【文献】
鈴木 博,ディジタル通信の基礎 −ディジタル変復調による信号伝送−,日本,株式会社数理工学社,2012年 1月25日,初版,p.64
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記キーコードがメーク・コードとブレーク・コードを含み、前記メーク・コードに応じた前記所定のパルス電圧と、前記ブレーク・コードに応じた前記調整パルス電圧で前記アクチュエータを動作させるステップを有する請求項10に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[用語]
本明細書で使用する特別な用語を説明する。SMAを利用したアクチュエータは、マルテンサイト相(低温相)とオーステナイト相の間のヒステリシス・サイクル(熱サイクル)で動作する。アクチュエータは振動体に振動を与えるためにそれ自体が規則的な運動をする。SMAを利用したアクチュエータには、衝撃駆動型アクチュエータと振動型アクチュエータが存在する。
【0015】
衝撃駆動型アクチュエータは、1個の単一パルス電圧または1回の熱サイクルで目的とする振動を生成することができる。振動型アクチュエータは、熱サイクルを可能にする所定の間隔で繰り返し印加した複数の単一パルス電圧で目的とする振動を生成する。本発明にかかる駆動システムはいずれのタイプのアクチュエータにも適用できるが、本明細書では衝撃駆動型アクチュエータを例示して説明する。
【0016】
単一パルス電圧は、短い所定の通電時間だけ存在する電圧でSMAにアクチュエータの駆動に必要な熱を与える。単一パルス電圧は、SMAの収縮に対して電流として作用するため単一パルス電流と言い換えることもできる。通電時間中の電圧波形および電流波形は矩形波、微分波、三角波、またはステップ状に波高値が変化する階段波などのような任意の波形とすることができる。単一パルス電圧は、通常の単一パルス電圧と擬似的な単一パルス電圧を含む。
【0017】
通常の単一パルス電圧は、通電時間中に断続していない単一パルス電圧をいう。擬似的な単一パルス電圧は、1個の通常の単一パルス電圧を通電時間の間スイッチング制御して生成した電圧に相当する。1個の通常の単一パルス電圧が衝撃駆動型アクチュエータに付与するエネルギーは、波高値およびパルス幅で変化する。波高値およびパルス幅を通常の単一パルス電圧のパラメータという。
【0018】
擬似的な単一パルス電圧のパラメータは、サブ・パルス電圧34(
図4)の波高値、デューティ比、および通電時間を含む。1個の擬似的な単一パルス電圧が衝撃駆動型アクチュエータに付与するエネルギーは、特徴的にデューティ比で制御することができる。以下において、通常の単一パルス電圧と擬似的な単一パルス電圧を区別する必要がないときは、単に単一パルス電圧ということにする。
【0019】
振動体は、衝撃駆動型アクチュエータに印加した1個の単一パルス電圧で必要な振動をする物体に相当する。振動体は特に限定する必要はないが、一例において、タッチパネル、キーボード、またはスイッチのような人間が操作をする際に触れた指に触覚フィードバックを付与する物体とすることができる。衝撃駆動型アクチュエータは、動作中に熱的および機械的なストレスを受ける。
【0020】
ストレスは衝撃駆動型アクチュエータの劣化を促進する計測可能な物理量をいう。ストレス量は、衝撃駆動型アクチュエータが単位時間当たりに受け取るストレスの合計をいう。許容ストレス量は、衝撃駆動型アクチュエータが所定の寿命を確保するために許容するストレス量をいう。ストレス量は、一例において、衝撃駆動型アクチュエータに供給する単位時間当たりのエネルギー量またはそれを代用する量で特定することができる。
【0021】
ストレス量は他の例において、振動体が衝撃駆動型アクチュエータから受け取るエネルギー量またはそれを代用する量で特定することができる。供給するエネルギー量に相当するストレス量は、単位時間当たりに印加する単一パルス電圧のパラメータ値と個数により特定することができる。単一パルス電圧のなかで、衝撃駆動型アクチュエータに寿命の基準にするストレスを発生させるパラメータ値を備える通常の単一パルス電圧を基準パルス電圧という。
【0022】
基準パルス電圧に対する許容ストレス量は、単位時間当たりに印加する基準パルス電圧の個数で特定することができる。基準パルス電圧に比べて小さいストレスを与える単一パルス電圧を調整パルス電圧という。調整パルス電圧は、擬似的な単一パルス電圧を含む。調整パルス電圧が通常の単一パルス電圧の場合、基準パルス電圧に比べて波高値およびパルス幅またはいずれか一方が小さい。調整パルス電圧が擬似的な単一パルス電圧の場合、基準パルス電圧を通常の単一パルス電圧として比較した場合に、平均値または波高値が小さい。調整パルス電圧は、与えるストレスが小さいため、許容ストレス量の範囲で基準パルス電圧よりも多い個数を印加することができる。
【0023】
図1は、衝撃駆動型アクチュエータ100の構造を説明するための模式的な図である。衝撃駆動アクチュエータ100は、固定子103、可動子105、SMA101およびバイアス材107で構成している。衝撃駆動型アクチュエータ100は、振動体10に衝撃性または一過性の振動を与える。SMA101は、1方向性の形状記憶とバイアス力で繰り返し動作をする。ただし、本発明は2方向性の形状記憶をするSMAに適用することもできる。
【0024】
固定子103と可動子105が対向する対向面は、互いの凹凸が嵌合できるような波状に形成している。対向面の間には、線状のSMA101を配置している。SMA101には、例えばニッケル・チタン合金、チタン・ニッケル・銅合金などを選択できるが特に限定する必要はない。バイアス材107は、固定子103と可動子105が接近する方向にバイアス力を与える弾性体で構成することができる。
【0025】
図1(A)は、SMA101が、マルテンサイト変態終了温度Mf(
図2)以下の温度になって柔軟な性状を示したときの様子を示している。バイアス材107が、可動子105に付与したバイアス力で可動子105が固定子103に接近して対向面が嵌合する。対向面で塑性変形したSMA101は、固定子103と可動子105の対向面の形状に沿って最大の長さまで伸張する。SMA101が対向面の形状およびバイアス材107によって塑性変形し長さが最大になっている状態を完全伸張状態という。
【0026】
図1(B)はSMA101が温度の上昇に伴って収縮および硬化してオーステナイト変態終了温度Af(
図2)を超え記憶していた形状に戻ったときの様子を示している。SMA101の収縮が終了した状態を完全収縮状態という。完全伸張状態から完全収縮状態に移行する間にSMA101から力を受けた可動子105は、バイアス力に抗して固定子103との間隔が広がるように変位する。衝撃駆動型アクチュエータ100は、基準パルス電圧を印加すると1回の熱サイクルでSMA101が完全伸張状態から完全収縮状態に相転移し、さらに、通電時間が終了すると完全伸張状態に戻る。
【0027】
図2は、単一パルス電圧を印加したSMA101の温度と長さが変化する様子を説明するための図である。横軸はSMA101の温度Tを示し、縦軸は長さLを示している。SMA101は、温度がマルテンサイト変態終了温度Mf以下のときは、全体がほぼマルテンサイト相に相転移している。マルテンサイト相では、SMA101が柔軟性を備えるため、バイアス力を受けて塑性変形している。
【0028】
マルテンサイト相に相転移しているSMA101に電圧を印加して通電加熱すると、温度がオーステナイト変態開始温度Asを超えたときにマルテンサイト逆変態を開始して収縮が始まる。そして温度がオーステナイト変態終了温度Afに到達したときに収縮が終了して長さがL1(L1<L0)の完全収縮状態になる。温度がオーステナイト変態開始温度Asからオーステナイト変態終了温度Afまで上昇する過程を完全昇温過程ということにする。
【0029】
完全収縮状態のときに通電を停止すると、放熱により温度が低下してマルテンサイト変態開始温度Msでマルテンサイト変態が始まり徐々に軟化する。この間、軟化の程度とバイアス力によりSMA101は徐々に伸張する。そして、温度がマルテンサイト変態終了温度Mfに到達すると伸張が終了して長さがL0の完全伸張状態になる。温度がマルテンサイト変態開始温度Msからマルテンサイト変態終了温度Mfまで下降する過程を完全降温過程ということにする。
【0030】
SMA101は、1回の完全昇温過程と1回の完全降温過程が構成する完全熱サイクルの間にL0−L1=dだけ長さが伸縮する。可動子105は、振動体10に対して、完全収縮状態で加えた曲げ応力を完全伸張状態で解放する。振動体10は、単一パルス電圧の印加で伸縮するSMA101が付与する急激な応力の変化に応じて振動する。振動の強度は可動子105の変位量と変位速度で変わる。
【0031】
可動子105の変位量は、長さL1を最大値とするSMA101の収縮量、すなわち供給熱量に依存する。たとえば、波高値が同じパルス電圧でもパルス幅が狭くてオーステナイト変態終了温度Afに到達する前の温度T1で通電時間が終了すると、SMA101は長さL2(L2>L1)までしか収縮しないため可動子105の変位量は完全昇温過程よりも少ない。したがって、振動体10の変位は小さくなり加速度は低下する。
【0032】
オーステナイト変態終了温度Afに到達する前に通電時間が終了する単一パルス電圧による昇温過程を不完全昇温過程ということにする。不完全昇温過程を含む不完全熱サイクルでは、完全熱サイクルに比べてSMA101に加える供給熱量が低下し、かつ変位量も低下するためストレスが軽減する。また、同じ通電時間であっても波高値が大きいほど長さL1まで収縮する時間が短くなって可動子105の変位速度が速くなる。したがって、波高値を小さくするとSMA101に対するストレスが軽減する。
【0033】
図3は、キーボードの触覚フィードバックに利用した衝撃駆動型アクチュエータ100の従来の動作の様子を説明する図である。キーイベント11は、キーボードを打鍵したときにキー・スイッチのオン状態への遷移に応じて生成されるメーク・コード13とオフ状態への遷移に応じて生成されるブレーク・コード15のタイミングで生成される。メーク・コード13とブレーク・コード15の生成に応じて、衝撃駆動型アクチュエータ100には、一定の波高値および一定のパルス幅の基準パルス電圧21が印加される。
【0034】
1個の基準パルス電圧21が衝撃駆動型アクチュエータ100に与えるストレスは同じである。基準パルス電圧21だけを印加する場合のストレス量は、ユーザの打鍵速度で変わる。打鍵中のストレス量を許容ストレス量の範囲に制限するために、打鍵速度が速くなったときに任意のキーイベント11に対応する基準パルス電圧21の印加をスキップしたり、所定の時間だけ動作を停止したりすると利便性が悪くなる。
【0035】
図4は、衝撃駆動型アクチュエータ100に印加する調整パルス電圧の一例を説明するための図である。
図4(A)は、パルス幅Wsと波高値V1の基準パルス電圧21に続いて発生したパルス幅Ws、波高値V2(V2<V1)の調整パルス電圧35aを示している。
図4(B)は、基準パルス電圧21に続いて発生した、擬似的な単一パルス電圧で構成した調整パルス電圧35bを示している。調整パルス電圧35bは、波高値V1、通電時間Wxの複数のサブ・パルス電圧34で構成している。
【0036】
調整パルス電圧35bの波高値V1および通電時間Wxは、基準パルス電圧21と同じでも異なっていてもよい。サブ・パルス電圧34は、通常の単一パルス電圧をPWM制御して生成することができる。サブ・パルス電圧34は、PWM制御に代えてオン期間一定またはオフ期間一定のPFM制御で生成してもよい。いずれのサブ・パルス電圧でもオフ期間は、完全熱サイクルを実現するために必要な完全降温過程の時間より短く、昇温過程においてSMA101の温度がマルテンサイト変態終了温度Mfまで下がらないように選択する。
【0037】
SMA101に調整パルス電圧35bを印加すると、サブ・パルス電圧34のオン期間で温度が上昇して収縮し、オフ期間で収縮が停止する。オフ期間をほとんど温度低下しない程度、すなわち伸張しない程度に短くすれば、オフ期間の間にSMA101の長さはほとんど変化しない。調整パルス電圧35bはSMA101に対して波高値を低下させた調整パルス電圧35aと等価的に作用してSMA101のストレスを軽減する。
【0038】
サブ・パルス電圧34のデューティ比が100%の擬似的な単一パルス電圧は、通常の単一パルス電圧に相当する。
図4(C)は、基準パルス電圧21に続いて発生した、波高値V1、パルス幅Wm(Wm<Ws)の調整パルス電圧35cを示し、
図4(D)は、波高値V2(V2<V1)、パルス幅Wmの調整パルス電圧35dを示している。
【0039】
図5は、調整パルス電圧35a〜35dを印加したときに衝撃駆動型アクチュエータ100のストレスが軽減する様子を説明するための図である。
図5(A)は、基準パルス電圧21、調整パルス電圧35a、35cの波高値V1、V2およびパルス幅Ws、Wmを示し、
図5(B)は、調整パルス電圧35aを印加したときの様子を示し、
図5(C)は調整パルス電圧35cを印加したときの様子を示している。
【0040】
図5(B)において、基準パルス電圧21を印加した場合と、調整パルス電圧35aを印加した場合のSMA101の挙動を比較する。調整パルス電圧35aは基準パルス電圧21に比べてパルス幅Wsは等しいが波高値V2は小さい。長さL0のSMA101に時刻t0で基準パルス電圧21を印加すると、時刻t1で完全昇温過程が終了して長さがL1まで収縮する。SMA101は、基準パルス電圧21の通電時間が終了するまで長さL1を維持して通電時間が終了した時刻t3以降に完全降温過程を開始する。SMA101は時刻t5で完全降温過程が終了して長さがL0に戻る。
【0041】
時刻t0で調整パルス電圧35aを印加したときは、ジュール熱が少ないためオーステナイト相への完全な相転移が終了する前に時刻t3で通電時間が終了するが、このとき長さはL2(L2>L1)までしか収縮しない。SMA101は通電時間が終了した時刻t3以降に不完全降温過程を開始し、時刻t4で不完全降温過程が終了して長さがL0に戻る。基準パルス電圧21に比べて調整パルス電圧35aを印加したときのSMA101の変位量は少なくかつ収縮が停止するまでの時間も長くなるため衝撃駆動型アクチュエータ100が受けるストレスは軽減される。調整パルス電圧35bを印加したときも同様である。
【0042】
図5(C)において、基準パルス電圧21を印加した場合と、調整パルス電圧35cを印加した場合のSMA101の挙動を比較する。調整パルス電圧35cは、基準パルス電圧21に比べてパルス幅Wmは短いが波高値V1が等しいため時刻t0から通電時間が終了する時刻t6までの昇温過程は同等に推移する。時刻t6で不完全昇温過程が終了するが、このとき長さはL3(L3>L1)までしか収縮しない。
【0043】
その後不完全降温過程に入り時刻t7で長さがL0に戻る。基準パルス電圧21に比べて調整パルス電圧35cを印加したときのSMA101の変位量は少ないため衝撃駆動型アクチュエータ100が受けるストレスは軽減される。パルス幅Wmに加えて波高値V2も低減した調整パルス電圧35dを印加すれば一層ストレスを軽減することができる。
【0044】
[駆動システム]
図6は、衝撃駆動型アクチュエータ100のストレス量を調整する駆動システム200の構成を示す機能ブロック図である。駆動システム200は、ストレス監視部201、ストレス調整部203、パルス信号生成部205、フラット型のキーボード209、直流電圧源207、衝撃駆動型アクチュエータ100、N型のFET213およびコンデンサ215で構成している。ストレス監視部201、ストレス調整部203、およびパルス信号生成部205は、SoC(System on Chip)や専用のコントローラで構成することができる。
【0045】
キーボード209は
図1の振動体10の一例に相当する。キーボード209は、入力したときにパンタグラフ式のキーボードのような操作感(タクタイル)がないタイプのキーボードである。キーボード209は、典型的にはキーが独立しておらず表面を連続したシートで覆われている。キーボード209は、タッチスクリーンで構成したソフトウェア・キーボードでもよい。衝撃駆動型アクチュエータ100は、キー操作のタイミングでキーボード209を振動させて触覚フィードバックを付与する。ユーザがキー操作をすると衝撃駆動型アクチュエータ100は、メーク・コードおよびブレーク・コードが生成されたタイミングでキーボード209の基板に振動を付与する。
【0046】
キーボード209は、ストレス監視部201に、キー操作のタイミングでメーク・コードおよびブレーク・コードに対応するキーイベントを出力する。ストレス監視部201は、ストレス調整部203から、現在パルス信号生成部205に設定している基準パルス電圧21、または調整パルス電圧35a〜35dのパラメータを取得する。ストレス監視部201は、パルス信号生成部205にメーク・コードおよびブレーク・コードに対応するキーイベントを通知する。
【0047】
ストレス監視部201は、キーボード209に対する入力操作に対して所定の監視時間ごとにストレス量を計算してストレス調整部201に送る。ストレス監視部201は単一パルス電圧のパルス幅をw、波高値をv、印加回数をnとしたときに衝撃駆動型アクチュエータが受けるストレスLを、L=f(w、v、n)のストレス関数で計算することができる。
【0048】
許容ストレス量Lmaxは、監視時間Psの間に許容する基準パルス電圧21の印加回数をnsとしたときに、一例としてLmax=Ws×V1×nsとして計算することができる。波高値V2(V2<V1)でパルス幅Wsの調整パルス電圧35aを監視時間Psの間にn個印加したときのストレス量L1は、一例としてL1=α1×Ws×V2×nで計算することができる。
【0049】
また、波高値V1でパルス幅Wm(Wm<Ws)の調整パルス電圧35cを監視時間Psの間にn個印加したときのストレス量L2は、一例としてL2=α2×Wm×V1×nで計算することができる。また、波高値V2でパルス幅Wmの調整パルス電圧35dを監視時間Psの間にn個印加したときのストレス量L3は、一例としてL3=α3×Wm×V2×nで計算することができる。ここにα1〜α3は定数である。
【0050】
ストレス調整部203は、ストレス量を許容ストレス量の範囲に維持するために調整パルス電圧のパラメータを計算する。調整パルス電圧を印加すると、振動強度が低下する。振動強度の低下が望ましくない場合に、ストレス調整部203は、できるだけ調整するストレス量が小さくなるように許容ストレス量と実際のストレス量の差に応じて必要な範囲のパラメータを設定することができる。ストレス調整部203は調整パルス電圧の波高値、パルス幅、およびデューティ比などのパラメータを直流電圧源207およびパルス信号生成部205に設定する。
【0051】
ストレス調整部203は、ストレス量が増加したときに重要性が低いブレーク・コードに対応するキーイベントでの調整パルス電圧の出力を停止するようにパルス信号生成部205に指示することができる。ストレス調整部203は、メーク・コードに対応して基準パルス電圧を印加し、ブレーク・コードに対応して調整パルス電圧を印加するようにパルス信号生成部203に指示することができる。
【0052】
パルス信号生成部203は、キーイベントを受け取ったタイミングで、設定されたパラメータの基準パルス電圧21または調整パルス電圧35a〜35dを印加するようにFET213を制御する。FET213は直流電圧をスイッチング制御する半導体素子であり、バイポーラ・トランジスタを採用してもよい。
【0053】
直流電圧源207は、DC/DCコンバータで構成され所定の直流電圧を出力する。直流電圧源207は、調整パルス電圧35a〜35dを印加する際にストレス調整部203の指示で必要に応じて出力電圧を調整する。コンデンサ215は、FET213のオフ期間に充電しオン期間に放電して衝撃駆動型アクチュエータ100にエネルギーを供給する。直流電圧源207が十分な容量を備えていればコンデンサ215はなくてもよい。
【0054】
[駆動システムの動作]
図7は駆動システム200の動作手順を示すフローチャートである。ブロック401でストレス調整部203は、パルス信号生成部205に基準パルス電圧21のパラメータを設定する。ブロック403でユーザがキーボード209に入力操作を開始する。ブロック405でストレス監視部201は打鍵速度から計算したストレス量をストレス調整部203に出力する。ブロック407でストレス調整部203は、直近の監視時間Psの間にストレス量が許容値を超えたと判断したときにブロック409に移行する。
【0055】
ストレス量が許容値未満のときは、ブロック403に戻ってストレス調整部203は基準パルス電圧21のパラメータを維持する。ブロック409でストレス調整部203は、できるだけ触覚フィードバックへの影響が少なくなるようにストレス調整を開始する。ストレス調整部203は、波高値だけを低下させた調整パルス電圧35aまたはこれに相当する調整パルス電圧35bを印加してストレス調整をするために、波高値またはデューティ比を許容値とストレス量の差に応じて選択する。なお、以下では、調整パルス電圧35bを印加する場合も、調整パルス電圧35aの印加として説明する。
【0056】
ストレス調整部203は、パルス信号生成部205に基準パルス電圧21よりも小さい波高値を設定する。衝撃駆動型アクチュエータ100は、キーイベントのタイミングで調整された調整パルス電圧35aが印加されるため、打鍵速度が変化しなければストレス量が低下する。ブロック411でストレス監視部201は、さらに継続するキー操作に対するストレス量を計算してストレス調整部203に出力する。ストレス調整部203は、ストレス量の増減に応じて波高値を基準パルス電圧21の波高値より小さい範囲で調整する。
【0057】
ストレス調整部203は、ストレス量に応じて徐々に波高値を低下させることができるが、波高値を所定の最低値まで低下させると振動が小さくなって、所定の触覚フィードバックを付与することができない。ブロック413でストレス調整部203は、直近の監視時間Psの間に波高値を最低値にしてもストレス量が許容値を超えたと判断したときにパルス幅でストレス調整をするためにブロック415に移行する。
【0058】
ストレス量が許容値未満のときは、ブロック451に移行してストレス調整部203は、基準パルス電圧21への復帰が可能か否かを判断する。復帰が可能なときはブロック403に移行しパルス信号生成部205はSMA101に基準パルス電圧21を印加する。復帰ができないときはブロック409に移行して、ストレス調整部203は、調整パルス電圧35aのパラメータを維持する。ブロック415でストレス調整部203は、パルス信号生成部205にパルス幅を低下させた調整パルス電圧35cのパラメータを設定する。ブロック417でストレス監視部201は、さらに継続するキー操作に対してストレス量を計算してストレス調整部203に出力する。
【0059】
ストレス調整部203は、ストレス量の増減に応じてパルス幅Wmを基準パルス電圧21のパルス幅Wsより小さい範囲で調整する。ストレス調整部203は、ストレス量に応じて徐々にパルス幅を低下させることができるが、パルス幅を所定の値まで低下させると所定の触覚フィードバックを付与することができない。ブロック419でストレス調整部203は、直近の監視時間Psの間にストレス量が許容値を超えたと判断したときにさらにストレス調整をするためにブロック421に移行する。
【0060】
ストレス量が許容ストレス量未満のときは、ブロック453に移行してストレス調整部203は、調整パルス電圧35aへの復帰が可能か否かを判断する。復帰が可能なときはブロック451に移行する。復帰ができないときはブロック415に移行して、ストレス調整部203は調整パルス電圧35cのパラメータを維持する。ブロック421でストレス調整部203は、パルス信号生成部205にブレーク・コードに対応する調整パルス電圧35cの印加を停止するように指示する。
【0061】
キーボードの操作に対する触覚フィードバックでは、通常は、キーを押下したときに振動させた方が操作感がよいため、ブレーク・コードに対応する調整パルス電圧35cをスキップすることで触覚フィードバックへの影響を軽減する。ブロック423で、ストレス監視部201はストレス量を計算してストレス調整部203に出力する。ブロック425でストレス調整部203は、直近の監視時間Psの間にストレス量が許容値を超えたと判断したときにブロック427で本発明のストレス調整を停止する。
【0062】
ストレス量が許容値未満のときは、ブロック455に移行してストレス調整部203は、それまで停止していたブレーク・コードに対する調整パルス電圧35cの印加が可能か否かを判断する。印加が可能なときはブロック453に移行する。印加できないときはブロック421に移行して、ブレーク・コードに対してスキップした調整パルス電圧35cを維持する。
【0063】
上記の手順は、本発明の一例を説明したもので、本発明の範囲を限定するものではない。たとえば、ブロック409、415、421の手順はすべてを実行する必要はなく、また順番を入れ替えることもできる。調整パルス電圧35a、35cを印加する例を示したが、それらに代えてまたはそれらとともに波高値およびパルス幅のいずれも調整した調整パルス電圧35d(
図4)を印加するようにしてもよい。
【0064】
また、ブロック409またはブロック415の手順とブロック421の手順を組み合わせて、メーク・コードと、ブレーク・コードで異なる単一パルス電圧を印加するようにしてもよい。たとえば、ストレス量が増加したときに、比較的重要性の高いメーク・コードに対応した基準パルス電圧21の印加を維持し、ブレーク・コードだけに対応して調整パルス電圧35a〜35dの印加またはスキップをすることもできる。本発明は、キーボードの触覚フィードバックに適用だけでなく、ランダムな繰り返し動作をする衝撃駆動型アクチュエータ全般に適用することができる。
【0065】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【解決手段】衝撃駆動型アクチュエータ100は、FET213の動作で生成したパルス電圧で動作する。キーボード209は、入力操作のタイミングでキーイベントを出力する。ストレス監視部201は、キーイベントとパルス電圧のパラメータに基づいて衝撃駆動型アクチュエータのストレス量を計算する。ストレス調整部203は、ストレス量が許容値に到達したときにパルス電圧のパラメータを変更する。パラメータはパルス電圧の波高値またはパルス幅とすることができる。ストレス調整部は、ブレーク・コードに対応するキーイベントに応じた衝撃駆動型アクチュエータの動作を停止することもできる。