(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6152142
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】車両ブレーキ用ダイヤフラム
(51)【国際特許分類】
F16D 65/18 20060101AFI20170612BHJP
B61H 5/00 20060101ALI20170612BHJP
F16J 3/04 20060101ALI20170612BHJP
F16J 15/52 20060101ALI20170612BHJP
F16D 121/08 20120101ALN20170612BHJP
F16D 125/06 20120101ALN20170612BHJP
F16D 125/12 20120101ALN20170612BHJP
【FI】
F16D65/18
B61H5/00
F16J3/04 A
F16J15/52 Z
F16D121:08
F16D125:06 A
F16D125:12
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-150754(P2015-150754)
(22)【出願日】2015年7月30日
(62)【分割の表示】特願2012-529558(P2012-529558)の分割
【原出願日】2011年7月27日
(65)【公開番号】特開2015-187505(P2015-187505A)
(43)【公開日】2015年10月29日
【審査請求日】2015年8月6日
(31)【優先権主張番号】特願2010-182305(P2010-182305)
(32)【優先日】2010年8月17日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】原島 伸恭
【審査官】
竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−007689(JP,A)
【文献】
特開2000−274529(JP,A)
【文献】
特開2003−172391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00−71/04
F16J 15/52
F16J 3/04
B61H 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器状部と、該容器状部の開口周縁に形成されたフランジ部とを有する車両ブレーキ用ダイヤフラムであって、
前記容器状部およびフランジ部は、シリコーンゴムからなるゴム本体と、そのゴム本体に埋設された基布とを有して構成されており、
前記基布は、アラミド短繊維から構成されており、その基布厚さが0.3mmであることを特徴とする車両ブレーキ用ダイヤフラム。
【請求項2】
前記基布は、平織りされた織物組織からなる請求項1に記載の車両ブレーキ用ダイヤフラム。
【請求項3】
前記容器状部の側面は、折り返し部を形成してローリング作動膜として機能するように使用される請求項1または2に記載の車両ブレーキ用ダイヤフラム。
【請求項4】
前記ローリング作動膜として機能する前記容器状部の膜厚が、0.45〜1.6mmである請求項3に記載の車両ブレーキ用ダイヤフラム。
【請求項5】
前記ローリング作動膜として機能する前記容器状部の膜厚が、1.0〜1.6mmである請求項3に記載の車両ブレーキ用ダイヤフラム。
【請求項6】
前記ローリング作動膜として機能する前記容器状部の形態が、楕円柱形態である請求項3〜5のいずれかに記載の車両ブレーキ用ダイヤフラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪と共に回転するディスクを挟んで摩擦力を付与するブレーキ装置に使用される車両ブレーキ用ダイヤフラムの構造に関するものであって、特に、高温領域および常温領域での使用において耐久性を有することはもとより、低温領域での使用において極めて優れた耐久性を発揮する車両ブレーキ用ダイヤフラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両を減速させ、停車させ、停止させた状態を保つために各種の車両ブレーキが存在する。鉄道車両のブレーキ構造としては、車輪と共に回転するディスクを挟んで摩擦力を付与するキャリパブレーキ(ディスクブレーキ)装置が採用されている。
【0003】
このキャリパブレーキには、油圧式によりブレーキ作動させるものと空気圧式によりブレーキ作動させるものがある。従来より高速での走行を行う新幹線では、油圧式が主として採用されていたが、近年では、車両重量軽減化の要請から在来線および新幹線を問わず空気圧ブレーキの採用が望まれている。
【0004】
このような空気圧ブレーキ方式のキャリパブレーキ装置には、通常、ブレーキパッドをディスクに接近又は離隔方向に変位させるためのアクチュエータが備えられている。アクチュエータとしては、圧力をピストンに伝えるためのダイヤフラムが使用されており、このダイヤフラムが各種部材を介して、ブレーキパッドをディスクに押し付けるように作用させている。ブレーキ装置の先行技術としては、例えば、特開2009−92194号公報が挙げられる。
【0005】
このようなキャリパブレーキに使用されるダイヤフラムは、摩擦により発生する熱に対する耐性や、繰り返し作動に対する耐性が求められるだけでなく、寒冷地仕様に耐えうる耐寒性も求められている。特に、ブレーキという極めて重要な作用をなすアクチュエータとして使用されるダイヤフラムについて、上記の各種の耐久性の向上に再現はないと言え、より優れた耐久特性を備える車両ブレーキ用ダイヤフラムの提案が望まれている。また、ブレーキ用ダイヤフラムを開示したものではないが、本願に類似する先行技術として、例えば、特開2004−197260号公報、特開2004−281834号公報等を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−92194号公報
【特許文献2】特開2004−197260号公報
【特許文献3】特開2004−281834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような実状の基に本発明は創案されたものであって、その目的は、高温領域および常温領域での使用において耐久性を有することはもとより、低温領域での使用において極めて優れた耐久性を発揮する車両ブレーキ用ダイヤフラム(フローティングキャリパーブレーキ用ダイヤフラム)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本願発明は、容器状部と、該容器状部の開口周縁に形成されたフランジ部とを有する車両ブレーキ用ダイヤフラムであって、前記容器状部およびフランジ部は、シリコーンゴムからなるゴム本体と、そのゴム本体に埋設された基布とを有して構成されており、前記基布は、アラミド短繊
維から構成されており、その基布厚さが0.3mmであるように構成される。
【0009】
また、本発明の車両ブレーキ用ダイヤフラムの好ましい態様として、前記基布は、平織りされた織物組織からなるように構成される。
また、本発明の車両ブレーキ用ダイヤフラムの好ましい態様として、前記容器状部の側面は、折り返し部を形成してローリング作動膜として機能するように使用される。
また、本発明の車両ブレーキ用ダイヤフラムの好ましい態様として、前記ローリング作動膜として機能する前記容器状部の膜厚が、0.45〜1.6mmとなるように構成される。
また、本発明の車両ブレーキ用ダイヤフラムの好ましい態様として、前記ローリング作動膜として機能する前記容器状部の膜厚が、1.0〜1.6mmとなるように構成される。
また、本発明の車両ブレーキ用ダイヤフラムの好ましい態様として、前記ローリング作動膜として機能する前記容器状部の形態が、楕円柱形態であるように構成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両ブレーキ用ダイヤフラムは、容器状部と、該容器状部の開口周縁に形成されたフランジ部とを有し、前記容器状部およびフランジ部は、シリコーンゴムからなるゴム本体と、そのゴム本体内に埋設された基布とを有して構成されており、前記基布は、アラミド短繊維またはポリエステル繊維から構成されており、その基布厚さが0.3〜0.4mmとなるように構成されているので、高温領域および常温領域での使用において耐久性を有することはもとより、低温領域での使用において極めて優れた耐久性を発揮するという効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の車両ブレーキ用ダイヤフラムの概略斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の車両ブレーキ用ダイヤフラムを車両用キャリパブレーキ装置に装着した状態の一例を簡略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の車両ブレーキ用ダイヤフラムの概略斜視図であり、
図2は、
図1のA−A断面矢視図であり、
図3は、本発明の車両ブレーキ用ダイヤフラムを車両用キャリパブレーキ装置に装着した状態の一例を簡略的に示す断面図である。
【0013】
図1や
図2に示されるように、本発明の車両ブレーキ用ダイヤフラム1は、容器状部10と、この容器状部10の開口周縁11に連接して形成されたフランジ部20とを有して構成されている。
【0014】
容器状部10およびフランジ部20は、
図2の断面図に示されるように一体的に形成されたものであって、シリコーンゴムからなるゴム本体10a,20aと、そのゴム本体内に埋設された基布30とを有して構成されている。
【0015】
シリコーンゴムは、主鎖がオルガノシロキサン結合からなる合成ゴムであり、例えば、重合度が数千以上の弾力のあるゴム原料組成に、充填材を加えて過酸化物で加硫して製品とされる。側鎖が全部メチル基のジメチルポリシロキサンや、メチル基の一部をビニル基で置換したビニルシリコーンゴムや、メチル基の一部をフェニル基で置換したフェニルシリコーンゴムや、ビニルシリコーンゴムの側鎖にフッ化アルキル基を導入したフッ化シリコーンゴム等が好適例として用いられる。
【0016】
本発明において用いられる基布30は、アラミド短繊維またはポリエステル繊維から構成されており、さらに織物として織られた状態で構成されている。その基布厚さは、0.25mm以上、特に、0.25〜1.0mm、好ましくは0.25〜0.6mm、さらに好ましくは0.3〜0.4mmとされる。この基布厚さが、0.25mm未満となると、高温領域および低温領域双方で格段と向上した耐久性を得ることが困難となるという傾向が生じてしまう。
【0017】
基布30に用いられるアラミド繊維は、芳香族ポリアミド繊維であり、メタ系とパラ系が存在する。例えば、メタ系アラミド繊維としては、メタフェニレンジアミン(MPDA)とイソフタル酸ジクロライド(IPC)を原料として、縮重合させることによってポリフェニレンイソフタルアミド繊維を得ることができる。また、短繊維とは、通常38mm〜100mm程度の長さの繊維であり、通常、これを何本か並べて束ねながら長い糸にして(いわゆる紡績)、できた単糸を数本合わせて撚りをかけて適当な太さにして安定させて用いられる。
【0018】
このようなアラミド短繊維を用いて織物として構成された基布30は、特に、「平織り」された織物組織から構成されることが好ましい。平織りされた織物組織は、丈夫で腰があり、ゴム本体内に埋設させてダイヤフラムとして用いる場合に特に好適である。
【0019】
なお、他の織物である、例えば「綾織り」された織物組織は、柔らかく皺になり難いという特徴があるが、本願発明のごとくゴム内に埋設させて耐久性を向上させるという観点からは好ましい選定とは言えない。また、他の織物である、例えば「朱子織り」された織物組織は、手触りが柔らかく、光沢が強いという特徴があるが、上記の綾織りと同様に本願発明のごとくゴム内に埋設させて耐久性を向上させるという観点からは好ましい選定とは言えない。
【0020】
基布30に用いられるポリエステル繊維は、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルを溶融紡糸した合成繊維である。短繊維あるいは長繊維のいずれであってもよい。
【0021】
このようなポリエステル繊維を用いて織物として構成された基布30は、特に、「平織り」された織物組織から構成されることが好ましい。平織りされた織物組織は、丈夫で腰があり、ゴム本体内に埋設させてダイヤフラムとして用いる場合に特に好適である。その基布厚さは、前述したように、0.25mm以上、特に、0.25〜1.0mm、好ましくは0.25〜0.6mm、さらに好ましくは0.3〜0.4mmとされる。この基布厚さが、0.25mm未満となると、高温領域および低温領域双方で格段と向上した耐久性を得ることが困難となるという傾向が生じてしまう。
【0022】
図1や
図2に示されるように、本発明のダイヤフラムを構成している容器状部10の側面15は、車両用キャリパブレーキ装置に組み込まれるに際して、折り返し部を形成してローリング作動膜として機能するように使用される。そして、一般的に、車両用キャリパブレーキ装置を構成するいわゆる外部に配置されたピストン壁からシリンダ壁へと、滑らかかつ摩擦なく転がりながら折り返し部を移動させて行くように作用する。この折り返し部の状態については、
図3を用いて後述する。
【0023】
ローリング作動膜として機能する部分を含む容器状部10の膜厚さは、0.45〜1.6mm、より好ましくは1.0〜1.6mmとされる。この容器状部10の膜厚さは、通常、埋設される基布30の厚さをも考慮して決められる。この膜厚さが0.45mm未満となると、高温領域および低温領域双方で十分となる耐久性を得ることが困難となるという傾向が生じてしまう。
【0024】
前記ローリング作動膜として機能する部分を含む容器状部10の形態は、特に制限されるものではないが、
図1に示されるように、楕円柱形態として構成することが望ましい。キャリパブレーキ(ディスクブレーキ)装置のブレーキ機構を有効に機能させるためである。
【0025】
また、
図2に示されるように埋設されている基布30は、その断面図から明確なように、容器状部10の外側に近い方向に偏って埋設されている。より具体的には、基布30が埋設されている基布中心位置Pを基準として基布の半分厚さを含む容器状部10の外側のゴム厚さをt1、基布が埋設されている基布中心位置Pを基準として基布の半分厚さを含む容器状部の内側のゴム厚さをt2とした場合、t2/t1=2〜15、より好ましくは、2〜13となるように構成される。ゴム厚さを偏らせてゴム厚さの厚い方にアクチュエータの作動流体(例えば、圧縮空気)を作用させるためである。そして、ダイヤフラムをブレーキ装置に組み込むに際しては、このような作用ができるようにダイヤフラムをブレーキ装置に配設する。
【0026】
なお、取り付け手法の違いや、使用形態の違いによっては、成形後のダイヤフラムをそのまま使用するのではなく、成形後のダイヤフラムを完全に裏返して(リバースして)装置に組み付けることもある。これもやはりゴム厚さの厚い方にアクチュエータの作動流体(例えば、圧縮空気)を作用させるためである。
【0027】
<車両ブレーキ用ダイヤフラムの製造方法の一例の説明>
本発明の基布入りの車両ブレーキ用ダイヤフラムを製造するに際しては、一般的に、以下の手順で行えばよい。
【0028】
まず、最初に下型と上型とからなる成形金型が準備される。
下型には主として容器状部10の形態である楕円柱形態のキャビティ形成用凸部が備えられており、この下型と対をなす上型には主として楕円柱形態のキャビティ形成用凹部が備えられている。そして下型と上型を一体化させると、これらの間には所定の間隙を隔ててハット状(縁付き楕円帽子状)のキャビティが形成されるようになっている。
【0029】
このような構造を備える成形金型のキャビティ内において、まず最初に未加硫ゴムのゴムプレフォームが形成される。未加硫ゴムのゴムプレフォームの成形は、例えば、未加硫ゴムのシート状成形物を下型のキャビティ面に装着し、下型および上型を係合して加圧することにより行われる。この場合、成形金型の温度および圧力は、未加硫ゴムの加硫が進行しない条件に設定される。
【0030】
このようなゴムプレフォーム工程の後に、上型を離脱させると、下型の上にはハット状の未加硫ゴムのゴムプレフォームが形成される。この未加硫ゴムのゴムプレフォームの上に平織りされたアラミド短繊維からなる基布を被着させる。しかる後、下型と上型とを一体化させて、ゴムプレフォーム中に基布を埋設させながら熱加硫する。なお、基布は予めゴムプレフォームの形態に類似する形態に予備成形されていることが望ましい。
【0031】
下型と上型とを分離して、内部で成形された本発明のダイヤフラムが取り出される。通常、取り出し後に、フランジ部20の形態を整えるために、通常、楕円形状での打ち抜きが行われる。
【0032】
<車両ブレーキ用ダイヤフラムの車両ブレーキへの取り付け>
図3には、本発明の車両ブレーキ用ダイヤフラムを車両用キャリパブレーキ装置に装着した状態の一例が断面図として示される。
【0033】
本発明において、特に、
図3を提示したのは、本発明のダイヤフラムの概略的な取り付け要領を示すとともに、本発明のダイヤフラムの容器状部10の側面15が車両用キャリパブレーキ装置に組み込まれるに際して、折り返し部を形成してローリング作動膜として機能するように使用される状態を図面で明示するためである。
【0034】
図3において、いわゆるフローティング式の車両用キャリパブレーキ装置は、制輪子7を対向するディスク6に押し付けるダイヤフラムアクチュエータを備えており、当該ダイヤフラムアクチュエータは、キャリパ本体10に取り付けられるダイヤフラム1と、このダイヤフラム1によって区画されるダイヤフラム室63と、ダイヤフラム1と制輪子7の間に介装されてダイヤフラム1の動きを制輪子7に伝達する複数のピストン55と、この各ピストンを摺動可能に支持するピストンガイドフレーム65を備え、制動時にこのダイヤフラム室63に導かれる空気圧によってダイヤフラム1が膨らんで各ピストン55が制輪子7をディスク6に押し付けるように構成されている。
【0035】
そして、最外部に位置するピストンと、ダイヤフラム室63を形成しているシリンダ内壁73との間にはダイヤフラム1の折り返し部1aが形成されており、ローリング作動膜として機能するように構成されている。なお、符号80はリターンばね構造部である。
【実施例】
【0036】
以下、具体的な実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
ゴム本体10a,20aを構成するゴム材料として、下記に示すような3種のゴム材料を準備した。
・(R−1):シリコーンゴム(商品名:KE−555−U;信越化学社製)
・(R−2):フッ素ゴム(商品名:バイトンGLT;デュポン社製)
・(R−3):EPDM(商品名:EPT3072EHM;三井化学社製)
・(R−4):EPDM(商品名:エスプレン532;住友化学社製)
【0037】
また、ゴム本体に埋設させる基布として、下記に示すような繊維からなる基布材料を準備した。
・(K−1):アラミド短繊維(商品名:コーネックス;帝人社製)
(平織り構造の基布;基布厚さ0.3mm)
・(K−2):アラミド長繊維(商品名:デュポン社製)
(平織り構造の基布;基布厚さ0.17mm)
・(K−3):ポリエステル(商品名:テトロン;帝人社製)
(平織り構造の基布;基布厚さ0.3mm)
【0038】
下記表1に示される組み合わせの要領で、上記の各ゴム層の中に上記の各織物構造の基布を埋設させて62mmφのテストサンプルを作製した。テストサンプルにおける基布を含むゴム厚さ(サンプル厚さ)は、0.45mmとした。
【0039】
基布は、ゴム層の片側面に略面一となるように偏った状態で埋設されており、ゴム層の厚い方を圧力面とした。基布厚さ0.3mmの場合、t2/t1=2.0程度となり、基布厚さ0.17mmの場合、t2/t1=4.3程度となる。
【0040】
これらの各テストサンプルについて、(a)−40℃における低温領域、(b)160℃の高温領域、および(c)23℃の常温領域におけるそれぞれの耐久性テストを行った。
【0041】
耐久性テストは、ピストン径30mm、シリンダー径50mmの連続的な押し込み機構を備えた実験用シリンダ装置であり、ピストンとシリンダーとの間にテストサンプルを設置して、ピストンによる連続的な押し込み動作を繰り返し、テストピースが破断するに至るまでのピストンの押し込み回数を測定した。試験圧は600kPaとした。
結果を下記表1に示した。
【0042】
【表1】
【0043】
なお、上記の(R−4):EPDM(商品名:エスプレン532;住友化学社製)は、上記の(R−1):シリコーンゴム(商品名:KE−555−U;信越化学社製)よりもゴムそのものが低温性(低温耐久性)に優れるグレードのものである(ゲーマン捩り試験による低温性比較によって確認されている)。従って、ゴムそのものでの低温性は、(R−4):EPDMは、(R−1):シリコーンゴムよりも優れる。
【0044】
しかしながら、試料No.5と試料No.6との実験結果より、低温耐久性の効果に対するポリエステル繊維の基布との相性では、意外なことに、予想に反して(R−4):EPDMよりも(R−1):シリコーンゴムの方が優れることがわかった。なお、試料No.5と試料No.6との実験において、160℃の高温領域における耐久性テストは、行わなかった。その理由は、特に、低コストの基布を用いて、所望の低温耐久性を向上させることに主眼を置いた車両ブレーキ用ダイヤフラムを開発するという理由からである。
【0045】
上記の結果より、本発明の効果は明らかである。すなわち、本発明の車両ブレーキ用ダイヤフラムは、容器状部と、該容器状部の開口周縁に形成されたフランジ部とを有し、前記容器状部およびフランジ部は、シリコーンゴムからなるゴム本体と、そのゴム本体内に埋設された基布とを有して構成されており、前記基布は、アラミド短繊維またはポリエステル繊維から構成されており、その基布厚さが0.3〜0.4mmとなるように構成されているので、高温領域および常温領域での使用において耐久性を有することはもとより、低温領域での使用において極めて優れた耐久性を発揮する。
【産業上の利用可能性】
【0046】
ダイヤフラム用ゴム組成物およびそれを用いたダイヤフラムを用いる産業、並びに鉄道車両の産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…車両ブレーキ用ダイヤフラム
10…容器状部
20…フランジ部
10a,20a…ゴム本体
30…基布