特許第6152216号(P6152216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6152216
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】食品保管方法及び食品保管倉庫
(51)【国際特許分類】
   A01F 25/00 20060101AFI20170612BHJP
   F25D 13/00 20060101ALI20170612BHJP
   F25D 23/00 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   A01F25/00 C
   F25D13/00 101D
   F25D23/00 302Z
   F25D13/00 101Z
   F25D23/00 302D
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-253300(P2016-253300)
(22)【出願日】2016年12月27日
【審査請求日】2016年12月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517000911
【氏名又は名称】株式会社園田総合ホールディングス
(73)【特許権者】
【識別番号】517000922
【氏名又は名称】株式会社福岡ソノリク
(74)【代理人】
【識別番号】100116573
【弁理士】
【氏名又は名称】羽立 幸司
(74)【代理人】
【識別番号】100136180
【弁理士】
【氏名又は名称】羽立 章二
(72)【発明者】
【氏名】園田 壽俊
【審査官】 小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−234293(JP,A)
【文献】 特開2003−279249(JP,A)
【文献】 特開2003−053202(JP,A)
【文献】 特開平11−215916(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3053408(JP,U)
【文献】 特開平05−079763(JP,A)
【文献】 特開2015−024876(JP,A)
【文献】 特開2006−014601(JP,A)
【文献】 実開昭54−088369(JP,U)
【文献】 特開平06−169691(JP,A)
【文献】 特開2008−161152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01F25/00−25/22
F25D13/00
F25D23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を保管する食品保管倉庫における食品保管方法であって、
前記食品は、エチレンガスを発生させるものであって、温度が保管温度帯にあるときのエチレンガスの発生量は、温度が保管温度帯よりも高いときのエチレンガスの発生量に比較して少なく、
前記食品保管倉庫は、
前記食品を保管する保管室と、
倉庫内空間を備え、
前記倉庫内空間の室温は、空調装置が、当該食品保管倉庫の外気温よりも前記保管室の室温に近くし、
前記保管室は、
当該保管室の室内温度を調整する保管室内空調装置と、
前記倉庫内空間の空気を送入口から当該保管室の内部に送入する送入装置と、
当該保管室の内部の空気を排出口より当該食品保管倉庫の外に排出する排出装置を備え、
前記送入装置の前記送入口及び前記排出装置の前記排出口は、前記保管室において対向する位置にあり、
前記送入装置は、前記送入口から前記排出装置の前記排出口に向けて前記倉庫内空間の空気を送入し、
前記送入装置の前記送入口及び前記排出装置の前記排出口は、前記保管室の床から天井までの高さの半分よりも上に位置し、
前記保管室において、前記食品は、床から、前記送入口及び前記排出口よりも低い高さまでで保管され、
前記保管室において、前記食品を保管する保管ステップを含み、
前記保管ステップにおいて、
前記保管室が備える前記保管室内空調装置が、
前記食品の温度が保管温度帯にないときに、室内温度を変更して前記食品の温度が保管温度帯になるようにし、
前記食品の温度が保管温度帯にあるときに、室内温度を調整して前記食品の温度を保管温度帯に維持し、
前記送入装置及び前記排出装置が、
前記食品の温度が保管温度帯にないときに、室内空気の送入及び排出を行い、
前記食品の温度が保管温度帯にあるときに、前記食品の温度が保管温度帯にないときに比較して室内空気の送入量及び排出量を少なくする、食品保管方法。
【請求項2】
前記倉庫内空間は、前記保管室に前記食品を搬入し、前記保管室から前記食品を搬出するための食品移動空間と、非空調空間を含み、
前記空調装置は、前記食品移動空間の室温を、当該食品保管倉庫の外気温よりも前記保管室の室温に近くし、
前記非空調空間と前記食品移動空間とは、空気が移動可能であることにより、前記非空調空間の室温は、当該食品保管倉庫の外気温よりも前記保管室の室温に近く、
前記保管ステップにおいて、前記送入装置は、前記非空調空間の空気を前記保管室の内部に送入する、請求項1記載の食品保管方法。
【請求項3】
前記送入口及び前記排出口は、前記保管室において対向する壁に設けられ、
前記保管室内空調装置は、前記送入口及び前記排出口が設けられた壁とは異なる壁に設けられ、
前記保管ステップにおいて、前記保管室内空調装置並びに前記送入装置及び排出装置が、
前記食品の温度が保管温度帯よりも高いときに、前記保管室内空調装置が室内温度を低下させるとともに、前記送入装置及び前記排出装置が室内空気の送入量及び排出量を多くすることにより、前記食品の上方でエチレンガスを除去してエチレンガスが食品に到達しないようにするとともに、エチレンガスを除去して前記保管室内空調装置による空調の効率を向上させ、
前記食品の温度が保管温度帯にあるときに、前記保管室内空調装置が前記食品の温度が保管温度帯にあるように室内温度を調整するとともに、前記送入装置及び前記排出装置が室内空気の送入量及び排出量を少なくする、請求項1又は2に記載の食品保管方法。
【請求項4】
前記保管室は、前記食品の上から当該保管室の室内空気の湿度を調整する湿度調整装置を備え、
前記保管ステップにおいて、前記送入装置及び/又は前記排出装置が、
前記食品の温度が保管温度帯にないときに、連続して空気の送入及び/又は排出を行い、
前記食品の温度が保管温度帯にあるときに、間欠して空気の送入及び/又は排出を行う、請求項1から3のいずれかに記載の食品保管方法。
【請求項5】
前記食品は、安納芋であり、
前記保管室内空調装置は、室内温度を、13.5℃以上15℃以下の設定温度に調整し、
前記保管温度帯は、前記保管室内空調装置の設定温度を含む温度帯である、請求項1から4のいずれかに記載の食品保管方法。
【請求項6】
食品を保管する食品保管倉庫であって、
前記食品は、エチレンガスを発生させるものであって、温度が保管温度帯にあるときのエチレンガスの発生量は、温度が保管温度帯よりも高いときのエチレンガスの発生量に比較して少なく、
前記食品を保管する保管室と、倉庫内空間を備え、
前記倉庫内空間の室温は、空調装置によって、当該食品保管倉庫の外気温よりも前記保管室の室温に近く調整され、
前記保管室は、
当該保管室の室内温度を調整する保管室内空調装置と、
前記倉庫内空間の空気を送入口から当該保管室の内部に送入する送入装置と、
当該保管室の内部の空気を排出口より当該食品保管倉庫の外に排出する排出装置を備え、
前記送入装置の前記送入口及び前記排出装置の前記排出口は、前記保管室において対向する位置にあり、
前記送入装置は、前記送入口から前記排出装置の前記排出口に向けて前記倉庫内空間の空気を送入し、
前記送入装置の前記送入口及び前記排出装置の前記排出口は、前記保管室の床から天井までの高さの半分よりも上に位置し、
前記保管室において、前記食品は、床から、前記送入口及び前記排出口よりも低い高さまでで保管され、
前記保管室内空調装置は、
前記食品の温度が保管温度帯にないときに、室内温度を変更して前記食品の温度が保管温度帯になるようにし、
前記食品の温度が保管温度帯にあるときに、室内温度を調整して前記食品の温度を保管温度帯に維持し、
前記送入装置及び前記排出装置は、
前記食品の温度が保管温度帯にないときに、空気の送入及び排出を行い、
前記食品の温度が保管温度帯にあるときに、前記食品の温度が保管温度帯にないときに比較して室内空気の送入量及び排出量を少なくする、食品保管倉庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、食品保管方法及び食品保管倉庫に関し、特に、食品を保管する食品保管倉庫における食品保管方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、生鮮物の流通用貯蔵庫装置であって、ハウジングに貯蔵雰囲気吸込み口及び吹出し口を設け、貯蔵室内の雰囲気は、下部に設けられた貯蔵雰囲気吸込み口から吸い込まれ、エチレンガス分解部材等を通って上方へ流れ、上部に設けられた吹出し口から貯蔵室内に噴出されるものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−196545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の背景技術では、吸込み口は下に設けられている。これは、生鮮物からエチレンガスなどが発生する地点で、エチレンガスなどを吸い込もうとするものと考えられる。しかしながら、エチレンガスは、空気よりも軽い。そのため、発生したエチレンガスは、天井付近に溜まり、生鮮物に上方から徐々に近づく。その結果、生鮮物は、上方からエチレンガスの影響を受けるようになる。このように、特許文献1記載の背景技術は、単なるアイディアであって、この流通用貯蔵庫装置によって生鮮物を長期保存できるか否かは不明である。
【0005】
さらに、特許文献1記載の流通用貯蔵庫装置は、単に、貯蔵室の内部の空気を吸い込み、それをそのまま吹き出すだけのものである。貯蔵室内の空気を循環させるため、吸い込んでから吹き出すまでの間に、エチレンガス分解部材等によりエチレンガスを分解すること等の複雑な処理を行う必要がある。
【0006】
また、CA貯蔵は、果実等の貯蔵法として知られているが、密閉空間の中で保管するため、エチレンガスなどの影響を除去することが困難であった。
【0007】
このように、従来の貯蔵庫は、事実上、貯蔵室内の空気は限定されている。しかしながら、大規模な保管倉庫の場合には、貯蔵室内の空気を密閉したり単純に循環させたりしただけでは、エチレンガスなどの影響を充分に除去できず、生鮮食品を長期間保管することが困難であった。例えば、安納芋であれば、1年保管すると6割程度しか残らず、4割程度を廃棄してしまっていた。
【0008】
そこで、本願発明は、倉庫などにおいて食品を大規模に長期間保管することに適した食品保管方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明の第1の観点は、食品を保管する食品保管倉庫における食品保管方法であって、前記食品保管倉庫は、前記食品を保管する保管室を備え、前記保管室は、当該保管室の室内温度を調整する空調装置と、当該保管室の外部の空気を送入口から当該保管室の内部に送入する送入装置と、当該保管室の内部の空気を排出口より当該保管室の外部に排出する排出装置を備え、前記送入装置の前記送入口及び前記排出装置の前記排出口は、前記保管室において対向する位置にあり、前記保管室において、前記食品を保管する保管ステップを含み、前記保管ステップにおいて、前記空調装置が、前記食品の温度が保管温度帯にないときに、室内温度を変更して前記食品の温度が保管温度帯になるようにし、前記食品の温度が保管温度帯にあるときに、室内温度を調整して前記食品の温度を保管温度帯に維持し、前記送入装置及び前記排出装置が、前記食品の温度が保管温度帯にないときに、室内空気の送入及び排出を行い、前記食品の温度が保管温度帯にあるときに、前記食品の温度が保管温度帯にないときに比較して室内空気の送入量及び排出量を少なくする。
【0010】
本願発明の第2の観点は、第1の観点の食品保管方法であって、前記食品は、エチレンガスを発生させるものであって、温度が保管温度帯にあるときのエチレンガスの発生量は、温度が保管温度帯よりも高いときのエチレンガスの発生量に比較して少なく、前記送入装置の前記送入口及び前記排出装置の前記排出口は、前記保管室の床から天井までの高さの半分よりも上に位置し、前記保管室において、前記食品は、床から、前記送入口及び前記排出口よりも低い高さまでで保管され、前記保管ステップにおいて、前記空調装置並びに前記送入装置及び排出装置が、前記食品の温度が保管温度帯よりも高いときに、前記空調装置が室内温度を低下させるとともに、前記送入装置及び前記排出装置が室内空気の送入量及び排出量を多くすることにより、前記食品の上方でエチレンガスを除去してエチレンガスが食品に到達しないようにするとともに、エチレンガスを除去して前記空調装置による空調の効率を向上させ、前記食品の温度が保管温度帯にあるときに、前記空調装置が前記食品の温度が保管温度帯にあるように室内温度を調整するとともに、前記送入装置及び前記排出装置が室内空気の送入量及び排出量を少なくする。
【0011】
本願発明の第3の観点は、第1又は第2の観点の食品保管方法であって、前記保管室は、前記食品の上から当該保管室の室内空気の湿度を調整する湿度調整装置を備え、前記保管ステップにおいて、前記送入装置及び/又は前記排出装置が、前記食品の温度が保管温度帯にないときに、連続して空気の送入及び/又は排出を行い、前記食品の温度が保管温度帯にあるときに、間欠して空気の送入及び/又は排出を行う。
【0012】
本願発明の第4の観点は、第1から第3のいずれかの観点の食品保管方法であって、前記食品保管倉庫は、空調装置がない非空調空間を備え、前記非空調空間の室温は、当該食品保管倉庫の外気温よりも前記保管室の室温に近く、前記保管ステップにおいて、前記送入装置は、前記非空調空間の空気を前記保管室の内部に送入し、前記排出装置は、前記保管室の内部の空気を当該食品保管倉庫の外に排出する。
【0013】
本願発明の第5の観点は、第1から第4のいずれかの観点の食品保管方法であって、前記食品は、安納芋であり、前記空調装置は、室内温度を、13.5℃以上15℃以下の設定温度に調整し、前記保管温度帯は、前記空調装置の設定温度を含む温度帯である。
【0014】
本願発明の第6の観点は、食品を保管する食品保管倉庫であって、前記食品を保管する保管室を備え、前記保管室は、当該保管室の室内温度を調整する空調装置と、当該保管室の外部の空気を送入口から当該保管室の内部に送入する送入装置と、当該保管室の内部の空気を排出口より当該保管室の外部に排出する排出装置を備え、前記送入装置の前記送入口及び前記排出装置の前記排出口は、前記保管室において対向する位置にあり、前記空調装置は、前記食品の温度が保管温度帯にないときに、室内温度を変更して前記食品の温度が保管温度帯になるようにし、前記食品の温度が保管温度帯にあるときに、室内温度を調整して前記食品の温度を保管温度帯に維持し、前記送入装置及び前記排出装置は、前記食品の温度が保管温度帯にないときに、室内空気の送入及び排出を行い、前記食品の温度が保管温度帯にあるときに、前記食品の温度が保管温度帯にないときに比較して室内空気の送入量及び排出量を少なくする。
【発明の効果】
【0015】
本願発明の各観点によれば、保管室内の空気を循環させるのではなく、保管室外の空気を保管室に送入して、保管室内の空気を室外に排出する。そのため、排出した空気を送入しないため、エチレンガスなどの除去装置などは不要である。さらに、送入口と排出口は保管室内において対向する位置にあるため、送入口と排出口との間にある空気を効率よく排出する。他方、食品の温度が保管温度帯になると、空気の送入及び排出の量を減らす。このようにシンプルな構造であるため、倉庫において、生鮮食品などの食品を大規模に保管する場合でも容易に実現することができ、食品の長期保存を実現することができる。
【0016】
さらに、本願発明の第2の観点によれば、食品が、その温度に応じて異なる量のエチレンガスを発生させる場合に、保管する食品よりも上に送入口及び排出口を設けて、空気よりも軽いエチレンガスを効率よく除去する。さらに、食品の温度が高いとエチレンガスの発生量が多いために除去する量を増加させ、食品の温度が保管温度帯になるとエチレンガスの発生量が少なくなるために除去は必要最小限にする。
【0017】
ここで、従来の常識からすれば、食品を冷やせばエチレンガスの発生量が少なくなるのであるから、保管室内の空気を急速に冷やすことによって、食品を冷やすことを目指していた。同じエネルギーであれば、冷やす空気の量が多いほど、冷える効率は低下する。空気を急速に冷やすためには、冷やす空気の量をなるべく少なくするのが合理的である。一般的な冷蔵庫では、広い温度幅に対応する必要があり、空調の対象となる空気の量は少なくする。そのため、従来の常識では、送入口と排出口を設けて保管室外の空気を利用することは、空調する空気の量を増加させて空調の効率を低下させ、結果として食品を冷やすことができないためにエチレンガスの発生が増加してしまうとして、不合理なものと考えられていた。
【0018】
しかしながら、発明者は、エチレンガスを発生させる食品を保管するときには、エチレンガスの量によって、空調の効率が左右されることに気づいた。エチレンガスを除去するほど、空調の効率が高まる。本願発明は、この気づきを発展させたものである。すなわち、食品の温度が高いときには、エチレンガスの発生量が多いために、エチレンガスを除去させることを重視すべきであり、これが空調の効率を上げることになる。ここで、エチレンガスの除去は、発生したエチレンガスが溜まることを防止することを重視すべきである。そのために、空気より比重の軽いエチレンガスを、食品の上で除去する。さらに、エチレンガスが溜まる部分には食品がないために、単に排出するだけでなく、保管室外の空気の送入も組み入れ、さらに送入口と排出口を対向して設けることにより、エチレンガスの除去の効率を高めることができる。
【0019】
本願発明は、エチレンガスが空気よりも比重が軽いことを利用して、食品の上に送入口と排出口を対向して設けるというシンプルな構成を採用することにより、エチレンガスが溜まることを防止しつつ、空調の効率を向上させることができる。その結果、食品の温度は、密閉空間よりも早く冷えることになる。さらに、エチレンガスが溜まることなく除去されるために、食品は傷まない。本願発明は食品の温度によるシンプルな制御であり、大規模な倉庫での長期保管を実現することができる。
【0020】
さらに、本願発明の第3の観点によれば、保管温度帯において、間欠して送入及び/又は排出する(すなわち、ある時間帯では送入及び/又は排出し、続く時間帯では送入及び/又は排出しないことを繰り返す)。そのため、送入及び/又は排出するときには、送入量や排出量を減少する必要はなく、エチレンガスを除去でき、さらに、保管室内で湿度の偏りを少なくして、充分に拡散させることができる。
【0021】
さらに、本願発明の第4の観点によれば、保管室へ倉庫内の空気を送入し、保管室からは倉庫外へ空気を排出する。ここで、保管室へ送入される空気は、例えば天井裏のスペースのように、空調装置がなく、かつ、外気よりも保管室内の環境に近い空気を使って、保管庫内の空調効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本願発明の実施の形態に係る食品保管倉庫の一例を示す図である。
図2】保管室3におけるエチレンガスの除去の概要を示す図である。
図3図1の食品保管倉庫1における保管処理の一例を示すフロー図である。
図4図1の食品保管倉庫1において、安納芋を1年間保管したときの実例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。なお、本願発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
図1は、本願発明の実施の形態に係る食品保管倉庫の一例を示す図である。
【0025】
図1を参照して、食品保管倉庫1は、保管室3(本願請求項の「保管室」の一例)と、作業用スペース51及び52と、天井裏スペース7(本願請求項の「非空調空間」の一例)を備える。
【0026】
保管室3は、送入装置11(本願請求項の「送入装置」の一例)と、送入口13(本願請求項の「送入口」の一例)と、排出口15(本願請求項の「排出口」の一例)と、排出装置17(本願請求項の「排出装置」の一例)と、加湿装置19(本願請求項の「湿度調整装置」の一例)と、空調装置211及び212(本願請求項の「空調装置」の一例)と、保管室出入口23と、倉庫出入口25を備える。
【0027】
保管室3は、断熱されて、室内に食品31を保管する。ここで、保管する食品31は、生鮮食品であり、例えば安納芋のように、温度に応じて異なる量のエチレンガスを発生するものである。すなわち、温度が高いと成熟するスピードが速く、多くのエチレンガスが発生する。他方、温度が低いと成熟するスピードが抑えられ、エチレンガスの発生量が抑制される。そのため、一見すると、エチレンガスの発生を抑制するためだけであれば、温度を低くすればよいように思われる。しかしながら、温度が低くなりすぎると、味が落ちたりするなどして、食品31の品質が低下してしまう。そのため、食品31の種類に応じて、適切な保管温度帯がある。
【0028】
生鮮食品は、例えば同じ入力に対して同じ出力を返すような、固定した状態にあるものではない。生鮮食品は、一つ一つ異なり、個性がある。また、収穫時期によっても、その性質は大きく変化する。例えば、早く収穫したものは、まだ成熟しておらず、熟するまでの期間を調整しることにより長期保存に適している場合が多い。他方、収穫時期が遅いものは、十分に成熟してしまっており、早期に出荷した方が適している場合が多い。このように、生鮮食品は、集団としての類似性はあっても、一つ一つに個性があり、かつ、その状態は絶えず変化するため、「生き物」を育てるように、大切に取り扱って保管する必要がある。そのため、保管の環境には、ある程度の幅が必要である。
【0029】
本願発明では、空調装置21は、保管室3の室内温度が設定温度になるように調整するものである。なお、設定温度は、途中で例えば0.1℃上昇させたり下降させたりして変更したり、空調装置211と212で違う温度にしたりしてもよい。また、保管温度帯は、食品31に応じて決定される。空調装置21の設定温度は、保管温度帯に含まれる。例えば、安納芋であれば、空調装置21の設定温度は13.5℃以上15℃以下のいずれかの温度で設定され、保管温度帯は、例えば、設定温度の上下1℃としてもよい。食品31の温度と保管室3の室内温度は、十分に冷えた状態ではほとんど近づくため、空調装置21の設定温度は、保管温度帯に含まれるものとする。
【0030】
食品31は、トラック33などの輸送手段により生産地から食品保管倉庫1に運ばれ、倉庫出入口25から倉庫内に入れられ、保管室出入口23により保管室3に入れられる。このとき、食品31の温度は高い。
【0031】
また、食品31は、保管後に、保管室出入口23により保管室3から作業用スペース51に移動され、作業用スペース51において加工等の作業が行われ、倉庫出入口25からトラック33等の運送手段によりスーパー等に運送される。作業用スペース51及び52は、食品等が移動する食品移動空間であり、空調装置によって、食品を移動させたり加工したりするときに、食品を傷めないように、外気よりも保管室3の室温に近い温度にしている。倉庫出入口25では、例えばトラック33との隙間を閉じるなどの工夫により、倉庫出入口25における作業時にできるだけ食品保管倉庫1の外の空気(外気)が倉庫内に入らないようにしている。
【0032】
作業用スペース51及び52と天井裏スペース7は、食品保管倉庫1の外側との間で断熱されている。図1では、天井裏スペース7は、少なくとも側部と上部は断熱され、作業用スペース51及び52と熱の交換ができるようにしている。また、作業用スペース5は、食品保管倉庫1の外側との間で断熱されている。そのため、天井裏スペース7は、食品保管倉庫1の外側とは断熱されている。そして、例えば、作業用スペース51及び52と天井裏スペース7は、両者の間で空気が移動可能であり、室温がほぼ同じである。そのため、天井裏スペース7の室温は、倉庫の外気温よりも保管室3の室温に近い。
【0033】
送入装置11は、天井裏スぺース7の空気を保管室3に送入する。そのため、外気を直接送入するよりも温度差が少なくなり、空調の効率を低下させない。他方、排出装置17は、保管室3の空気を食品保管倉庫1の外に排出する。そのため、保管室3の空気は、食品保管倉庫1の中にとどまらず、食品保管倉庫1の外に排出される。
【0034】
食品31は、保管室3の床から一定の高さまでに保管される。送入口13及び排出口15は、保管室において対向する位置にある。例えば、挿入口13が東の壁に設けられ、排出口15が西の壁に設けられる。送入口13の高さと排出口15の高さは、送入口13から送入された空気の多くが排出口15から排出されやすい関係にあればよい。例えば、送入口13の高さは、排出口15の高さと同じでもよく、送入口13の高さが、排出口15の高さよりも少し低くてもよい。送入口13及び排出口15の高さは、例えば保管室3の床から天井までの高さの半分よりも上に位置し、食品31の高さよりも高い。そのため、送入口13から送入された空気は、食品31に当たることなく、排出口15に至ることができる。加湿装置19は、例えば食品31の高さよりも高い位置にあり、保管室3の室内の湿度が設定された設定湿度になるように保管室3の室内の湿度を調整する。
【0035】
空調装置21は、保管室3の室内温度を測定し、室内温度と設定温度との差に応じて保管室3の室内の空気の空調を調整する。例えば、室内温度が空調温度の設定値よりも高いときには、室内空気を冷却する。室内温度が空調温度に近付くと、近づいた状態を維持する。例えば、室内温度が空調温度よりも低くなると、食品31が熱を発生していることを考慮して、冷却を止めて室内温度が高くなるのを待ったり、室内温度の低下が急であれば暖かくしたりして、室内温度が設定温度に近い状態にあるようにする。空調装置21は、例えば送入口13と排出口15が東西の壁にあれば、南北の壁に設けてよい。
【0036】
図2は、保管室3におけるエチレンガスの除去の概要を示す図である。
【0037】
(a)は、食品31が搬入されたときである。このとき、食品31は、温度が高く、エチレンガスを多く生じる。エチレンガスは、空気よりも密度が軽いため、エチレンガス41は保管室3の上部にある。
【0038】
(b)は、食品31の温度が保管温度帯よりも高いときである。送入口13及び排出口15が食品31よりも高い位置にあるため、エチレンガス41は、その多くが送入口13と排出口15の間にあり、送入装置11が挿入口13から空気を送入すると、エチレンガス41を含む空気が排出口15に至り、排出装置17は、排出口15からエチレンガス41を含む空気を排出する。送入装置11及び排出装置17は、連続換気を行う。これにより、エチレンガス41の除去を除去する。エチレンガス41が除去されるため、食品31に至らず、食品31は傷まない。さらに、エチレンガス41が除去されるために空調装置21により室内温度を効率よく冷やすことができる。なお、エチレンガスは極めて薄いため、その濃度を直接計測することは難しい。そのため、例えば酸素濃度を測定することによりエチレンガスの濃度を推定して、空調装置21の設定温度などに反映してもよい。
【0039】
(c)は、食品31の温度が保管温度帯になったときである。このとき、食品31は十分に冷却され、エチレンガスの発生が抑制されている。エチレンガス43の発生量は少ない。そのため、送入装置11による送入口13からの送入量を減らし、排出装置17による排出口15からの排出量を減らす。ただし、エチレンガス43は、このような状態であっても発生していることから、まったく送入も排出もしないならば、食品31が傷む可能性が高い。他方、単純に送入量や排出量を減らして連続換気をしたのであれば、送入口13から送入された空気が排出口15に至らず、十分にエチレンガス43を除去できない可能性がある。そこで、間欠的に換気することにより(すなわち、換気する時間帯と換気しない時間帯を設けることにより)、エチレンガス43を除去しつつ、送入量や排出量を減少する。(d)は、換気する時間帯での空気の移動の概要を示す。
【0040】
図3は、図1の食品保管倉庫1における保管処理の一例を示すフロー図である。(a)は、空調装置21の動作の一例を示し、(b)は、加湿装置19並びに送入装置11及び排出装置17の動作の一例を示す。
【0041】
図3(a)を参照して、食品31が搬入されると、空調装置21の設定温度を設定する(ステップSTA1)。空調装置21は、室内温度を測定し、室内温度が設定温度に近付くように制御する(ステップSTA2)。ステップSTA2を繰り返す。
【0042】
図3(b)を参照して、食品31が搬入されると、送入装置11及び排出装置17は、連続換気を行う(ステップSTB1)。食品31の温度は、品温計を用いて測定される。例えば、品温計の検出部を食品31に刺したり食品の間に挿入したりして計測する。食品の間に測定された食品31の温度が保管温度帯にあるか否かを判断する(ステップSTB2)。保管温度帯にないならば、ステップSTB1の連続換気を継続する。食品31の温度が保管温度帯になったならば、加湿装置19は、室内の湿度を調整する(ステップSTB3)。送入装置11及び排出装置17は、換気を停止する(ステップSTB4)。送入装置11及び排出装置17は、停止時間が経過したか否かを判断する(ステップSTB5)。停止時間が経過していないならば、停止時間が経過するまで換気を停止する。停止時間が経過したならば、ステップSTB2のときと同じ挿入量及び排出量で換気を再開する(ステップSTB6)。送入装置11及び排出装置17は、換気時間が経過したか否かを判断する(ステップSTB7)。換気時間が経過していないならば、換気時間が経過するまで換気を継続する。換気時間が経過したならば、ステップSTB4に戻り、換気を停止する。
【0043】
なお、間欠換気を行うための停止時間及び換気時間は、予め決められた値でもよく、食品31に応じて決められた値でもよい。また、食品31の搬入は、例えば数トンや数十トンなどで行われる。そのため、一定量の食品31が搬入されるまでは食品31の温度が保管温度帯にあっても連続換気を行い、一定量の食品31が搬入された後に、食品31の温度が保管温度帯になれば間欠換気を行うようにしてもよい。また、判断等の処理は、図示を省略する制御部などにより行ってもよい。
【0044】
間欠的に換気を行うため、少なくとも換気を行う時間帯がある。そのため、加湿装置19により加えられた湿度は、保管室3内で拡散し、食品31がみずみずしい状態であることを維持することができる。なお、加湿装置19による湿度調整は、保管の最初から継続して行ってもよく、間欠的に行ってもよい。
【0045】
図4は、図1の食品保管倉庫1において、安納芋を、平成24年9月27日から約1年間保管し、平成25年8月19日に確認したときの実例を示す。通常、安納芋は、60%程度しか品質を維持できず、40%程度を廃棄していた。他方、本願発明によれば、95%を超える安納芋で、品質を維持することができた。
【符号の説明】
【0046】
1 食品保管倉庫、3 保管室、5 作業用スペース、7 天井裏スペース、11 送入装置、13 送入口、15 排出口、17 排出装置、19 加湿装置、21 空調装置、23 保管室出入口、25 倉庫出入口、31 食品、33 トラック
【要約】
【課題】 倉庫などにおいて多くの食品を長期に保管することに適した食品保管方法等を提供する。
【解決手段】 食品保管倉庫1では、保管室3において食品31を保管する。保管室3は、当該保管室3の室内温度を調整する空調装置21と、天井裏スペース7の空気を送入口13から室内に送入する送入装置11と、保管室3の室内から排出口15より食品保管倉庫1の外に排出する排出装置17を備える。送入口13と排出口15は、保管室3において対向する位置にある。空調装置21は、保管室3の室内温度を設定温度に近くなるように空調する。送入装置11及び排出装置17は、食品31の温度が保管温度帯にないときには連続換気を行い、食品31の温度が保管温度帯にあるときには間欠的に換気を行う。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4