【文献】
西村章,進化するトンネル換気技術,建設の施工企画,日本,日本建設機械化協会,2010年 9月,第727号,第47−53頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
トンネルの換気設備としては、伸縮管(ダクト)を通して切羽付近の粉塵、ガス等の有害物質を吸引する設備が存在する(例えば、特許文献1等参照)。この換気設備の一例を、
図9に示した。
【0003】
この換気設備100においては、トンネルTの壁面T1から複数の吊り具109が吊り下がっている。吊り具109は、図示例にようにトンネルTの壁面(例えば、セグメント)T1に直接取り付けられることも、ガイドレール等を介して間接的に取り付けられることもある。もっとも、いずれの場合においても、吊り具109は、トンネルTの壁面T1から容易に取り外すことができ、かつトンネルTの壁面T1に容易に取り付けることができるようになっている。
【0004】
また、吊り具109は、トンネルTの坑口T3側から切羽T2側へ、例えば、2.0〜2.5mの間隔をおいて並んでいる。さらに、吊り具109には、滑車109Aが備わる。この滑車109Aは、移動レール102を懸架し、かつスライド移動するために備わる部材である。移動レール102は、複数の滑車109Aに懸架されることで、トンネルTの壁面T1から吊り下げられた状態になっている。移動レール102自体は、伸縮管101を伸縮可能な状態で懸架している。
【0005】
伸縮管101は、駆動管103や補助管104を介して集塵機107と繋がっている。集塵機107は、移動架台108の上に設置されている。移動架台108は、自走することで、又は他の走行手段によって牽引されることで、切羽T2側(前方)へ、あるいは坑口T3側(後方)へ移動する。
【0006】
以上の換気設備100においては、移動レール102を単独で切羽T2側へスライド移動することができる。このスライド移動は、駆動管103の上端部に備わる回転体105を使用して行う。回転体105は、移動レール102の下面に当接し、かつこの当接状態で回転する。回転体105は、例えば、タイヤ等からなる。
【0007】
駆動管103には、接触部材106が取り付けられている。接触部材106は、駆動管103の後端部上面から後方(坑口T3側)へ延在するロッド106Aと、このロッド106Aの後端部から下方へ延在する縦材106Bとからなる。接触部材106の存在により、駆動管103と集塵機107との間隔は、所定長以下とならない。したがって、回転体105が回転すると、集塵機107に反力をとって、回転体105と移動レール102との間の摩擦抵抗により、移動レール102が単独で切羽T2側へスライド移動する。
【0008】
なお、接触部材106は、移動レール102を切羽T2側へ移動する際に集塵機107に押し当たる。したがって、接触部材106は、例えば、プッシュロッド等と呼ばれることもある。また、移動レール2の移動速度は、従来は5m/分程度であったが、近年では26m/分程度にまで速まっている。
【0009】
以上の換気設備100においては、移動レール102を切羽T2側へスライド移動することで、伸縮管101が切羽T2側へ容易に移動することができるようになる。結果、換気設備100の全体を、円滑、かつ迅速に切羽T2側へ移設(移動)することができる。換気設備100全体を切羽T2側へ移設する手順は、概ね次のとおりである。
【0010】
まず、切羽T2が、例えば、5〜50m程度前進したら、新たに形成されたトンネルTの壁面T1に吊り具109を取り付ける。次に、回転体105を回転させて移動レール102を切羽T2側へスライド移動する。このスライド移動は、移動レール102が新たに取り付けた吊り具109の滑車109A上を通る(スライドする)ように行う。
【0011】
一方、補助管104や制御ケーブル(図示せず)等は、集塵機107から切り離す(切断)。そして、この切断状態で、移動架台108を切羽T2側へ移動する。この移動によって集塵機107が支持部材106に突き当たり、駆動管103が切羽T2側へ移動する。また、駆動管103に接続されている伸縮管101及び補助管104も切羽T2側へ移動する。
【0012】
このようにして換気設備100を構成する全ての部材を切羽T2側へ移動する。そして最後に、補助管104や制御ケーブル等を集塵機107に再接続する。これにより、換気設備100全体の移設が完了する。
【0013】
なお、換気設備としては、駆動管103と移動レール102とが固定関係にある形態(連動形態)も考えることができる。この連動形態においては、移動レール102が単独でスライド移動せず、他の部材と共に移動する。つまり、この連動形態においては、移動レール102の移動が移動架台108の移動に連動する。
【0014】
しかしながら、この連動形態によると、移動レール102が吊り具109の滑車109Aの上を通らず(移動レール102の逸脱(逸走))、場合によっては落下する可能性がある。移動レール102の逸脱は、例えば、移動架台108の急発進、急停止、移動速度の変動や、トンネルTの起伏、移動架台108の振動等を原因とする移動架台108からの揺さぶりが移動レール102に伝わってしまうこと等を原因とする。
【0015】
そこで、本発明者等が知るところでは、前述した換気設備100を使用し、移動架台108の移動と移動レール102のスライド移動とを各別に行っている(非連動)。したがって、移動レール102が逸脱するようなことはほとんどない。
【0016】
しかしながら、ごく稀に移動レール102が逸脱することがある。例えば、トンネルTが下り勾配である場合は、移動レール102が逸脱し易い。トンネルTが下り勾配であると、回転体105を使用して移動レール102をスライド移動する際に当該移動レール102が暴走する(勢い余る)ことがあるためである。
【0017】
もちろん、移動レール102が落下する前に当該移動レール102を坑口T3側へ戻し、スライド移動を繰り返すことで最終的には移動レール102を切羽T2側へ進める(スライド移動する)ことができる。しかしながら、移動レール102のスライド移動を繰り返すのは煩瑣である。しかも、この作業は、移動レール102が落下しないように注意しながら行わなくてはならない。つまり、危険を伴う。
【0018】
また、換気設備100によると、移設するたびに補助管104や制御ケーブル等を集塵機107から切り離し、再接続する必要がある。したがって、この点でも、換気設備100の移設が煩瑣なものとなる。その分、移設時間も長くなる。また、制御ケーブルの切断及び再接続を行うため、移設後に電気系統に不具合が生じることもある。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、この形態は本発明の一例であり、本発明はこの形態に限定されない。
(第1の形態)
図1及び
図2に示すように、本形態の換気設備Z1には、伸縮管1、移動レール2、固定管3、先端管3A、補助管4、緩衝機構X1、集塵機7、移動架台8、及び吊り具9が主に備わる。
【0030】
吊り具9は、トンネルTの壁面T1から吊り下がっている。吊り具9は、図示例のようにトンネルTの壁面(例えば、セグメント)T1に直接取り付けられていても、図示はしないがガイドレール等を介して間接的に取り付けられていてもよい。
【0031】
ただし、いずれの場合においても、吊り具9は、トンネルTの壁面T1から容易に取り外すことができ、かつトンネルTの壁面T1に容易に取り付けることができるように設計されているのが好ましい。吊り具9がトンネルTの壁面T1に容易に取り付けることができるように設計されていると、換気設備Z1の移設に際して新たに形成されたトンネルTの壁面T1に吊り具9を取り付けるのが容易になる。結果、換気設備Z1の移設作業を迅速に行うことができるようになる。他方、吊り具9がトンネルTの壁面T1から容易に取り外すことができるように設計されていると、換気設備Z1の移設に際してトンネルTの壁面T1から吊り具9を取り外すのが容易になる。結果、この点でも換気設備Z1の移設作業を迅速に行うことができるようになる。
【0032】
吊り具9は、トンネルTの坑口T3側から切羽T2側へ(あるいは切羽T2側から坑口T3側へ)、例えば1.5〜2.5mの間隔(吊ピッチ)をおいて、好ましくは2mの間隔をおいて並んでいる。この間隔が長過ぎると、移動レール2のスライド移動に失敗する可能性が増す。他方、この間隔が短過ぎると、換気設備10の移設が煩瑣になる。なお、移動レール2は、例えば、80〜100mの長さを有する。
【0033】
図2及び
図3中に拡大して示すように、吊り具9には、1又は複数の、図示例では一対の滑車9Aが備わる。この滑車9Aは、移動レール2を懸架するため、かつ移動レール2のスライド移動を円滑化するために備わる。移動レール2は、複数の滑車9Aに懸架されることで、トンネルTの壁面T1から吊り下がった状態になっている。移動レール2は、滑車9Aの回転に応じてトンネルT内を前方(切羽T2側)及び後方(坑口T3側)へスライド移動する。
【0034】
滑車9Aによって移動レール2を懸架する方法、スライド移動を可能にする方法は、種々考えることができる。本形態では、まず、移動レール2として、上部フランジ2Aを有するI型鋼(ないしはH型鋼)を使用している。また、滑車9Aが、上部フランジ2Aの下面に当接し、かつこの当接状態で回転するように構成している。したがって、移動レール2は、上部フランジ2Aが滑車9Aに引っ掛かることで懸架されている。また、移動レール2は、滑車9Aが回転することで円滑にスライド移動する。
【0035】
既存の滑車9Aが備わる吊り具9としては、例えば、トロリー等を使用することができる。また、吊り具9をトンネルTの壁面T1から容易に取り外すことができ、トンネルTの壁面T1に容易に取り付けることができるようにするためには、例えば、レバーブロック(登録商標)を使用することができる。
【0036】
移動レール2は、伸縮管1並びに固定管3及び先端管3Aを懸架している。固定管3は、伸縮管1の後端部(坑口T3側端部)に接続されている。先端管3Aは、伸縮管1の先端部(切羽T2側端部)に接続されている。固定管3、伸縮管1、及び先端管3Aは、この順に並び、内空部を空気が通り抜ける連通状態にある。これらの管1,3,3Aは、断面が円形状、方形状等、好ましくは円形状である。また、これらの管1,3,3Aの径は、例えば、1.5mである。
【0037】
伸縮管1は、前後方向(坑口T3から切羽T2へ向かう方向、あるいは切羽T2から坑口T3へ向かう方向)へ伸縮する(伸縮ダクト)。伸縮管1は、通常、可撓性を有する。伸縮管1は、例えば、最大長80〜100m、最短長15〜25mの長さを有する。
【0038】
これに対し、固定管3及び先端管3Aは、前後方向へ伸縮しない。固定管3及び先端管3Aは、通常、硬質管からなる。固定管3及び先端管3Aは、例えば、1.5〜2.0mの長さをそれぞれ有する。
【0039】
固定管3は、伸縮管1の後端部ではなく、伸縮管1の後端部側に、つまり伸縮管1の途中に設けられていてもよい。また、伸縮管1の途中にその他の硬質管が設けられて(介在されて)いてもよい。
【0040】
固定管3及び先端管3Aは、移動レール2に直接懸架されている。特に、先端管3Aは、前後移動可能となるように懸架されている。他方、伸縮管1は、移動レール2に直接懸架されていない。伸縮管1は、移動レール2に対して固定管3及び先端管3Aを介して間接的に懸架されている。したがって、伸縮管1は、先端管3Aの前後移動に応じて前後方向へ伸縮する。
【0041】
先端管3Aの前後移動は、この先端管3Aの上端部に備わる回転体5を使用して行うことができる。回転体5は、移動レール2の下面に当接し、かつこの当接状態で回転する。この回転によって、回転体5の周面と移動レール2下面との間の摩擦抵抗により先端管3Aが前後移動する。
【0042】
固定管3は、補助管4を介して集塵機や排気ファン、本形態では集塵機7に接続されている。補助管4は、例えば、フレキシブルダクト等からなる。また、集塵機7は、移動架台8の荷台上に設置されている。移動架台8は、自走することで、又は他の走行手段によって牽引されることで、切羽T2側(前方)へ、あるいは坑口T3側(後方)へ移動する。
【0043】
図示例の移動架台8は、自走可能なトラックからなる。移動架台8としては、他の走行手段によって牽引されるいわゆるそり(
図6参照)等を使用することもできる。しかしながら、移動架台8がトラック等、すなわちトンネルTの床面(路盤)と部分的に接触(トラックの場合はタイヤが接触)する架台である場合は、トンネルTの床面と全面的に接触する架台(例えば、そり等。)である場合に比べて、トンネルTの床面から受ける上下方向への揺れが大きく急になる。したがって、移動架台8がトラック等である場合は、後述する第2の形態によるよりも、緩衝機構X1の緩衝性能がより大きい本形態(第1の形態)によるのが好ましい。
【0044】
固定管3は、従来の換気設備100における駆動管103と対応する関係にある部材(装置)である。しかしながら、固定管3は、駆動管103と異なり、移動レール2と固定関係にある。また、
図3に示すように、移動レール2は、移動架台8と緩衝機構X1を介した連結関係にある。したがって、移動架台8が前後移動すると、移動レール2も前後移動する。また、移動レール2が前後移動すると、この移動レール2と固定関係にある固定管3、この固定管3に接続されている伸縮管1も前後移動する。
【0045】
なお、移動レール2は、移動架台8に直接連結することもできる。ただし、本形態においては、集塵機7を介して間接的に連結している。
【0046】
緩衝機構X1は、少なくとも前後方向及びこれに直交する方向への緩衝機能を有する。この緩衝機能により、移動架台8の移動不連続性(揺さぶり)が移動レール2に伝わり難くなる。したがって、移動レール2の逸脱が生じ難くなる。
【0047】
この点、緩衝機構X1の採用を想到するに至ってから考えると、移動架台8から移動レール2に揺さぶりが伝わるのを防止するために緩衝機構を採用するというのは当たり前のように思える。しかしながら、従来の換気設備100によっても通常は問題なく換気設備の移設を行うことができていたため、緩衝機構を採用するという発想の契機がなった。本発明者らが当該発想を想到するに至ったのは、より確実な移設方法を探求し続けたことに、特にトンネルTが下り勾配である場合(下り勾配のトンネルは絶対数が少ない。)も含めてより確実な移設方法を探求し続けたことにある。
【0048】
緩衝機能の発現の方法は、種々考えられる。ただし、トンネルT内を移動する移動架台8の移動に伴う揺さぶりを緩和するという観点からは、以下の構成によるのが好ましい。以下、具体的に説明する。
【0049】
図3に示すように、本形態の緩衝機構X1には、伸縮ロッド10が備わる。この伸縮ロッド10は、性質の異なる2種類以上の伸縮部材を構成要素する。この伸縮部材として本形態においては、
図4に示すように、ガススプリング12と、発条体たる平角線ばね11とが備わる。伸縮部材として性質の異なる2種類以上のものが備わることで、移動架台8からの揺さぶりが移動レール2に伝わり難くなる。具体的には、以下の理由による。
【0050】
まず、移動架台8から移動レール2に伝わる揺さぶりの原因としては、移動架台8の発進や停止、速度変更、トンネルTの起伏、移動架台8自体の振動等、様々なものがある。そして、移動架台8の発進や停止に伴う揺さぶりは大きく急であり、トンネルTの起伏に伴う揺さぶりは大きいが穏やかである(もちろん、急な場合もあり得る)。また、移動架台8の振動等に伴う揺さぶりは、小さく弱い。しかるに、伸縮長や伸縮力等の性質(物性)が異なる2種類以上の伸縮部材が備わっていれば、全ての揺さぶりを適切に吸収することができる。例えば、伸縮長が大きな伸縮部材は、大きな揺さぶりを吸収するのに適する。伸縮長が小さな伸縮部材は、小さな揺さぶりを吸収するのに適する。また、伸縮力が強い伸縮部材は、急な強い揺さぶりを吸収するのに適する。伸縮力が弱い伸縮部材は、穏やかな弱い揺さぶりを吸収するのに適する。
【0051】
本形態においては、性質の異なる2種類以上の伸縮部材として、前述したようにガススプリング12及び平角線ばね11が備わる。以下、ガススプリング12及び平角線ばね11によって緩衝機能が発現するメカニズムを説明する。
【0052】
まず、伸縮ロッド10は、内ロッド10X、中ロッド10Y、及び外ロッド10Zからなるロッド本体を構成要素とする。外ロッド10Zは、中ロッド10Y側端部(本形態では、移動架台8側端部。)が開口しており、中空状である。当該開口を通して、中ロッド10Yの外ロッド10Z側端部(本形態では、移動レール2側端部。)は、外ロッド10Z内に差し込まれ、また、外ロッド10Z内から引き抜かれる。この抜き差しにより、中ロッド10Y及び外ロッド10Zで構成されるロッド本体の長さが伸縮する。
【0053】
同様に、中ロッド10Yは、内ロッド10X側端部(本形態では、移動架台8側端部。)が開口しており、中空状である。当該開口を通して、内ロッド10Xの中ロッド10Y側端部(本形態では、移動レール2側端部。)は、中ロッド10Y内に差し込まれ、また、中ロッド10Y内から引き抜かれる。この抜き差しにより、内ロッド10X及び中ロッド10Yで構成されるロッド本体の長さが伸縮する。
【0054】
ガススプリング12は、ガス圧等による緩衝機能を有する伸縮部材である。このガススプリング12は、ロッド本体の両側に位置する。ガススプリング12の一端部12aは、中ロッド10Yに取り付けられている。ガススプリング12の他端部12bは、外ロッド10Zに取り付けられている。したがって、外ロッド10Zに対する中ロッド10Yの抜き差しにより中ロッド10Y及び外ロッド10Zで構成されるロッド本体が伸縮するに際しては、ガススプリング12の緩衝機能が発現する。
【0055】
平角線ばね11は、中ロッド10Y内に収められている。また、平角線ばね11内には、移動架台8側(一端部11a側)から内ロッド10Xが差し込まれる。平角線ばね11の一端部11aは、中ロッド10Yの内ロッド10X側端部に固定されている。平角線ばね11の他端部11bは、内ロッド10Xの中ロッド10Y側端部に固定されている。したがって、中ロッド10Yに対する内ロッド10Xの抜き差しにより内ロッド10X及び中ロッド10Yで構成されるロッド本体が伸縮するに際しては、平角線ばね11の緩衝機能が発現する。
【0056】
以上の形態においては、中ロッド10Y及び外ロッド10Zで構成されるロッド本体が収縮したときにガススプリング12が収縮する(
図4の(2)の状態)。他方、中ロッド10Y及び外ロッド10Zで構成されるロッド本体が伸長したときにガススプリング12が伸長する(
図4の(1)の状態)。
【0057】
これに対し、内ロッド10X及び中ロッド10Yで構成されるロッド本体が収縮したときに平角線ばね11が伸長する(
図4の(1)の状態)。他方、内ロッド10X及び中ロッド10Yで構成されるロッド本体が伸長したときに平角線ばね11が収縮する。
【0058】
したがって、ロッド本体(伸縮ロッド10)に急な衝撃が加わり、中ロッド10Y及び外ロッド10Zで構成されるロッド本体が収縮する場合(
図4の(1)から(2)の状態に変化する場合)においては、まず、ガススプリング12によってロッド本体の急激な収縮が緩和される。また、この収縮に際しては、内ロッド10X及び中ロッド10Yで構成されるロッド本体が伸長する。この伸長によってもロッド本体の急激な収縮が緩和される。さらに、内ロッド10X及び中ロッド10Yで構成されるロッド本体の伸長は、平角線ばね11によって緩和される。したがって、この点でもロッド本体の急激な収縮が緩和される。なお、ロッド本体の急激な伸縮防止は、移動レール2の逸脱防止につながる。
【0059】
ロッド本体の伸縮長は、ガススプリング12の伸縮長及び平角線ばね11の伸縮長を調節することによって調節することができる。同様に、ロッド本体の伸縮力は、ガススプリング12の伸縮力及び平角線ばね11の伸縮力を調節することによって調節することができる。
【0060】
具体的には、ガススプリング12の伸縮長L1(
図4参照)は、300mm以下であるのが好ましく、300mmであるのがより好ましい。他方、平角線ばね11の伸縮長は、200〜400mmであるのが好ましく、400mmであるのがより好ましい。
【0061】
一方、ガススプリング12のスプリング推力は、縮み側が2200N以下、伸び側が1400N以下であるのが好ましく、縮み側が2178N、伸び側が1372Nであるのがより好ましい。他方、平角線ばね11のスプリング推力は、縮み側が2300N以下、伸び側が2300N以下であるのが好ましく、縮み側が2260N、伸び側が2260Nであるのがより好ましい。
【0062】
本発明者らは、ガススプリング(最大長850mm、最小長550mm、伸縮長300mm、スプリング推力(縮み側)2178N、スプリング推力(伸び側)1372N)、及び平角線ばね(最大長400mm、最小長200mm、伸縮長200mm、スプリング推力(縮み側)2260N、スプリング推力(伸び側)2260N)を使用して移動レールをスライド移動する試験を行った。この試験では、移動レールの逸脱が生じることがなく、円滑にスライド移動することができた。
【0063】
本形態においては、ガススプリング12及び平角線ばね11がそれぞれ1つずつ備わる(ガススプリング12は、一対で1つとする。)。ただし、性質の異なるガススプリング12が2つ以上備わる形態、性質の異なる発条体(11)が2つ以上備わる形態、これらの組合せによる形態、等を採用することもできる。伸縮部材として何を使用するか、いくつ備えるか等は、移動架台8の性質やトンネルTの起伏等に応じて適宜設計するとよい。
【0064】
本形態においては、ガススプリング12がロッド本体(伸縮ロッド10)の中央部に、平角線ばね11がロッド本体(伸縮ロッド10)の移動架台8側端部に、それぞれ備わる。ただし、例えば、平角線ばね11がロッド本体の移動レール2側端部に備わる形態や、両端部に備わる形態、ガススプリング12がロッド本体の一方又は両方の端部に備わる形態、等も採用することができる。このような伸縮部材の配置に関しても、移動架台8の性質やトンネルTの起伏等に応じて適宜設計するとよい。
【0065】
ただし、平角線ばね11は、本形態のように移動架台8側端部に配置するのが好ましい。この形態によると、移動架台8自体が発生する微振動が平角線ばね11によって吸収され、移動レール2に伝わるのをより確実に防止することができる。
【0066】
伸縮ロッド10は、一端部10aが移動架台8と連結関係(第1の連結関係)にある。この第1の連結関係は直接的なものであってもよい。ただし、本形態においては、
図3に示すように、伸縮ロッド10の一端部10a及び移動架台8が、集塵機7及びこの集塵機7後端部上面から上方へ延在する補助部材13を介した間接的な連結関係にある。
【0067】
また、伸縮ロッド10は、他端部10bが移動レール2と連結関係(第2の連結関係)にある。この第2の連結関係は直接的なものであってもよい。ただし、本形態においては、移動レール2の後端部下面に備わる補助部材14を介した間接的な連結関係にある。
【0068】
上記第1の連結関係及び第2の連結関係の両方は、
図5の(3)〜(6)に示すように、内部材C1、この内部材C1を挟み込む一対の外部材C2、及びこれら内部材C1及び外部材C2を貫く軸部材C3の組合せからなる。また、第1の連結関係においては、軸部材C3が縦(上下)方向に延在する。他方、第2の連結関係においては、軸部材C3が横(左右)方向に延在する。この形態においては、連結関係の一方、本形態では第1の連結関係においては、
図5の(3)に示すように、ロッド本体(伸縮ロッド10)が左右(横)方向へ回動する。また、連結関係の他方、本形態では第2の連結関係においては、
図5の(6)に示すように、ロッド本体(伸縮ロッド10)が上下(縦)方向
へ回動する。したがって、走行架台8(ないしは集塵機7)及び移動レール2が移動(移設)中に相対的に上下方向又は左右方向に位置ずれする場合においても、当該ずれを吸収することができる。もちろん、当所から存在する位置ずれにも対応することができる。
【0069】
以上の伸縮ロッド10(緩衝機構X1)によれば、移動レール2の逸脱を確実に防止することができる。したがって、移動レール2が落下するおそれはない。ただし、本形態においては、
図5の(1)及び(2)に示すように、逸送防止用ワイヤー15を備えることで当該落下の危険性をより確実に防止している。
【0070】
図5の(3)及び(4)に示すように、逸送防止用ワイヤー15の一端部(本形態では、移動架台8側端部。)は、補助部材13の後端面に取り付けられているシャックル等の掛け部材15Aに引っ掛けられている。
【0071】
この掛け部材15Aは、本形態のように、横(左右)方向に関しては伸縮ロッド10の一端部10a近傍に、縦(上下)方向に関しては伸縮ロッド10の一端部10aの上方に位置していると好適である。
【0072】
他方、逸送防止用ワイヤー15の他端部(本形態では、移動レール2側端部。)は、移動レール2の下面に取り付けられているシャックル等の掛け部材15Bに引っ掛けられている。
【0073】
なお、移動レール2の下面には、前後方向へ適宜の間隔をおいて複数の掛け部材15Bが取り付けられている。逸送防止用ワイヤー15の他端部は、状況に応じて掛け部材15Bのいずれかに引っ掛けることができる。本形態では、逸送防止用ワイヤー15の他端部を最も移動架台8側の掛け部材15Bに引っ掛けている。
【0074】
(第2の形態)
次に、
図6〜8を参照しつつ、第2の形態の換気設備Z2について説明する。なお、この換気設備Z2は、第1の形態の換気設備Z1と緩衝機構X2が異なることを主な特徴とする。したがって、以下では、この緩衝機構X2を中心に説明する。
【0075】
図6及び
図7に示すように、本形態の換気設備Z2においては、移動架台8が他の走行手段によって牽引される「そり」からなる。そして、このそり(移動架台8)と移動レール2とが緩衝機構X2を介して連結関係にある。
【0076】
図8に示すように、緩衝機構X2には、移動レール2と固定関係にある縦材21が備わる。縦材21は、移動レール2の下面から下方へ延在するように、移動レール2の下面に固定されている。縦材21は、補強材21Aによって補強されている。補強材21Aは、一端部が縦材21の下端部に固定されている。他方、補強材21Aの他端部は、移動レール2の下面に固定されている。この補強材21Aの固定位置は、縦材21の固定位置よりも前側(切羽T2側)である。
【0077】
緩衝機構X2には、更に移動架台8と固定関係にある横材22が備わる。この固定関係は直接的なものであってもよい。ただし、本形態においては、緩衝機構X2及び移動架台8が、集塵機7を介した間接的な固定関係にある。
【0078】
横材22は、
図7に示すように、一対の補助材23間に架け渡されている。この一対の補助材23は、移動架台8から、本形態では
図8に示すように、集塵機7の吸引口7Aから上方へ延在している。補助材23は、必要により、図示例のように他の部材23Aとの組合せで上方へ延在するようにすることができる。
【0079】
縦材21及び横材22は、両者が交差する部分に紐材20が掛け回されることで組み上げられている。したがって、移動レール2や移動架台8等の移動に際して、両者21,22は乖離しない。ただし、両者21,22の組上げは、縦材21に対して横材22が縦(上下)方向へ移動可能となるように、かつ横材22に対して縦材21が横(左右)方向へ移動可能となるように行われている。つまり、両者21,22の紐材20による組上げは、若干緩めに行われている。このような組上げにより、緩衝機構X2の緩衝機能が発現する。この緩衝機構X2は、部材の単なる組上げで成り立つため、経済的であり、また、故障等の可能性がほぼ皆無である。
【0080】
ただし、第2の形態の緩衝機構X2は、第1の形態の緩衝機構X1よりも緩衝機能が弱いものとなる。したがって、移動架台8から移動レール2への揺さぶりが大きい場合、例えば、移動架台8がトラック等である場合には、第1の形態の緩衝機構X1を採用するのが好ましい。他方、移動架台8から移動レール2への揺さぶりが小さい場合、例えば、移動架台8がそり等である場合には、第2の形態の緩衝機構X2を採用するのが好ましい。このような観点か
ら、移動架台8がそりである本形態(第2の形態)においては、第2の緩衝機構X2を採用している。
【解決手段】換気設備Z1には、トンネルT内を前後移動する移動レール2が備わる。この移動レール2に伸縮管1が懸架され、この伸縮管1の後端部側に固定管3が備わる。移動レール2は、固定管3と固定関係にあり、トンネルT内を前後移動する移動架台8と緩衝機構X1を介して連結関係にある。緩衝機構X1は、前後方向及びこれに直交する方向へ緩衝機能を有し、移動架台8が前後移動すると、移動レール2も前後移動し、更に固定管3及び伸縮管1も前後移動する。