特許第6152076号(P6152076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6152076車載用及びエネルギー貯蔵用リチウムイオン電池負極材料及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6152076
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】車載用及びエネルギー貯蔵用リチウムイオン電池負極材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20170612BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   H01M4/587
   H01M4/36 C
   H01M4/36 B
   H01M4/36 D
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-156362(P2014-156362)
(22)【出願日】2014年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-95455(P2015-95455A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2014年7月31日
(31)【優先権主張番号】201310554920.3
(32)【優先日】2013年11月8日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514013417
【氏名又は名称】深▲セン▼市貝特瑞新能源材料股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岳 敏
(72)【発明者】
【氏名】▲エン▼ 慧青
(72)【発明者】
【氏名】鐘 正
【審査官】 佐藤 知絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−097010(JP,A)
【文献】 特表2012−519124(JP,A)
【文献】 特開2006−077214(JP,A)
【文献】 特開2013−222641(JP,A)
【文献】 特開2013−201104(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/140790(WO,A1)
【文献】 特表2013−506233(JP,A)
【文献】 特開2008−186732(JP,A)
【文献】 特開2010−218758(JP,A)
【文献】 特開2009−158105(JP,A)
【文献】 特開2004−196609(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/002162(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101887967(CN,A)
【文献】 特開2005−294011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/587
H01M 4/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載用及びエネルギー貯蔵用リチウムイオン電池負極材料の製造方法であって、有機炭素源で固定炭素含有率が99.9%以上である黒鉛系基材を被覆して、混合材料を得る工程(1)、
前記混合材料に対して900〜1600℃で炭素化処理を行うことにより、前記黒鉛系基材の表面に炭素材料被覆層が被覆された黒鉛材料を得る工程(2)、
工程(2)で得られた材料の前記炭素材料被覆層の表面に、導電性材料をメカニカルミル法で均一に分散させる改質処理を行う工程(3)、及び
工程(3)で得られた材料を篩分け、消磁してリチウムイオン電池負極材料を得る工程(4)を含む車載用及びエネルギー貯蔵用リチウムイオン電池負極材料の製造方法。
【請求項2】
前記導電性材料がナノ導電剤である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ナノ導電剤はCNT、炭素繊維、ナノ黒鉛又はグラフェンのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(1)に記載の被覆は固相被覆である請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオン電池材料分野に関する。具体的には、車載用及びエネルギー貯蔵用リチウムイオン電池負極材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商用リチウムイオン電池用負極材料は主に黒鉛系材料であり、黒鉛を負極材料とする場合の理論比容量は372mAh/gに達する。しかし充放電レート特性が悪く、電解質との相容性や低温特性が悪いため、リチウムイオン電池の車載及びエネルギー貯蔵分野での開発進捗に直接影響を与える。
【0003】
黒鉛系材料に対して被覆改質処理を行うことにより、材料の可逆容量、サイクル特性及び電解液との相容性を大幅に向上させることができるが、被覆材料であるピッチ又は樹脂又は高分子物質の導電特性は黒鉛より悪いため、電極材料の導電特性も悪くなり、且つ低温特性は良くない。本発明者らは鋭意検討を行なった結果、導電剤の添加は被覆黒鉛材料の導電特性を効果的に向上させるとともに、電極材料と電解液の相容性を向上させることができることを発見した。
【0004】
特許文献1は液相混合、乾燥、炭素化処理、高温処理、複合化などの工程を含むリチウムイオン電池負極材料の製造方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願公開第101887967号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
導電性材料の添加はある程度黒鉛材料の導電特性を向上させることができるが、導電剤の分散が難しく、生産効率が低い等の問題が存在する。また分散された導電剤を適時に使用しないと、更に二次凝集を引き起こす。従って導電剤の使用効率及び材料の均一性に影響を与え、リチウムイオン電池のサイクル特性とレート特性が低下する。
【0007】
前述の特許文献1の負極材料の製造方法は炭素化処理と高温処理を含み、前記複合化は順次混合と融合を含むため、エネルギー消費やコストが高く、操作が複雑であり、産業としての生産性に不利である。
【0008】
従って、導電特性、サイクル特性及びレート特性が優れ、且つ製造方法が簡単で、生産コストが低いリチウムイオン電池負極材料を開発することは所属分野の技術難題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来技術の不足に対して、本発明の目的の1つ目は車載用及びエネルギー貯蔵用リチウムイオン電池負極材料の製造方法を提供することであり、
有機炭素源で固定炭素含有率が99.9%以上である黒鉛系基材を被覆して、混合材料を得る工程(1)、
工程(1)で得られた混合材料を9001600℃で炭素化処理を行うことにより、前記黒鉛系基材の表面に炭素材料被覆層が被覆された黒鉛材料を得る工程(2)、
工程(2)で得られた材料の前記炭素材料被覆層の表面に、導電性材料をメカニカルミル法で均一に分散させる改質処理を行う工程(3)、及び
工程(3)で得られた材料を篩分け、消磁してリチウムイオン電池負極材料を得る工程(4)を含み、
好ましくは、前記黒鉛系基材は天然黒鉛、人造黒鉛又はカーボンマイクロビーズのうちの1種又は少なくとも2種の組合せであり、好ましくは、前記黒鉛系基材の固定炭素含有率は99.9%以上であり、アスペクト比は1.0〜2.5であり、平均粒径は1〜30μm、Dmax≦40.0μmであり、比表面積は2.0〜20.0m2/gであり、粉末プレス密度は1.45〜2.05g/cm3であり、層面間隔(d002)は0.3354〜0.3363nmであり、菱形構造(3R)含有量は1.0〜35.0%であり、ID/IG(面積比)は0.1〜1.0であり、I110/I004は0.05〜0.95であり、Lcは200.0〜1000.0nmであり、Laは800.0〜1800.0nmであり、磁性物質含有量は0.5ppm以下であり、金属異物粒子の大きさは100.0μm以下であり、プレス密度が1.5g/ccである場合の粉末導電率は50.0〜800.0S/cmである。
【0010】
好ましくは、前記有機炭素源はタールピッチ、石油ピッチ、メソピッチ、高分子材料又は重合体のうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0011】
好ましくは、前記導電性材料はナノ導電剤及び/又は導電性黒鉛であり、好ましくは、前記ナノ導電剤はCNTs、炭素繊維、ナノ黒鉛又はグラフェンのうちの1種又は少なくとも2種の組合せであり、好ましくは、前記ナノ導電剤の平均寸法(D50)は10〜600.0nmであり、比表面積SSAは2.0〜60.0m2/gであり、好ましくは、前記ナノ導電剤の平均寸法は10.0〜300.0nmであり、好ましくは、前記CNTと炭素繊維の直径は1〜300nmであり、長さは1〜20μmであり、好ましくは、前記グラフェンの黒鉛層の数は1〜100であり、好ましくは、前記ナノ導電剤はナノ導電性液体の状態で存在し、好ましくは、前記ナノ導電性液体におけるナノ導電剤の含有量は0.5〜20wt%であり、好ましくは、前記ナノ導電性液体における分散溶媒は水、メタノール、エタノール、アセトン又はクロロホルムのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0012】
好ましくは、前記導電性材料は導電性天然黒鉛粉末、導電性人造黒鉛粉末又はナノ導電性炭素ブラック(Super−P)のうちの1種又は少なくとも2種の組合せであり、好ましくは、前記導電性材料はシート状又はブロック状を呈し、長短径比は1.3〜4.5であり、平均粒径は0.5〜12.0μmであり、比表面積SSAは2.0〜60.0m2/gである。
【0013】
好ましくは、工程(1)に記載の被覆は固相被覆又は液相被覆である。
【0014】
本発明における固相被覆は所属分野の既知技術であり、当業者は必要に応じて適当な技術パラメータを選択できる。前記固相被覆の非限定的な例は、有機炭素源と黒鉛系材料を混合機の中に置き、温度を15℃〜80℃に制御し、400〜2000rpmの回転速度で、1〜300分間処理し、混合材料を得る。前記混合機は高速改質VC混合機、コーンミキサー又は混練機であるということを含む。
【0015】
本発明における液相被覆は所属分野の既知技術であり、当業者は必要に応じて適合な技術パラメータを選択できる。前記液相被覆の非限定的な例として以下を挙げる。有機炭素源を溶媒の中に加え、高速ミキサーで液相混合を行い、攪拌回転速度が3000〜5000rpmであり、攪拌時間が20〜60分間であり、温度が80〜90℃であり、その後黒鉛基体材料を前記混合物の中に加え、有機炭素源と黒鉛基体材料の質量比は(1:9)〜(2:8)であり、続けて高速ミキサーで液相混合を行い、攪拌回転速度は3000〜5000rpmであり、攪拌時間は120〜180分間であり、使用される溶媒と黒鉛基体材料の質量比は2〜1.2であり、乾燥して、混合材料を得る、前記溶媒はエタノール又はメタノールであり、前記液相被覆における乾燥は噴霧乾燥機で行い、噴霧乾燥機の入口温度は150〜350℃であり、出口温度は20〜250℃であり、圧力は10〜100MPaであり、供給頻度は10〜100Hzであり、攪拌回転速度は3000〜5000rpmであり、攪拌時間は120〜180分間であり、使用される溶媒と黒鉛基体材料の質量比は2〜1.2であり、乾燥して、混合材料を得る、前記溶媒はエタノール又はメタノールである。
【0016】
好ましくは、工程(2)に記載の炭素化処理温度は600〜1600℃であり、特に好ましくは700〜1500℃である。
【0017】
好ましくは、工程(3)に記載のメカニカルミル法での改質処理はボールミリング処理、融合処理又は高速ナノ分散処理であり、好ましくは、前記ボールミリング改質処理時間は5.0分間以上であり、処理速度は200〜4000r/minであり、前記ボールミリング改質処理時間は6.0分間、8.0分間、10.0分間、15.0分間、20.0分間、50.0分間、100.0分間、200.0分間、300.0分間、500.0分間、800.0分間、1000.0分間、1100.0分間、1150.0分間、1180.0分間、1190.0分間、1195.0分間又は1199.0分間等であっても良く、好ましくは5.0〜1200.0分間であり、前記ボールミリング改質処理速度は210r/min、220r/min、250r/min、300r/min、500r/min、1000r/min、1500r/min、2000r/min、2500r/min、3000r/min、3500r/min、3800r/min、3900r/min又は3950r/min等であっても良く、好ましくは、前記ボールミリング改質処理に採用したボールの直径は0.1〜3.0mmであり、ボールの種類はアルミナボール又はコランダムボールであり、好ましくは、前記融合処理時間は20.0〜800.0分間であり、回転速度は800〜3000r/minであり、キャビティ隙間は0.1〜2.0cmであり、温度は10〜80℃であり、好ましくは、前記融合処理時間は20.0〜300.0分間であり、好ましくは、前記融合処理回転速度は800〜2600r/minであり、好ましくは、前記融合処理のキャビティ隙間は0.1〜1.0cmであり、好ましくは、前記融合処理温度は20〜60℃であり、好ましくは、前記高速ナノ分散時間は20.0〜1200.0分間であり、回転速度は200〜8000r/minであり、好ましくは、前記高速ナノ分散は分散剤を採用し、好ましくは、前記導電性材料と分散剤の質量比は(1:0.1)〜(1:1)であり、特に好ましくは(1:0.3)〜(1:0.8)であり、好ましくは、前記分散剤はナトリウムカルボキシメチルセルロース、リグニンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸マグネシウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸アンモニウム、メチレンジナフチルスルホン酸ナトリウム又はポリアクリルアミドのうちの1種又は少なくとも2種の組合せである。
【0018】
好ましくは、工程(4)に記載の消磁の磁気誘導強度は3000〜30000Gsであり、処理温度は10〜80℃であり、消磁時間は10〜120sである。
【0019】
本発明の目的の2つ目は車載用及びエネルギー貯蔵用リチウムイオン電池負極材料を提供することであり、本発明の方法により製造した前記負極材料は、電解液との浸潤性が良く、電子導電率が高く、低温レート特性及びサイクル特性が優れる。
【0020】
前記車載用及びエネルギー貯蔵用リチウムイオン電池負極材料は、固定炭素含有率が99.9%以上である黒鉛系基材と、前記黒鉛系基材の表面に被覆された炭素材料被覆層と、前記炭素材料被覆層の表面に均一に分散された導電性材料とからなり、前記導電性材料がナノ導電剤であり、前記ナノ導電剤はCNT、炭素繊維、ナノ黒鉛又はグラフェンのうちの1種または少なくとも2種の組合せであり、前記ナノ導電剤の平均粒径は10〜600nmである。
【0021】
好ましくは、前記車載用及びエネルギー貯蔵用リチウムイオン電池負極材料における導電性材料の含有量は0.1〜20.0wt%であり、更に好ましくは0.5〜18.0wt%であり、特に好ましくは1〜15.0wt%である。
【0022】
好ましくは、前記車載用及びエネルギー貯蔵用リチウムイオン電池負極材料における不規則な炭素材料被覆層の含有量は0.1〜20.0wt%であり、更に好ましくは0.5〜18.0wt%であり、特に好ましくは1〜15.0wt%であり、
好ましくは、前記車載用及びエネルギー貯蔵用リチウムイオン電池負極材料における不規則な炭素材料被覆層と黒鉛系材料の質量比は(0.1:100)〜(20.0:100)であり、更に好ましくは(0.5:100)〜(18.0:100)であり、特に好ましくは(0.5:100)〜(15.0:100)である。
【0023】
好ましくは、前記車載用及びエネルギー貯蔵用リチウムイオン電池負極材料における黒鉛系材料と導電性材料の質量比は(10:0.01)〜(10:10.0)であり、更に好ましくは(10:0.1)〜(10:8.0)であり、特に好ましくは(10:0.5)〜(10:6.0)である。
【0024】
本発明の目的の3つ目は車載用及びエネルギー貯蔵用リチウムイオン電池を提供することであり、前記車載用及びエネルギー貯蔵用リチウムイオン電池は本発明に記載の車載用及びエネルギー貯蔵用リチウムイオン電池負極材料を含む。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、従来の技術に比べて、メカニカルミル法での改質処理で、ナノ導電剤及び/又は導電性黒鉛を均一に黒鉛粒子表面にコーティングして嵌め込み、且つナノ炭素を黒鉛粒子表面にコーティングして嵌め込むことによって、二次凝集を防止する。導電剤と黒鉛粒子の間の作用力を増加させ、導電剤の使用効率と材料表面での安定性を向上させることによって、負極活物質と電解液の相容性を向上させ、リチウムイオン電池の低温特性とレート特性を改善させる。本発明に記載の負極材料の初回充放電効率は94.0%以上であり、従来の技術サンプルに比べて2.0%以上高く、25℃低温回復率は98.0%より高く、従来の技術に比べて8.0%以上向上した。本発明による方法は操作が簡単で、制御し易く、生産コストも低く、産業化生産に適合する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施例3のSEM写真である。
図2】本発明の実施例2と比較実施例1の導電率を対比して示した図である。
図3】本発明の実施例と比較実施例の低温特性を比較して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明を分かりやすくさせるために、以下のように実施例に基づいて説明する。実施例は本発明を理解するためのものだけであり、本発明に対する具体的な限定と見なすべきではない。
【0028】
実施例1
炭素含有量が99.9%以上、粒子径が3〜40μmである球状天然黒鉛を、VC反応釜中に入れ、天然黒鉛との質量比が5:100である石油ピッチを導入して固相混合し、回転速度は1200rpm、混合時間は90分間で、混合材料を得る。前記混合材料を、窒素ガスの雰囲気下に配置し、1200℃で炭素化処理を行い、その後反応産物を常温まで冷却し、表面に不規則な炭素材料被覆層を有する天然黒鉛を得る。メカニカルボールミリングを用いて、ボールミルの回転速度が200rpm、処理時間が480分間で表面に不規則な炭素材料被覆層を有する天然黒鉛とナノ導電剤グラフェンを100:2の質量比で均一に混合した。得られた物に対して篩分け、消磁を行い、消磁回数は3回、磁気誘導強度は10000Gs、処理温度は10℃、電磁式ハンマー打撃回数は20回/秒であり、平均粒径11.2μmのリチウムイオン電池黒鉛負極材料を得る。
【0029】
実施例2
一定量のアクリル酸樹脂を水の中に加え、高速ミキサーで液相混合を行い、攪拌回転速度は3000rpm、攪拌時間は60分間、温度は90℃であり、その後炭素含有量が99.9%以上、粒子径が3〜40μmであるブロック状天然黒鉛を前記混合物の中に加え、そのうちアクリル酸樹脂と天然黒鉛の質量比は15:100であり、続いて高速ミキサーで液相混合を行い、攪拌回転速度は3000rpm、攪拌時間は180分間であり、使用される溶媒水とブロック状天然黒鉛の質量比は200:100であり、噴霧乾燥機で乾燥し、入口温度は350℃、出口温度は150℃、圧力は100MPa、供給頻度は10Hzで、混合材料を得る。得られた混合材料を窒素ガスの雰囲気下に配置し、500℃で炭素化処理を行い、その後反応産物を常温まで冷却し、表面に不規則な炭素材料被覆層を有する天然黒鉛を得る。表面に不規則な炭素材料被覆層を有するブロック状天然黒鉛とCNTを、100:9の質量比で融合機にて均一に混合し、そのうち融合機の回転速度が2600rpmで、処理時間が90分間である。得られた物に対して篩分け、消磁を行い、消磁回数は3回、磁気誘導強度は10000Gs、処理温度は10℃、電磁式ハンマー打撃回数は20回/秒であり、平均粒径が8.9μmであるリチウムイオン電池黒鉛負極材料を得る。
【0030】
実施例3
炭素含有量が99.9%以上、粒子径が3〜40μmである人造黒鉛を、コーンミキサー中に入れ、人造黒鉛との質量比が4:100であるメソピッチを導入して固相混合した。回転速度は50rpm、混合時間が300分間で、混合材料を得る。混合材料を窒素ガスの雰囲気下に配置し、1800℃で炭素化処理を行い、その後反応産物を常温まで冷却し、表面に不規則な炭素材料被覆層を有する人造黒鉛を得る。表面に不規則な炭素材料被覆層を有する人造黒鉛、導電性天然黒鉛粉末、SPを、100:9:0.1の質量比で融合機にて均一に混合し、融合機の回転速度が800rpmで、処理時間が300分間である。得られた物に対して篩分け、消磁を行い、消磁回数が3回、磁気誘導強度が10000Gs、処理温度が10℃、電磁式ハンマー打撃回数が20回/秒であり、平均粒径が14.5μmであるリチウムイオン電池黒鉛負極材料を得る。
【0031】
実施例4
炭素含有量が99.9%以上、粒子径が3〜40μmであるブロック状天然黒鉛を、VC反応釜に入れ、天然黒鉛との質量比が20:100であるタールピッチを導入して固相混合し、回転速度は2000rpm、混合時間は60分間で、混合材料を得る。前記混合材料を窒素ガスの雰囲気下に配置し、炭素化処理を行い、温度は950℃、その後反応産物を常温まで冷却し、表面に不規則な炭素材料被覆層を有する天然黒鉛を得る。表面に不規則な炭素材料被覆層を有する天然黒鉛、SP、分散剤を100:8:3の質量比で高速ナノ分散にて均一に混合し、そのうち高速ナノ分散の回転速度は8000rpm、処理時間は60分間、分散剤はポリアクリルアミドである。得られた物に対して篩分け、消磁を行い、消磁回数は3回、磁気誘導強度が10000Gsで、処理温度は10℃、電磁式ハンマー打撃回数は20回/秒であり、平均粒径が17.0μmであるリチウムイオン電池黒鉛負極材料を得る。
【0032】
実施例5
炭素含有量が99.9%以上、粒子径が3〜40μmであるカーボンマイクロビーズを、コーンミキサーに入れ、カーボンマイクロビーズとの質量比が0.1:100であるタールピッチを導入して固相混合し、回転速度は120rpm、混合時間は90分間で、混合材料を得る。前記混合材料を窒素ガスの雰囲気下に配置し、1500℃で炭素化処理を行い、その後反応産物を常温まで冷却し、表面に不規則な炭素材料被覆層を有するカーボンマイクロビーズを得る。表面に不規則な炭素材料被覆層を有するカーボンマイクロビーズ、導電性天然黒鉛粉末、分散剤を100:20:8の質量比で高速ナノ分散にて均一に混合し、そのうち高速ナノ分散の回転速度が5000rpm、処理時間は90分間、分散剤はナトリウムカルボキシメチルセルロースである。得られた物に対して篩分け、消磁を行い、消磁回数は3回、磁気誘導強度は10000Gs、処理温度は10℃、電磁式ハンマー打撃回数は20回/秒で、平均粒径が9.8μmであるリチウムイオン電池黒鉛負極材料を得る。
【0033】
実施例6
一定量のポリエチレンオキシドをジメチルアセトアミド中に加え、高速ミキサーで液相混合を行い、攪拌回転速度は5000rpm、攪拌時間は20分間、温度は80℃であり、その後炭素含有量が99.9%以上、粒子径が3〜40μmである球状天然黒鉛を前記混合物中に加え、そのうちポリエチレンオキシドと球状天然黒鉛の質量比が18:100であり、続けて高速ミキサーで液相混合を行い、攪拌回転速度は5000rpm、攪拌時間は120分間、使用される溶媒のジメチルアセトアミドと球状天然黒鉛の質量比が12:100であり、噴霧乾燥機で乾燥し、入口温度は280℃、出口温度は120℃、圧力は80MPa、供給頻度は30Hzで、混合材料を得る。得られた混合材料を窒素ガスの雰囲気下に配置し、700℃で炭素化処理を行い、その後反応産物を常温まで冷却し、表面に不規則な炭素材料被覆層を有する天然黒鉛を得る。表面に不規則な炭素材料被覆層を有する天然黒鉛、導電性人造黒鉛粉末、炭素繊維を100:5:3の質量比でボールミルにて均一に混合し、ボールミルの回転速度は1200rpm、処理時間は120分間である。得られた物に対して篩分け、消磁を行い、消磁回数は3回、磁気誘導強度は10000Gs、処理温度は10℃、電磁式ハンマー打撃回数は20回/秒であり、平均粒径が13.8μmであるリチウムイオン電池黒鉛負極材料を得る。
【0034】
実施例7
炭素含有量が99.9%以上、粒子径が3〜40μmである人造黒鉛を、VC反応釜に入れ、人造黒鉛との質量比が6:100であるタールピッチを導入して固相混合し、回転速度が800rpm、混合時間が120分間で、混合材料を得る。前記混合材料を窒素ガスの雰囲気下に配置し、900℃で炭素化処理を行い、その後反応産物を常温まで冷却し、表面に不規則な炭素材料被覆層を有する人造黒鉛を得る。表面に不規則な炭素材料被覆層を有する人造黒鉛、導電性天然黒鉛粉末を100:15の質量比で融合機にて均一に混合させ、そのうち融合機の回転速度は1800rpmであり、処理時間は120分間である。得られた物に対して篩分け、消磁を行い、消磁回数は3回、磁気誘導強度は10000Gs、処理温度は10℃、電磁式ハンマー打撃回数は20回/秒であり、平均粒径が15.3μmであるリチウムイオン電池黒鉛負極材料を得る。
【0035】
実施例8
炭素含有量が99.9%以上、粒子径が3〜40μmであるブロック状天然黒鉛を、混練機中に入れ、ブロック状天然黒鉛との質量比が10:100である石油ピッチを導入して固相混合した。回転速度は180rpm、混合時間は60分間、温度は80℃で、混合材料を得る。前記混合材料を窒素ガスの雰囲気下に配置し、1300℃で炭素化処理を行い、その後反応産物を常温まで冷却し、表面に不規則な炭素材料被覆層を有する天然黒鉛を得る。表面に不規則な炭素材料被覆層を有する天然黒鉛、導電性人造黒鉛粉末、分散剤を100:12:5の質量比で高速ナノ分散にて均一に混合させ、そのうち高速ナノ分散の回転速度は2500rpm、処理時間は240分間であり、分散剤はポリスチレンスルホン酸アンモニウムである。得られた物に対して篩分け、消磁を行い、消磁回数は3回、磁気誘導強度は10000Gs、処理温度は10℃、電磁式ハンマー打撃回数は20回/秒であり、平均粒径が12.1μmであるリチウムイオン電池黒鉛負極材料を得る。
【0036】
比較実施例1
炭素含有量が99.9%以上、粒子径が3〜40μmであるブロック状天然黒鉛を、VC反応釜中に入れ、天然黒鉛との質量比が8:100である石油ピッチを導入して固相混合した。回転速度は1200rpm、混合時間は120分間で、混合材料を得る。前記混合材料を窒素ガスの雰囲気下に配置し、1200℃で炭素化処理を行い、その後反応産物を常温まで冷却し、表面に不規則な炭素材料被覆層を有する天然黒鉛を得る。得られた物に対して篩分け、消磁を行い、消磁回数は3回、磁気誘導強度は10000Gs、処理温度は10℃、電磁式ハンマー打撃回数は20回/秒であり、平均粒径が12.5μmであるリチウムイオン電池黒鉛負極材料を得る。
【0037】
比較実施例2
炭素含有量が99.9%以上、粒子径が3〜40μmである球状天然黒鉛とナノ導電剤SPを100:3の質量比でメカニカルボールミリングにて均一に混合し、そのうちボールミルの回転速度は1200rpm、処理時間は120分間である。得られた物に対して篩分け、消磁を行い、消磁回数は3回行い、磁気誘導強度は10000Gs、処理温度は10℃、電磁式ハンマー打撃回数は20回/秒であり、そして平均粒径が14.6μmであるリチウムイオン電池黒鉛負極材料を得る。
【0038】
図1から、導電剤が被覆黒鉛材料の表面に均一に分散しているということが分かる。本発明の機械的改質方法によれば、導電剤の使用効率と材料表面での安定性を大幅に向上させることができ、これによって負極活物質と電解液の相容性を向上させ、リチウムイオン電池の低温特性とレート特性を改善させることができる。
【0039】
本発明の方法により製造された車載用及びエネルギー貯蔵用リチウムイオン電池負極材料は、導電剤の添加及び均一な分散により、図2から、機械的改質処理を採用した被覆黒鉛材料は、導電剤を添加しない比較例1と比べて、導電率が著しく優れ、60〜180S/cm向上したことが分かる。
【0040】
本発明の機械的改質方法によれば、図3から、導電剤の均一な分散が導電剤の使用効率と材料表面での安定性を大幅に向上させ、リチウムイオン電池の低温特性を改善し、全ての実施例の低温特性はいずれも比較例1と2より優れ、全ての実施例の25℃低温回復率が98.0%より高く、従来の技術に比べて8.0%以上向上させていることが分かる。
【0041】
本発明の方法により製造した車載用及びエネルギー貯蔵用リチウムイオン電池負極材料は、形態がS:4800走査型電子顕微鏡により測定し、導電率がMCP−PD51粉末導電率測定システムにより測定した。
【0042】
通常の評価用測定方法を用いて、実施例及び比較実施例の方法により製造された車載用及びエネルギー貯蔵用リチウムイオン電池負極材料の半電池特性を測定する。
【0043】
各実施例及び比較実施例の半電池結果は以下の表1により示す。
【0044】
【表1】
【0045】
本発明に使用する全電池試験方法は以下の通りである。実施例1〜8及び比較例1〜2を負極材料とし、CMCとSBRをバインダーとし、Super−Pを導電剤とし、負極材料とバインダーと導電剤を95.8:3.2:1.0の質量比で混合して、銅箔の集電体に塗布し、乾燥、プレス、切取りを行ない負極極片を得る。さらにLiCoO2を正極材料とし、PVDFをバインダーとし、Super−Pを導電剤とし、正極材料とバインダーと導電剤を94.5:1.5:4.0の質量比で混合して、アルミ箔の集電体に塗布し、通常の方法で乾燥、プレス、切取りを行ない正極極片を得る。前記マッチングする正負極極片に対して、(PE又はPP)をセパレーターとし、正極/セパレーター/負極の順番で上から下に置き、その後レート特性が優れた円筒形18650セルに巻き取れる。セルを鋼製ケーシングに組み込んで、密封してから乾燥のアルゴンガスグローブボックスにおいてセル注液口から適量の電解液(lmol/L LiPF6/DMC+EMC+EC,1:1:1)を注入する。開口形成し、0.1Cで50%S℃まで充電し、4〜6時間静置後、再び1Cで3サイクル充放電させ、25℃の電池容量が得られ、再び室温で0.5C充電し、低温(−30℃、−20℃、−10℃)で0.5C放電する。低温測定終了後、電池を室温に放置して一回充放電させ、低温回復率を計算する。具体的な結果は表2に示した通りである。
【0046】
以下の方法で低温回復率を計算する。
低温回復率=低温測定前25℃電池容量/低温測定後25℃電池回復容量×100%
【0047】
【表2】
【0048】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1
図2
図3