(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6152116
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】磁気ブレーキを有する貯蔵タイプのヤーン供給装置
(51)【国際特許分類】
D03D 47/36 20060101AFI20170612BHJP
B65H 59/02 20060101ALI20170612BHJP
D01H 13/00 20060101ALN20170612BHJP
【FI】
D03D47/36
B65H59/02
!D01H13/00 C
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-541767(P2014-541767)
(86)(22)【出願日】2012年11月8日
(65)【公表番号】特表2015-504489(P2015-504489A)
(43)【公表日】2015年2月12日
(86)【国際出願番号】IB2012002325
(87)【国際公開番号】WO2013072736
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2015年9月3日
(31)【優先権主張番号】MI2011A002091
(32)【優先日】2011年11月17日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】513122107
【氏名又は名称】ビティエッセエッレ インターナショナル ソチエタ ペル アチオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(74)【代理人】
【識別番号】100175237
【弁理士】
【氏名又は名称】加納 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【弁理士】
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【弁理士】
【氏名又は名称】比企野 健
(72)【発明者】
【氏名】バレア チツイアノ
【審査官】
山本 杏子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−163446(JP,A)
【文献】
特開平04−228652(JP,A)
【文献】
特開昭49−124345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 47/36
B65H 59/02
D01H 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵タイプの織物用途のためのヤーン(18)供給装置であって、
スプールから来るヤーン(18)の巻き連なり(20)が巻き付けられるドラム(16)を担持する本体(12)と、
繊維機械による引き出しの下にヤーン(18)がドラム(16)を離れる際に、ヤーン(18)に作用するようになっており、磁石(30、36、38)を用いるタイプのものである制動部材(22)であって、
ドラム(16)に対して移動可能な環状の第1の永久磁石(30)と、少なくとも1個の固定された第2の磁石(36、38)、及び
前記第2の磁石(36、38)によって前記環状の第1の永久磁石(30)に加えられる作用を変更する調節手段(38、39)、
を備えている制動部材(22)と、
前記第2の磁石に対する前記調節手段の介入を制御するため、前記調節手段に作用するようになっている制御ユニットと、
ドラムを離れるヤーン(18)の張力の値を測定する張力センサ(24)を、
備えたヤーン(18)供給装置において、
前記環状の第1の永久磁石(30)は、ドラム(16)の軸線と平行にドラムに沿って自由に移動することができるリングとして形作られ、ドラムに対して動かない受止要素(32)と協働するようになっており、ヤーン(18)は、制動を受ける際に、前記環状の第1の永久磁石(30)と前記受止要素(32)との間に挟まれ、前記環状の第1の永久磁石(30)は、前記環状の第1の永久磁石(30)がドラム(16)を出るヤーン(18)を受止要素(32)に押圧する作業の第1の位置(30A)と、この効果が起きない第2の位置(30B)に行くようにドラム(16)に沿ってドラムと平行に移動することができるよう、ドラム(16)の直径よりも大きな直径を有しており、制動作用は、ヤーンを、自由に移動可能な前記環状の第1の永久磁石(30)と、ドラム(16)に対して動かない前記受止要素(32)との間で、ドラム(16)を出るヤーン(18)の運動の方向に、圧迫することにより行われ、
前記固定された第2の磁石(36、38)は、前記環状の第1の永久磁石(30)を、前記環状の第1の永久磁石(30)の前記位置のうちの第1の位置(30A)又は第2の位置(30B)に維持することができ、制御ユニット(26)は、張力センサ(24)によって測定された張力値を受信し、それらの測定された張力値を所定の張力値と比較し、前記調節手段(38、39)が前記第2の磁石(36、38)によって前記環状の第1の永久磁石(30)に加えられる作用を調節して、張力値を所定の値に調節する前記環状の第1の永久磁石(30)のヤーンに対する制動作用を得るよう、リアルタイムに前記調節手段(38、39)に介入し、
前記第2の磁石が、永久磁石(36)であり、前記調節手段が、電磁石(38)を備え、前記電磁石(38)によって発生した磁場の強さを、前記制御ユニット(26)によって変えることにより、前記環状の第1の永久磁石(30)に対する前記永久磁石(36)の磁場の作用を変更できることを特徴とするヤーン(18)供給装置。
【請求項2】
調節手段が、前記第2の磁石を構成する電磁石(38)を備え、出て行くヤーン(18)の張力を調節するため、前記電磁石(38)によって発生した磁場の強さを、前記制御ユニット(26)によって変えることができることを特徴とする請求項1に記載のヤーン(18)供給装置。
【請求項3】
前記調節手段が、前記第2の磁石を構成する永久磁石(36)と、出て行くヤーン(18)の張力を調節するため、前記環状の第1の永久磁石(30)に対する第2の磁石(36)の位置を、制御ユニット(26)の制御下に、リアルタイムに変更するようになっているモータ付の機構(39)とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のヤーン(18)供給装置。
【請求項4】
前記所定の張力値が、前記制御ユニット(26)によりプログラム可能な態様で、経時的に可変であることを特徴とする請求項1に記載のヤーン(18)供給装置。
【請求項5】
受止要素(32)及び前記環状の第1の永久磁石(30)が、少なくともヤーン(18)と接触するそれらの部品に関して、耐摩耗性材料で被覆されていることを特徴とする請求項1に記載のヤーン(18)供給装置。
【請求項6】
前記耐摩耗性材料が、織物セラミックであることを特徴とする請求項5に記載のヤーン(18)供給装置。
【請求項7】
前記耐摩耗性材料が、クロムめっきによって得られることを特徴とする請求項6に記載のヤーン(18)供給装置。
【請求項8】
前記環状の第1の永久磁石(30)が、受止要素(32)と直接相互作用する形状になった部分と協働して、ヤーン(18)を制動することを特徴とする請求項1に記載のヤーン(18)供給装置。
【請求項9】
前記部分が、円錐状であることを特徴とする請求項8に記載のヤーン(18)供給装置。
【請求項10】
所定の張力値が、可変でプログラム可能であることを特徴とする請求項1に記載のヤーン(18)供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維機械に供給されるヤーンの張力を制御するための所謂「ブレーキ」が備わった、繊維用途のための貯蔵タイプのヤーン供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スプールから引き出されたヤーンが、繊維機械に供給される前に、巻き連なりになってドラムに巻き付けられる種々のタイプの斯かる供給装置が公知である。巻き付けられたヤーンがドラムを離れるドラム端部には、前記の「ブレーキ」、即ち、出て行くヤーンの制動部材が備わっており、この制動部材は、基本的に、内部が円錐台状の環状要素からなり、この円錐台状環状要素は、ドラムと軸線を同じくして配置され、このヤーンを制動してヤーンが繊維機械によって引き出される際の張力を制御するため、(所謂出口ポイントで)ドラムを離れる出口ヤーンが円錐台状環状要素に押圧されるようになっている。
【0003】
異なる「制動」の制御方法を用いる2種類の円錐台状環状要素タイプの「ブレーキ」が、公知である。
【0004】
1.円錐台状環状要素は、所定の位置に保持され、1個以上の予め組み込まれたばねにより、ばねによってかけられる力が繊維機械に供給されるヤーンの平均張力を決定するように、ドラムに押圧されている。ばねは、ヤーンに生じた縺れがブレーキを通過する時に、緩衝部材としても作用するので、ヤーンの破断を防止することができる。
【0005】
2.円錐台状環状要素は、所定の位置に保持され、1個以上の磁石の作用によりドラムに押圧されている。磁場の強さが、出て行くヤーンの平均張力を決定する。磁石の使用はまた、縺れが通るときに、この場合には円錐台状環状要素も移動し、縺れが通れるようにしてヤーンの破断を防止するのであれば、防振効果を得られるようにすることができる。
【0006】
タイプ2の制動部材を有するヤーン供給装置は、特に2個の永久磁石の斥力効果を用いるものであり、例えば、この目的で2個の互いに反発する磁石を用いる米国特許出願公開第2008/296425号及びヨーロッパ特許出願公開第2065496号に記載されている。ヨーロッパ特許出願公開第2065496号は、オペレーターが、ヤーンに対する制動効果を変更することができるよう、2個の永久磁石の相対位置を手動で変えられるようにする(しかし、このようにすると、2個の永久磁石の相対位置は、次の手動による調節まで、時間がたっても一定のままである)機構を提供している。しかしながら、この手動の制動調節機構は、作業条件が変わると、出て行くヤーンにおける一定のヤーン張力を保証することができない。特に、出て行くヤーンにかかる平均張力は、ヤーン供給装置のドラムへの積載中の、スプールからヤーンを繰り出す張力の関数、及び繊維機械によるヤーンの引き出しの速度の関数でもある。これは、各々のヤーンが、その固有弾性を有しており、ドラムからヤーンを繰り出す間の張力の違いが、ヤーンが異なる伸びを受けるようにするためである。その結果、入ってくるヤーン(即ち、スプールから来るドラムに巻き付けられるヤーン)の張力が変化するので、より大きな程度又はより小さな程度にヤーンがドラムを押すように、ヤーンはドラムに蓄積するようになるが、(例えば、スプールが満杯の状況とスプールが空に近い状況との間での)入ってくるヤーンにおける張力の変化は、前記手動の制動調節機構によっては補償することができないのは、明らかである。さらに、このドラムに巻かれたヤーンの張力の変化は、供給装置から繊維機械へヤーンを供給する速度の誤った測定値をもたらすこともある。当業者には公知のように、この速度は、ヤーン供給張力の関数である。特に、弾性の少ないヤーンに関しては、前記のブレーキを備えた供給装置を用いると、張力が大きいほど、速度が低くなり、したがって、張力が小さいほど、速度が高くなる。
【0007】
オペレーターが、これらの供給装置の作動、及び制動部材の摩耗という理由を含めて、特に出て行くヤーンの平均張力の値を、定期的に確認することと、そのため、出て行くヤーンの張力に対する摩耗の影響を補償するため、前記手動の制動調節機構に働きかけることを強いられることにも留意すべきである。
【0008】
これらの限界を克服するため、項目1で上に示すタイプの(即ち、ばねを使用する)貯蔵式供給装置が製造され、これらの貯蔵式供給装置はまた、それらの出口においてヤーンの張力を測定するためのセンサ及びブレーキによってドラムにかけられる圧力のための電子調節器を備えている。例えば、ヨーロッパ特許出願公開第2014809号を参照されたい。この公開明細書による貯蔵式供給装置には、小さなステッピングモーターを用いて円錐台状制動要素の位置を変えるための機械的手段と共に、センサを用いて出て行くヤーンの張力を測定することのできる電子制御手段が備わっており、そのため、出て行くヤーンの平均張力を調節することができる。これらの供給装置では、出て行くヤーンの張力を連続して測定することが、この張力の平均変化を補償することを可能にしている。
【0009】
しかしながら、それらの供給装置の(ステッピングモーターによって駆動されるウォームによる)張力調節方法のため、(特に、満杯のスプール状態から空のスプール状態への移行による、又は円錐台状制動要素の摩耗による)ゆっくりした張力変化は、完全に補償することができるものの、それらの供給装置は、それらの性質のため、他と異なる張力の1巻き又は2巻きがドラムに蓄積することのある(例えば、ヤーンの縺れの通過による、繊維機械の速度変化による、又はスプールに起因する張力のピークによる)早い張力変化を補償することができないという少なからぬ欠点がある。
【0010】
これらの供給装置の他の欠点は、(例えば円錐台状要素を厚さの異なる他の要素に代えることにより、或る部品を交換するため、制動部材に対して機械的介入が行われなければ)それらの利用張力の範囲が非常に限られていることである。この点で、最小張力が、円錐台状要素の重量によって制限されるのに対し、最大張力は、特にできるだけ軽く設計された円錐台状要素を必要とするが、このできるだけ軽く設計された円錐台状要素は、非常に早く摩耗する。
【0011】
国際特許出願公開第WO 2007/048528号は、編み機の編みシステムに供給するヤーンの長さを自動的に制御するための装置を記述している。
【0012】
この装置は、固定又は静止ドラムにより構成されるヤーン貯蔵部材を有する本体を備え、ヤーン貯蔵部材に対して巻き付け要素が回転してヤーンをスプールから受け取る。この装置には、電子制御ユニットによって制御される張力部材が備わっているのと同様に、繊維機械に供給されるヤーンの長さを測定するための機器が備わっている。
【0013】
この張力部材は、固定ドラムの端部に配置され半径方向に柔軟な円錐台状ボディを備え、このボディは、固定ドラムから離れて繊維機械に向けられるヤーンに作用することによりブレーキとして作動する。円錐台状ボディは、円筒状の延長部分を有し、円筒状の延長部分は、磁石リング又は、代わりに、前記円筒状の延長部分の周辺に分布させた複数の永久磁石を支持している。
【0014】
前記磁石リング又は複数の永久磁石から間隔をおいて、張力部材の静止部分に固定された他の永久磁石又は放射状に分布させた複数の永久磁石があり、この静止部分は、装置の本体に連結されているが、固定ドラムに対する静止部分の位置は、手動で調節することができる。この調節は、静止部分の単数又は複数の磁石と、ヤーンに位置づけた円錐台状ボディに連結された単数又は複数の磁石との間の相対位置を変えることができる。
【0015】
張力部材の静止部分はまた、ソレノイドを支持しており、ソレノイドは、装置を離れて繊維機械に向けられるヤーンの長さの測定値の関数としての可変の態様で、電力を電子的に供給される。
【0016】
このソレノイドへの可変の電力供給は、供給されるヤーンの長さを所望の値と等しく維持するよう、ヤーンにかかる円錐台状ボディの制動力を変えることができる。
【0017】
したがって、前記の先行技術の解決策は、ドラム上に存在するヤーンに作用する円錐台状ボディを備えており、ドラムは、制動がドラム上に存在するヤーンを押圧することにより行われるよう、この円錐台状ボディの適正な制動を可能にするため、必ず固定されていなくてはならない。
【0018】
加えて、この先行技術の解決策は、円錐台状ボディが固定ドラムから限られた引き出ししかできず、前記公知の装置を始動させる時に、円錐台状ボディと固定ドラムとの間に、繊維機械に向けられるヤーンを挿入することが困難であるという欠点を露呈する。
【0019】
さらに、他ならぬ(ヤーンを固定ドラムに押圧することにより行われる)ヤーンを制動する方法のために、この公知の解決策は、装置が使用されていない時でも、この円錐台状ボディを固定ドラムの近傍に保っておくため、円錐台状ボディと張力部材の静止部分との間に、機械的拘束要素を備えていなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、本発明の目的は、出て行くヤーンの張力の値を、リアルタイムに所定の基準値と等しくさせるように、いかなる状況においても出て行くヤーンの張力を有効に制御することのできるブレーキを備えた貯蔵型供給装置を提供することである。
【0021】
本発明の他の目的は、ヤーンが出て行く際の張力(繊維機械の作業張力)の経時変化をプログラムできるようにして、即ち、要求される態様で経時的に変化する基準張力を有して、それにより、最終製品に対する特定の効果を得ることのできる上述のタイプの供給装置を提供することである。
【0022】
本発明の他の目的は、ブレーキの自動開放をもたらすことにより、「挿入」段階(ドラムへのヤーンの初期積載)を容易にする上述のタイプの供給装置を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、公知の供給装置の作業張力範囲よりも広い作業張力範囲を有する上述のタイプの供給装置を提供することである。
【0024】
本発明の更に別の目的は、制動部材が、実際に、ヤーンの通過に起因する摩耗に影響されない上述のタイプの供給装置を提供することである。
【0025】
本発明の更なる目的は、繊維機械の或る特にデリケートな加工段階(例えば、丸形ヨコ編み機の糸ガイドからヤーンが出る間のヤーンの吸い込み)を容易にするため、繊維機械に供給されるヤーンにかかる張力を、即座に無くすことのできる上述のタイプの供給装置を提供することである。
【0026】
本発明の他の目的は、自由選択で、固定ドラム式のものでも回転ドラム式のものでもよい上述のタイプの供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
これらの目的は、添付の特許請求の範囲に記載の制動部材を有する貯蔵タイプのヤーン供給装置によって達成される。
【0028】
本発明は、例示として提示された本発明の幾つかの実施の形態についての以下の説明からより容易に理解されるであろう。この説明では、添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】ドラムの軸線に沿う垂直方向の断面図である。
【
図3】やはりドラムの軸線に沿う垂直方向の拡大部分断面図であるが、
図2の平面に対して垂直な平面内にある図である。
【
図4】
図2の断面図と類似の断面図であるが、本発明の異なる実施の形態のものである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図面から分かるように、全体を符号10で示す本発明のヤーン供給装置は、貯蔵タイプのものであり、適切な支持体14によって担持された、垂直軸のドラム16を担持する本体12を備えており、ドラム16には、スプール(図示せず)から来るヤーン18の所定数の巻き連なり20が、巻き付けられる。入ってくるヤーン18、即ち、ドラム16に達する前のヤーンは、通常1個以上の糸ガイド(このうちの1個が、符号21で示され、
図1及び
図2において見ることができる)を通過し、糸ガイドは、ヤーンの入口軌跡を規定し、ヤーン18が本体12と接触するのを防止する。ドラム16の役割は、(場合によりプログラム可能な)所定数の、スプールから来る、繊維機械(図示せず)に供給するヤーン18の巻き連なり20を貯蔵することである。ドラム16は、それらの巻き連なりが互いにまたがり、その結果、相互に拘束しあうことがない態様で、回転しながら、それらの巻き連なりを引き離せるようにするものである。本発明のこの実施の形態では、このドラムは、モータ16Aにより駆動される回転タイプのものである。
【0031】
本発明の供給装置10を離れる前に、ヤーン18は、全体を符号22で示す制動部材22を通過する。さしあたり、制動部材22がどのように構成されているかには触ないが、
図1及び
図2から、出て行くヤーン18は、従来型のセンサ24を通過し、センサ24は、公知の手法によりヤーンの出口張力を連続的に測定し、測定した張力値を、マイクロプロセッサータイプの制御ユニット26に送る。制御ユニット26のディスプレー27及び制御装置28が、
図1に示されている。センサ24は、アーム25によって本体12に固定されている。
【0032】
制動部材22の話に戻ると、制動部材22は、この図示の場合には、リング形の第1の永久磁石30を備えており、
図3には、それぞれ符号30A及び30Bで示す制動部材の両末端作業位置(同時に存在しないことは、明らかである)を示している。環状の永久磁石30は、前記末端作業位置30Aと30Bとの間の任意の場所に位置することができ、ヤーン18が巻き連なり20になって巻き付けられるドラム16よりも大きな直径を有しており、ドラム及び前記ヤーンの巻き連なりと軸線を同じくして配置されている。環状の永久磁石30は、ドラムに沿って自由に移動し、永久磁石の直径がドラムよりも大きいので、ドラムに対して任意の位置に到達することができる。
【0033】
第1の永久磁石30が末端作業位置30Aに達したときに、第1の永久磁石30のための限界停止要素として作用する(特に、非磁性のステンレス鋼からなる)非磁性で環状の受止要素又は突き当たり要素32が、ドラム16と軸線を同じくして本体12に固定されている。したがって、この非磁性で環状の受止要素は、ドラムに対して動かない。
【0034】
環状の支持体34も、アーム25によって本体12に固定されており、やはりドラム16と軸線を同じくして配置されている。この図示の場合には永久磁石36である第2の磁石も、リング形状のものであり、第2の永久磁石36は、前記環状の支持体34に固定され、ドラム16と軸線を同じくして配置されている。図示の場合(本明細書で以下により良く理解されるであろう)では、第2の永久磁石36の磁極を、第1の永久磁石30に対して引力効果又は斥力効果を有するように、配置することができる。
【0035】
この具体的な図示の場合には、電磁石(基本的に、電力供給される巻線からなるもの)38が環状の支持体34に軸線を同じくして固定され、電磁石の磁極の配置に応じて、第1の永久磁石30に対する引力効果又は斥力効果を有することができる。電磁石38は、制御ユニット26に接続されていることは明らかにであり、そのため、制御ユニット26は、前記巻線を流れる電流の強さと、更にこの電流の方向を調節することができ、その結果、発生させる磁場を調節する能力を有する。
【0036】
図示の状況では、2個の永久磁石30及び36の磁極がどのように配置されているかによって、2つの異なる解決策があり得る。
【0037】
1)2個の永久磁石30及び36が、相互に反発するため、第1の永久磁石30が、第2の永久磁石36から退こうとし、磁石の斥力がより強い位置30Aよりも離れた位置30Bに来る。
【0038】
2)2個の永久磁石30及び36が、互いに引き付け合うため、第1の永久磁石30が、第2の永久磁石36に近づこうとし、位置30Aに来て、より大きな磁石の引力で受止要素32を押す。
【0039】
図3から分かるように、ヤーン18は、受止要素32と第1の永久磁石30との間に挿入される(その後、張力センサ24から移動する)。この作業は、ドラム(及びドラムに積載したヤーン)の直径よりも大きな環状要素30の直径のため、受止要素32から離れたドラム16に沿った任意の位置に第1の永久磁石30を移動させることができることにより促進される。
【0040】
使用中、
−第1の永久磁石30が、(受止要素32から離れたドラムに沿う)位置30Bにある場合、ヤーン18は、ドラム16を離れてゆく際に、退出に対して何等の制動効果も受けないので、ヤーンは、(実際には、ヤーンと本発明の供給装置10の他の部品との間の摩擦によって生じる最小限張力があるが)所謂「ゼロ張力」で、(上述のような、図示しない)繊維機械によって引き出される。
【0041】
−第1の永久磁石30が、位置30Aにある場合には、ヤーン18は、ドラム16から離れてゆく際に、張力センサ24に達する前に、第1の永久磁石30と受止要素32との間で圧迫され、その結果、2個の永久磁石30及び36の引力が大きくなるにつれて、ヤーンはより強く制動される。そのため、本発明は、公知の解決策とは反対に、ヤーンを、ドラム16に沿ってドラムと平行に自由に移動可能な環状の第1の永久磁石30と前記ドラムの一端に(又はそれに相当する位置に)固定された受止要素32との間で圧迫することにより、ヤーンを制動することができる。
【0042】
したがって、この制動作用は、ヤーンを制動するためヤーンをドラムに押圧する公知の解決策のようにドラムに向かう方向ではなく、ドラムから引き出される又はドラムを離れるヤーンの運動の方向で行われる。
【0043】
この異なる制動作用は、制動部材22への(環状の第1の永久磁石30とドラム16に連結された受止要素との間への)容易になったヤーンの「挿入」を、達成することができ、この制動部材22の製造も容易にする。制動部材22は、組み立て中、(環状の第1の永久磁石30をドラム16に引き寄せて、第1の永久磁石30をドラムにロックすることにより、受止要素32をドラムに固定する)作業員によって保持されなければならない要素がなく、組み立て時間(保守のための部品の交換後の組み立て時間であっても)、及び相対費用における明らかな節約になる。
【0044】
したがって、(引き合い又は反発における)2個の永久磁石に関して選択された構成を考慮しなければ、制御ユニット26は、(公知のP、PI、PID及び類似のアルゴリズムなどに従って)電磁石38によって生じた磁場を適正に作用させ調節することにより(したがって、電磁石38は、調節手段として機能する)、第1の永久磁石30の位置30Bと、第1の永久磁石30が受止要素と当接する位置30Aにある時に第1の永久磁石30によってヤーン18にかけられる圧迫力の両方を調節することができ、繊維機械によって引き出される退出するヤーン18の張力は、直接この圧迫力によるということになる。
【0045】
特に、2個の永久磁石30及び36が互いに引き合う構成(この構成に関しては、第1の永久磁石30は、位置30Aにあってヤーン18を押圧し、ヤーンを受止要素32に押し付けて圧迫する)では、電磁石38によって生じた磁場は、引力したがって圧迫力を無にすること、減少させること又は増加させることができ、そのため、適正にプログラムされた制御ユニット26を用いて、出て行くヤーン18の張力を(実際には、リアルタイムに)調節することができ、そのため、出て行くヤーン18における基準張力と等しい所要の張力を得ることができる(この基準張力は、制御ユニット26を適正にプログラムすることにより、経時的に可変にすることができる)。
【0046】
2個の永久磁石30と36が互いに反発する配置では、第1の永久磁石30は位置30Bに移動しようとし、第1の永久磁石30は、ヤーン18に力をかけず、電磁石38によって発生した磁場は、2個の永久磁石30と36との間の反発を無にすることができるだけでなく、電磁石38が第1の永久磁石30を引き寄せ、したがって、ヤーン18を受止要素32に押圧し、実際に、制御ユニット26の介入により、出て行くヤーン18に所要の張力を、リアルタイムに発生させるように作用することさえもできる。
【0047】
前記の解決策は、公知の供給装置の使用可能な張力範囲よりも、断然広い使用可能な張力範囲を達成できることが分かった。
【0048】
実用的な目的で、ヤーン18が受止要素32や第1の永久磁石30と擦れることによって生じる摩耗を無くすため、これら2つの要素32及び30、少なくともそれらの要素のヤーン18と接触する部品を、従来の織られたセラミック(woven ceramic)又は他の耐摩耗性材料により(例えば、クロムめっきにより)、被覆することができる。
【0049】
更に、環状の第1の永久磁石30は、受止要素32と直接相互作用してヤーンを制動するようになっている(例えば円錐状の)ボディと協働することができる。このボディは、(可動の)第1の永久磁石30に連結されていてもよく、第1の永久磁石30のドラムに沿う運動を妨げないよう、(可動の)第1の永久磁石30に連結されていなくてもよい。
【0050】
本発明の変更形態では、第2の磁石は、電磁石である。実際、
図3において、永久磁石36が存在せず、電磁石38が前記第2の磁石である場合、電磁石38が第1の永久磁石にかける作用を、電磁石38によって発生する磁場の強さを適正に変える制御ユニット26の介入により、随意に変えることができるので、電磁石38は、やはり調節手段としての機能を果たす。
【0051】
図4に符号10Aで示す他の変更形態では(
図4においては、
図2の要素と同じ又は類似の要素は、同じ参照符号で示す)、第2の磁石も永久磁石36である。この場合には、調節手段は、全体を符号39で示すモータ付の機構を備えており、このモータ付の機構は、制御ユニット26により指令された時に、第1の永久磁石30に対する第2の永久磁石36の位置をリアルタイムで変更し、出て行くヤーン18の張力を調節することができる。前記モータ付の機構は、この図示の場合には、制御ユニット26に接続されたサーボモータ41(特にステッピングタイプのもの)によって回転されるウォーム40を備え、ウォーム40が、その軸線を中心にして両方向に回転できるようになっている。ウォーム40は、雌ねじが備わったブッシュ42に挿通されており、第2の永久磁石36を収容している環状の支持体34が、ブッシュ42に固定されている。その結果、制御ユニット26の作用によりサーボモータ41を作動させることにより、(環状の支持体34に収容された)第2の永久磁石36は、第1の永久磁石30から引き下がる又は近づくようにされ、出て行くヤーン18の張力を調節することができる。
【0052】
更に別の変更形態では(この変更形態の説明のため、やはり
図4を参照する)、第2の磁石は、電磁石38である(簡略化のため、同様に
図4に示されているが、この変更形態及びすぐ前の変更形態においては、電磁石38だけ又は永久磁石36だけが、それぞれ存在することは、明らかである)。電磁石38は、前記調節手段の一部を構成することができ、前記調節手段は、この変更形態では、やはり制御ユニット26により制御されるつい先ほど説明した符号39で示すようなモータ付の機構を備えている。
【0053】
本発明の第1の実施の形態の説明で既に述べたが、マイクロプロセッサタイプの制御ユニット26を有することにより、上述の全ての実施の形態において、経時的に可変の基準張力値を、制御ユニットにより、プログラム可能な態様で設定できることに留意すべきである。特に、前記基準張力値は、繊維機械の異なる作業段階を確認する繊維機械から来る同期信号(synchronism signals)(例えば、丸形ヨコ編み機に関する1個以上のシリンダー回転パルス)に基づいて、又はフィールドバス(RS485、CAN BUS、ETHERNET等)を介する接続により、変更することができる。
【0054】
制動部材22は、永久タイプのもの(例えば、永久磁石36)又は電磁石である特定の磁石を備えていてもよく、この磁石の唯一の機能は、ドラム16に対して第1の永久磁石30を中央に配置させることであり及び/又はこの磁石は、第1の永久磁石30の重量を無にすることができ、直径が第1の永久磁石30と同じ或いは第1の永久磁石30よりも小さい又は大きいものである。
【0055】
本発明の供給装置10及び10Aを示す図において、第1の永久磁石30は、受止要素32の上方に配置されているが、これらの要素のそれぞれの位置が逆になった変更形態、即ち、受止リングが第1の永久磁石の上方に配置されており、そのため、ヤーン18を制動するには、第1の永久磁石を上方に移動させて受止リングに当接させなければならない変更態様も、明らかに本発明の範囲に属することに留意すべきである。
【0056】
以上の記載から、本発明により、先に列挙した全ての目的を達成することのできる貯蔵タイプのヤーン供給装置を得ることができる。特に、本発明の供給装置は、固定ドラム型のものでも回転ドラム型のものでもよいことは明らかである。