【実施例】
【0024】
図1は、本願発明の実施の形態に係る食品保管倉庫の一例を示す図である。
【0025】
図1を参照して、食品保管倉庫1は、保管室3(本願請求項の「保管室」の一例)と、作業用スペース5
1及び5
2と、天井裏スペース7(本願請求項の「非空調空間」の一例)を備える。
【0026】
保管室3は、送入装置11(本願請求項の「送入装置」の一例)と、送入口13(本願請求項の「送入口」の一例)と、排出口15(本願請求項の「排出口」の一例)と、排出装置17(本願請求項の「排出装置」の一例)と、加湿装置19(本願請求項の「湿度調整装置」の一例)と、空調装置21
1及び21
2(本願請求項の「空調装置」の一例)と、保管室出入口23と、倉庫出入口25を備える。
【0027】
保管室3は、断熱されて、室内に食品31を保管する。ここで、保管する食品31は、生鮮食品であり、例えば安納芋のように、温度に応じて異なる量のエチレンガスを発生するものである。すなわち、温度が高いと成熟するスピードが速く、多くのエチレンガスが発生する。他方、温度が低いと成熟するスピードが抑えられ、エチレンガスの発生量が抑制される。そのため、一見すると、エチレンガスの発生を抑制するためだけであれば、温度を低くすればよいように思われる。しかしながら、温度が低くなりすぎると、味が落ちたりするなどして、食品31の品質が低下してしまう。そのため、食品31の種類に応じて、適切な保管温度帯がある。
【0028】
生鮮食品は、例えば同じ入力に対して同じ出力を返すような、固定した状態にあるものではない。生鮮食品は、一つ一つ異なり、個性がある。また、収穫時期によっても、その性質は大きく変化する。例えば、早く収穫したものは、まだ成熟しておらず、熟するまでの期間を調整しることにより長期保存に適している場合が多い。他方、収穫時期が遅いものは、十分に成熟してしまっており、早期に出荷した方が適している場合が多い。このように、生鮮食品は、集団としての類似性はあっても、一つ一つに個性があり、かつ、その状態は絶えず変化するため、「生き物」を育てるように、大切に取り扱って保管する必要がある。そのため、保管の環境には、ある程度の幅が必要である。
【0029】
本願発明では、空調装置21は、保管室3の室内温度が設定温度になるように調整するものである。なお、設定温度は、途中で例えば0.1℃上昇させたり下降させたりして変更したり、空調装置21
1と21
2で違う温度にしたりしてもよい。また、保管温度帯は、食品31に応じて決定される。空調装置21の設定温度は、保管温度帯に含まれる。例えば、安納芋であれば、空調装置21の設定温度は13.5℃以上15℃以下のいずれかの温度で設定され、保管温度帯は、例えば、設定温度の上下1℃としてもよい。食品31の温度と保管室3の室内温度は、十分に冷えた状態ではほとんど近づくため、空調装置21の設定温度は、保管温度帯に含まれるものとする。
【0030】
食品31は、トラック33などの輸送手段により生産地から食品保管倉庫1に運ばれ、倉庫出入口25から倉庫内に入れられ、保管室出入口23により保管室3に入れられる。このとき、食品31の温度は高い。
【0031】
また、食品31は、保管後に、保管室出入口23により保管室3から作業用スペース5
1に移動され、作業用スペース5
1において加工等の作業が行われ、倉庫出入口25からトラック33等の運送手段によりスーパー等に運送される。作業用スペース5
1及び5
2は、食品等が移動する食品移動空間であり、空調装置によって、食品を移動させたり加工したりするときに、食品を傷めないように、外気よりも保管室3の室温に近い温度にしている。倉庫出入口25では、例えばトラック33との隙間を閉じるなどの工夫により、倉庫出入口25における作業時にできるだけ食品保管倉庫1の外の空気(外気)が倉庫内に入らないようにしている。
【0032】
作業用スペース5
1及び5
2と天井裏スペース7は、食品保管倉庫1の外側との間で断熱されている。
図1では、天井裏スペース7は、少なくとも側部と上部は断熱され、作業用スペース5
1及び5
2と熱の交換ができるようにしている。また、作業用スペース5は、食品保管倉庫1の外側との間で断熱されている。そのため、天井裏スペース7は、食品保管倉庫1の外側とは断熱されている。そして、例えば、作業用スペース5
1及び5
2と天井裏スペース7は、両者の間で空気が移動可能であり、室温がほぼ同じである。そのため、天井裏スペース7の室温は、倉庫の外気温よりも保管室3の室温に近い。
【0033】
送入装置11は、天井裏スぺース7の空気を保管室3に送入する。そのため、外気を直接送入するよりも温度差が少なくなり、空調の効率を低下させない。他方、排出装置17は、保管室3の空気を食品保管倉庫1の外に排出する。そのため、保管室3の空気は、食品保管倉庫1の中にとどまらず、食品保管倉庫1の外に排出される。
【0034】
食品31は、保管室3の床から一定の高さまでに保管される。送入口13及び排出口15は、保管室において対向する位置にある。例えば、挿入口13が東の壁に設けられ、排出口15が西の壁に設けられる。送入口13の高さと排出口15の高さは、送入口13から送入された空気の多くが排出口15から排出されやすい関係にあればよい。例えば、送入口13の高さは、排出口15の高さと同じでもよく、送入口13の高さが、排出口15の高さよりも少し低くてもよい。送入口13及び排出口15の高さは、例えば保管室3の床から天井までの高さの半分よりも上に位置し、食品31の高さよりも高い。そのため、送入口13から送入された空気は、食品31に当たることなく、排出口15に至ることができる。加湿装置19は、例えば食品31の高さよりも高い位置にあり、保管室3の室内の湿度が設定された設定湿度になるように保管室3の室内の湿度を調整する。
【0035】
空調装置21は、保管室3の室内温度を測定し、室内温度と設定温度との差に応じて保管室3の室内の空気の空調を調整する。例えば、室内温度が空調温度の設定値よりも高いときには、室内空気を冷却する。室内温度が空調温度に近付くと、近づいた状態を維持する。例えば、室内温度が空調温度よりも低くなると、食品31が熱を発生していることを考慮して、冷却を止めて室内温度が高くなるのを待ったり、室内温度の低下が急であれば暖かくしたりして、室内温度が設定温度に近い状態にあるようにする。空調装置21は、例えば送入口13と排出口15が東西の壁にあれば、南北の壁に設けてよい。
【0036】
図2は、保管室3におけるエチレンガスの除去の概要を示す図である。
【0037】
(a)は、食品31が搬入されたときである。このとき、食品31は、温度が高く、エチレンガスを多く生じる。エチレンガスは、空気よりも密度が軽いため、エチレンガス41は保管室3の上部にある。
【0038】
(b)は、食品31の温度が保管温度帯よりも高いときである。送入口13及び排出口15が食品31よりも高い位置にあるため、エチレンガス41は、その多くが送入口13と排出口15の間にあり、送入装置11が挿入口13から空気を送入すると、エチレンガス41を含む空気が排出口15に至り、排出装置17は、排出口15からエチレンガス41を含む空気を排出する。送入装置11及び排出装置17は、連続換気を行う。これにより、エチレンガス41の除去を除去する。エチレンガス41が除去されるため、食品31に至らず、食品31は傷まない。さらに、エチレンガス41が除去されるために空調装置21により室内温度を効率よく冷やすことができる。なお、エチレンガスは極めて薄いため、その濃度を直接計測することは難しい。そのため、例えば酸素濃度を測定することによりエチレンガスの濃度を推定して、空調装置21の設定温度などに反映してもよい。
【0039】
(c)は、食品31の温度が保管温度帯になったときである。このとき、食品31は十分に冷却され、エチレンガスの発生が抑制されている。エチレンガス43の発生量は少ない。そのため、送入装置11による送入口13からの送入量を減らし、排出装置17による排出口15からの排出量を減らす。ただし、エチレンガス43は、このような状態であっても発生していることから、まったく送入も排出もしないならば、食品31が傷む可能性が高い。他方、単純に送入量や排出量を減らして連続換気をしたのであれば、送入口13から送入された空気が排出口15に至らず、十分にエチレンガス43を除去できない可能性がある。そこで、間欠的に換気することにより(すなわち、換気する時間帯と換気しない時間帯を設けることにより)、エチレンガス43を除去しつつ、送入量や排出量を減少する。(d)は、換気する時間帯での空気の移動の概要を示す。
【0040】
図3は、
図1の食品保管倉庫1における保管処理の一例を示すフロー図である。(a)は、空調装置21の動作の一例を示し、(b)は、加湿装置19並びに送入装置11及び排出装置17の動作の一例を示す。
【0041】
図3(a)を参照して、食品31が搬入されると、空調装置21の設定温度を設定する(ステップSTA1)。空調装置21は、室内温度を測定し、室内温度が設定温度に近付くように制御する(ステップSTA2)。ステップSTA2を繰り返す。
【0042】
図3(b)を参照して、食品31が搬入されると、送入装置11及び排出装置17は、連続換気を行う(ステップSTB1)。食品31の温度は、品温計を用いて測定される。例えば、品温計の検出部を食品31に刺したり食品の間に挿入したりして計測する。食品の間に測定された食品31の温度が保管温度帯にあるか否かを判断する(ステップSTB2)。保管温度帯にないならば、ステップSTB1の連続換気を継続する。食品31の温度が保管温度帯になったならば、加湿装置19は、室内の湿度を調整する(ステップSTB3)。送入装置11及び排出装置17は、換気を停止する(ステップSTB4)。送入装置11及び排出装置17は、停止時間が経過したか否かを判断する(ステップSTB5)。停止時間が経過していないならば、停止時間が経過するまで換気を停止する。停止時間が経過したならば、ステップSTB2のときと同じ挿入量及び排出量で換気を再開する(ステップSTB6)。送入装置11及び排出装置17は、換気時間が経過したか否かを判断する(ステップSTB7)。換気時間が経過していないならば、換気時間が経過するまで換気を継続する。換気時間が経過したならば、ステップSTB4に戻り、換気を停止する。
【0043】
なお、間欠換気を行うための停止時間及び換気時間は、予め決められた値でもよく、食品31に応じて決められた値でもよい。また、食品31の搬入は、例えば数トンや数十トンなどで行われる。そのため、一定量の食品31が搬入されるまでは食品31の温度が保管温度帯にあっても連続換気を行い、一定量の食品31が搬入された後に、食品31の温度が保管温度帯になれば間欠換気を行うようにしてもよい。また、判断等の処理は、図示を省略する制御部などにより行ってもよい。
【0044】
間欠的に換気を行うため、少なくとも換気を行う時間帯がある。そのため、加湿装置19により加えられた湿度は、保管室3内で拡散し、食品31がみずみずしい状態であることを維持することができる。なお、加湿装置19による湿度調整は、保管の最初から継続して行ってもよく、間欠的に行ってもよい。
【0045】
図4は、
図1の食品保管倉庫1において、安納芋を、平成24年9月27日から約1年間保管し、平成25年8月19日に確認したときの実例を示す。通常、安納芋は、60%程度しか品質を維持できず、40%程度を廃棄していた。他方、本願発明によれば、95%を超える安納芋で、品質を維持することができた。