(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の上記単層二次電池を、天地を同じにして多段に重ねた状態で、折畳方向を交互に逆方向に変えて2回以上折り畳んだ多段折畳単層二次電池を適用していることを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
上記折畳単層二次電池若しくは上記多段折畳単層二次電池は、折り畳まれていない非折畳部分である舌片を含み、この舌片における正電極層及び負電極層の少なくとも一方が、正極端子部材若しくは負極端子部材と接触していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二次電池。
上記単層二次電池が、上記負電極層若しくは上記正電極層の一方の部分が、導電性基板とその上に設けられた上記負電極層との組、若しくは、導電性基板とその上に設けられた上記正電極層との組に置き換えられたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の二次電池。
【背景技術】
【0002】
二次電池としては、ニッケル水素電池(Ni−MH)やリチウムイオン二次電池(LIB)などが知られている。一方、近年、小型でかつ大容量の電池が求められている。そのため、単独で二次電池として機能する単位(以下、単層電池と呼ぶ)を、複数重ねるようなことが行われている。
【0003】
非特許文献1の319頁〜320頁には、
図1及び
図2に示すような円筒型及び角型のニッケル水素電池(Ni−MH)の構造が記載されている。円筒型電池1Aは、所定形状の薄板状の正極2及び負極3を、セパレータ4を介して渦巻状に巻き取り(渦巻は単層電池を重ねたと見ることができる)、円筒型のケース5に挿入し、電解液を注入後に密閉して電池として完成させている。角型電池1Bは、所定形状の薄板状の正極2及び負極3間にセパレータ4を介した構造を積層し、角型のケース5に挿入し、電解液を注入後に密閉して電池として完成させている。
【0004】
特許文献1には、
図3に示すような角型のリチウムイオン二次電池の内部構造(極板群)が記載されている。ジグザグに折り曲げられたセパレータ4の連続体の谷溝内に正極板2と負極板3とを交互に挿入して、ジグザグ方向に押圧して扁平にした極板群1Cが記載されている。このような極板群が、角型の外装缶に挿入され、電解液が注入された後に密閉されて角型電池として完成される。
【0005】
また、近年、固体薄膜化して構成される全固体型の二次電池が研究、開発されており、小型化を実現する二次電池として期待されている。
図4には、全固体型の二次電池の構成を示す斜視図及び断面図を示している。
図4は、正極端子及び負極端子などの端子部材、外装部材や被覆部材などの実装部材などを省略している。全固体型の二次電池1Dは、負極層3と正極層2との間に充放電時に内部変化を起こす固体の層(以下、蓄電層と呼ぶ)6を有するものである。全固体型の二次電池1Dとしては、上述した量子電池や、全固体型のリチウムイオン二次電池などがある。量子電池の場合、負極層3と正極層2との間に、充電動作で電子を蓄積(捕獲)し、放電動作で蓄積した電子を放出する層(後述するようにこの層を充電層と呼ぶ)が設けられており、この充電層が蓄電層6に該当する。また、全固体型のリチウムイオン二次電池の場合、負極層3と正極層2との間に、固体電解質層が設けられており、この固体電解質層が蓄電層6に該当する。なお、
図4に示す構造を単層電池として積層するような場合には、蓄電層6の周囲などに、負極層3と正極層2とを絶縁したり、蓄電層6の周囲を保護したりするシール7を設けることが好ましい(但し、シール7は必須の構成要素ではない)。
【0006】
全固体型の二次電池1Dも、周知のように、単層電池を直列に積層することで端子電圧を高めることができ、単層電池を並列に積層することで電流容量を大きくすることができる。
【0007】
図5は、二次電池1Dを単層電池とし、複数の単層電池を直列に接続した、容易に考えられる二次電池1Eを示す断面図である。二次電池1Eにおける中間の単層電池(1D)はその負極層3の下面が1段下の単層電池の正極層2の上面と接触しており、最下段の単層電池はその負極層3の下面は負極端子板若しくは負極端子層(以下、負極端子板と呼ぶ)8の上面と接触しており、最上段の単層電池はその正極層2の上面は正極端子板若しくは正極端子層(以下、正極端子板と呼ぶ)9の
下面と接触している。負極端子板8及び正極端子板9はそれぞれ、図示しない実装部材の外部に負極端子、正極端子を露出させるための延長部8a、9aを有している。二次電池1Dの端子電圧がVo、電流容量がIo(=I×t(Ah))であり、二次電池1Dの積層数(直列接続数)をNとすると、二次電池1Eの端子電圧はN×Vo(例えば、積層数が6であれば6×Vo)であり、電流容量はIoとなる。
【0008】
図6は、二次電池1Dを単層電池とし、複数の単層電池を並列に接続した、容易に考えられる二次電池1Fを示す断面図である。二次電池1Fにおける各単層電池(1D)はそれぞれ、負極端子板8及び正極端子板9に挟持されており、ある単層電池に係る正極端子板9と、その上段の単層電池に係る負極端子板8との間には絶縁層10が設けられている。複数の負極端子板8は負極端子連結部8bによって連結されており、複数の正極端子板9は正極端子連結部9bによって連結されており、負極端子連結部8b及び正極端子連結部9bはそれぞれ、図示しない実装部材の外部に負極端子、正極端子を露出させるための延長部8a、9aを有している。二次電池1Dの端子電圧がVo、電流容量がIoであり、二次電池1Dの積層数(並列接続数)をNとすると、二次電池1Fの端子電圧Voであり、容量はN×Io(例えば、積層数が6であれば6×Io)となる。
【0009】
高い端子電圧で大きな電流容量の二次電池を実現するには、単層電池の直列積層と並列積層とを組み合わせれば良い。例えば、
図6の負極端子板8及び正極端子板9に挟持されている単層電池(1D)の部分を、複数の単層電池を直列的に積層したものと置き換えることにより、高い端子電圧で大きな電流容量の二次電池を構成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(A)量子電池について
以下に説明する各実施形態の二次電池は、量子電池の技術を適用したものである。そこで、各実施形態の説明に先立ち、量子電池について簡単に説明する。
【0024】
上述したように、量子電池は、金属酸化物の光励起構造変化を利用して、バンドギャップ中に新たなエネルギー準位を形成して電子を捕獲する動作原理に基づく二次電池をいう。
【0025】
量子電池は、全固体型の二次電池であり、単独で二次電池として機能する構成は上述した
図4で表すことができる。すなわち、量子電池(1D)は、負極層3と正極層2との間に充電層6を有するものである。
【0026】
充電層6は、充電動作で電子を蓄え、放電動作で蓄電電子を放出し、充放電がなされていない状態で電子を保持(蓄電)している層であり、光励起構造変化技術が適用されて形成されている。
【0027】
ここで、光励起構造変化は、例えば、国際公開WO/2008/053561に記載されており、その出願の発明者(本願の発明者でもある)である中澤明氏が見出した現象(技術)である。すなわち、中澤明氏は、所定値以上のバンドギャップを持つ半導体であって透光性をもつ金属酸化物が、絶縁被覆された状態で有効な励起エネルギーを与えられると、バンドギャップ内に電子不在のエネルギー準位が多数発生することを見出した。量子電池は、これらのエネルギー準位に電子を捕獲させることで充電し、捕獲した電子を放出させることで放電するものである。
【0028】
充電層6は、絶縁被膜で覆われたn型金属酸化物半導体の微粒子が、負極層3に対して薄膜状に付着され、n型金属酸化物半導体が紫外線照射によって光励起構造変化を起こし、電子を蓄えることができるように変化したものである。
【0029】
量子電池の場合、正極層2は、電極本体層と、充電層6に接するように形成されたp型金属酸化物半導体層とを有する。p型金属酸化物半導体層は、電極本体層から充電層6への電子の注入を防止するために設けられている。負極層3と正極層2の電極本体層とは、導電層として形成されたものであれば良い。
【0030】
以下に説明する各実施形態の二次電池は、
図4に示す単独で量子電池として機能する単位(以下、単層量子電池と呼ぶ)を1又は複数利用したものである。各実施形態に共通する技術思想は、単層量子電池を、折畳方向を交互に変えて2回以上折り畳んで利用するという点にある。そのため、単層量子電池は、折り畳み方向の長さが、折り畳み方向に必要な長さの折畳回数倍程度の長さを有する形状に形成されている。形状としては、矩形が好ましいが、矩形に限定されるものではなく、円形、楕円形、六角形などを単位に単位形状を折畳方向に繋げた形状であっても良い。ここで、単層量子電池の形状は、折り畳んだ後の各折畳部分の図形が完全に重なる形状であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0031】
例えば、単層量子電池における正極層2及び負極層3の膜厚は10nm〜1μm程度にでき、充電層6の膜厚は50nm〜10μm程度にできる。すなわち、単層量子電池はシート状の電池であって2回以上折り畳むことが可能なものである。また、充電層6が、完全固体の層ではあるが粒子を押し固めた層ではないので、折り曲げ部分で損傷したり亀裂が生じたりするようなことはない。
【0032】
なお、
図4についての上述した説明でも言及したように、単層量子電池においても、シール7は必須の構成要素ではない。折り畳んだ後において、負極層3と正極層2との間の短絡などの不要な短絡を空隙などで防止できるのであれば、シール7を省略することができる。
【0033】
(B)第1の実施形態
次に、本発明による二次電池の第1の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図7は、第1の実施形態に係る二次電池20Aの構成を示す断面図であり、上述した
図4(B)と同様な方向から見た断面図である。
図7は、面方向の寸法より厚み方向の寸法を強調して示している。
【0034】
第1の実施形態に係る二次電池20Aは、2回以上折り畳まれた(
図7では2回の例)の単層量子電池(以下、適宜、折畳単層量子電池と呼ぶ)21を有する。折畳単層量子電池21において、下側から数えて、奇数番目の折曲部は正極層2を内側にして折り畳まれた部分であり、偶数番目の折曲部は負極層3を内側にして折り畳まれた部分であり、上述のように、交互に折り畳む方向を変えることにより、折畳単層量子電池21は蛇腹構造を有している。所望する電流容量に応じて折畳む前の単層量子電池の形状を定め、実装形状などを考慮して、単層量子電池の折畳回数を選定するようにしても良い。
【0035】
単層量子電池の折り畳みにより対向するようになった正極層2の上下の部分間には、正極端子板9が、その先端が折曲部の内面に接するまで挿入されている。また、折畳単層量子電池21の外部に露出している正極層2(後述する
図8の場合にはこの正極層2は存在しない)には、正極端子板9が接触されている。全ての正極端子板9は、正極端子連結部9bによって連結されている。単層量子電池の折り畳みにより対向するようになった負極層3の上下の部分間には、負極端子板8が、その先端が折曲部の内面に接するまで挿入されている。また、折畳単層量子電池21の外部に露出している負極層3には、負極端子板8が接触されている。全ての負極端子板8は負極端子連結部8bによって連結されている。なお、
図7に示した一部の負極端子板8や一部の正極端子板9を省略することも可能である。例えば、
図7上、最も上に位置している正極端子板9及び最も下に位置している負極端子板8は省略することもできる。逆に、これら正極端子板9及び負極端子板8を残して、他の正極端子板9及び負極端子板8を省略することもできる。
【0036】
なお、負極端子板8及び正極端子板9は「板」とネーミングしているが、薄板だけでなく、薄膜状のものであっても良い。また、全面が電気的接触に機能する必要はなく、メッシュ状や櫛歯状などの導電性部材が一部欠落したものであっても良い。
【0037】
負極端子連結部8b及び正極端子連結部9bはそれぞれ、図示しない実装部材の外部に負極端子、正極端子を露出させるための延長部8a、9aを有している。
図7では、負極端子連結部8b及び正極端子連結部9bが左右に設けられたものを示したが、負極端子連結部8b及び正極端子連結部9bの位置は任意であっても良い。例えば、紙面の法線方向の手前及び奥側に負極端子連結部8b及び正極端子連結部9bを設けるようにしても良く、負極端子連結部8bを左に、正極端子連結部9bを紙面の法線方向の手前に設けるようにしても良い。また、負極端子連結部8b及び正極端子連結部9bはそれぞれ、板状のものであっても棒状のものであっても良く、また、1つの部材に限定されず、複数の部材が紙面の法線方向に配列されたものであっても良い。
【0038】
また、
図7では、負極端子板8、延長部8a及び負極端子連結部8bが一体的に構成され、正極端子板9、延長部9a及び正極端子連結部9bが一体的に構成されているように示したが、当初より一体的な構成である必要はない。例えば、負極端子板8、延長部8a及び負極端子連結部8bが別部材として構成され、製造の過程で、連結されるものであっても良い。
【0039】
負極端子板8、延長部8a及び負極端子連結部8bは、電気的に充分に低い抵抗値で、負極層3と図示しない外部への負極端子とを接続できるならば、形状や材質は限定されるものではない。同様に、正極端子板9、延長部9a及び正極端子連結部9bは、電気的に充分に低い抵抗値で、正極層2と図示しない外部への正極端子とを接続できるならば、形状や材質は限定されるものではない。
【0040】
第1の実施形態に係る二次電池20Aは、折畳単層量子電池21を適用しているので、単層量子電池と同じ平面方向から見た面積を有する場合、電流容量を格段的に大きくすることができる。
【0041】
また、第1の実施形態に係る二次電池20Aは、折畳構造を適用していても、交互に折り畳む方向を変えることにより、正極及び負極間の絶縁を確保する絶縁層が不要であり、全容積を小さくすることが可能である。
【0042】
さらに、単層量子電池を折り畳んで利用しているので、二次電池20Aが占有する面積を小さいものとすることができる。例えば、
図6に示す二次電池1Fの単層電池と同様な面積の単層量子電池を適用したとした場合、二次電池20Aが占有する面積を、二次電池20Aの3分の1程度とすることができる。
【0043】
さらにまた、単層量子電池は折り畳んで利用しているので、積層対象の部品数などを少なくでき、積層工程の工数を軽減することができる。例えば、
図6に示す二次電池1Fの厚みと同程度の厚みの二次電池20Aを形成する場合でも、必要な折畳単層量子電池21の数は1である。
【0044】
また、一部の負極端子板8及び正極端子板9が、その先端が折畳単層量子電池21の折曲部の内面に接するまで挿入されるようにしているので、折畳単層量子電池21の位置のばらつきをなくすことができ、短絡などを未然に防止することができる。
【0045】
図7は、下側から数えて、奇数番目の折曲部は正極層2を内側にして折り畳まれ、偶数番目の折曲部は負極層3を内側にして折り畳まれた折畳単層量子電池21を適用したものを示したが、第1の実施形態の二次電池20Aの変形例として、下側から数えて、奇数番目の折曲部が負極層3を内側にして折り畳まれ、偶数番目の折曲部は正極層2を内側にして折り畳まれた折畳単層量子電池を適用したものを挙げることができる。この変形例は、
図7における正極要素が負極要素に置き換わり、
図7における負極要素が正極要素に置き換わったものとなる。
【0046】
図7は、1つの折畳単層量子電池21を適用した二次電池20Aを示したが、複数の折畳単層量子電池21を適用して1つの二次電池を構成するようにしても良い。例えば、2つの折畳単層量子電池21を左右方向に並べて電流容量を稼ぐようにしても良い。この場合、例えば、負極端子板8は奥行方向の奥側から手前側に延長させると共に、正極端子板9は奥行方向の手前側から奥側に延長させる(延長方向は折り曲げ線と平行)。この変形実施形態の折畳単層量子電池より折り畳み回数を倍にした1つの折畳単層量子電池21を適用して形成された第1の実施形態の二次電池20Aも同様な電流容量を実現できるが、この変形実施形態の二次電池は、二次電池20Aに比較し、左右方向の長さは長いが、厚み(上下方向の長さ)を薄くできる。従って、用途などに応じて、どちらを適用するかを決定すれば良い。
【0047】
図7に示す複数の二次電池20Aを、1つの実装部材の中に実装するようにしても良く、この場合に、複数の二次電池20Aの延長部8a及び9aを直列接続しても良く、また、並列接続しても良く、さらに、直並列接続しても良く、さらにまた、個別に外部に露出させるようにしても良い。例えば、折畳単層量子電池21の面形状が半円形状とし、2つの二次電池20Aを、平面形状が概略円となるように実装部材の中に実装するようにしても良い。
【0048】
図7は、適用している折畳単層量子電池21の折畳回数が2回である二次電池20Aを示したが、
図8は、適用している折畳単層量子電池21の折畳回数が3回である、第1の実施形態の技術思想が適用された二次電池を示している。上述したように、折畳回数は2回以上であれば良い。
図8に示す二次電池についての詳細説明は省略する。
【0049】
(C)第2の実施形態
次に、本発明による二次電池の第2の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図9は、第2の実施形態に係る二次電池20Bの構成を示す断面図であり、上述した
図4(B)と同様な方向から見た断面図である。
図9は、面方向の寸法より厚み方向の寸法を強調して示している。
【0050】
第2の実施形態に係る二次電池20Bは、
図10に示すように、単層量子電池を、天地(上下方向の向き)を同じにして2段(この段数は直列接続数となっており、3段以上でも良い)に重ね、その2段重ねの状態で、折畳方向を交互に変えて、2回以上(
図9は3回の例)折り畳まれた電池構造(以下、適宜、多段折畳単層量子電池と呼ぶ)22を有する。多段折畳単層量子電池22において、下側から数えて、奇数番目の折曲部は上段の単層量子電池の正極層2を内側にして折り畳まれた部分であり、偶数番目の折曲部は下段の単層量子電池の負極層3を内側にして折り畳まれた部分であり、上述のように、交互に折り畳む方向を変えることにより、多段折畳単層量子電池22は蛇腹構造を有している。所望する電流容量に応じて折畳む前の単層量子電池の形状を定め、実装形状などを考慮して、単層量子電池の折畳回数を選定するようにしても良い。また、折り畳む前の単層量子電池を重ねる段数は、所望する端子電圧に応じて選定すれば良い。
【0051】
折り畳みにより対向するようになった正極層2の上下の部分間には、正極端子板9が、その先端が折曲部の内面に接するまで挿入されている。なお、
図9では存在しないが、折畳回数が偶数回の場合には、多段折畳単層量子電池22も、外部に露出している正極層2を有し(
図7参照)、この外部露出の正極層2にも正極端子板9が接触されている。全ての正極端子板9は、正極端子連結部9bによって連結されている。単層量子電池の折り畳みにより対向するようになった負極層3の上下の部分間には、負極端子板8が、その先端が折曲部の内面に接するまで挿入されている。また、多段折畳単層量子電池22の外部に露出している負極層3には、負極端子板8が接触されている。全ての負極端子板8は負極端子連結部8bによって連結されている。なお、
図9に示した一部の負極端子板8や一部の正極端子板9を省略することも可能である。負極端子連結部8b及び正極端子連結部9bはそれぞれ、図示しない実装部材の外部に負極端子、正極端子を露出させるための延長部8a、9aを有している。
【0052】
第2の実施形態に係る二次電池20Bは、多段折畳単層量子電池22が単層量子電池の直列接続となっていて端子電圧を高くすることができ、多段折畳単層量子電池22は展開すれば明らかなように、大面積の単層量子電池を利用したものとなっているので電流容量を大きくすることができる。
【0053】
また、第2の実施形態に係る二次電池20Bも、第1の実施形態と同様に、絶縁層が不要であって全容積を小さくできる、2回以上折畳んでいるので占有面積を小さくできる、積層対象の部品数などを少なくできて積層工程の工数を軽減できる、多段折畳単層量子電池22の位置のばらつきを抑えることができる、などの効果を奏することができる。
【0054】
上記では、単層量子電池を多段に重ね、その多段に重ねた状態で、折畳方向を交互に変えて2回以上折り畳んで多段折畳単層量子電池22を得るように説明したが、
図11に示すように、多段折畳単層量子電池22における折畳んだ各段用の単層量子電池を得た後、各段用の折畳単層量子電池を嵌め合わせて多段折畳単層量子電池22を得るようにしても良い。
【0055】
また、詳述は避けるが、第1の実施形態に係る二次電池20Aの説明で適宜言及した変形実施形態のうち、第2の実施形態に係る二次電池20Bに適用可能なものは、第2の実施形態に係る二次電池20Bの変形実施形態となる。
【0056】
(D)第3の実施形態
次に、本発明による二次電池の第3の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図12は、第3の実施形態に係る二次電池20Cの構成を示す断面図であり、上述した
図4(B)と同様な方向から見た断面図である。
図12は、面方向の寸法より厚み方向の寸法を強調して示している。
【0057】
第3の実施形態に係る二次電池20Cは、
図13に示すように、2つの単層量子電池を、天地を逆にして重ね(
図13の例では正極層2同士が接触するように重ね)、その2段重ねの状態で、折畳方向を交互に変えて、2回以上(
図12は3回の例)折り畳まれた電池構造(以下、適宜、逆2段折畳単層量子電池と呼ぶ)23を有する。逆2段折畳単層量子電池23において、下側から数えて、奇数番目の折曲部は上段の単層量子電池の負極層3を内側にして折り畳まれた部分であり、偶数番目の折曲部は下段の単層量子電池の負極層3を内側にして折り畳まれた部分であり、上述のように、交互に折り畳む方向を変えることにより、逆2段折畳単層量子電池23は蛇腹構造を有している。所望する電流容量に応じて折畳む前の単層量子電池の形状を定め、実装形状などを考慮して、単層量子電池の折畳回数を選定するようにしても良い。
【0058】
2つの単層量子電池の接触している正極層2の間であって、逆2段折畳単層量子電池23の端部から直線で到達し得る折曲部までには、正極端子板9が、その先端が折曲部の内面に接するまで挿入されている。全ての正極端子板9は、正極端子連結部9bによって連結されている。単層量子電池の折り畳みにより対向するようになった負極層3の上下の部分間には、負極端子板8が、その先端が折曲部の内面に接するまで挿入されている。また、逆2段折畳単層量子電池23の外部に露出している負極層3には、負極端子板8が接触されている。全ての負極端子板8は負極端子連結部8bによって連結されている。なお、
図12に示した一部の負極端子板8や一部の正極端子板9を省略することも可能である。負極端子連結部8b及び正極端子連結部9bはそれぞれ、図示しない実装部材の外部に負極端子、正極端子を露出させるための延長部8a、9aを有している。
【0059】
第3の実施形態に係る二次電池20Cは、2つの単層量子電池の並列接続になっていると共に、逆2段折畳単層量子電池23は展開すれば明らかなように、大面積の単層量子電池を利用したものとなっているので電流容量を大きくすることができる。
【0060】
また、第3の実施形態に係る二次電池20Cも、第1の実施形態と同様に、絶縁層が不要であって全容積を小さくできる、2回以上折畳んでいるので占有面積を小さくできる、積層対象の部品数などを少なくできて積層工程の工数を軽減できる、逆2段折畳単層量子電池23の位置のばらつきを抑えることができる、などの効果を奏することができる。
【0061】
図12に示した二次電池20Cは、
図13に示すように、正極層2を上にした単層量子電池を下側に、正極層2を下にした単層量子電池を上側にして重ねたものを折畳んだものであったが、正極層2を上にした単層量子電池と正極層2を下にした単層量子電池の数をそれぞれ複数にするようにしても良い。例えば、正極層2を上にした単層量子電池を2段に重ねてそれを下側に配置し、正極層2を下にした単層量子電池を2段に重ねてそれを上側に配置し、計4段に単層量子電池を重ねた状態で、2回以上折り畳んだ構造を利用して二次電池を構成するようにしても良い。
【0062】
また、詳述は避けるが、既述した実施形態に係る二次電池20A、20Bの説明で適宜言及した変形実施形態のうち、第3の実施形態に係る二次電池20Cに適用可能なものは、第3の実施形態に係る二次電池20Cの変形実施形態となる。
【0063】
(E)第4の実施形態
次に、本発明による二次電池の第4の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図14は、第4の実施形態に係る二次電池20Dの構成を示す断面図であり、上述した
図4(B)と同様な方向から見た断面図である。
図14は、面方向の寸法より厚み方向の寸法を強調して示している。
【0064】
上述した第1〜第3の実施形態は、負極層3、充電層6及び正極層2を有する単層量子電池(
図4参照)を折り畳んだ折畳単層量子電池を利用するものであった(シール7は必須要件ではない)。負極層3、充電層6及び正極層2を有する単層量子電池は、基板上に対する薄膜形成処理を通じて形成され、基板から離脱されて形成されたものである。若しくは、離脱された後に、所定の形状に切り出されて形成されたものである。量子電池の場合、上述した基板として、絶縁性基板が適用できるだけでなく、銅やステンレスなどの導電性材料でなる薄い導電性基板を適用することができる。
【0065】
この第4の実施形態に係る二次電池20Dは、第1の実施形態に係る二次電池20A(
図7参照)の一部を変更したものである。導電性基板12の上に負極層3、充電層6及び正極層2を積層し、短絡防止のシール7(但し、シール7は必須の構成要件ではない)を有する構成を単位構成(以下、適宜、基板付単層量子電池と呼ぶ)とし、この基板付単層量子電池を、折畳方向を交互に変えて2回以上折り畳んだ折畳基板付単層量子電池24を、第1の実施形態に係る二次電池20Aの折畳単層量子電池21に代えて適用したものである。その他の構成は、第1の実施形態に係る二次電池20Aと同様である。
【0066】
第4の実施形態の二次電池20Dによれば、折り畳む前の単位構成が基板付単層量子電池であるため、基板から、電池構成部分を剥離するような製造工程を不要とすることができる。その他の効果は、第1の実施形態と同様である。
【0067】
折畳基板付単層量子電池24が有する基板が導電性基板12であるので、導電性基板12に負極層3の機能を担当させ、負極層3を省略することも可能である。
【0068】
詳述は避けるが、既述した各実施形態に係る二次電池20A〜20Cの説明で適宜言及した変形実施形態のうち、第4の実施形態に係る二次電池20Dの技術思想を適用可能なものは、第4の実施形態に係る二次電池20Dの変形実施形態となる。
【0069】
第4の実施形態に係る二次電池20Dは、第1の実施形態に係る二次電池20Aの折畳単層量子電池21の部分を、折畳基板付単層量子電池24に置き換えたものであった。図示は省略するが、第2、第3の実施形態に係る二次電池20B、20Cの折畳単層量子電池22、23に係る単層量子電池を、基板付単層量子電池に置き換えた二次電池を実現しても良い。
【0070】
図14に示す二次電池で20Dは、導電性基板12が負極層3側に設けられたものであったが、導電性基板12が正極層2側に設けられた場合にも同様に、導電性基板12が残ったまま二次電池を構成するようにしても良い。
【0071】
(F)第5の実施形態
次に、本発明による二次電池の第5の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図15(C)は、第5の実施形態に係る二次電池20Eの構成を示す正面図であり、上述した
図4(B)の断面図と同様な方向から見た正面図である(本来見える手前側のシール7については除外して示した正面図である)。
図15(C)は、面方向の寸法より厚み方向の寸法を強調して示している。
【0072】
第5の実施形態に係る二次電池20Eは、例えば、以下のように形成される。最初に、
図15(A)の平面図に示すように、単層量子電池に対して、1回目の折り畳みが実行される折り曲げ線近傍まで延びる1本又は複数本(
図15(A)は4本の例)のスリット25を設ける。スリット25は、完成された単層量子電池に対するカッティングにより設けるようにしても良く、薄膜の順次形成による単層量子電池の形成過程においてスリット25となる部分の膜形成を阻害するようにして設けるようにしても良い。次に、
図15(B)の
平面図に示すように、スリット25で切り分けられた部分の中から予め定まっている部分を、所定回数以上(
図15は3回の例を示している)折り畳む。
図15は、一番奥側の部分と、奥側から2番目及び3番目のスリット25間の部分と、一番手前側の部分とが折り畳まれた例である。折り畳まれない部分は、折り畳み後の全体として見た場合、折り畳まれた蛇腹本体から引き出した舌片26を構成しており、蛇腹本体における、舌片26の延長部分は溝27となっている。以下、
図15(B)に示すような舌片26を有する蛇腹状に折り畳まれた単層量子電池28を、以下、適宜、舌片付折畳単層量子電池と呼ぶ。
【0073】
なお、以下の説明において、説明に用いている図面で舌片及び溝が見えない場合にも、文章では符号「26」や「27」を付して説明していることもある。
【0074】
図16(B)は、唯一の舌片26及びその延長の溝27が手前側に設けられている舌片付折畳単層量子電池を示し、
図16(A)は、その舌片付折畳単層量子電池の蛇腹状に折り畳む前の状態を示している。
図17(B)は、唯一の舌片26及びその延長の溝27が奥行方向の中央に設けられている舌片付折畳単層量子電池を示し、
図17(A)は、その舌片付折畳単層量子電池の蛇腹状に折り畳む前の状態を示している。
【0075】
図15〜
図17に示すように、舌片付折畳単層量子電池28は、舌片26の数や舌片26の位置は限定されない。また、舌片26の幅も限定されるものではない。舌片26の長さは、スリット25の長さに応じて定まるが、蛇腹状に折り畳んだ後、舌片26の長手方向に直交する方向に沿ってカットすることにより、スリット25の長さより短くするようにしても良い。
【0076】
第5の実施形態に係る二次電池20Eにおいて、正極端子板9は、少なくとも舌片26における正極層2と接触している。さらに、正極端子板9が溝27の表面に露出している正極層2と接触するように延びているものであっても良く、
図15(C)はこのような場合を示している。負極端子板8は、例えば、蛇腹本体における最も下側の折畳部分の下側の負極層3(この延長上の舌片26における負極層3を含んでも良い)や、蛇腹本体における最も上側の折畳部分の上側の負極層3(折畳回数が偶数回の場合にはこのような負極層が存在しない)に接触する。負極端子板8及び正極端子板9はそれぞれ、図示しない実装部材の外部に負極端子、正極端子を露出させるための延長部8a、9aに接続されている。
【0077】
図15では、舌片26が蛇腹本体における下折畳部分と同一平面上に延びているものを示したが、舌片26が蛇腹本体における下折畳部分に対して180度以外の角度を持つように折り曲げられたものであっても良く、それに応じて、正極端子板9の延長方向を選定しても良い。また、舌片26がその途中で折り曲げられ、折り曲げられた先端側で正極端子板9と接触するものであっても良い。
【0078】
また、
図15では、スリット25と折り曲げ線とが直交する場合を示したが、これに限定されず、例えば、
図18に示すように、スリット25と折り曲げ線とが90度以外の角度で交わるものであっても良い。
【0079】
さらに、
図15では、スリット25を設けて折り畳むことにより舌片付折畳単層量子電池28を形成する場合を示したが、他の方法によって、舌片付折畳単層量子電池28を形成するようにしても良い。例えば、
図19に示すように、蛇腹状に折り畳む前の単層量子電池として、既に舌片26が形成されている形状のものを用い、舌片26の長手方向と平行な折り曲げ線に沿って、舌片26以外の部分を折り畳むことにより、舌片付折畳単層量子電池28を形成するようにしても良い。この場合において、上述した溝27に相当する部分ができるように蛇腹状に折り畳んでも良く、溝27に相当する部分ができないように蛇腹状に折り畳んでも良い。
【0080】
第5の実施形態に係る二次電池20Eによれば、舌片26を設けたので、正極層2そのものを引出電極の構成要素として利用でき、電極分の容積や体積などを削減することができる。
【0081】
単層量子電池を蛇腹状に折り畳んで利用することの効果は、既述した実施形態で説明した通りである。
【0082】
詳述は避けるが、既述した各実施形態に係る二次電池20A〜20Dの説明で適宜言及した変形実施形態のうち、第5の実施形態に係る二次電池20Eに適用可能なものは、第5の実施形態に係る二次電池20Eの変形実施形態となる。
【0083】
(G)他の実施形態
上記各実施形態の説明においても、種々変形実施形態に言及したが、さらに、以下に例示するような変形実施形態を挙げることができる。
【0084】
(G−1)第1の実施形態に係る二次電池20Aの変形例として、複数の二次電池20Aを、1つの実装部材の中に実装することを上述したが、1つの実装部材の中に実装する複数の二次電池が、上述した異なる実施形態の二次電池であっても良い。この場合において、複数の二次電池の延長部8a及び9aを直列接続しても良く、また、並列接続しても良く、さらに、直並列接続しても良く、さらにまた、個別に外部に露出させるようにしても良い。所望する端子電圧や電流容量に応じて、直列接続、並列接続又は直並列接続する二次電池を選定すれば良い。
【0085】
(G−2)上記各実施形態では、単層量子電池(
図4参照)が折り畳みを考慮した特別な工夫を備えないものであったが、折り畳みを考慮した特別な工夫がなされた単層量子電池を折り畳むようにしても良い。
図20は、このような変形実施形態に係る単層量子電池の断面図(
図4(B)参照)である。折曲部となる紙面の法線方向に延びる帯状の領域30P、30Nはそれぞれ、正極層2若しくは負極層3(導電性基板12の上に設けられている負極層であっても良い)だけが設けられ、充電層6や他極層が設けられていない、折り畳みに対する力学的な抵抗が弱くされたものであっても良い。この変形例の場合には、充電層6や他極層が設けられていないために窪みになっている帯状領域に、円状の絶縁棒体を位置させて折り畳むようにしても良い。また、図示は省略するが、折り曲げ線上に、負極層3、充電層6及び正極層2が設けられた場合であっても、折り曲げ線に沿って、ミシン目を入れて、折り畳みに対する力学的な抵抗が弱くするようにしても良い。
【0086】
(G−3)上記各実施形態では、単層量子電池を2回以上折り畳んだ折畳単層量子電池だけを適用するものであったが、これに加えて、他の構成の単層量子電池を利用するものであっても良い。
図21及び
図22はそれぞれ、このような変形実施形態に係る二次電池20F、20Gの構成を示す断面図である。
【0087】
図21に示す二次電池20Fは、
図8に示した二次電池に対する変形実施形態となっており、最上部側に2つの単層量子電池31が、正極層2側が対向するように積層されている。対向する正極層2に挟まれるように正極端子板9が設けられている。また、2つの単層量子電池31の負極層3はそれぞれ、異なる負極端子板8に接触している。折り畳まない小面積の単層量子電池31を積層対象とした場合、元の大きなシートから、2回以上の折り畳み用の単層量子電池を切り出して検査したときにそれが不良品であっても、その一部の領域が正常であれば小面積の単層量子電池31として、二次電池20Fで利用することができる。
【0088】
図22に示す二次電池20Gは、
図8に示した二次電池に対する変形実施形態となっており、最上部側に、単層量子電池を正極層2側が対向するように2つ折りに折り畳まれた折曲単層量子電池32が積層されている。対向する正極層2に挟まれるように正極端子板9が設けられている。また、折曲単層量子電池32の上下の負極層3はそれぞれ、異なる負極端子板8に接触している。2つ折りの折曲単層量子電池32を積層対象とした場合、元の大きなシートから、2回以上の折り畳み用の単層量子電池を切り出して検査したときにそれが不良品であっても、その一部の領域が正常であれば、折曲単層量子電池32として、二次電池20Gで利用することができる。
【0089】
(G−4)上記各実施形態では、折畳単層量子電池の面の法線方向が上下方向のものを示したが、折畳単層量子電池の面の法線方向が左右方向のもの(例えば、
図7の状態を反時計回り若しくは時計回りに90度だけ回転させたような二次電池)であっても良い。
【0090】
(G−5)上記各実施形態では、単層量子電池を、各折畳部分が均等の幅になるように折畳むものを示したが、全ての折畳部分の幅が同じである必要はない。
【0091】
(G−6)上記各実施形態では、単層二次電池が量子電池であるものを示したが、量子電池に限定されるものではなく、シート状(平行平板状)の二次電池であれば良い。例えば、固体リチウムイオン二次電池も、折り畳むことができるものであれば、上記各実施形態の積層対象とすることができる。