特許第6152241号(P6152241)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6152241電力システム、携帯式電子機器および電力の供給方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6152241
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】電力システム、携帯式電子機器および電力の供給方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20170612BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20170612BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20170612BHJP
【FI】
   H02J7/00 B
   H02J7/00 302A
   H02J7/10 B
   H02J7/34 D
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-89019(P2014-89019)
(22)【出願日】2014年4月23日
(65)【公開番号】特開2015-208188(P2015-208188A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2015年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
(74)【代理人】
【識別番号】100132595
【弁理士】
【氏名又は名称】袴田 眞志
(72)【発明者】
【氏名】織田大原 重文
(72)【発明者】
【氏名】永多 望
【審査官】 安井 雅史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−260955(JP,A)
【文献】 特開2011−223755(JP,A)
【文献】 特開2013−34072(JP,A)
【文献】 特開2013−55849(JP,A)
【文献】 特開2012−5235(JP,A)
【文献】 特開平5−49179(JP,A)
【文献】 特表2007−529185(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0006850(US,A1)
【文献】 特開2010−88220(JP,A)
【文献】 特開2013−258882(JP,A)
【文献】 特開平5−137267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/26− 1/32
H02J 7/00− 7/12
7/34− 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯式電子機器が搭載する負荷に電力を供給する電力システムであって、
電池と、
前記電池の出力電圧を昇圧して前記負荷に電力供給をすることが可能なスイッチング素子と、
前記負荷の入力電圧が第1の閾値以上のときに前記スイッチング素子のスイッチング動作を停止する停止モードと、該停止モードより待機電力が大きく前記入力電圧が前記第1の閾値未満のときに前記停止モードから移行するアクティブ・モードを備え、前記入力電圧が前記第1の閾値より小さい第2の閾値未満のときに前記スイッチング素子を昇圧動作させ前記第2の閾値以上のときに前記昇圧動作を停止するスイッチング・コントローラと、
前記昇圧動作を停止するときに前記スイッチング素子を経由しないで前記電池から前記負荷に電力を供給することが可能な直接放電回路とを有し、
前記アクティブ・モードにおいて電圧ディップが発生したときに前記スイッチング・コントローラが、前記入力電圧が前記第2の閾値未満になったときに前記昇圧動作を実行させて前記直接放電回路を停止し、前記入力電圧が前記第2の閾値以上になったときに前記昇圧動作を停止して前記直接放電回路を動作させる電力システム。
【請求項2】
前記スイッチング素子と前記スイッチング・コントローラが同期整流式のスイッチング・レギュレータを構成する請求項1に記載の電力システム。
【請求項3】
前記スイッチング・レギュレータがAC/DCアダプタが供給する電力で前記電池を充電することが可能な充電昇圧器である請求項2に記載の電力システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の電力システムを搭載する携帯式電子機器。
【請求項5】
電池から電力の供給を受ける負荷とスイッチング・レギュレータと前記負荷と前記電池を接続するバイパス・スイッチとを含む携帯式電子機器において、前記負荷に電力を供給する方法であって、
前記負荷の入力電圧が第1の閾値以上のときに前記スイッチング・レギュレータが停止モードに移行するステップと、
前記入力電圧が第1の閾値未満のときに前記スイッチング・レギュレータが、前記停止モードより待機電力が大きいアクティブ・モードに移行するステップと、
前記アクティブ・モードにおいて電圧ディップが発生したときに、前記スイッチング・レギュレータが、前記入力電圧が前記第1の閾値より小さい第2の閾値未満になったときに昇圧動作を実行し、前記入力電圧が前記第2の閾値以上になったときに前記昇圧動作を停止するステップと、
前記昇圧動作の実行と停止に伴って前記バイパス・スイッチがオン/オフ動作をするステップと
を有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池で動作する携帯式電子機器が搭載する電力システムに関し、さらには電池が保有する電気量を効率よく負荷に放電する電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム・イオン電池のような充電式の電池には放電終止電圧が存在する。満充電状態から放電電圧が放電終止電圧に低下するまでに放電する電気量が、その時点における当該電池の容量ということになる。ノートブック型パーソナル・コンピュータ、タブレット端末、またはスマートフォンのような携帯式電子機器では電池の電力をDC/DCコンバータに供給する。
【0003】
DC/DCコンバータは、入力電圧を所定の出力電圧に変換してデバイスに電力を供給する。近年、小型の携帯式電子機器では、直列に接続する電池セルの数が1個ないし2個程度まで減少しており、電池が出力する定格電圧が低下してきている。DC/DCコンバータには、入力電圧に対して許容最低電圧が設定されており、電池の出力電圧が許容最低電圧より低下したときは電池からの電力供給を停止する必要がある。
【0004】
特許文献1は、電池電圧が低下したときにDC/DC変換回路に供給する電源の電圧を一定にする電源制御回路の発明を開示する。同文献には、電池電圧が高い時は動作を停止させた昇圧型DC−DC変換回路をスルーで通過させて降圧型DC/DC変換回路に電力を供給し、電池電圧が低下したときに昇圧型DC−DC変換回路を動作させて常時動作する降圧型DC−DC変換回路に電力を供給することにより電池を放電終了電圧まで放電させることを記載している。
【0005】
特許文献2は、電池使用時間の長時間化を可能にする電池駆動式電子装置の発明を開示する。同文献には、電池を入力とする降圧型コンバータと昇圧型コンバータをカスケード接続した昇降圧コンバータにおいて、電池電圧に応じて昇圧型コンバータと降圧型コンバータのいずれか一方を停止するか双方を停止することを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−140286公報
【特許文献2】特開2003−47238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電池の定格電圧が低下してくると、DC/DCコンバータの許容最低電圧を維持するためには放電終止電圧が到来する前に放電を停止する必要があるため、電池が保有する電気量を有効に活用できなくなる。特許文献1の発明も特許文献2の発明もともに、電池の出力電圧を昇圧して負荷の入力電圧を維持しながら放電終止電圧まで放電させることができる。しかし、特許文献1に記載の電源制御回路では、昇圧型DC/DC変換回路を停止させたときに形成される電池から降圧型DC/DC変換回路までのスルー回路が、昇圧型DC/DC変換回路のチョークコイルL2とダイオードD2を含むため、電池の放電時に電圧降下と電力損失が発生する。さらに、充電器は昇圧型DC/DC変換回路とは別に設けている。
【0008】
また、特許文献2に記載の電子装置では、昇圧型コンバータと降圧型コンバータをともに停止したときに形成される電池と負荷の直結回路に、インダクタとダイオードが挿入されているため、電池の放電時に電圧降下と電力損失が生じる。プロセッサを搭載する携帯式電子機器の負荷は短時間だけ急激に増大する性質があるため電圧ディップが発生する。電圧ディップが発生した場合にも負荷の電圧を確実に維持するためには、電池電圧が比較的高いタイミングで昇圧型コンバータを動作させる必要がある。特許文献1の発明も特許文献2の発明も電圧ディップに対応するために、昇圧型コンバータを電圧ディップが発生しない時間帯でも連続的に動作させる必要があるためそこでのスイッチング損失や抵抗損失が発生する。
【0009】
そこで、本発明の目的は、電池の出力電圧が低下したときに負荷の入力電圧を維持しながら電池を放電終止電圧まで放電させることができる電力システムを提供することにある。さらに本発明の目的は、負荷の入力電圧を維持しながら昇圧動作の時間を短くして電池を放電終止電圧まで放電させることができる電力システムを提供することにある。さらに本発明の目的は、簡単な回路で構成した電力システムを提供することにある。さらに本発明の目的は、電力損失の少ない電力システムを提供することにある。さらに本発明の目的は、そのような電力システムを搭載した携帯式電子機器およびそのような電力システムによる電力の供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる電力システムの一の態様では、負荷に電力を供給する充電式の電池と、電池の出力電圧を昇圧して負荷に電力を供給することが可能な昇圧器と、昇圧器を経由しないで電池から負荷に電力を供給することが可能な直接放電回路とを有する電力システムを提供する。この構成により、電池の出力電圧が高いときは昇圧器を経由しないで電力の供給ができる直接放電回路から電力を供給して昇圧器の動作を停止できるため、昇圧器で発生する電力損失を抑制することができる。また、電池の出力電圧が低下したときは、昇圧放電回路から電力を供給して負荷の入力電圧を維持することができるため、電池を放電終止電圧まで放電させることができる。
【0011】
昇圧器は、スイッチング動作をする整流素子と整流素子をスイッチング制御するスイッチング・コントローラとを含む同期整流式のスイッチング・レギュレータで構成することができる。同期整流式のスイッチング・レギュレータは電力源の位置によって昇圧動作または降圧動作をするため、AC/DCアダプタが電力源のときに降圧動作をして電池を充電することができる。したがって、電力システムは充電器と昇圧器を個別に設ける必要がないため、素子の数を減らすことができる。直接放電回路は、整流素子に連動して動作するバイパス・スイッチを含むように構成することができる。
【0012】
そして、負荷の入力電圧が第1の閾値以上のときにバイパス・スイッチがオン状態に移行し、スイッチング・コントローラは動作を停止することができる。その結果、電圧ディップが発生しても負荷の入力電圧が低下することがないほど電池の出力電圧が高いときはスイッチング・コントローラを停止して待機電力を低減することができる。スイッチング・コントローラは負荷の入力電圧が第1の閾値より低い第2の閾値未満のときにスイッチング動作をして電池の出力電圧を昇圧することができる。この構成により負荷の入力電圧に電圧ディップが発生しても、スイッチング・レギュレータが一時的に昇圧動作をして入力電圧の低下を防ぎ、電圧ディップが消滅したときは再び直接放電回路から電力を供給することができる。
【0013】
その結果、直接放電回路から電力供給をしている時間だけ、スイッチング・レギュレータが昇圧動作をする時間が短くなるため、スイッチング・レギュレータの動作による電力損失を抑制することができる。スイッチング・コントローラは、整流素子をスイッチング制御している間、バイパス・スイッチをオフ状態に制御して短絡電流を阻止することができる。電力システムは、ノートPC、タブレット端末、およびスマートフォンのような携帯式電子機器に搭載することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、電池の出力電圧が低下したときに負荷の入力電圧を維持しながら電池を放電終止電圧まで放電させることができる電力システムを提供することができた。さらに本発明により、負荷の入力電圧を維持しながら昇圧動作の時間を短くして電池を放電終止電圧まで放電させることができる電力システムを提供することができた。さらに本発明により、簡単な回路で構成した電力システムを提供することができた。さらに本発明により、電力損失の少ない電力システムを提供することができた。さらに本発明により、そのような電力システムを搭載した携帯式電子機器およびそのような電力システムによる電力の供給方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】電力システム10の基本的な構成を説明するための機能ブロック図である。
図2】電力システム10の一例を説明するための機能ブロック図である。
図3】電力システム10の動作を説明するためのフローチャートである。
図4】スイッチング・コントローラ107の動作状態、FET135の動作状態、電力システム100の動作状態、およびDC/DCコンバータ127の許容電圧の関係を説明するための図である。
図5】電力システム10が電圧ディップに対応して入力電圧を維持する様子を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、電力システム10の基本的な構成を説明するための機能ブロック図である。電力システム10は、ノートブック型パーソナル・コンピュータ(ノートPC)、タブレット端末、またはスマートフォンのような携帯式電子機器に搭載することができる。ただし電力システム10は、充電式の電池17が保有する電気量を放電終止電圧まで使う必要がある携帯式電子機器全般に適用することができる。
【0017】
電力システム10は、AC/DCアダプタ11、負荷13、充電昇圧器15、直接放電回路19、および電池17を含んでいる。AC/DCアダプタ11は、交流電圧を所定の直流電圧に変換して、外部電源経路51で負荷13にシステム電力を供給し、充電経路53で充電昇圧器15に充電電力を供給する。負荷13は携帯式電子機器を構成するプロセッサ、ディスプレイ、および記憶装置などのデバイスで、AC/DCアダプタ11または電池17から電力の供給を受けて動作する。負荷13は、短時間だけ急激に消費電力が増加することがある。
【0018】
負荷13は、AC/DCアダプタ11の出力電圧を所定の電圧に変換するコンバータで代表させることができる。ここでは負荷13が電力を消費している状態の電力システム10の動作を説明する。負荷13は、入力電圧Viが許容最大電圧と許容最低電圧の範囲で正常に動作する。電池17は放電するときに満充電状態の電圧から放電終止電圧までセル電圧Vbが低下する。ここに、放電終止電圧はそれ以上放電すると劣化が著しく進行するために放電を終了する電圧で電池の保護の視点から定めている。許容最低電圧が、電池17の放電終止電圧から直接放電回路19と電池17が放電する経路のインピーダンスによる電圧降下を引いた値よりも低い場合には、電池17から負荷13に直接電力を供給する限り放電終止電圧まで放電することができない。
【0019】
充電昇圧器15は、アクティブ・モードと停止モードのいずれかの動作モードに移行するスイッチング・レギュレータで構成することができる。充電昇圧器15は、AC/DCアダプタ11が電力を供給するときは、電池17の充電状態に応じてアクティブ・モードまたは停止モードに設定される。アクティブ・モードに設定された充電昇圧器15は充電動作をして、充電経路53を使って電池17を充電する。停止モードに設定された充電昇圧器15は完全に動作を停止する。
【0020】
充電昇圧器15は、AC/DCアダプタ11が電力を供給しないときに、負荷の入力電圧Vi、または充電昇圧器15の出力電圧Vsの大きさに応じてアクティブ・モードまたは停止モードに移行する。アクティブ・モードに移行した充電昇圧器15は、入力電圧Viまたは出力電圧Vsが所定値まで低下したときだけスイッチング動作(昇圧動作)をしてセル電圧Vbを昇圧する。充電昇圧器15は、入力電圧Viを所定値に維持しながら、昇圧放電経路55を使って負荷13に電力を供給する。また、アクティブ・モードに移行した充電昇圧器15は、入力電圧Viまたは出力電圧Vsが所定値以上のときにスイッチング動作を停止する。充電昇圧器15は、アクティブ・モードでスイッチング動作を停止するときにはスイッチング動作の開始のために待機しているため、停止モードのときより待機電力が増加する。
【0021】
直接放電回路19は、電池17と負荷13を直接接続するスルー・モードと遮断するブロック・モードのいずれかに設定される。直接放電回路19は、AC/DCアダプタ11が電力を供給するときにブロック・モードに設定され、AC/DCアダプタが電力を供給しないときに充電昇圧器15の動作に連動してスルー・モードまたはブロック・モードに設定される。直接放電回路19は、スルー・モードに設定されたときに直接放電経路57で負荷13に電力を供給し、ブロック・モードに設定されたときに、昇圧動作をする充電昇圧器15またはAC/DCアダプタ11に短絡電流が流れることを阻止する。
【0022】
図2は、電力システム10の構成の一例を説明するための機能ブロック図である。AC/DCアダプタ11は、携帯式電子機器の筐体の内部に収納する内蔵タイプまたは筐体にコネクタで接続する外置きタイプのいずれでもよい。スイッチング・コントローラ107、ハイサイドのFET109、ローサイドのFET111、リアクトル113、および平滑コンデンサ115、131はスイッチング・レギュレータを構成し図1の充電昇圧器15に相当する。FET109、111は電流を一定の方向に流す整流素子(スイッチング素子)に相当し、リアクトル113はFET109、111の動作に対応して電源のエネルギーを蓄積および放出する受動素子に相当し、平滑コンデンサ115、113は電圧を安定させるフィルタ素子に相当する。
【0023】
DC/DCコンバータ127は、入力電圧Viを所定の安定した電圧に変換して携帯式電子機器を構成するデバイスに電力を供給する。DC/DCコンバータ127は、図1の負荷13に相当する。電池ユニット125は、図1の電池17、保護回路、制御回路、および入出力回路などで構成している。電池ユニット125は、携帯式電子機器の筐体のベイに装着するスマート・バッテリィ規格の電池パックでもよい。本明細書では、電池17としてリチウム・イオン電池を例示して説明するが、本発明は放電終止電圧が存在するすべての充電式電池に適用することができる。
【0024】
AC/DCアダプタ11とDC/DCコンバータ127の間には、FET103、105、センス抵抗133が直列に接続されている。センス抵抗133の両端は、DC/DCコンバータ127の入力電流を検出するために、スイッチング・コントローラ107に接続されている。AC/DCアダプタ11とFET103の間には、AC/DCアダプタ11の電圧を検出する電圧検出装置(VD)101が接続されている。
【0025】
VD101の出力はスイッチング・コントローラ107に接続されている。FET105とセンス抵抗133の間には、グランドとの間に平滑コンデンサ131が接続されている。センス抵抗133とDC/DCコンバータ127との間には、グランドとの間に直列にスイッチング・コントローラ107が出力電圧Vsを検出するための分圧抵抗133a、133bが接続されている。
【0026】
分圧抵抗133a、133bの接続部は、スイッチング・コントローラ107に接続されている。スイッチング・コントローラ107は、出力電圧Vsをフィードバック電圧として検出する。ラインの電圧降下が小さいため昇圧動作をするスイッチング・コントローラ107の出力電圧Vsと入力電圧Viはほぼ同じ値として扱うことができる。FET105とセンス抵抗133の間には、グランドとの間にFET109、111が直列に接続されている。スイッチング・コントローラ107は、FET109とFET111を同期整流方式でスイッチング動作させて、昇圧動作(放電動作)または降圧動作(充電動作)をする。同期整流方式では、FET109とFET111が、同時にオフする期間が重なるようにしながら交互にオン/オフ状態が切り換わる。
【0027】
FET109、111の接続部と電池ユニット125との間には、直列にリアクトル113、センス抵抗117、FET123が接続されている。センス抵抗117の両端は、充電電流を検出するために、スイッチング・コントローラ107に接続されている。リアクトル113とセンス抵抗117の間には、グランドとの間に平滑コンデンサ115が接続されている。センス抵抗117とFET123との間には、グランドとの間に直列にスイッチング・コントローラ107が出力電圧Vcを検出するための分圧抵抗119a、119が接続されている。分圧抵抗119a、119bの接続部はスイッチング・コントローラ107に接続されている。スイッチング・コントローラ107は、出力電圧Vcをフィードバック電圧として検出する。ラインの電圧降下が小さいため出力電圧Vcとセル電圧Vbはほぼ同じ値として扱うことができる。
【0028】
スイッチング・コントローラ107は、FET109、111のオン/オフ周期を一例としてPWM方式で制御する。昇圧動作のときは、FET111のオン期間が長くなるほどリアクトル113により多くのエネルギーが蓄積されて出力電圧Vsが高くなる。降圧動作のときは同様にFET109のオン期間が長くなるほどリアクトル113により多くのエネルギーが蓄積されて出力電圧Vcが高くなる。
【0029】
リアクトル113は、昇圧動作および降圧動作のいずれでもエネルギーの蓄積と放出を繰り返す。スイッチング・コントローラ107には、昇圧動作の設定値(昇圧電圧)と降圧動作の設定値(充電電圧および充電電流)が設定される。スイッチング・コントローラ107は昇圧動作のときに出力電圧Vsを昇圧電圧に維持するために、分圧抵抗133a、133bが検出する出力電圧Vsを参照してスイッチング動作のデューティを調整する。スイッチング・コントローラ107は、降圧動作のときに出力電圧Vcを充電電圧に維持するために、分圧抵抗119a、119bが検出する出力電圧Vcを参照してスイッチング動作のデューティを調整する。スイッチング・コントローラ107は、降圧動作のときに定電圧定電流方式でFET109、111をスイッチング制御して電池ユニット125を充電する。
【0030】
DC/DCコンバータ127の入力端子と電池ユニット125の出力端子は、FET135で接続されている。FET135は、図1の直接放電回路19に相当する。FET135は、AC/DCアダプタ11が電力を供給する間は、充電コントローラ151によりオフ状態に制御される。FET135は、AC/DCアダプタ11が電力を供給しない間はスイッチング・コントローラ107により制御される。
【0031】
電池ユニット125は、一例としてSMバスで充電コントローラ151に接続されている。充電コントローラ151はスイッチング・コントローラ107に接続されている。充電コントローラ151は、スイッチング・コントローラ107を経由してAC/DCアダプタ11の出力電圧を監視する。充電コントローラ151はSMバスを通じて、定期的に電池ユニット125からセル電圧Vb、電池セルが蓄積している電気量およびスイッチング・コントローラ107に設定する設定値などの情報を取得する。
【0032】
スイッチング・コントローラ107は、アクティブ・モードまたは停止モードのいずれかで動作する。アクティブ・モードに設定されたスイッチング・コントローラ107は、出力電圧Vs、Vcの値に応じてスイッチング動作をしたりスイッチング動作を停止したりすることができる。充電コントローラ151は、AC/DCアダプタ11が電力を供給する間、スイッチング・コントローラ107をアクティブ・モードまたは停止モードに設定する。スイッチング・コントローラ107は、アクティブ・モードで昇圧動作をしないときは、停止モードのときと同様にFET109、111のスイッチング動作を停止するが、アクティブ・モードではスイッチング・コントローラ107が待機電力を消費する。
【0033】
これに対し停止モードのときのスイッチング・コントローラ107は、ウェイクする回路を除いてほとんどの機能が停止するため待機電力をほとんど消費しない。充電コントローラ151は、電池ユニット125から充電要求があったときに、スイッチング・コントローラ107をアクティブ・モードに設定し、充電電流および充電電圧を設定してただちに充電動作をさせる。充電コントローラ151は、電池ユニット125から充電停止要求があると、充電コントローラ151を停止モードに設定する。充電コントローラ151は、AC/DCアダプタ11の出力電圧に応じてFET103、105、123、135の動作を制御する。
【0034】
図3は、電力システム10の動作を説明するフローチャートで、図4は、スイッチング・コントローラ107の動作状態、FET135の動作状態、電力システム10の動作状態およびDC/DCコンバータ127の許容電圧の関係を説明するための図である。図4で縦軸はDC/DCコンバータ127の入力電圧Viまたは電池ユニット125のセル電圧Vbを示している。
【0035】
ここでは電池ユニット125が1個分のセル電圧Vbを出力する場合を例示するが、複数の電池セルが直列に接続されているときのセル電圧Vbは、それらを合成した電圧を意味するものとする。V1は電池ユニット125の満充電電圧で一例として1セル当たり4.2V〜4.35Vである。V2はAC/DCアダプタ11が電力を供給しないときに、スイッチング・コントローラ107がアクティブ・モードに移行する電圧(アクティブ化電圧)で一例において3.5Vとしている。
【0036】
V3は、スイッチング・コントローラ107が昇圧動作をするときの設定電圧(昇圧電圧)で、一例において3Vとしている。ここでは昇圧電圧V3をDC/DCコンバータ127の許容最低電圧に一致させる例を示しているが、許容最低電圧は昇圧電圧V3より小さくてもよい。ただし、昇圧電圧V3を許容最低電圧よりも大きくするだけ、スイッチング・コントローラ107がスイッチング動作をする時間が長くなって損失が多くなる。
【0037】
V4は電池セルの放電終止電圧で、一例として2.5V〜2.75Vである。なお、電池ユニット125が実装する電池セルが直列に複数個接続されている場合は、V1〜V4の値はそれぞれ電池セルの個数倍になる。ブロック201で、電力システム10にはAC/DCアダプタ11からDC/DCコンバータ127に電力を供給している。ブロック202で、充電コントローラ151は最初に、スイッチング・コントローラ107を停止モードに設定していると想定する。充電コントローラ151はAC/DCアダプタ11の出力電圧を検出して、FET103、105をオン状態に制御し、FET123、135をオフ状態に制御する。
【0038】
充電コントローラ151は、電池ユニット125から電池セルの充電状態を示す情報を定期的に取得して、充電が必要だと判断したときにFET123をオン状態に制御し、スイッチング・コントローラ107をアクティブ・モードに設定する。充電コントローラ151は、さらにスイッチング・コントローラ107に充電電圧および充電電流を設定して充電動作を開始させる。充電コントローラ151は、満充電に到達するとスイッチング・コントローラ107を停止モードに設定する。
【0039】
ブロック203でAC/DCアダプタ11が電力の供給を停止する。停止の瞬間、スイッチング・コントローラ107は、アクティブ・モードまたは停止モードのいずれかに設定されている。また、電池ユニット125のセル電圧Vbは、満充電電圧V1から放電終止電圧V4までのいずれかの値である。VD101の出力を検出したスイッチング・コントローラ107は、AC/DCアダプタ11が電力の供給を停止したことを認識する。ブロック204でスイッチング・コントローラ107は出力電圧Vsがアクティブ化電圧V2より大きいと判断したときは、ブロック205でFET135をオン状態に設定する。
【0040】
その結果、DC/DCコンバータ127に対する電力源が、AC/DCアダプタ11から電池ユニット125に切り換わる。FET135がオン状態に制御されるまでの過渡的な期間は、FET135の寄生ダイオードが電流を流してDC/DCコンバータ127の入力電圧Viを維持する。スイッチング・コントローラ107が、出力電圧Vsがアクティブ化電圧V2より小さいと判断したときは、ブロック211に移行する。
【0041】
ブロック206でスイッチング・コントローラ107は停止モードに移行する。ブロック207ではこの状態で、電池ユニット125がFET135を経由して電力を供給する。DC/DCコンバータ127に電力を供給する間、スイッチング・コントローラ107が停止してリアクトル113に電流が流れないため、電力損失および電圧降下を抑制することができる。FET135を経由した電池ユニット125からDC/DCコンバータ127への放電を直接放電という。
【0042】
直接放電をしている間に、DC/DCコンバータ127の負荷が短い周期で急激に増加したときにはその間だけ電池ユニット125のセル電圧Vbが内部抵抗で低下し、さらに電池ユニット125内部のFETやヒューズおよびFET135などDC/DCコンバータ127までの経路の抵抗で、入力電圧Viに一時的に電圧が低下する電圧ディップが発生する。アクティブ化電圧V2は、昇圧電圧V3に対して電圧ディップが発生しても昇圧電圧V3を維持できるだけのマージンを含めて設定する。したがって、入力電圧Viがアクティブ化電圧V2に低下するまでは、負荷の変動で電圧ディップが発生したときにスイッチング・コントローラ107が昇圧動作をしなくても、入力電圧ViはDC/DCコンバータ127の許容最低電圧未満に低下しない。
【0043】
ブロック209で、DC/DCコンバータ127の入力電圧Viがアクティブ化電圧V3未満になったことを検出したスイッチング・コントローラ107はアクティブ・モードに移行する。アクティブ・モードに移行したスイッチング・コントローラ107は出力電圧Vsが、昇圧電圧V3未満になったときだけスイッチング動作をする。
【0044】
出力電圧Vsが昇圧電圧V3未満になるのは、セル電圧Vbが高い間は電圧ディップが発生したときだけである。スイッチング・コントローラ107は、出力電圧Vsが昇圧電圧V3未満になったことを検出したときは、FET109、111をスイッチング動作させて昇圧動作をする。このとき、FET111がオン状態でFET109がオフ状態のときに流れる電流によるエネルギーがリアクトル113に蓄積される。つぎに、FET109がオン状態でFET111がオフ状態のときは、リアクトル113が放出するエネルギーによる誘導起電力が電池ユニット125のセル電圧Vbに重畳されて、電池ユニット125のセル電圧Vbが昇圧電圧V3まで昇圧されDC/DCコンバータ127に電力を供給する。昇圧動作をするスイッチング・コントローラ107を経由した電池ユニット125からDC/DCコンバータ127への放電を昇圧放電という。
【0045】
スイッチング・コントローラ107は、PWM方式でスイッチング周期を制御して、出力電圧Vsを昇圧電圧V3まで昇圧する。スイッチング・コントローラ107は、スイッチング動作をしている間、FET135をオフ状態に制御する。スイッチング・コントローラ107は,出力電圧Vsが昇圧電圧V3に到達すると、スイッチング動作を停止するとともに、FET135をオン状態に制御する。電池ユニット125のセル電圧Vbが、アクティブ化電圧V2から昇圧電圧V3まで低下する間は、電圧ディップの発生に応じてスイッチング・コントローラ107がFET135を制御しながら昇圧動作と停止を繰り返す。これを電力システム10からみると、昇圧放電と直接放電が繰り返されていることになる。
【0046】
このときの様子を図5に示す。図5は、直接放電を継続したと仮定したときに電圧ディップが発生して出力電圧Vsが昇圧電圧V3より低下する時間tの間だけ、スイッチング・コントローラ107が昇圧動作をして、出力電圧Vsを昇圧電圧V3まで昇圧する様子を示している。電池ユニット125のセル電圧Vbがアクティブ化電圧V2から昇圧電圧V3に低下するまでの間は、スイッチング・コントローラ15はアクティブ・モードに移行しているにもかかわらず、電圧ディップが発生しない多くの時間帯ではスイッチング動作を停止して直接放電で電力供給する。
【0047】
FET135を設けない場合は、セル電圧Vbがアクティブ化電圧V2まで低下した以降は、電圧ディップの対策のためにスイッチング・コントローラ107が連続的に昇圧動作をすることになる。昇圧放電ではスイッチング・コントローラ107のスイッチング損失やリアクトル113での電力損失が発生するが、直接放電ではそのような損失が発生しないため、入力電圧Viを維持しながらできるだけ直接放電の時間を長くすることは有利である。
【0048】
FET135は、FET109、111のスイッチング動作に連動してオフ状態とオン状態を繰り返すことになる。ブロック213ではこのようにして昇圧放電と直接放電が発生する。ブロック215で出力電圧Vsが昇圧電圧V3未満に到達すると、スイッチング・コントローラ107は自動的に連続した昇圧動作をする。スイッチング・コントローラ107それに応じてFET135を連続してオフ状態に制御しブロック217で電力システム10は完全な昇圧放電を行う。
【0049】
ブロック219で電池コントローラ151は、電池ユニット125から受け取った残容量やセル電圧Vbなどから、電池ユニット125が放電終止電圧V4に到達したと判断する。ブロック221で、電池コントローラ151は、システムに電力供給を停止することを通知して、スイッチング・コントローラ107を停止モードに設定する。
【0050】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0051】
10 電力システム
11 AC/DCアダプタ
13 負荷
15 充電昇圧器
17 充電式の電池
19 直接放電回路
51 外部電源経路
53 充電経路
55 昇圧放電経路
57 直接放電経路
Vi 負荷の入力電圧
Vb セル電圧
Vs 昇圧動作のときの充電昇圧器15の出力電圧
Vc 降圧動作のときの充電昇圧器15の出力電圧
図1
図2
図3
図4
図5