特許第6152138号(P6152138)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6152138
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】偏光子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20170612BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   G02B5/30
   G02F1/1335 510
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-127716(P2015-127716)
(22)【出願日】2015年6月25日
(65)【公開番号】特開2017-9906(P2017-9906A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2017年2月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100143650
【弁理士】
【氏名又は名称】山元 美佐
(74)【代理人】
【識別番号】100193172
【弁理士】
【氏名又は名称】上川 智子
(72)【発明者】
【氏名】永野 忍
(72)【発明者】
【氏名】八重樫 将寛
【審査官】 池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2017−500606(JP,A)
【文献】 特表2017−503193(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/003105(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/147552(WO,A1)
【文献】 特開2012−137738(JP,A)
【文献】 特開昭48−64941(JP,A)
【文献】 特開2014−81482(JP,A)
【文献】 米国特許第4466704(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子の一方面側に厚み10μm以下の粘着剤層を介して表面保護フィルムを積層し、該一方面側に該偏光子の少なくとも一部が露出した露出部を有する偏光フィルム積層体を作製する工程、
該偏光フィルム積層体の露出部に塩基性溶液を接触させる工程、および、
該表面保護フィルムを偏光フィルム積層体から除去する工程を含む、非偏光部を有する偏光子の製造方法。
【請求項2】
前記露出部に塩基性溶液を接触させる工程が、前記偏光フィルム積層体を塩基性溶液に浸漬させることを含む、請求項1に記載の偏光子の製造方法。
【請求項3】
前記粘着剤層がアクリル系樹脂を含む、請求項1または2に記載の偏光子の製造方法。
【請求項4】
前記偏光フィルム積層体の露出部に酸性溶液を接触させる工程をさらに含む、請求項1から3のいずれかに記載の偏光子の製造方法。
【請求項5】
前記露出部に酸性溶液を接触させる工程が、前記偏光フィルム積層体を酸性溶液に浸漬させることを含む、請求項4に記載の偏光子の製造方法。
【請求項6】
前記露出部に塩基性溶液を接触させる工程が前記偏光フィルム積層体を塩基性溶液に浸漬させることを含み、および、該露出部に酸性溶液を接触させる工程が偏光フィルム積層体を酸性溶液に浸漬させることを含む、請求項5に記載の偏光子の製造方法。
【請求項7】
前記偏光フィルム積層体が長尺状である、請求項1から6のいずれかに記載の偏光子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光子の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、非偏光部を有する偏光子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノート型パーソナルコンピューター(PC)等の画像表示装置には、カメラ等の内部電子部品が搭載されているものがある。このような画像表示装置のカメラ性能等の向上を目的として、種々の検討がなされている(例えば、特許文献1〜7)。しかし、スマートフォン、タッチパネル式の情報処理装置の急速な普及により、カメラ性能等のさらなる向上が望まれている。また、画像表示装置の形状の多様化および高機能化に対応するために、部分的に偏光性能を有する偏光板が求められている。これらの要望を工業的および商業的に実現するためには許容可能なコストで画像表示装置および/またはその部品を製造することが望まれるところ、そのような技術を確立するためには種々の検討事項が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−81315号公報
【特許文献2】特開2007−241314号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0212555号明細書
【特許文献4】韓国公開特許第10−2012−0118205号公報
【特許文献5】韓国特許第10−1293210号公報
【特許文献6】特開2012−137738号公報
【特許文献7】特開2014−211548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、画像表示装置等の電子デバイスの多機能化および高機能化を実現可能である偏光子の製造方法であって、所望の非偏光部の形状を高精度で形成し得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の偏光子の製造方法は、偏光子の一方面側に厚み10μm以下の粘着剤層を介して表面保護フィルムを積層し、該一方面側に該偏光子の少なくとも一部が露出した露出部を有する偏光フィルム積層体を作製する工程、該偏光フィルム積層体の露出部に塩基性溶液を接触させる工程、および、該表面保護フィルムを偏光フィルム積層体から除去する工程を含む。
1つの実施形態においては、上記露出部に塩基性溶液を接触させる工程は、上記偏光フィルム積層体を塩基性溶液に浸漬することを含む。
1つの実施形態においては、上記粘着剤層はアクリル系樹脂を含む。
1つの実施形態においては、上記製造方法は、上記偏光フィルム積層体の露出部に酸性溶液を接触させる工程をさらに含む。
1つの実施形態においては、上記露出部に酸性溶液を接触させる工程は、上記偏光フィルム積層体を酸性溶液に浸漬することを含む。
1つの実施形態においては、上記偏光フィルム積層体は長尺状である。
本発明の別の局面においては、偏光子が得られる。この偏光子は、上記の製造方法により得られる。
本発明のさらに別の局面においては、偏光板が得られる。この偏光板は上記偏光子を含む。
本発明のさらに別の局面においては、画像表示装置が提供される。この画像表示装置は、上記偏光板を含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法で用いる偏光フィルム積層体は、偏光子の一方面側に厚み10μm以下の粘着剤層を介して表面保護フィルムを積層している。このような偏光フィルム積層体を用いることにより、所望の形状の非偏光部を高精度に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の1つの実施形態で用いられる偏光フィルム積層体の概略断面図である。
図2A】本発明の1つの実施形態で用いられる表面保護フィルムにおける貫通孔の配置パターンの一例を説明する概略平面図である。
図2B】本発明の1つの実施形態で用いられる表面保護フィルムにおける貫通孔の配置パターンの別の例を説明する概略平面図である。
図2C】本発明の1つの実施形態で用いられる表面保護フィルムにおける貫通孔の配置パターンのさらに別の例を説明する概略平面図である。
図3A図3Aはホールラフネスの測定方法を説明する模式図である。偏光子1と非偏光部2との境界(実線)が非偏光部近似円(破線)の外側にある場合の非偏光部と非偏光部近似円との距離aを表す。
図3B図3Bはホールラフネスの測定方法を説明する模式図である。偏光子1と非偏光部2との境界(実線)が非偏光部近似円(破線)の内側にある場合の非偏光部と非偏光部近似円との距離bを表す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の1つの実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
A.偏光子の製造方法
本発明の製造方法は、偏光子の一方面側に厚み10μm以下の粘着剤層を介して表面保護フィルムを積層し、該一方面側に該偏光子の少なくとも一部が露出した露出部を有する偏光フィルム積層体を作製する工程、該偏光フィルム積層体の露出部に塩基性溶液を接触させる工程、および、該表面保護フィルムを偏光フィルム積層体から除去する工程を含む。露出部を有する偏光フィルム積層体を用いることにより、偏光子の所望の部分(すなわち、露出部から露出した部分)のみを塩基性溶液と接触させることができる。偏光子と塩基性溶液とを接触させることにより、接触部に含まれる二色性物質の含有量を少なくすることができ、他の部分よりも二色性物質の含有量が低い非偏光部を形成することができる。
【0010】
さらに、本発明の製造方法では、偏光子と表面保護フィルムとを厚み10μm以下の粘着剤層を介して積層した偏光フィルム積層体を用いる。粘着剤層の厚みを10μm以下にすることにより、粘着剤の表面張力により露出部内に気泡が付着することを防止し得る。その結果、露出部全体に塩基性溶液が十分に接触し、所望の形状の非偏光部を高精度で形成し得る。なお、非偏光部を形成する前の偏光子は、厳密には本発明の製造方法により得られる非偏光部を有する偏光子の中間体であるが、本明細書においては単に偏光子と称する。当業者であれば、本明細書の記載を見れば、「偏光子」が中間体を意味するか本発明の製造方法により得られる非偏光部を有する偏光子を意味するかを容易に理解することができる。
【0011】
A−1.偏光フィルム積層体の作製
偏光フィルム積層体は、偏光子の一方面側に厚み10μm以下の粘着剤層を介して表面保護フィルムを積層し、作製される。本発明で用いる偏光フィルム積層体は、上記一方面側に偏光子の少なくとも一部が露出した露出部を有する。
【0012】
図1は本発明の1つの実施形態で用いる偏光フィルム積層体の概略断面図である。この実施形態では、偏光子/保護フィルムの構成を有する偏光板を用いる。偏光フィルム積層体100は、偏光子10/保護フィルム20の積層体の偏光子10の表面に表面保護フィルム50が厚み10μm以下である粘着剤層60を介して積層されている。表面保護フィルム50は、貫通孔71を有する。偏光フィルム積層体100は、貫通孔71から偏光子10が露出した露出部51を有する。表面保護フィルム50は、偏光板(実質的には、偏光子10)に剥離可能に積層される。なお、偏光板の形態以外の形態を有する偏光子(例えば、単一の樹脂フィルムである偏光子、樹脂基材/偏光子の積層体)についても同様の手順が適用され得ることは言うまでもない。
【0013】
1つの実施形態においては、偏光フィルム積層体100は貫通孔を有する表面保護フィルム50が積層されていない面に、別の表面保護フィルム(図1における表面保護フィルム30)がさらに積層されていてもよい。以下、貫通孔を有する表面保護フィルム50を第1の表面保護フィルム、偏光フィルム積層体100の貫通孔を有する表面保護フィルムが積層されていない側に積層された表面保護フィルム30を第2の表面保護フィルムともいう。
【0014】
偏光フィルム積層体は、代表的には、長尺状である。長尺状の偏光フィルム積層体は、例えば、長尺方向および/または幅方向に所定の間隔で配置された貫通孔を有する長尺状の表面保護フィルムと長尺状の偏光子とを積層することにより得られ得る。長尺状の偏光フィルム積層体を用いることにより、例えば、塩基性溶液に接触させる工程、および、他の処理液と接触する工程(例えば、酸性溶液に接触させる工程)を浸漬により連続して行うことができる。その結果、偏光子の生産性がさらに向上し得る。また、長尺状の偏光フィルム積層体は複数の露出部を有し得る。このような場合であっても、各露出部に塩基性溶液を十分に接触させることができ、高精度で所望の形状の非偏光部を形成し得る。
【0015】
さらに、偏光フィルム積層体を用いることにより、露出部のパターンに対応したパターンで非偏光部を有する偏光子を得ることができるので、長尺状の偏光子の全体にわたって非偏光部を精密に制御して配置することができる。その結果、当該長尺状の偏光子から所定サイズの最終製品としての偏光子を裁断した場合に、最終製品ごとの品質のばらつきを顕著に抑制することができる。しかも、このような非偏光部は、貫通孔の位置に選択的かつ容易に形成されるので、複雑な装置や操作を必要としない。また、本実施形態によれば、裁断されて画像表示装置に搭載される最終製品としての偏光子のサイズおよび画像表示装置のカメラ部の位置に合わせて非偏光部の位置を設定できるので、所定サイズの偏光子を得る際の歩留りが極めて優れている。
【0016】
A−1−1.偏光子
偏光子は、代表的には、二色性物質を含む樹脂フィルムで構成される。樹脂フィルムは、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」と称する)フィルムである。上記二色性物質としては、例えば、ヨウ素、有機染料等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。好ましくはヨウ素が用いられる。後述するように塩基性溶液に接触させることにより、ヨウ素錯体が還元されてヨウ素の含有量が低減され、その結果、カメラに対応する部分として使用するのに適切な特性を有する非偏光部を形成することができるからである。
【0017】
上記樹脂フィルムを形成する樹脂としては、任意の適切な樹脂が用いられ得る。好ましくは、PVA系樹脂が用いられる。PVA系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。PVA系樹脂のケン化度は、通常85モル%以上100モル%未満であり、好ましくは95.0モル%〜99.95モル%、さらに好ましくは99.0モル%〜99.93モル%である。ケン化度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。このようなケン化度のPVA系樹脂を用いることによって、耐久性に優れた偏光子を得ることができる。ケン化度が高すぎる場合には、ゲル化してしまうおそれがある。
【0018】
PVA系樹脂の平均重合度は、目的に応じて適切に選択され得る。平均重合度は、通常1000〜10000であり、好ましくは1200〜4500、さらに好ましくは1500〜4300である。なお、平均重合度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。
【0019】
偏光子(樹脂フィルム)の厚みは、任意の適切な値に設定され得る。厚みは、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、さらに好ましくは20μm以下、特に好ましくは10μm未満である。一方で、厚みは、好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。このような厚みであれば、塩基性溶液に接触させることにより、非偏光部が良好に形成され得る。さらに、塩基性溶液を接触させる時間を短くすることができる。また、塩基性溶液に接触させた部分の厚みは他の部分よりも薄くなる場合がある。厚みの薄い樹脂フィルムを用いることにより、塩基性溶液に接触させた部分と接触させていない部分との厚みの差を小さくすることができ、保護フィルム等の他の構成要素との貼り合せを良好に行うことができる。
【0020】
樹脂フィルムは、膨潤処理、延伸処理、上記二色性物質による染色処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等の各種処理が施されて、偏光子として機能し得る状態であることが好ましい。各種処理を施す際、樹脂フィルムは、基材上に形成された樹脂層であってもよい。基材と樹脂層との積層体は、例えば、上記樹脂フィルムの形成材料を含む塗布液を基材に塗布する方法、基材に樹脂フィルムを積層する方法等により得ることができる。
【0021】
上記染色処理は、例えば、染色液に樹脂フィルムを浸漬することにより行う。染色液としては、ヨウ素水溶液が好ましく用いられる。ヨウ素の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは0.04重量部〜5.0重量部である。ヨウ素の水に対する溶解度を高めるため、ヨウ素水溶液にヨウ化物を配合することが好ましい。ヨウ化物としては、ヨウ化カリウムが好ましく用いられる。ヨウ化物の配合量は、水100重量部に対して、好ましくは0.3重量部〜15重量部である。
【0022】
上記延伸処理において、樹脂フィルムは、代表的には3倍〜7倍に一軸延伸される。なお、延伸方向は、得られる偏光子の吸収軸方向に対応し得る。
【0023】
A−1−2.表面保護フィルム
表面保護フィルム50は、得られる偏光子の塩基性溶液と接触させたい部分(すなわち、偏光フィルム積層体の露出部51に相当する部分)に対応する貫通孔71が設けられる。
【0024】
表面保護フィルムの貫通孔の平面視形状は、目的に応じて任意の適切な形状が採用され得る。具体例としては、円形、楕円形、正方形、矩形、ひし形が挙げられる。上記の通り、本発明の製造方法よれば、気泡の付着により、露出部から露出した偏光子と塩基性溶液とが十分に接触できないことを防止することができるため、より複雑な形状(例えば、星形)および/または小サイズの露出部であっても、所望の形状の非偏光部を形成し得る。
【0025】
表面保護フィルムの貫通孔は、例えば、機械的打ち抜き(例えば、パンチング、彫刻刃打抜き、プロッター、ウォータージェット)または表面保護フィルムの所定部分の除去(例えば、レーザーアブレーションまたは化学的溶解)により形成され得る。
【0026】
貫通孔の配置パターン(形成パターン)は、目的に応じて適切に設定され得る。図2Aは、表面保護フィルムの貫通孔の配置パターンの一例を説明する概略平面図であり、図2Bは、貫通孔の配置パターンの別の例を説明する概略平面図であり、図2Cは、貫通孔の配置パターンのさらに別の例を説明する概略平面図である。例えば、貫通孔71は、図2Aに示すように、表面保護フィルム50の長尺方向および幅方向のいずれにおいても実質的に等間隔で配置され得る。なお、「長尺方向および幅方向のいずれにおいても実質的に等間隔」とは、長尺方向の間隔が等間隔であり、かつ、幅方向の間隔が等間隔であることを意味し、長尺方向の間隔と幅方向の間隔とが等しい必要はない。例えば、長尺方向の間隔をL1とし、幅方向の間隔をL2としたとき、L1=L2でもよく、L1≠L2であってもよい。あるいは、貫通孔は、長尺方向に実質的に等間隔で配置され、かつ、幅方向に異なる間隔で配置されてもよく;長尺方向に異なる間隔で配置され、かつ、幅方向に実質的に等間隔で配置されてもよい(いずれも図示せず)。長尺方向または幅方向において貫通孔が異なる間隔で配置される場合、隣接する貫通孔の間隔はすべて異なっていてもよく、一部(特定の隣接する貫通孔の間隔)のみが異なっていてもよい。また、表面保護フィルムの長尺方向に複数の領域を規定し、それぞれの領域ごとに長尺方向および/または幅方向における貫通孔の間隔を設定してもよい。
【0027】
また、貫通孔71は、1つの実施形態においては、図2Aに示すように、長尺方向において隣接する貫通孔を結ぶ直線が、長尺方向に対して実質的に平行であり、ならびに、幅方向において隣接する貫通孔を結ぶ直線が、幅方向に対して実質的に平行であるように配置され得る。別の実施形態においては、貫通孔71は、図2Bに示すように、長尺方向において隣接する貫通孔を結ぶ直線が、長尺方向に対して実質的に平行であり、ならびに、幅方向において隣接する貫通孔を結ぶ直線が、幅方向に対して所定の角度θを有するように配置される。さらに別の実施形態においては、貫通孔71は、図2Cに示すように、長尺方向において隣接する貫通孔を結ぶ直線が、長尺方向に対して所定の角度θを有し、ならびに、幅方向において隣接する貫通孔を結ぶ直線が、幅方向に対して所定の角度θを有するように配置される。θおよび/またはθは、好ましくは0°を超えて±10°以下である。ここで、「±」は、基準方向(長尺方向または幅方向)に対して時計回りおよび反時計回りのいずれの方向も含むことを意味する。
【0028】
図2Bおよび図2Cに示す実施形態は、以下のような利点を有する。長尺状の偏光フィルム積層体を用いる場合、ロール搬送しながら所望のパターン(貫通孔の配置パターンに対応したパターン)で非偏光部を形成することができる。その結果、長尺状の偏光子の全体にわたって配置パターンを精密に制御して非偏光部を形成することができる。ここで、画像表示装置によっては表示特性を向上させるために偏光子の吸収軸を当該装置の長辺または短辺に対して最大で10°程度ずらして配置することを要求される場合がある。偏光子の吸収軸は長尺方向または幅方向に発現するので、図2Bおよび図2Cに示すようなパターンの非偏光部を形成することにより、このような場合において、非偏光部と吸収軸との位置関係を長尺状の偏光子全体において統一的に制御でき、軸精度に優れた(したがって、光学特性に優れた)最終製品を得ることができる。したがって、裁断(例えば、長尺方向および/または幅方向への切断、打ち抜き)された枚葉の偏光子の吸収軸の方向を所望の角度に精密に制御することができ、かつ、偏光子ごとの吸収軸の方向のばらつきを顕著に抑制することができる。なお、貫通孔の配置パターンが図示例に限定されないことは言うまでもない。例えば、貫通孔71は、長尺方向において隣接する貫通孔を結ぶ直線が、長尺方向に対して所定の角度θを有し、ならびに、幅方向において隣接する貫通孔を結ぶ直線が、幅方向に対して実質的に平行であるように配置されてもよい。また、表面保護フィルム50の長尺方向に複数の領域を規定し、それぞれの領域ごとにθおよび/またはθを設定してもよい。
【0029】
表面保護フィルムは、硬度(例えば、弾性率)が高いフィルムが好ましい。貫通孔の変形を防止することができ、特に長尺状の偏光フィルム積層体として用いる場合、搬送および/または貼り合わせ時の貫通孔の変形が防止され得るからである。表面保護フィルムの形成材料としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重合体樹脂等が挙げられる。好ましくは、エステル系樹脂(特に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂)である。このような材料であれば、弾性率が十分に高く、貫通孔の変形を防止することができ、長尺状の偏光フィルム積層体として用いる場合、搬送および/または貼り合わせ時に張力をかけても貫通孔の変形が生じにくいという利点がある。
【0030】
表面保護フィルムの厚みは、任意の適切な値に設定することができる。例えば、長尺状の偏光フィルム積層体として用いる場合、搬送および/または貼り合わせ時に張力をかけても貫通孔の変形が生じにくいという利点を有することから、表面保護フィルムの厚みは、例えば、30μm〜150μmである。
【0031】
表面保護フィルムの弾性率は、好ましくは2.2kN/mm〜4.8kN/mmである。表面保護フィルムの弾性率がこのような範囲であれば、貫通孔の変形を防止することができ、特に長尺状の偏光フィルム積層体として用いる場合、搬送および/または貼り合わせ時に張力をかけても貫通孔の変形が生じにくいという利点を有する。なお、弾性率は、JIS K 6781に準拠して測定される。
【0032】
表面保護フィルムの引張伸度は、好ましくは90%〜170%である。表面保護フィルムの引張伸度がこのような範囲であれば、長尺状の偏光フィルム積層体として用いる場合、搬送中に破断しにくいという利点を有する。なお、引張伸度は、JIS K 6781に準拠して測定される。
【0033】
A−1−3.粘着剤層
粘着剤層60の厚みは10μm以下であり、好ましくは5μm以下である。偏光フィルム積層体を用いて塩基性溶液に接触させる場合、露出部の表面保護フィルムおよび粘着剤層に気泡が付着することにより、露出部に塩基性溶液を十分に接触できない場合がある。露出部のサイズが小さい場合や露出部の形状が複雑な場合にはこの影響が顕著となり、所望の形状の非偏光部が形成できないおそれがある。粘着剤層の厚みがこのような範囲であることにより、粘着剤の表面張力により露出部内に気泡が付着することを防止し得る。その結果、露出部に塩基性溶液を十分に接触させることができ、所望の形状の非偏光部を有する偏光子が得られる。
【0034】
粘着剤層は任意の適切な組成物を用いて形成される。粘着剤層形成用組成物は、例えば、樹脂成分および任意の適切な添加剤を含む。粘着剤のベース樹脂としては、任意の適切な樹脂を用いることができ、ガラス転移温度Tgが0℃以下である樹脂が好ましい。具体的には、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂が挙げられる。10μm以下の厚みであっても表面保護フィルムと偏光子との積層状態を良好に維持できることから、アクリル系樹脂が好ましい。
【0035】
アクリル系樹脂としては、炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリレートおよび/またはメタクリレート(以下、(メタ)アクリレートともいう)を少なくとも1種含むアクリルポリマーが好ましい。上記アクリルポリマーは、炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートをモノマー成分として、50重量%〜100重量%含有することが好ましい。
【0036】
炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリレートは1種のみ用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0037】
なかでも、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレートなどの炭素数4〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。炭素数4〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを含むことにより、粘着力を制御することが容易となり、再剥離性に優れたものとなる。
【0038】
上記アクリルポリマーは、炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリレート以外に、任意の適切な他のモノマー成分を含んでいてもよい。他のモノマー成分としては、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物などの凝集力・耐熱性向上に寄与し得るモノマー成分や、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、N−アクリロイルモルホリン、ビニルエーテル類等の接着力向上や架橋化基点として働く官能基を有するモノマー成分が挙げられる。他のモノマー成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0039】
スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などが挙げられる。リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートが挙げられる。シアノ基含有モノマーとしては、例えば、アクリロニトリルが挙げられる。ビニルエステル類としては、例えば、酢酸ビニルが挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレンが挙げられる。
【0040】
カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などが挙げられる。酸無水物基含有モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどが挙げられる。アミド基含有モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、ジエチルアクリルアミドなどが挙げられる。アミノ基含有モノマーとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。ビニルエーテル類としては、例えば、ビニルエチルエーテルなどが挙げられる。
【0041】
他のモノマー成分は、例えば、粘着力を調整し易いという点から、得られるポリマーのTgが0℃以下となるよう用いられる。なお、ポリマーのTgは、例えば、−100℃以上であることが好ましい。
【0042】
上記アクリルポリマーの重量平均分子量は、例えば、10万以上である。
【0043】
上記アクリルポリマーは、任意の適切な重合方法により得られる。例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などアクリルポリマーの合成手法として一般的に用いられる重合方法が挙げられる。
【0044】
粘着剤層形成用組成物は、樹脂成分として、上記ベース樹脂以外の他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、ポリエーテル樹脂、変性ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。他の樹脂を含む場合、他の樹脂の含有割合は20重量%以下であることが好ましい。
【0045】
粘着剤層形成用組成物は、樹脂成分以外に任意の適切な添加剤を含みうる。例えば、架橋剤、カップリング剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レべリング剤、界面活性剤、帯電防止剤、スベリ性向上剤、濡れ性向上剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、架橋促進剤、架橋触媒、無機または有機の充填剤、金属粉、顔料などの粉体、粒子状、箔状物等が挙げられる。
【0046】
架橋剤としては、任意の適切な架橋剤を用いることができる。例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、メラミン化合物が挙げられる。架橋剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0047】
架橋剤の含有量は、樹脂成分100重量部に対して、好ましくは0.1重量部〜15重量部であり、より好ましくは2重量部〜10重量部である。
【0048】
粘着剤層は、任意の適切な方法により形成され得る。具体例としては、上記表面保護フィルムの上に粘着剤形成用組成物を塗布し乾燥する方法、セパレーター上に粘着剤層を形成し当該粘着剤層を表面保護フィルムに転写する方法等が挙げられる。塗布法としては、例えば、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法が挙げられる。
【0049】
1つの実施形態においては、表面保護フィルムは厚み10μm以下の粘着剤層を備えた粘着シートである。この実施形態における表面保護フィルムは、上記の表面保護フィルムとして用いられる樹脂フィルムと該樹脂フィルムの一方の面に設けられた粘着剤層とを有する積層体であり、該樹脂フィルムと該粘着剤層とを貫通する貫通孔を有する。表面保護フィルムが粘着シートである場合、長尺状の偏光子と長尺状の表面保護フィルムとの貼り合わせをロールトゥロールで行うことができ、製造効率がさらに向上し得る。この実施形態においては、当該粘着剤層にセパレーターが剥離可能に仮着され得る。
【0050】
セパレーターは、実用に供するまで粘着剤層を保護する保護材としての機能を有する。セパレーターとしては、例えば、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン)フィルム、不織布または紙などが挙げられる。セパレーターの厚みは、目的に応じて任意の適切な厚みを採用することができる。セパレーターの厚みは、例えば10μm〜100μmである。セパレーターは、上記表面保護フィルムとして用いられる樹脂フィルムと粘着剤層との積層体に積層してもよく、セパレーター上に粘着剤層を形成し、セパレーターと粘着剤層との積層体を表面保護フィルムとして用いられる樹脂フィルムに積層してもよい。
【0051】
偏光フィルム積層体100は、上述のように、表面保護フィルム50が配置されていない側に第2の表面保護フィルム30がさらに積層されていてもよい。この第2の表面保護フィルムは、貫通孔が設けられていないこと以外は表面保護フィルム50と同様のフィルムが用いられ得る。さらに、第2の表面保護フィルムとしては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン)フィルムのような柔らかい(例えば、弾性率が低い)フィルムも用いることができる。第2の表面保護フィルムを用いることにより、塩基性溶液と接触させる工程において、偏光板(偏光子/保護フィルム)をさらに適切に保護することが可能となり、結果として、偏光子と塩基性溶液とを接触させる工程をより良好に行うことができる。
【0052】
A−2.塩基性溶液との接触工程
次いで、偏光フィルム積層体の露出部に塩基性溶液を接触させる。塩基性溶液を接触させることにより、露出部の二色性物質の含有量が低減され、該二色性物質の含有量が低減されることにより非偏光部が形成され得る。なお、偏光フィルム積層体に用いられる偏光子としては、上記の通り、ヨウ素を含む偏光子が好ましい。偏光子が二色性物質としてヨウ素を含む場合、偏光子の露出部と塩基性溶液とを接触させることにより、露出部のヨウ素含有量を低減させ、結果として、露出部のみに選択的に非偏光部を形成することができる。そのため、複雑な操作を伴うことなく非常に高い製造効率で、偏光子の所定の部分に選択的に非偏光部を形成することができる。なお、偏光子にヨウ素が残存している場合、ヨウ素錯体を破壊して非偏光部を形成したとしても、偏光子の使用に伴い再度ヨウ素錯体が形成され、非偏光部が所望の特性を有さなくなるおそれがある。本発明では、ヨウ素自体が偏光子(実質的には、非偏光部)から除去される。その結果、偏光子の使用に伴う非偏光部の特性変化を防止し得る。
【0053】
偏光フィルム積層体に塩基性溶液を接触させる工程は、任意の適切な手段により行われ得る。例えば、浸漬、滴下、塗工、スプレー等が挙げられる。上記のとおり、第1の表面保護フィルム(および、必要に応じて第2の表面保護フィルム)を用いることにより、偏光フィルム積層体の露出部以外の部分では偏光子に含まれるヨウ素含有量が低減しないため、浸漬により所望の部分にのみ非偏光部を形成することが可能となる。具体的には、塩基性溶液に偏光フィルム積層体を浸漬することにより、偏光フィルム積層体における露出部のみが塩基性溶液と接触する。
【0054】
塩基性溶液による非偏光部の形成について、より詳細に説明する。偏光フィルム積層体の露出部との接触後、塩基性溶液は露出部(具体的には、偏光子)内部へと浸透する。偏光子に含まれるヨウ素錯体は塩基性溶液に含まれる塩基により還元され、ヨウ素イオンとなる。ヨウ素錯体がヨウ素イオンに還元されることにより、露出部から露出した偏光子の偏光性能が実質的に消失し、露出部に非偏光部が形成される。また、ヨウ素錯体の還元により、露出部の透過率が向上する。ヨウ素イオンとなったヨウ素は、露出部から塩基性溶液の溶媒中に移動する。その結果、塩基性溶液と共にヨウ素イオンも偏光子から取り除かれる。このようにして、偏光子の所定部分に選択的に非偏光部が形成され、さらに、当該非偏光部は経時変化のない安定なものとなる。なお、第1の表面保護フィルムの材料、厚みおよび機械的特性、塩基性溶液の濃度、ならびに偏光フィルム積層体の塩基性溶液への浸漬時間等を調整することにより、塩基性溶液が所望でない部分まで浸透すること(結果として、所望でない部分に非偏光部が形成されること)を防止することができる。
【0055】
上記塩基性溶液に含まれる塩基性化合物としては、任意の適切な塩基性化合物を用いることができる。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウム等の無機アルカリ金属塩、酢酸ナトリウム等の有機アルカリ金属塩、アンモニア水等が挙げられる。塩基性溶液に含まれる塩基性化合物は、好ましくはアルカリ金属の水酸化物であり、さらに好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムである。アルカリ金属の水酸化物を含む塩基性溶液を用いることにより、ヨウ素錯体を効率良くイオン化することができ、より簡便に非偏光部を形成することができる。これらの塩基性化合物は1種のみ用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
上記塩基性溶液の溶媒としては、任意の適切な溶媒を用いることができる。具体的には、水、エタノール、メタノール等のアルコール、エーテル、ベンゼン、クロロホルム、および、これらの混合溶媒が挙げられる。ヨウ素イオンが良好に溶媒へと移行し、容易にヨウ素イオンを除去できることから、溶媒は水、アルコールが好ましい。
【0057】
上記塩基性溶液の濃度は、例えば、0.01N〜5Nであり、好ましくは0.05N〜3Nであり、より好ましくは0.1N〜2.5Nである。塩基性溶液の濃度がこのような範囲であれば、効率よく偏光子内部のヨウ素含有量を低減させることができ、かつ、露出部以外の部分におけるヨウ素錯体のイオン化を防止することができる。
【0058】
上記塩基性溶液の液温は、例えば、20℃〜50℃である。偏光フィルム積層体(実質的には、偏光子の露出部)と塩基性溶液との接触時間は、偏光子の厚み、用いる塩基性溶液に含まれる塩基性化合物の種類、および、塩基性化合物の濃度に応じて設定することができ、例えば、5秒間〜30分間である。
【0059】
上記塩基性溶液は、偏光子の露出部と接触後(非偏光部の形成後)、必要に応じて任意の適切な手段により除去され得る。塩基性溶液の除去方法の具体例としては、ウエス等による拭き取り除去、吸引除去、自然乾燥、加熱乾燥、送風乾燥、減圧乾燥、洗浄等が挙げられる。塩基性溶液を乾燥により除去する場合の乾燥温度は、例えば、20℃〜100℃である。
【0060】
A−3.表面保護フィルムの除去工程
必要な工程を行った後、表面保護フィルムは偏光フィルム積層体から除去される。上述の通り、表面保護フィルムは粘着剤層を介して、剥離可能に偏光子の表面に貼り付けられている。そのため、非偏光部を有する偏光子の作製に必要な工程を行った後、偏光子の表面から容易に除去することができる。
【0061】
A−4.他の工程
本発明の非偏光部を有する偏光子の製造方法は、偏光フィルム積層体を作製する工程、偏光フィルム積層体の露出部と塩基性溶液とを接触させる工程、および、表面保護フィルムを除去する工程以外の任意の適切な工程をさらに含んでいてもよい。他の工程としては、酸性溶液と接触させる工程、および、洗浄工程等が挙げられる。
【0062】
A−4−1.酸性溶液との接触工程
本発明の製造方法は、偏光フィルム積層体と酸性溶液とを接触させる工程をさらに含んでいてもよい。酸性溶液と接触させる工程をさらに含むことにより、所望の寸法および形状の非偏光部をより安定して(特に、加湿環境下において)維持することができる。酸性溶液と接触させる工程は、例えば、塩基性溶液と接触させる工程の後に行われ得る。
【0063】
酸性溶液に含まれる酸性化合物としては、任意の適切な酸性化合物を用いることができる。酸性化合物としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、フッ化水素等の無機酸、ギ酸、シュウ酸、クエン酸、酢酸、安息香酸等の有機酸等が挙げられる。酸性溶液の濃度は、例えば、0.01N〜5Nであり、好ましくは0.05N〜3Nであり、より好ましくは0.1N〜2.5Nである。
【0064】
酸性溶液に用いられる溶媒、酸性溶液の液温、酸性溶液との接触時間、および、接触方法については、上記A−2項に記載の塩基性溶液との接触工程で採用され得る条件と同様の条件が採用され得る。
【0065】
酸性溶液との接触工程は、上記表面保護フィルムの剥離工程の前に(具体的には、偏光フィルム積層体の状態で)行うことが好ましい。偏光フィルム積層体の状態で行うことにより、酸性溶液との接触工程を塩基性溶液との接触工程と連続して行うことができる。
【0066】
A−4−2.洗浄工程
本発明の製造方法は、洗浄工程をさらに含んでいてもよい。洗浄工程は、1回のみ行ってもよく、複数回行ってもよい。洗浄工程は非偏光部を有する偏光子の製造工程の任意の適切な段階で行われ得る。例えば、塩基性溶液と接触させた偏光子を任意の適切な液体で洗浄した後、酸性溶液との接触工程を行ってもよく、塩基性溶液との接触工程と酸性溶液との接触工程を行った後、任意の適切な液体による洗浄工程を行ってもよい。
【0067】
洗浄に使用する液体としては、任意の適切な液体を用いることができる。例えば、純水、メタノール、エタノール等のアルコール、酸性水溶液、および、これらの混合溶媒等が挙げられる。また、用いる液体の温度は任意の適切な温度に設定され得る。
【0068】
B.非偏光部を有する偏光子
本発明の方法により得られる偏光子は、高精度で形成された所望の形状およびサイズの非偏光部を有し得る。そのため、本発明の偏光子は、優れた機能性およびデザイン性を有し得る。
【0069】
非偏光部を有する偏光子は、例えば、カメラを備える画像表示装置に適用され得る。より小サイズの非偏光部を形成した場合であっても、カメラが十分に撮影機能を発揮することができ、また得られる画像表示装置の見栄えも優れ得るからである。
【0070】
非偏光部の平面視形状は、画像表示装置のカメラ性能に悪影響を与えない限りにおいて、任意の適切な形状が採用され得る。また、非偏光部の透過率(例えば、23℃における波長550nmの光で測定した透過率)は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは75%以上であり、特に好ましくは90%以上である。このような透過率であれば、非偏光部としての所望の透明性を確保することができる。その結果、非偏光部が画像表示装置のカメラ部に対応するよう偏光子を配置した場合に、カメラの撮影性能に対する悪影響を防止することができる。
【0071】
非偏光部は、偏光子の他の部分(偏光性能を有する部分)と比較して、二色性物質含有量が少ない部分である。非偏光部に含まれる二色性物質含有量は、好ましくは1.0重量%以下であり、より好ましくは0.5重量%以下であり、さらに好ましくは0.2重量%以下である。また、非偏光部の二色性物質含有量の下限値は、通常、検出限界値以下である。非偏光部の二色性物質含有量がこのような範囲であれば、非偏光部に所望の透明性を付与するのみならず、画像表示装置のカメラに対応する部分として非偏光部を用いる場合に、明るさおよび色味の両方の観点から非常に優れた撮影性能を実現することができる。なお、二色性物質としてヨウ素を用いる場合、非偏光部のヨウ素含有量は、蛍光X線分析で測定したX線強度から、あらかじめ標準試料を用いて作成した検量線により求めた値をいう。
【0072】
偏光子の非偏光部以外の部分(偏光性能を有する部分)に含まれる二色性物質の含有量と、非偏光部に含まれる二色性物質の含有量との差は、好ましくは0.5重量%以上であり、より好ましくは1重量%以上である。非偏光部以外の部分に含まれる二色性物質の含有量と非偏光部に含まれる二色性物質の含有量との差がこのような範囲であることにより、非偏光部が十分な透明性を有しており、例えば、画像表示のカメラに対応する部分として非偏光部を好適に用いることができる。
【0073】
C.偏光板
偏光子は、実用的には偏光板として提供され得る。偏光板は、偏光子と偏光子の少なくとも一方の側に配置された保護フィルムとを有する。実用的には、偏光板は、最外層として粘着剤層を有する。粘着剤層は、代表的には画像表示装置側の最外層となる。粘着剤層には、セパレーターが剥離可能に仮着され得る。
【0074】
保護フィルムの形成材料としては、例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等のエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、これらの共重体樹脂等が挙げられる。保護フィルムの厚みは、好ましくは10μm〜100μmである。保護フィルムは、代表的には、接着層(具体的には、接着剤層、粘着剤層)を介して偏光子に積層される。接着剤層は、代表的にはPVA系接着剤や活性エネルギー線硬化型接着剤で形成される。粘着剤層は、代表的にはアクリル系粘着剤で形成される。
【0075】
偏光板は、目的に応じて任意の適切な光学機能層をさらに有していてもよい。光学機能層の代表例としては、位相差フィルム(光学補償フィルム)、表面処理層が挙げられる。また、上記保護フィルムが、光学補償機能を有していてもよい(具体的には、目的に応じた適切な屈折率楕円体、面内位相差および厚み方向位相差を有していてもよい)。
【0076】
表面処理層は、偏光板の視認側に配置され得る。表面処理層の代表例としては、ハードコート層、反射防止層、アンチグレア層が挙げられる。
【0077】
D.画像表示装置
本発明の画像表示装置は、上記偏光子を備える。画像表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機ELデバイスが挙げられる。具体的には、液晶表示装置は、液晶セルと、この液晶セルの片側もしくは両側に配置された上記偏光子とを含む液晶パネルを備える。有機ELデバイスは、視認側に上記偏光子が配置された有機ELパネルを備える。偏光子は、非偏光部が搭載される画像表示装置のカメラ部に対応するように配置され得る。
【実施例】
【0078】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0079】
[製造例1]粘着剤層付表面保護フィルム1の作製
アクリル系樹脂(ブチルアクリレート/アクリル酸=95/5の組成比からなる重量平均分子量60万のアクリルポリマー)100重量部と、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学(株)製、商品名:TETRAD−C)5重量部とを混合して、アクリル系粘着剤1を調製した。
長尺状(幅1200mm、長さ43m)の厚み38μmのPETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム(株)製、商品名:ダイヤホイルT100C)に、得られたアクリル系粘着剤を乾燥後の厚みが10μmとなるよう塗布し、粘着剤層を形成した。形成した粘着剤層にセパレーターを貼り合わせて、粘着シートを得た。得られた粘着シートに、ピクナル刃を用いて直径2mmの円形の小穴を1000個形成した。各小穴は、縦250mm、横400mm間隔で形成し、粘着剤層付表面保護フィルム1を得た。
【0080】
[製造例2]粘着剤層付表面保護フィルム2の作製
粘着剤層の厚みを5μmとした以外は製造例1と同様にして、粘着剤層付表面保護フィルム2を得た。
【0081】
[製造例3]粘着剤層付表面保護フィルムC1の作製
粘着剤層の厚みを30μmとした以外は製造例1と同様にして、粘着剤層付表面保護フィルムC1を得た。
【0082】
[製造例4]粘着剤層付表面保護フィルムC2の作製
粘着剤層の厚みを20μmとした以外は製造例1と同様にして、粘着剤層付表面保護フィルムC2を得た。
【0083】
[製造例5]粘着剤層付表面保護フィルムC3の作製
粘着剤層の厚みを15μmとした以外は製造例1と同様にして、粘着剤層付表面保護フィルムC3を得た。
【0084】
[製造例6]粘着剤層付表面保護フィルム3の作製
アクリル系樹脂(2−エチルヘキシルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート=96/4の組成比からなる重量平均分子量50万のアクリルポリマー)100重量部と、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン(株)工業社、商品名:コロネートHX)4重量部とを混合して、アクリル系粘着剤2を調製した。
長尺状(幅1200mm、長さ43m)の厚み38μmのPETフィルム(東洋紡社製、商品名:E5000)に、得られたアクリル系粘着剤を乾燥後の厚みが10μmとなるよう塗布し、粘着剤層を形成した。形成した粘着剤層にセパレーターを貼り合わせて、粘着シートを得た。得られた粘着シートに、ピクナル刃を用いて直径2mmの円形の小穴を1000個形成した。各小穴は、縦250mm、横400mm間隔で形成し、粘着剤層付保護フィルム3を得た。
【0085】
[製造例7]粘着剤層付表面保護フィルム4の作製
粘着剤層の厚みを5μmとした以外は製造例6と同様にして、粘着剤層付表面保護フィルム4を得た。
【0086】
[製造例8]粘着剤層付表面保護フィルムC4の作製
粘着剤層の厚みを30μmとした以外は製造例6と同様にして、粘着剤層付表面保護フィルムC4を得た。
【0087】
[製造例9]粘着剤層付表面保護フィルムC5の作製
粘着剤層の厚みを20μmとした以外は製造例6と同様にして、粘着剤層付表面保護フィルムC5を得た。
【0088】
[製造例10]粘着剤層付表面保護フィルムC6の作製
粘着剤層の厚みを15μmとした以外は製造例6と同様にして、粘着剤層付表面保護フィルムC6を得た。
【0089】
[製造例11]粘着剤層付表面保護フィルム5の作製
粘着シートに形成した小穴の直径を4mmとした以外は製造例1と同様にして粘着剤層付表面保護フィルム5を得た。
【0090】
[製造例12]粘着剤層付表面保護フィルム6の作製
粘着シートに形成した小穴の直径を4mmとした以外は製造例2と同様にして粘着剤層付表面保護フィルム6を得た。
【0091】
[製造例13]粘着剤層付表面保護フィルムC7の作製
粘着シートに形成した小穴の直径を4mmとした以外は製造例3と同様にして粘着剤層付表面保護フィルムC7を得た。
【0092】
[製造例14]粘着剤層付表面保護フィルムC8の作製
粘着シートに形成した小穴の直径を4mmとした以外は製造例4と同様にして粘着剤層付表面保護フィルムC8を得た。
【0093】
[製造例15]粘着剤層付表面保護フィルムC9の作製
粘着シートに形成した小穴の直径を4mmとした以外は製造例5と同様にして粘着剤層付表面保護フィルムC9を得た。
【0094】
[製造例16]粘着剤層付表面保護フィルム7の作製
粘着シートに形成した小穴の直径を4mmとした以外は製造例6と同様にして粘着剤層付表面保護フィルム7を得た。
【0095】
[製造例17]粘着剤層付表面保護フィルム8の作製
粘着シートに形成した小穴の直径を4mmとした以外は製造例7と同様にして粘着剤層付表面保護フィルム8を得た。
【0096】
[製造例18]粘着剤層付表面保護フィルムC10の作製
粘着シートに形成した小穴の直径を4mmとした以外は製造例8と同様にして粘着剤層付表面保護フィルムC10を得た。
【0097】
[製造例19]粘着剤層付表面保護フィルムC11の作製
粘着シートに形成した小穴の直径を4mmとした以外は製造例9と同様にして粘着剤層付表面保護フィルムC11を得た。
【0098】
[製造例20]粘着剤層付表面保護フィルムC12の作製
粘着シートに形成した小穴の直径を4mmとした以外は製造例10と同様にして粘着剤層付表面保護フィルムC12を得た。
【0099】
<実施例1>
基材として、長尺状で、吸水率0.75%、Tg75℃の非晶質のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET)フィルム(厚み:100μm)を用いた。基材の片面に、コロナ処理を施し、このコロナ処理面に、ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(重合度1200、アセトアセチル変性度4.6%、ケン化度99.0モル%以上、日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を9:1の比で含む水溶液を25℃で塗布および乾燥して、厚み11μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、120℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.0倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸)。
次いで、積層体を、液温30℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴に、偏光板が所定の透過率となるようにヨウ素濃度、浸漬時間を調整しながら浸漬させた。本実施例では、水100重量部に対して、ヨウ素を0.2重量部配合し、ヨウ化カリウムを1.5重量部配合して得られたヨウ素水溶液に60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温30℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合し、ヨウ化カリウムを5重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸)。
その後、積層体を液温30℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
続いて、積層体のPVA系樹脂層表面に、PVA系樹脂水溶液(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー(登録商標)Z−200」、樹脂濃度:3重量%)を塗布して保護フィルム(厚み25μm)を貼り合わせ、これを60℃に維持したオーブンで5分間加熱した。その後、基材をPVA系樹脂層から剥離し、透過率42.3%、厚み5μmの偏光子を有する偏光板(幅:1200mm、長さ:43m)を得た。
【0100】
次いで、得られた偏光板の偏光子側表面に、セパレーターを剥離した粘着剤層付表面保護フィルム1を粘着剤層を介して貼り合せ、積層体を得た。得られた積層体を常温の塩基性溶液(水酸化ナトリウム水溶液、1mol/L(1N))に8秒間、0.1mol/L(0.1N)の塩酸に30秒間それぞれ浸漬させた。その後、60℃で乾燥し、PETフィルムを剥離し、透明部を有する偏光子を備えた偏光板を得た。
【0101】
[実施例2〜8]
表1に記載の粘着剤層付表面保護フィルムをそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にして、透明部を有する偏光子を備えた偏光板を得た。
【0102】
(比較例1〜12)
表1に記載の粘着剤層付表面保護フィルムをそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にして、透明部を有する偏光子を備えた偏光板を得た。
【0103】
各実施例および比較例で形成した偏光子の透明部について、以下の方法により、透過率およびヨウ素含有量を測定した。

1.透過率(Ts)
分光光度計(村上色彩技術研究所(株)製 製品名「DOT−3」)を用いて測定した。透過率(T)は、JlS Z 8701−1982の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値である。
2.ヨウ素含有量
蛍光X線分析により、偏光子の透明部におけるヨウ素含有量を求めた。具体的には、下記条件により測定したX線強度から、あらかじめ標準試料を用いて作成した検量線により、偏光子のヨウ素含有量を求めた。
・分析装置:理学電機工業製 蛍光X線分析装置(XRF) 製品名「ZSX100e」
・対陰極:ロジウム
・分光結晶:フッ化リチウム
・励起光エネルギー:40kV−90mA
・ヨウ素測定線:I−LA
・定量法:FP法
・2θ角ピーク:103.078deg(ヨウ素)
・測定時間:40秒
【0104】
各実施例および比較例で得られた偏光子の透明部は、いずれも透過率90%以上、ヨウ素含有量1重量%未満であった。これらの透明部は非偏光部として、機能し得るものであった。
【0105】
[評価方法]
以下の方法により、偏光板に形成された各透明部の形状整合度を測定した。偏光子上の透明部1000個のうち、形状整合度が0.05を超えるものの割合が40%以下であるものを◎、50%以下であるものを○、60%を超えるものを×とした。結果を表1に示す。
【0106】
[形状整合度]
超高速フレキシブル画像処理システム(キーエンス社製、商品名:XG7700)を用いて、実施例1〜8および比較例1〜12で得られた偏光子の非偏光部のエッジ検出を行い、非偏光部近似円を求めた。該非偏光部近似円の円周(図3Aおよび図3Bの破線部分)と偏光子1と非偏光部2との境界(図3Aおよび図3Bの実線部分)との距離を2°毎に測定し、計180点で距離を求めた。測定点において、偏光子1と非偏光部2との境界が非偏光部近似円の外側にある場合(すなわち、図3Aの場合)には、非偏光部2と非偏光部近似円との距離aを測定し、偏光子1と非偏光部2との境界が非偏光部近似円の内側にある場合(すなわち、図3Bの場合)には、非偏光部2と非偏光部近似円との距離bを測定した。距離aの最大値と距離bの最大値との合計値をホールラフネスとして算出した。算出したホールラフネスの値をPETフィルムに形成した小穴の直径(実施例1〜4および比較例1〜3および7〜9:2mm、実施例5〜8および比較例4〜6および10〜12:4mm)で除して、形状整合度の値を求めた。
【0107】
【表1】
【0108】
粘着剤層の厚みが10μm以下である偏光フィルム積層体を用いた実施例1〜8では、PETフィルムに形成した小穴の形状に対応する非偏光部を有する偏光子が高い歩留りで得られた。このような非偏光部を有する偏光子であれば、例えば、非偏光部が画像表示装置のカメラ部に対応するよう用いる場合、アライメント加工性が向上し、カメラの位置合わせを良好に行うことができる。表面保護フィルムに設けられた小穴が2mmと小さい実施例1〜4においても、PETフィルムに形成した小穴の形状に近い非偏光部を有する偏光子が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の方法により得られる偏光子は、スマートフォン等の携帯電話、ノート型PC、タブレットPC等のカメラ付き画像表示装置(液晶表示装置、有機ELデバイス)に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0110】
10 偏光子
20 保護フィルム
30 表面保護フィルム
50 表面保護フィルム
60 粘着剤層
51 露出部
71 貫通孔
100 偏光フィルム積層体
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B