(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
アルゴンプラズマ凝固器具を扱う際には、異物、特に金属異物が生体組織内に存在しないことに特に注意を払わなければならない。これら異物とは、例えば、過去に患者に埋め込まれていたり、現在の処置中に埋め込まれたステントまたは他の金属部分のことである。スパークまたはプラズマが意図的ではなく、生体組織内のステント、金属クランプ、または、他の金属体に作用してしまうと、金属部分の損傷を引き起こす可能性があり、当該金属部分はその機能を失ってしまう可能性がある。また、例えば、熱伝導が原因で、周辺組織も不必要に損傷を受けるかもしれない。
【0004】
一方、例えば、ステントを短くするために、または、ある外科的処置を行うために、スパークまたはプラズマが金属異物に作用することが望ましい場合もある。例えば、電気手術器具のスパークまたはプラズマジェットによって選択的に加熱させて血管凝固可能な解剖用ピンセットを用いて、出血している血管を凝固させる場合などである。
【0005】
また、TURにおいて単極切除ループおよび双極切除ループを利用する場合は、切除ループと切除用内視鏡との間の距離が短すぎて金属製の切除用内視鏡へ意図的ではなくスパークしてしまうことが知られている。この望ましくないスパークにより、金属製の切除用内視鏡に電流が流れる。そして、切除用内視鏡は生体組織に接触しているので、望ましくない凝固影響を組織に与えることになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明の目的は、スパーク発生電気器具の金属への作用が生体組織への作用と区別できる概念を生み出すことである。
【0007】
この目的は、請求項1に係る装置を用いて達成される。
【0008】
本発明に係る装置は、電気手術器具に属するものでもよいし、その一部でもよい。同様に、当該装置は、器具に給電することを目的とした電源装置に属するものでもよいし、そのような電源装置の一部でもよい。あるいは、当該装置は、電源装置と電気手術器具との間に別個のモジュールとして設けられてもよい。
【0009】
当該装置は、器具を動作させる電源装置が出力する電圧を測定し、かつ、電源装置から器具に供給される電流を測定する測定部を含む。電源装置の内部抵抗が小さいか、または、ゼロであって、かつ、出力電圧が周知であれば、電圧測定を省略することが可能であり、電流を測定することで事足りる。電流(電圧)は、連続的に測定されてもよいし、断続的に、例えば、短い間隔で測定されてもよい。電圧および電流は、短い間隔で、測定されることが好ましい。電気手術器具に給電するために、電源装置が交流電圧、好ましくは、高周波交流電圧を供給する場合、その間隔は、電圧または電流の周期長の半分より短いことが好ましい。電圧または電流を測定する際は、電圧および電流の適切な特性値を少なくとも1個測定する。このような特性値は、瞬時値、最大値、平均値、実効値、または、特性を示すのに適した他の値でもよい。
【0010】
当該装置に属する金属検知部は、電流に基づいて、また、電圧に基づいて、つまり、結局は、電流の1以上の特性値、および、電圧の1以上の特性値に基づいて、器具から発生するスパークが生体組織に接触したのか、または、金属部分に接触したのかを判断する。
【0011】
当該装置により、ユーザは、視界条件が悪かったとしても、スパークまたはプラズマが金属部分に作用したときをタイミングよく確実に特定できる。プラズマまたはスパークによる金属接触をユーザが特定できるよう、触覚信号、光信号、または、音声信号などをユーザに出力するために、金属検知部をシグナリング装置に接続してもよい。また、金属検知部で生成された信号を用いて、電源装置をオフにすること、または、別の方法で電源装置を制御することも可能である。例えば、金属を検知した場合には、電源装置の出力を下げて、望ましくない生体影響を回避してもよい。一方、金属に作用することが望ましい場合には、信号を用いて電源装置をオフにしないことができるが、スパークまたはプラズマを利用して金属切断の助けとなるよう、スパークまたはプラズマの金属接触を特定した際に電源装置の出力を増加させる。
【0012】
金属検知部は、抵抗特性変数とスパーク特性変数とを決定する分析部を含んでもよい。抵抗特性変数は、組織抵抗に応じた値である。スパーク特性変数は、スパークサイズに応じた変数であることが好ましい。両方の特性変数、つまり、抵抗特性変数およびスパーク特性変数を対応する閾値と比較して、この比較結果から有意な信号を生成してもよい。そして、電気抵抗特性変数、つまり、抵抗特性値が抵抗閾値を下回り、かつ、スパーク特性変数、つまり、スパーク特性値がスパークサイズ閾値を上回る場合に、プラズマまたはスパークによる金属接触が信号伝達されることが好ましい。その他の状況は、以下のような他の組み合わせ全てと関連付けられる。
【0013】
抵抗特性値が抵抗閾値を下回り、かつ、スパーク特性変数がスパークサイズ閾値より小さい場合、器具の電極と組織とは直接接している。
【0014】
抵抗特性変数が抵抗閾値より大きく、スパークサイズがスパークサイズ閾値を下回る場合、スパークまたは空気中へのスパーク放出はない。
【0015】
抵抗特性変数が抵抗閾値より大きく、かつ、スパーク特性変数がスパークサイズ閾値より大きい場合、スパークまたはプラズマは金属接触せずに組織に影響を及ぼす。
【0016】
抵抗特性変数およびスパーク特性変数を計算、つまり決定するために、適切な方法全てを用いることができる。例として、抵抗特性変数を、電気抵抗の線形成分と定めてもよい。この線形成分は、測定電流の特性値と測定電圧の特性値との商として与えられる。特に、電流と電圧の実効値からこの商を求め、そして、力率を乗じることにより、抵抗特性変数を求める。この抵抗特性変数には、組織抵抗だけでなく、さらなる成分、例えば、器具の給電配線の配線抵抗、および、該当すればスパークからの線形抵抗成分なども含まれる。しかしながら、このように決定される抵抗特性変数は、組織抵抗にふさわしい尺度である。
【0017】
スパークによって形成される非線形抵抗まで降下する電流の非線形成分を決定して、スパーク特性変数を決定してもよい。つまり、分析部は、電流iの非線形成分に基づいて、スパーク特性変数F
relを決定してもよい。具体的には、分析部は、電流iの非線形成分に対する推定値を決定する。このために、分析部は、線形等価回路と測定電圧(または対応する電圧特性値)とに基づいて、関連電流i
sim(t)を計算してもよい。電流計算値i
sim(t)と電流実測値i(t)との差分i
f(t)は、スパークの非線形性によって生じる電流の特性を示す。つまり、分析部は、線形等価回路に基づいた電流計算値i
sim(t)から電流i実測値のずれに基づいて、電流iの非線形成分に対する推定値を決定する。この差分i
f(t)の実効値F
effと電流実測値i(t)の実効値i
effとの比をスパーク特性変数F
relとして用いてもよい。このように、分析部は、電流i実測値および電圧u実測値から、線形等価回路の要素を決定する。
【0018】
抵抗特性変数と抵抗閾値との比較、および、スパーク特性変数とスパークサイズ閾値との比較の代わりに、急な経時変化に対する抵抗特性変数とスパーク特性変数とを調べることも可能である。スパーク特性変数の増加勾配dF
rel/dtおよび抵抗特性変数の増加勾配dR/dtがある制限値を超えた場合には、同様に、金属接触と判定できる。
【0019】
本発明の実施形態の詳細は、図面、請求項、および、特に明細書から明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、電気手術器具10を用いて生体組織11に処置が行われる使用状況を概略的に示したものである。このために、当該器具10は、装置12から電流供給される。装置12が出力する電圧uおよび器具10に供給される電流iは、周波数が数100kHz、例えば、350kHzである周期的な変数であることが好ましい。本発明は、これに限定されないが、特に、単極の用途に適している。したがって、第1配線13が装置12から器具10につながっている。第2配線14は、装置12から、組織11の損傷していない表面、特に、患者の皮膚に取り付けられた大型中性極15につながっている。
【0022】
器具10は、生体組織11へ電流が流れる始点となる電極17を少なくとも1個有する。実際の状況に応じて、電流は、組織に直接触れることによって流れることもあるし、電極17と生体組織11との間で発生するスパーク18を介して流れることもある。なお、対象となる用途に応じて、スパーク18は、空気、および/または、水蒸気、および/または、Purisole(登録商標)や生理食塩水などの液体の気化ガス、および/または、窒素、二酸化炭素、または、特にアルゴンなどの希ガスといったその他のガスを含んだ空間を通過してもよい。存在するガスもしくは混合ガスまたは蒸気は、スパーク18範囲でイオン化してプラズマとなり、スパーク18が生体組織11と接触してそこに電流が流れる。
【0023】
生体組織11は、電気伝導性の異物、特に、食道などの中空管状器官21を広げたままにするステント20(
図1)といった金属部分19を含んでもよい。さらに、金属部分19は、クランプ、ねじ、板、配線、または、患者の体に入れられたその他の部品でもよい。
【0024】
生体組織11を処置する際に、スパーク18を金属部分19に接触させてもよい。このような接触は、制御されていないところでは決して起こすべきでない。これは、例えば、ステントを短くするために金属部分を選択的に加熱または切断する、または、例えば、ピンセット間で組織を凝固させるために手術用ピンセットを加熱するには望ましいことであろう。しかしながら、例えば、金属部分19の加熱が、金属部分19の破損を引き起こし、また、周辺生体組織の損傷にもつながる場合には望ましいことではない。利用領域が見えづらく、いかにしてもいいタイミングでユーザが金属部分を検知することが難しい場合もある。特に、スパーク18が金属部分19に接触するのはあっという間で、いかにしても検知するのは難しい。
【0025】
スパーク18による金属接触を検知するために、
図2に示すような金属検知部22が設けられる。この金属検知部22は、装置12の一部または器具10の一部であってもよいし、中間モジュールとして構成されてもよい。このような中間モジュールは、配線13、14の代わりに装置12に接続されるものであり、当該配線13、14は中間モジュールに取り付けられる。
【0026】
測定部23は、金属検知部22に属してもよく、器具10に出力される電圧uと器具10に供給される電流iとを測定する。また、測定部23は、電流iおよび電圧uによって定まる力率cosφを決定する。ここでは、少なくとも1つの電圧特性値Kuと、少なくとも1つの電流特性値Kiとを測定する。このような電流特性値Kiは、実効値i
eff、平均値i
mean、最大値i
peak、または、瞬時値i(t)でもよいし、特性を示すのに適したその他の値でもよい。このような特性値は、連続的に測定されるか、サンプリング手法で測定される。瞬時値をサンプリングする場合、電流の周波数の2倍以上でサンプリングすることが好ましい(例えば、700kHz以上)。瞬時値u(t)、最大値u
peak、平均値u
mean、実効値u
eff、または、特性を示すのに適したその他の値は、電圧に対する特性値Kuとして同様に測定されてもよい。測定は、連続的または周期的に行われる。瞬時値をサンプリングする場合、電圧の周波数の2倍以上でサンプリングすることが好ましい。上記および下記において、「電流測定」または「電圧測定」と述べる場合は、説明した、電流または電圧の対応特性値の測定のことを指す。
【0027】
電圧および電流の測定された特性値Ku、Kiは、測定部23から分析部24に伝達される。分析部24は、電流および電圧の特性変数に基づいて、スパーク18が組織11に接触したのか、または、金属部分19に接触したのかを識別する。
【0028】
分析部24は、電源装置26の制御部25に後段で接続する。当該電源装置26は、
図2に概略図示されており、高周波電気エネルギーを器具10に供給する。電源装置26は、通常、制御部25の他に、電源27と、当該電源27に接続された、共振回路29と無電位高周波デカップリングコイル30とを有する電力発振器28とを備える。制御部25は、電源装置26の動作を制御、つまり、電源装置26を起動および停止させ、電圧、電流、出力、波高率のうち少なくとも1つを規定する。制御部25は、操作部材(詳細な図示なし)とやりとりしてもよい。この操作部材は、装置12および器具10の少なくとも一方におけるスイッチまたは設定部として、および/または、さらに別個のスイッチまたは入力部として形成される。
【0029】
電流測定値と電圧測定値とに基づいて、スパーク18が組織11に接触したのか、または、金属部分19に接触したのかを検知するために、分析部24は、少なくとも2つの特性変数、具体的には、スパーク特性変数F
relと抵抗特性変数Rとを決定するように構成される。スパーク特性変数F
relとして、スパーク18のサイズおよび強度の少なくとも一方の特性を示す特性変数を選択することが好ましい。例として、器具10と、スパーク18と、生体組織11とで形成される電気回路網の非線形性の特性を示す特性変数を、スパーク特性変数F
relとして用いる。このように形成された電気回路網は、簡略化して
図2に示されている。この回路網には、配線13、14のオーミック抵抗R
Kabelと、インダクタンスL
Kabelと、配線13、14間で測定される容量Cと、組織抵抗R
G1またはR
G2とが含まれる。組織抵抗R
G1は、スパーク18が組織に接触した場合の生体組織抵抗値である。組織抵抗R
G2は、スパーク18が金属部分19に接触した場合の、金属部分19の電流分布による、通常、より小さい組織抵抗値である。また、電気回路網には、スパーク18の非線形抵抗も含まれる。
【0030】
分析部24は、
図3に示すような、内部等価回路31、つまり、電気回路網の内部回路網モデル31を有してもよい。回路網モデル31は、
図2に従って実際に設けられる回路網を簡略化して表したものでもよく、生じるインダクタンスと容量と抵抗とを組み合わせて要素R、L、および、Cとする。回路網がその時点で、主に誘導的なのか、それとも、主に容量的なのかに応じて、回路網モデル31の代わりに
図4または
図5における簡易回路網モデル31aまたは31bを選択してもよい。この選択は、分析部24によって行われ、電流iが電圧uに対して遅れているか進んでいるかに基づいて判断されてもよい。
【0031】
分析部24は、回路網モデル31、31a、31bの要素L、R、Cの値をまず決定するように設計される。このために、要素L、R、Cの値は、回路網モデル31、31a、31bで数学的に得られる電流値および電圧値ができるだけ電流実測値および電圧実測値と合うように、例えば、回帰計算の範囲内の値とされるか、または、最小二乗法を用いて求められる。オーミック配線抵抗R
Kabelは、概ね1オームより小さいので、微々たるものである。したがって、
図4または
図5における回路網モデル31a、31bによる抵抗値Rは、組織抵抗値に相当する。線形回路網モデルと一致しない電流iの成分と電圧uの成分は、スパーク18の非線形抵抗値Fに割り当てられる。要素L、R、Cの値は、起動開始時、または、周期的もしくは連続的に決定されてもよい。
【0032】
図3に示すように、スパーク特性変数F
relは、実電流値i(t)と線形回路網によって求まる電流値i
sim(t)とから決定してもよい。このために、
図3には、電流実測値i(t)および電圧実測値u(t)の処理を説明するためのブロックが複数示されている。これらのブロックは、プログラムコードまたは別の方法で実現されてもよい。ブロックの機能配置は単なる例であり、異なっていてもかまわない。
【0033】
ブロック32は、散発的、周期的、または、連続的に、
図3、
図4、または、
図5における回路網モデル31の要素R、L、および/または、Cを決定する。そして、回路網モデル31は、電圧実測値u(t)を入力として、電流値i
sim(t)を求め、電流実測値i(t)から差分i
f(t)を算出して、i
f(t)から実効値F
effを算出する。特に、スパーク18が発生した場合、電流値i
sim(t)は、測定された電流i(t)の実効値i
effと一致しない。
【0034】
電流誤差i
f(t)は、高周波外科用途向けに
図4または
図5における等価回路から算出された対象電流i
sim(t)と、高周波適用中に測定された高周波電流i(t)との差分として算出される。
【0035】
i
f(t)=i
sim(t)−i(t)
【0036】
ブロック32は、電流誤差i
f(t)として、電流シミュレーション値i
sim(t)の電流実測値i(t)からのずれを算出する。あるいは、i
f(t)は、対象電流i
sim(t)の瞬時値と実電流i(t)の瞬時値とに基づいて算出されてもよい。F
effは、以下のような、電流誤差i
f(t)の実効値であり、
【数1】
ブロック32で算出される。
【0037】
高周波電流の実測値i(t)が、計算された回帰電流から最も外れている場合に、電流誤差i
f(t)は最大となる。このずれは、特に、スパークを伴う高周波外科用途において発生し、この場合、スパークが原因で高周波電流i(t)に大きな歪みが存在する。スパークが発生して、それに伴い電流が歪む場合は、回帰電流を計算する等価回路の非線形成分が特に大きい。
図3から
図5における等価回路の線形要素は、高周波電流の実測値i(t)を十分に説明することができず、回帰電流i
sim(t)が高周波電流の実測値i(t)からずれる原因となる。これは、電流誤差i
f(t)が大きいことと相関があり、それに応じて電流誤差の実効値F
effは増加する。実測された高周波電流の実効値i
effを用いて比をとることにより、スパーク発生の相対的な尺度をブロック35において求める。
【0038】
分析部24は、前述したように、
図3における回路網モデル31、または、
図4における回路網モデル31aもしくは
図5における回路網モデル31bの線形値を回帰分析により算出する。抵抗成分Rは、抵抗特性変数として用いることができ、主に、生体組織11の抵抗値、つまり、
図2における例で組織抵抗値R
G1またはR
G2に割り当てられるものの特性を示す。このために、回帰計算は、器具10の動作中ずっと抵抗特性変数Rの瞬時値を決定できるよう、ブロック32、つまり、回帰ブロックによって連続的に行われる。
【0039】
あるいは、
図3に示したように、別個の抵抗計算ブロックにより組織抵抗を決定してもよい。このために、ブロック36、37は、まず、高周波電圧の実効値u
effおよび高周波電流の実効値i
effを瞬時値i(t)から決定し、力率cosΦも決定する(あるいは、抵抗計算ブロック33が、これらの実効値を測定部23から取得してもよい)。抵抗特性変数として、抵抗計算ブロック33は、高周波電圧u(t)の実効値u
effを実効値i
effで割った値に力率cosΦを乗じたものを形成する。
【0040】
比較部34は、ブロック35で決定されたスパーク特性変数F
relを、スパークサイズ閾値F
0と比較する。さらに、比較部34は、抵抗特性変数Rを抵抗閾値R
0と比較する。
図6にそのプロセスを示す。スパーク特性変数F
relは、スパークサイズ閾値F
0より小さいか、大きい可能性がある。また、抵抗特性変数Rも、抵抗閾値R
0より小さいか、大きい可能性がある。結果として、4通りの可能性がある。R
0を例えば300オームに、F
0を例えば0.4に適切に選択すると、抵抗特性変数Rが抵抗閾値R
0より小さく、かつ、スパーク特性変数F
relがスパークサイズ閾値F
0より大きい場合に、スパーク18の金属接触が確認されると分かった。残りの3通りでは、例えば、スパーク発生を伴わない器具10と組織11の接触、スパーク発生がない空気中での電極17起動、または、スパーク発生を伴う組織11へのスパークなどの他の状況になっている。一方、金属部分に対して発生するスパークが検知されると、適切な対処を象徴的に示すブロック38へ分岐する。このような対処とは、認識できる信号を送信すること、または、制御部25へ影響を与えることでもよい。これにより、例えば、出力が増減してもよいし、電源装置26がオフになったり、波高率が変更されたりなどしてもよい。
【0041】
図7は、上記方法の変形例を示す。上述したように、抵抗特性変数Rとスパーク特性変数F
relとを同じく連続的に決定する。しかしながら、上述した方法と異なり、これらの変数を絶対閾値F
0およびR
0と比較しない。むしろ、抵抗特性変数Rの経時変化dR/dtとスパーク特性変数F
relの経時変化dF
rel/dtとを評価基準として決定し、制限値r
0およびf
0と比較する。組織抵抗値の変化dR/dtが抵抗変化閾値r
0よりも小さく、かつ、スパーク特性変数F
relの変化dF
rel/dtがスパークサイズ変化閾値f
0よりも大きい場合には、同じく対処ブロック38へ分岐する。このようにして、ランダムな実測値変動による、金属接触に関する誤った結論を避けることができる。
【0042】
本発明に係る、スパーク発生電気手術器具10を用いた金属検知装置は、器具10に供給される電流i(t)(および電圧も)に基づいて、器具10から発生するスパーク18が生体組織11に接触したのか、または、金属部分19に接触したのかを判断する金属検知部22を備える。これは、線形等価回路31と一致しない電流i(t)の成分を決定することにより実現されることが好ましい。線形等価回路31の各要素は、回帰計算の演算前、または、演算中に決定される。第1の判断基準として、スパーク特性変数F
relを電流i(t)から決定する。第2の判断基準として、組織抵抗の特性を示す抵抗特性変数Rを決定する。両方の特性変数を、閾値F
0、R
0と比較する。抵抗特性変数Rが抵抗閾値R
0を下回り、かつ、スパーク特性変数F
relがスパークサイズ閾値F
0を上回る場合に、スパーク18が金属部分19に対して作用したという特性を示す信号が生成される。