(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
イソプレン系ゴムとスチレンブタジエンゴムとを含むゴム成分と、ジブチルフタレート吸油量が300ml/100g以上である導電性カーボンブラックと、ジブチルフタレート吸油量が50〜200ml/100gであるカーボンブラック(X)とを含み、
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量が20〜80質量%、スチレンブタジエンゴムの含有量が20〜60質量%であり、
ゴム成分100質量部に対して、前記導電性カーボンブラックの含有量が1〜10質量部、前記カーボンブラック(X)の含有量が30〜70質量部である繊維プライコード被覆用ゴム組成物。
前記導電性カーボンブラックは、スチレンブタジエンゴムと導電性カーボンブラックとを含むマスターバッチの形で配合されたものである請求項1又は2記載の繊維プライコード被覆用ゴム組成物。
前記マスターバッチは、調製段階に於いて、スチレンブタジエンゴム100質量部に対して、導電性カーボンブラックを2〜10質量部、プロセスオイルを5〜50質量部含有する、請求項5記載の繊維プライコード被覆用ゴム組成物。
イソプレン系ゴムとスチレンブタジエンゴムとを含むゴム成分と、ジブチルフタレート吸油量が300ml/100g以上である導電性カーボンブラックと、ジブチルフタレート吸油量が50〜200ml/100gであるカーボンブラック(X)とを含み、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量が20〜80質量%、スチレンブタジエンゴムの含有量が20〜60質量%であり、ゴム成分100質量部に対して、前記導電性カーボンブラックの含有量が1〜10質量部、前記カーボンブラック(X)の含有量が30〜70質量部である繊維プライコード被覆用ゴム組成物を製造する方法であって、
前記スチレンブタジエンゴムと導電性カーボンブラックとを含むマスターバッチを調製する工程と、前記マスターバッチをイソプレン系ゴム、又は、前記イソプレン系ゴム、イソプレン系ゴム以外のゴム及び他の薬品類と混練する工程を有する繊維プライコード被覆用ゴム組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の繊維プライコード被覆用ゴム組成物(以下、単に「ゴム組成物」ともいう。)は、ゴム成分としてイソプレン系ゴムを含有する。
イソプレン系ゴムとしては、イソプレンゴム(IR)、天然ゴム(NR)、高純化ゴム(UPNR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)などが挙げられる。なかでも、タイヤの耐久性、繊維プライコードとの接着性などに優れるという理由から、NRが好ましい。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20など、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0026】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、20質量%以上、好ましくは40質量%以上である。20質量%未満であると、充分な破断時伸び、低燃費性、繊維プライコードとの接着性、加工性、ひいてはタイヤの耐久性が得られないおそれがある。一方、該イソプレン系ゴムの含有量は、80質量%以下、好ましくは70質量%以下である。80質量%を超えると、充分な操縦安定性、耐リバージョン性が得られないおそれがある。
【0027】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分としてSBRを含有する。SBRは、スチレン基を有することから、カーボンのグラファイトと電気吸引性を示すため、カーボンを取り込み易い性質を有する。本発明のゴム組成物においてSBRは、導電性カーボンブラックをその相中に取り込んで、導電性カーボンブラックを偏在させる役割を有する。このように導電性カーボンブラック及び通常のカーボンブラックがSBR相中に偏在することにより通電経路が形成されることから、より少ない被覆ゴム量、より少ない導電性カーボンブラック配合量であっても、高い導電性を発揮することができる。
【0028】
SBRとしては特に限定されず、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E−SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S−SBR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0029】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、20質量%以上、好ましくは25質量%以上である。20質量%未満であると、充分に導電性カーボンブラックを偏在させることができず導電性向上効果が得られないことがあり、また、充分な耐リバージョン性が得られず、その結果として、充分な操縦安定性、破断時伸びが得られないおそれがある。一方、該SBRの含有量は、60質量%以下、好ましくは40質量%以下である。60質量%を超えると、充分な破断時伸び、低燃費性、加工性、ひいてはタイヤの耐久性が得られないおそれがある。
【0030】
本発明のゴム組成物は、イソプレン系ゴム、SBR以外の他のゴム成分を含有してもよい。上記他のゴム成分としては、例えば、ブタジエンゴム(BR)等のジエン系ゴムが挙げられる。
【0031】
本発明のゴム組成物は、ジブチルフタレート吸油量が300ml/100g以上である導電性カーボンブラックを含有する。これにより、良好な導電性が得られ、本発明の効果が良好に得られる。
【0032】
導電性カーボンブラックとしては、上記特性を満たす限り特に限定されないが、例えば、ライオン(株)製のライオナイト、ライオン(株)製のケチェンブラックEC600JD、EC300JD等が挙げられる。
【0033】
導電性カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP)は、300ml/100g以上であり、320ml/100g以上が好ましく、340ml/100g以上がより好ましい。300ml/100g未満では、充分な導電性を付与できない。また、導電性カーボンブラックのDBPは、600ml/100g以下が好ましく、500ml/100g以下がより好ましく、400ml/100g以下が更に好ましい。600ml/100gを超えると、導電性カーボンブラックの分散性、加工性、低燃費性が低下するおそれがある。
なお、本明細書において、カーボンブラックのDBPは、JIS K6217−4:2001に準拠して測定される。
【0034】
導電性カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N
2SA)は700m
2/g以上が好ましく、800m
2/g以上がより好ましく、900m
2/g以上が更に好ましく、1000m
2/g以上が特に好ましい。700m
2/g未満では、充分な導電性を付与できないおそれがある。また、N
2SAが900m
2/g以上(好ましくは1000m
2/g以上)の導電性カーボンブラックを用いた場合には、導電性カーボンブラックの配合量をゴム成分100質量部に対して7質量部以下とした場合にでも充分な導電性が得られることから、破断伸び等のタイヤ性能をより充分に発揮することができる。該N
2SAは1500m
2/g以下が好ましく、1300m
2/g以下がより好ましく、1200m
2/g以下が更に好ましく、1100m
2/g以下が特に好ましい。1500m
2/gを超えると、充分な導電性カーボンブラックの分散性、加工性、低燃費性が得られないおそれがある。
なお、本明細書において、カーボンブラックのN
2SAは、JIS K 6217−2:2001によって求められる。
【0035】
導電性カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上、好ましくは1.2質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上である。1質量部未満であると、例えば後述する通常のカーボンブラックとして三菱化学(株)製のダイヤブラックN330(DBP:102ml/100g、N
2SA:78m
2/g)を40〜47質量部と併用した場合に充分な導電性を付与できない。また、導電性カーボンブラックの含有量は、10質量部以下、好ましくは8質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。10質量部を超えると、低燃費性、破断時伸び、繊維プライコードとの接着性、ひいてはタイヤの耐久性が低下する。導電性カーボンブラックの含有量が3質量部以下である場合には、特に優れた破断時伸びを発揮することができる。
【0036】
本発明のゴム組成物は、導電性カーボンブラックと共に導電性カーボンブラック以外のカーボンブラック(以下、「通常のカーボンブラック」ともいう。)を含むことが好ましい。これにより、良好な補強性が得られ、繊維プライコード被覆用ゴムの性能バランスを相乗的に改善できることから、本発明の効果が良好に得られる。また、導電性カーボンブラックを、通常のカーボンブラックと共に配合することにより、少量の導電性カーボンブラックを配合するのみで、好適に導電性を付与できる。これは、導電性カーボンブラックの高つながり形状が、通常のカーボンブラック塊の橋渡しをするためと推測される(
図2参照)。
【0037】
通常のカーボンブラックの窒素吸着比表面積(N
2SA)は25m
2/g以上が好ましく、60m
2/g以上がより好ましい。25m
2/g未満では、充分な破断時伸び、操縦安定性が得られないおそれがある。該N
2SAは120m
2/g以下が好ましく、100m
2/g以下がより好ましい。120m
2/gを超えると、充分な低燃費性、低燃費性が得られないおそれがある。
【0038】
通常のカーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP)は、50ml/100g以上が好ましく、85ml/100g以上がより好ましい。50ml/100g未満では、充分な補強性、導電性が得られないおそれがある。また、通常のカーボンブラックのDBPは、200ml/100g以下が好ましく、135ml/100g以下がより好ましい。200ml/100gを超えると、加工性が低下するおそれがある。
【0039】
通常のカーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは35質量部以上、特に好ましくは40質量部以上である。また、通常のカーボンブラックの含有量は、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。通常のカーボンブラックの含有量が上記範囲内であると、特に低燃費性、耐久性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。また、通常のカーボンブラックの含有量を上記範囲内とすることにより、導電性カーボンブラックの配合量を5質量部以下(好ましくは3質量部以下)としても良好な導電性を確保しつつ、良好な性能の空気入りタイヤを得ることができる。
【0040】
本発明のゴム組成物はシリカをゴム成分100質量部に対して15質量部以下含んでもよい。これにより、良好な補強性が得られ、更に、加硫剤として配合する硫黄を吸着し、硫黄のブルームを好適に抑制でき、低燃費性、破断時伸び、繊維プライコードとの接着性、加工性を相乗的に改善できることから、本発明の効果がより好適に得られる。
【0041】
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などが挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0042】
シリカの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、好ましくは100m
2/g以上、より好ましくは110m
2/g以上である。100m
2/g未満では、破断時伸びが低下する傾向がある。該N
2SAは、好ましくは250m
2/g以下、より好ましくは230m
2/g以下である。250m
2/gを超えると、低燃費性、加工性が低下する傾向がある。
なお、シリカのN
2SAは、ASTM D3037−93に準じてBET法で測定される値である。
【0043】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上である。3質量部未満であると、破断時伸びの向上効果が充分でないおそれがある。また、シリカの含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。50質量部を超えると、導電性、トッピング反でのシュリンク等の加工性が低下するおそれがある(或いは、導電性カーボンブラックが7質量部以上必要となり、配合コストが高くなるおそれがある)。
【0044】
シリカ及びカーボンブラック(導電性カーボンブラックと通常のカーボンブラックとの合計)の合計100質量%中のカーボンブラックの含有率は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。また、該カーボンブラックの含有率の上限は特に限定されず、100質量%でもよい。上記範囲内であると、性能バランスに優れたゴム組成物が得られる。
【0045】
本発明のゴム組成物は、加硫剤として硫黄を含有することが好ましい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
上記硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2.5質量部以上である。2.5質量部未満であると、加硫後の硬度(Hs)や隣接ゴム配合との共架橋が充分に得られないおそれがある。硫黄の含有量は、好ましくは3.0質量部以下である。3.0質量部を超えると、耐亀裂成長性、耐オゾン性、破断時伸び、耐久性が悪化するおそれがある。
【0047】
本発明では、加硫剤として、硫黄以外にもアルキルフェノール・塩化硫黄縮合物(例えば、田岡化学工業社製のタッキロールV200)を使用してもよい。
【0048】
本発明のゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。加硫促進剤としては、グアニジン系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、チウラム系、ジチオカルバメート系、ザンデート系の化合物などが挙げられる。これら加硫促進剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、良好な繊維プライコードとの接着性が得られるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤〔N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBSI)など〕が好ましく、TBBS、CBSがより好ましい。
【0049】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは0.8質量部以上である。0.3質量部未満では、操縦安定性、繊維プライコードとの接着性が充分に得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは4.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下、更に好ましくは2.0質量部以下、特に好ましくは1.5質量部以下である。4.0質量部を超えると、繊維プライコードとの接着性(特に、湿熱劣化後)、破断時伸びが低下する傾向がある。
【0050】
本発明のゴム組成物は、軟化剤を含有することが好ましい。ここで、本発明において、軟化剤とは、プロセスオイル、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂を意味する。なお、本発明では、架橋樹脂(レゾルシノール樹脂、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂)は、軟化剤に含めない。
【0051】
プロセスオイルとは、ゴムの加工性(軟化効果、配合剤分散効果、ポリマー鎖間の潤滑効果など)を改善するために、ゴム成分などの他に別途配合する石油系油類をいい、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイルなどが挙げられる。
なお、プロセスオイルには、ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテル(HMMPME)、不溶性硫黄、油展ゴムなどの他の成分に予め添加されているオイルは含まない。
【0052】
C5系石油樹脂としては、ナフサ分解によって得られるC5留分中のオレフィン、ジオレフィン類を主原料とする脂肪族系石油樹脂などが挙げられる。C9系石油樹脂としては、ナフサ分解によって得られるC9留分中のビニルトルエン、インデン、メチルインデンを主原料とする芳香族系石油樹脂などが挙げられる。
【0053】
C5系石油樹脂、C9系石油樹脂の軟化点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは80℃以上である。また、該軟化点は、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下である。上記範囲内であると、良好な性能の空気入りタイヤが得られる。
【0054】
軟化剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは12質量部以下である。20質量部を超えると、オイルが繊維プライコードを被覆し、繊維プライコードとゴムとの加硫接着性が悪化する傾向がある。また、サイドウォールゴムにオイルが移行し、サイドウォールを軟化させ、操縦安定性が低下するおそれがある。また、過剰な軟化剤が硫黄のブルームを誘発するおそれがある。なお、軟化剤の含有量の下限は特に限定されないが、加工性を考慮すると、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。
【0055】
本発明のゴム組成物は老化防止剤を含むことが好ましい。これにより、ポリマーの熱酸化劣化を抑制できる。但し、隣接するゴム部材、サイドウォール、タイガム、クッション、クリンチ等に充分な老化防止剤が含まれている場合には、加硫中にケースゴムへの老化防止剤の流入が起こるので、老化防止剤を配合しなくともよい。
【0056】
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.7質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは3.0質量部以下、より好ましくは2.0質量部以下である。上記範囲内であると、軽トラック等の高温使用条件でも、熱酸化劣化を抑制できる。
【0057】
本発明のゴム組成物は、加硫助剤として酸化亜鉛を含むことが好ましい。これにより、繊維プライコードとの接着性、操縦安定性、低燃費性、破断時伸び、耐リバージョン性を向上できる。また、練りゴム(混練)中、一旦硫黄を吸着し、硫黄の貯蔵庫の役割を果たすので、硫黄のブルームも低減でき、硫黄のブルームによる繊維プライコードとの接着性の低下、ひいてはタイヤの耐久性の低下を抑制できる。
【0058】
酸化亜鉛としては、従来からゴム工業で使用されるものが挙げられ、具体的には、三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛1号、2号などが挙げられる。
【0059】
酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは1.6質量部以上、更に好ましくは2.0質量部以上、特に好ましくは2.2質量部以上、最も好ましくは2.5質量部以上、より最も好ましくは2.7質量部以上である。1.0質量部未満では、硫黄がブルームしやすくなり、操縦安定性、低燃費性、破断時伸び、繊維プライコードとの接着性、耐リバージョン性、ひいてはタイヤの耐久性が低下する。また、上記酸化亜鉛の含有量は、好ましくは16.0質量部以下、より好ましくは12.0質量部以下、更に好ましくは8.0質量部以下、特に好ましくは6.0質量部以下、最も好ましくは5.0質量部以下、より最も好ましくは4.0質量部以下である。16.0質量部を超えると、環境、コストに悪影響を与える傾向がある。
【0060】
酸化亜鉛の含有量/硫黄成分の合計含有量の比率は、好ましくは0.50以上、より好ましくは0.70以上、更に好ましくは0.80以上、特に好ましくは0.90以上である。0.50未満では、硫黄のブルームが発生しやすく、加工性(押し出し成型加工性)、繊維プライコードとの接着性(特に、湿熱劣化後)、破断時伸び(特に、乾熱劣化後)、ひいてはタイヤの耐久性が低下するおそれがある。
該比率は、好ましくは4.00以下、より好ましくは3.00以下、更に好ましくは2.00以下、特に好ましくは1.70以下、最も好ましくは1.50以下である。4.00を超えると、硫黄のブルームをより好適に抑制できるため、性能に優れているものの、酸化亜鉛の未分散塊が生じた場合、引張時に破壊核となり、破断時伸びが低下するおそれがある。また、単価と比重の高い酸化亜鉛量が多いため、コスト、タイヤ重量が増大(タイヤの低燃費性が悪化)するおそれがある。
また、上記比率を満たすことにより、酸化亜鉛が破壊核となることを抑制でき、良好な破断時伸び、ひいてはタイヤの耐久性が得られる。
【0061】
本発明のゴム組成物は、架橋樹脂を含有してもよい。
架橋樹脂としては、特に限定されず、タイヤ工業においてタイヤ工業において一般的なものが挙げられ、例えば、レゾルシノール樹脂、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂が挙げられる。なお、架橋樹脂は、複数のモノマー成分から構成されていてもよく、末端を変性されていてもよい。
【0062】
レゾルシノール樹脂としては、例えば、レゾルシノール・ホルムアルデヒド縮合物が挙げられる。具体的には、住友化学工業(株)製のレゾルシノールなどが挙げられる。また、レゾルシノール樹脂は、変性された変性レゾルシノール樹脂であってもよい。変性レゾルシノール樹脂としては、例えば、レゾルシノール樹脂の繰り返し単位の一部をアルキル化したものが挙げられる。具体的には、インドスペック社製のペナコライト樹脂B−18−S、B−20、田岡化学工業(株)製のスミカノール620、ユニロイヤル社製のR−6、スケネクタディー化学社製のSRF1501、アッシュランド化学社製のArofene7209などが挙げられる。
【0063】
フェノール樹脂としては、例えば、フェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるものが挙げられ、カシューオイル、トールオイル、アマニ油、各種動植物油、不飽和脂肪酸、ロジン、アルキルベンゼン樹脂、アニリン、メラミンなどの化合物を用いて変性した変性フェノール樹脂も含む。
【0064】
アルキルフェノール樹脂としては、例えば、アルキルフェノールと、上記アルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるものが挙げられ、上記カシューオイルなどの化合物を用いて変性した変性アルキルフェノール樹脂も含む。アルキルフェノール樹脂の具体例としては、例えば、クレゾール樹脂、オクチルフェノール樹脂等が挙げられる。
【0065】
架橋樹脂の含有量(好ましくはレゾルシノール樹脂、フェノール樹脂、及びアルキルフェノール樹脂の合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2.5質量部以下、より好ましくは1.5質量部以下、更に好ましくは0.5質量部以下、特に好ましくは0.1質量部以下、最も好ましくは0質量部(実質的に含有しない)である。
【0066】
本発明のゴム組成物には、上記成分以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている配合剤、例えば、シランカップリング剤、ステアリン酸、ステアリン酸コバルトなどの材料を適宜配合してもよい。
【0067】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、上記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
とりわけ、スチレンブタジエンゴムと導電性カーボンブラックとを含むマスターバッチを調製する工程と、得られたマスターバッチをイソプレン系ゴム、又は、前記イソプレン系ゴム、イソプレン系ゴム以外のゴム及び他の薬品類と混練する工程を有する繊維プライコード被覆用ゴム組成物の製造方法が好適である。
マスターバッチの形で導電性カーボンブラックを配合することにより、より少ない配合量の導電性カーボンブラックで高くかつ安定した導電性が得られる。更には、より少ない配合量であっても良好な低燃費性、耐久性(破断時伸び)を維持又は改善もできる。これは、マスターバッチとして配合することにより、導電性カーボンブラックをSBR相により偏在させることができ、また、導電性カーボンブラックの分散性が向上するためと考えられる。また、マスターバッチの形であれば、飛散しやすい導電性カーボンブラックを飛散させることなく精密かつ容易に配置することが可能となり、製造効率の点でも好ましい。なぜなら、商業用のバンバリーミキサーの薬品、フィラー投入装置では、0.1phr単位の精密検量は困難であるからである。
【0068】
マスターバッチにおいて、SBR100質量部に対する導電性カーボンブラックの配合量は2質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることが更に好ましい。2質量部未満であると、充分に導電性カーボンブラックをSBR相に偏在させることができず、充分な導電性向上効果が得られないことがある。導電性カーボンブラックの配合量は12質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。12質量部を超えると、マスターバッチのゴム粘度が高くなり、低燃費性、破断時伸び、カーボンブラックの分散性が低下し、ひいてはタイヤの耐久性が低下することがある。
【0069】
マスターバッチは、SBRと導電性カーボンブラックとのほかに、通常のカーボンブラックを含有することが好ましい。SBR、導電性カーボンブラック、及び通常のカーボンブラックを含有するマスターバッチとすることにより、より優れた効果を得ることができる。
【0070】
マスターバッチにおいて、SBR100質量部に対する通常のカーボンブラックの配合量は20質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることがより好ましい。20質量部未満であると、通電性が良くないことがある。通常のカーボンブラックの配合量は70質量部以下であることが好ましく、60質量部以下であることがより好ましい。70質量部を超えると、マスターバッチの仕上がり粘度が高くなり、その後の混練工程で他の成分と混練する際に、マスターバッチが他の成分と混ざりにくくなることがある。
【0071】
マスターバッチは、SBRと導電性カーボンブラックのほかに、プロセスオイルを含有することが好ましい。プロセスオイルを配合することにより、マスターバッチの粘度を調整することができ、生産効率を向上させることができると共に、より優れた効果を得ることができる。また、マスターバッチは、SBRと導電性カーボンブラックのほかに、通常のカーボンブラック及びプロセスオイルを含有することがより好ましい。これにより、より優れた効果を得ることができる。
【0072】
マスターバッチにおいて、SBR100質量部に対するプロセスオイルの配合量は5質量部以上であることが好ましく、7質量部以上であることがより好ましい。プロセスオイルの配合量は50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましい。この範囲内であると、マスターバッチの粘度を適正な範囲に調整することができる。また、ゴム配合でのマスターバッチ由来のオイル量を適正な範囲に設定できる。
プロセスオイルとしては、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、アロマ系オイルなどを用いることができる。
なお、マスターバッチの粘度は、イソプレン系ゴムの粘度と同程度に調整することが練り生産効率の点から好ましい。
なお、軟化点が30℃以下の樹脂であれば、例えばクマロンインデンC10やC30であれば、(Rutgers社製)プロセスオイルに置換又は一部置換して、タイヤ性能を低下させずにマスターバッチの粘度調整剤として用いることができる。
【0073】
上記マスターバッチを調製する方法は、例えば、導電性カーボンブラック、SBR、及び必要に応じて配合する通常のカーボンブラックやプロセスオイルを、ゴム混練装置を用いて混練する方法(混練法)や、SBRを合成した際に得られる懸濁溶液、即ちSBRラテックスに導電性カーボンブラック、及び必要に応じて配合する通常のカーボンブラックやプロセスオイルを添加し、攪拌混合した後に凝固乾燥させる方法(ラテックス法)が挙げられる。なかでも、ラテックス法が好ましい。
【0074】
本発明のゴム組成物(加硫後)は、体積固有抵抗が1.0×10
8Ω・cm以下であることが好ましい。より好ましくは1.0×10
7Ω・cm以下、更に好ましくは1.0×10
6Ω・cm以下である。体積固有抵抗が1.0×10
8Ω・cmを超えると、タイヤの電気抵抗が増大し、静電気が車輌に蓄積され、静電気の放電現象により発火や感電等の問題が発生する。一方、体積固有抵抗が1.0×10
8Ω・cm以下であればタイヤの導電性の向上効果が得られる。特に体積固有抵抗が1.0×10
6Ω・cm以下であれば、電気抵抗が1×10
9Ω以上であるサイドウォールと組み合わせた場合にでも、充分な導通を有する空気入りタイヤを得ることができる。
なお、本発明において、体積固有抵抗とは、温度23℃および相対湿度55%の恒温恒湿条件下で、印加電圧1000Vとし、それ以外についてはJIS K 6271:2008に従い測定した体積抵抗率をいう。また、本発明において、単に体積固有抵抗と記載した場合には、当該方法により測定した体積固有抵抗を意味することとする。
【0075】
本発明のゴム組成物は、繊維プライコードを被覆する繊維プライコード被覆用ゴム(トッピング用ゴム)に用いられる。なかでも、ケーストッピング用ゴム、ジョイントレスバンドトッピング用ゴム、タイガム(=インスレーション)用ゴムとして好適に使用できる。
【0076】
繊維プライコードとしては、ポリエチレン、ナイロン、アラミド、グラスファイバー、ポリエステル、レーヨン、ポリエチレンテレフタレート等の繊維により得られるコードが挙げられる。また、複数種類の繊維により得られるハイブリッドコードを使用してもよい。ハイブリッドコードとしては、ナイロン/アラミド混撚りコード等が挙げられる。
【0077】
本発明のゴム組成物は、繊維プライコードを被覆して繊維プライコード被覆部材を形成する。具体的には、ケーストッピング用ゴム、ジョイントレスバンドトッピング用ゴムは、それぞれ、繊維プライコードを被覆して、ケース、ジョイントレスバンドを形成する。
【0078】
ケースにはポリエステルコードが、ジョイントレスバンドにはナイロンコードが用いられることが多い。また、ジョイントレスバンドには、アラミドコードやナイロン/アラミド混撚りコードも用いられる。
【0079】
ケースとは、繊維プライコード及び繊維プライコード被覆ゴム層からなる部材であり、カーカスともいう。具体的には、例えば、特開2008−75066号公報の
図1等に示される部材である。
【0080】
ジョイントレスバンドとは、繊維プライコード及び繊維プライコード被覆ゴム層からなる部材であり、車両の走行時のタイヤ回転に伴う遠心力によってブレーカーがケースから浮き上がるのを抑制するために、ブレーカーのタイヤ半径方向外側に設けられる部材であり、具体的には、特開2009−007437号公報の
図3などに示される部材である。
【0081】
なお、トッピング用ゴムは、繊維プライコードを極めて薄いゴム厚みで被覆するため、繊維プライコード被覆部材の周囲に存在するタイヤ部材においても、良好な繊維プライコードとの接着性を有することが好ましい。本発明のゴム組成物は、繊維プライコード被覆部材の周囲に存在するトレッド、サイドウォール、内層サイドウォール、タイガム、ブレーカー用ゴム組成物等とも良好な接着性を示す。
【0082】
内層サイドウォールとは、多層構造を有するサイドウォールの内層部であり、具体的には、特開2007−106166号公報の
図1等に示される部材である。
【0083】
タイガムとは、ケースのタイヤ半径方向内側でインナーライナーのタイヤ半径方向外側に配設される部材であり、具体的には、特開2010−095705号公報の
図1等に示される部材である。
【0084】
ブレーカーとは、ケースのタイヤ半径方向外側に配される部材であり、具体的には、特開2003−94918号公報の
図3、特開2006−273934号公報の
図1、特開2004−161862号公報の
図1等に示される部材である。
【0085】
本発明の空気入りタイヤは、電気抵抗が1×10
9Ω以上であるサイドウォールを有することが好ましい。本発明の繊維プライコード被覆用ゴム組成物は極めて導電性に優れることから、電気抵抗が1×10
9Ω以上であるサイドウォールと組み合わせた場合にでも、充分な導通を有する空気入りタイヤを得ることができる。
【0086】
本発明の空気入りタイヤは、本発明のゴム組成物を用いて通常の方法で製造できる。
すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階で、シート化し、そのシートを繊維プライコードに上下から圧着、圧延し、コード付きファブリック(繊維プライコード被覆部材(ゴムをコードに被覆した後の総厚み0.70〜2.00mm程度、用途によりコード種、エンズ、ゴム量は変わる))を作成し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成できる。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤが得られる。なお、上記繊維プライコード被覆部材としては、ケース、及び/又はジョイントレスバンドであることが好ましい。
【0087】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、モーターサイクル用タイヤとして好適に使用される。
【0088】
本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図を
図3に示す。
図3に示した通り、空気入りタイヤ2では、路面と接触するようにトレッド4に埋設された通電ゴム50から、アンダートレッド51、ジョイントレスバンド15、ブレーカー12、ケース10、クリンチ5を介して路面からリム7へと導電経路を形成でき、タイヤにおいて発生した静電気を放出できる。
【実施例】
【0089】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0090】
以下、実施例
、参考例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
<NR>
・TSR20
・JSR(株)性のIR2200
<SBR>
・住友化学工業(株)製のSBR1502(スチレン含量:23.5質量%)
<BR>
・住友化学工業(株)製のBR1250H
<シリカ>
・デグッサ社製のULTRASIL VN3(N
2SA:175m
2/g)
<カーボンブラック>
・三菱化学(株)製のダイヤブラックN330(DBP:102ml/100g、N
2SA:78m
2/g)
・三菱化学(株)製のダイヤブラックN660(DBP:82ml/100g、N
2SA:28m
2/g)
・三菱化学(株)製のダイヤブラックN220(DBP:114ml/100g、N
2SA:114m
2/g)
<導電性カーボンブラック>
・ライオン(株)製のライオナイト(DBP:378ml/100g、N
2SA:1052m
2/g)
・三菱化学(株)製のケチェンブラックEC600J(DBP:495ml/100g、N
2SA:1400m
2/g)
・三菱化学(株)製のケチェンブラックEC300J(DBP:365ml/100g、N
2SA:800m
2/g)
・コロンビアカーボン製のHP160(DBP:128ml/100g、N
2SA:165m
2/g)
<軟化剤>
・C5系石油樹脂:丸善石油化学(株)製のマルカレッツT−100AS(C5系石油樹脂:ナフサ分解によって得られるC5留分中のオレフィン、ジオレフィン類を主原料とする脂肪族系石油樹脂)(軟化点:100℃)
・TDAEオイル:H&R社製のvivatec500(アロマオイル)
<加硫助剤>
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華2種
・ステアリン酸:日油(株)製の椿
<硫化剤>
・フレキシス(株)製のクリステックスHSOT20改良品(試作品、硫黄80質量%及びオイル分20質量%を含む不溶性硫黄)
<加硫促進剤>
・大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド:CBS)
・大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3−ジフェニルグアニジン:DPG)
<架橋樹脂>
・住友化学工業(株)製のスミカノール507A(変性エーテル化メチロールメラミン樹脂(ヘキサメチロールメラミンペンタメチルエーテル(HMMPME)の部分縮合物)、(有効成分量:65質量%、シリカ:32質量%、パラフィン系オイル:3質量%))
・田岡化学工業(株)製のスミカノール620(変性レゾルシノール縮合樹脂)
<老化防止剤>
・老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック224を精製したもの(試作品(キノリン系老化防止剤)、1級アミンの含有量:0.6質量%)
<シランカップリング剤>
・デグッサ社製のSi75(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
【0091】
(マスターバッチの調製)
(1)ラテックス法によるマスターバッチの調製
(1−1)SBRラテックスの合成
表1の仕込み組成に従い、撹拌機付き耐圧反応器に水、乳化剤(1)、乳化剤(2)、電解質、スチレン、ブタジエン及び分子量調整剤を仕込んだ。反応器温度を5℃とし、ラジカル開始剤及びSFSを溶解した水溶液と、EDTA及び触媒を溶解した水溶液とを反応器に添加して重合を開始した。重合開始から5時間後、重合停止剤を添加して反応を停止させ、SBRラテックスを得た。
SBRラテックスの調製に使用した薬品を以下に示す。
水:蒸留水
乳化剤(1):ハリマ化成(株)製のロジン酸石鹸
乳化剤(2):和光純薬工業(株)製の脂肪酸石鹸
電解質:和光純薬工業(株)製のリン酸ナトリウム
スチレン:和光純薬工業(株)製のスチレン
ブタジエン:高千穂化学工業(株)製の1,3−ブタジエン
分子量調整剤:和光純薬工業(株)製のtert−ドデシルメルカプタン
ラジカル開始剤:日油(株)製のパラメンタンヒドロペルオキシド
SFS:和光純薬工業(株)製のソディウム・ホルムアルデヒド・スルホキシレート
EDTA:和光純薬工業(株)製のエチレンジアミン四酢酸ナトリウム
触媒:和光純薬工業(株)製の硫酸第二鉄
重合停止剤:和光純薬工業(株)製のN,N’−ジメチルジチオカルバメート
【0092】
【表1】
【0093】
(1−2)マスターバッチの調製
SBRラテックスと導電性カーボンブラック、通常のカーボンブラック、及びプロセスオイルが乾燥時に表2に記載された所定の質量比率となるように計量、調整後、筒型ホモジナイザーを用いて、8000rpmの条件でこれらを1時間撹拌した。
次に、撹拌後の混合物1000gに対し、凝集剤1.5gを加え、筒型ホモジナイザーを用いて、300rpmで2分間撹拌した。
次に、筒型ホモジナイザーを用いて、450rpm、30〜35℃の条件で撹拌しながら凝固剤を段階的に加え、pHを6.8〜7.1に調整し、凝固物を得た。撹拌時間は1時間とした。得られた凝固物は、水1000mlで繰り返し洗浄した。
次に、数時間風乾させた凝固物を更に40℃で12時間真空乾燥し、マスターバッチを得た。
なお、マスターバッチ1−11においては、SBRラテックスに代えて市販のNRラテックスを用いた。
【0094】
(2)混練法によるマスターバッチの調製
表2の仕込み組成に従い、SBR(住友化学工業(株)製のSBR1502)、導電性カーボンブラック、通常のカーボンブラック、及びプロセスオイルを小型バンバリーミキサーに投入し、5分間、排出温度160℃にて混練して、厚み7mm程度の練りシート状のマスターバッチを得た。
【0095】
【表2】
【0096】
(実施例、
参考例及び比較例)
表3〜5に示す配合に従って、2Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄、及び加硫促進剤以外の薬品を160℃排出4分間の条件で混練して混練物を得た。次に、2Lバンバリーミキサーを用いて、得られた混練り物に硫黄、及び加硫促進剤を添加して最高ゴム温度105℃、3分間の条件で練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で12分間プレス加硫することにより、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた加硫ゴム組成物を温度80℃の条件下の乾燥オーブン中で96時間、乾熱劣化(空気酸化劣化)し、乾熱劣化品を得た。
なお、表3〜5において、マスターバッチの形で配合されたNR、SBR及びプロセスオイル(軟化剤)については欄を設けた。また、導電性カーボンブラック及び通常のカーボンブラックについては、直接混練して配合した数値の隣に、()にてマスターバッチの形で配合された量を示した。
【0097】
加硫ゴム組成物(新品、乾熱劣化品)を下記により評価し、結果を表3〜5に示した。
【0098】
<ゴム組成物の体積固有抵抗>
上記加硫ゴム組成物(新品)を用いて厚さ2mm、15cm×15cmの試験片を作成し、ADVANTEST社製の電気抵抗測定R8340Aを用いて、温度23℃および相対湿度55%の恒温恒湿条件下で、印加電圧1000Vとし、それ以外についてはJIS K 6271:2008に従い、ゴム組成物の体積固有抵抗を測定した。値が小さいほどゴム組成物の体積固有抵抗が低く、導電性が良好であることを示す。
【0099】
(低燃費性試験)
(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータVESを用いて、温度70℃、周波数10Hz、初期歪10%及び動歪2%の条件下で、上記加硫ゴム組成物(新品)の損失正接tanδを測定した。tanδが小さいほど発熱性が低く、低燃費性に優れることを示す。
【0100】
(引張試験)
上記加硫ゴム組成物(新品、乾熱劣化品)からなる3号ダンベル型試験片を用いて、JIS K 6251「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に準じて、室温にて引張試験を実施し、破断時伸びEB(%)を測定した。EBが大きいほど、破断時伸び(耐久性)に優れることを示す。
【0101】
【表3】
【0102】
【表4】
【0103】
【表5】
【0104】
イソプレン系ゴムとスチレンブタジエンゴムとを含むゴム成分と、ジブチルフタレート吸油量が300ml/100g以上である導電性カーボンブラックとを含み、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量が20〜80質量%、スチレンブタジエンゴムの含有量が20〜60質量%であり、ゴム成分100質量部に対して、導電性カーボンブラックの含有量が1〜10質量部である実施例
、参考例では、良好な導電性、低燃費性、破断時伸び(≒耐久性)が得られた。このことから、本発明の繊維プライコード被覆用ゴム組成物を繊維プライコード被覆部材に用いることにより、被覆ゴム量が少なくとも繊維プライコード被覆部材により充分な導電性が発揮され、タイヤ重量や耐久性、低燃費性に優れた空気入りタイヤを提供できることが明らかとなった。