特許第6152168号(P6152168)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6152168静的周波数変換装置システムにおける出力変圧器の周波数変換差動保護方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6152168
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】静的周波数変換装置システムにおける出力変圧器の周波数変換差動保護方法
(51)【国際特許分類】
   H02H 7/045 20060101AFI20170612BHJP
【FI】
   H02H7/045 E
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-530272(P2015-530272)
(86)(22)【出願日】2013年7月1日
(65)【公表番号】特表2015-529444(P2015-529444A)
(43)【公表日】2015年10月5日
(86)【国際出願番号】CN2013078552
(87)【国際公開番号】WO2014040448
(87)【国際公開日】20140320
【審査請求日】2016年2月1日
(31)【優先権主張番号】201210332624.4
(32)【優先日】2012年9月11日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515063024
【氏名又は名称】南京南瑞▲継▼保▲電気▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NR ELECTRIC CO., LTD
(73)【特許権者】
【識別番号】515063046
【氏名又は名称】南京南瑞▲継▼保工程技▲術▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NR ENGINEERING CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼俊
(72)【発明者】
【氏名】沈全▲栄▼
(72)【発明者】
【氏名】▲厳偉▼
(72)【発明者】
【氏名】王慧敏
(72)【発明者】
【氏名】王▲凱▼
(72)【発明者】
【氏名】李▲華▼忠
【審査官】 竹下 翔平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−073324(JP,A)
【文献】 特開2004−104842(JP,A)
【文献】 実開昭58−034597(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0147412(US,A1)
【文献】 特開昭62−244218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/26−3/30
7/04−7/055
H02M 1/00−1/44
5/00−5/48
H02P 6/00−6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SFCシステムにおける出力変圧器の周波数変換差動保護方法であって、保護装置により、SFCシステム出力変圧器の各側の三相電流を測定し、出力変圧器の接続様態に基づき、三角形側を基準として、星形側を位相補正するとともに、変圧器の各側の二次定格電流の違いを考えて、各側のバランス係数の調整を行い、各側の校正電流と差動電流サンプル値を形成し、発電機保護のうち周波数の影響を受けないスタートアップ・シャットダウン保護アルゴリズムにより、校正電流、差動電流及び制動電流の振幅を計算し、差動電流と制動電流の大きさに基づき、比率制動差動の特性により、出力変圧器の周波数変換比率差動保護を実現し、
前記発電機保護のうち周波数の影響を受けないスタートアップ・シャットダウン保護アルゴリズムは、ゼロクロス点積分アルゴリズム又は電流ピーク判定法を含むことを特徴とするSFCシステムにおける出力変圧器の周波数変換差動保護方法。
【請求項2】
出力変圧器の接続様態に基づき、三角形側を基準として、星形側を位相補正するとともに、変圧器の各側の二次定格電流の違いを考えて、各側のバランス係数の調整を行い、Y,d,d−11接続様態の変圧器の場合に、各側のバランス係数の計算方法は、通常の変圧器の差動保護によるものと同様に、高圧側バランス係数をそれぞれKHとし、低圧1側のバランス係数をKL1とし、低圧2側のバランス係数をKL2とし、iHa.j(k)、iHb.j(k)、iHc.j(k)を、それぞれ高圧側の三相校正電流サンプル値として取得し、iL1a.j(k)、iL1b.j(k)、iL1c.j(k)はそれぞれ低圧1側の電流サンプル値であり、iL2a.j(k)、iL2b.j(k)、iL2c.j(k)はそれぞれ低圧2側の三相校正電流サンプル値であり、
式(1)に示すように、高、低圧側の校正電流から三相差動電流を計算し、
【数1】

ここで、ida(k)、idb(k)、idc(k)はそれぞれ三相差流サンプル値であり、
発電機保護のうち周波数の影響を受けないスタートアップ・シャットダウン保護アルゴリズムにより、高圧側の校正電流サンプル値から、その振幅IHa.j、IHb.j、IHc.jを計算し、低圧1側の校正電流サンプル値から、その振幅IL1a.j、IL1b.j、IL1c.jを計算し、低圧2側の校正電流サンプル値から、その振幅IL2a.j、IL2b.j、IL2c.jを計算し、差動電流サンプル値から、その振幅Ida、Idb、Idcを計算し、
式(2)に示すように、高、低圧側の校正電流から、制動電流を計算し、
【数2】

Ira、Irb、Ircはそれぞれ三相制動電流であり、
差動電流の制動電流の大きさに基づき、比率制動差動の特性により、出力変圧器の周波数変換の比率差動保護を実現し、比率制動特性は、二重折れ線又は多重折れ線比率制動方式、二重勾配比率制動方式又は勾配変化比率制動方式から選択され、
二重折れ線比率制動特性の差動保護動作方程式は、
【数3】

であり、
Irは制動電流であり、Idは差動電流であり、Isは差動保護スタート電流であり、Itは変曲点電流であり、kは比率制動係数であり、
分相判定により、式(3)に示す動作方程式を満たすと、出力変圧器の差動保護が動作することを特徴とする請求項1に記載のSFCシステムにおける出力変圧器の周波数変換差動保護方法。
【請求項3】
比率制動特性は、二重折れ線又は多重折れ線比率制動方式、二重勾配比率制動方式又は勾配変化比率制動方式を含むことを特徴とする請求項1に記載のSFCシステムにおける出力変圧器の周波数変換差動保護方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力システムリレー保護分野に属し、特に、SFCシステム出力変圧器の周波数変換差動保護方法及び対応するリレー保護装置又は監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
SFC(静的周波数変換装置)システムは、一般的に揚水発電ユニットと大型ガスタービン発電ユニットに使用され、ユニットの周波数変換スタートを実現する。従来、中国国内のSFCシステムはいずれも海外の輸入機器であり、SFCシステムのリレー保護機能は、通常、SFCレギュレータに集積され、SFCシステムにおける出力変圧器の高、低圧側電流の周波数は変化しているものであるため、通常の変圧器の差動保護アルゴリズムは、いずれも工業用周波数電流に基づくものであるので、出力変圧器に適用することが困難である。なお、海外のSFCシステムには、いずれも出力変圧器の差動保護機能は配置されず、高速の主保護方法としての電流速断保護は、感度が低く、被保護機器に不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、発電機保護のうち周波数の影響を受けないスタートアップ・シャットダウン保護アルゴリズムにより、出力変圧器の差動電流と制動電流振幅を計算し、比率制動差動保護を実現し、周波数の大範囲変化に適応し、出力変圧器の内部故障検出の感度を向上させるSFCシステムにおける出力変圧器の周波数変換差動保護方法を提供することを目的とする。
【0004】
本発明は、静的周波数変換装置システムにおける出力変圧器の周波数変換差動保護方法という技術的解決手段を用いて、SFCシステムの保護装置により、SFCシステム出力変圧器の各側の三相電流を測定し、出力変圧器の接続様態に基づき、出力変圧器の各側電流の位相補正とバランス係数の調整を行い、出力変圧器の各側の校正電流と差動電流サンプル値を形成し、発電機保護のうち周波数の影響を受けないスタートアップ・シャットダウン保護アルゴリズムにより、校正電流、差動電流及び制動電流の振幅を計算し、差動電流と制動電流の大きさに基づき、比率制動差動の特性により、出力変圧器の周波数変換比率の差動保護を実現する。
【0005】
出力変圧器は、二巻線変圧器又は三巻線変圧器を含み、出力変圧器の接続様態に基づき、三角形側を基準として、星形側を位相補正するとともに、変圧器の各側の二次定格電流の違いを考えて、各側のバランス係数の調整を行い、出力変圧器の各側の校正電流と差動電流のサンプル値を形成する。
【0006】
発電機保護のうち周波数の影響を受けないスタートアップ・シャットダウン保護アルゴリズムにより、校正電流、差動電流及び制動電流の振幅を計算し、周波数の大範囲の変化に適応し、スタートアップ・シャットダウン保護アルゴリズムは、ゼロクロス点積分アルゴリズムと電流ピーク判定法を含む。
【0007】
各側のバランス係数の計算方法は、通常の変圧器の差動保護によるものと同様に、高圧側バランス係数をそれぞれKHとし、低圧1側のバランス係数をKL1とし、低圧2側のバランス係数をKL2とし、iHa.j(k)、iHb.j(k)、iHc.j(k)を、それぞれ高圧側の三相校正電流サンプル値として取得し、iL1a.j(k)、iL1b.j(k)、iL1c.j(k)はそれぞれ低圧1側の電流サンプル値であり、iL2a.j(k)、iL2b.j(k)、iL2c.j(k)はそれぞれ低圧2側の三相校正電流サンプル値であり、
式(1)に示すように、高、低圧側の校正電流から三相差動電流を計算し、
【数1】
ida(k)、idb(k)、idc(k)はそれぞれ三相差流サンプル値である。
【0008】
発電機保護のうち周波数の影響を受けないスタートアップ・シャットダウン保護アルゴリズムにより、高圧側の校正電流サンプル値から、その振幅(IHa.j、IHb.j、IHc.j)を計算し、低圧1側の校正電流サンプル値から、その振幅(IL1a.j、IL1b.j、IL1c.j)を計算し、低圧2側の校正電流サンプル値から、その振幅(IL2a.j、IL2b.j、IL2c.j)を計算し、差動電流サンプル値からその振幅(Ida、Idb、Idc)を計算する。
【0009】
式(2)に示すように、高、低圧側の校正電流から、制動電流を計算し、
【数2】
Ira、Irb、Ircはそれぞれ三相制動電流であり、
差動電流と制動電流の大きさに基づき、比率制動差動の特性により、出力変圧器の周波数変換の比率差動保護を実現する。比率制動特性は、二重折れ線又は多重折れ線比率制動方式、二重勾配比率制動方式又は勾配変化比率制動方式から選択される。
二重折れ線比率制動特性の差動保護動作方程式は、
【数3】
であり、
Irは制動電流であり、Idは差動電流であり、Isは差動保護スタート電流であり、Itは変曲点電流であり、kは比率制動係数であり、
分相判定により、式(3)の動作方程式を満たすと、出力変圧器の差動保護が動作する。
【0010】
本発明の有益な効果は、SFCシステムにおける出力変圧器の周波数変換比率の差動保護を実現し、周波数の大範囲の変化に適応し、電流速断保護と比べて、出力変圧器の内部故障検出の感度を大幅に向上させることにある。機器の安全をより確実に保障する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明におけるSFCシステム及び出力変圧器の各側電流の測定模式図であり、TR1は入力変圧器であり、TR2は出力変圧器であり、Ldは直流リアクトルであり、NB1はネットワークブリッジ側整流ブリッジ1であり、NB2はネットワークブリッジ側整流ブリッジ2であり、MB1は機械ブリッジ側インバータブリッジ1であり、MB2は機械ブリッジ側インバータブリッジ2であり、VCB1は入力ブレーカであり、VCB2は出力ブレーカであり、S1は出力変圧器低圧側の隔離スイッチであり、S2はバイパス隔離スイッチであり、CT1及びCT2はそれぞれ出力変圧器の低圧1側と2側の電流トランスであり、CT3は出力変圧器の高圧側の電流トランスである。
図2】二重折れ線の比率制動特性グラフであり、Irは制動電流であり、Idは差動電流であり、Isは差動保護スタート電流であり、Itは変曲点電流であり、kは比率制動係数である。
図3】二重勾配の比率制動特性グラフであり、Irは制動電流であり、Idは差動電流であり、Isは差動保護スタート電流であり、k1とk2はそれぞれ比率制動係数1と比率制動係数2であり、It1とIt2は変曲点電流1と変曲点電流2であり、2つの変曲点電流の間は、フィッティング曲線である。
図4】勾配変化の比率制動特性グラフであり、Irは制動電流であり、Idは差動電流であり、Isは差動保護スタート電流であり、k1とk2はそれぞれ開始勾配と最大勾配であり、Itは変曲点電流であり、開始勾配と最大勾配の間は、勾配変化フィッティング曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の技術的解決手段を詳しく説明する。
【0013】
図1において、出力変圧器の高、低圧側CTから各側の三相電流を測定し、出力変圧器の各側の校正電流と差動電流サンプル値は、出力変圧器の接続様態に基づき、出力変圧器の各側電流の位相補正とバランス係数の調整を行って得られるものである。
【0014】
出力変圧器の接続様態に基づき、三角形側を基準として、星形側を位相補正するとともに、変圧器の各側の二次定格電流の違いを考えて、各側のバランス係数の調整を行い、各側の校正電流と差動電流サンプル値を形成する。Y,d,d−11接続様態を例として、各側電流は変圧器に流れる方向を正方向とし、出力変圧器の高圧側の三相電流サンプル値をiHa(k)、iHb(k)、iHc(k)とし、低圧1側の三相電流サンプル値をiL1a(k)、iL1b(k)、iL1c(k)とし、低圧2側の三相電流サンプル値をiL2a(k)、iL2b(k)、iL2c(k)とすると、下式のように高圧側の三相電流に対して位相補正を行い、
【数4】
I'Ha(k)、i'Hb(k)、i'Hc(k)は高圧側で位相補正を行った後の三相電流サンプル値である。
【0015】
各側のバランス係数の計算方法は通常の変圧器の差動保護によるものと同様に、高圧側バランス係数をそれぞれKHとし、低圧1側のバランス係数をKL1とし、低圧2側のバランス係数をKL2とすると、高、低圧側の校正電流サンプル値の計算式は以下の通りであり、
【0016】
【数5】
iHa.j(k)、iHb.j(k)、iHc.j(k)はそれぞれ高圧側の三相校正電流サンプル値であり、iL1a.j(k)、iL1b.j(k)、iL1c.j(k)はそれぞれ低圧1側の電流サンプル値であり、iL2a.j(k)、iL2b.j(k)、iL2c.j(k)はそれぞれ低圧2側の三相校正電流サンプル値である。
【0017】
式(3)に示すように、高、低圧側の校正電流から三相差動電流を計算し、
【数6】
ida(k)、idb(k)、idc(k)はそれぞれ三相差流サンプル値である。
【0018】
発電機保護のうち応用が成熟した周波数の影響を受けないスタートアップ・シャットダウン保護アルゴリズム(ゼロクロス点積分アルゴリズムと電流ピーク判定法、「陳徳樹.コンピュータリレー保護原理及び技術[M].北京:中国電力出版社、1992.」を参照する)を用いて、高圧側の校正電流サンプル値からその振幅(IHa.j、IHb.j、IHc.j)を計算し、低圧1側の校正電流サンプル値から、その振幅(IL1a.j、IL1b.j、IL1c.j)を計算し、低圧2側の校正電流サンプル値から、その振幅(IL2a.j、IL2b.j、IL2c.j)を計算し、差動電流サンプル値から、その振幅(Ida、Idb、Idc)を計算する。
【0019】
式(4)に示すように、高、低圧側の校正電流から制動電流を計算し、
【数7】
Ira、Irb、Ircはそれぞれ三相制動電流である。
【0020】
差動電流の制動電流の大きさに基づき、比率制動差動の特性により、出力変圧器の周波数変換の比率差動保護を実現する。比率制動特性は、図2図3及び図4に示すような二重折れ線又は多重折れ線比率制動方式、二重勾配比率制動方式又は勾配変化比率制動方式(「高春如.大型発電ユニットリレー保護チューニング計算及び運転技術(第2版)[M].北京:中国電力出版社、2010.」)から選択される。
【0021】
図2に示すような二重折れ線比率制動特性を例として、差動保護の動作方程式は以下の通りであり、
【数8】
Irは制動電流であり、Idは差動電流であり、Isは差動保護スタート電流であり、Itは変曲点電流であり、kは比率制動係数である。
【0022】
分相判定により、式(5)動作方程式を満たすと、出力変圧器の差動保護が動作する。
【0023】
以上の実施例は本発明の技術的思想を説明するものに過ぎず、これによって本発明の保護範囲を限定してはいけない。本発明による技術的思想にしたがって、技術的解決手段に基づいて行ういずれの変更も、本発明の保護範囲に属する。
図1
図2
図3
図4