速機構としてチェーンドライブ式の無段変速機14を用いているが、これに限られることはなく、ベルトドライブ式やトラクションドライブ式の無段変速機であっても良く、遊星歯車式や平行軸式の自動変速機であっても良い。