(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6152251
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】春ウコン成分含有飲料及び春ウコン成分による風味の調整を行う方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20170612BHJP
【FI】
A23L2/00 B
【請求項の数】16
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-131108(P2012-131108)
(22)【出願日】2012年6月8日
(65)【公開番号】特開2013-252118(P2013-252118A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2014年6月24日
【審判番号】不服2016-3525(P2016-3525/J1)
【審判請求日】2016年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111487
【氏名又は名称】ハウス食品グループ本社株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】向田 直弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 礼子
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 直美
【合議体】
【審判長】
田村 嘉章
【審判官】
中村 則夫
【審判官】
山崎 勝司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−295977(JP,A)
【文献】
特開2003−235503(JP,A)
【文献】
特開2012−87064(JP,A)
【文献】
特開2008−99682(JP,A)
【文献】
特開2002−363086(JP,A)
【文献】
特開2006−111619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L2/00-2/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)春ウコン抽出物、及び
(B)カンゾウ抽出物、を含有し、pHが5以下である春ウコン成分含有酸性飲料。
【請求項2】
春ウコン抽出物が春ウコンの親水性有機溶媒抽出物、水抽出物又は熱水抽出物であり、カンゾウ抽出物がカンゾウの親水性有機溶媒抽出物、水抽出物又は熱水抽出物である請求項1に記載の春ウコン成分含有酸性飲料。
【請求項3】
春ウコン抽出物の含有量が飲料100mlあたり10〜600mgである、請求項1又は2に記載の春ウコン成分含有酸性飲料。
【請求項4】
カンゾウ抽出物の含有量が飲料100mlあたり1.5〜50mgである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の春ウコン成分含有酸性飲料。
【請求項5】
春ウコン抽出物とカンゾウ抽出物とを重量比にして1:0.0025〜1:5の割合で含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の春ウコン成分含有酸性飲料。
【請求項6】
さらに、秋ウコン抽出物を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の春ウコン成分含有酸性飲料。
【請求項7】
秋ウコン抽出物がクルクミンを含む、請求項6に記載の春ウコン成分含有酸性飲料。
【請求項8】
さらに、香辛料抽出物を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の春ウコン成分含有酸性飲料。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の春ウコン成分含有酸性飲料が入れられた、容器詰飲料。
【請求項10】
酸性飲料材料に春ウコン抽出物及びカンゾウ抽出物を加配する工程を含む、pHが5以下である春ウコン成分含有酸性飲料の製造方法。
【請求項11】
春ウコン抽出物が春ウコンの親水性有機溶媒抽出物、水抽出物又は熱水抽出物であり、カンゾウ抽出物がカンゾウの親水性有機溶媒抽出物、水抽出物又は熱水抽出物である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
春ウコン抽出物とカンゾウ抽出物とを重量比にして1:0.0025〜1:5の割合で加配する、請求項10又は11に記載の製造方法。
【請求項13】
酸性飲料材料に春ウコン抽出物及びカンゾウ抽出物を加配する工程を含む、pHが5以下である春ウコン成分含有酸性飲料における春ウコン成分に起因する風味を調整する方法。
【請求項14】
春ウコン成分含有酸性飲料における、春ウコン成分に起因する不快な呈味を低減する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
春ウコン抽出物が春ウコンの親水性有機溶媒抽出物、水抽出物又は熱水抽出物であり、カンゾウ抽出物がカンゾウの親水性有機溶媒抽出物、水抽出物又は熱水抽出物である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
春ウコン抽出物とカンゾウ抽出物とを重量比にして1:0.0025〜1:5の割合で加配する、請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、春ウコン成分に起因する不快な呈味が調整された春ウコン成分含有酸性飲料に関する。
【0002】
本発明はまた、春ウコン成分含有酸性飲料における春ウコン成分に起因する不快な呈味を調整する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ウコンは東南アジアを中心に、世界中の熱帯・亜熱帯地域で栽培されるショウガ科ウコン属の植物である。独特な香気と風味を有することから香辛料として、また生薬として古くから用いられている。最近では、根茎に含まれるクルクミンに抗炎症、抗腫瘍、肝機能改善、悪酔いの防止等のさまざまな効果があることが報告され、ウコンは、健康食品としても注目されている。
【0004】
今日、ウコンの有用性に着目し、ウコン成分を配合した様々な飲食品が開発されており、中でも、ウコン成分を配合した酸性飲料はウコン独特の土臭さや苦味が抑えられ、飲みやすく、人気が高い。
【0005】
一般にウコンと呼ばれているのは、日本では秋ウコン・ターメリック(学名Curcuma longa)を指し、クルクミンを豊富に含み、上記飲料をはじめとする様々な飲食品や医薬品等に用いられている。
【0006】
一方、春ウコン・キョウオウ(学名Curcuma aromatica)もまた、秋ウコンと同様に古くから生薬として用いられている。
【0007】
根茎に含まれる有用成分の含有比が春ウコンと秋ウコンとでは大きく異なることが知られており、例えば、秋ウコンの根茎に含まれるクルクミン量は春ウコンのおよそ10倍であり、一方、春ウコンの根茎に含まれる精油成分およびミネラルの量はそれぞれ、秋ウコンのおよそ5倍及びおよそ7倍である。根茎に含まれる成分の含有比の違いから、春ウコンは秋ウコンに比べて、苦味等の不快な呈味が強い。そのため、飲食品等には、苦味等の不快な呈味が比較的少ない秋ウコンが利用されることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、春ウコン成分を含有する飲料が酸性のpH値を有する場合に、苦味が低減する反面、渋み等の不快な呈味が強く感じられることを見出した。そして、一般的に用いられる甘味料を春ウコン成分を含有する酸性飲料に添加した場合、当該渋み等の不快な呈味をマスキングできないばかりか、酸性飲料として良好な甘みを実現できないことを見出した。
【0009】
そこで、本発明は、春ウコン成分に起因する不快な呈味が調整された春ウコン成分含有酸性飲料を提供することを目的とする。本発明はまた、春ウコン成分含有酸性飲料における春ウコン成分に起因する不快な呈味を調整する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、春ウコン抽出物とカンゾウ抽出物を組み合わせて酸性飲料に配合することによって、春ウコン成分に起因する不快な呈味を調整できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
[1] (A)春ウコン抽出物、及び
(B)カンゾウ抽出物、を含有する、春ウコン成分含有酸性飲料。
[2] pHが5以下である、[1]の春ウコン成分含有酸性飲料。
[3] 春ウコン抽出物とカンゾウ抽出物とを重量比にして1:0.0025〜1:5の割合で含有する、[1]又は[2]の春ウコン成分含有酸性飲料。
[4] さらに、秋ウコン抽出物を含有する、[1]〜[3]のいずれかの春ウコン成分含有酸性飲料。
[5] 秋ウコン抽出物がクルクミンを含む、[4]の春ウコン成分含有酸性飲料。
[6] さらに、香辛料抽出物を含有する、[1]〜[5]のいずれかの春ウコン成分含有酸性飲料。
[7] [1]〜[6]のいずれかの春ウコン成分含有酸性飲料が入れられた、容器詰飲料。
[8] 酸性飲料材料に春ウコン抽出物及びカンゾウ抽出物を加配する工程を含む、春ウコン成分含有酸性飲料の製造方法。
[9] 春ウコン抽出物とカンゾウ抽出物とを重量比にして1:0.0025〜1:5の割合で加配する、[8]の製造方法。
[10] 酸性飲料材料に春ウコン抽出物及びカンゾウ抽出物を加配する工程を含む、春ウコン成分含有酸性飲料における春ウコン成分に起因する風味を調整する方法。
[11] 春ウコン成分含有酸性飲料における、春ウコン成分に起因する不快な呈味を低減する、[10]の方法。
[12] 春ウコン抽出物とカンゾウ抽出物とを重量比にして1:0.0025〜1:5の割合で加配する、[10]又は[11]の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、春ウコン成分に起因する不快な呈味が調整された春ウコン成分含有酸性飲料を提供することができる。春ウコン抽出物とカンゾウ抽出物を酸性飲料に配合することによって、春ウコン成分に起因する不快な呈味を低減することができ、かつ酸性飲料として良好な甘みを付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の春ウコン成分含有酸性飲料は、春ウコン抽出物及びカンゾウ抽出物を含有する。
(春ウコン抽出物)
本発明において「春ウコン抽出物」とは、春ウコンと通称される学名
Curcuma aromaticaの根茎の抽出物を指す。
【0014】
春ウコン抽出物は、春ウコンの根茎部分を有機溶媒、水、熱水などの抽出溶媒を用いて抽出し、加熱及び/又は減圧して抽出溶媒を揮発させることにより得ることができる。
【0015】
抽出溶媒としては、アルコールやヘキサン、アセトン等の有機溶媒を用いることができ、好ましくはアルコール等の親水性有機溶媒である。アルコール等の親水性有機溶媒と水との混合溶媒による春ウコン抽出物も好適に利用できる。親水性有機溶媒と水との混合比は特に限定されないが、例えば重量比で10:90〜90:10の範囲が好ましく、20:80〜50:50の範囲がより好ましい。アルコールとしてはエタノールが好ましい。
【0016】
本発明の春ウコン成分含有酸性飲料における春ウコン抽出物の含有量は、特に限定されないが100mlあたり、10〜600mg、好ましくは10〜300mgを配合することができる。春ウコン抽出物は、春ウコンの乾燥原体の量にして50〜3000mg配合されることが好ましい。
【0017】
春ウコン抽出物は、必要に応じて、微粒子化されたものを用いても良い。春ウコン抽出物の微粒子化は公知の手法(例えば、特開2011−250709号公報に記載の「微粒子化処理方法」)を用いて行うことができる。
【0018】
(カンゾウ抽出物)
本発明において「カンゾウ抽出物」とは、カンゾウ属(
Glycyrrhiza)に属する植物の根茎の抽出物を指す。本発明において、カンゾウ属に属する植物としては、ウラルカンゾウ(学名
Glycyrrhiza uralensis)またはスペインカンゾウ(学名
Glycyrrhiza glabra)等を好適に利用できる(ただし、これらに限定はされない)。
【0019】
カンゾウ抽出物は、食品添加物公定書(厚生労働省)の仕様に適合するものを指す。
カンゾウ抽出物は、カンゾウの根茎部分を有機溶媒、水、熱水などの抽出溶媒を用いて抽出し、加熱及び/又は減圧して抽出溶媒を揮発させることにより得ることができる。
【0020】
抽出溶媒としては、アルコールやヘキサン、アセトン等の有機溶媒を用いることができ、好ましくはアルコール等の親水性有機溶媒である。アルコール等の親水性有機溶媒と水との混合溶媒によるカンゾウ抽出物も好適に利用できる。親水性有機溶媒と水との混合比は特に限定されないが、例えば重量比で10:90〜90:10の範囲が好ましく、20:80〜50:50の範囲がより好ましい。アルコールとしてはエタノールが好ましい。
【0021】
本発明の春ウコン成分含有酸性飲料は、春ウコン抽出物とカンゾウ抽出物とを重量比にして、1:0.0025〜1:5、好ましくは1:0.05〜1:4の割合で含むのが望ましい。したがって、春ウコン成分含有酸性飲料におけるカンゾウ抽出物の含有量は、特に限定されないが100mlあたり、1.5〜50mg、好ましくは15〜40mgを配合することができる。カンゾウ抽出物は、カンゾウの乾燥原体の量にして6〜200mg配合されるか、グリチルリチン酸の量にして0.1〜3.3mg配合されることが好ましい。
【0022】
(カンゾウ抽出物、pH値による効果)
本発明の春ウコン成分含有酸性飲料は、酸性飲料であることを特徴とする。春ウコン成分含有飲料を酸性飲料とすることによって、春ウコン成分に起因する苦味が低減し、かつ酸味があり、すっきりと飲みやすい美味しい飲料が達成され、春ウコンの健康成分を手軽に摂取することができる。本発明の春ウコン成分含有酸性飲料のpH値は、5以下、好ましくは4.6未満、さらに好ましくは4.0未満である。pH値の下限は特に限定されないが、味覚(酸味)の面から通常はpH値は2.5以上とすることが好ましい。特に好ましくは、本発明の春ウコン成分含有酸性飲料のpH値は、2.5〜3.9である。なお本発明においてpH値は20℃で測定された値を指す。
【0023】
本発明の春ウコン成分含有酸性飲料のpH値は、酸味料等の量を適宜調節することにより調節することができる。
【0024】
一方、春ウコン成分含有飲料を酸性とすることによって、春ウコン成分に起因する不快な呈味が強く感じられるという問題がある。酸性飲料における春ウコン成分に起因する不快な呈味としては、特に後味に感じられる「渋み」が挙げられる。
【0025】
一般的に、飲料における「苦味」、「渋み」等の不快な呈味は、甘味料を配合することによってマスキングして調整することができる。甘味料としては、一般的に果糖ブドウ糖液糖、アセスルファムカリウム、スクラロース等が用いられる。しかし、下記実施例にて詳述するとおり、酸性飲料において、春ウコン抽出物とこれらの甘味料を組み合わせて配合しても、春ウコン成分に起因する不快な呈味を十分に低減することができない(すなわち、不快感を与えない程度、又は飲みやすさを感じる程度にまで低減することができない)。そればかりでなく、配合した甘味料に起因して、単調な甘みまたは不自然な甘味を生じ、酸性飲料としての清涼感が損なわれる等の問題を生じる。
【0026】
これに対して、酸性飲料において、春ウコン抽出物とカンゾウ抽出物を組み合わせて配合することによって、春ウコン成分に起因する不快な呈味を不快感を与えない程度又は飲みやすさを感じる程度にまで低減することができると共に、酸性飲料の清涼感を生かすことのできる、自然な甘味を付与することができる。すなわち、酸性飲料における春ウコン成分の風味に対する、春ウコン抽出物とカンゾウ抽出物の組み合わせの効果は、春ウコン抽出物と果糖ブドウ糖液糖等の組み合わせの効果とは明確に異なる。
【0027】
また、カンゾウ抽出物は、春ウコン抽出物に加えて秋ウコン抽出物を含有する酸性飲料における、これら抽出物に起因する不快な呈味(秋ウコン抽出物を含有することで前記の「渋み」がより顕在化する)も同様に、低減することができる。
【0028】
(他の成分)
本発明の春ウコン成分含有酸性飲料は水に上記の成分が含有されたものであるが、一又は複数の他の成分が更に含有されてもよい。
【0029】
「他の成分」は飲料として許容される成分である限り特に限定されない。
「他の成分」としては、秋ウコン抽出物が挙げられる。秋ウコン抽出物とは、秋ウコンと通称される学名
Curcuma long LINNEに由来する抽出物を指す。
【0030】
秋ウコン抽出物は、秋ウコンの根茎部分を有機溶媒、水、熱水などの抽出溶媒を用いて抽出し、加熱及び/又は減圧して抽出溶媒を揮発させることにより得ることができる。抽出溶媒としては、アルコールやヘキサン、アセトン等の有機溶媒を用いることができ、好ましくはアルコール等の親水性有機溶媒である。アルコール等の親水性有機溶媒と水との混合溶媒による秋ウコン抽出物も好適に利用できる。親水性有機溶媒と水との混合比は特に限定されないが、例えば重量比で10:90〜90:10の範囲が好ましく、20:80〜50:50の範囲がより好ましい。アルコールとしてはエタノールが好ましい。このようにして得られた抽出物には、ウコン色素(特に、クルクミン)が含有される。
【0031】
「秋ウコン抽出物」は、ウコン色素(特に、クルクミン)であっても良い。ウコン色素は、秋ウコンの根茎部分より、温時エタノールで、熱時油脂若しくはプロピレングリコールで、又は室温時〜熱時ヘキサン若しくはアセトンで抽出して得られるものであり、このようにして得られたウコン色素は主にクルクミンを含む。
【0032】
本発明の春ウコン成分含有酸性飲料における秋ウコン抽出物の含有量は、特に限定されないが、クルクミン量にして100mlあたり、3〜50mg、好ましくは10〜40mgを配合することができる。
【0033】
また、「他の成分」としては、香辛料抽出物が挙げられる。香辛料としては、シナモン、フェンネル、スターアニス、カルダモン、クミン、コリアンダー、トウガラシ、コショウ、メッチ、マスタード、ガーリック、ジンジャー、ディルシード、ナツメグ、クローブ、アニスシード、アジャワン、セージ、オレガノ、タラゴン、陳皮、ローレル、ローリエ、カレーリーフ等が挙げられるが、これらに限定はされない。香辛料としては、シナモン、フェンネルが好ましい。
【0034】
香辛料抽出物としては、香辛料を水蒸気蒸留法を用いて抽出して得たもの等を用いることができる。また、抽出物は、香辛料を有機溶媒、水、熱水などの抽出溶媒を用いて抽出し、加熱及び/又は減圧して抽出溶媒を揮発させることにより得ることができる。抽出溶媒としては、アルコールやヘキサン、アセトン等の有機溶媒を用いることができ、好ましくはアルコール等の親水性有機溶媒である。アルコール等の親水性有機溶媒と水との混合溶媒による香辛料抽出物も好適に利用できる。親水性有機溶媒と水との混合比は特に限定されないが、例えば重量比で10:90〜90:10の範囲が好ましく、20:80〜50:50の範囲がより好ましい。アルコールとしてはエタノールが好ましい。
【0035】
本発明の春ウコン成分含有酸性飲料における香辛料抽出物の含有量は、特に限定されないが、100mlあたり、1〜1000mg、好ましくは1〜100mgを配合することができる。
【0036】
さらに、「他の成分」としては、甘味料、酸味料、増粘剤、イノシトール、香料、酸化防止剤、ビタミン類等が挙げられる。
【0037】
甘味料としては、カンゾウ抽出物以外の飲料品に一般的に用いられるものが挙げられ、例えば、果糖ブドウ糖液糖、アセスルファムカリウム、スクラロース、ソーマチン、アスパルテーム、ネオテーム、ステビア、環状オリゴ糖、果糖、ブドウ糖、はちみつ等が挙げられる。これらの甘味料は、本発明の春ウコン成分含有酸性飲料の甘味のバランスを調整するために添加することができる。つまり、カンゾウ抽出物によってもたらされた甘みのバランスを損なわない範囲でこれらを適宜併用し得る。
【0038】
酸味料としては、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、或いはこれらの塩等が挙げられる。
増粘剤としては、ジェランガム、キサンタンガム、ペクチン、グアーガム等の増粘多糖類が挙げられる。
酸化防止剤としては、ビタミンC、酵素処理ルチン、カテキン等が挙げられる。
ビタミン類としては、ビタミンC、ビタミンB
1、ビタミンB
6、ビタミンE、ナイアシン等が挙げられる。
【0039】
甘味料、酸味料、増粘剤、イノシトール、香料、酸化防止剤、ビタミン類等は、当業者が飲料に通常採用する範囲内の量で適宜配合することができる。
【0040】
本発明の春ウコン成分含有酸性飲料は、容器詰飲料とすることができる。
本発明の春ウコン成分含有酸性飲料を収容するための容器は、飲料用容器として使用される容器を適宜用いることができ、限定されないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)製容器、所謂PETボトルや、金属缶容器等が挙げられる。容器の形態は特に限定されない。また、容器の容量は特に限定されないが、例えば50〜500ml(典型的には50ml、100ml、150ml、200ml、250ml、300ml、350ml、400ml、450ml又は500ml)、好ましくは100〜200mlとすることができる。
本発明の春ウコン成分含有飲料を容器に収容する手段は任意である。
【0041】
本発明の春ウコン成分含有酸性飲料は、前記春ウコン抽出物及びカンゾウ抽出物、必要に応じて上述のような他の成分、並びに残部として水を混合して製造することができる。春ウコン抽出物、カンゾウ抽出物及び他の成分の配合量は上記したとおりである。酸性飲料材料に春ウコン抽出物及びカンゾウ抽出物を加配することによって、春ウコン成分含有酸性飲料の春ウコン成分による風味を調整し、不快な呈味(苦味や渋み等)が不快感を与えない程度、又は飲みやすさを感じる程度にまで低減され、かつ酸性飲料の清涼感を生かすことのできる、自然な甘味が付与された、春ウコン成分含有酸性飲料を得ることができる。
【実施例】
【0042】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、それらの実施例によって制限されないものとする。
【0043】
1.材料
表1に示す原料を混合して、100mLの水溶液とし、93℃に加熱したものを金属缶にホットパックして、実施例1〜3および比較例1〜6で示す春ウコン成分含有飲料を調製した。各飲料のpHはクエン酸を加えて調整した。
【0044】
なお、春ウコン抽出物は、春ウコン(
Curcuma aromatica)の根茎部分を含水エタノール(30重量%エタノール水溶液)を用いて抽出し、減圧してエタノールを揮発させることにより得たものである。春ウコン抽出物100mgは、春ウコンの乾燥原体500mgに相当する。
【0045】
クルクミンは、秋ウコン抽出物の形態で用いた。秋ウコン抽出物は、秋ウコン(
Curcuma aromatica)の根茎部分をアセトンを用いて抽出し、減圧してエタノールを揮発させることにより得たものである。この秋ウコン抽出物にはクルクミンが含有される。
【0046】
カンゾウ抽出物は、カンゾウの根茎部分を含水エタノール(30重量%エタノール水溶液)を用いて抽出し、減圧してエタノールを揮発させることにより得たものである。なお、カンゾウ抽出物40mgは、カンゾウの乾燥原体160mgに相当する。
【0047】
フェンネルおよびシナモンの香辛料抽出物は、各香辛料を水蒸気蒸留法を用いて抽出して得たものである。
【0048】
【表1】
【0049】
2.評価
上記1より得られた春ウコン成分含有飲料の官能評価の結果を表2に示す。
【0050】
【表2】
【0051】
春ウコン抽出物を含有する飲料は、pH値が酸性である場合には、後味の苦味は低減する傾向であるが、後味の渋みが強く感じられ、春ウコン抽出物に加えて、さらにクルクミンを含有することによって後味の渋みがより強く感じられた(比較例1−3)。
【0052】
酸性の飲料における後味の苦味や渋みをマスキングする目的で、果糖ぶどう糖液糖、アセスルファムカリウム、スクラロースをそれぞれ春ウコン抽出物及びクルクミンと組み合わせて配合したところ、果糖ぶどう糖液糖を用いた場合には、後味の渋味が低減したものの、甘みのバランスを大きく欠く結果を招き、アセスルファムカリウム及びスクラロースを用いた場合には、後味の渋みは依然として感じられ、加えて、甘みのバランスを欠く結果を招いた(比較例4−6)。
【0053】
すなわち、これらの甘味料を酸性飲料に配合するのみでは、春ウコン抽出物及びクルクミンによる後味の苦味や渋みを低減し、かつ酸性飲料として良好な甘みを実現することはできないことが明らかとなった。
【0054】
一方、酸性の飲料に、春ウコン抽出物とカンゾウ抽出物を組み合わせて配合したところ、後味の苦味や渋みが顕著に低減し、また甘みのバランスも良好であった(実施例3)。春ウコン抽出物及びクルクミンを含有する酸性飲料においても、同様の結果が得られ(実施例2)、また、カンゾウ抽出物に加えて、香辛料抽出物を配合することによって、後味の渋みをさらに低減できることが明らかとなった(実施例1)。
【0055】
これらの結果より、酸性飲料においては、春ウコン抽出物(及びクルクミン)とカンゾウ抽出物を組み合わせて配合することによって、春ウコン抽出物(及びクルクミン)による後味の苦味や渋みを低減できると共に、酸性飲料として良好な甘みを実現できることが示された。