(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
テーブル基体と、該テーブル基体に設けられ回転式掘削機を鉛直状態で昇降自在に保持して回転させる回転駆動部と、原動機で駆動される走行輪を有する走行部と、前記テーブル基体に設けられたアウトリガとを有するロータリテーブルと、
該ロータリテーブルが前記走行部により走行することができる軌道部とを備え、
前記ロータリテーブルを前記軌道部の方向に沿って走行できるようにする案内手段を有しており、
前記軌道部が、H形鋼を両フランジが上下に位置するように、且つ二本を平行に配置したものであり、前記案内手段が両H形鋼のフランジの縁部に外側から長さ方向にスライド自在に嵌め込まれる嵌合具を有する
回転式掘削機用ロータリテーブル装置。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、既に特許文献1他において、回転式掘削機用ロータリテーブルを提案している。このロータリテーブルは、掘削機本体と複数の継ぎ部材からなる回転式掘削機を鉛直方向に立てた状態で支持し、これを回転させて地盤に杭孔を掘削するものである。地盤に杭孔を掘削した後は、この杭孔の中に、H形鋼、或いはコンクリート杭等の既製杭を埋設し、地盤に多数の埋設杭を含み構成される杭基礎を構築する。
【0003】
地盤に杭基礎を構築するための杭孔を複数形成する場合、ロータリテーブルと回転式掘削機を使用して第1の杭孔を掘削した後、ロータリテーブルと回転式掘削機を次の第2の杭孔を掘削する箇所に移動し、この箇所で第2の杭孔を掘削する。このような作業を順次繰り返すことにより、地盤に複数の杭孔を形成している。従来、上記のようにロータリテーブルと回転式掘削機を次々に移動して行う杭基礎の施工は、具体的には次のような手順で行われていた。
【0004】
(1)第1の杭孔を形成した後、クレーンを使用して回転式掘削機を吊り上げるようにして杭孔の中から抜き取り、更に回転式掘削機をロータリテーブルから外して、邪魔にならない所定の場所に移動させて倒しておく。
(2)次に、同じクレーンを使用して、今度はロータリテーブルを吊り上げ、第2の杭孔を掘削する箇所に移動させ、地盤に据え付ける。
【0005】
(3)同じクレーンを使用して、再び回転式掘削機を吊り上げ、第2の杭孔を掘削する箇所に据え付けてあるロータリテーブルの回転駆動部に通して立て、回転式掘削機を回転させて第2の杭孔を掘削する。以上の手順を繰り返し、必要数の杭孔を形成する。
(4)地盤に杭孔を掘削した後は、同じクレーンを使用して、杭孔の中に既製杭を吊り降ろし、既製杭を埋設して地盤に杭基礎を構築する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の回転式掘削機用ロータリテーブルには、次のような課題があった。
すなわち、ロータリテーブルは重量物で据え置き型であり、その移動にはクレーンが必要になる。したがって、上記のようにクレーンを使用し、先の杭孔を形成した後は、同じクレーンを使用して、次の杭孔を掘削する箇所へロータリテーブルを移動させている。このため、ロータリテーブルを移動させている間は、クレーンを使用し杭孔の中に既製杭を吊り降ろして埋設する作業を行うことができなかった。
【0008】
このため、上記杭基礎の構築作業は作業効率がよいとはいえず、工期を短縮することは難しかった。なお、この対策として、現場において二台のクレーンを用意しておき、各クレーンで上記各作業を分担して行い、作業を同時並行して行うことができる時間をつくることによって、作業効率を向上させ、工期を短縮することは可能である。しかし、杭基礎の構築工事の現場は、二台のクレーンを使用できる広さが確保できない場合が多くあるため、一台のクレーンの使用で杭基礎の構築工事の工期を短縮できるようにすることが望まれていた。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、一台のクレーンを使用して行う杭基礎の施工において、先の杭孔の掘削工事が終了した後、次の杭孔の掘削場所にロータリテーブルを移動させる際にクレーンを不要とし、ロータリテーブルを移動させている間も、先に掘削した杭孔への既製杭の埋設工事を、クレーンを使用して行うことができるようにして、杭基礎の構築工事の作業効率を向上させ、工期を短縮することができる回転式掘削機用ロータリテーブル装置及び杭基礎の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、テーブル基体と、該テーブル基体に設けられ回転式掘削機を鉛直状態で昇降自在に保持して回転させる回転駆動部と、原動機で駆動される走行輪を有する走行部と、前記テーブル基体に設けられたアウトリガとを有するロータリテーブルと、該ロータリテーブルが前記走行部により走行する軌道部とを備える回転式掘削機用ロータリテーブル装置である。
【0011】
(2)本発明は、前記ロータリテーブルを前記軌道部の方向に沿って走行できるようにする案内手段を有する構成としてもよい。
【0012】
この場合は、案内手段によって、ロータリテーブルの進行方向に対する横方向の動きを抑制することができるので、掘削機本体の中心と杭孔の掘削予定箇所の中心との位置合わせは、軌道部の方向を、ロータリテーブルを軌道部上で次の杭孔の掘削位置に移動できるように設定しておけば、移動方向における位置合わせだけに注意すればよい。したがって、ロータリテーブルと掘削箇所の位置合わせ作業が容易であり、短時間ですむので、杭基礎の構築工事の工期の短縮化を図ることができる。
【0013】
(3)本発明は、上記(2)の発明において、前記軌道部が、H形鋼を両フランジが上下に位置するように、且つ二本を平行に配置したものであり、前記案内手段が両H形鋼のフランジの縁部に外側から長さ方向にスライド自在に嵌め込まれる嵌合具を有する構成としてもよい。
【0014】
この場合は、嵌合具が両H形鋼のフランジの縁部に外側から長さ方向にスライド自在に嵌め込まれることで、ロータリテーブルの進行方向に対する横方向の動きを抑制することができるので、上記(3)で説明したように、ロータリテーブルと掘削箇所の位置合わせ作業が容易にできる。
【0015】
(4)本発明は、テーブル基体と、該テーブル基体に設けられ回転式掘削機を鉛直状態で昇降自在に保持して回転させる回転駆動部と、原動機で駆動される走行輪を有する走行部とを有するロータリテーブルと、該ロータリテーブルが前記走行部により走行することができる軌道部とを備える回転式掘削機用ロータリテーブル装置である。
【0016】
(5)本発明は、ロータリテーブルを軌道部上において第1の杭孔の掘削位置に固定する工程と、クレーンを使用して回転式掘削機をロータリテーブルの回転駆動部に通し、前記回転式掘削機を回転させ、地盤に第1の杭孔を掘削する工程と、前記クレーンで前記回転式掘削機を吊り上げて前記第1の杭孔及び前記ロータリテーブルの回転駆動部から抜き取る工程と、前記ロータリテーブルを前記軌道部上で自走により第2の杭孔の掘削位置に移動させ、該掘削位置に固定する工程と、前記ロータリテーブルを第2の杭孔の掘削位置に移動させ固定している時間と時間が重なるように、前記クレーンで既製杭を前記第1の杭孔の中に吊り降ろして埋設する工程と、前記クレーンで前記回転式掘削機を前記ロータリテーブルの回転駆動部に通し、前記回転式掘削機を回転させ、地盤に第2の杭孔を掘削する工程とを備える杭基礎の施工方法である。
【0017】
本明細書及び特許請求の範囲にいう「軌道部」の用語は、H形鋼の他、金属製の各種レール等を含む意味で使用している。また、軌道部の長さは特に限定されるものではなく、例えば、第1の杭孔と第2の杭孔の二箇所を掘削できる長さに設定することもできるし、一回の設置で三箇所以上を掘削できる長さに設定することもできる。
【0018】
(作用)
本発明の回転式掘削機用ロータリテーブル装置の作用を説明する。
回転式掘削機用ロータリテーブル装置は、まず、杭基礎を施工する場所の地盤に軌道部を据え付け、次にロータリテーブルを軌道部上に走行部で走行できるようにして載置し、ロータリテーブルを第1の杭孔の掘削位置に位置させる。
【0019】
そして、この位置でアウトリガを作動させ、軌道部上面等に脚を降ろしてロータリテーブルを実質的に固定する。なお、軌道部の方向は、ロータリテーブルを軌道部上で移動させれば、次の第2の杭孔の掘削位置に移動できるように設定されている。
【0020】
以下の作業には一台のクレーンを使用する。
クレーンを使用し、回転式掘削機を吊り上げてロータリテーブルの回転駆動部に通し、回転式掘削機を鉛直方向に立てた状態で軸周方向へ回転させ、地盤に第1の杭孔を掘削する。
第1の杭孔の掘削が終了したら、クレーンで回転式掘削機を吊り上げて第1の杭孔及びロータリテーブルから抜き取り、邪魔にならない安全な場所に移動させて倒しておく。その後、クレーンの吊りワイヤを既製杭に付け替える。
【0021】
アウトリガの脚を上昇させて固定を解除した後、走行部を駆動し、ロータリテーブルを軌道部上で自走させて、第2の杭孔の掘削位置に移動させる。具体的には、ロータリテーブルの回転駆動部の中心を掘削するポイントに合わせる。そして、この位置でアウトリガを作動させ、軌道部上面等に脚を降ろしてロータリテーブルを実質的に固定する。
【0022】
ロータリテーブルを第2の杭孔の掘削位置に移動させ、その位置に据え付けて固定している時間と時間が重なるようにして、既製杭を先に掘削した第1の杭孔の中にクレーンで吊り降ろして収容し、更に杭孔内部にコンクリートを打つ等して埋設する。なお、既製杭を杭孔の中に吊り降ろした後は、クレーンの吊りワイヤを回転式掘削機に付け替えて吊り上げ、第2の杭孔の掘削位置にあるロータリテーブルへ移動させる。
【0023】
このように、ロータリテーブルを軌道部上で自走させて第2の杭孔の掘削位置に移動させることができるので、このロータリテーブルの移動のためにクレーンを使用する必要はない。したがって、例えば先に掘削された杭孔に掘削後直ぐに既製杭を入れる作業等、クレーンを使用しないとできない他の作業を、ロータリテーブルの移動と同時並行して行うことができる。
【0024】
これにより、杭基礎の施工において、使用するクレーンが一台である場合の作業効率が向上し、従来と比べて工期の短縮を図ることが可能になる。また、先に掘削された杭孔に掘削後直ぐに既製杭を入れることにより、杭孔の内壁が崩壊する可能性が小さい内に杭の埋設工事を行うことができるので、杭孔の内壁の崩壊により杭基礎の施工が停滞することを防止できる利点もある。
【0025】
そして、第1の杭孔での杭の埋設作業が終了した後、或いはクレーン使用後の既製杭の埋設工事と同時並行して、クレーンで回転式掘削機をロータリテーブルの回転駆動部に通し、回転式掘削機を鉛直方向に立てた状態で軸周方向へ回転させ、地盤に第2の杭孔を掘削する。第2の杭孔の掘削の終了後、軌道部を次の掘削場所にクレーンで移動させて地盤に据え付け、第2の杭孔には既製杭をクレーンで吊り降ろし、埋設作業を行う。
以降は、上記手順を繰り返すことにより、多数の埋設杭を含み構成される杭基礎を構築することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、一台のクレーンを使用して行う杭基礎の施工において、先の杭孔の掘削工事が終了した後、次の杭孔の掘削場所にロータリテーブルを移動させる際にクレーンを不要とし、ロータリテーブルを移動させている間も、先に掘削した杭孔への既製杭の埋設工事を、クレーンを使用して行うことができるようにして、杭基礎の構築工事の作業効率を向上させ、工期を短縮することができる回転式掘削機用ロータリテーブル装置及び杭基礎の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の回転式掘削機用ロータリテーブル装置の一実施の形態を示す後方視斜視図である。
【
図2】
図1に示す回転式掘削機用ロータリテーブル装置の前方視斜視図である。
【
図3】
図1に示す回転式掘削機用ロータリテーブル装置の平面図である。
【
図4】
図1に示す回転式掘削機用ロータリテーブル装置の側面図説明図である。
【
図6】回転式掘削機用ロータリテーブル装置の使用状態を示し、クレーンを使用して回転式掘削機で杭孔を掘削している状態を示す説明図である。
【
図7】クレーンを使用して回転式掘削機を杭孔から抜き取っている状態を示す説明図である。
【
図8】クレーンを使用して杭孔から抜き取った回転式掘削機を他の場所に移動させると共に、回転式掘削機用ロータリテーブル装置を自走させて次の杭孔の掘削箇所へ移動させた状態を示す説明図である。
【
図9】クレーンを使用してコンクリート杭を杭孔へ吊り降ろしている状態を示す説明図である。
【
図10】先に掘削した杭孔への既製杭の埋設工事を行い、クレーンを使用して回転式掘削機で次の杭孔を掘削している状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
図1ないし
図5を参照する。なお、以下の説明において、場所や方向を表すために「前後」及び「左右」の用語を用いる場合があるが、これは
図3において、右側が明細書でいう「前」、左側が「後」に対応し、上側が「右」、下側が「左」に対応する。
【0029】
回転式掘削機用ロータリテーブル装置Tは、ロータリテーブル1と軌道部2を備えている。
まず、軌道部2は、H形鋼を枠組みした構造であり、二本の並設された軌道部材20、21を有している。軌道部材20、21は、両フランジを上下位置にして、平行に配置されている。軌道部材20、21は、長さ方向の両端寄りの下側に固着された連結部材22、23により連結されている。軌道部材20、21の上部側のフランジの外側のフランジエッジ200、210には、後述するロータリテーブル1に設けられている嵌合具13の嵌合凹部138がスライド自在に嵌め込まれる。
【0030】
軌道部材20、21の間隔は、後述するロータリテーブル1の走行部15を構成する駆動輪154、154a及び従動輪165、165aを載せることができるように設定されている。軌道部材20、21の長さは、軌道部材20、21上において、ロータリテーブル1を少なくとも二箇所の杭孔の掘削箇所で固定することができる長さに設定されている。軌道部材20、21の長さは、軌道部2の一回の設置で三箇所以上の杭孔を掘削できる長さに設定することもできる。また、軌道部材20、21の高さも適宜設定することができる。
【0031】
軌道部2に載置されるロータリテーブル1は、外形が平面視ほぼ四角形状に形成されたテーブル基体10を有している。テーブル基体10の内側のやや後部寄りには、回転駆動部17が設けられている。回転駆動部17は、回転式掘削機3を鉛直状態で昇降自在に保持して回転させることができる。
【0032】
回転駆動部17は、平面視四角形の基盤170を有している。基盤170は、中央部に回転体171を有している。回転体171には、回転ブッシュ172が回転体171の中心孔(符号省略)を通って上下方向に貫通するように装着されている。中心孔の内径は、回転式掘削機3の本体30よりやや径大に形成されている。
【0033】
回転ブッシュ172は、回転体171に対し着脱自在であり、装着した状態では、回転体171と一体になって回転することができる。また、回転ブッシュ172を回転体171から取り外すことにより、回転体171の上記中心孔に回転式掘削機3の本体30を通すことができるようになる。
【0034】
基盤170の前部側には、原動機である二基の油圧モータ173、174が並設され搭載されている。油圧モータ173、174のうち、一方の油圧モータ173の動力は、ギヤ(図示省略)を介し上記回転体171に伝えられ、回転体171を回転させる。また、回転ブッシュ172の円筒部175の内径は、回転式掘削機3の本体30に接続される継ぎ部材31よりやや径大に形成されており、継ぎ部材31を通すことができる。なお、円筒部175の内周壁には、周方向に等間隔で四箇所に、継ぎ部材31に形成されている条部32と係合する係合溝176が上下方向に形成されている。
【0035】
テーブル基体10の外側面の後部側及び左右側の合計三箇所には、作業者が足を載せることができるステップ板11が固定されている。テーブル基体10には、アウトリガ12が設けてある。アウトリガ12は、テーブル基体10の四隅部分に形成されている伸縮脚装置120、121、122、123で構成されている。
【0036】
各伸縮脚装置120、121、122、123は、鉛直方向に設けたケース124にロッドを下に向けて内蔵された油圧シリンダ(図示省略)と、ロッドに固定された脚125を有する構造である。各伸縮脚装置120、121、122、123は、互いに同期して作動し、各脚125を同じ長さで伸ばして支えることでロータリテーブル1を所定の位置に実質的に固定できる。
【0037】
ロータリテーブル1は、テーブル基体10に設けられた走行部15を有している。走行部15は、上記二基の油圧モータ173、174のうち他方の油圧モータ174で駆動される。油圧モータ174の動力は、テーブル基体10の前部に設けてあるギヤボックス151から左右両側へ出ている駆動軸152、152aに伝えられるようになっている。
【0038】
また、テーブル基体10の前面の左右両側(伸縮脚装置120、121の前方側)には、前方へ突出するように車軸受153、153aが固定されている。各車軸受153、153aの先部には、金属製でローラ状の駆動輪154、154aが車軸155、155aを介し軸支されている。従動軸155、155aと上記駆動軸152、152aは、自在継手157、157aを介しつながれたドライブシャフト156、156aにより連動する。
【0039】
一方、テーブル基体10の後面の左右両側(伸縮脚装置122、123の後方側)には、後方へ突出するように平面視コ字型のブラケット158、158aが固定されている。ブラケット158、158aの各軸受板(符号省略)には、それぞれ三箇所に孔が形成されている。各孔のうち中段の軸孔159には、軸受具162、162aが軸163を介し上下方向へ回動自在に取り付けられている。
【0040】
また、上記各孔のうち上段の通孔160及び下段の通孔161には、止めピン164が通されるようになっている。上記軸受具162、162aには、金属製のローラ状の従動輪165、165aが車軸166を介し空転できるように軸支されている。軸受具162、162aの基部側には、軸163の上記従動輪165、165a側に隣接してピン孔167(
図1参照)が形成されている。
【0041】
そして、ロータリテーブル1を軌道部2上で走行させることができるようにするときには、軸受具162、162aを下降回動させ、ブラケット158、158aの各軸受板の下段の通孔161と軸受具162、162aのピン孔167を合わせて止めピン164を装着し固定する。これにより、従動輪165、165aの下面がテーブル基体10の底面より低くなり、走行自在となる。また、場合によっては、軸受具162、162aを上昇回動させて、通孔160とピン孔167を合わせて止めピン164で止めておくこともできる。
【0042】
また、テーブル基体10の左右側の各ステップ板11の前後側には、それぞれテーブル基体10の外側面に嵌合具13が取り付けられている。各嵌合具13は、H形鋼である軌道部材20、21のフランジの縁部と共に案内手段を構成する。嵌合具13は、断面コ字形の取付板130を有している。取付板130は平行な軸受板(符号省略)を有し、軸受板には、それぞれ三箇所に孔が形成されている。
【0043】
各孔のうち中段の軸孔133には、後述する嵌合部材136が軸137を介し上下方向へ回動自在に取り付けられている。また、上記各孔のうち上段の通孔134及び下段の通孔135には、後述するように止めピン140が通されるようになっている。上記嵌合部材136には、先端寄りの内側に、嵌合凹部138が形成され、基部側の軸137の上記嵌合凹部138側に隣接してピン孔139(
図1参照)が形成されている。
【0044】
そして、嵌合具13は、ロータリテーブル1を軌道部2に装着するときには、嵌合部材136を下降回動させ、軸受板131、132の下段の通孔135と嵌合部材136のピン孔139を合わせて止めピン140を装着し固定する。これにより、嵌合凹部138は軌道部材20、21のフランジの縁部に外側から長さ方向にスライド自在に嵌め込まれる。
【0045】
また、ロータリテーブル1を軌道部2から取り外すときには、上記状態から止めピン140を外し、嵌合部材136を上昇回動させ、軸受板131、132の上段の通孔134と嵌合部材136のピン孔139を合わせて止めピン140を装着し固定する(
図5参照)。これにより、ロータリテーブル1は軌道部2から分離可能である。
【0046】
(作用)
図1ないし
図10(主に
図6〜
図10)を参照して、回転式掘削機用ロータリテーブル装置Tの作用について説明する。
(1)回転式掘削機用ロータリテーブル装置Tは、まず、杭基礎を施工する場所の地盤9に軌道部2を据え付ける。なお、軌道部材20、21の方向は、ロータリテーブル1を軌道部材20、21上で移動させれば、次の第2の杭孔の掘削位置910(
図7〜
図9参照)に移動できるように設定されている。
【0047】
(2)次に、ロータリテーブル1を軌道部2の軌道部材20、21上に走行部15の駆動輪154、154aと従動輪165、165aで走行できるようにして載置し、ロータリテーブル1を第1の杭孔の掘削位置に位置させる。そして、この位置でアウトリガ12を作動させ、軌道部材20、21上面に脚125を降ろして駆動輪154、154aと従動輪165、165aを軌道部材20、21から浮き上がらせ(従動輪165、165aは上へ跳ね上げているが、必ずしもその必要はない)、ロータリテーブル1を実質的に固定する(
図6参照)。
【0048】
(3)以下の作業は、一台のクレーン4を使用して行う。クレーン4を使用し、アーム44の先端に下げた吊りワイヤ40で吊り具41を介し回転式掘削機3を吊り上げてロータリテーブル1の回転駆動部17に通し、回転駆動部17を駆動して回転式掘削機3を鉛直方向に立てた状態で軸周方向へ回転させ、地盤9に第1の杭孔90を掘削する。回転式掘削機3には、コンプレッサ(図示省略)からエア供給管42を通り圧縮空気が供給されて、先端のビット33による打撃と外周部の複数の突条34による掻削により杭孔90を掘削することができる。
【0049】
(4)第1の杭孔90の掘削が終了したら、クレーン4で回転式掘削機3を吊り上げて第1の杭孔90及びロータリテーブル1から抜き取り(
図7参照)、邪魔にならない安全な場所に移動させて倒しておく。なお、この際、回転ブッシュ172は、本体30に引っ掛かった状態で回転体171から外れる(
図8参照)。その後、クレーン4の吊りワイヤ40を既製杭であるコンクリート杭5に付け替える。既製杭は、H形鋼等、他の形態のものを使用する場合もある。なお、吊りワイヤ40先端の吊り具45(
図9参照)は、既製杭の種類に合わせたものが使用される。
【0050】
(5)アウトリガ12の各脚125を上昇させて固定を解除した後、嵌合具13の嵌合部材136を下降回動させて、嵌合凹部138をフランジエッジ200、210にスライド自在に嵌め込む。そして、走行部15を駆動し、ロータリテーブル1を軌道部2の軌道部材20、21上で自走させて、第2の杭孔の掘削位置910に移動させる。ロータリテーブル1は、案内手段である嵌合具13とフランジエッジ200、210とが相まって円滑に案内される。具体的には、ロータリテーブル1の回転駆動部17の中心を掘削するポイント(又は中心)に合わせるが、この作業はロータリテーブル1の軌道部材20、21上での走行方向の位置を合わせるだけで簡単に行うことができる。そして、この位置で嵌合具13の嵌合部材136を上昇回動させてフランジエッジ200、210との嵌合状態を解除し、その後(
図10参照)、アウトリガ12を作動させ、軌道部材20、21上面に脚125を降ろしてロータリテーブル1を実質的に固定する。
【0051】
(6)ロータリテーブル1を第2の杭孔の掘削位置910に移動させる時間と、その位置に据え付けて固定している時間と、時間が重なるようにして、コンクリート杭5を先に掘削した第1の杭孔90の中にクレーン4で吊り降ろして収容し、更に杭孔90内部に生コンクリート50を打つ等して埋設する(
図9、
図10参照)。なお、コンクリート杭5を杭孔90の中に吊り降ろした後は、クレーン4の吊りワイヤ40を回転式掘削機3に付け替えて吊り上げ、第2の杭孔の掘削位置910にあるロータリテーブル1へ移動させる。
【0052】
このように、ロータリテーブル1を軌道部2の軌道部材20、21上で自走させて第1の杭孔90の掘削位置から第2の杭孔の掘削位置910に移動させることができるので(
図8参照)、このロータリテーブル1の移動のためにクレーン4を使用する必要はない。したがって、例えば先に掘削された杭孔90に掘削後直ぐにコンクリート杭5を入れる作業等、クレーン4を使用しないとできない他の作業を、ロータリテーブル1の移動と同時並行して行うことができる。
【0053】
これにより、杭基礎の施工において、使用するクレーン4が一台である場合の作業効率が向上し、従来と比べて工期の短縮を図ることが可能になる。また、先に掘削された杭孔90に掘削後直ぐにコンクリート杭5を入れることにより、杭孔90の内壁が崩壊する可能性が小さい内にコンクリート杭5の埋設工事を行うことができるので、杭孔90の内壁の崩壊により杭基礎の施工が停滞することを防止できる利点もある。
【0054】
(7)第1の杭孔90でのコンクリート杭5の埋設作業が終了した後、或いはクレーン4使用後のコンクリート杭5の埋設工事と同時並行して、クレーン4で回転式掘削機3をロータリテーブル1の回転駆動部17に通し、回転駆動部17を駆動して回転式掘削機3を鉛直方向に立てた状態で軸周方向へ回転させ、地盤9に第2の杭孔91を掘削する(
図10参照)。第2の杭孔91の掘削の終了後、軌道部2を次の掘削場所にクレーン4で移動させて地盤9に据え付け、第2の杭孔91にはコンクリート杭5をクレーン4で吊り降ろし、埋設作業を行う。
【0055】
以降は、上記手順を繰り返すことにより、多数の埋設杭を含み構成される杭基礎を構築することができる。なお、杭5の埋設を一列に行って杭基礎を構築する場合では、例えば軌道部2に他に用意した軌道部を順次接続し、或いは先に据え付けている軌道部の前部側の一部を取り外して後部側に接続し、ロータリテーブル1の移動に伴い、これを繰り返すことで軌道部を延長するようにすれば、ロータリテーブル1のクレーン4を使用した吊り上げ、吊り降ろし作業が、作業始めと終了時を除き不要となり、クレーンにかかる負担を軽減することができるので、より小型のクレーンで作業ができる利点もある。
【0056】
本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形が可能であるということは言うまでもない。