特許第6152258号(P6152258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6152258-燃料タンク 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6152258
(24)【登録日】2017年6月2日
(45)【発行日】2017年6月21日
(54)【発明の名称】燃料タンク
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/40 20060101AFI20170612BHJP
【FI】
   B64G1/40 A
【請求項の数】6
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2012-232707(P2012-232707)
(22)【出願日】2012年10月22日
(65)【公開番号】特開2013-95415(P2013-95415A)
(43)【公開日】2013年5月20日
【審査請求日】2015年10月22日
(31)【優先権主張番号】10 2011 117 489.7
(32)【優先日】2011年10月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500443888
【氏名又は名称】アストリウム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルター シュヴァルティング
(72)【発明者】
【氏名】ジルヴァイン ゴエク
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06231008(US,B1)
【文献】 英国特許出願公告第00702518(GB,A)
【文献】 実開平05−014605(JP,U)
【文献】 特開平05−026351(JP,A)
【文献】 特開2005−054992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮ガスによって燃料タンクから放出される液体を貯蔵するための前記燃料タンクであって、該燃料タンクがダイヤフラムタンクとして構成され、ダイヤフラムが人造材料から成っている前記燃料タンクにおいて、
前記ダイヤフラム(3)が、ポリマー材から成り、且つほぼC字状の横断面を持つ弾性リング(2)により、カウンタベアリングとしての前記タンクの外壁(1)に形成した凹部(4)内で密封保持されていることを特徴とする燃料タンク。
【請求項2】
前記ダイヤフラム(3)が、保持領域で、弾性リング(2)にて少なくとも180゜の巻き付け角度を有していることを特徴とする、請求項1に記載の燃料タンク。
【請求項3】
前記弾性リング(2)がその都度使用される燃料または酸化剤に対し適合性のある材料から成っていることを特徴とする、請求項1または2に記載の燃料タンク。
【請求項4】
前記弾性リング(2)の表面が粗く形成されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか一つに記載の燃料タンク。
【請求項5】
前記弾性リング(2)が、コーティング部を備え、且つ接着または加硫処理によって前記ダイヤフラムと固定結合されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか一つに記載の燃料タンク。
【請求項6】
宇宙船で使用するために設置された、請求項1から5までのいずれか一つに記載の燃料タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮ガスによって燃料タンクから放出される液体を貯蔵するための前記燃料タンク、特に宇宙船で使用するための前記燃料タンクであって、該燃料タンクがダイヤフラムタンクとして構成され、ダイヤフラムが人造材料から成っている前記燃料タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体を貯蔵するための容器として、特にその都度の液体とは別個の圧縮ガスの作用を受ける燃料を貯蔵するための容器として、有利にはダイヤフラムタンクが使用される。このようなダイヤフラムは典型的には宇宙空間の無重力条件のもとで使用されるが、たとえば飛行機、Uボートのような高速または強力姿勢変更システムで重力下でも使用される。この種のタンクの外側形状は少なくとも円錐体として形成されているのに対し、このタンクの内側にあるダイヤフラムは通常は、そのエッジにおいてエクアトリアルに(aequatorial)締め付け固定されている半球体である。
【0003】
この種のタンクで使用されるダイヤフラムは、少なくとも、化学的に適合性のある弾性材料から成っている。この弾性材料は弛緩することなく、すなわちその弾性特性が損失することなく、継続的に漏れを防止するようにエクアトリアル締め付け固定部で保持されねばならない。ダイヤフラムの半球体容積部内側のタンク容積部の大部分が液体で充填され、他方タンク容積部の小部分は、すなわちダイヤフラムの外側タンク容積部は、圧縮ガスの作用を受ける。
【0004】
液体を取り出すには、すなわちタンクを空にするには、システムによる流動抵抗および内圧に抗して液体を放出させるための高圧ガスが必要である。このためには圧縮ガス側に圧力リザーバーを設けるのが有用であり、圧力リザーバーはタンクの内側または外側のいずれかに配置される。必要なタンク圧は弛緩モード、いわゆるブローダウンモードで取り出すか、或いは、外部ガスタンクのケースでは一定圧調整器を介して取り出すことができる。
【0005】
液体の取り出し量が増えるに従って、ダイヤフラムのエクアトリアル面(赤道面)を通じてダイヤフラムの折り返し過程が生じ、これはタンク容積部全体が完全に空になるまで継続する。塑性ポリマーダイヤフラムとは異なり、エラストマーダイヤフラムはこのような折り返し過程に持ちこたえ、クラックの発生がなく、よって漏れが生じることがない。しかしながら、宇宙飛行で使用される、二酸化窒素をベースにした酸化剤類のような化学的に極めてアグレッシブな液体と一緒にダイヤフラムタンクを使用するには、エラストマーダイヤフラム材は十分な適合性を有していない。むしろ、この酸化剤類に適した、化学的に適合性のあるプラスチックダイヤフラムはすべて、ペルフルオロポリマーの物質類に属している。しかしペルフルオロポリマーの物質類は塑性の性質があり、塑性材料として継続的に安定な固有の復帰力に欠けているので、ダイレクトな締め付け固定には適していない。
【0006】
塑性ポリマー材を使用する際に発生する機械的問題は以下のとおりである。
1)折り返し過程中の亀裂の発生。
2)特に薄壁材料における細孔を通じての透過および漏れ。
3)圧力の影響によるクラック、その結果としての継続的に不安定な固定およびダイヤフラム締め付け固定部の一時的のみの密封。
【0007】
最初の2つの問題は、今日使用されている公知のタンクではすでに解決済みと見なすことができるが、締め付け固定部におけるクラックの問題はいまだ満足に解決されていない。金属の環境の中にある弾性ダイヤフラム材はその弾性復帰力のために締め付けによって固定され、密封されるが、塑性材料に対しては、締め付け機能および密封機能のための弾性環境は従来知られていない。締め付け環境のこの弾性特性は、塑性ポリマー材のクラック、従って機械的ゆるみおよび密封性のロスを補償することができねばならない。締め付け特性および密封特性に対しては、長期間、すなわち宇宙ミッションおよびその他の使用目的の全時間にわたって、ポリマーのクラックが終了した時に締め付けの弾性力と有効復帰力との間に安定な力平衡が発生することが重要である。これはとりわけ化学的にアグレッシブな環境の影響のもとでも保証されていなければならないが、とりわけ燃料の作用によって膨れる場合、これと同時に、ポジティブおよびネガティブな温度変化による交番荷重が発生する場合、締め付け固定部の緊張力に影響することがあるタンク圧が変化する場合に保証されていなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、冒頭で述べた種類の燃料タンクにおいて、ダイヤフラムを使用する場合、タンク内に貯蔵されている液体のアグレッシブな性質による問題も、ダイヤフラムのクラックによって生じる問題も発生しないように構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、本発明によれば、ダイヤフラムが、ポリマー材から成り、且つほぼC字状の横断面を持つ弾性リングにより、カウンタベアリングとしてのタンクの外壁に形成した凹部内でカウンタベアリングとして密封保持されていることによって解決される。
【0010】
さらに、ダイヤフラムが、保持領域で、弾性リングにて少なくとも180゜の巻き付け角度を有していることを提案する。
【0011】
本発明によるタンクの有利な他の構成では、弾性リングの弾性係数と直径がダイヤフラムのポリマー材の残留変形に適応するように選定されている。
【0012】
この場合、本発明によるタンクを構成している合金は、有利には、リングがタンク内容物に対し絶対的に適合性があるように選定されている。ここでの材料選定は、その都度使用される燃料または酸化剤との適合性に関してテストした金属のリストに向けられる。
【0013】
機械的荷重のためにダイヤフラムがチャンバーから滑り落ちるのを阻止するため、弾性リングの表面は粗く形成されている。
【0014】
これとは択一的に、弾性リングが、適合性のあるペルフルオロプラスチックをベースにしたコーティング部を備え、且つ接着または加硫処理によってダイヤフラムと固定結合されていることを提案する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の利点は、分離ダイヤフラムの非常に高度な適合性のために、燃料に対しても、典型的には2成分駆動系で使用される二酸化窒素をベースとした酸化剤に対しても、或いは他の種々のアグレッシブな液体に対しても適正のある自在なタンク設計が提供されるという点にある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
次に、本発明による燃料タンクを図示した実施形態に関し詳細に説明する。
図1】本発明による燃料タンクの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
部分断面図で示した燃料タンクはタンク壁1を有し、タンク壁1は、C字状横断面を有する弾性リング2によりタンク壁1の適当な凹部4に締め付け固定されているポリマーダイヤフラム3を備えている。
【0018】
塑性ポリマー体はその材料の自然特性のためにたとえば金属から成る堅い環境の中で締め付け固定することができず、クリープ過程のために経時的にこの締め付け固定部がゆるくなり、密封性がなくなるので、図示したように、固有の復帰力を有していない塑性ポリマーダイヤフラム3は弾性リング2によりタンク壁1の凹部4内で締め付け固定されてスプリングテンションを備えている。
【0019】
締め付けに関与する力も、付着摩擦に関与する力も、すべて付着力および密封性を維持するためのものである。
【符号の説明】
【0020】
1 タンク壁
2 弾性リング
3 ポリマーダイヤフラム
4 凹部
図1